(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シリンジポンプにシリンジを装着する際、上述のように解除レバーを操作してハーフナットを送りねじから一旦離してピストン押圧部の位置調整を行った後、ハーフナットを送りねじに噛み合わせる。ところが、送りねじとハーフナットとのねじ部分が台形ねじとなっているので、送りねじとハーフナットとの軸方向の位置関係によっては、送りねじとハーフナットのねじ山頂部の平坦面同士が当接して一方のねじ山が他方のねじ溝に入らない状態、即ち、噛み合い不良が発生することがある。この噛み合い不良の発生頻度を低下させるため、ねじ山の形状を特許文献1に開示されているように工夫することも考えられるが、台形ねじとしている以上、ねじ山頂部の平坦面同士の当接は一定の確率で起こってしまう。
【0008】
噛み合い不良が起こった場合には、警報によって使用者に報知することや、注入回避機能が働いて注入が行われないようにしている。噛み合い不良の原因としては、ねじ山の頂部の平坦面同士の当接による軽微な原因の場合が大部分を占めており、ねじの損傷等による重大なものは少ない。
【0009】
しかしながら、どのような原因によるものであっても、使用者は噛み合い不良の対応処置を行わなければならず、煩雑であるとともに、操作性の悪いシリンジポンプであると判断されてしまう。
【0010】
また、使用者が、噛み合い不良が発生しているのに気付かずに投与開始操作を行った場合、投与を開始したつもりが実際には投与が行われていないという事態が発生し、この場合、投与不足を引き起こす。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送りねじとハーフナットとの噛み合い不良原因のうち、軽微なものはその原因を自動的に取り除いて噛み合い不良の発生頻度を低下させ、もって、使用者の操作性を良好にするとともに、投与不足が起こらないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、シリンジが装着された場合に送りねじを回転させることによってねじ山の頂部の平坦面同士の当接を解消してねじ山を相手側のねじ溝に嵌めることができるようにした。
【0013】
第1の発明は、液体が充填されたシリンジのピストンを押圧するピストン押圧部と、
上記ピストン押圧部を駆動する駆動機構と、
上記駆動機構を制御する制御装置とを備えたシリンジポンプにおいて、
上記駆動機構は、送りねじと、該送りねじを回転させるモーターと、上記送りねじに噛み合うハーフナットと、該ハーフナットを、上記送りねじに噛み合った状態と上記送りねじから離れた状態とに切り替えるための切替部材とを備え、
上記制御装置は、シリンジが装着されているか否かを検出するシリンジ装着状態検出手段と、上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っているか否かを検出するための噛み合い状態検出手段とを備え、該シリンジ装着状態検出手段によりシリンジが装着されていることが検出された場合、かつ、該噛み合い状態検出手段により上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っていないと検出された場合に、上記ピストン押圧部が上記ピストンを押圧する方向へ移動するように上記モーターを回転させるモーター駆動制御を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、駆動機構の切替部材によってハーフナットが送りねじから離れた状態にすることで、ピストン押圧部を送りねじによらず自由に動かすことが可能になる。例えば装着するシリンジに合うようにピストン押圧部の位置調整を行った後に、切替部材によってハーフナットを送りねじに噛み合った状態にしようとしたとき、ハーフナットと送りねじのねじ山頂部の平坦面同士が当接してハーフナットが送りねじに噛み合わない場合がある。
【0015】
本発明では、制御装置は、シリンジが装着された場合にモーターを駆動して送りねじを回転させる。この送りねじの回転により、送りねじのねじ山とハーフナットのねじ山との当接部分が軸方向に相対移動することになる。この当接部分の相対移動により、ハーフナットのねじ山が送りねじのねじ溝に嵌り、ハーフナットが送りねじに噛み合う。従って、送りねじとハーフナットとの噛み合い不良原因のうち、ねじ山同士が当接するという、軽微な原因は自動的に取り除かれるので、噛み合い不良の発生頻度が低下する。また、ハーフナットが送りねじに噛み合っていない場合を検出し、噛み合っていない場合にモーターを駆動する。これにより、噛み合い不良の発生頻度が低下する。
【0016】
また、モーター駆動制御時にピストンに駆動力が伝達された場合、ピストンは、シリンジの液体が投与される側に動くので、患者の血を引いてしまうことはない。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
上記制御装置は、上記モーター駆動制御を行った後、上記噛み合い状態検出手段により上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っているか否かを再び検出するように構成されているものである。
【0018】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記シリンジ装着状態検出手段は、シリンジの装着状態が正常であるか否か検出するように構成され、
上記制御装置は、上記シリンジ装着状態検出手段によるシリンジの装着状態の検出を行った後に、シリンジの装着状態が正常であると検出された場合には、上記噛み合い状態検出手段による検出を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
すなわち、送りねじとハーフナットとの噛み合い不良の原因としては、例えばシリンジの装着状態が正常でなく、ピストン押圧部の位置不良の場合もある。この場合は、モーター駆動制御を行っても送りねじとハーフナットと噛み合わせることができない可能性が高い。本発明では、シリンジの装着状態を検出して、正常であると検出された場合に、モーター駆動制御を行うようにしているので、無駄な制御を極力排除して的確な制御が行えるようになる。
【0020】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記制御装置は、上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っていないことを報知する報知手段を備え、上記モーター駆動制御を行った後に、上記噛み合い状態検出手段による検出を再び行い、該噛み合い状態検出手段により上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っていないと検出された場合には、上記ハーフナットと上記送りねじとの噛み合い不良を上記報知手段によって報知するように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、モーター駆動制御を行った後、ハーフナットが送りねじに噛み合っていない場合には、駆動機構の異常やシリンジの装着異常の可能性があり、この場合に報知手段によって噛み合い不良を報知することで、それらの異常を早期に報知して対応処置を行うことが可能になる。
【0022】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記制御装置は、上記モーター駆動制御において、上記モーターの回転中に、上記噛み合い状態検出手段によって上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合ったことが検出された場合に、上記モーターの回転を停止させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
この構成によれば、ハーフナットが送りねじに噛み合った場合にモーターの回転を停止させることで、モーター駆動制御中にピストンが動いてしまうのを抑制することが可能になる。
【0024】
第6の発明は、液体が充填されたシリンジのピストンを押圧するピストン押圧部と、
上記ピストン押圧部を駆動する駆動機構と
、
上記駆動機構を制御する制御装置とを備え、
上記駆動機構は、送りねじと、該送りねじを回転させるモーターと、上記送りねじに噛み合うハーフナットと、該ハーフナットを、上記送りねじに噛み合った状態と上記送りねじから離れた状態とに切り替えるための切替部材とを有するシリンジポンプの制御方法において、
上記制御装置は、シリンジが装着されているか否か、及び上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っているか否かを検出した後、
シリンジが装着されていて、かつ、上記ハーフナットが上記送りねじに噛み合っていないと検出された場合には、
上記制御装置は、上記ピストン押圧部が上記ピストンを押圧する方向へ移動するように上記モーターを回転させることによって上記送りねじを回転させることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、第1の発明と同様に、軽微な原因によってハーフナットと送りねじとが噛み合っていない場合に、その軽微な原因が自動的に取り除かれるので、噛み合い不良の発生頻度が低下する。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、シリンジが装着された場合に、モーター駆動制御を行うようにしたので、ねじ山同士が当接するという、軽微な原因を自動的に取り除くことができる。これにより、噛み合い不良の発生頻度を低下させることができるので、使用者の操作性を良好にすることができるとともに、投与不足が起こらないようにすることができる。
【0027】
また、ハーフナットが送りねじに噛み合っていないと検出された場合にモーター駆動制御を行うようにしたので、噛み合い不良の発生頻度を確実に低下させることができる。
【0028】
また、モーター駆動制御時に送りねじをピストンの押圧側へ回転させるようにしたので、患者の血を引いてしまうのを防止できる。
【0029】
第3の発明によれば、シリンジの装着状態が正常であると検出された場合に噛み合い状態を検出するようにしたので、シリンジの装着状態に応じた的確な制御を行うことができる。
【0030】
第4の発明によれば、モーター駆動制御を行った後、ハーフナットが送りねじに噛み合っていない場合に噛み合い不良を報知するようにしたので、駆動機構の異常やシリンジの装着異常を早期に報知して安全性を高めることができる。
【0031】
第5の発明によれば、モーター駆動制御時、ハーフナットが送りねじに噛み合った場合にモーターの回転を停止させることで、モーター駆動制御中にピストンが動いてしまうのを抑制することができ、より一層安全な投与を行うことができる。
【0032】
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、噛み合い不良の発生頻度を低下させることができるので、使用者の操作性を良好にするとともに、投与不足が起こらないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係るシリンジポンプ1の斜視図である。シリンジポンプ1は、医療現場において薬液等の液体を患者に投与する場合に使用されるものであり、薬液が充填されたシリンジ(図示せず)を装着し、シリンジのピストンを予め設定した速度で押すことによってシリンジ内の薬液の投与が可能となっている。尚、シリンジポンプ1は、外部から電源が供給されるようになっているとともに、図示しないが蓄電池を内蔵しており、蓄電池によっても作動するようになっている。
【0036】
シリンジポンプ1は、ケーシング10と、ケーシング10外でシリンジのピストンを押圧するピストン押圧部20と、ピストン押圧部20を駆動する駆動機構30(
図2に示す)と、駆動機構30を制御する制御装置A(
図7に示す)とを備えている。ケーシング10の内部には、
図2に示すように、駆動機構30が取り付けられるフレーム15が設けられている。フレーム15には、駆動機構30が有するハーフナット33(後述する)をシリンジポンプ1の左右方向に案内するための円柱状のガイド棒16がシリンジポンプ1の左右方向に延びる姿勢で固定されている。
【0037】
図1に示すように、ケーシング10の上面奥側には、シリンジの本体部分(薬液が充填された筒状部分)を載置するための載置台10aが形成されている。ケーシング10の上面手前側には、シリンジポンプ1を操作するための各種ボタン(
図7に示す開始ボタン11を含む)や液晶表示パネル12等が設けられている。
【0038】
尚、この実施形態の説明では、シリンジポンプ1を操作する場合に使用者から見て手前側となる側を手前側といい、使用者から見て奥側となる側を奥側といい、使用者から見て左側を左側といい、使用者から見て右側を右側というものとする。ピストンは、
図1の右側から左側へ向けて押圧される。
【0039】
載置台10aに載置したシリンジは、液体の吐出側が左側に位置し、ピストンのフランジ側が右側に位置するようになっている。ケーシング10の上面奥側には、載置台10aに載置したシリンジの本体部分を上方から押さえて保持するためのシリンジクランプ13が設けられている。
【0040】
ピストン押圧部20は、ケーシング10の奥側において右側に設けられており、
図1に示す位置から左側へ移動するようになっている。ピストン押圧部20の左側面には、ピストンのフランジを挟んで保持するためのフランジ保持用の一対の爪21が設けられている。また、ピストン押圧部20の上部には、爪21及び後述するハーフナット33を操作するための操作レバー23が設けられている。
【0041】
図2に示すように、駆動機構30は、送りねじ31と、送りねじ31を回転させるモーター32と、送りねじ31に噛み合うハーフナット33と、ハーフナット33を、送りねじ31に噛み合った状態と送りねじ31から離れた状態とに切り替えるための切替ロッド34(切替部材)とを備えている。
【0042】
送りねじ31は、シリンジポンプ1の左右方向に延びる金属製棒材の外周面に台形ねじが左右両端に亘って形成されたものである。
図5及び
図6に示す送りねじ31の部分断面図において、台形ねじのねじ山を符号31aで示し、ねじ溝を符号31bで示す。台形ねじの形状は周知の形状である。
【0043】
送りねじ31の両端部は、
図2に示すフレーム15の左右両端部に回転可能に支持されている。モーター32は、制御装置Aに接続されており、制御装置Aによって停止、回転、回転方向の切替、回転量、回転速度等が制御される。モーター32はフレーム15の左端に固定されている。モーター32の出力は、減速歯車(図示せず)を介して送りねじ31の左端部に入力されるようになっている。
【0044】
図2〜
図4に示すように、切替ロッド34の先端部にはキャリッジ36が設けられている。キャリッジ36は、切替ロッド34に対し、軸方向には移動しないように取り付けられており、この状態で、切替ロッド34は、キャリッジ36に対して軸周りの回動が可能となっている。
【0045】
送りねじ31はキャリッジ36を貫通している。また、
図4に示すように、キャリッジ36の下部には、ガイド棒16が挿通する挿通孔36aが形成されている。ガイド棒16は、キャリッジ36の挿通孔36aの内周面に摺動することによってキャリッジ36を左右方向に案内することができるようになっている。
【0046】
ハーフナット33は、キャリッジ36と一体化している。ハーフナット33の上部は、切替ロッド34の先端部に対し、軸方向には移動せず、かつ、軸周りの揺動もしないように固定されている。従って、
図3(a)の状態から(b)の状態となるように切替ロッド34を軸周り(矢印X方向)に回動させると、それに伴ってハーフナット33は回動するが、このとき、キャリッジ36は、切替ロッド34に対して回動可能となっているので、キャリッジ36は切替ロッド34の回動によっては回動せずに静止状態が維持される。
【0047】
ハーフナット33は、送りねじ31に螺合する形状のナットを径方向に略半分に割った形状の割ナット部33Aと、割ナット部33Aが固定される割ナット保持部材33Bとを備えている。割ナット部33Aの内周面には、
図5や
図6に示すように、送りねじ31のねじ山31a及びねじ溝31bにそれぞれ噛み合うねじ溝33b及びねじ山33aが形成されている。この実施形態では、送りねじ31とハーフナット33とを台形ねじとしているので、摩耗による精度低下を防止できる。
【0048】
割ナット保持部材33Bが切替ロッド34に取り付けられる。割ナット保持部材33Bには、送りねじ31の外周面から離れるように切欠部33cが形成されている。切欠部33cは、ハーフナット33を切替ロッド34によって
図3(a)の状態から(b)の状態となるように回動させた際に、割ナット保持部材33Bが送りねじ31の外周面に接触しないようにするためのものである。尚、ハーフナット33は、図示しない付勢部材によって送りねじ31に噛み合う方向に常時付勢されているので、この付勢力に抗する力を切替ロッド34に与えることによって
図3(b)に示す状態にすることができる。
【0049】
図2に示すように、切替ロッド34は、キャリッジ36から右側へ延びており、その右端部にピストン押圧部20が取り付けられている。すなわち、ピストン押圧部20は、切替ロッド34を介してキャリッジ36及びハーフナット33に連結された状態であり、ハーフナット33が左右方向に移動すると同方向に同じ量だけ移動する。
【0050】
一方、切替ロッド34の右端部には、上記操作レバー23が連結されている。この操作レバー23を
図1における奥側、手前側に動かすことで切替ロッド34を上記付勢部材による付勢力に抗して軸周りに回動させることができるようになっている。
図3に矢印Xで示す方向に切替ロッド34を回動させることで、ハーフナット33のねじ山33a及びねじ溝33bが
図3(b)に示すように同図における右側に移動する。これにより、ハーフナット33のねじ山33a及びねじ溝33bが、それぞれ送りねじ31のねじ溝31b及びねじ山31aから離れる。一方、操作レバー23に上記した操作力を加えない場合には、付勢部材の付勢力によってハーフナット33が、矢印Xとは逆方向に回動してハーフナット33のねじ山33a及びねじ溝33bが、送りねじ31のねじ山31a及びねじ溝31bに噛み合うことになる。
【0051】
また、
図7に示すように、制御装置Aは、ハーフナット33が送りねじ31に噛み合っているか否かを検出するためのフォトセンサ(噛み合い状態検出手段)40を備えている。フォトセンサ40は、ハーフナット33の位置を検出することによってハーフナット33が送りねじ31に噛み合っているか否かを検出するように構成されており、具体的には、ハーフナット33が
図3(a)に示す位置にあるときには送りねじ31に噛み合っているとし、ハーフナット33が
図3(b)に示す位置や、
図5に示す位置にあるときには送りねじ31に噛み合っていないとする。
【0052】
尚、噛み合い状態検出手段は、ハーフナット33が送りねじ31に噛み合っているか否かを検出できればよいので、フォトセンサ40の代わりに、マイクロスイッチを用いてハーフナット33の位置を直接検出してもよいし、他のセンサを用いて検出することもできる。
【0053】
また、
図7に示すように、制御装置Aは、シリンジのサイズを検出するシリンジサイズ検出センサ41も備えている。シリンジサイズ検出センサ41は、シリンジポンプ1に装着されたシリンジのサイズを検出するためのセンサであり、このシリンジサイズ検出センサによってシリンジが装着されているか否かを検出することができる。
【0054】
また、制御装置Aは、シリンジのフランジがピストン押圧部20のフランジ保持用爪21に保持されているか否かを検出するフランジ検出センサ42も備えている。フランジ検出センサ42によってシリンジが装着されているか否かを検出することができる。
【0055】
さらに、制御装置Aは、シリンジのピストンの有無を検出するピストン検出センサ43も備えている。ピストン検出センサ43によってシリンジが装着されているか否かを検出することができる。
【0056】
上記シリンジサイズ検出センサ41、フランジ検出センサ42及びピストン検出センサ43は、従来のシリンジポンプにも設けられているものであるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
さらに、このシリンジポンプ1には、警報器(報知手段)50が設けられている。警報器50は、例えばランプやスピーカー等で構成することができ、制御装置Aによって制御される。警報器50は、フォトセンサ40によってハーフナット33が送りねじ31に噛み合っていないことが検出されたとき、シリンジサイズ検出センサ41により規格外のシリンジが装着されていることが検出されたとき、フランジ検出センサ42によりフランジがフランジ保持用爪21に保持されていないと検出されたとき、ピストン検出センサ43によりピストンが所定位置にないと検出されたときに、使用者や周囲の者に対して報知するためのものである。
【0058】
次に、制御装置Aによる制御内容について
図8のフローチャートを参照しながら説明すする。制御装置Aは、開始ボタン11を含むボタン操作信号、フォトセンサ40、シリンジサイズ検出センサ41、フランジ検出センサ42及びピストン検出センサ43等のセンサ信号を処理してモーター32及び警報器50を制御するように構成されたものであり、周知のマイクロコンピュータを用いて構成することができる。
【0059】
制御装置Aは、フローチャートのスタート後のステップSA1においてシリンジが装着されているか否かを判定する。尚、本フローのスタートのタイミングは、使用者がシリンジポンプ1の電源スイッチをONにした後である。
【0060】
ステップSA1は、フランジ検出センサ42からの信号に基づいて判定する。このステップSA1で、フランジ検出センサ42によりシリンジがシリンジポンプ1に装着されていないと検出されたときにはNOと判定されるので、再び同様な検出を行う。
【0061】
ステップSA1で、フランジ検出センサ42によりシリンジがシリンジポンプ1に装着されていると検出されたときにはYESと判定されるので、ステップSA2に進む。ステップSA2はモーター駆動制御である。
【0062】
すなわち、シリンジをシリンジポンプ1に装着するときに、そのシリンジのピストンに合うようにピストン押圧部20を左右方向に移動させる際には、ハーフナット33を操作レバー23の操作によってガイド棒16周りに回動させ、
図3(b)に示す状態にしてハーフナット33を送りねじ13から離した状態にする。これにより、ハーフナット33が自由に動くようになるので、ピストン押圧部20を所望位置まで移動させ、所望位置に来たときに操作レバー23から指を離す。すると、付勢部材の付勢力によってハーフナット33が
図3(a)に示す位置に戻ろうとする。このとき、ハーフナット33の軸方向の位置によっては、
図5に示すように、ハーフナット33のねじ山33aの平坦面と、送りねじ31のねじ山31aの平坦面とが当接して
図3(a)に示す位置に戻らない場合がある。
【0063】
図5に示すような位置関係となった場合には、直ちに警報を発生するのではなく、ステップSA2においてモーター32を駆動して所定量だけ回転させる。モーター32を回転させると送りねじ31が回転し、この送りねじ31の回転により、送りねじ31のねじ山31aとハーフナット33のねじ山33aの当接部分が軸方向に相対移動することになる。この相対移動により、ハーフナット33のねじ山33aが送りねじ31のねじ溝31bに嵌り、
図6に示すようにハーフナット33が送りねじ31に噛み合う。従って、送りねじ31とハーフナット33との噛み合い不良原因のうち、ねじ山31a、33aの平坦面同士が当接するという、軽微な原因は自動的に取り除かれるので、噛み合い不良の発生頻度が低下する。
【0064】
その後、ステップSA3に進む。ステップSA3では開始ボタン11がONにされたか否かを検出する。開始ボタン11がONにされなければONにされるまで待ち、ONにされた場合にはステップSA4に進む。ステップSA4では、ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っているか否かを判定する。ステップSA4は、フォトセンサ40の信号に基づいて判定し、ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っている場合には、ステップSA6に進んで投与を開始する。
【0065】
ステップSA6では、制御装置Aは、ピストン押圧部20がシリンジのピストンを押圧する方向に移動するようにモーター32を回転させる。モーター32の回転力は送りねじ31に伝達されて送りねじ31が回転する。送りねじ31には、ハーフナット33が噛み合っているので、ハーフナット33は、ガイド棒16に案内されながら軸方向(この実施形態では左側)に移動する。ハーフナット33にはピストン押圧部20が連結されているので、ピストン押圧部20が左側へ移動していき、これにより、シリンジのピストンが所定の速度で押圧されてシリンジの液体が患者に投与される。
【0066】
ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていない場合には、ステップSA5に進んで警報器50を制御して警報を発生させる。すなわち、ステップSA2で噛み合い不良を解消すべくモーター32を回転させたにも関わらず、依然としてハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていない場合には、送りねじ31やハーフナット33の異常等が考えられるので、警報を発生して周囲の者に報知する。
【0067】
制御方法の別の例を
図9に示すフローチャートに基づいて説明する。制御装置Aは、フローチャートのスタート後のステップSB1においてシリンジが正しく装着されているか否かを判定する。この判定は、シリンジが装着されているか否かも含んでいる。尚、本フローのスタートのタイミングは、使用者がシリンジポンプ1の電源スイッチをONにした後である。
【0068】
ステップSB1では、シリンジサイズ検出センサ41により規格外のシリンジが装着されていることが検出されたとき、フランジ検出センサ42によりフランジがフランジ保持用爪21に保持されていないと検出されたとき、ピストン検出センサ43によりピストンが所定位置にないと検出されたとき、これらセンサ41〜43によりシリンジが装着されていないと検出されたときのうち、少なくとも1つが検出されたときには、NO、即ちシリンジが正しく装着されていないと判定してステップSB2に進み、警報器50を制御して警報を発生させる。
【0069】
ステップSB1でシリンジサイズ検出センサ41、フランジ検出センサ42及びピストン検出センサ43からの信号を2秒程度継続して見た結果、シリンジが正しく装着されている場合には、YESと判定されるのでステップSB3に進む。ステップSB3では、ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っているか否かを判定する。ステップSB3は、フォトセンサ40の信号に基づいて判定し、ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っている場合には、シリンジ側及びシリンジポンプ1側の両方に問題がないので、ステップSB9に進んで開始ボタン11がONとされるまで待つ。開始ボタン11がONにされたらステップSB8に進んで投与を開始する。
【0070】
ステップSB3で、ハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていないと判定された場合には、ステップSB4に進み、モーター駆動制御を行い、ハーフナット33と送りねじ31の噛み合い修正を行う。
【0071】
その後、ステップSB5に進んで開始ボタン11がONとされるまで待つ。開始ボタン11がONにされたらステップSB6に進んでステップSB3と同じ判定を行う。つまり、ステップSB3でハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていないと判定されてステップSB4でその噛み合い不良を解消すべくモーター32を回転させたにも関わらず、依然としてハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていない場合には、送りねじ31やハーフナット33の異常等が考えられるので、ステップSB7に進んでステップSB2と同様に警報を発生する。
【0072】
ステップSB6においてハーフナット33と送りねじ31が噛み合っていると判定された場合には、ステップSB8に進んで投与を開始する。
【0073】
以上説明したように、この実施形態に係るシリンジポンプ1によれば、例えば装着するシリンジに合うようにピストン押圧部20の位置調整を行った後に、送りねじ31とハーフナット33のねじ山31a,33aの平坦面同士が当接してハーフナット33が送りねじ31に噛み合っていない場合に、制御装置Aがモーター32を回転させる。これにより、送りねじ31が回転し、この送りねじ31の回転により、送りねじ31のねじ山31aとハーフナット33のねじ山33aとの当接部分が軸方向に相対移動することになる。この当接部分の相対移動により、ハーフナット33が送りねじ31に噛み合う。従って、送りねじ31とハーフナット33との噛み合い不良原因のうち、ねじ山31a,33a同士が当接するという、軽微な原因は自動的に取り除かれるので、噛み合い不良の発生頻度が低下する。これにより、使用者の操作性を良好にするとともに、投与不足が起こらないようにすることができる。
【0074】
また、ステップSA1でシリンジが装着された場合にステップSA2でモーター32を回転させるようにしたので、噛み合い不良の発生頻度を大幅に低下させることができる。
【0075】
また、ステップSB1でシリンジの装着状態が正常であると検出された場合にステップSB3で噛み合い状態を検出した後、モーター駆動制御を行うようにしたので、シリンジの装着状態に応じた的確な制御を行うことができる。
【0076】
また、ステップSB4においてモーター駆動制御を行った後、ステップSB6でハーフナット33が送りねじ31に噛み合っていないことが検出された場合にステップSB7で噛み合い不良を報知するようにしたので、駆動機構30の異常やシリンジの装着異常を早期に報知して安全性を高めることができる。
【0077】
また、ステップSA2やステップSB4のモーター駆動制御時に送りねじ31をピストンの押圧側へ回転させるようにすることで、患者の血を引いてしまうのを防止できる。
【0078】
また、モーター駆動制御におけるモーター32の回転量としては、送りねじ31を少なくとも半回転させることができる回転量が好ましい。これにより、殆どの場合の噛み合い修正を行うことができる。また、モーター駆動制御時にモーター32を所定時間だけ回転させるようにしてもよい。
【0079】
また、モーター駆動制御時、モーター32の回転中に、フォトセンサ40によってハーフナット33が送りねじ31に噛み合ったことが検出された場合に、モーター32の回転量が予め設定された回転量に達する前にモーター32の回転を停止させるように、制御装置Aを構成してもよい。これにより、モーター駆動制御中にシリンジのピストンが動いてしまうのを抑制することができ、より一層安全な投与を行うことができる。
【0080】
また、モーター駆動制御時に、モーター32をピストンの押圧側とは反対側へ回転させてもよい。この場合、モーター32の回転量を少なくするのが好ましい。
【0081】
また、上記フローチャートでは、モーター駆動制御を1回のみとしているので、2回以上行った場合に比べてピストンを余計に押圧してしまう可能性を低くすることができ、予定量以上の薬液が投与されてしまうのを防止できる。尚、モーター駆動制御は、2回以上行うようにしてもよいが、この場合は、モーター32の回転量を少なくするのが好ましい。
【0082】
また、モーター駆動制御時にモーター32をピストンの押圧側へ回転させた後、反転させる制御を行ってもよい。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。