特許第6378641号(P6378641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378641
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】エンジンの水冷装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/04 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   F01P11/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-67037(P2015-67037)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186282(P2016-186282A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 貴人
(72)【発明者】
【氏名】田中 良憲
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−232398(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19701414(DE,A1)
【文献】 実開昭58−025618(JP,U)
【文献】 特開2015−039382(JP,A)
【文献】 特開2010−221339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータポンプ(1)と冷却水導入パイプ(2)を備え、ウォータポンプ(1)は、ポンプ本体(1a)とポンプ入口パイプ(1b)を備え、ポンプ入口パイプ(1b)はポンプ本体(1a)から導出され、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)が嵌合された、エンジンの水冷装置において、
筒形弾性シール(3)を備え、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、冷却水導入パイプ(2)は、非可撓性で、エンジンに固定され、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)は、筒形弾性シール(3)を間に挟んで、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、
筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端(1c)側からポンプ本体(1a)側に嵌め込まれて、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されるように構成され、筒形弾性シール(3)のポンプ本体(1a)側の端部に指掛かり部(3b)が設けられている、ことを特徴とするエンジンの水冷装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンの水冷装置において、
相互に嵌合する環状溝(3a)と環状突条(2b)を備え、筒形弾性シール(3)の外周と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の内周のうち、いずれか一方に環状溝(3a)が周方向に沿って形成され、他方に環状突条(2b)が周方向に沿って形成されている、ことを特徴とするエンジンの水冷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンの水冷装置において、
環状クランプ(4)を備え、環状クランプ(4)は、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の嵌合箇所(5)よりもポンプ本体(1a)側で、筒形弾性シール(3)の外周に嵌合されている、ことを特徴とするエンジンの水冷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたエンジンの水冷装置において、
ポンプ入口パイプ(1b)の外周表面には、鋳造時に形成された鋳肌が残されている、ことを特徴とするエンジンの水冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの水冷装置に関し、詳しくは、ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプの接続箇所の外径寸法を小さくすることができるエンジンの水冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの水冷装置として、次のものがある(例えば、特許文献1参照)。
ウォータポンプと冷却水導入パイプを備え、ウォータポンプは、ポンプ本体とポンプ入口パイプを備え、ポンプ入口パイプはポンプ本体から導出され、ポンプ入口パイプの外周に冷却水導入パイプのパイプ出口が嵌合された、エンジンの水冷装置
【0003】
この種の水冷装置によれば、ウォータポンプと冷却水導入パイプを簡単に接続することができる利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、冷却水導入パイプは可撓性パイプで、冷却水導入パイプのパイプ出口は、ポンプ入口パイプの外周に嵌合され、冷却水導入パイプのパイプ出口の外周に環状クランプ嵌合されているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−56347号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 環状クランプが周辺部品と干渉しやすい。
特許文献1のものでは、冷却水導入パイプは可撓性パイプで、冷却水導入パイプのパイプ出口は、ポンプ入口パイプの外周に嵌合され、冷却水導入パイプのパイプ出口の外周に環状クランプが嵌合されているため、ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプの接続箇所の外径寸法が、可撓性パイプと環状クランプの重なりによって大きくなる。このため、上記接続箇所が周辺部品と干渉しやすい。
【0007】
本発明の課題は、ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプの接続箇所の外径寸法を小さくすることができるエンジンの水冷装置を提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、非可撓性の冷却水導入パイプをエンジンに固定し、冷却水導入パイプのパイプ出口は、筒形弾性シールを間に挟んで、ポンプ入口パイプの外周に嵌合すると、ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプの接続箇所の外径寸法を小さくすることができることを発見し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)に例示するように、ウォータポンプ(1)と冷却水導入パイプ(2)を備え、ウォータポンプ(1)は、ポンプ本体(1a)とポンプ入口パイプ(1b)を備え、ポンプ入口パイプ(1b)はポンプ本体(1a)から導出され、図1(B),図3(A)(C)に例示するように、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)が嵌合された、エンジンの水冷装置において、
図1(A)に例示するように、筒形弾性シール(3)を備え、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、冷却水導入パイプ(2)は、非可撓性で、エンジンに固定され、図1(B),図3(A)に例示するように、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)は、筒形弾性シール(3)を間に挟んで、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、
図1(B),図3(A)に例示するように、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端(1c)側からポンプ本体(1a)側に嵌め込まれて、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されるように構成され、筒形弾性シール(3)のポンプ本体(1a)側の端部に指掛かり部(3b)が設けられている、ことを特徴とするエンジンの水冷装置。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプの接続箇所の外径寸法を小さくすることができる。
図1(A)に例示するように、筒形弾性シール(3)を備え、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、冷却水導入パイプ(2)は、非可撓性で、エンジンに固定され、図1(B),図3(A)に例示するように、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)は、筒形弾性シール(3)を間に挟んで、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されているので、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の外周に環状クランプを設ける必要がなくなり、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)の接続箇所の外径寸法を小さくすることができる。このため、上記接続箇所が周辺部品と干渉しにくい。
【0011】
《効果》 ポンプ入口パイプと冷却水導入パイプのパイプ出口の間のシール性が高い。
図1(B),図3(A)に例示するように、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)は、筒形弾性シール(3)を間に挟んで、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されているので、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の間のシール性が高い。
【0012】
《効果》 筒形弾性シールの装着作業が容易になる。
図1(A)(B),図3(A)に例示するように、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端(1c)側からポンプ本体(1a)側に嵌め込まれて、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されるように構成され、筒形弾性シール(3)のポンプ本体(1a)側の端部に指掛かり部(3b)が設けられているので、指掛かり部(3b)に指を掛けて、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端(1c)側からポンプ本体(1a)側に筒形弾性シール(3)を引っ張ることができ、ポンプ入口パイプ(1b)の外周への筒形弾性シール(3)の装着作業が容易になる。
【0013】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 筒形弾性シールと冷却水導入パイプのパイプ出口の間のシール性が高まる。
図1(B),図3(A)に例示するように、相互に嵌合する環状溝(3a)と環状突条(2b)を備え、筒形弾性シール(3)の外周と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の内周のうち、いずれか一方に環状溝(3a)が周方向に沿って形成され、他方に環状突条(2b)が周方向に沿って形成されているので、環状溝(3a)と環状突条(2b)の嵌合により、筒形弾性シール(3)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の間のシール性が高まる。
【0014】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ポンプ入口パイプと筒形弾性シールとの間のシール性が高まる。
図1(A)(B),図3(A)に例示するように、環状クランプ(4)を備え、環状クランプ(4)は、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の嵌合箇所(5)よりもポンプ本体(1a)側で、筒形弾性シール(3)の外周に嵌合されているので、ポンプ入口パイプ(1b)と筒形弾性シール(3)との間のシール性が高まる。
【0015】
《効果》 環状クランプの外径寸法を小さくすることができる。
図1(A)(B),図3(A)に例示するように、環状クランプ(4)は、筒形弾性シール(3)の外周に嵌合されているので、環状クランプ(4)の外径寸法を小さくすることができる。このため、環状クランプ(4)が周辺部品と干渉しにくい。
【0016】
【0017】
【0018】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ポンプ入口パイプの表面加工が不要になる。
ポンプ入口パイプ(1b)の外周表面には、鋳造時に形成された鋳肌が残されているので、ポンプ入口パイプ(1b)の表面加工が不要になる。
【0019】
《効果》 ポンプ入口パイプと筒形弾性シールの間のシール性に支障は生じない。
ポンプ入口パイプ(1b)の鋳肌の表面に筒形弾性シール(3)が密着するため、ポンプ入口パイプ(1b)と筒形弾性シール(3)の間のシール性に支障は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの水冷装置を説明する図で、図1(A)はウォータポンプと冷却水導入パイプの正面図、図1(B)はこれらの接続箇所周辺部分の縦断正面図である。
図2】本発明の実施形態で用いる筒形弾性シールと冷却水導入パイプのパイプ出口を説明する図で、図2(A)は筒形弾性シールの縦断正面図、図2(B)は図2(A)のB−B線断面図、図2(C)は筒形弾性シールの正面図、図2(D)はパイプ出口の縦断正面図である。
図3】本発明の実施形態と参考形態で用いる環状突条と筒形弾性シールの変形例を説明する図で、図3(A)は環状突条の変形例を用いた実施形態の図1(B)相当図、図3(B)は環状突状の変形例を用いたパイプ出口の図2(D)相当図、図3(C)は筒形弾性シールの変形例を用いた参考形態図1(B)相当図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジンの正面図である。
図5図4のエンジンの一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図5は本発明の実施形態に係るエンジンの水冷装置を説明する図で、この実施形態では、水冷の立形直列2気筒ディーゼルエンジンについて説明する。なお、図3(C)は筒形弾性シールの変形例を用いた参考形態である。
【0022】
実施形態について説明する。
このエンジンの概要は、次の通りである。
図4に示すように、クランク軸(8)の架設方向を前後方向、前後方向のうち、エンジン冷却ファン(9)のある側を前、フライホイール(10)のある側を後、図5に示すように、クランク軸(8)の架設方向と平行な向きに見て、水平なエンジンの幅方向を横方向とする。
図4図5に示すように、シリンダブロック(11)の上部にシリンダヘッド(12)が組み付けられ、シリンダヘッド(12)の上部にシリンダヘッドカバー(13)が組み付けられ、シリンダブロック(11)の前部にウォータポンプ(1)と調時伝動ケース(14)が組み付けられ、ウォータポンプ(1)の前部にエンジン冷却ファン(9)が取り付けられ、エンジン冷却ファン(9)の前方にラジエータ(15)が配置されている。
ウォータポンプ(1)とエンジン冷却ファン(9)は、ファン駆動ベルト(16)を介してクランク軸(8)で駆動される。エンジン冷却ファン(9)は、ポンプ入力プーリ(1d)に取り付けられている。
シリンダブロック(11)の下部にはオイルパン(17)が組み付けられている。
図4図5に示すように、シリンダヘッド(12)の横一側には吸気マニホルド(20)が組み付けられ、シリンダヘッド(12)の横他側には排気マニホルド(7)が組み付けられている。
【0023】
このエンジンは、水冷装置を備えている。
図4に示すように、シリンダヘッド(12)の前部にはサーモスタットケース(21)が組み付けられ、サーモスタットケース(21)にサーモスタット(22)が収容され、サーモスタットケース(21)にサーモスタットカバー(23)が組み付けられている。サーモスタット(22)はワックスペレットタイプのものである。
シリンダブロック(11)内とシリンダヘッド(12)内には、それぞれウォータジャケット(図示せず)が内設され、これらのウォータジャケットは上下方向で連通している。
【0024】
図4に示すように、サーモスタットカバー(3)は、ラジエータ入口ホース(18)を介してラジエータ(15)のアッパータンク(15a)に連通している。ラジエータ(15)のロアタンク(15b)は、ラジエータ出口ホース(19)を介してウォータポンプ(1)に連通している。
このため、暖機運転後、サーモスタット(22)が開弁すると、ウォータポンプ(1)の圧送力により、エンジン冷却水(6)は、ウォータポンプ(1)から、シリンダブロック(11)のウォータジャケット、シリンダヘッド(12)のウォータジャケット、サーモスタットケース(21)、サーモスタットカバー(23)、ラジエータ入口ホース(18)、ラジエータ(15)、ラジエータ出口ホース(19)を順に介して、ウォータポンプ(1)に戻る。
シリンダブロック(11)とシリンダヘッド(12)とサーモスタットケース(21)とウォータポンプ(1)のケーシングはいずれもアルミダイカスト製である。
【0025】
図1(A)に示すように、水冷装置は、ウォータポンプ(1)と冷却水導入パイプ(2)を備え、ウォータポンプ(1)は、ポンプ本体(1a)とポンプ入口パイプ(1b)を備え、ポンプ入口パイプ(1b)はポンプ本体(1a)から導出され、図1(B),図3(A)(C)に示すように、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)が嵌合されている。
【0026】
図1(A)に示すように、筒形弾性シール(3)を備え、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合され、冷却水導入パイプ(2)は、非可撓性で、エンジンに固定され、図1(B)に示すように、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)は、筒形弾性シール(3)を間に挟んで、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されている。
このため、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の外周に環状クランプを設ける必要がなくなり、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)の連結箇所の外径寸法を小さくすることができる。このため、連結箇所がポンプ入力プーリ(1d)やファン駆動ベルト(16)等の周辺部品と干渉しにくい。
また、筒形弾性シール(3)により、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の間のシール性が高い。
【0027】
筒形弾性シール(3)には、円筒形のゴムシールが用いられ、筒形弾性シール(3)は、弾性復元力で、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に摩擦固定されている。
冷却水導入パイプ(2)には、非可撓性の金属パイプが用いられている。冷却水導入パイプ(2)は、調時伝動ケース(14)にボルト(図示せず)で固定されている。冷却水導入パイプ(2)には、非可撓性の硬質樹脂パイプを用いてもよい。
【0028】
図1(B)に示すように、水冷装置は、相互に嵌合する環状溝(3a)と環状突条(2b)を備え、筒形弾性シール(3)の外周に環状溝(3a)が周方向に沿って形成され、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の内周に環状突条(2b)が周方向に沿って形成されている。
筒形弾性シール(3)の外周に環状突条(2b)を周方向に沿って形成し、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の内周に環状溝(3a)を周方向に沿って形成してもよい。
すなわち、筒形弾性シール(3)の外周と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の内周のうち、いずれか一方に環状溝(3a)が周方向に沿って形成され、他方に環状突条(2b)が周方向に沿って形成されていればよい。
このため、環状溝(3a)と環状突条(2b)の嵌合により、筒形弾性シール(3)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の間のシール性が高まる。
図2(A)〜(C)に示すように、環状溝(3a)は、筒形弾性シール(3)の軸長方向に複数本並設され、いずれかの環状溝(3a)と環状突条(2b)とを嵌合させる。
【0029】
図1(A)(B)に示すように、筒形弾性シール(3)は、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端側からポンプ本体(1a)側に嵌め込まれて、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に嵌合されるように構成され、筒形弾性シール(3)のポンプ本体(1a)側の端部に指掛かり部(3b)が設けられている。
このため、指掛かり部(3b)に指を掛けて、ポンプ入口パイプ(1b)の導出端側からポンプ本体(1a)側に筒形弾性シール(3)を引っ張ることができ、ポンプ入口パイプ(1b)の外周への筒形弾性シール(3)の装着作業が容易になる。
図2(A)〜(C)に示すように、指掛かり部(3b)は、円環状で、相互対向位置に一対設けられている。
【0030】
図1(A)(B)に示すように、水冷装置は、環状クランプ(4)を備え、環状クランプ(4)は、ポンプ入口パイプ(1b)と冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の嵌合箇所(5)よりもポンプ本体(1a)側で、筒形弾性シール(3)の外周に嵌合されている。
このため、ポンプ入口パイプ(1b)と筒形弾性シール(3)との間のシール性が高まる。
また、環状クランプ(4)の外径寸法を小さくすることができる。このため、環状クランプ(4)が周辺部品と干渉しにくい。
環状クランプ(4)には、筒形弾性シール(3)を外周から締め付けるベルトクランプが用いられている。
【0031】
図3(A)(B)に示す環状突条(2b)の変形例は、図1(B)に示す環状突条(2b)の基本例と次の点が異なる。
図1(B)に示す環状突条(2b)の基本例は、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の周壁を円弧状に内側に湾曲させて形成されているのに対し、図3(A)(B)に示す環状突条(2b)の変形例は、冷却水導入パイプ(2)のパイプ出口(2a)の周壁の内周のみを円弧状に内向きに隆起させて形成されている。
図3(A)に示すように、環状突条(2b)の変形例は、図1(B)に示すように、環状突条(2b)の基本例と同様にして用いられている。図3(A)(B)中、図1(B)と同一の要素には、同一の符号を付しておく。
【0032】
図3(C)に示す筒形弾性シール(3)の変形例は、図1(B)に示す筒形弾性シール(3)の基本例とは、次の点が異なる。この図3(C)に示す筒形弾性シール(3)を用いたものを参考形態とする。
図1(B)に示す筒形弾性シール(3)の基本例は、筒形弾性シール(3)の弾性復元力で、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に摩擦固定されているのに対し、図3(C)に示す筒形弾性シール(3)の変形例は、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に焼き付けで固着されている。
筒形弾性シール(3)の変形例としては、ポンプ入口パイプ(1b)の外周に接着剤で固着されているものであってもよい。
これらの場合、筒形弾性シール(3)の外周に環状クランプを設ける必要がない。
【0033】
ポンプ入口パイプ(1b)の外周表面には、鋳造時に形成された鋳肌が残されている。
このため、ポンプ入口パイプ(1b)の表面加工が不要になる。
なお、ポンプ入口パイプ(1b)の鋳肌の表面に筒形弾性シール(3)が密着するため、ポンプ入口パイプ(1b)と筒形弾性シール(3)の間のシール性に支障は生じない。
ウォータポンプ(1)のケーシングとポンプ入口パイプ(1b)とはアルミダイカストの一体鋳造品である。
【符号の説明】
【0034】
(1) ウォータポンプ
(1a) ポンプ本体
(1b) ポンプ入口パイプ
(1c) 導出端
(2) 冷却水導入パイプ
(2a) パイプ出口
(2b) 環状突条
(3) 筒形弾性シール
(3a) 環状溝
(3b) 指掛かり部
(4) 環状クランプ
(5) 嵌合箇所
図1
図2
図3
図4
図5