特許第6378738号(P6378738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378738
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】内燃機関制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20180813BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   F02D45/00 360Z
   F02D41/20 330
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-223985(P2016-223985)
(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-80651(P2018-80651A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年3月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−98665(JP,A)
【文献】 特開2014−169652(JP,A)
【文献】 特開2015−177674(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたインジェクタが有するコイルの抵抗値に基づいて前記内燃機関の運転状態を制御する制御部を備えた内燃機関制御装置において、
前記制御部は、
前記インジェクタの燃料噴射に伴って前記コイルに印加される駆動電圧の電圧値と、前記燃料噴射に伴って前記コイルに流れる電流の電流値と、を用いて前記コイルの前記抵抗値を算出するにあたり、
前記コイルの通電時間と、前記電流値が飽和するのに必要な飽和時間と、から前記コイルの通電終了時点での前記電流値の飽和度合を算出し、
前記通電終了時点での前記電流値を前記飽和度合に基づいて補正することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃料噴射時に伴って前記コイルを流れる前記電流の前記電流値と、前記飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、前記飽和時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記飽和度合と、前記電流値を補正する補正係数と、の関係に基づいて、前記補正係数を算出することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射に伴って前記コイルの上流側端子に印加される第1の電圧値を検出する第1の電圧検出回路と、
前記燃料噴射に伴って前記コイルの下流側端子に接続された抵抗素子に印加される第2の電圧値を検出する第2の電圧検出回路と、を更に備え、
前記制御部は、前記コイルの前記抵抗値を算出するにあたり、
前記電流値の前記飽和度合に代え、前記通電時間と、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な飽和時間と、から前記コイルの通電終了時点での前記第の電圧値の飽和度合を算出し、
前記通電終了時点での前記電流値を補正することに代え、前記通電終了時点での前記第2の電圧値を前記第2の電圧値の前記飽和度合に基づいて補正することを特徴とする請求項1の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な前記飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な前記飽和時間を算出することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の電圧値の前記飽和度合と、前記第2の電圧値を補正する補正係数と、の相関関係から前記第2の電圧値の前記補正係数を算出することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関制御装置に関し、特に、発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両に適用される内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両においては、キャブレタシステムでは今後より厳しくなる排気ガス規制に対応することが困難になるため、排気ガスの低減を目的として燃料噴射システムの採用が推進されている。しかしながら、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両の販売価格は大型自動二輪車や四輪自動車等の車両の販売と比較して安価であるために、このような販売価格を考えた場合、キャブレタシステムと比較して高コストな燃料噴射システムをそのまま発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両に採用することは困難である。このため、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両においては、燃料噴射システムに関する部品、特にセンサ類については、コストの低減が求められている。
【0003】
ここで、例えば燃料噴射システムにおける温度センサは、内燃機関の暖機状態の検出のために用いられることが一般的である。具体的には、燃料噴射システムは、温度センサの出力に基づいて内燃機関の温度を算出し、このように算出した内燃機関の温度に基づいて内燃機関の暖機状態を検出して、点火時期及び燃料噴射の制御を行っている。このため、燃料噴射システムを採用する場合には、内燃機関に温度センサを装着する必要がある。更に、内燃機関に温度センサを設置する際には、配線用のワイヤやカプラを設置する必要がある上に、温度センサを設置する内燃機関の部位を加工する必要がある。この結果、販売価格における燃料噴射システムのコストの割合はキャブレタシステムのものと比較して高くなる。このため、特に発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両において燃料噴射システムを制御する内燃機関制御装置においては、コストダウンを目的として燃料噴射システムから温度センサを省略することが求められている。
【0004】
かかる状況下で、特許文献1は、内燃機関10の制御装置70に関し、燃料噴射弁29のコイル(インジェクタのコイル)の抵抗値を検出して、このように検出した抵抗値に基づいて、内燃機関の温度を算出する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−98665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1記載の構成では、インジェクタのコイルの抵抗値を検出して、このように検出した抵抗値に基づいて、内燃機関の温度を算出するものではあるが、かかる抵抗値の検出精度には向上の余地がある。
【0007】
具体的には、本発明者の検討によれば、インジェクタのコイルの抵抗値は、通電時のコイルの両端子間に生じる電圧である端子間電圧(便宜上、駆動電圧と呼ぶことがある)とそのコイルを流れる電流とで原理的に規定されるものであるが、通電開始時には、コイルに流れるが一定電流に飽和しておらず精度よくコイルを流れる電流を検出できないので、インジェクタのコイルの抵抗値を算出するには、通電時間をコイルを流れるが飽和する時間以上の時間に設定することが望ましいことになる。
【0008】
ここで、本発明者の検討によれば、かかる通電時間は内燃機関の運転時に目標とする空燃比を実現するために所要の燃料噴射量を実現するための最適な通電時間に設定される必要があるため、この通電時間をコイルを流れる電流が飽和する時間以上の時間長さに設定できない状況が生じ得る。つまり、かかる場合には、算出されたインジェクタのコイルの抵抗値の精度が低下してしまい、実用上利用し得るに足るインジェクタのコイルの抵抗値を得ることができない事態が発生してしまうことになる。
【0009】
このようにコイルの通電時にそれを流れる電流が即座に一定電流(飽和電流)に飽和しない基本的な理由は、コイルに時定数が存在することによるものであるが、本発明者は、更に、コイルの両端子間に印加される電圧に応じて、コイルの通電時に流れる電流が飽和するまでの時間が変化することを知見した。ここで、本発明者の検討によれば、コイルの通電時には、強磁性ステンレス等の強磁性体の弁体であるソレノイドバルブがコイルに流れる電流によって生じる電磁力により移動されることに起因して、コイル、コイルのケース及びソレノイドバルブ等から構成される系のインダクタンスの変化が発生し、その後、ソレノイドバルブの移動が完了すると、かかるインダクタンスは一定値を呈する。そのため、コイルの両端子間の電圧が変化するとソレノイドバルブの移動状態が変化するので、ソレノイドバルブの移動が完了するまでに要する時間が変化して、これにより、コイルに流れる電流が飽和するまでの時間が変化するものと考えられる。従って、かかる端子間電圧の大きさや通電時間の長さ等を考慮して、インジェクタのコイルの抵抗値を求めることが必要になると考えられる。また、更に、本発明者の検討によれば、自動二輪車等の車両においては、四輪車等に比べてそれに搭載されるバッテリの容量が小さく、また常用する内燃機関の回転数が広い故に回転数により変化する発電量の変動が大きいため、負荷変動等によりバッテリ電圧及びそれに依存するイグニッション電圧が変動してしまう。そのため、イグニッション電圧が変動することも考慮して、インジェクタのコイルの抵抗値を求めることが必要になると考えられる。
【0010】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、簡便な構成で、車両に搭載された内燃機関のインジェクタのコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するべく、本発明は、車両に搭載されたインジェクタが有するコイルの抵抗値に基づいて前記内燃機関の運転状態を制御する制御部を備えた内燃機関制御装置において、前記制御部は、前記インジェクタの燃料噴射に伴って前記コイルに印加される駆動電圧の電圧値と、前記燃料噴射に伴って前記コイルに流れる電流の電流値と、を用いて前記コイルの前記抵抗値を算出するにあたり、前記コイルの通電時間と、前記電流値が飽和するのに必要な飽和時間と、から前記コイルの通電終了時点での前記電流値の飽和度合を算出し、前記通電終了時点での前記電流値を前記飽和度合に基づいて補正することを第1の局面とする。
【0012】
本発明は、第1の局面に加えて、前記制御部は、前記燃料噴射時に伴って前記コイルを流れる前記電流の前記電流値と、前記飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、前記飽和時間を算出することを第2の局面とする。
【0013】
本発明は、第2の局面に加えて、前記制御部は、前記飽和度合と、前記電流値を補正する補正係数と、の関係に基づいて、前記補正係数を算出することを第3の局面とする。
【0014】
本発明は、第1の局面に加えて、前記燃料噴射に伴って前記コイルの上流側端子に印加される第1の電圧値を検出する第1の電圧検出回路と、前記燃料噴射に伴って前記コイルの下流側端子に接続された抵抗素子に印加される第2の電圧値を検出する第2の電圧検出回路と、を更に備え、前記制御部は、前記コイルの前記抵抗値を算出するにあたり、前記電流値の前記飽和度合に代え、前記通電時間と、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な飽和時間と、から前記コイルの通電終了時点での前記第2の電圧値の飽和度合を算出し、前記通電終了時点での前記電流値を補正することに代え、前記通電終了時点での前記第2の電圧値を前記第2の電圧値の前記飽和度合に基づいて補正することを第4の局面とする。
【0015】
本発明は、第4の局面に加えて、前記制御部は、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な前記飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、前記第2の電圧値が飽和するのに必要な前記飽和時間を算出することを第5の局面とする。
【0016】
本発明は、第5の局面に加えて、前記制御部は、前記第2の電圧値の前記飽和度合と、前記第2の電圧値を補正する補正係数と、の相関関係から前記第2の電圧値の前記補正係数を算出することを第6の局面とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、インジェクタの燃料噴射に伴ってコイルに印加される駆動電圧の電圧値と、燃料噴射に伴ってコイルに流れる電流の電流値と、を用いてコイルの抵抗値を算出するにあたり、コイルの通電時間と、電流値が飽和するのに必要な飽和時間と、からコイルの通電終了時点での電流値の飽和度合を算出し、通電終了時点での電流値を飽和度合に基づいて補正するものであるため、車両に搭載された内燃機関のインジェクタのコイルの抵抗値を算出する際に、かかるコイル、及びそれに関連する構成部品のインダクタンスの変化、及びコイルの電源電圧であるイグニッション電圧の変化を反映することが可能な簡便な構成で、かかるコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0018】
また、本発明の第2の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、燃料噴射時に伴ってコイルを流れる電流の電流値と、電流値の飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、電流値の飽和時間を算出するものであるため、経年劣化や負荷変動等によってバッテリ電圧が変化して、コイルの電源電圧であるイグニッション電圧が変化した場合であっても、コイルを流れる電流の飽和時間を適切に算出することができ、かかるコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0019】
また、本発明の第3の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、電流値の飽和度合と、電流値を補正する補正係数と、の関係に基づいて、電流値の補正係数を算出するものであるため、電流値を補正する補正係数を適切に算出することができ、インジェクタのコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0020】
また、本発明の第4の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、燃料噴射に伴ってコイルの上流側端子に印加される第1の電圧値を検出する第1の電圧検出回路と、燃料噴射に伴ってコイルの下流側端子側に接続された抵抗素子に印加される第2の電圧値を検出する第2の電圧検出回路と、を更に備え、制御部は、コイルの抵抗値を算出するにあたり、電流値の飽和度合に代え、通電時間と、第2の電圧値が飽和するのに必要な飽和時間と、からコイルの通電終了時点での第2の電圧値の飽和度合を算出し、通電終了時点での電流値を補正することに代え、通電終了時点での第2の電圧値を第2の電圧値の飽和度合に基づいて補正するものであるため、より現実的な構成で、車両に搭載された内燃機関のインジェクタのコイルの抵抗値を算出する際に、かかるコイル、及びそれに関連する構成部品のインダクタンスの変化、及びコイルの電源電圧であるイグニッション電圧の変化を反映することができ、かかるコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0021】
また、本発明の第5の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、第1の電圧値と、第2の電圧値が飽和するのに必要な飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、第2の電圧値が飽和するのに必要な飽和時間を算出するものであるため、経年劣化や負荷変動等によってバッテリ電圧が変化して、コイルの電源電圧であるイグニッション電圧が変化した場合であっても、より現実的な構成で、コイルを流れる電流の飽和時間を適切に算出することができ、かかるコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0022】
また、本発明の第6の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、第2の電圧値の飽和度合と、第2の電圧値を補正する補正係数と、の相関関係から第2の電圧値の補正係数を算出するものであるため、より現実的な構成で、電流値を補正する補正係数を適切に算出することができ、かかるコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態における内燃機関制御装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、図1中のインジェクタ及び検出回路の構成を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態における内燃機関制御装置に適用し得るイグニッション電圧と電流検出電圧が飽和する飽和時間との関係の一例を示すグラフである。
図4図4(a)は、本実施形態における内燃機関制御装置に適用し得るインジェクタのコイルの通電時間/電流検出電圧の飽和時間の値と電流検出電圧/電流検出電圧の飽和電圧の値との関係の一例を示すグラフであり、図4(b)は、本実施形態における内燃機関制御装置に適用し得る電流検出電圧の飽和度合と補正係数との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関制御装置につき、詳細に説明する。
【0025】
〔内燃機関制御装置の構成〕
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置の構成について説明する。本実施形態における内燃機関制御装置は、典型的には、発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両といった内燃機関搭載体に好適に搭載されるものであるが、以下、説明の便宜上、かかる内燃機関制御装置は、自動二輪車等の車両に搭載されるものとして説明する。
【0026】
図1は、本実施形態における内燃機関制御装置の構成を示す模式図であり、図2は、図1中のインジェクタ及び検出回路の構成を示す模式図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態における内燃機関制御装置1は、いずれも図示を省略する車両に搭載されたガソリンエンジン等の内燃機関であるエンジンの機能部品の温度、典型的にはエンジンに燃料を供給するインジェクタ7のコイル(ソレノイド)7aの抵抗値から求まる温度に基づいてエンジンの運転状態を制御するものであり、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)10を備えている。
【0028】
ECU10は、車両に搭載されたバッテリBからの電力を利用して動作するものであり、波形整形回路11、サーミスタ素子(温度検出素子)12、A/D変換器13、点火回路14、駆動回路15、検出回路16、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)17、ROM(Read−Only Memory)18、RAM(Random Access Memory)19、タイマ20、及び中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)21を備えている。かかるECU10の各構成要素は、ECU10の筐体10a内に収容される。また、典型的には、ECU10及びエンジンは、それらの周囲が外気に触れており、かつ、ECU10は、エンジンの放射熱及びエンジンからの伝熱の影響を受けないようにそれから離間して配置されるものである。
【0029】
波形整形回路11は、クランク角センサ2から出力されたエンジンのクランクシャフト3の回転角に対応するクランクパルス信号を整形してデジタルパルス信号を生成する。波形整形回路11は、このように生成したデジタルパルス信号をCPU21に出力する。
【0030】
サーミスタ素子12は、ECU10の筐体10a内において、典型的には点火回路14である発熱素子から離間してECU10の雰囲気側の位置(例えば、筐体10aへの距離が数ミリメータ程度である筐体10aに近接した位置)に配置されたチップサーミスタであり、ECU10の筐体10a外の周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)を検出する。具体的には、サーミスタ素子12は、その雰囲気温度に対応した電気抵抗値を呈して、その電気抵抗値に応じた電圧を示す電気信号をA/D変換器13に出力する。なお、かかる電気信号を出力可能なものであれば、サーミスタ素子12を熱電対等の他の温度センサに代替してもよい。また、サーミスタ素子12が検出する温度は、エンジンの周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)に等しいものである。なお、サーミスタ素子12はECU10の他の構成要素と同様に図示しない回路基板に配置されるため、別途配線を設けて、これを介してサーミスタ素子12を電気的に接続する必要がない。
【0031】
A/D変換器13は、スロットル開度センサ4から出力されたエンジンのスロットルバルブの開度を示す電気信号、酸素濃度センサ5から出力されたエンジンに吸気される大気中の酸素濃度を示す電気信号、及びサーミスタ素子12から出力された雰囲気温度を示す電気信号を、アナログ形態からデジタル形態に各々変換する。A/D変換器13は、このようにデジタル形態に変換したこれらの電気信号をCPU21に出力する。
【0032】
点火回路14は、CPU21からの制御信号に従ってオン/オフ制御されるトランジスタ等のスイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオン/オフ動作することによって、図示を省略する点火プラグを介してエンジン内の燃料及び空気の混合気に点火するための2次電圧を発生する点火コイル6の動作を制御する。また、点火回路14は、典型的には半導体素子であるドライバIC(Integrated Circuit)であり、筐体10a内で発熱量が最も大きい構成要素である。
【0033】
駆動回路15は、CPU21からの制御信号に従ってオン/オフ制御されると共にオン抵抗がRONで示されるトランジスタ等のスイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオン/オフ動作することによって、インジェクタ7のコイル7aの通電/非通電状態を切り換える。ここで、インジェクタ7は、エンジンの図示を省略する吸気管やシリンダヘッドに装着され、エンジンから生じる熱が伝熱される。また、特に図2に示すように、インジェクタ7のコイル7aの等価回路7bは、インダクタンス成分Lと電気抵抗成分Rとから成る直列回路で表される。かかるコイル7aは、インジェクタ7のソレノイドバルブ7cを電気的に駆動するための構成部品であって、図示を省略するソレノイドケースに巻回されている。コイル7aの通電状態においては、ソレノイドバルブ7cに電磁力が働くことにより、ソレノイドバルブ7cがコイル7aの内部領域を含む可動域を移動して、コイル7aの両端子(バッテリB側の端子(上流側端子)及びバッテリBから遠い側の端子(下流側端子))間に生じる端子間電圧がその飽和電圧に向かって漸増する飽和現象を呈しながら、インジェクタ7の燃料経路を開放し、インジェクタ7から燃料が噴出されるものである。この際、コイル7aに流れる電流について見れば、かかる電流において、それがその飽和電流に向かって漸増する飽和現象が生じているものである。なお、ソレノイドバルブ7cやソレノイドケースは、磁性体であり、典型的には強磁性ステンレス等の金属製である。
【0034】
検出回路16は、特に図2に示すように、IGP電圧検出回路16a、INJ電圧検出回路16b、シャント抵抗素子16c及び増幅回路16dを備えている。IGP電圧検出回路16aは、バッテリ電圧起源のイグニッション電圧VIGPとインジェクタ7のコイル7aの上流側端子との間に接続された分圧回路を有し、コイル7aの上流側端子に印加されるイグニッション電圧VIGP(=V1)を分圧し、このように分圧した電圧V1’を示す電気信号をCPU21に出力する。INJ電圧検出回路16bは、コイル7aの下流側端子と駆動回路15との間に接続されて、抵抗値R1のシャント抵抗素子16c及び増幅回路16dを有する。駆動回路15のスイッチング素子がオンにされると、コイル7aの上流側端子にイグニッション電圧VIGP(=V1)が印加されているため、インジェクタ7、シャント抵抗素子16c及び駆動回路15のスイッチング素子を通って接地電位に電流が流れ、この際に、コイル7aの下流側端子に印加される電圧がV2、シャント抵抗素子16cの両端子(上流側の端子及び下流側の端子)間に生じる電圧が電流検出電圧V3、シャント抵抗素子16cを流れる電流(インジェクタ7のコイル7aを流れる電流)がI1、及び駆動回路15のスイッチング素子の制御端子以外の両端子(上流側の端子及び下流側の端子)間に生じる電圧がV4で示され、コイル7aの両端子間に生じる端子間電圧(コイル7aの駆動電圧)は、V1からV2(=V3+V4)を除算した電圧となる。増幅回路16dは、抵抗素子とオペアンプとによって構成されており、シャント抵抗素子16cの両端子間に生じる電圧V3を所定のゲインで増幅し、このように増幅した電圧V3’を示す電気信号をCPU21に出力する。
【0035】
EEPROM17は、燃料噴射量学習値やスロットル基準位置学習値といった各種学習値に関するデータ等を記憶する。なお、このような各種学習値に関するデータ等を記憶可能なものであれば、EEPROM17をデータフラッシュ等の他の記憶媒体に代替してもよい。
【0036】
ROM18は、不揮発性の記憶装置によって構成され、詳細は後述するコイル抵抗値算出処理用等の制御プログラム、及びコイル抵抗値算出処理で用いられるデータ(図3及び図4に示すグラフのテーブルデータ等)等の各種制御データを格納している。
【0037】
RAM19は、揮発性の記憶装置によって構成され、CPU21のワーキングエリアとして機能する。
【0038】
タイマ20は、CPU21からの制御信号に従って計時処理を実行する。
【0039】
CPU21は、ECU10全体の動作を制御する。本実施形態では、CPU21は、ROM18内に格納されているコイル抵抗値算出処理等の制御プログラムを実行することにより、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値を算出すると共に、ROM18内に格納されているエンジン温度算出処理用の制御プログラムを実行することにより、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値に対応するインジェクタ温度をエンジンの温度(エンジン温度)として算出し、このように算出したエンジン温度に基づいて点火回路14及び駆動回路15を制御することによって、エンジンの運転状態を制御する。ここで、CPU21は、コイル7aの抵抗値を算出するにあたり、IGP電圧検出回路16aから入力される電気信号が呈する電圧V1’を、コイル7aの上流側端子に印加されるイグニッション電圧VIGP(=V1)に換算すると共に、増幅回路16dから入力される電気信号が呈する電圧V3’を、シャント抵抗素子16cの両端子間に生じる電圧V3に換算する。なお、インジェクタ温度が相関を有するエンジン温度を取得する際には、エンジンの点火プラグ座の温度が実際のエンジン内部の温度に近いことを考慮して、エンジンの点火プラグ座の温度を実測し、これをエンジン温度として取得することが簡便である。
【0040】
このような構成を有する内燃機関制御装置1は、以下に示すコイル抵抗値算出処理を実行することによって、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値を算出すると共にその運転状態を制御する。以下、図3及び図4をも参照して、本実施形態におけるコイル抵抗値算出処理を実行する際の内燃機関制御装置1の動作について、より具体的に説明する。
【0041】
〔コイル抵抗値算出処理〕
図3は、本実施形態における内燃機関制御装置1に適用し得るイグニッション電圧と、そのイグニッション電圧によりインジェクタ7のコイル7aに流れる電流がシャント抵抗素子16cに印加される電圧(シャント抵抗素子16cの上流側の端子及び下流側の端子間に生じる電圧)として検出される電流検出電圧∨3が飽和する飽和時間との関係の一例を示すグラフである。また、図4(a)は、本実施形態における内燃機関制御装置1に適用し得るインジェクタ7のコイル7aの通電時間/電流検出電圧の飽和時間の値(通電時間を飽和時間で除算した値)と電流検出電圧/電流検出電圧の飽和電圧の値(イグニッション電圧を飽和電圧で除算した値)との関係の一例を示すグラフであり、図4(b)は、本実施形態における内燃機関制御装置1に適用し得る電流検出電圧の飽和度合と補正係数との関係の一例を示すグラフである。
【0042】
インジェクタ7のコイル7aに関し、そのコイル7aの上流側端子に印加されるイグニッション電圧と電流検出電圧の飽和時間との間には図3に示すような関係性があり、かかるイグニッション電圧の増加に伴いその飽和時間は減少する。そこで、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、まず、CPU21が、図3に示す関係性を呈するテーブルデータを用いて、コイル7aの上流側端子に印加されるイグニッション電圧に対応する飽和時間を算出する。具体的には、CPU21は、必要な燃料噴射時間(コイル7aの通電時間)を算出して、かかる通電時間の間、コイル7aの上流側端子にイグニッション電圧を印加した後、コイル7aの上流側端子に対してコイル7aの通電終了時に印加されるイグニッション電圧を算出する。そして、CPU21は、図3に示す関係性を呈するテーブルデータを用いて、コイル7a通電終了時に流れる電流に対応する電流検出電圧∨3からイグニッション電圧に対応する飽和時間を算出する。
【0043】
ここで、かかる電流検出電圧の飽和時間は、電流検出電圧が一定値である飽和電圧に到達(飽和)するために必要な時間を意味する。そして、かかる電流検出電圧の飽和時間は、コイル7aを流れる電流が一定値であるその飽和電流に到達(飽和)するために必要な時間に等しい値を呈するものであるから、かかる飽和時間を、コイル7aの通電終了時にコイル7aを流れる電流に対応する飽和時間として扱ってもよい。また、より直接的には、コイル7aを流れる電流とその電流の飽和時間との間の関係性を規定するテーブルデータを用いて、コイル7aの通電終了時にコイル7aを流れる電流に対応する飽和時間を算出してもよい。かかる場合には、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cの両端子間に生じる電流検出電圧からシャント抵抗素子16cを流れる電流を算出することにより、これをコイル7aの通電終了時にコイル7aを流れる電流として用いることになる。
【0044】
また、インジェクタ7のコイル7aに関し、そのコイル7aに通電する通電時間を電流検出電圧の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)と通電終了時の電流検出電圧を電流検出電圧の飽和電圧で除算した値(電流検出電圧/飽和電圧)との間には図4(a)に示すような関係性がある。そこで、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、次に、CPU21が、図4(a)に示す関係性を規定するテーブルデータに基づいて、コイル7aの通電時間を電流検出電圧の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)に対応する飽和度合を算出する。ここで、かかる飽和度合とは、通電終了時にシャント抵抗素子16cの両端子間の電流検出電圧を電流検出電圧の飽和電圧で除算した値(電流検出電圧/飽和電圧)である。
【0045】
ここで、かかる電流検出電圧の飽和度合は、通電終了時にコイル7aを流れる電流の飽和度合に等しい値を呈するものであるから、かかる飽和度合を、コイル7aの通電終了時にコイル7aを流れる電流に対応する飽和度合として扱ってもよい。また、より直接的には、コイル7aに通電する通電時間をコイル7aを流れる電流の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)と通電終了時にコイル7aを流れる電流をコイル7aを流れる電流の飽和電流で除算した値(電流/飽和電流)との間の関係性を規定するテーブルデータに基づいて、コイル7aの通電時間をコイル7aを流れる電流の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)に対応する飽和度合を算出してもよい。ここで、かかる飽和度合とは、通電終了時にコイル7aを流れる電流をコイル7aを流れる電流の飽和電流で除算した値(電流/飽和電流)である。
【0046】
また、インジェクタ7のコイル7aに関し、そのコイル7aに通電する通電時間を電流検出電圧の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)に対応する飽和度合に対しては、図4(b)に示すような補正係数が予め規定される。かかる補正係数は、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cに印加される電流検出電圧V3を補正するためのものである。かかる補正係数は、典型的には、1以上の値であり、飽和度合が相対的にも小さいときには1よりも大きな一定値であって、飽和度合が増加するに従って漸減すると共に、飽和度合が相対的に大きいときには、1又は1に近接した一定値となる。そこで、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、次に、CPU21が、図4(b)に示す関係性を規定するテーブルデータに基づいて、かかる飽和度合に対応する補正係数を算出する。
【0047】
ここで、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cに印加される電圧V3を補正するということは、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流I1を補正するということと等価である。よって、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cに印加される電圧V3を補正するための補正係数に基づいて、コイル7aの通電終了時にコイル7aを流れる電流Iを補正するための補正係数を算出してもよい。また、より直接的には、コイル7aに通電する通電時間をコイル7aを流れる電流の飽和時間で除算した値(通電時間/飽和時間)に対応する飽和度合に対して補正係数を規定するテーブルデータに基づいて、かかる飽和度合に対応する補正係数を算出してもよい。
【0048】
そして、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、次に、CPU21が、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cに印加される電圧V3にその補正用の補正係数を乗算して、補正済みの電圧(補正済み電圧)V3’’を算出する。
【0049】
ここで、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流I1を補正する場合には、CPU21が、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流I1に補正係数を乗算して、補正済みの電流(補正済み電流)I1’を算出する。ここで、通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流の値は、通電終了時にコイル7aを流れる電流の値に等しいから、補正済み電流I1’は、通電終了時にコイル7aを流れる電流を補正した補正済の電流に相当する。
【0050】
そして、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、次に、CPU21が、補正済み電圧V3’’、コイル7aの通電終了時にコイル7aの上流側端子に対して印加されるイグニッション電圧V1(=VIGP)、シャント抵抗素子16cの抵抗R1及び駆動回路15のスイッチング素子のオン抵抗RONを用いて、コイル7aの両端子間に生じるべき補正済みの電圧、つまり補正済みの駆動電圧VINJを、VINJ=V1−(V3’’/R1)X(R1+RON)という数式によって算出する。
【0051】
ここで、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流I1を補正する場合には、コイル7aの両端子間に生じるべき補正済みの電圧、つまり補正済みの駆動電圧VINJを、補正済み電流I’、コイル7aの通電終了時にコイル7aの上流側端子に対して印加されるイグニッション電圧V1(=VIGP)、シャント抵抗素子16cの抵抗R1及び駆動回路15のスイッチング素子のオン抵抗RONをも用いて、VINJ=V1−I1’X(R1+RON)という数式によって算出すればよい。
【0052】
そして、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、最後に、CPU21が、コイル7aの駆動電圧VINJ及び補正済み電圧V3’’を用いて、コイル7aの駆動電圧VINJを補正済み電圧V3’’に関するV3’’/R1で除算するINJR=VINJ/(V3’’/R1)という数式でコイル7aの抵抗INJRを算出する。なお、かかる数式を変形すれば、INJR=V1/(V3’’/R1)−R1−RONという数式が得られるため、コイル7aの駆動電圧VINJを、INJR=V1/(V3’’/R1)−R1−RONという数式によって算出してもよい。
【0053】
ここで、コイル7aの通電終了時にシャント抵抗素子16cを流れる電流I1を補正する場合には、CPU21が、コイル7aの駆動電圧VINJ及び補正済み電流I1’を用いて、コイル7aの駆動電圧VINJを補正済み電流I1’で除算するINJR=VINJ/I1’という数式でコイル7aの抵抗INJRを算出すればよい。なお、かかる数式を変形すれば、INJR=(V1/I1’)−R1−RONという数式が得られるため、コイル7aの駆動電圧VINJを、INJR=(V1/I1’)−R1−RONという数式によって算出してもよい。
【0054】
なお、本実施形態における内燃機関制御装置1のコイル抵抗値算出処理では、図3及び図4に示す3つのグラフのテーブルデータを用いてコイル7aの抵抗INJRを算出することとしたが、これらの3つのグラフのテーブルデータを統合したマップデータを用いてコイル7aの抵抗INJRを算出してもよい。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関制御装置1では、CPU21が、インジェクタ7の燃料噴射に伴ってコイル7aに印加される駆動電圧の電圧値と、燃料噴射に伴ってコイル7aに流れる電流の電流値と、を用いてコイル7aの抵抗値を算出するにあたり、コイル7aの通電時間と、電流値が飽和するのに必要な飽和時間と、からコイル7aの通電終了時点での電流値の飽和度合を算出し、通電終了時点での電流値を飽和度合に基づいて補正するものであるため、車両に搭載されたエンジンのインジェクタ7のコイル7aの抵抗値を算出する際に、かかるコイル7a、及びそれに関連する構成部品のインダクタンスの変化、及びコイル7aの電源電圧であるイグニッション電圧VIGP(=V1)の変化を反映することが可能な簡便な構成で、かかるコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0056】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、CPU21が、燃料噴射時に伴ってコイル7aを流れる電流の電流値と、電流値の飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、電流値の飽和時間を算出するものであるため、経年劣化や負荷変動等によってバッテリ電圧が変化して、コイル7aの電源電圧であるイグニッション電圧VIGP(=V1)が変化した場合であっても、コイル7aを流れる電流の飽和時間を適切に算出することができ、かかるコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0057】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、CPU21が、電流値の飽和度合と、電流値を補正する補正係数と、の関係に基づいて、電流値の補正係数を算出するものであるため、電流値を補正する補正係数を適切に算出することができ、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0058】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、燃料噴射に伴ってコイル7aの上流側端子に印加される第1の電圧値V1(=VIGP)を検出する第1の電圧検出回路(IGP電圧検出回路)16aと、燃料噴射に伴ってコイル7aの下流側端子に接続された抵抗素子16cに印加される第2の電圧値V3を検出する第2の電圧検出回路(INJ電圧検出回路)16bと、を更に備え、CPU21が、コイル7aの抵抗値を算出するにあたり、電流値の飽和度合に代え、通電時間と、第2の電圧値V3が飽和するのに必要な飽和時間と、からコイル7aの通電終了時点での第2の電圧値V3の飽和度合を算出し、通電終了時点での電流値を補正することに代え、通電終了時点での第2の電圧値V3を第2の電圧値V3の飽和度合に基づいて補正するものであるため、より現実的な構成で、車両に搭載されたエンジンのインジェクタ7のコイル7aの抵抗値を算出する際に、かかるコイル7a、及びそれに関連する構成部品のインダクタンスの変化、及びコイル7aの電源電圧であるイグニッション電圧VIGP(=V1)の変化を反映することができ、かかるコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0059】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、CPU21が、第1の電圧値V1(=VIGP)と、第2の電圧値V3が飽和するのに必要な飽和時間と、の関係を規定した特性に基づいて、第2の電圧値V3が飽和するのに必要な飽和時間を算出するものであるため、経年劣化や負荷変動等によってバッテリ電圧が変化して、コイル7aの電源電圧であるイグニッション電圧VIGP(=V1)が変化した場合であっても、より現実的な構成で、コイル7aを流れる電流の飽和時間を適切に算出することができ、かかるコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0060】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、CPU21が、第2の電圧値V3の飽和度合と、第2の電圧値V3を補正する補正係数と、の相関関係から第2の電圧値V3の補正係数を算出するものであるため、より現実的な構成で、電流値を補正する補正係数を適切に算出することができ、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値を実用上充分な精度で算出することができる。
【0061】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明は、簡便な構成で、車両に搭載された内燃機関のインジェクタのコイルの抵抗値を実用上充分な精度で算出可能な内燃機関制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両の内燃機関制御装置に広く適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0063】
1…内燃機関制御装置
2…クランク角センサ
3…クランクシャフト
4…スロットル開度センサ
5…酸素濃度センサ
6…点火コイル
7…インジェクタ
7a…コイル
7b…コイルの等価回路
7c…ソレノイドバルブ
10…ECU
10a…筐体
11…波形整形回路
12…サーミスタ素子
13…A/D変換器
14…点火回路
15…駆動回路
16…検出回路
16a…IGP電圧検出回路
16b…INJ電圧検出回路
16c…シャント抵抗素子
16d…増幅回路
17…EEPROM
18…ROM
19…RAM
20…タイマ
21…CPU
B…バッテリ
図1
図2
図3
図4