(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378657
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】インサート成形されたテザー付きファスナ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20180813BHJP
【FI】
B60R21/2338
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-176269(P2015-176269)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-55864(P2016-55864A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】14/480,953
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン マイケル ベネデッティ
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−241038(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0235919(US,A1)
【文献】
米国特許第07454826(US,B2)
【文献】
特開2014−122030(JP,A)
【文献】
米国特許第08480120(US,B1)
【文献】
特開2009−029328(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/018265(WO,A1)
【文献】
米国特許第08844992(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
F16B 19/00
B60R 13/02
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナであって、
関連する車両の車体部分の開口部に結合するための外方に突出したバネアームを含む金属クリップと、
前記金属クリップを保持するためのクリップロック用突起と、切離し可能ファスナとを有する、第1の熱可塑性コネクタと、
前記車両の関連するトリムパネルに結合するためのパネルロック用突起と、協働する切離し可能ファスナとを有する、第2の熱可塑性コネクタと、
前記第1及び第2の熱可塑性コネクタ間に延びる、両端がそれぞれ前記第1及び第2の熱可塑性コネクタと継ぎ目なしに一体化された熱可塑性テザーと、
を含み、
前記第1及び第2の熱可塑性コネクタは、第1の材料で形成され、前記熱可塑性テザーは、第1の材料とは異なる第2の材料で形成され、
関連するエアバッグが展開されたとき、前記外方に突出したバネアームが、前記金属クリップを関連する自動車車体部分の前記開口部内に保持し、前記クリップロック用突起が、前記金属クリップを前記第1の熱可塑性コネクタ上に保持し、前記パネルロック用突起が、前記関連するトリムパネルを前記第2の熱可塑性コネクタ上に保持し、前記切離し可能締結コネクタが、前記協働する切離し可能ファスナから切離されて、前記第1及び第2の熱可塑性コネクタが互いに離れるように移動して前記テザーが伸長するのを可能にする、
ことを特徴とする、動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項2】
前記第1の材料は、前記第2の熱可塑性材料が織物熱可塑性材料である点で前記第2の材料と異なり、又は前記第2の熱可塑性材料が前記第1の熱可塑性材料とは異なる化合物である点で前記第2の材料と異なることを特徴とする、請求項1に記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項3】
前記第2の材料がナイロン材料であり、随意に、前記第1の材料がナイロン12及びHytrel(登録商標)からなる群から選択され、前記第2の材料がナイロン6及びナイロン6−6から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性コネクタが、ケージ部分を含み、前記ケージ部分が、それぞれ第1及び第2の外面を有する第1及び第2のフランジを含み、前記熱可塑性テザーが、前記第1及び第2のフランジに巻き付き、前記熱可塑性テザーが前記第1及び第2の外面に隣接するようになっていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項5】
前記ケージ部分が、第3及び第4のフランジをさらに含み、前記第1及び第3のフランジが第1のケージ部分を定め、前記第2及び第4のフランジが第2のケージ部分を定めることを特徴とする、請求項4に記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項6】
前記ケージ部分が、第1の脚部及び第2の脚部を含み、前記第1のフランジが前記第1の脚部によって維持され、前記第2のフランジが前記第2の脚部によって支持され、前記第1及び第2の脚部がそれらの間に空隙を定めることを特徴とする、請求項4〜請求項5のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項7】
前記ケージ部分が第3及び第4のフランジをさらに含み、前記第2の熱可塑性コネクタは、前記第1の熱可塑性コネクタに結合されるとき、前記第3及び第4のフランジの間に配置されることを特徴とする、請求項4〜請求項6のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項8】
前記熱可塑性テザーがコイル状の構成を定めることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項9】
前記熱可塑性テザーがアコーディオン形の構成を定めることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項10】
関連するエアバッグの展開前、前記熱可塑性テザーを折り畳まれた構成に固定するステッチ部分をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の動力車両のエアバッグ式乗員拘束システム用ファスナ。
【請求項11】
テザー付きファスナ組立体を製造する方法であって、
金型のいずれの型キャビティからも独立して可撓性テザーの長さを選択するステップと、
前記可撓性テザーの第1の端部を前記金型の第1の型キャビティに挿入するステップと、
前記可撓性テザーの前記第1の端部の反対側の第2の端部を前記金型の第2の型キャビティに挿入するステップと、
前記第1の型キャビティ内で前記可撓性テザーの前記第1の端部のまわりにトリムパネルコネクタを成形し、前記可撓性テザーが前記第1のトリムパネルコネクタに一体結合するようにするステップと、
前記第2の型キャビティ内で前記可撓性テザーの前記第2の端部のまわりに車体コネクタを成形し、前記可撓性テザーが前記第1の車体コネクタに一体結合するようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
第1の可撓性テザーの第1の長さを選択し、前記第1の可撓性テザーの第1の端部を前記第1の型キャビティに挿入し、前記第1の可撓性テザーの第2の端部を前記第2の型キャビティに挿入し、前記トリムパネルコネクタを前記第1の可撓性テザーの前記第1の端部のまわりに成形し、前記車体コネクタを前記第1の可撓性テザーの前記第2の端部のまわりに成形するステップと、
前記第1の長さとは異なる第2の可撓性テザーの第2の長さを選択し、前記第2の可撓性テザーの第1の端部を前記第1の型キャビティに挿入し、前記第2の可撓性テザーの第2の端部を前記第2の型キャビティに挿入し、前記トリムパネルコネクタを前記第2の可撓性テザーの前記第1の端部のまわりに成形し、前記車体コネクタを前記第2の可撓性テザーの前記第2の端部のまわりに成形するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トリムパネルコネクタ及び前記車体コネクタを成形するステップが、前記トリムパネルコネクタ及び前記車体コネクタを第1の選択された熱可塑性材料から成形することをさらに含み、前記可撓性テザーの前記第1及び第2の端部を挿入するステップが、第2の熱可塑性材料を含む前記可撓性テザーの前記第1及び第2の端部を挿入することをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記トリムパネルコネクタ及び前記車体コネクタを成形するステップが、前記トリムパネルコネクタ及び前記車体コネクタを第1の選択された熱可塑性材料から成形することをさらに含み、前記可撓性テザーの前記第1及び第2の端部を挿入するステップが、第2の織物熱可塑性材料を含む前記可撓性テザーの前記第1及び第2の端部を挿入することをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記可撓性テザーの前記第1及び第2の端部を挿入するステップが、平坦な可撓性テザーを挿入することを含み、前記可撓性テザーをアコーディオン形に折り畳むことをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記可撓性テザーの第1の部分を前記可撓性テザーの第2の部分に縫い付けるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記車体コネクタを成形するステップが、切離し可能ファスナを成形することをさらに含み、前記トリムパネルコネクタを成形するステップが、協働する切離し可能ファスナを成形することを含み、前記方法が、前記切離し可能ファスナを前記協働する切離し可能ファスナに結合するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記車体コネクタを成形するステップが、クリップロック用突起を成形することを含み、前記トリムパネルコネクタを成形するステップが、パネルロック用突起を成形することを含むことを特徴とする、請求項11〜請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記車体コネクタを金属クリップに結合するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記トリムパネルコネクタを成形するステップが、凸状の外面を有する第1のフランジを成形することを含み、
前記可撓性テザーを、前記可撓性テザーが前記外面に隣接するように前記第1のフランジに巻き付けること
を特徴とする請求項11〜請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記熱可塑性テザーをアコーディオン構成に配置するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜請求項20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両において、車両の構成要素を接合し、乗員拘束システムの展開の際における車両の構成要素の切離しを制御するために用いられるファスナ、並びに関連する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この節は、本開示に関連する背景情報を提供するものであり、必ずしも先行技術ではない。
【0003】
クリップ及びファスナを用いて、トリムパネルその他の構成要素(例えば外装モールディング、ミラー、計器板、等)を自動車その他の車両の車体部分に対して保持することができる。幾つかの例において、このファスナは、車体部分からのトリムパネルの切離しすなわち離脱を制御するテザーを含むものとすることができる。例えば、万一、エアバッグ又は他の乗員拘束システムが展開された場合には、トリムパネルを車体部分から離脱させることができる。テザーは、車体部分に対するトリムパネルの動き(例えば、距離、方向、速度、等)の制御を補助することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,454,826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知のファスナは、特定の用途に合わせて設計されている。このことは、たとえテザーの長さの単純な変更に適合するためであっても、複雑な新しい金型を作製しなければならないことを意味する。同じ金型を複数の用途に使用することを可能にする新規なファスナ設計及び製造方法を提供することが望ましい。ファスナ端部の材料とは異なる材料又は特性のテザーを提供することもまた望ましい場合がある。さらに、車両内での収納及び空間的制限のために、通常のファスナ設計の機能は限られたものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この節は、開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲又はその特徴の全ての網羅的な開示ではない。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、動力車両エアバッグ式乗員拘束システム用のファスナは、金属クリップと、第1の熱可塑性コネクタと、第2の熱可塑性コネクタと、熱可塑性テザーとを含む。金属クリップは、関連する自動車車体部分の開口部に結合するための、外方に突出したバネアームを含む。第1の熱可塑性コネクタは、クリップロック用突起と、切離し可能な締結コネクタとを含む。クリップロック用突起は、金属クリップを第1の熱可塑性プラスチックコネクタ上に保持する。第2の熱可塑性コネクタは、パネルロック用突起と、協働する切離し可能ファスナとを含む。パネルロック用突起は、第2の熱可塑性コネクタを自動車の関連するトリムパネルに結合する。熱可塑性テザーは、第1及び第2の熱可塑性コネクタ間に延びる。熱可塑性テザーの両端は、それぞれ第1及び第2の熱可塑性コネクタと継ぎ目なしに一体化されている。第1及び第2の熱可塑性コネクタは第1の材料で形成され、熱可塑性テザーは、第1の材料とは異なる第2の材料で形成される。関連するエアバッグが展開されたとき、外方に突出したバネアームが関連する自動車車体部分の開口部内に金属クリップを保持する。クリップロック用突起は、金属クリップを第1の熱可塑性コネクタ上に保持する。パネルロック用突起は、関連するトリムパネルを第2の熱可塑性コネクタ上に保持する。切離し可能な締結コネクタは、協働する切離し可能ファスナから切離されて、第1及び第2の熱可塑性コネクタが互いに離れるように移動してテザーが伸長するのを可能にする。
【0008】
本開示の別の態様によれば、テザー付きファスナ組立体を製造する方法が提供される。この方法は、金型のいずれの型キャビティによっても規定されない可撓性テザーの長さを選択することを含む。この方法はまた、可撓性テザーの第1の端部を金型の第1の型キャビティに挿入することを含む。この方法は、可撓性テザーの第1の端部の反対側の第2の端部を金型の第2の型キャビティに挿入することをさらに含む。さらに、この方法は、第1の型キャビティ内で可撓性テザーの第1の端部のまわりにトリムパネルコネクタを成形し、可撓性テザーが第1のトリムパネルコネクタに一体結合するようにすることを含む。この方法はまた、第2の型キャビティ内で可撓性テザーの第2の端部のまわりに車体コネクタを成形し、可撓性テザーが第1の車体コネクタに一体結合されるようにすることを含む。
【0009】
適用可能なさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになる。この概要における説明及び特定の例は、例証のみを目的とすることを意図したものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0010】
ここで記載される図面は、全ての可能な実現例ではなく、選択された実施形態のみを例証するためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の原理による、組み立てられた、インサート成形されたテザー付きファスナの斜視図である。
【
図2】車両の構成要素部品と接合されたときの、
図1のインサート成形されたテザー付きファスナの側面図である。
【
図3】部分的に組み立てられた構成の、
図1のインサート成形されたテザー付きファスナの上面側面図である。
【
図4】部分的に組み立てられた構成の、
図1のインサート成形されたテザー付きファスナの下面側面図である。
【
図5】本開示の原理による、別の、組み立てられた、インサート成形されたテザー付きファスナの斜視図である。
【
図6】部分的に組み立てられた構成の、
図5のインサート成形されたテザー付きファスナの上面図である。
【
図7】
図1のインサート成形されたテザー付きファスナの製造のための金型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面中の幾つかの図を通じて、対応する参照符号は、対応する部分を示す。
【0013】
以下、例示的な実施形態を添付図面を参照してより詳細に説明する。
図1〜
図4を参照すると、本開示により構成されるテザー付きファスナ組立体が示されており、参照符号10で表示されている。
図2に示すように、テザー付きファスナ組立体10は、自動車(図示せず)又は他の同様の車両において第1の構成要素12を第2の構成要素14に接合するために用いることができる。1つの例示的な使用によれば、第1の構成要素12はトリムパネルであり、第2の構成要素14は自動車の車体部分である。しかしながら、本教示は自動車における種々の構成要素の接合に適合させることができることが認識されるであろう。
【0014】
テザー付きファスナ組立体10は、第1のコネクタ16、第2のコネクタ18、テザー20、及びクリップ22を含む。より詳細に後述するように、テザー付きファスナ組立体10は、少なくとも部分的に成形法によって形成することができる。この点に関して、第1及び/又は第2のコネクタ16、18は、射出成形法で、テザー20の少なくとも一部を覆って、又は少なくともその一部の上にインサート成形することができる。
【0015】
第1のコネクタ16は、軸線26に沿って近位端28から遠位端30まで長手方向に延びる。上述のように、及びより詳細に後述するように、近位端28はテザー20に結合される。この点に関して、第1のコネクタ16は、テザー20の一部を覆うように成形される第1の材料で形成することができる。第1の材料は、第1の化合物を有する熱可塑性樹脂材料とすることができる。幾つかの構成において、第1のコネクタ16の第1の材料は、例えば、ナイロン12、Hytrel(登録商標)、又はナイロン6−6とすることができる。
【0016】
第1のコネクタ16は、土台部分32及び本体部分34を含む。土台部分32は、近位端及び遠位端28、30から、それらの間に延び、突起又はロック部分36を含む。ロック部分36は、遠位端30の近くに配置され、土台部分32の第1の面又は下面38(
図3の視点で)から軸線26に対して実質的に垂直方向に延びる。組み立てられた構成において、ロック部分36は、第1のコネクタ16を第1の構成要素12にロックする又はその他の方法で固定することができる。この点に関して、第1のロック部分36は、
図2に示すように、第1のコネクタ16をトリムパネル12のドッグハウス部分37に又はその中にロックすることができる。
【0017】
本体部分34は、土台部分32と一体に及びモノリシックに形成することができ、基部39、フランジ又はリップ40、及び第1の切離し可能ファスナ又は締結部分42を含むことができる。基部39は、近位端28から軸線26に沿って延び、さらに土台部分32の下面38から軸線26に対して実質的に垂直方向に延びる。リップ40は、基部39の外周のまわりに形成され、リップ40と土台部分32とがそれらの間にチャネルを定めるようになっている。第1の締結部分42は、ポスト又はステム42aを含むことができる。ステム42aは、基部39の第1の面又は下面46(
図3の視点で)から軸線26に対して実質的に垂直方向に延びる。
【0018】
第2のコネクタ18は、タング部分48及びケージ部分50を含む。タング部分48は、軸線52に沿って遠位端54から近位端56まで延び、突起又はロック部分58、及び第2の切離し可能ファスナ又は締結部分60を含む。上述のように、及びより詳細に後述するように、タング部分48の遠位端54は、テザー20に結合することができる。この点に関して、第2のコネクタ18は、テザー20の一部を覆って成形される第2の材料で形成することができる。第2の材料は、第2の化合物を有する熱可塑性材料とすることができる。幾つかの構成において、第2の材料は、第1の材料と同じものとすることができる。幾つかの構成において、第2のコネクタ18の第2の材料は、例えば、ナイロン12、Hytrel(登録商標)、又はナイロン6−6とすることができる。
図2及び
図3を参照すると、ロック部分58は近位端56の近くに配置され、タング部分48の第1の面又は上面62を越えて又はその他の方式でそこからオフセットして、軸線52に対して実質的に垂直方向に延びる。より詳細に後述するように、組み立てられた構成において、ロック部分58は、クリップ22を第2のコネクタ18に対して固定するか又はその他の方法で保持することができる。第2の締結部分60は、タング部分48の近位端及び遠位端56、54の間に配置された開口部60aを含むことができる。
【0019】
ケージ部分50は、近位端部分68及び遠位端部分70を含むラケット形の輪郭を定めることができる。遠位端部分70は、タング部分48の遠位端54に結合し、軸線52に沿って長手方向に延びる。この点に関して、ケージ部分50は、タング部分48と一体に及びモノリシックに形成することができる。
【0020】
遠位端部分70は、基部72と、第1の壁又はフランジ74と、第2の壁又はフランジ76とを含む。基部72は、タング部分48の上面62に対して実質的に平行に延びる平面内に実質的に矩形を定める。この点に関して、
図4に示すように、基部72は、軸線52に対して実質的に平行な方向に延びる第1の側縁部78と、軸線52に対して実質的に平行な方向に延びる、第1の側縁部に対向する第2の側縁部80とを含む。
【0021】
第1のフランジ74は基部72の第1の側縁部78から軸線52に対して実質的に垂直な方向に延びる。第2のフランジ76は基部72の第2の側縁部80から軸線52に対して実質的に垂直な方向に延びる。この点に関して、第1のフランジ74は、第2のフランジ76に対して実質的に平行にすることができ、第1及び第2のフランジ74、76がそれらの間に空間又は空隙84を定めるようになっている。空隙84は、実質的に立方体又は直角平行六面体の形状を有することができる。
【0022】
近位部分68は、第1の脚部86及び第2の脚部88を含む。第1及び第2の脚部86、88は、実質的にフォーク形の構造を定める。第1の脚部86は、第2の脚部88と実質的に相似とすることができる。従って、特段の断りのない限り、本明細書における第1の脚部86に対する言及は、第1及び第2の脚部86、88の両方を含むものと理解され、同様の参照符号は、同様の特徴及び構成要素を記述するために用いられる。
【0023】
第1の脚部86は、基部92と、第1の(若しくは内側の)壁又はフランジ94と、第2の(若しくは外側の)壁又はフランジ96とを含む。
図3及び
図4に示すように、第1の脚部86の基部92は、遠位端部分70の基部72から延びてこれと一体に形成され、第1の又は内側縁部98と、第2の又は外側縁部100と、テザー保持構造部102とを含む。内側縁部98は、軸線52に対して実質的に平行な方向に延びており、第1の脚部86の内側縁部98と第2の脚部88の内側縁部98とが、実質的に矩形の形状又は輪郭を有する空隙104(
図4)を定めるようになっている。外側縁部100は弓形に延びており、第1の脚部86の外側縁部100と第2の脚部88の外側縁部100とが円の一部を定めるようになっている。テザー保持構造部102は、外側フランジ96の上部又は縁部(
図1の視点に対して)から延びる戻り止め108を含む。
【0024】
図1及び
図3に示すように、内側フランジ94は、基部92から延びており、第1の端部110と、第2の端部112と、外面114とを含む。第1及び第2の端部110、112は、基部92の内側縁部98と位置合わせすることができる。内側フランジ94は、円の一部を定めることができる。この点に関して、外面114は、基部92から基部92に対して実質的に垂直な方向に延びることができ、凸輪郭を定めることができる。第1の脚部86の内側フランジ94の外面114は、第2の脚部88の内側フランジ94の外面114と同心とすることができる。
【0025】
図1及び
図3を参照すると、外側フランジ96は、基部92から延びており、第1の端部118と、第2の端部120と、内面122と、外面124とを含む。第1の端部118は、遠位端部分70の第1のフランジ74に隣接するか又はその他の方法で第1のフランジ74と一体に形成することができる。第1の脚部86の外側フランジ96の第2の端部120と第2の脚部88の外側フランジ96の第2の端部120とが、それらの間に空隙又は隙間125を定める。外側フランジ96は、円の一部を定めることができ、外側フランジ96が内側フランジ94の外面114と同心になっている。この点に関して、外側フランジ96の内面122は、凹輪郭を含み、外側フランジ96の外面124は、凸輪郭を含む。内側フランジ94の外面114及び外側フランジ96の内面122は、それらの間に空隙又はケージ126を定め、これは第1の脚部86に位置合わせされた第1のケージ部分126a及び第2の脚部88に位置合わせされた第2のケージ部分126bを含む。
【0026】
テザー20は、第1の端部130及び第2の端部132からそれらの間に延びる可撓性部材とすることができる。幾つかの構成において、テザー20は、コード、紐又はロープを含むことができる(
図1〜
図4)。他の構成において、テザー20aは、ストラップ、バンド又は他の実質的に平坦なテザーを含むことができる(
図5〜
図6)。この点に関して、テザー20は、第1及び第2のコネクタ16、18のそれぞれ第1及び第2の材料とは異なる第3の材料から形成することができる。第3の材料は、例えば織物熱可塑性材料のような熱可塑性材料、又は第1及び第2の化合物とは異なる第3の化合物を有する他の熱可塑性材料とすることができる。幾つかの構成において、第3の材料は、ナイロンを含むことができる。他の構成において、テザー20の3の材料は、例えば、ナイロン6又はナイロン6−6を含むことができる。
【0027】
クリップ22は、第2のコネクタ18に結合されるか、又はその他の方法で第2のコネクタ18によって支持することができる。
図1に示すように、幾つかの構成において、クリップ22は、トング部分48に結合させることができ、クリップ22がロック部分58とケージ部分50との間に固定されるか又はその他の方法で配置されるようになっている。クリップ22は、一対の対向する外方に突出したアーム134を含むことができる。クリップ22は、弾性又は可撓性の材料から形成することができ、アーム134がクリップ22に対して付勢されることができるようになっている。この点に関して、クリップ22は、例えば、ばね鋼又は鋼合金のような金属材料で形成することができる。
図2に示すように、アーム134は、その遠位端に止め面136を含む。より詳細に後述するように、組み立てられた構成において、止め面136は、第2の構成要素14に当接して、クリップ22及び第2のコネクタ18を第2の構成要素に固定する。クリップの種々の構成及び機能を含めたクリップ22のさらなる考察は、引用によりその全体が本明細書に組み入れられる「Method of Manufacturing Multiple Engagement Joint Tethered Fastener」と題する同一出願人の特許文献1に見いだすことができる。
【0028】
第1のテザー付きファスナ組立体10の製造方法は、第1のコネクタ16を成形するための第1の型キャビティ142と第2のコネクタ18を成形するための第2の型キャビティ144とを有する金型140を準備することを含むことができる。金型140は、射出又はインサート成形法に適したものとすることができる。ユーザは、第1の長さを有する第1のテザー20を選択することができる。第1の長さは、金型140からも、第1及び第2の型キャビティ142、144のどちらからも独立しており、また、その他の方法でそれらによって規定されることもない。第1のテザー20の第1の端部130を第1の型キャビティ142内に配置して固定することができ、第1のテザー20の第2の端部132を第2の型キャビティ144内に配置して固定することができる。次に射出成形法を用いて、第1の長さを有する第1のテザー20を含むテザー付きファスナ組立体10を形成することができる。この点に関して、第1及び第2のコネクタ16、18のそれぞれ第1及び第2の材料を、第1の長さを有する第1のテザー20の第1及び第2の端部130、132を覆うようにインサート成形することができる。詳細には、第1のコネクタ16の近位端28を、第1のテザー20の第1の端部130を覆うように成形することができ、ケージ部分50の遠位端部分70を、第1のテザー20の第2の端部132を覆うように成形して、第1のテザー20が遠位端部分70から空隙104を通って延びるようにすることができる。この点に関して、テザー20の第1の端部130は、第1のコネクタ16と継ぎ目なしに一体化することができ、テザー20の第2の端部132は、第2のコネクタ18と継ぎ目なしに一体化することができる。
【0029】
第1及び/又は第2のコネクタ16、18をテザー20の第1及び/又は第2の端部130、132を覆うように成形することにより、ユーザは、上述の成形工程を完了する前にテザー20の長さを予め選択する又はその他の方法でカスタマイズすることができる。従って、第2のテザー付きファスナ組立体10の製造方法は、第1の型キャビティ142及び第2の型キャビティ144を有する金型140を準備することを含むことができる。ユーザは、第1のテザー20の第1の長さよりも長い又は短い第2の長さを有する第2のテザー20を選択することができる。第2のテザー20の第1の端部130を第1の型キャビティ142内に配置して固定することができ、第2のテザー20の第2の端部132を第2の型キャビティ144内に配置して固定することができる。次に射出成形法を用いて、第2の長さを有する第2のテザー20を含む第2のテザー付きファスナ組立体10を形成することができる。このように、第1の長さを有する第1のテザー20を含む第1のテザー付きファスナ組立体10と、第2の長さを有する第2のテザー20を含む第2のテザー付きファスナ組立体10とを、同じ金型140で製造することができる。
【0030】
組み立てられた構成で
図1に示すように、テザー20は、ケージ126内に配置することができ、テザー付きファスナ組立体10が、組み立てられた構成においてコンパクトな又はその他の小型の形状を呈することを可能にする。この点に関して、テザー20は、第1及び第2の脚部86、88の内側フランジ94にコイル状に又はその他の方式で巻き付けることができ、テザー20が第1及び第2の脚部86、88の内側及び外側フランジ94、96の間に配置されるようになっている。
【0031】
第1のコネクタ16を第1及び第2のフランジ74、76の間に配置して、テザー20の第1の端部130がテザー20の第2の端部132に実質的に位置合わせされるようにすることができる。第1のコネクタ16の第1の締結部分42を、第2のコネクタ18の第2の締結部分60に結合させることができる。従って、第2の締結部分60は、本明細書において、協働する切離し可能ファスナ又は協働する締結部分60と呼ぶことができる。この点に関して、ステム42aを第2のコネクタ18の開口部60a内に配置して、第1のコネクタ16を第2のコネクタ18に固定することができる。
【0032】
図2に示すように、組み立てられた構成において、第1のコネクタ16は、自動車の第1の構成要素12又はトリムパネル部分に結合することができる。この点に関して、第1のコネクタ16を本明細書においてトリムパネルコネクタ16と呼ぶことができる。クリップ22を含む第2のコネクタ18は、自動車の第2の構成要素14又は車体部分に結合することができる。この点に関して、第2のコネクタ18を本明細書において車体コネクタ18と呼ぶことができる。クリップ22は、第2の構成要素14の開口部150内に配置され、アーム134が第2の構成要素14の第1の側152上に配置され、第2のコネクタ18が第2の構成要素14の第2の側154上に配置されるようにすることができる。この点に関して、止め面136は、第2の構成要素14の第1の側152に当接して、クリップ22を開口部150内に保持することができる。
【0033】
エアバッグ又は他の補助的な拘束システムの展開中に、第1のコネクタ16の第1の締結部分42は、第2のコネクタ18の第2の締結部分60から離脱することができ、第2の構成要素14が第1の構成要素12から離脱してそこから離れるように移動することを可能にする。この点に関して、アーム134がクリップ22を第2の構成要素14に固定することができ、ロック部分58がクリップ22を第2のコネクタ18に固定することができる。第2の構成要素14が第1の構成要素12から離れるように移動するにつれて、テザー20は、第2のコネクタのケージ部分50から巻戻され又は解かれることによって延びることができ、その結果、テザー20は、エアバッグの展開中の第2の構成要素14に対する第1の構成要素12の運動(例えば、移動の距離及び方向、速度、加速、等)を制御するために第2の構成要素14の運動エネルギーを吸収することができるようになっている。
【0034】
図5及び
図6を参照すると、テザー付きファスナ組立体10aの別の構成が示されている。テザー付きファスナ組立体10aの構造、機能及び製造方法は、以下で説明する及び/又は図面に示される例外は別にして、テザー付きファスナ組立体10のそれと一般に同様である。従って、テザー付きファスナ組立体10aの構造、機能及び/又は製造方法をここではテザー付きファスナ組立体10と比べた違いに関してのみ説明する。さらに、同様の参照符号は、以後及び図中で同様の構成要素を識別するために用いられ、他方、添え字を含む同様の参照符号は、改変された構成要素を識別するために用いられる。
【0035】
テザー付きファスナ組立体10aは、第1の部分150と、第2の部分152と、第3の部分154とを有するテザー20aを含む。テザー20aは、本開示の範囲内で、3つの部分150、152、154より多い又は少ない部分を含むことができることもまた認識されるであろう。組み立てられた構成において、第1、第2及び/又は第3の部分150、152、154の少なくとも一部は、別の第1、第2及び/又は第3の部分150、152、154の少なくとも一部の上に重なることができる。この点に関して、テザー20aは、
図5に示すように、重ねられ又は折り畳まれてアコーディオン状の構成にすることができる。ステッチ138、接着剤、又はその他の類似の締結技術を用いて、テザー20aを
図5に示す構成に保持することができ、その結果、第1、第2及び/又は第3の部分150、152、154が少なくとも1つの別の第1、第2及び第3の部分150、152、154の上に固定されるようになっている。
【0036】
エアバッグ又は他の補助的な拘束システムの展開中に、第2の構成要素14は、上述のように、第1の構成要素12から離脱してそこから離れるように移動することができる。第2の構成要素14が1の構成要素12から離れるように移動するにつれて、第1、第2及び/又は第3の部分150、152、154は、少なくとも1つの別の第1、第2及び第3の部分150、152、154から分離することができる。この点に関して、ステッチ138は裂けることができ、それゆえ、少なくとも1つの部分150、152、154が少なくとも別の部分150、152、154から分離することが可能になり、その結果、テザー20aは、エアバッグの展開中の第2の構成要素14に対する第1の構成要素12の運動(例えば、移動の距離及び方向、速度、加速、等)を制御するために第2の構成要素14の運動エネルギーを吸収することができるようになっている。第2の構成要素14のエネルギーを吸収することにより、テザー20aは、展開事象中の第1及び/又は第2の構成要素12、14の構造的一体性を保証することを補助し、それらの破壊又はその他の損傷を防ぐことができる。
【0037】
この開示が十分なものとなるように、及び当業者にその範囲を完全に伝えるように、例示的な実施形態が提供される。本開示の実施形態の完全な理解をもたらすために、特定の構成要素、装置、及び方法の例などの多数の具体的な詳細を示す。当業者には、具体的な詳細を必ずしも使用する必要はないこと、例示的な実施形態は多くの異なる形態で具体化することができること、及び、いずれも開示の範囲を限定するものと解釈すべきではないことが明らかであろう。幾つかの例示的実施形態において、周知の方法、周知の装置構造、及び周知の技術は、詳細には説明していない。
【0038】
本明細書において用いられた用語は、特定の例示的実施形態を記述する目的のみのためのものであり、限定を意図しない。本明細書で説明した方法ステップ、工程、及び動作は、実行順序に特段の断りのない限り、それらの実行を、論じた又は例証した特定の順序で必ず行う必要があると解釈すべきではない。付加的又は代替的なステップを使用することもできることも理解されたい。
【0039】
第1、第2、第3、等の用語は、本明細書において種々の要素、構成要素、領域、層及び/又は区画を説明するために用いられている場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層及び/又は区画は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は単に、1つの要素、構成要素、領域、層又は区画を別の領域、層又は区画と区別するために用いることができる。「第1」、「第2」及びその他の数の用語のような用語は、本明細書において用いられるとき、文脈により明らかに示されていない限り、シーケンス又は順序を含意しない。それゆえ、以下で論じる第1の要素、構成要素、領域、層又は区画は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく第2の要素、構成要素、領域、層又は区画と名付けることができる。
【符号の説明】
【0040】
10、10a:テザー付きファスナ組立体
12:第1の構成要素(トリムパネル)
14:第2の構成要素(車体部分)
16:第1のコネクタ
18:第2のコネクタ
20、20a:テザー
22:クリップ
26、52:軸線
28:第1の構成要素の近位端
30:第1の構成要素の遠位端
32:土台部分
36:クリップロック用突起
48:タング部分
50:ケージ部分
54:タング部の遠位端
56:タング部の近位端
58:パネルロック用突起
42、60:切離し可能ファスナ
68:ケージ部分の近位端部分
70:ケージ部分の遠位端部分
74、76:遠位端部分のフランジ
84、104:空隙
86、88:脚部
94:内側フランジ
96:外側フランジ
108:戻り止め
114:内側フランジの外面
124:外側フランジの外面
126:ケージ
130:テザーの第1の端部
132:テザーの第2の端部
134:アーム
136:止め面
140:金型
142:第1の型キャビティ
144:第2の型キャビティ