特許 6378691 ギアボックスの動作温度の低下を与える工業用のギアオイル

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6378691

(24)【登録日】2018年8月3日

(45)【発行日】2018年8月22日

(54)【発明の名称】ギアボックスの動作温度の低下を与える工業用のギアオイル

(51)【国際特許分類】

   C10M 137/02 20060101AFI20180813BHJP

   C10N 20/00 20060101ALN20180813BHJP

   C10N 40/04 20060101ALN20180813BHJP

【ＦＩ】

   C10M137/02

   C10N20:00 Z

   C10N40:04

【請求項の数】18

【全頁数】19

(21)【出願番号】特願2015-545081(P2015-545081)

(86)(22)【出願日】2013年11月15日

(65)【公表番号】特表2015-535555(P2015-535555A)

(43)【公表日】2015年12月14日

(86)【国際出願番号】US2013070278

(87)【国際公開番号】WO2014088782

(87)【国際公開日】20140612

【審査請求日】2016年11月1日

(31)【優先権主張番号】61/732,546

(32)【優先日】2012年12月3日

(33)【優先権主張国】US

【前置審査】

(73)【特許権者】

【識別番号】591131338

【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション

【氏名又は名称原語表記】ＴＨＥ ＬＵＢＲＩＺＯＬ ＣＯＲＰＯＲＡＴＩＯＮ

(74)【代理人】

【識別番号】100078282

【弁理士】

【氏名又は名称】山本 秀策

(74)【代理人】

【識別番号】100113413

【弁理士】

【氏名又は名称】森下 夏樹

(72)【発明者】

【氏名】ビンチ， ジェイムス エヌ．

(72)【発明者】

【氏名】アキュースウィチ， エドワード エス．

【審査官】 中野 孝一

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００８−２５５２３９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００１−３０３０８６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−０９４９６９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−０３７０９６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｃ１０Ｍ１０１／００−１７７／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

工業用のギア組成物であって、該組成物が使用されるギアボックスの動作温度を低下させるための組成物であり、該組成物が：
（ａ）潤滑粘度の油と；
（ｂ）工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージと；
（ｃ）該組成物全体の２．０重量％以上で存在するジ−ヒドロカルビル置換脂肪族ホスファイトであって、該ヒドロカルビル基が１６〜１８個の炭素原子を有するジ−ヒドロカルビル置換脂肪族ホスファイトと、
を含み、該組成物がオレフィンオリゴマーを含まない、組成物。

【請求項2】

成分（ｂ）および成分（ｃ）が、成分（ｂ）の成分（ｃ）に対する重量比が４：１から１：５までであるような量で存在する、請求項１に記載の組成物。

【請求項3】

成分（ａ）、前記潤滑粘度の油、が、グループＩの基油、グループＩＩの基油、グループＩＩＩの基油、合成基油、それらの任意の組み合わせのもの、を含む、請求項１または２に記載の組成物。

【請求項4】

成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆防止剤および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の抗乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項１〜３のいずれか一項に記載の組成物。

【請求項5】

成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、さらに１種類以上の摩擦調整剤を含む、請求項４に記載の組成物。

【請求項6】

成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が：１種類以上の硫化オレフィン；１種類以上のポリスルフィド；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤またはそれらの任意の組み合わせ、を含む、請求項１に記載の組成物。

【請求項7】

前記組成物が、４０重量％までの成分（ａ）を含む工業用のギア添加剤濃縮物である、請求項１〜６のいずれか一項に記載の組成物。

【請求項8】

前記組成物が、少なくとも８０重量％の成分（ａ）を含む工業用のギア潤滑剤である、請求項１から６までのいずれかに記載の組成物。

【請求項9】

成分（ｂ）が、前記工業用のギア潤滑剤全体の１〜５重量％で存在し；そして
成分（ｃ）が、該工業用のギア潤滑剤全体の２．０〜３．０重量％で存在する、請求項８に記載の組成物。

【請求項10】

工業用のギアボックスの動作温度を低下させる方法であって、該方法が：（Ｉ）工業用のギアオイル潤滑剤に脂肪族ホスファイトを、該潤滑剤が、少なくとも２．０重量％の１６〜１８個の炭素原子のヒドロカルビル基を有するジ−ヒドロカルビル置換脂肪族ホスファイトを含むように添加する工程であって、該工業用のギアオイル潤滑剤がオレフィンオリゴマーを含まない工程と、（ＩＩ）該工業用のギアオイル潤滑剤を該工業用のギアボックスに供給している間に該工業用のギアボックスを動作させる工程と、を含む、方法。

【請求項11】

前記脂肪族ホスファイトの少なくとも一部が、前記潤滑剤が前記工業用のギアボックスに供給される前に、前記工業用のギアオイル潤滑剤に添加されるか、または該脂肪族ホスファイトの少なくとも一部が、該潤滑剤が該工業用のギアボックスに供給された後に、該工業用のギアオイル潤滑剤に添加される、請求項１０に記載の方法。

【請求項12】

成分（ｂ）および成分（ｃ）が、成分（ｂ）の成分（ｃ）に対する重量比が４：１から１：５までであるような量で存在する、請求項１０から１１までのいずれかに記載の方法。

【請求項13】

成分（ａ）、前記潤滑粘度の油、が、グループＩの基油、グループＩＩの基油、グループＩＩＩの基油、合成基油、それらの任意の組み合わせのもの、を含む、請求項１０から１２までのいずれかに記載の方法。

【請求項14】

成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆防止剤および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の抗乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項１０から１３のいずれかに記載の方法。

【請求項15】

成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が：１種類以上の硫化オレフィン；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤；またはそれらの任意の組み合わせ、を含む、請求項１０から１３のいずれかに記載の方法。

【請求項16】

前記組成物が、４０重量％までの成分（ａ）を含む工業用のギア添加剤濃縮物である、請求項１０から１５のいずれかに記載の方法。

【請求項17】

前記組成物が、少なくとも８０重量％の成分（ａ）を含む工業用のギア潤滑剤である、請求項１０から１６のいずれかに記載の方法。

【請求項18】

成分（ｂ）が、前記工業用のギア潤滑剤全体の１〜５重量％で存在し；そして
成分（ｃ）が、該工業用のギア潤滑剤全体の１．０〜１０．０重量％で存在する、請求項１７に記載の方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

発明の分野
本発明は、ギアオイル組成物が使用されるギアボックスの動作温度を実質的に低下させる改良されたギアオイル組成物に関連する。記載される組成物によって提供される動作温度の低下は設備の性能の向上をもたらす。本発明は、記載されるギアオイル組成物を作製する方法およびこれを使用する方法にもまた関連する。

【背景技術】

【0002】

発明の背景
工業用のギアボックスは、損傷、例えば、ギアボックスの内部の部品の摩耗、をもたらし得る限界動作条件を経験する。この損傷はこの工業用のギアボックスの寿命を減少させ、そして費用がかかり、そして長期のメンテナンス、修理費、この工業用のギアボックスを含む設備のための予期せぬ休止時間、および同様の問題をもたらし得る。

【0003】

工業用のギアボックスにおけるより良い性能および工業用のギアボックスの保護を提供し、そうしてこの工業用のギアボックスおよびこれらを含む設備の耐用年数を引き伸ばし得る、改良された工業用のギアボックス潤滑剤に対する現在の必要がある。

【0004】

工業用のギアボックスを保護し、そしてそれらを潤滑する液体の寿命を引き延ばす一つの手段は、それが動作する温度を低下させることである。工業用のギアボックスが通常動作する高温への長期の曝露は、ギアボックスの部品の衰耗を増加させ、やがて部品故障をもたらすことが一般的に知られている。この高い動作温度の悪影響は、複数の影響力の結果であり、この高温が保護添加剤の分解を加速させ、そしてこの工業用のギアボックス潤滑剤中に存在する基礎液体の酸化を増加させ、そうして経時的にこのギアボックスの部品をより保護されていないものにし得るという事実を含むがこれに限定されない。工業用のギアボックスの動作温度を低下させることは、経時的な性能の向上をもたらす。

【0005】

工業用のギアボックスの動作温度を低下させる一つの手段は、外部冷却器の使用または放熱フィンの追加によるものである。しかし、このような手法には限界があり、そして費用および時間のかかる、既存の設備の変更を含み得る。このような変更を必要とせずに既存の設備の中の工業用のギアボックスの動作温度を低下させる手法の必要がある。

【0006】

ギアボックスの動作温度を低下させることの代替手段は、設備をより低いレベル（より低い負荷、より低い出力、より低い速度など）で動作させることであろう。しかし、この手法は一般的に、生産および／または効率の低下をもたらし、そしてこれは生産性を維持しようとする設備の管理者にとって魅力的な選択肢ではない。その代わり、動作レベル（設備の負荷、出力、速度など）を犠牲にすることなく工業用のギアボックスの動作温度を低下させ得る工業用のギアボックス潤滑剤が必要とされている。

【0007】

本発明の工業用のギアボックス潤滑剤組成物は、設備の動作条件にその他の変更を加えることなく工業用のギアボックスの動作温度の低下を提供し得ることが現在見出されている。

【発明の概要】

【課題を解決するための手段】

【0008】

発明の要旨
本発明は、工業用のギア組成物であって：（ａ）潤滑粘度の油と；（ｂ）工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージと；（ｃ）組成物全体の１．０重量％以上で存在する脂肪族ホスファイトと、を含む組成物を提供する。本発明は、自動車のギア組成物および／または潤滑剤に対しては方向づけられておらず、むしろ工業用のギアボックスの用途において見られる独特な課題を扱う、工業用のギアオイル組成物および／または潤滑剤に焦点を当てている。

【0009】

本発明は、成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の抗乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含み得る、記載される組成物を提供する。成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、はさらに１つ以上の摩擦調整剤もまた含み得る。

【0010】

本発明はさらに：１種類以上の硫化オレフィンまたはポリスルフィド；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤、界面活性剤またはそれらの任意の組み合わせ、をさらに含む成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、を提供する。

【0011】

本発明は濃縮組成物および潤滑剤組成物を提供する。記載される工業用のギア添加剤濃縮物は４９重量％までの成分（ａ）を含み得る。記載される工業用のギア潤滑剤は、少なくとも８０重量％の成分（ａ）を含み得る。成分（ｂ）は、工業用のギア潤滑剤全体の１〜５重量％で存在し得；そして成分（ｃ）は、工業用のギア潤滑剤全体の１．０〜５．０重量％で存在し得る。

【0012】

本発明は、工業用のギアボックスの動作温度を低下させる方法をさらに提供し、該方法は：（Ｉ）工業用のギアオイル潤滑剤に脂肪族ホスファイトを、この潤滑剤が少なくとも１．０重量％のこの脂肪族ホスファイトを含むように添加する工程と、（ＩＩ）この工業用のギアボックスにこの工業用のギアオイル潤滑剤を供給する間にこの工業用のギアボックスを動作させる工程と、を含む。

【0013】

本発明は、工業用のギアボックスの動作温度を低下させる方法をさらに提供し、該方法は：（Ｉ）この工業用のギアボックスに本明細書中に記載される潤滑剤組成物を供給する工程と、（ＩＩ）この工業用のギアボックスを動作させる工程と、を含む。これらの実施形態のいずれにおいても、脂肪族ホスファイトは、潤滑剤が工業用のギアボックスに供給される前に、工業用のギアオイル潤滑剤に添加されてもよく、またはここにおいてこの脂肪族ホスファイトの少なくとも一部が、この潤滑剤がこの工業用のギアボックスに供給された後に、この工業用のギアオイル潤滑剤に添加される。

【0014】

本発明は、潤滑剤組成物が使用される工業用のギアボックスの動作温度を低下させるために、工業用のギア潤滑剤組成物中の記載された脂肪族ホスファイトの使用を提供する。本発明はまた、潤滑剤組成物が使用される工業用のギアボックスの動作温度を低下させるための、記載される工業用のギア潤滑剤組成物の使用も提供する。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
（項目１）
工業用のギア組成物であって：
（ａ）潤滑粘度の油と；
（ｂ）工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージと；
（ｃ）該組成物全体の１．０重量％以上で存在する脂肪族ホスファイトと、
を含む組成物。
（項目２）
成分（ｂ）および成分（ｃ）が、成分（ｂ）の成分（ｃ）に対する重量比が４：１から１：５までであるような量で存在する、項目１に記載の組成物。
（項目３）
成分（ａ）、前記潤滑粘度の油、が、グループＩの基油、グループＩＩの基油、グループＩＩＩの基油、合成基油、それらの任意の組み合わせのもの、を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
（項目４）
成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆防止剤および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の抗乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
（項目５）
成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、さらに１種類以上の摩擦調整剤を含む、項目４に記載の組成物。
（項目６）
成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が：１種類以上の硫化オレフィン；１種類以上のポリスルフィド；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤またはそれらの任意の組み合わせ、を含む、項目１に記載の組成物。
（項目７）
成分（ｃ）、前記脂肪族ホスファイト、が、アルケニルホスファイトまたはそれらのエステルを含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
（項目８）
前記組成物が、４０重量％までの成分（ａ）を含む工業用のギア添加剤濃縮物である、前記項目のいずれかに記載の組成物。
（項目９）
前記組成物が、少なくとも８０重量％の成分（ａ）を含む工業用のギア潤滑剤である、前記項目１から７までのいずれかに記載の組成物。
（項目１０）
成分（ｂ）が、前記工業用のギア潤滑剤全体の１〜５重量％で存在し；そして
成分（ｃ）が、該工業用のギア潤滑剤全体の１．０〜１０．０重量％で存在する、項目９に記載の組成物。
（項目１１）
工業用のギアボックスの動作温度を低下させる方法であって、該方法が：（Ｉ）工業用のギアオイル潤滑剤に脂肪族ホスファイトを、該潤滑剤が、少なくとも１．０重量％の脂肪族ホスファイトを含むように添加する工程と、（ＩＩ）該工業用のギアオイル潤滑剤を該工業用のギアボックスに供給している間に該工業用のギアボックスを動作させる工程と、を含む、方法。
（項目１２）
前記脂肪族ホスファイトの少なくとも一部が、前記潤滑剤が前記工業用のギアボックスに供給される前に、前記工業用のギアオイル潤滑剤に添加されるか、または該脂肪族ホスファイトの少なくとも一部が、該潤滑剤が該工業用のギアボックスに供給された後に、該工業用のギアオイル潤滑剤に添加される、項目１１に記載の方法。
（項目１３）
成分（ｂ）および成分（ｃ）が、成分（ｂ）の成分（ｃ）に対する重量比が４：１から１：５までであるような量で存在する、前記項目１１から１２までのいずれかに記載の方法。
（項目１４）
成分（ａ）、前記潤滑粘度の油、が、グループＩの基油、グループＩＩの基油、グループＩＩＩの基油、合成基油、それらの任意の組み合わせのもの、を含む、前記項目１１から１３までのいずれかに記載の方法。
（項目１５）
成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆防止剤および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の抗乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記項目１１から１４のいずれかに記載の方法。
（項目１６）
成分（ｂ）、前記工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、が：１種類以上の硫化オレフィン；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤；またはそれらの任意の組み合わせ、を含む、前記項目１１から１４のいずれかに記載の方法。
（項目１７）
成分（ｃ）、前記脂肪族ホスファイト、が、アルケニルホスファイトまたはそれらのエステルを含む、前記項目１１から１６のいずれかに記載の方法。
（項目１８）
前記組成物が、４０重量％までの成分（ａ）を含む工業用のギア添加剤濃縮物である、前記項目１１から１７のいずれかに記載の方法。
（項目１９）
前記組成物が、少なくとも８０重量％の成分（ａ）を含む工業用のギア潤滑剤である、前記項目１１から１８のいずれかに記載の方法。
（項目２０）
成分（ｂ）が、前記工業用のギア潤滑剤全体の１〜５重量％で存在し；そして
成分（ｃ）が、該工業用のギア潤滑剤全体の１．０〜１０．０重量％で存在する、項目１９に記載の方法。

【発明を実施するための形態】

【0015】

発明の詳細な説明
本発明の様々な特徴および実施形態が、非限定的な例証の方法によって以下に記載される。

【0016】

本発明の工業用のギア組成物は：（ａ）潤滑粘度の油と；（ｂ）工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージと；（ｃ）組成物全体の１．０重量％以上で存在する脂肪族ホスファイトと、を含む。いくつかの実施形態において、この工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージは、抗乳化剤、分散剤および金属不活性化剤を含み得る。最低でも１．０重量％の脂肪族ホスファイトが含まれるが、これは少なくともいくつかの実施形態において、少なくともこの量の脂肪族ホスファイトが、この工業用のギアオイル組成物における記載される利益、つまりギアボックスの動作温度の低下、を得るために必要であると考えられるからである。本発明の利益が得られる範囲は、変動し、そして／または使用される基礎液体にいくらか依存すると予期される。

【0017】

潤滑粘度の油
潤滑粘度の油は、潤滑剤組成物については主要な量で、または濃縮および／または添加剤組成物については濃縮物形成量で存在し得る。

【0018】

適切な油として、天然および合成潤滑油ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。完全に配合された潤滑剤中で、潤滑粘度の油は一般的に主要な量で存在する（すなわち、５０重量％より多くの量）。典型的には、潤滑粘度の油は、組成物全体の７５〜９８重量％、そして多くの場合、８０重量％より多くの量で存在する。

【0019】

潤滑粘度の油として、天然および合成の油、水素化分解、水素化および水素化仕上げに由来する油、未精製、精製および再精製油あるいはこれらの混合物が挙げられ得る。非精製油は、天然または合成の源から直接的に取得されるものであり、一般的にはさらなる精製処理をされていない（またはほとんどされていない）。精製油は、１つ以上の特性を改良するために１回以上の精製工程でさらに処理されている以外は未精製油と同じである。精製技術は当技術分野において公知であり、そして溶媒抽出、２次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションおよび類似のプロセスを含む。再精製油は、再生油または再加工油としてもまた公知であり、そして精製油を取得するために使用されるものと類似のプロセスによって取得される。再精製油は多くの場合、使用済みの添加剤および油分解生成物の除去に関する技術によって加工される。

【0020】

潤滑粘度の油として有用な天然の油として、動物油および植物油（例えば、ひまし油、ラード油）、鉱物潤滑油、例えば、パラフィン系、ナフテン系または混合パラフィンナフテン系の、溶媒処理または酸処理鉱物潤滑油、および液体石油、ならびに石炭または頁岩に由来する油あるいはそれらの混合物、が挙げられる。

【0021】

潤滑粘度の合成油として、炭化水素油、例えばポリマー化およびインターポリマー化オレフィン（例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー）；ポリ（１−ヘキセン）、ポリ（１−オクテン）、ポリ（１−デカン）およびそれらの混合物；アルキル−ベンゼン（例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−（２−エチルヘキシル）−ベンゼン）；ポリフェニル（例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル）；アルキル化ビフェニルエーテルおよびアルキル化ビフェニルスルフィドならびにそれらの誘導体、アナログおよびホモログまたはそれらの混合物、が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明において使用される潤滑粘度の油は、ポリマー化ポリイソブチレンを含む合成油であり、そしていくつかの実施形態において、本発明において使用される潤滑粘度の油は、ポリマー化されたポリイソブチレンおよびポリアルファオレフィンを含む合成油である。

【0022】

別の、潤滑粘度の合成油として、本明細書中に開示される通りのヒドロカルビルでキャッピングされたポリオキシアルキレンポリオール以外のポリオールエステル、ジカルボン酸エステル、リン含有酸の液体エステル（例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェートおよびデカンホスホン酸のジエチルエーテル）またはポリマー性テトラヒドロフランが挙げられる。潤滑粘度の従来の合成油は、Ｆｉｓｃｈｅｒ−Ｔｒｏｐｓｃｈ反応によって生産されるものもまた含み、そして典型的には水素化異性化（ｈｙｄｒｏｉｓｏｍｅｒｉｚｅ）されたＦｉｓｃｈｅｒ−Ｔｒｏｐｓｃｈ炭化水素またはワックスであり得る。１つの実施形態において、潤滑粘度の油は、Ｆｉｓｃｈｅｒ−Ｔｒｏｐｓｃｈガス液化合成手順によって調製されてもよく、そして他のガス液化油であってもよい。

【0023】

潤滑粘度の油はさらに、Ａｍｅｒｉｃａｎ Ｐｅｔｒｏｌｅｕｍ Ｉｎｓｔｉｔｕｔｅ（ＡＰＩ）基油互換可能性ガイドライン（Ｂａｓｅ Ｏｉｌ Ｉｎｔｅｒｃｈａｎｇｅａｂｉｌｉｔｙ Ｇｕｉｄｅｌｉｎｅｓ）において特定される通りに定義され得る。５つの基油グループは以下の通りである：グループＩ（硫黄含有量＞０．０３重量％、そして／または＜９０重量％飽和、粘度指数８０〜１２０）；グループＩＩ（硫黄含有量≦０．０３重量％、そして≧９０重量％飽和、粘度指数８０〜１２０）；グループＩＩＩ（硫黄含有率≦０．０３重量％、そして≧９０重量％飽和、粘度指数≧１２０）；グループＩＶ（全てのポリアルファオレフィン、またはＰＡＯ、例えば、ＰＡＯ−２、ＰＡＯ−４、ＰＡＯ−５、ＰＡＯ−６、ＰＡＯ−７もしくはＰＡＯ−８）；およびグループＶ（これは、「その他全て」を包含する）。この潤滑粘度の油は、ＡＰＩグループＩ、グループＩＩ、グループＩＩＩ、グループＩＶ、グループＶの油またはこれらの混合物を含む。１つの実施形態において、この潤滑粘度の油は、ＡＰＩグループＩ、グループＩＩ、グループＩＩＩ、グループＩＶの油またはこれらの混合物である。あるいは、この潤滑粘度の油は多くの場合、ＡＰＩグループＩＩ、グループＩＩＩまたはグループＩＶの油またはこれらの混合物である。

【0024】

いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、グループＩＩまたはグループＩＩＩの基油あるいはこれらの組み合わせを含む。この油はまた、ワックスの水素化異性化から誘導されてもよく、例えばスラックワックスまたはＦｉｓｃｈｅｒ−Ｔｒｏｐｓｃｈ合成されたワックスである。このような「ガス液化」油は、典型的にはグループＩＩＩとして特徴付けられる。

【0025】

本発明の組成物は、いくらかの量のグループＩの基油、ならびにグループＩＶおよびグループＶの基油さえ、含み得る。しかし、いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油成分は、２０重量％以下、１０重量％以下、５重量％以下またはさらに１重量％以下のグループＩの基油を含む。これらの限度は、グループＩＶまたはグループＶの基油にもまた適用し得る。別の実施形態において、本発明の組成物中に存在する潤滑油は、少なくとも６０重量％、少なくとも７０重量％、少なくとも８０重量％、少なくとも９０重量％またはさらに少なくとも９８重量％のグループＩＩおよび／またはグループＩＩＩの基油を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物中に存在する潤滑油は、本質的にグループＩＩおよび／またはグループＩＩＩの基油のみであり、ここで少量の他のタイプの基油は存在してもよいが、組成物全体の特性または性能に有意に影響を与える量ではない。

【0026】

いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、いくらかの量のグループＩおよび／またはグループＩＩの基油を含む。別の実施形態において、本発明の組成物は、潤滑粘度の油が、主にグループＩおよび／またはグループＩＩの基油であるか、またはさらに本質的にグループＩおよび／またはグループＩＩの基油であるか、またはさらに排他的にグループＩおよび／またはグループＩＩの基油である潤滑組成物である。

【0027】

いくつかの実施形態において、本発明はグループＩＩの組成物を提供し、すなわち、潤滑粘度の油がグループＩＩの油を含み、そしてさらに排他的ではないにしても主にグループＩＩの油であり得るが、合成油組成物の性能を依然として提供する。これは本発明の利点の一つである。

【0028】

記載される様々な潤滑粘度の油は単独で使用されてもよくまたは組み合わせて使用されてもよい。潤滑粘度の油は、約８０重量％〜約９８重量％までの範囲内で、あるいは８０重量％の油から、８５重量％の油から、９０重量％の油から、９５重量％の油から、９７重量％の油からまたはさらに９７．５重量％の油からもしくは９８重量％の油から、あるいは９０重量％の油まで、９５重量％の油まで、９７重量％の油まで、９７．５重量％の油までまたはさらに９８重量％の油までで、記載される工業用のギア潤滑剤中において使用され得る。潤滑粘度の油は、約１重量％〜約４９重量％の範囲内で、あるいは１重量％の油から、５重量％の油からさらに１０重量％の油から、１０重量％の油まで、２０重量％の油まで、３０重量％の油まで、４０重量％の油までまたはさらに４５重量％の油までもしくは４９重量％の油までで、記載される工業用のギア添加剤濃縮物中で希釈剤として使用され得る。

【0029】

工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ
本発明の組成物は工業用のギア添加物パッケージを含む。換言すると、本発明の組成物は、工業用のギア潤滑剤またはそれを作製するための添加剤パッケージであるように設計されている。本発明は、自動車のギア潤滑剤または他の潤滑組成物には関連しない。

【0030】

いくつかの実施形態において、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージは脱乳化剤、分散剤および金属不活性化剤を含む。工業用のギアの用途のために設計された従来の添加剤パッケージの任意の組み合わせが使用され得る。本発明は本来的に、このような添加剤パッケージが本発明の脂肪族ホスファイトを本質的に含まないか、または少なくとも本発明によって特定されるタイプの脂肪族ホスファイトを特定される量で含まないことを想定している。

【0031】

工業用のギア添加剤パッケージ中に存在し得る添加剤として、発泡防止剤、脱乳化剤、流動点降下剤、抗酸化剤、分散剤、金属不活性化剤（例えば、銅不活性化剤）、耐摩耗剤、極圧剤、粘度調整剤、またはそれらのいくつかの混合物が挙げられる。これらの添加剤は、５０重量ｐｐｍから、７５重量ｐｐｍから、１００重量ｐｐｍからまたはさらに１５０重量ｐｐｍから、５重量％まで、４重量％まで、３重量％まで、２重量％までまたはさらに１．５重量％まで、あるいは７５重量ｐｐｍ〜０．５重量％、１００重量ｐｐｍ〜０．４重量％または１５０重量ｐｐｍ〜０．３重量％の範囲でそれぞれ存在し得、ここでこれらの重量％の値は潤滑油組成物全体に関するものである。しかし、いくつかの添加剤（粘度調製ポリマーを含み、代替的に基礎液体の部分として考えられ得る）は、この基礎液体から別に考えられるとき、３０重量％まで、４０重量％までまたはさらに５０重量％までを含む、より多い量で存在し得ることに留意されたい。これらの添加剤は単独で使用されてもよくまたはそれらの混合物として使用されてもよい。

【0032】

消泡剤（発泡防止剤としてもまた知られる）は、当技術分野において公知であり、そして有機シリコーンおよび非シリコン発泡防止剤を含むが、これらに限定されない。有機シリコーンの例としてジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非シリコン発泡防止剤の例として、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびそれらの混合物、ならびにエチルアクリレート、２−エチルヘキシルアクリレートおよび必要に応じて酢酸ビニルのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、この消泡剤はポリアクリレ−トである。消泡剤は、０．００１〜０．０１２ｐｂｗまたは〜０．００４ｐｂｗあるいはさらに０．００１〜０．００３ｐｂｗでこの組成物中に存在し得る。

【0033】

脱乳化剤は当技術分野において公知であり、そして、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンまたはポリアミンの誘導体であってエチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドと順次反応させられたもの、あるいはそれらの混合物、を含むが、これらに限定されない。脱乳化剤の例としてポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、（エチレンオキシド−プロピレンオキシド）ポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、この脱乳化剤はポリエーテルである。脱乳化剤は、この組成物中に０．００２〜０．２ｐｂｗで存在し得る。

【0034】

流動点降下剤は、当技術分野において公知であり、そしてポリメタクリレート、マレイン酸無水物−スチレンのコポリマーのエステル；ポリアクリレート；ポリアクリルアミド；ハロパラフィンワックスおよび芳香族化合物の縮合生成物；カルボン酸ビニルポリマー；ならびに脂肪酸のビニルエステル、エチレン−酢酸ビニルのコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド重合樹脂、アルキルビニルエーテル、フマル酸ジアルキルのターポリマーおよびそれらの混合物、を含むが、これらに限定されない。

【0035】

本発明の組成物は、いくつかの上述の添加剤以外に、錆防止剤もまた含み得る。適切な錆防止剤として、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアレーンスルホン酸、脂肪族カルボン酸のヒドロカルビルアミン塩、もしくはそれらのエステル、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリン、モノ−チオリン酸塩もしくはエステル、またはそれらの任意の組み合わせ；あるいはそれらの混合物が挙げられる。本発明のジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩の例として、上述のものならびに、ジヘプチルもしくはジオクチルまたはジノニルジチオリン酸の、エチレンジアミン、モルホリンまたはＰｒｉｍｅｎｅ（登録商標）８１Ｒとの反応生成物（単数種類または複数種類）あるいはそれらの混合物が挙げられるがこれに限られない。本発明の錆防止剤パッケージにおいて使用される適切なヒドロカルビルアレーンスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩は：

【化1】

の式によって表され、ここにおいてＣｙはベンゼンまたはナフタレン環である。Ｒ^１は、約４個から約３０個まで、好ましくは約６個から約２５個まで、より好ましくは約８個から約２０個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である。ｚは独立して１、２、３または４であり、そして最も好ましくは、ｚは１または２である。Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４は上述のものと同じである。本発明のヒドロカルビルアレーンスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩の例として、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩が挙げられるがこれに限定されない。適切な脂肪族カルボン酸またはそれらのエステルの例としてモノオレイン酸グリセロールおよびオレイン酸が挙げられる。適切な窒素含有カルボン酸のエステルの例としてオレイルサルコシンが挙げられる。この錆防止剤は、この潤滑油組成物の０．０２〜０．２重量％、０．０３〜０．１５重量％、０．０４〜０．１２重量％または０．０５〜０．１重量％の範囲で存在し得る。本発明の錆防止剤は単独で使用されてもよいし、またはそれらの混合物で使用されてもよい。

【0036】

本発明の組成物は金属不活性化剤もまた含み得る。金属不活性化剤は、潤滑油における酸化を促進する、金属の触媒効果を無効にするために使用される。適切な金属不活性化剤として、トリアゾール、トリルトリアゾール、チアジアゾールまたはそれらの組み合わせ、ならびにそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。例として、上述のもの以外のベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、２−アルキルジチオベンズイミダゾール、２−アルキルジチオベンゾチアゾール、２−（Ｎ，Ｎ’−ジアルキルジチオ−カルバモイル）ベンゾチアゾール、２，５−ビス（アルキル−ジチオ）−１，３，４−チアジアゾール、２，５−ビス（Ｎ，Ｎ’−ジアルキルジチオカルバモイル）−１，３，４−チアジアゾール、２−アルキルジチオ−５−メルカプトチアジアゾールの誘導体またはそれらの混合物が挙げられる。これらの添加剤は、組成物全体の中で０．０１〜０．２５重量％で使用され得る。いくつかの実施形態において、この金属不活性化剤はヒドロカルビル置換ベンゾトリアゾール化合物である。ヒドロカルビル置換を有するベンゾトリアゾール化合物は、以下の環位置の少なくとも１つ、１−または２−または４−または５−または６−または７−ベンゾトリアゾール、を含む。ヒドロカルビル基は、約１個から約３０まで、好ましくは約１個から約１５個まで、より好ましくは約１個から約７個までの炭素原子を含み、そして最も好ましくはこの金属不活性化剤は単独で使用される５−メチルベンゾトリアゾールか、またはそれらの組み合わせである。この金属不活性化剤は、この潤滑油組成物の０．００１〜０．５ｐｂｗ、０．０１〜０．０４ｐｂｗまたは０．０１５〜０．０３ｐｂｗの範囲で存在し得る。金属不活性化剤はまた、０．００２〜または０．００４〜０．０２ｐｂｗでこの組成物中に存在し得る。この金属不活性化剤は単独で使用されてもよいし、またはそれらの混合物で使用されてもよい。

【0037】

抗酸化剤もまた存在し得、例えば、（ｉ）アルキル化ジフェニルアミン、および（ｉｉ）置換ヒドロカルビル一硫化物である。いくつかの実施形態において、本発明のアルキル化ジフェニルアミンは、ビス−ノニル化ジフェニルアミンおよびビス−オクチル化ジフェニルアミンである。いくつかの実施形態において、この置換ヒドロカルビル一硫化物として、硫化ｎ−ドデシル−２−ヒドロキシエチル、１−（ｔｅｒｔ−ドデシルチオ）−２−プロパノールまたはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、この置換ヒドロカルビル一硫化物は、１−（ｔｅｒｔ−ドデシルチオ）−２−プロパノールである。この抗酸化剤パッケージはまた、立体障害フェノールを含み得る。この立体障害フェノールについての適切なヒドロカルビル基の例として、２−エチルヘキシルまたはｎ−ブチルエステル、ドデシルあるいはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。メチレン架橋立体障害フェノールの例として、４，４’−メチレン−ビス（６−ｔｅｒｔ−ブチル ｏ−クレゾール）、４，４’−メチレン−ビス（２−ｔｅｒｔ−アミル−ｏ−クレゾール）、２，２’−メチレン−ビス（４−メチル−６−ｔｅｒｔ−ブチルフェノール）、４，４’−メチレン−ビス（２，６−ジ−ｔｅｒｔブチルフェノール）またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。

【0038】

いくつかの実施形態において、本発明の工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージは、窒素含有分散剤、例えば、ヒドロカルビル置換窒素含有添加剤、を含む。適切なヒドロカルビル置換窒素含有添加剤として、無灰分散剤およびポリマー性分散剤が挙げられる。無灰分散剤は、供給時に、金属を含まず、ひいては、潤滑剤に添加されるとき、通常は硫酸灰分に貢献しないため、このように名付けられている。しかし、もちろん、ひとたびそれらが金属含有化学種を含む潤滑剤に添加されると、周囲の金属と相互作用し得る。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合される極性基によって特徴付けられる。このような材料の例として、スクシンイミド分散剤、Ｍａｎｎｉｃｈ分散剤およびそれらのホウ酸化誘導体が挙げられる。

【0039】

いくつかの実施形態において、本発明の工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージは、硫黄含有化合物を含む。適切な硫黄含有化合物として、硫化オレフィンおよびポリスルフィドが挙げられる。これらの硫化オレフィンまたはポリスルフィドは、イソブチレン、ブチレン、プロピレン、エチレンまたはそれらのいくつかの組み合わせから誘導され得る。いくつかの実施例において、この硫黄含有化合物は、上述の天然油または合成油のいずれか、あるいはさらにそれらのいくつかの組み合わせ、から誘導される硫化オレフィンである。例えば、この硫化オレフィンは植物油から誘導され得る。

【0040】

いくつかの実施形態において、工業用のギア添加剤パッケージは、１つ以上のリンアミン塩を含むが、これは、この添加剤パッケージ（または別の実施形態においては、結果として生じた工業用のギア潤滑剤組成物）が、このような材料の１．０重量％以下、あるいはさらに０．７５重量％以下または０．６重量％以下で含むような量においてである。別の実施形態において、この工業用のギア添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用のギア潤滑剤組成物は、リンアミン塩を本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない。

【0041】

いくつかの実施形態において、成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、は、１種類以上の耐摩耗添加剤および／または極圧剤、１種類以上の錆防止剤および／または腐食防止剤、１種類以上の発泡防止剤、１種類以上の脱乳化剤またはそれらの任意の組み合わせを含む。

【0042】

いくつかの実施形態において、工業用のギア添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用のギア潤滑剤組成物は、リンアミン塩、分散剤もしくはこれら両方を本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない。

【0043】

いくつかの実施形態において、工業用のギア添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用のギア潤滑剤組成物は、脱乳化剤、腐食防止剤、摩擦調整剤またはこれらの２種類以上の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、この腐食防止剤としてトリルトリアゾールが挙げられる。なお別の実施形態において、この工業用のギア添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用のギア潤滑剤組成物は、１種類以上の硫化オレフィンまたはポリスルフィド；１種類以上のリンアミン塩；１種類以上のチオホスフェートエステル、１種類以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテルおよび／またはアルケニルアミン；１種類以上のエステルコポリマー；１種類以上のカルボン酸エステル；１種類以上のスクシンイミド分散剤またはそれらの任意の組み合わせを含む。

【0044】

工業用のギア添加剤パッケージは、工業用のギア潤滑剤全体の中で１〜５重量％、または別の実施形態において、１重量％から、１．５重量％からまたはさらに２重量％から、２重量％まで、３重量％まで、４重量％まで、５重量％まで、７重量％までまたはさらに１０重量％までで存在し得る。本発明の工業用のギア濃縮組成物中に存在し得る工業用のギア添加剤パッケージの量は、上記の重量％に相当する量であり；ここでそれらの値は存在する油なしで考えられる（すなわち、存在する油の実際の量と一緒の場合、それらはｐｂｗ値として扱われ得る）。

【0045】

脂肪族ホスファイト
本発明の組成物は、潤滑剤組成物全体の１．０重量％以上で存在する脂肪族ホスファイトを含む。

【0046】

適切なホスファイトとして、４個以上、または８個以上あるいは１２個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル基を少なくとも１つ有するものが挙げられる。このヒドロカルビル基上の炭素原子の数についての典型的な範囲として、８〜３０個または１０〜２４個または１２〜２２個または１４〜２０個または１６〜１８個が挙げられる。このホスファイトは、モノ−ヒドロカルビル置換ホスファイト、ジ−ヒドロカルビル置換ホスファイトまたはトリ−ヒドロカルビル置換ホスファイトであり得る。１つの実施形態において、このホスファイトは硫黄を含まない、すなわち、このホスファイトはチオホスファイトでない。

【0047】

４個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル基を少なくとも１つ有するホスファイトは：

【化2】

の式によって表され得、ここにおいて、Ｒ^５、Ｒ^６およびＲ^７の少なくとも１つは、少なくとも４個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であってもよく、そしてその他は水素またはヒドロカルビル基であってよい。１つの実施形態において、Ｒ^５、Ｒ^６およびＲ^７は全てヒドロカルビル基である。このヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、非環状またはそれらの混合物であり得る。３つ全ての基Ｒ^５、Ｒ^６およびＲ^７を有する式において、この化合物はトリ−ヒドロカルビル置換ホスファイトであり得、すなわち、Ｒ^５、Ｒ^６およびＲ^７は全てヒドロカルビル基である。

【0048】

アルキル基は直鎖状であってもよくまたは分枝状であってもよく、典型的には直鎖状であり得、そして不飽和であってもよくまたは飽和であってもよく、典型的には飽和であり得る。Ｒ^５、Ｒ^６およびＲ^７についてのアルキル基の例として、オクチル、２−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはそれらの混合物が挙げられる。

【0049】

いくつかの実施形態において、本発明の脂肪族ホスファイト成分および／または組成物全体は、リン酸エステルおよび／またはそれらのアミン塩を本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない。

【0050】

いくつかの実施形態において、脂肪族ホスファイトは、アルケニルホスファイトまたはそれらのエステル、例えば、ジメチル水素ホスファイトのエステル、を含む。

【0051】

脂肪族ホスファイトは、工業用のギア潤滑剤全体の中で１．０〜１０．０重量％、または別の実施形態において、１重量％から、１．５重量％からまたはさらに２重量％から、１．５重量％まで、１．９重量％まで、２重量％まで、３重量％まで、４重量％まで、５重量％まで、７重量％までまたはさらに１０重量％までで存在し得る。本発明の工業用のギア濃縮組成物において存在し得る工業用のギア添加剤パッケージの量は、上記の重量％に相当する量であり；ここでこれらの値は存在する油なしで考えられる（すなわち、存在する油の実際の量と一緒の場合、それらはｐｂｗ値として扱われ得る）。

【0052】

いくつかの実施形態において、工業用のギア添加剤パッケージ成分（成分（ｂ））の脂肪族ホスファイト成分（成分（ａ））に対する比は、油を含まない重量に基づいて、１：０．５から１：１．５までである。なおさらなる実施形態において、この成分の比（ｂ）：（ｃ）は、１：０．５〜１：１．５または１：０．６〜１：１．２または１：０．７〜１：１．１または１：０．８〜１：１．０である。

【0053】

工業用の適用
上述の通り、本発明は、工業用のギア潤滑剤を作製するために使用され得る工業用のギア潤滑剤と工業用のギア添加剤濃縮物との両方を含む。

【0054】

本発明の工業用のギア潤滑剤において：成分（ａ）、潤滑粘度の油、は、８０重量％の油から、８５重量％の油から、９０重量％の油から、９５重量％の油から、９７重量％の油からまたはさらに９７．５重量％の油からもしくは９８重量％の油から、９０重量％まで、９５重量％まで、９７重量％まで、９７．５重量％までまたはさらに９８重量％までで存在し得；成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、は、１重量％から、１．５重量％からまたはさらに２重量％から、２重量％まで、３重量％まで、４重量％まで、５重量％まで、７重量％までまたはさらに１０重量％までで存在し得；そして成分（ｃ）、脂肪族ホスファイト、は、１重量％から、１．５重量％からまたはさらに２重量％から、１．５重量％まで、１．９重量％まで、２重量％まで、３重量％まで、４重量％まで、５重量％まで、７重量％までまたはさらに１０重量％までで存在し得る。

【0055】

本発明の工業用のギア添加剤濃縮物において：成分（ａ）、潤滑粘度の油、は、１重量％の油から、５重量％の油からさらに１０重量％の油から、１０重量％まで、２０重量％まで、３０重量％まで、４０重量％までまたはさらに４５重量％までもしくは４９重量％までで存在し得；成分（ｂ）、工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージ、は、２０重量％から、２５重量％から、２５．５重量％から、２７．５重量％から、３０重量％から、３５重量％から、４５重量％からまたはさらに４５重量％から、４５重量％まで、４７．５重量％までまたはさらに４９．５重量％までで存在し得；そして成分（ｃ）、脂肪族ホスファイト、は、２５．５重量％から、２７．５重量％から、３０重量％から、３５重量％から、４５重量％からまたはさらに４５重量％から、４５重量％まで、４７．５重量％までまたはさらに４９．５重量％までで存在し得る。

【0056】

いくつかの実施形態において、工業用のギア添加剤パッケージ成分（成分（ｂ））の脂肪族ホスファイト成分（成分（ａ））に対する比は、油を含まない重量に基づいて、１：０．５から１：１．５までである。なおさらなる実施形態において、この成分の比（ｂ）：（ｃ）は、４：１〜１：５または２：１〜１：５または１：１〜１：５または１：０．５〜１：１．５または１：０．６〜１：１．２または１：０．７〜１：１．１または１：０．８〜１：１．０である。これらの比は、本発明の工業用のギア潤滑剤に対して、および／または本発明の工業用のギア添加剤濃縮物に対して適用し得る。

【0057】

本発明は、上述の工業用のギア潤滑剤および／または工業用のギア添加剤濃縮物を作製する方法を含む。このような方法は、記載される成分を一緒に混合することを含む。添加の特定の順番または手段が、有意に結果に影響を与えるとは考えられない。

【0058】

本発明は、工業用のギアボックスの動作温度を低下させる方法もまた含む。この方法は：（Ｉ）潤滑剤が少なくとも１．０重量％の脂肪族ホスファイトを含むように、工業用のギアオイル潤滑剤に脂肪族ホスファイトを添加する工程と、（ＩＩ）この工業用のギアオイル潤滑剤をこの工業用のギアボックスに供給している間にこの工業用のギアボックスを動作させる工程と、を含む。

【0059】

この方法は、工業用のギアボックスへの本明細書中に記載される工業用のギア潤滑剤の１種類の添加、およびその後にその工業用のギアボックスを動作させることもまた含み得、このことは、特定される脂肪族ホスファイトを含まない類似の工業用のギア潤滑剤を用いて動作させられる場合に、この工業用のギアボックスが経験する動作温度と比較して、より低い動作温度をこの工業用のギアボックスにおいてもたらす。

【0060】

これらの方法において、いくつかの実施形態において、脂肪族ホスファイトの全部ではないにしても少なくとも一部は、潤滑剤が工業用のギアボックスに供給される前に、工業用のギアオイル潤滑剤に添加される。別の実施形態において、この脂肪族ホスファイトの全部ではないにしても少なくとも一部は、この潤滑剤がこの工業用のギアボックスに供給された後に、この工業用のギアオイル潤滑剤に添加される。

【0061】

いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、２種類以上のメタクリル酸エステルから誘導される単位を含むコポリマーを本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない。より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は以下のものを本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない：以下のものから誘導される単位を含むコポリマー：（ａ）そのエステル基の中に９個から２５個までの炭素原子を含むメタクリル酸エステルおよび（ｂ）そのエステル基の中に７個から１２個までの炭素原子を含むメタクリル酸エステルであって、該エステル基が２−（Ｃ_１−４アルキル）−置換基を有するメタクリル酸エステル、ならびに必要に応じて（ｃ）そのエステル基の原子中に２個から８個までの炭素原子を含み、そしてメタクリル酸エステル（ａ）および（ｂ）とは異なるメタクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物および窒素含有ビニルモノマー、からなる群から選択される少なくとも１種類のモノマー、ただしそのエステルの６０重量％以下が、そのエステル基の中に１１個以下の炭素原子を含むという条件である。

【0062】

いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約０．０５から約２までの還元比粘度（ＲＳＶ）を有するカルボキシ含有インターポリマーから誘導される窒素含有エステルであって、該インターポリマーが少なくとも２種類のモノマーから誘導される窒素含有エステルを本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない。さらに具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は以下のものを本質的に含まないか、またはさらに完全に含まない：約０．０５から約２までの還元比粘度（ＲＳＶ）を有するカルボキシ含有インターポリマーから誘導される窒素含有エステルであって、該インターポリマーは少なくとも２種類のモノマーから誘導され、（ｉ）該モノマーの一方は、２個から約３０個までの炭素原子を含む脂肪族オレフィンおよびビニル芳香族モノマーの少なくとも１種類であり、そして（ｉｉ）該モノマーの他方は、少なくとも１種類のα，β−不飽和アシル化剤であり、該エステルは、そのポリマー性構造内における、該インターポリマーのカルボキシ基から誘導される以下のそれぞれの基の存在によって特徴付けられる、窒素含有エステル：（Ａ）該インターポリマー中のカルボキシ基のモルに基づいて約２０から約７０モル％までの、約１３個から約１９個までの炭素原子を含むエステル基；（Ｂ）該インターポリマー中のカルボキシ基のモルに基づいて約８０から約３０モル％までの、約８個から約１２個までの炭素原子を含むエステル基、必要に応じて；（Ｃ）該インターポリマー中のカルボキシ基のモルに基づいて約２０モル％までの、２個から７個までの炭素原子を含むエステル基；ここにおいてこのカルボキシ含有インターポリマーから誘導されるカルボキシ基の約９３から約９７％までがエステル基であり、その残りのカルボキシ基は残留カルボン酸または酸無水物基を含み、これらはその後（Ｄ）平均して１から約１．１の第１級または第２級アミノ基を有する少なくとも１種類のアミノ化合物と反応させられて、このカルボン酸または酸無水物基の約５から５０％未満までをカルボニル−アミノ基に変換し、反応させられなかったカルボン酸または酸無水物基を（Ｅ）残留カルボン酸または酸無水物基として維持する。

【実施例】

【0063】

本発明は、特に有利な実施形態を説明する以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は本発明を例証するために提供されるが、これらが本発明を限定することは意図されていない。

【0064】

実施例セットＡ
工業用のギア潤滑剤の実施例のセットはグループＩＩの基油において調製される。それぞれの実施例には、同じ基油および同じ工業用のギア潤滑剤添加剤パッケージを使用する。そのとき、工業用のギアボックスが、調製したギア潤滑剤を用いて動作させられるときに見られる動作温度に対して補助剤が有する影響を評価するためにいくつかの実施例は補助添加剤を含む。これらの実施例を以下の表の中にまとめる。これらの実施例において使用される異なる補助添加剤の異なる量は、それぞれの材料の異なるリンのレベルを反映している。量は、ある補助添加剤から別のものに変更するとき、同じ量のリンが送達されるように調整された。

【表1】

１−このセットにおける全ての実施例はグループＩＩのＩＳＯ １５０基油を使用しており、これは６００Ｎ ＲＬＯＰ基油とポリイソブチレンとの混合物である。
２−このセットにおける全ての実施例は、硫化オレフィン、チオホスフェートエステル、チアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテル、アルケニルアミン、エステルコポリマー、カルボン酸エステルおよびスクシンイミド分散剤を含む同じ工業用のギアオイル添加剤パッケージを使用している。
３−Ｃ１８ホスファイトは、Ｃ１８アルキル基を有するジ−アルキル置換ホスファイトである。
４−Ｃ１６〜１８ホスファイトは、Ｃ１６〜１８アルキル基を有するジ−アルキル置換ホスファイトである。
５−Ｃ１６〜１８ホスホネートは、Ｃ１６〜１８アルキル基を有するジ−アルキル置換ホスホネートである。
６−ｐｈｏｓ酸アミン塩は、Ｃ１８アルキルリン酸のアミン塩である。
７−それぞれの実施例は、内部で開発された手順によって試験され、この手順において、「Ｃ」型のギアは試験装置の中に取り付けられ、これら実施例の工業用のギア潤滑剤で潤滑され、慣らし期間を通して動作させられ、そしてその後３００Ｎｍの負荷の下で１７５０ｒｐｍで２時間試験される。ギアボックスの温度がモニタリングされ、そして報告される値は、温度が試験期間の間中安定化されていたところである。ベースラインと比較してより低い温度は、ギアボックスの動作温度の低下を示す。これらの結果は周囲温度に対して正規化されている。

【0065】

結果は、本発明の工業用のギア潤滑剤が、工業用のギアボックス中の動作温度の低下を提供することを示す。データは、この利益が複数の脂肪族ホスファイトを使用して取得され、そして低下のレベルが使用される基礎媒体に依存することを示す。

【0066】

実施例セットＢ
工業用のギア潤滑剤の実施例のさらなるセットは様々な別の基油において調製される。これらの実施例は以下の表の中にまとめられる。

【表2】

１−実施例Ｂ−１、Ｂ−２、Ｂ−３、Ｂ−４およびＢ−５には、ＰＡＯの混合物である合成ＩＳＯ １５０基油を使用する。
２−実施例Ｂ−６およびＢ−７には、ＰＡＯおよびアルキルエステルコポリマーの混合物である合成ＩＳＯ １５０基油を使用する。
３−実施例Ｂ−８およびＢ−９には、ＰＡＯおよびアルキルエステルコポリマーの混合物である合成ＩＳＯ ３２０基油を使用する。
４−Ｂ−８およびＢ−９以外の、このセットにおける全ての実施例には、実施例セットＡにおいて使用されるものと同じ工業用のギアオイル添加剤パッケージを使用する。実施例Ｂ−８およびＢ−９には、異なる工業用のギアオイル添加剤パッケージを使用し、これは実施例セットＡにおいて使用されるパッケージと同じ成分を含むが、量において異なる。
５−Ｃ１８ホスファイトは、Ｃ１８アルキル基を有するジ−アルキル置換ホスファイトである。
６−Ｃ１６〜１８ホスファイトは、Ｃ１６〜１８アルキル基を有するジ−アルキル置換ホスファイトである。
７−それぞれの実施例は、内部で開発された手順によって試験され、この手順において、「Ｃ」型のギアは試験装置の中に取り付けられ、これら実施例の工業用のギア潤滑剤で潤滑され、慣らし期間を通して動作させられ、そしてその後３００Ｎｍの負荷の下で１７５０ｒｐｍで２時間試験される。ギアボックスの温度がモニタリングされ、そして報告される値は、温度が試験期間の間中安定化されていたところである。ベースラインと比較してより低い温度は、ギアボックスの動作温度の低下を示す。

【0067】

結果は、本発明の工業用のギア潤滑剤が、工業用のギアボックス中の動作温度の低下を提供することを示す。データは、この利益が、複数の基油および異なる工業用のギア添加剤パッケージにわたって取得されることを示す。

【0068】

上記で言及されたそれぞれの文献は参考として本明細書中に援用される。実施例またはそうではないと示されるところ以外においては、量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定している、本明細書中の全ての数的な量は、「約」という言葉によって修飾されているとして理解されるべきである。そうではないと示されない限り、全てのパーセントおよび記述の値は重量に基づく。そうではないと示されない限り、全ての分子量は数平均分子量である。そうではないと示されない限り、本明細書中で言及されるそれぞれの化学物質または組成物は、異性体と、副生成物と、誘導体と、市販の等級の中に存在すると通常理解される他のそのような材料とを含み得る市販の等級の材料であるとして解釈されるべきである。しかし、そうではないと示されない限り、それぞれの化学成分の量は、いずれの溶媒または希釈剤（これらは通例市販の材料中に存在し得る）も除外されて提示される。本明細書中で説明される量、範囲および比率の上限および下限は、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素についての範囲および量は、任意の別の要素についての範囲および量で使用され得る。本明細書中で使用されるとき、「本質的にからなる」という表現は、検討中の組成物の基礎的および新規な特徴に特性に顕著に影響を与えない物質を含むことを認める。本明細書中に記載される本発明の全ての実施形態は、開いたそして含包的な見解（すなわち、「を含む」という言葉を使用する）ならびに閉じたそして排他的な見解（すなわち、「からなる」という言葉を使用する）の両方の見解から熟慮され、そして読まれ得る。

【0069】

本明細書中で使用されるとき、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」はその通常の意味で使用され、これは当業者に周知である。具体的には、これは、分子の残りの部分に直接結合されている炭素原子を有し、そして主に炭化水素の特徴を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例として以下のものが挙げられる：（ｉ）炭化水素の置換基、すなわち、脂肪族（例えば、アルキルまたはアルケニル）、脂環式（例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル）置換基、ならびに芳香族、脂肪族および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環状置換基であって、そこにおいてその環がその分子の別の部分を通って完成される置換基（例えば、２つの置換基が一緒に１つの環を形成する）；（ｉｉ）置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、その置換基の主な炭化水素の性質を変えない非炭化水素基を含む置換基（例えば、ハロ（特に、クロロおよびフルオロ）、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ）；（ｉｉｉ）ヘテロ置換基、すなわち、主な炭化水素の特徴を有するが、本発明の文脈においては、環または鎖において炭素以外のものを含み（この環または鎖のその他の部分は炭素原子で構成される）、そしてピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基を包含する、置換基。ヘテロ原子として硫黄、酸素および窒素が挙げられる。一般的に、このヒドロカルビル基中の１０個の炭素原子毎に２つ以下または１つ以下の非炭化水素置換基が存在するか；あるいは、このヒドロカルビル基において非炭化水素置換基が無くてもよい。

【0070】

上記に記載されるいくつかの材料は、最終的な配合物の中で相互作用し得るので、最終的な配合物の成分は最初に添加されるものとは異なり得ることが公知である。例えば、金属イオン（例えば、界面活性剤の）は、別の分子の別の酸性またはアニオン性の場所に移り得る。こうして形成された生成物（本発明の組成物をその意図される使用において利用するとき形成される生成物を含む）は容易に記載でき場合があり得る。それにもかかわらず、全てのこのような改変および反応生成物は本発明の範囲内に含まれ；本発明は上述の成分を混ぜ合わせることによって調製される組成物を包含する。