特許第6378752号(P6378752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378752ピロリジン誘導体、その医薬組成物及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378752
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ピロリジン誘導体、その医薬組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/12 20060101AFI20180813BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/402 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20180813BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C07D207/12
   C07D403/04CSP
   C07D401/04
   A61K31/506
   A61K31/4439
   A61P3/04
   A61P3/10
   C07D401/14
   C07D403/14
   C07D405/14
   C07D417/14
   A61K31/5377
   A61K31/402
   C07D405/04
   A61K31/4025
   A61P43/00 111
【請求項の数】13
【全頁数】117
(21)【出願番号】特願2016-513304(P2016-513304)
(86)(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公表番号】特表2016-518420(P2016-518420A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2014059537
(87)【国際公開番号】WO2014184104
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】13168294.0
(32)【優先日】2013年5月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ハイネ ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】フレック マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ノッセ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ロート ゲラルト ユルゲン
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−513232(JP,A)
【文献】 特表2000−507216(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/032014(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/001107(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0040928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】
(式中、
Ar1は、フェニレン及び1、2又は3個の窒素原子を含有する6員ヘテロアリーレンから成る群より選択され;
R1は、下記:
ハロゲン、CN、OH、-NO2、C1-6-アルキル、C2-4-アルケニル、C3-7-シクロアルキル、-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-(C1-3-アルキル)-ヘテロシクリル、-O-(ヘテロシクリル)、-O-(C1-3-アルキル)-(ヘテロシクリル)、-O-フェニル及び-O-(C1-3-アルキル)-フェニルから成る群より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、F及びOHから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
前記NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)から選択される基と置き換わっていてもよく、
前記C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)基はそれぞれ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、前記置換基は同一又は異なり、かつ
各ヘテロシクリル基は、N、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有し、かつメチル、-CF3、F及びOHから互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい4員〜7員単環式ヘテロ環式環から選択され、ここで、2つのメチル基が前記ヘテロシクリル基の同一炭素原子に付着している場合、それらが互いに結合してスピロ-シクロプロピル基を形成していてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に、1、2又は3個の-CH2-基が互いに独立に-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-NH-又は-N(C1-4-アルキル)-と置き換わっていてもよいC3-5-アルキレン架橋基を形成していてもよく、ここで、前記アルキレン架橋は任意に1又は2個のC1-3-アルキル基で置換されていてもよく;
nは0、1、2又は3であり;
Ar2は、フェニレン及びピリジニレンから成る群より選択され、
それぞれ任意に、F、Cl、-O-CH3及びCH3から互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R2は、H及び任意に1〜3個のFで置換されていてもよいC1-4-アルキルから成る群より選択され;
R3は、H及びC1-4-アルキルから成る群より選択され;
R4は、下記:
H、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル、(C3-7-シクロアルキル)-(C1-3-アルキル)-、C3-6-アルケニル、C3-6-アルキニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-3-アルキル)-、アリール、アリール-(C1-3-アルキル)-、並びにN、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有する5員又は6員ヘテロアリール及び(5員ヘテロアリール)-(C1-3-アルキル)-(このヘテロアリール部分は5個の環原子を有し、かつN、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有する)から成る群より選択され、
ここで、各シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に1つ以上のC1-4-アルキルで置換されていてもよく、かつ
各シクロアルキル及びヘテロシクリル中、-CH2-基が任意に-C(=O)-と置き換わっていてもよく、かつ
各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、下記:F、Cl、Br、CN、OH及び場合によりモノ若しくはポリフルオロ化されていてもよい-O-(C1-4-アルキル)(前記-O-(C1-4-アルキル)基のアルキル部分は1個以上のFで置換されていてもよい)から成る群より独立に選択される1つ以上の基で置換されていてもよく、かつ
各アリール及びヘテロアリール基は任意に、F、Cl、-O-CH3、-O-CF3、-O-CHF2、CH3及び-NH-C(=O)-(C1-3-アルキル)から互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
或いはR3とR4が互いに結合し、それらが付着しているN原子と一緒に、下記:
アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル及びアゼパニルから成る群より選択される基を形成し、
ここで、これらの各環式基中、1又は2個のCH2基は互いに独立にN、O、S、C(=O)又はSO2と置き換わっていてもよく、及び/又は
これらの各基は、1個以上のF又はC1-4-アルキルで置換されていてもよく;かつ
R5は、H、F、Cl、CN及び-O-(C1-3-アルキル)(この-O-(C1-3-アルキル)基のアルキル部分は1個以上のFで置換されていてもよい)から成る群より選択され;
ここで、前記各アルキル及び-O-アルキル基は、1個以上のFで置換されていてもよい)
の化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、又はその塩。
【請求項2】
Ar2
【化2】
であり、
R2が-CH3であり、
R3がH又は-CH3であり、
R5がHであり、かつ
nが1又は2である、
請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Ar1が、フェニレン、ピリジニレン及びピリミジニレンから成る群より選択される、
請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R1が、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-(C1-3-アルキル)-(ヘテロシクリル)、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニルから成る群より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
前記NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-6-アルキル及びC3-7-シクロアルキル(前記C1-6-アルキル及びC3-7-シクロアルキル基はそれぞれ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、前記置換基は同一又は異なる)と置き換わっていてもよく、かつ各ヘテロシクリル基は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に、1、2又は3個の-CH2-基が互いに独立に-O-、-C(=O)-、-S-、-NH-又は-N(C1-4-アルキル)-と置き換わっていてもよいC3-5-アルキレン架橋基を形成していてもよく、ここで、前記アルキレン架橋は任意に1又は2個のC1-3-アルキル基で置換されていてもよい、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
R1が、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニルから成る群より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、ピロリジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1又は2個のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に-O-CH2-CH2-CH2-O-基を形成していてもよく;
或いはnが2の場合、2つ目のR1基は、F、Cl、CN、及びCH3から成る群より選択される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
R4が、下記:
H、C1-5-アルキル、C3-5-シクロアルキル、(C3-5-シクロアルキル)-CH2-、C3-5-アルケニル、C3-5-アルキニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-3-アルキル)-、フェニル、1又は2個のN原子を含有する6員ヘテロアリール及びチアゾリル-CH2-から成る群より選択され、
ここで、前記ヘテロシクリル基は、オキセタニル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルから成る群より選択され、かつ
各シクロアルキルは任意に1又は2個のCH3で置換されていてもよく、かつ
各アルキル及びシクロアルキルは任意に、F、Cl、CN、OH、-O-CHF2、-O-CF3及び-O-CH3から成る群より独立に選択される1個以上の基で置換されていてもよく、かつ
前記フェニル、チアゾリル及び6員ヘテロアリール基は、それぞれ任意に、F、Cl及び-NH-C(=O)-CH3からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基で置換されていてもよい、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
R3がHであり、かつR4が、下記:
H;
任意に1〜3個のF及び/又は1個のCN若しくはOHで置換されていてもよいC1-5-アルキル;任意に1個のCH3で置換されていてもよいC3-5-シクロアルキル(前記CH3基は1〜3個のFで置換されていてもよい);
(C3-5-シクロアルキル)-CH2-(任意に前記シクロアルキル部分が1又は2個のFで置換されていてもよい);
C3-5-アルケニル;
C3-5-アルキニル;
オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル;
オキセタニル-CH2-;
任意にFで置換されていてもよいフェニル;
ピリジニル、ピリミジニル及び
任意に-NH-C(=O)-CH3で置換されていてもよいチアゾリル-CH2-
から成る群より選択され;
或いは基R3とR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に下記基
【化3】
を形成していてもよい、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
下記式
【化4】
(I.2)
(式中、
nは1又は2であり;
Ar1は、下記:
【化5】
から成る群より選択され;
R1は、F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニルから成る群より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、F及びOHから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
前記NH2基中、一方又は両方の水素原子は、互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、ピロリジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1又は2個のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に-O-CH2-CH2-CH2-O-基を形成していてもよく;
或いは、nが2の場合、2つ目のR1基は、F、Cl、CN、及びCH3から成る群より選択され;
R3はH又はCH3であり;かつ
R4は、下記:
H;
任意に1〜3個のF及び/又は1個のCN若しくはOHで置換されていてもよいC1-5-アルキル;任意に1個のCH3で置換されていてもよいC3-5-シクロアルキル(前記CH3基は1〜3個のFで置換されていてもよい);
(C3-5-シクロアルキル)-CH2-(任意に前記シクロアルキル部分が1又は2個のFで置換されていてもよい);
C3-5-アルケニル;
C3-5-アルキニル;
オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル;
オキセタニル-CH2-;
任意にFで置換されていてもよいフェニル;
ピリジニル、ピリミジニル及び
任意に-NH-C(=O)-CH3で置換されていてもよいチアゾリル-CH2-
から成る群より選択され;
或いはR3とR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に、下記基
【化6】
を形成している)
を有する請求項1に記載の化合物、又はその塩。
【請求項9】
下記式
【化7】
(I.3)
(式中、
(R1)n-Ar1-部分は、下記:
【化8】
から成る群より選択され;
かつ
R4は、下記:
エチル、-CH2-CHF2、シクロプロピル及び
【化9】
から成る群より選択される)
を有する請求項1に記載の化合物、又はその医薬的に許容できる塩。
【請求項10】
下記:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
から選択される、
請求項1に記載の化合物、又はその医薬的に許容できる塩。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物の医薬的に許容できる塩。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容できる塩を含む、医薬組成物。
【請求項13】
肥満症又は2型糖尿病を治療するための、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規化合物、特にピロリジン誘導体、該化合物の調製方法、それらのアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害薬としての使用、特にアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患及び状態の治療におけるそれらの治療的使用方法、並びにそれらを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満症は、欧州、米国、日本国にとってのみならず、全世界にとって主要な公衆衛生上の問題である。肥満症は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、心血管及び脳血管疾患を含めた多数の重症疾患と関連する。
根底にあるメカニズムはまだ十分に分かっていないが、一般的に標的組織における過剰な脂質の蓄積によるインスリン作用の障害が肥満症を続発性病態に関連づける重要なメカニズムであるとみなされている(G. Wolf, Nutrition Reviews Vol. 66(10):597-600; DB Savage, KF Petersen, GI Shulman, Physiol Rev. 2007;87:507-520)。従って、肥満症と関連する疾患の発症を解明するためにはインスリン標的組織における細胞の脂質代謝を理解することが極めて重要である。
脂質代謝における中心イベントは、2つの哺乳類ACCイソ型ACC1(ACCα、ACCAとも呼ばれる)及びACC2(ACCβ、ACCBとも呼ばれる)によるアセチルCoAのカルボキシル化を介したマロニルCoAの生成である(Saggerson D. Annu Rev Nutr. 2008;28:253-72)。生成されたマロニルCoAは、de novo脂肪酸合成のために使用され、CPT-1のインヒビターとして作用し、それによってミトコンドリアの脂肪酸酸化を調節する。さらに、マロニルCoAは中枢に作用して食物摂取を制御し、膵臓からのインスリン分泌の制御で重要な役割を果たし得るとも記述され(GD Lopaschuk, JR Ussher, JS Jaswal. Pharmacol Rev. 2010;62(2):237-64; D Saggerson Annu Rev Nutr. 2008;28:253-72)、さらに中間代謝の調節をコーディネートする。
従ってACC1及びACC2は脂肪酸代謝の主要な調節因子であることが示されており、現在、肥満症、糖尿病及び心血管合併症というヒト疾患を調節するための魅力的な標的とみなされている(SJ Wakil and LA Abu-Elheiga, J. Lipid Res. 2009. 50: S138-S143; L. Tong, HJ Harwood Jr. Journal of Cellular Biochemistry 99:1476-1488, 2006)。
中間代謝におけるそのユニークな位置の結果として、ACCの阻害は、脂質生成組織(肝臓及び脂肪組織)におけるde novo脂肪酸産生を阻害する能力を提供しながら、同時に酸化的組織(肝臓、心臓、及び骨格筋)における脂肪酸酸化を刺激し、ひいては肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び代謝症候群と関連する複数の心血管危険因子に協奏様式で有利に作用するための魅力的モダリティーを提供する(L. Tong, HJ Harwood Jr. Journal of Cellular Biochemistry 99:1476-1488, 2006; Corbett JW, Harwood JH Jr., Recent Pat Cardiovasc Drug Discov. 2007 Nov;2(3):162-80)。
【0003】
さらに、最近のデータは、脂質によって媒介される細胞毒性(脂肪毒性)が糖尿病関連腎症への感受性に関係づけられることを示している(精査のためにはM Murea, BI Freedmann, JS Parks, PA Antinozzi, SC Elbein, LM Ma; Clin J Am Soc Nephrol. 2010; 5:2373-9を参照されたい)。日本人患者の大規模なゲノムワイド関連解析は、9つの独立コホートで複製された、糖尿病性腎症リスクと関連するACC2遺伝子(ACACB)の単一ヌクレオチド多型を同定した。腎臓内では、脂肪酸レベル上昇につながる脂肪酸代謝の調節不全が腎糸球体及び尿細管の機能障害をもたらすと考えられる(M Murea, BI Freedmann, JS Parks, PA Antinozzi, SC Elbein, LM Ma; Clin J Am Soc Nephrol. 2010; 5:2373-9)。従って脂質酸化に関与する重要な分子としてACCを標的とする阻害薬は、糖尿病性腎症に有利に作用するのに役立つ可能性がある。
さらに、インスリン抵抗性、調節解除された脂質代謝、脂肪毒性及び筋肉内脂質増加も1型糖尿病で役割を果たすと記述されている(IE Schauer, JK Snell-Bergeon, BC Bergman, DM Maahs, A Kretowski, RH Eckel, M Rewers Diabetes 2011;60:306-14; P Ebeling, B Essen-Gustavsson, JA Tuominen and VA Koivisto Diabetologia 41: 111-115; KJ Nadeau, JG Regensteiner, TA Bauer, MS Brown,JL Dorosz, A Hull, P Zeitler, B Draznin, JEB. Reusch J Clin Endocrinol Metab, 2010, 95:513-521)。従って、ACC阻害薬は、1型糖尿病の治療のための興味深い薬物とみなされてもいる。
さらにACC阻害薬は、急速な増殖を持続するため内因性脂質合成に依存している悪性細胞又は侵入生物の急速な成長に起因する疾患の進行に介入する可能性をも有する。de novo脂肪生成は、急速な成長及び増殖のために脂質生成を促して癌細胞の要求を満たす複数のヒト癌において多くの腫瘍細胞の成長及びACC上方調節に必要とされることが分かっている(C Wang, S Rajput, K Watabe, DF Liao, D Cao Front Biosci 2010; 2:515-26)。このことは、癌細胞において成長停止及び選択的細胞毒性を誘発したACCを阻害薬を使用する研究において、並びに種々のタイプの癌細胞で成長を阻害し、アポトーシスを誘発したACCのRNA干渉媒介ノックダウンによってさらに実証されている。さらに、ACC1は、乳癌感受性遺伝子1(BRCA1)と結合し、それによって調節される。普通に存在するBRCA1変異がACC1活性化及び乳癌感受性をもたらす(C Wang, S Rajput, K Watabe, DF Liao, D Cao Front Biosci 2010; 2:515-26)。
【0004】
さらに、限定するものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病及びてんかんを含めた中枢神経系障害では、ニューロンのエネルギー代謝の障害が記述されている(Ogawa M, Fukuyama H, Ouchi Y, Yamauchi H, Kimura J, J Neurol Sci.1996;139(1):78-82)。この代謝欠陥を標的とする治療介入は患者に有益だと判明し得る。従って1つの有望な治療介入は、グルコースが低下したニューロン大脳性(neuronscerebral)脳ニューロンに代替基質としてケトン体を与えることである(ST Henderson Neurotherapeutics, 2008, 5:470-480; LC Costantini, LJ Barr, JL Vogel, ST Henderson BMC Neurosci.2008, 9 Suppl 2:S16; KW Baranano, AL Hartman. Curr Treat Options Neurol. 2008;10:410-9)。そのため脂肪酸酸化増加につながるACC阻害は、ケトン体の血中レベル上昇をもたらし、それによって脳に代替エネルギー基質を与え得る。
【0005】
前臨床及び臨床証拠は、ケトン体がパーキンソン病、AD、低酸素症、虚血、筋萎縮性側索硬化症及び神経膠腫のモデルに神経保護効果(LC Costantini, LJ Barr, JL Vogel, ST Henderson BMC Neurosci.2008, 9 Suppl 2:S16)及びアルツハイマー病患者の認知スコアの改善(MA Reger, ST Henderson, C Hale, B Cholerton, LD Baker, GS Watson, K Hydea, D Chapmana, S Craft Neurobiology of Aging 25 (2004) 311-314)をもたらし得ることを示している。ケトンレベル上昇の最終結果は、ミトコンドリア効率の改善及び反応性酸素種生成の低減である(精査のためにはLC Costantini, LJ Barr, JL Vogel, ST Henderson BMC Neurosci. 2008, 9 Suppl 2:S16; KW Baranano, AL Hartman. Curr Treat Options Neurol.2008;10:410-9を参照されたい)。
さらに、抗真菌薬として及び抗細菌薬としてのACC阻害薬の可能性も十分に立証されている(L. Tong, HJ Harwood Jr. Journal of Cellular Biochemistry 99:1476-1488, 2006)。さらに、ACC阻害薬を用いてウイルス感染と闘うことができる。最近、ウイルスはウイルス複製のためのエネルギー及び構成要素を与えるためにそれらの細胞宿主の代謝ネットワークに頼ることが発見された(Munger J, BD Bennett, A Parikh, XJ Feng, J McArdle, HA Rabitz, T Shenk, JD Rabinowitz. Nat Biotechnol. 2008;26:1179-86)。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)によって誘発された代謝活性の変化を定量するためのフラックス測定手法は、HCMVによる感染が解糖、トリカルボン酸回路及び脂肪酸生合成を含めた中心炭素代謝の多くを介するフラックスを顕著に変えることを明らかにした。脂肪酸生合成の薬理学的阻害は、2つの多様なエンベロープウイルス(HCMV及びインフルエンザA)の複製を抑制した。これは脂肪酸合成が複製に必須であることを示している。新たに合成される脂肪酸及びリン脂質はウイルスエンベロープの形成に重要なので、これらの例はアセチルCoAのフラックス及びde novo脂肪酸生合成がウイルスの生存及び増殖に極めて重要であることを示している。代謝フラックスを変えると、利用できるリン脂質の絶対量に影響し、エンベロープの化学組成と物理的性質がウイルスの成長と複製に負の効果を与える。従って、脂肪酸代謝に重要な酵素に作用するACC阻害薬は、抗ウイルス薬である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的
本発明の目的は、新規化合物、特にアセチルCoAカルボキシラーゼに対して活性な新規ピロリジン誘導体を提供することである。
本発明の別の目的は、新規化合物、特にACC2に対して活性な新規ピロリジン誘導体を提供することである。
本発明のさらなる目的は、新規化合物、特にin vitro及び/又はin vivoでアセチルCoAカルボキシラーゼへの阻害効果を有し、かつ薬物として使用するのに適した薬理学的及び薬物速度論特性を有する新規ピロリジン誘導体を提供することである。
本発明のさらなる目的は、新規化合物、特にin vitro及び/又はin vivoでACC2への阻害効果を有し、かつ薬物として使用するのに適した薬理学的及び薬物速度論特性を有する新規ピロリジン誘導体を提供することである。
本発明のさらなる目的は、特に代謝障害、例えば肥満症及び/又は糖尿病の治療に有効なACC阻害薬を提供することである。
本発明のさらなる目的は、患者のアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患又は状態の治療方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1種の本発明の化合物を含む医薬組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、少なくとも1種の本発明の化合物と、1種以上の追加治療薬との組み合わせを提供することである。
本発明のさらなる目的は、新規化合物、特にピロリジン誘導体の合成方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、新規化合物の合成方法に適した出発化合物及び/又は中間化合物を提供することである。
当業者には、前述及び後述の説明並びに実施例によって本発明のさらなる目的が明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象
本発明の範囲内では、今や驚くべきことに、後述するように一般式(I)の新規化合物はアセチルCoAカルボキシラーゼに対して阻害活性を示すことが分かった。
本発明の別の態様によれば、後述するように一般式(I)の新規化合物はACC2に対して阻害活性を示すことが分かった。
本発明の第一態様では、下記一般式
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、
Ar1は、フェニレン及び1、2又は3個の窒素原子を含有する6員ヘテロアリーレンから成る群Ar1-G1より選択され;
R1は、下記:
ハロゲン、CN、OH、-NO2、C1-6-アルキル、C2-4-アルケニル、C3-7-シクロアルキル、-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-(C1-3-アルキル)-ヘテロシクリル、-O-(ヘテロシクリル)、-O-(C1-3-アルキル)-(ヘテロシクリル)、-O-フェニル及び-O-(C1-3-アルキル)-フェニル
から成る群R1-G1より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、F及びOHから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)から選択される基と置き換わっていてもよく、
前記C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)基はそれぞれ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、前記置換基は同一又は異なり、かつ
各ヘテロシクリル基は、N、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有し、かつメチル、-CF3、F及びOHから互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい4員〜7員単環式ヘテロ環式環から選択され、ここで、2つのメチル基がヘテロシクリル基の同一炭素原子に付着している場合、それらが互いに結合してスピロ-シクロプロピル基を形成していてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に、1、2又は3個の-CH2-基が互いに独立に-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-NH-又は-N(C1-4-アルキル)-と置き換わっていてもよいC3-5-アルキレン架橋基を形成していてもよく、ここで、アルキレン架橋は任意に1又は2個のC1-3-アルキル基で置換されていてもよく;
nは0、1、2又は3であり;
Ar2は、フェニレン及びピリジニレンから成る群Ar2-G1より選択され、
それぞれ任意に、F、Cl、-O-CH3及びCH3から互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R2は、H及び任意に1〜3個のFで置換されていてもよいC1-4-アルキルから成る群R2-G1より選択され;
R3は、H及びC1-4-アルキルから成る群R3-G1より選択され;
R4は、下記:
H、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル、(C3-7-シクロアルキル)-(C1-3-アルキル)-、C3-6-アルケニル、C3-6-アルキニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-3-アルキル)-、アリール、アリール-(C1-3-アルキル)-、並びにN、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有する5員又は6員ヘテロアリール及び(5員ヘテロアリール)-(C1-3-アルキル)-(このヘテロアリール部分は5個の環原子を有し、かつN、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有する)
から成る群R4-G1より選択され、
ここで、各シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に1つ以上のC1-4-アルキルで置換されていてもよく、かつ
各シクロアルキル及びヘテロシクリル中、-CH2-基が任意に-C(=O)-と置き換わっていてもよく、かつ
各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、下記:F、Cl、Br、CN、OH及び場合によりモノ若しくはポリフルオロ化-O-(C1-4-アルキル)(前記-O-(C1-3-アルキル)基のアルキル部分は1個以上のFで置換されていてもよい)から成る群より独立に選択される1つ以上の基で置換されていてもよく、かつ
各アリール及びヘテロアリール基は任意に、F、Cl、-O-CH3、-O-CF3、-O-CHF2、CH3及び -NH-C(=O)-(C1-3-アルキル)から互いに独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
或いはR3とR4が互いに結合し、それらが付着しているN原子と一緒に、下記:
アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル及びアゼパニル
から成る群R3R4N-G1より選択される基を形成し、
ここで、これらの各環式基中、1又は2個のCH2基は互いに独立にN、O、S、C(=O)又はSO2と置き換わっていてもよく、及び/又は
これらの各基は、1個以上のF又はC1-4-アルキルで置換されていてもよく;かつ
R5は、H、F、Cl、CN及び-O-(C1-3-アルキル)(この-O-(C1-3-アルキル)基のアルキル部分は1個以上のFで置換されていてもよい)から成る群R5-G1より選択され;
ここで、上記各アルキル及び-O-アルキル基は、1個以上のFで置換されていてもよい)
の化合物、
その互変異性体若しくは立体異性体、
又はその塩、
又はその溶媒和物若しくは水和物
を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、一般式(I)の化合物の調製方法及びこれらの方法における新規中間化合物に関する。
本発明のさらなる態様は、本発明の一般式(I)の化合物の塩、特にその医薬的に許容できる塩に関する。
さらなる態様では、本発明は、本発明の一般式(I)の1種以上の化合物又はその1種以上の医薬的に許容できる塩を、場合により1種以上の不活性な担体及び/又は希釈剤と共に含んでなる医薬組成物に関する。
さらなる態様では、本発明は、治療が必要な患者のアセチルCoAカルボキシラーゼの活性を阻害することによって媒介される疾患又は状態の治療方法において、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を患者に投与することを特徴とする方法に関する。
本発明の別の態様により、治療が必要な患者の代謝疾患又は障害の治療方法において、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の別の態様により、治療が必要な患者の心血管疾患又は障害の治療方法において、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の別の態様により、治療が必要な患者の神経変性疾患若しくは障害の治療方法又は中枢神経系の疾患若しくは障害の治療方法において、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の別の態様により、治療が必要な患者の癌、悪性障害又は腫瘍の治療方法において、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を患者に投与することを特徴とする方法を提供する。
本発明の別の態様により、前述及び後述の治療方法用薬物の製造のための一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩の使用を提供する。
本発明の別の態様により、前述及び後述の治療方法のための一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を提供する。
さらなる態様では、本発明は、患者のアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患又は状態の治療方法であって、該治療が必要な患者に、治療的に有効な量の一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を、治療的に有効な量の1種以上の追加治療薬と組み合わせて投与する工程を含む方法に関する。
さらなる態様では、本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患又は状態の治療又は予防のための、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩と1種以上の追加治療薬と組み合わせた使用に関する。
さらなる態様では、本発明は、一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩及び1種以上追加治療薬を、場合により1種以上の不活性な担体及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物に関する。
当業者には前述及び後述の説明及び実験パートから本発明の他の態様が明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
特に指定のない限り、基、残基、及び置換基、特にAr1、Ar2、R1、R2、R3、R4、R5及びnは、上記及び後記定義どおりである。例えばR1のように、化合物中に残基、置換基又は基が数回現れる場合、それらは同一又は異なる意味を有してよい。以下に、本発明の化合物の個々の基及び置換基のいくつかの好ましい意味を与える。これらの定義のいずれもそれぞれ互いに組み合わせてよい。
【0012】
Ar1:
Ar1-G1:
基Ar1は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群Ar1-G1から選択される。
Ar1-G2:
別の実施形態では、Ar1は、下記:フェニレン又は1若しくは2個の窒素原子を含有する6員ヘテロアリーレン基から成る群Ar1-G2より選択される。
Ar1-G3:
別の実施形態では、基Ar1は、下記:フェニレン、ピリジニレン及びピリミジニレンから成る群Ar1-G3より選択される。
Ar1-G4:
別の実施形態では、基Ar1は、下記:
【0013】
【化2】
【0014】
から成る群Ar1-G4より選択される。
Ar1-G5:
別の実施形態では、基Ar1は、下記:
【0015】
【化3】
【0016】
から成る群Ar1-G5より選択される。
Ar1-G6:
別の実施形態では、基Ar1は、下記:
【0017】
【化4】
【0018】
から成る群Ar1-G6より選択される。
好ましい実施形態によれば、Ar1はフェニレンである。
好ましい別の実施形態によれば、Ar1はピリジン-2-イルである。
好ましい別の実施形態によれば、Ar1はピリジン-4-イルである。
好ましい別の実施形態によれば、Ar1はピリミジン-4-イルである。
【0019】
R1:
R1-G1:
基R1は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R1-G1から選択される。
R1-G2:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-4-アルキル、C3-7-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-(C1-3-アルキル)-(ヘテロシクリル)、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニル
から成る群R1-G2より互いに独立に選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-6-アルキル及びC3-7-シクロアルキル(前記C1-6-アルキル及びC3-7-シクロアルキル基はそれぞれ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、前記置換基は同一又は異なる)と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に、1、2又は3個の-CH2-基が互いに独立に-O-、-C(=O)-、-S-、-NH-又は-N(C1-4-アルキル)-と置き換わっていてもよいC3-5-アルキレン架橋基を形成していてもよく、ここで、アルキレン架橋は任意に1又は2個のC1-3-アルキル基で置換されていてもよい。
【0020】
R1-G3:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニル
から成る群R1-G3より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2-基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に、1又は2個の-CH2-基がそれぞれ独立に-O-、-NH-又は-N(C1-4-アルキル)-と置き換わっていてもよいC3-5-アルキレン架橋基を形成していてもよく、ここで、アルキレン架橋は任意に1又は2個のメチル基で置換されていてもよい。
R1-G4:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニル
から成る群R1-G4より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2-基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、ピロリジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1又は2個のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、互いに結合して一緒に-O-CH2-CH2-CH2-O-基を形成していてもよい。
【0021】
R1-G4a:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニル
から成る群R1-G4aより選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく、かつ
各ヘテロシクリル基は、ピロリジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1又は2個のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に-O-CH2-CH2-CH2-O-基を形成していてもよく;
或いは、nが2の場合、2つ目のR1基は、F、Cl、CN、及びCH3から成る群より選択される。
好ましくはnは1又は2である。
【0022】
R1-G5:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、CF3、-O-(C1-5-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-CH2-(C3-5-シクロアルキル)及び-NH2
から成る群R1-G5より選択され、
ここで、各アルキル及びシクロアルキルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立にC1-4-アルキルと置き換わっていてもよい。
R1-G5a:
別の実施形態では、基R1は、下記:
CF3、-O-(C1-5-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-CH2-(C3-5-シクロアルキル)及び-NH2
から成る群R1-G5aより選択され、
ここで、各アルキル及びシクロアルキルは、任意に、F及びOHから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2中、一方又は両方の水素原子は互いに独立にC1-4-アルキルと置き換わっていてもよく;
或いは、nが2の場合、2つ目のR1基は、F及びClから成る群より選択される。
好ましくは、nは1又は2である。
【0023】
R1-G6:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、Br、CN、C1-3-アルキル、シクロプロピル、-O-(C1-5-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-O-フェニル、ピロリジニル、モルホリニル、-O-ベンジル、及び-NRN1RN2
から成る群R1-G6より選択され、
ここで、RN1はH又はC1-2-アルキルであり、かつ
RN2はC1-5-アルキル又はC3-5-シクロアルキルであり、
各アルキルは直鎖又は分岐鎖であり、かつ
ピロリジニル基及び各アルキル及びシクロアルキル基は任意に1〜3個のF又は1個のOHで置換されていてもよい。
R1-G6a:
別の実施形態では、基R1は、下記:
F、Cl、CF3
【0024】
【化5】
【0025】
から成る群R1-G6aより選択される。
R1-G6b:
別の実施形態では、基R1は、下記:
CF3
【0026】
【化6】
【0027】
から成る群R1-G6bより選択される。
或いは、nが2の場合、2つ目のR1基は、F及びClから成る群より選択される。
好ましくは、nは1又は2である。
n
nは0、1、2又は3である。
好ましくは、nは1、2又は3である。
さらに好ましくは、nは1又は2である。
一実施形態では、nは2である。
別の実施形態では、nは1である。
【0028】
(R1)n-Ar1-部分の好ましい基としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化7】
【0030】
(R1)n-Ar1-部分のさらに好ましい基としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
【0031】
【化8】
【0032】
Ar2:
Ar2-G1:
基Ar2は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群Ar2-G1から選択される。
Ar2-G2:
別の実施形態では、基Ar2は、任意にFで置換されていてもよいフェニレンから成る群Ar2-G2より選択される。
Ar2-G3:
別の実施形態では、基Ar2は、任意にFで一置換されていてもよいフェニレンから成る群Ar2-G3より選択される。
Ar2-G4:
別の実施形態では、基Ar2は、下記:
【0033】
【化9】
【0034】
から成る群Ar2-G4より選択される。
R2
R2-G1:
基R2は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R2-G1から選択される。
R2-G2:
別の実施形態では、基R2は、下記:
H及びC1-2-アルキル
から成る群R2-G2より選択される。
R2-G3:
別の実施形態では、基R2は、CH3から成る群R2-G3より選択される。
R3:
R3-G1:
基R3は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R3-G1から選択される。
R3-G2:
一実施形態では、基R3は、H及びC1-2-アルキルから成る群R3-G2より選択される。
R3-G3:
別の実施形態では、基R3は、H及びCH3から成る群R3-G3より選択される。
R3-G4:
別の実施形態では、基R3は、Hから成る群R3-G4より選択される。
【0035】
R4:
R4-G1:
基R4は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R4-G1から選択される。
R4-G2:
一実施形態では、基R4は、下記:
H、C1-5-アルキル、C3-5-シクロアルキル、(C3-5-シクロアルキル)-CH2-、C3-5-アルケニル、C3-5-アルキニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-3-アルキル)-、フェニル、1又は2個のN原子を含有する6員ヘテロアリール及びチアゾリル-CH2-
から成る群R4-G2より選択され、
ここで、ヘテロシクリル基は、オキセタニル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルから成る群より選択され、かつ
各シクロアルキルは任意に1又は2個のCH3で置換されていてもよく、かつ
各アルキル及びシクロアルキルは任意に、F、Cl、CN、OH、-O-CHF2、-O-CF3及び-O-CH3から成る群より独立に選択される1個以上の基で置換されていてもよく、かつ
フェニル、チアゾリル及び6員ヘテロアリール基は、それぞれ任意に、F、Cl及び-NH-C(=O)-CH3から互いに独立に選択される1又は2個の置換基で置換されていてもよい。
R4-G3:
別の実施形態では、基R4は、下記:
H;
任意に1〜3個のF及び/又は1個のCN若しくはOHで置換されていてもよいC1-5-アルキル;
任意に1個のCH3で置換されていてもよいC3-5-シクロアルキル(前記CH3基は1〜3個のFで置換されていてもよい);
(C3-5-シクロアルキル)-CH2-(任意にシクロアルキル部分が1又は2個のFで置換されていてもよい);
C3-5-アルケニル;
C3-5-アルキニル;
オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル;
オキセタニル-CH2-;
任意にFで置換されていてもよいフェニル;
ピリジニル、ピリミジニル及び
任意に-NH-C(=O)-CH3で置換されていてもよいチアゾリル-CH2-
から成る群R4-G3より選択される。
R4-G4:
別の実施形態では、基R4は、下記:
【0036】
【化10】
【0037】
から成る群R4-G4より選択される。
R4-G5:
別の実施形態では、基R4は、下記:
任意に1〜3個のFで置換されていてもよいエチル、
任意にメチルで置換されていてもよいシクロプロピル及び
プロピン-3-イル
から成る群R4-G5より選択される。
R4-G5a:
別の実施形態では、基R4は、下記:
エチル、-CH2-CHF2、シクロプロピル及び
【0038】
【化11】
【0039】
から成る群R4-G5aより選択される。
R3R4N:
R3R4N-G1:
基R3及びR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R3R4N-G1から選択される基を形成していてもよい。
R3R4N-G2:
一実施形態では、基R3及びR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に、下記:
アゼチジニル、ピロリジニル及びピペリジニル
から成る群R3R4N-G2より選択される基を形成していてもよく、
ここで、これらの各基は、1個以上のF又はCH3で置換されていてもよい。
R3R4N-G3:
別の実施形態では、基R3及びR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に、下記:
【0040】
【化12】
【0041】
から成る群R3R4N-G3より選択される基を形成していてもよい。
R5:
R5-G1:
基R5は、好ましくは前述及び後述の定義どおりの群R5-G1から選択される。
R5-G2:
一実施形態では、基R5は、下記
H、F、Cl、CN、-O-CF3、-O-CHF2及び-O-CH3
から成る群R5-G2より選択される。
R5-G3:
別の実施形態では、基R5は、H及びFから成る群R5-G3より選択される。
R5-G4:
別の実施形態では、基R5は、Hから成る群R5-G4より選択される。
【0042】
本発明の好ましい下位概念の実施形態の例を下表に示す。表中、各実施形態の各置換基群は、前述した定義に従って定義され、式(I)の全ての他の置換基は前述した定義に従って定義される。
【0043】
【0044】
以下、一般式(I.1)〜(I.11b)を用いて式(I)の好ましい実施形態を記載する。ここで、そのいずれの互変異性体及び立体異性体、溶媒和物、水和物及び塩、特にその医薬的に許容できる塩をも包含される。
【0045】
【化13】




【0046】
ここで、上記式(I.1)〜(I.11b)中、基Ar1、R1、R2、R3、R4、R5及びnは、前述及び後述の定義どおりである。
下表に、本発明の好ましい下位概念の実施形態の例を示す。表中、各実施形態の各置換基群は、前述した定義に従って定義され、式Iの全ての他の置換基は前述した定義に従って定義される。
【0047】
【0048】
本発明の好ましい実施形態は、下記一般式
【0049】
【化14】
(I.2)
【0050】
(式中、
nは1又は2であり;
Ar1は、下記:
【0051】
【化15】
【0052】
から成る群より選択され;
R1は、F、Cl、Br、CN、OH、C1-3-アルキル、C3-5-シクロアルキル、-O-(C1-6-アルキル)、-O-(C3-7-シクロアルキル)、-O-(C1-3-アルキル)-(C3-5-シクロアルキル)、-NH2、ヘテロシクリル、-O-フェニル及び-O-(CH2)1-2-フェニルから成る群より選択され、
ここで、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、任意に、F及びOHから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
NH2基中、一方又は両方の水素原子は互いに独立に、C1-4-アルキル及びC3-5-シクロアルキルから選択される基と置き換わっていてもよく;かつ
各ヘテロシクリル基はピロリジニル及びモルホリニルから選択され、かつ1又は2個のF又はOHで置換されていてもよく;
或いは、2つのR1基がAr1の隣接C原子に付着している場合、それらが互いに結合して一緒に-O-CH2-CH2-CH2-O-基を形成していてもよく;
或いは、nが2の場合、2つ目のR1基は、F、Cl、CN、及びCH3から成る群より選択され;
R3はH又はCH3であり;かつ
R4は、下記:
H;
任意に1〜3個のF及び/又は1個のCN若しくはOHで置換されていてもよいC1-5-アルキル;
任意に1個のCH3で置換されていてもよいC3-5-シクロアルキル(前記CH3基は1〜3個のFで置換されていてもよい);
(C3-5-シクロアルキル)-CH2-(任意にシクロアルキル部分が1又は2個のFで置換されていてもよい);
C3-5-アルケニル;
C3-5-アルキニル;
オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル;
オキセタニル-CH2-;
任意にFで置換されていてもよいフェニル;
ピリジニル、ピリミジニル及び
任意に-NH-C(=O)-CH3で置換されていてもよいチアゾリル-CH2-
から成る群より選択され;
或いはR3とR4が互いに結合して、それらが付着しているN原子と一緒に、下記基
【0053】
【化16】
【0054】
を形成している)
の化合物
又はその塩に関する
本発明の別の好ましい実施形態は、下記一般式
【0055】
【化17】
(I.3)
【0056】
(式中、
(R1)n-Ar1-部分は、下記:
【0057】
【化18】
【0058】
から成る群より選択され;
かつ
R4は、下記:
エチル、-CH2-CHF2、シクロプロピル及び
【0059】
【化19】
【0060】
から成る群より選択される)
の化合物
又はその医薬的に許容できる塩に関する。
本発明の好ましい化合物としては、以下のもの:
【0061】
【化20】
【0062】
【化21】
【0063】
【化22】
【0064】
【化23】
【0065】
【化24】
【0066】
及びその医薬的に許容できる塩が挙げられる。
特に好ましい化合物について、それらの互変異性体及び立体異性体、その塩、又はそのいずれの溶媒和物若しくは水和物をも含めて下記実験セクションに記載する。
本発明の化合物は、当業者に既知及び有機合成の文献に記載の合成方法を用いて得ることができる。下記、特に実験セクションでさらに完全に説明する調製方法に類似して本化合物を得るのが好ましい。
【0067】
用語及び定義
ここで具体的に定義しない用語には、本開示及び文脈を考慮して当業者がそれらに与えるであろう意味を与えるものとする。しかしながら、本明細書で使用する場合、特に反対に指定していない限り、下記用語は示した意味を有し、下記慣例を順守する。
用語「本発明に従う化合物」、「式(I)の化合物」、「本発明の化合物」等は、本発明の式(I)の化合物を、それらの互変異性体、立体異性体並びにその混合物及びその塩、特にその医薬的に許容できる塩、並びに該化合物の溶媒和物及び水和物(該互変異性体、立体異性体及びその塩の溶媒和物及び水和物を含めて)を含めて表す。
用語「治療」及び「治療すること」は、防止的、すなわち予防的又は治療的、すなわち治癒的及び/若しくは対症的な両療法を包含する。従って、用語「治療」及び「治療すること」は、特に顕性形態で前記状態を既に発症している患者の治療的療法を含む。治療的療法は、特定の適応症の症状を軽減するための対症療法或いは適応症の状態を逆転若しくは一部逆転させるため又は疾患の進行を停止若しくは減速するための原因療法であってよい。従って慢性治療のためのみならず、例えば長期間にわたって治療的療法として本発明の組成物及び方法を利用することができる。さらに用語「治療」及び「治療すること」は、予防的療法、すなわち前述の状態を発症するリスクがある患者の治療、ひいては前記リスクの低減を含む。
本発明が、治療を必要とする患者に言及するとき、それは主に哺乳動物、特にヒトの治療に関するものである。
用語「治療的に有効な量」は、(i)本明細書に記載の特定の疾患又は状態を治療又は予防するか、(ii)特定の疾患又は状態の1つ以上の症状を減弱、改善、又は除去するか、或いは(iii)特定の疾患又は状態の1つ以上の症状の発症を予防するか又は遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。
本明細書で使用する用語「調節される」又は「調節すること」、又は「調節する」は、特に指定のない限り、本発明の1種以上の化合物でアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)を阻害することを表す。
本明細書で使用する用語「媒介される」又は「媒介すること」又は「媒介する」は、特に指定のない限り、(i)本明細書に記載の特定の疾患又は状態の予防を含めた治療、(ii)特定の疾患又は状態の減弱、改善、又は除去、或いは(iii)特定の疾患又は状態の1つ以上の症状の発症の予防又は遅延を表す。
【0068】
本明細書で使用する用語「置換される」は、指定原子、基又は部分上のいずれかの1個以上の水素が、指示群からの選択肢で置き換わることを意味する。但し、その原子の普通の原子価を超えず、かつその置換が許容できる安定化合物をもたらすことを条件とする。
以下に定義する基(group)、基(radical)、又は部分では、該基に先行して炭素原子数を特定することが多く、例えば、C1-6-アルキルは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。一般に、2つ以上のサブ基を含む基では、最後に命名されたサブ基がその基の付着点であり、例えば、置換基「アリール-C1-3-アルキル-」は、C1-3-アルキル基に結合しているアリール基を意味し、この置換基が付着しているコア又は基にC1-3-アルキル基が結合している。
本発明の化合物が化学名でも式としても描写されている場合、いずれの矛盾がある場合にも、式が優先するものとする。
サブ式ではアスタリスクを用いて、定義どおりにコア分子に連結される結合を示すことができる。
置換基の原子の数え方は、該置換基が付着しているコア又は基に最も近い原子から始める。例えば、用語「3-カルボキシプロピル基」は、カルボキシ基がプロピル基の第3炭素原子に付着している下記置換基を表す。
【0069】
【化25】
【0070】
用語「1-メチルプロピル-」、「2,2-ジメチルプロピル-」又は「シクロプロピルメチル-」基は下記基を表す。
【0071】
【化26】
【0072】
サブ式ではアスタリスクを用いて、定義どおりにコア分子に連結される結合を示すことができる。
基の定義中、「各X、Y及びZ基は、任意に〜で置換されていてもよい」等の用語は、各基X、各基Y及び各基Zが、それぞれ別々の基として又はそれぞれ複合基の一部として定義どおりに置換され得ることを意味する。例えば「Rexは、H、C1-3-アルキル、C3-6-シクロアルキル、C3-6-シクロアルキル-C1-3-アルキル又はC1-3-アルキル-O-を表し、ここで、各アルキル基は任意に1つ以上のLexで置換されていてもよい」等は、用語アルキルを含む前述の各アルキル基において、すなわち基C1-3-アルキル、C3-6-シクロアルキル-C1-3-アルキル及びC1-3-アルキル-O-のそれぞれにおいて、アルキル部分が定義どおりにLexで置換され得ることを意味する。
以下、用語二環式には、スピロ環式が含まれる。
特に指定のない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、所与の化学式又は化学名は、その互変異性体、全ての立体異性体、光学異性体及び幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体等…)及びラセミ体並びに別々のエナンチオマーの異なる比率の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は該異性体及びエナンチオマーが存在する任意の前記形態の混合物、並びに塩、その医薬的に許容できる塩及びその溶媒和物、例えば水和物(遊離化合物の溶媒和物又は化合物の塩の溶媒和物を含めて)を包含するものとする。
本明細書では「医薬的に許容できる」というフレーズを利用して、堅実な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしでヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適し、かつ合理的な利益/危険比で釣り合っている当該化合物、材料、組成物及び/又は剤形を表す。
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容できる塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作ることによって修飾されている、開示化合物の誘導体を意味する。医薬的に許容できる塩の例としては、限定するものではないが、アミン等の塩基性残基の無機又は有機酸塩;カルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩又は有機塩等が挙げられる。
本発明の医薬的に許容できる塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成可能である。一般的に、該塩は、水中又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、若しくはアセトニトリル、又はその混合物のような有機希釈剤中でこれらの化合物の遊離酸又は塩基形を十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製可能である。
上記酸以外の塩、例えば本発明の化合物を精製又は単離するのに役立つ塩も本発明の一部を構成する。
用語ハロゲンは一般的にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0073】
単独又は別の基と組み合わせた用語「C1-n-アルキル」(nは1〜nの整数である)は、1〜n個のC原子を有する非環式、飽和、分岐又は直鎖炭化水素基を意味する。例えば、用語C1-5-アルキルは、基H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH3)2-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH3)2-、H3C-C(CH3)2-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
単独又は別の基と組み合わせた用語「C1-n-アルキレン」(nは1〜nの整数である)は、1〜n個の炭素原子を含有する非環式、直鎖又は分岐鎖二価アルキル基を意味する。例えば、用語C1-4-アルキレンには、-(CH2)-、-(CH2-CH2)-、-(CH(CH3))-、-(CH2-CH2-CH2)-、-(C(CH3)2)-、-(CH(CH2CH3))-、-(CH(CH3)-CH2)-、-(CH2-CH(CH3))-、-(CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH(CH3))-、-(CH(CH3)-CH2-CH2)-、-(CH2-CH(CH3)-CH2)-、-(CH2-C(CH3)2)-、-(C (CH3)2-CH2)-、-(CH(CH3)-CH(CH3))-、-(CH2-CH(CH2CH3))-、-(CH(CH2CH3)-CH2)-、-(CH(CH2CH2CH3))-、-(CHCH(CH3) 2)-及び-C(CH3)(CH2CH3)-が含まれる。
用語「C2-n-アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子を有する「C1-n-アルキル」の定義において、前記基の当該炭素原子の少なくとも2個が二重結合によって互いに結合している場合に、定義どおりの基について使用する。例えば、用語C2-3-アルケニルには、-CH=CH2、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2が含まれる。
用語「C2-n-アルケニレン」は、少なくとも2個の炭素原子を有する「C1-n-アルキレン」の定義において、前記基の当該炭素原子の少なくとも2個が二重結合によって互いに結合している場合に、定義どおりの基について使用する。例えば、用語C2-3-アルケニレンには、-CH=CH-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-が含まれる。
用語「C2-n-アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子を有する「C1-n-アルキル」の定義において、前記基の当該炭素原子の少なくとも2個が三重結合によって互いに結合している場合に、定義どおりの基について使用する。例えば、用語C2-3-アルキニルには、-C≡CH、-C≡C-CH3、-CH2-C≡CHが含まれる。
用語「C2-n-アルキニレン」は、少なくとも2個の炭素原子を有する「C1-n-アルキレン」の定義において、前記基の当該炭素原子の少なくとも2個が三重結合によって互いに結合している場合に、定義どおりの基について使用する。例えば、用語C2-3-アルキニレンには、-C≡C-、-C≡C-CH2-、-CH2-C≡C-が含まれる。
【0074】
単独又は別の基と組み合わせて使用する用語「C3-n-カルボシクリル」は、3〜n個のC原子を有する単環式、二環式又は三環式、飽和又は不飽和炭化水素基を意味する。この炭化水素基は好ましくは非芳香族である。好ましくは3〜n個のC原子が1又は2個の環を形成する。二環式又は三環式環系の場合、環は、単結合によって互いに付着していてよく、或いは縮合又はスピロ環式若しくは架橋環系を形成していてもよい。例えば用語C3-10-カルボシクリルには、C3-10-シクロアルキル、C3-10-シクロアルケニル、オクタヒドロ-ペンタレニル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、インダニル、テトラヒドロナフチルが含まれる。最も好ましくは、用語C3-n-カルボシクリルは、C3-n-シクロアルキル、特にC3-7-シクロアルキルを意味する。
単独又は別の基と組み合わせた用語「C3-n-シクロアルキル」(nは4〜nの整数である)は、3〜n個のC原子を有する環式、飽和、非分岐炭化水素基を意味する。環式基は、単環式、二環式、三環式又はスピロ環式であってよく、最も好ましくは単環式である。該シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロドデシル、ビシクロ[3.2.1.]オクチル、スピロ[4.5]デシル、ノルピニル、ノルボニル、ノルカリル、アダマンチル等が挙げられる。
単独又は別の基と組み合わせた用語「C3-n-シクロアルケニル」(nは3〜nの整数である)は、3〜n個のC原子を有し、その少なくとも2個が二重結合によって互いに結合している環式の、不飽和であるが非芳香族の非分岐炭化水素基を意味する。例えば用語C3-7-シクロアルケニルには、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル及びシクロヘプタトリエニルが含まれる。
【0075】
単独又は別の基と組み合わせて本明細書で使用する用語「アリール」は、6個の炭素原子を含有する炭素環式芳香族単環式基を意味し、芳香族、飽和又は不飽和であってよい第2の5員又は6員炭素環式基にさらに縮合していてもよい。アリールとしては、限定するものではないが、フェニル、インダニル、インデニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル及びジヒドロナフチルが挙げられる。さらに好ましくは、単独又は別の基と組み合わせて本明細書で使用する用語「アリール」は、フェニル又はナフチル、最も好ましくはフェニルを表す。
用語「ヘテロシクリル」は、N、O又はS(O)r(r=0、1又は2)から選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、さらにカルボニル基を有してよい飽和又は不飽和単環式、二環式、三環式又はスピロ炭素環式、好ましくは単環式、二環式又はスピロ環式環系を意味する。さらに好ましくは、単独又は別の基と組み合わせて本明細書で使用する用語「ヘテロシクリル」は、N、O又はS(O)r(r=0、1又は2)から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含有し、さらにカルボニル基を有してよい飽和又は不飽和、なおさらに好ましくは、飽和の単環式、二環式又は又はスピロ環式環系を意味する。用語「ヘテロシクリル」は、全ての可能な異性形が含まれるよう意図される。該基の例としては、アジリジニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、アゼパニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラノニル、テトラヒドロピラノニル、ピロリジノニル、ピペリジノニル、ピペラジノニル、モルホリノニルが挙げられる。
従って、用語「ヘテロシクリル」には、適切な原子価が維持される限り、各形態はいずれの原子にも共有結合を介して付着し得るのでラジカルとしては描写しない下記例示構造が含まれる。
【0076】
【化27】
【0077】
【化28】
【0078】
【化29】
【0079】
用語「ヘテロアリール」は、N、O又はS(O)r(r=0、1又は2)から選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、ヘテロ原子の少なくとも1個が芳香環の一部である単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式環系を意味し、前記環系はカルボニル基を有することもある。さらに好ましくは、単独又は別の基と組み合わせて本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」は、N、O又はS(O)r(r=0、1又は2)から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含有し、ヘテロ原子の少なくとも1個が芳香環の一部である単環式又は二環式環系を意味し、前記環系はカルボニル基を有してもよい。用語「ヘテロアリール」は、全ての可能な異性形を含めるよう意図される。
従って、用語「ヘテロアリール」には、適切な原子価が維持される限り、各形態はいずれの原子にも共有結合を介して付着し得るのでラジカルとしては描写しない下記例示構造が含まれる。
【0080】
【化30】
【0081】
上記用語の多くは式又は基の定義で繰り返し用いられることがあり、いずれの場合も互いに独立に、上記意味の1つを有する。
前述及び後述の全ての残基及び置換基は1個以上のF原子で置換されていてもよい。
【0082】
薬理学的活性
下記ACC2アッセイを用いて本発明の化合物の活性を実証することができる。
分光光度的384ウェルアッセイ
アセチルCoAカルボキシラーゼによるマロニルCoA形成は、ATPの消費に化学量論的に関連づけられる。ACC反応中に生成されるADPを乳酸デヒドロゲナーゼ/ピルビン酸キナーゼ共役反応を用いて測定するNADH関連速度論的方法でACC2活性を測定する。
生物学的試験では、溶解度を高めるためN末端に128個のアミノ酸を欠くヒトACC2構築物(nt 385-6966、GenbankエントリーAJ575592)をクローン化する。次にバキュロウイルス発現系を用いてタンパク質を昆虫細胞内で発現させる。アニオン交換によりタンパク質精製を行なう。
全ての化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かして10mMの濃度にする。
次に384ウェルプレート内で、適切な希釈度のhACC2を用いて、100mMのTris(pH7.5)、10mMのクエン酸三ナトリウム、25mMのKHCO3、10mMのMgCl2、0.5mg/mlのBSA、3.75mMの還元型L-グルタチオン、15U/mlの乳酸デヒドロゲナーゼ、0.5mMのホスホエノールピルビン酸、15U/mlのピルビン酸キナーゼの最終アッセイ濃度(f.c.)で、1%の最終DMSO濃度にて種々の濃度の化合物についてアッセイ反応を行なう。
次にNADH、アセチル補酵素A(両方とも200μM f.c.)及びATP(500uM f.c.)の混合物を添加して酵素反応を開始する。次に分光光度読取り装置で25℃にて340nmの波長で15分にわたって光学密度の低減(勾配S)を決定する。
各アッセイのマイクロタイタープレートは、非阻害酵素用コントロール(100%CTL;'HIGH')として化合物の代わりにビヒクルを含むウェル及び非特異的NADH分解用コントロール(0%CTL;'LOW’)としてアセチルCoAを含まないウェルを含有する。
勾配Sは、%CTL=(S(化合物)-S(‘LOW’))/(S(‘HIGH’)-S(‘LOW’))*100の計算に使用する。化合物は、100%CTL(非阻害)と0%CTL(完全阻害)の間の値を与えるであろう。
IC50値の決定のためには、低コントロールの減算(S(化合物)-S(‘LOW’))後の試験化合物の存在下での同勾配を使用する。
IC50値は、種々の薬用量での化合物勾配から低コントロールの減算(S(化合物)-S(‘LOW’))後に非線形回帰曲線フィッティングによって導かれる(式y=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))))。
本発明の一般式(I)の化合物は、例えば5000nM未満、特に1000nM未満、好ましくは300nM、最も好ましくは100nMのIC50値を有する。
下表に本発明の化合物のIC50(μM)として表した活性を提示する。これらのIC50値は、前述したようにACC2アッセイで決定される。用語「例」は、下記実験セクションの例番号を指す。
【0083】

【0084】
アセチルCoAカルボキシラーゼを阻害する能力を考えると、本発明の一般式(I)の化合物及びその対応する酸は、理論的に、アセチルCoAカルボキシラーゼ、特にACC2活性の阻害の影響を受け得るか又はそれによって媒介される全ての当該疾患又は状態の予防的治療を含めた治療に適している。
従って、本発明は、薬物としての一般式(I)の化合物に関する。
さらに、本発明は、患者、好ましくはヒトの、アセチルCoAカルボキシラーゼ、特にACC2の阻害によって媒介される疾患又は状態の治療及び/又は予防のための一般式(I)の化合物の使用に関する。
さらに別の態様では、本発明は、哺乳動物のアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患又は状態の予防を含めた治療方法であって、該治療を必要とする患者、好ましくはヒトに、治療的に有効な量の本発明の化合物、又はその医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。
アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患及び状態は、代謝疾患若しくは状態及び/又は心血管疾患若しくは状態及び/又は神経変性疾患若しくは状態を包含する。
【0085】
一態様によれば、本発明の化合物は、糖尿病、特に2型糖尿病、1型糖尿病、及び糖尿病関連疾患、例えば高血糖症、代謝症候群、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、脂質異常症、高血圧症、高インスリン血症、及びインスリン抵抗性症候群、肝性インスリン抵抗性等(大血管及び微小血管障害(血栓症、凝固性亢進及び血栓形成促進状態(動脈及び静脈)、高血圧、冠動脈疾患及び心不全、腹囲増大、過凝固状態、高尿酸血症、微量アルブミン尿症を含めて)等の合併症を含めて)の治療に特に適している。
別の態様によれば、本発明の化合物は、過体重、内臓(腹部)肥満を含めた肥満症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び例えば体重増加又は体重維持等の肥満関連障害の治療に特に適している。
肥満症及び過体重は一般的に、総体脂肪と相関関係があり、かつ疾患の相対的リスクを推定する肥満度指数(BMI)によって定義される。BMIは、キログラムの体重をメートルの身長の二乗で除して計算される(kg/m2)。過体重は、典型的に25〜29.9kg/m2のBMIと定義され、肥満症は典型的に30kg/m2又以上のBMIと定義される。
別の態様によれば、本発明の化合物は、1型糖尿病(「IDDM」とも呼ばれるインスリン依存性糖尿病)及び2型糖尿病(「NIDDM」とも呼ばれる非インスリン依存性糖尿病)、耐糖能障害、インスリン抵抗性、高血糖症、膵β細胞変性及び糖尿病合併症(例えば大血管及び微小血管障害、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、腎症、高血圧症、神経障害、及び網膜症)を含めた糖尿病又は糖尿病関連障害の予防を含めた治療、或いはその進行又は発症の遅延に特に適している。
さらに本発明の化合物は、一般的に脂質異常症、さらに詳細には血液及び組織内における脂質濃度上昇、LDL、HDL及びVLDLの調節不全、特に高血漿トリグリセリド濃度、高い食後血漿トリグリセリド濃度、低HDLコレステロール濃度、低アポAリポタンパク質濃度、高LDLコレステロール濃度、高アポBリポタンパク質濃度(アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管障害、糖尿病、代謝症候群、肥満症、インスリン抵抗性及び/又は心血管障害を含めて)の治療に適している。
ACC阻害は、食物摂取への中枢刺激作用をもたらすことができる。従って、本発明の化合物は、神経性食欲不振症等の摂食障害の治療に適し得る。
さらに本発明の化合物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、低酸素症、虚血、筋萎縮性側索硬化症又は神経膠腫を患う患者に神経保護効果を与えることができ、アルツハイマー病患者の認知スコアを改善することができる。
【0086】
アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介されるさらなる疾患及び状態は、限定するものではないが、以下のものを包含する。
A. 脂肪酸代謝障害及びグルコース利用障害;インスリン抵抗性に関与する障害;
B. 肝臓障害及びそれに関連する状態、例えば以下のものが含まれる:
脂肪肝、肝脂肪変性、非アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、急性脂肪肝、妊娠脂肪肝、薬物誘発性肝炎、鉄蓄積症、肝線維症、肝硬変、肝細胞腫、ウイルス性肝炎;
C. 皮膚障害及び状態並びに多価不飽和脂肪酸と関連する皮膚障害及び状態、例えば
−湿疹、ざ瘡、皮脂腺疾患、乾癬、ケロイド瘢痕形成又は予防、粘膜脂肪酸組成物に関連する他の疾患;
D. 一次高トリグリセリド血症又は家族性組織球性細網症後の続発性高トリグリセリド血症、リポタンパク質リパーゼ欠損症、高リポタンパク血症、アポリポタンパク質欠損症(例えばアポCll又はアポE欠損症);
E. 新生物細胞増殖に関連する疾患又は状態、例えば良性又は悪性腫瘍、がん、腫瘍症、腫瘍転移、発癌;
F. 神経、精神又は免疫障害又は状態に関連する疾患又は状態;
G. 例えば炎症反応、細胞増殖及び/又は他のACC媒介態様が関与し得る他の疾患又は状態:
−アテローム性動脈硬化症、例えば(限定するものではないが)、冠動脈硬化症(狭心症又は心筋梗塞を含めて)、脳卒中、虚血、脳卒中及び一過性脳虚血発作(TIA)、
−末梢閉塞性疾患、
−血管再狭窄又は再閉塞、
−慢性炎症性腸疾患、例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎、
−膵炎、
−副鼻腔炎、
−網膜症、虚血性網膜症、
−脂肪細胞腫瘍、
−脂肪様細胞癌、例えば脂肪肉腫、
−固形腫瘍及び新生物、例えば(限定するものではないが)、胃腸管、肝臓、胆道及び膵臓の癌、内分泌腫瘍、肺、腎臓及び尿路、生殖器の癌、前立腺癌、乳がん(特にBRCA1変異を伴う乳がん)等、
−ACCが上方調節される腫瘍、
−急性及び慢性骨髄増殖性障害並びにリンパ腫、血管新生、
−神経変性障害(アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、てんかんを含めて)、
−紅斑性扁平上皮皮膚疾患、例えば、乾癬、
−尋常性ざ瘡、
−PPARによって媒介される他の皮膚疾患及び皮膚科学的状態、
−湿疹及び神経皮膚炎、
−皮膚炎、例えば、脂漏性皮膚炎又は紫外皮膚炎、
−角膜炎及び角化症、例えば、脂漏性角化症、老人性角化症、日光角化症、光線誘発角化症又は毛包性角化症、
−ケロイド及びケロイド予防、
−細菌感染症、
−真菌感染症、
−疣贅(コンジローマ又は尖圭コンジローマを含めて)
−例えば、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ウエストナイルウイルス(WNV)又はデングウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポックスウイルス及びワクシニアウイルス(VV)、HCMV、インフルエンザA、ヒトパピローマウイルス(HPV)等のウイルス感染症、性病パピローマ、例えば、伝染性軟属腫等のウイルス性疣贅、白斑症、
−丘疹性皮膚炎、例えば、扁平苔癬、
−皮膚がん、例えば、基底細胞癌、メラノーマ又は皮膚T細胞リンパ腫、
−限局性良性上皮腫瘍、例えば、角皮症、表皮母斑、
−凍瘡;
−高血圧、
−多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、
−喘息、
−嚢胞性線維症、
−変形性関節症、
−エリテマトーデス(LE)又は炎症性リウマチ性障害、例えば関節リウマチ、
−血管炎、
−消耗(悪液質)、
−痛風、
−虚血/再灌流症候群、
−急性呼吸促迫症候群(ARDS)、
−ウイルス性疾患及び感染症
−リポジストロフィー及びリポジストロフィー状態、例えば有害な薬物作用を治療するためにも;
−ミオパシー及び脂質ミオパシー(例えばカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI又はII欠損症);
H. 筋肉形成及び除脂肪又は筋肉量形成。
【0087】
1日に適用できる一般式(I)の化合物の用量範囲は、通常は患者の体重1kg当たり0.001〜10mg、好ましくは患者の体重1kg当たり0.01〜8mgである。各薬用量単位は好都合には0.1〜1000mgの活性物質を含有してよく、好ましくは0.5〜500mgの活性物質を含有する。
急性治療に有効な量又は治療薬用量は、当然に患者の年齢と体重、投与経路及び疾患の重症度等の当業者に既知の因子によって決まるであろう。いずれの場合も患者特有の状態に基づいて治療的に有効な量を送達できる薬用量及び様式で化合物を投与するであろう。
【0088】
医薬組成物
式(I)の化合物を投与するのに適した製剤は当業者には明白であり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、座剤、ロレンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤及び散剤等がある。医薬的に活性な化合物の含量は、有利には全体として組成物の0.1〜90wt.-%、例えば1〜70wt.-%の範囲にある。
適切な錠剤は、例えば、式(I)の1種以上の化合物を既知賦形剤、例えば不活性な希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤及び/又は潤沢剤と混合することによって得られる。錠剤が数層から成ってもよい。
【0089】
併用療法
本発明の化合物は、さらに1種以上、好ましくは1種の追加治療薬と併用してよい。一実施形態によれば、追加治療薬は、例えば糖尿病、肥満症、糖尿病合併症、高血圧症、高脂血症等の代謝疾患又は状態の治療に有用な治療薬の群から選択される。
従って本発明の化合物は、抗肥満薬(食欲抑制薬を含めて)、血糖低減薬、抗糖尿病薬、脂質異常症の治療薬、例えば脂質低減薬等、降圧薬、抗アテローム性動脈硬化症薬、抗炎症活性成分、悪性腫瘍治療薬、抗血栓薬、心不全治療及び糖尿病に起因するか又は糖尿病と関連する合併症の治療薬から成る群より選択される1種以上の追加治療薬と併用してよい。
適切な抗肥満薬としては、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-1(11β-HSD 1型)阻害薬、ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1(SCD-1)阻害薬、MCR-4作動薬、コレシストキニン-A(CCK-A)作動薬、モノアミン再取り込み阻害薬、交感神経刺激薬、β3アドレナリン性作動薬、ドパミン作動薬、メラニン細胞刺激ホルモン類似体、5HT2c作動薬、メラニン凝集ホルモン拮抗薬、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチン作動薬、ガラニン拮抗薬、リパーゼ阻害薬、食欲低下薬、ニューロペプチドY拮抗薬(例えば、NPY Y5拮抗薬)、PYY3-36(その類似体を含めて)、甲状腺ホルモン模倣薬、デヒドロエピアンドロステロン又はその類似体、グルココルチコイド作動薬又は拮抗薬、オレキシン拮抗薬、グルカゴン様ペプチド1作動薬、毛様体神経栄養因子、ヒトアグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害薬、グレリン拮抗薬、GOAT(グレリンO-アシルトランスフェラーゼ)阻害薬、ヒシタミン3拮抗薬又は逆作動薬、ニューロメジンU作動薬、MTP/アポB阻害薬(例えば、腸管選択性MTP阻害薬)、オピオイド拮抗薬、オレキシン拮抗薬等が挙げられる。
本発明の併用態様での使用に好ましい抗肥満薬としては、腸管選択性MTP阻害薬、CCKa作動薬、5HT2c作動薬、MCR4作動薬、リパーゼ阻害薬、オピオイド拮抗薬、オレオイル-エストロン、オビネピチド(obinepitide)、プラムリンチド(Symlin(登録商標))、テソフェンシン(tesofensine)(NS2330)、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エキセナチド(Byetta(登録商標))、AOD-9604(CAS No.221231-10-3)及びシブトラミンが挙げられる。
【0090】
適切な抗糖尿病薬としては、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)阻害薬、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1(11β-HSD 1型)阻害薬、ホスホジエステラーゼ(PDE)10阻害薬、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)1又は2阻害薬、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド(chiorpropamide)、ダイヤビニーズ(diabinese)、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド(glisolamide)、トラザミド、及びトルブタミド)、メグリチニド、αアミラーザ阻害薬(例えば、テンダミスタット、トレスタチン及びAL-3688)、αグルコシドヒドロラーゼ阻害薬(例えば、アカルボース)、αグルコシダーゼ阻害薬(例えば、アジポシン(adiposine)、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラディマイシン-Q、及びサルボスタチン)、PPARγ作動薬(例えば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン(isaglitazone)、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾン)、PPARα/γ作動薬(例えば、CLX-0940、GW-1536、GW-20 1929、GW-2433、KRP-297、L-796449、LR-90、MK-0767及びSB-219994)、ビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)、GLP-1誘導体、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)作動薬(例えば、ByettaTM、エキセンディン-3及びエキセンディン-4)、GLP-1受容体とグルカゴン受容体の共作動薬、グルカゴン受容体拮抗薬、GIP受容体拮抗薬、タンパク質チロシンホスファターゼ-1B(PTP-1B)阻害薬(例えば、トロズスクエミン(trodusquemine)、ヒルチオサール抽出物(hyrtiosal extract))、SIRT-1活性化薬(例えばレセルバトロール(reservatrol))、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害薬(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン及びサキサグリプチン)、インスリン分泌促進物質、GPR119作動薬、GPR40作動薬、TGR5作動薬、MNK2阻害薬、GOAT(グレリンO-アシルトランスフェラーゼ)阻害薬、脂肪酸酸化阻害薬、A2拮抗薬、c-junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害薬、インスリン、インスリン誘導体、速効性インスリン、吸入可能インスリン、経口インスリン、インスリン模倣薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、VPAC2受容体作動薬及びグルコキナーゼ活性化薬が挙げられる。
好ましい抗糖尿病薬は、メトホルミン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)作動薬(例えば、ByettaTM)、GLP-1受容体とグルカゴン受容体の共作動薬、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)阻害薬、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1(11β-HSD 1型)阻害薬及びDPP-IV阻害薬(例えばシタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン及びサキサグリプチン)である。
【0091】
好ましくは、本発明の化合物及び/又は場合により1種以上の追加治療薬と組み合わせて本発明の化合物を含む医薬組成物は、運動及び/又は食事制限と併せて投与する。
従って、別の態様では、本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼ、特にACC2の阻害に影響を受け得るか又はそれよって媒介される疾患及び状態、特に前述及び後述の疾患又は状態の治療又は予防のための、前述及び後述の1種以上の追加治療薬と組み合わせた本発明の化合物の使用に関する。
さらに別の態様では、本発明は、患者のアセチルCoAカルボキシラーゼの阻害によって媒介される疾患又は状態の予防を含めた治療方法であって、該治療が必要な患者、好ましくはヒトに治療的に有効な量の本発明の化合物を、1種以上の前述及び後述の追加治療薬と併用投与する工程を含む方法に関する。
追加治療薬と組み合わせた本発明の化合物の使用は同時に又は時間差で行なってよい。
本発明の化合物と1種以上の追加治療薬は、両方一緒に1つの製剤、例えば錠剤又はカプセル剤に存在してよく、或いは2つの同一又は異なる製剤、例えばいわゆるキットの部品として別々に存在してよい。
結果として、別の態様では、本発明は、本発明の化合物と、前述及び後述の1種以上の追加治療的とを、場合により1種以上の不活性な担体及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物に関する。
本発明のさらなる態様は、真菌の外寄生と闘う及び/又は阻止するか、或いは作物に有害な雑草、昆虫、又はコダニ等の他の有害生物を防除するための作物保護薬としての本発明の化合物又はその塩の使用を包含する。本発明の別の態様は、植物病原微生物、例えば植物病原真菌を防除及び/又は阻止するための本発明の化合物又はその塩の使用に関する。従って、本発明の一態様は、殺真菌薬、殺昆虫薬、殺コダニ薬及び/又は除草薬として使用するための式(I)の化合物又はその塩である。本発明の別の態様は、本発明の化合物を1種以上の適切な担体と共に含む農業用組成物に関する。本発明の別の態様は、少なくとも1種の殺真菌薬及び/又は全身獲得抵抗性誘導物質と組み合わせた本発明の化合物を、1種以上の適切な担体と共に含む農業用組成物に関する。
【0092】
合成スキーム
一般式(I)の化合物は、任意に1〜3個のR1で置換されていてもよいアリール又はヘテロアリールハライド(Ar1-Z;II)と、ピロリジン(III)(Zは脱離基であり、例えばCl、Br又はIを表す)のパラジウム媒介Buchwald反応又は銅媒介Ullmann反応によって調製可能である。
【0093】
【化31】
【0094】
これとは別に、一般式(I)の化合物は、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、1-クロロ-N,N-2-トリメチルプロペニルアミン、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスファート及び2-クロロ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリニウムヘキサフルオロホスファート等のカップリング試薬によって媒介されるカルボン酸(IV)とアミン(V)のアミドカップリング反応により調製可能である。
【0095】
【化32】
【0096】
一般式(VI)(式中、Pyは、任意に1又は2個のR1で置換されていてもよいピリジニレン又はピリミジニレン基である)の化合物は、ピリミジル又はピリジルハライド(VII)とピロリジン(III)(式中、Zは脱離基であり、例えばF、Cl、Br、Iを表す)の求核芳香族置換反応(SNAr)によって調製可能である。
【0097】
【化33】
【0098】
一般式(VIII)の化合物は、ピリミジル又はピリジルハライド(IX)とアミン(X)(式中、RN1及びRN2は、H、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)から成る群より互いに独立に選択され、前記C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル及び-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)基はそれぞれ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、前記置換基は同一又は異なり;或いはRN1とRN2が一緒に4員〜7員単環式ヘテロ環式環を形成し、この環は、RN1とRN2が付着している窒素原子に加えて、N、O及びSから独立に選択される1又は2個のヘテロ原子を含有してよく、かつ1個以上のF又はOHで置換されていてもよく、Zは脱離基であり、例えばF又はCl、Br、Iを表す)の芳香族置換によって調製可能である。
【0099】
【化34】
【0100】
一般式(XI)(式中、Pyは、任意に1又は2個のR1で置換されていてもよいピリジニレン又はピリミジニレン基である)の化合物は、ピリミジニル又はピリジルハライド(IX)とボロン酸(XII)又は対応するボロン酸エステル(式中、Zは脱離基であり、例えばCl、Br又はIを表す)のパラジウム媒介Suzuki反応によって調製可能である。
【0101】
【化35】
【0102】
一般式(IV)のカルボン酸は、酸性又は塩基性条件を利用する水性条件下でのエステル(XIII)の加水分解(式中、Yはアルキル基であり、例えばメチル又はエチルを表す)により調製可能である。
一般式(XIII)のエステルは、一般式(I)の化合物に類似してピロリジン(III)から、例えばパラジウム媒介Buchwald反応又は銅媒介Ullmann反応又は求核芳香族置換反応(上記参照)によって調製される。
【0103】
【化36】
【0104】
一般式(XIV)のカルボン酸は、ピリミジル又はピリジルハライド(XV)とアミン(X)(式中、RN1及びRN2は上記定義どおりであり、Yはアルキル基であり、例えばメチル又はエチルを表し、Zは脱離基であり、例えばF又はCl、Br、Iを表す)の芳香族置換後のエステルの加水分解によって調製可能である。
【0105】
【化37】
【0106】
一般式(XVI)のカルボン酸は、ピリミジル又はピリジルハライド(XV)とアルコール(XVII)(式中、RO1は、C1-6-アルキル、C3-7-シクロアルキル、-(C1-3-アルキル)-(C3-7-シクロアルキル)、ヘテロシクリル、-(C1-3-アルキル)-(ヘテロシクリル)、フェニル及び-(C1-3-アルキル)-フェニルから成る群より選択され、各アルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは任意にF及びOHから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;かつ各ヘテロシクリル基は、N、O及びSから独立に選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有し、かつ1個以上のF又はOHで置換されていてもよい4員〜7員単環式ヘテロ環式環であり;かつYはアルキル基であり、例えばメチル又はエチルを表し、Zは脱離基であり、例えばF又はCl、Br、Iを表す)の芳香族置換後のエステルの加水分解によって調製可能である。
【0107】
【化38】
【0108】
一般式(III)の化合物は、保護されたピロリジン(XVIII)の、立体配置の反転下でのフェノール(XIX)による求核置換後に、選ばれた保護基の除去に適した脱保護反応によって調製可能である。式中、PGは保護基であり、例えばtert.-ブトキシカルボニル又はベンジルオキシカルボニルを表し、Zは脱離基であり、例えばメシラート、トシラート、Cl、Br又はIを表す。
【0109】
【化39】
【0110】
提示した合成経路は、保護基の使用に頼ってよい。例えば、存在する反応基、例えばヒドロキシ、カルボニル、カルボキシ、アミノ、アルキアルアミノ又はイミノを反応中は通常の保護基で保護することができ、この保護基は反応後に再び開裂される。それぞれの官能基に適した保護基及びそれらの除去は技術上周知であり、有機合成の文献に記載されている。
前述したように一般式Iの化合物をそれらのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーに分割することができる。従って、例えば、cis/trans混合物をそれらのcis及びtrans異性体に分割し、ラセミ化合物をそれらのエナンチオマーに分離することができる。
cis/trans混合物は、例えば、クロマトグラフィーによってそのcis及びtrans異性体に分割し得る。ラセミ体として存在する一般式Iの化合物は、それ自体既知の方法でそれらの光学対掌体に分離可能であり、一般式Iの化合物のジアステレオマー混合物は、それ自体既知の方法、例えばクロマトグラフィー及び/又は分別結晶化を用いて、それらの異なる物理化学的性質を利用することによって、それらのジアステレオマーに分割することができ;その後に得られた混合物がラセミ体の場合、上述したように、それらをエナンチオマーに分割することができる。
ラセミ体は、キラル相上のカラムクロマトグラフィー又は光学活性溶媒からの結晶化によるか、或いは該ラセミ体と塩又はエステル若しくはアミン等の誘導体を形成する光学活性物質と反応させることによって分割するのが好ましい。塩基性化合物ではエナンチオ的に純粋な酸と、また酸性化合物ではエナンチオ的に純粋な塩基と塩を形成することができる。ジアステレオマー誘導体は、エナンチオ的に純粋な補助化合物、例えば酸、それらの活性化誘導体、又はアルコールで形成される。このようにして得られた塩又は誘導体のジアステレオマー混合物の分離は、それらの異なる物理化学的性質、例えば溶解度の差を利用して達成可能であり;適切な薬剤の作用によって純粋なジアステレオマー塩又は誘導体から遊離対掌体が遊離され得る。このような目的に一般的に用いられる光学活性酸並びに補助残基として適用できる光学活性アルコールは当業者に知られている。
上述したように、式Iの化合物は、塩、特に医薬用途では医薬的に許容できる塩に変換可能である。本明細書で使用する場合、「医薬的に許容できる塩」は、親化合物の酸性又は塩基性塩を作ることによって親化合物が修飾されている、開示化合物の誘導体を表す。
【実施例】
【0111】
実験パート
下記実施例は本発明を限定することなく、本発明を実証することを意図している。用語「周囲温度」及び「室温」は互換的に用いられ、約20℃の温度を示す。
略語:
【0112】
出発化合物の調製
例I
N-エチル-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオンアミド
【0113】
【化40】
【0114】
50mLのTHFと5mlのDMF中の4.00g(24.1mmol)の2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸に6.76g(66.1mmol)のTEA及び8.50gのTBTUを加える。反応混合物を室温で5分間撹拌してから36.1ml(2mol/l溶液;72.2mmol)のエチルアミンを加える。反応混合物を室温で5時間撹拌する。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C11H15NO2(M=193.2g/mol)
ESI-MS:194 [M+H]+
Rt(HPLC):0.43分(方法E)
【0115】
例II
(S)-3-メタンスルホニルオキシ-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【0116】
【化41】
【0117】
15mlのTHF中の3.44g(187mmol)の(S)-1-Boc-3-ピロリジノールに1.70mL(21.6mmol)のメタンスルホニルクロリドを0℃で加える。反応混合物を1時間撹拌する。水を加えてEtOAc (3×)で抽出する。有機層をNaHCO3水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させる。溶媒を真空中で除去する。
C10H19NO5S(M=265.3g/mol)
Rt(HPLC):0.67分(方法B)
【0118】
例III
(R)-N-エチル-2-[4-(ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-プロピオンアミド
【0119】
【化42】
【0120】
a)30mLのDMF中の4.74g(17.9mmol)の例II、3.42g(17.7mmol)の例I及び11.5g(35.4mmol)のCs2CO3の混合物を80℃で16時間撹拌し、100℃でさらに24時間撹拌する。反応混合物を室温に冷まして水とEtOAcを加える。層を分け、水層をEtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、4N NaOH及びNaHCO3飽和水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物をさらに精製せずに使用する。
C20H30N2O4(M=362.5g/mol)
ESI-MS:380 [M+NH4]+
Rt(HPLC):0.88分(方法B)
b)10mlのジオキサン中の5.70gの上記生成物と15mlのHCl(ジオキサン中4N)の混合物を室温で3時間撹拌する。反応混合物を1N NaOH水溶液でアルカリ性のpHに調整し、DCMで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、NaHCO3水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。結果として生じる生成物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C15H22N2O2 (M=262.3g/mol)
ESI-MS:263 [M+H]+
Rt(HPLC):0.64分(方法E)
【0121】
例IV
2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸エチルエステル
【0122】
【化43】
【0123】
250mlのEtOH中の13.0g(78.2mmol)の2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の混合物に5.82ml(78.2mmol)の塩化チオニルを0℃でゆっくり加える。反応混合物を70℃で2時間撹拌する。室温に冷ました後、溶媒を真空中で除去する。残渣をトルエンと混合し、溶媒を再び除去する。
C11H14O3 (M=194.2g/mol)
ESI-MS:195 [M+H]+
Rt(HPLC):0.77分(方法B)
【0124】
例V
(R)-2-[4-(ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-プロピオン酸エチルエステル塩酸塩
【0125】
【化44】
【0126】
a)150mLのDMF中の11.0g(41.5mmol)の例II、8.05g(41.5mmol)の例IV及び27.0g(82.9mmol)のCs2CO3の混合物を80℃で16時間撹拌する。2.0gの例IIを加えて2時間80℃で撹拌する。次に反応混合物を氷水中に注ぎ、EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,DCM/MeOH 98/2)で精製する。
C20H29NO5 (M=363.5g/mol)
ESI-MS:364 [M+H]+
Rt(HPLC):1.03分(方法B)
b)10.4g(28.6mmol)の上記生成物と28.6mlの4N HCl(ジオキサン中)の混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を真空中で除去する。残渣を水と混合し、DCMで抽出する。水層を混ぜ合わせ、溶媒を真空中で除去する。
C15H21NO3*HCl (M=299.8g/mol)
ESI-MS:264 [M+H]+
Rt(HPLC):0.63分(方法E)
【0127】
例VI
2-(4-[1-(3-フルオロ-2-プロピルアミノ-ピリジン-4-イル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-プロピオン酸
【0128】
【化45】
【0129】
a)NMP中の0.83g(5.00mmol)の2,4-ジクロロ-3-フルオロ-ピリジン、1.50g(5.00mmol)の例V及び2.77g(20.0mmol)のK2CO3の混合物を80℃で16時間撹拌し、100℃でさらに5時間撹拌する。1.50mlのTEAを加えて反応混合物を80℃で19時間撹拌する。次に反応混合物を室温に冷まし、水で希釈し、EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、溶媒を真空中で除去し、粗生成物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C20H22ClFN2O3(M=392.9g/mol)
ESI-MS:393 [M+H]+
Rt(HPLC):1.01分(方法B)
b)750mg(1.91mmol)の上記生成物を窒素雰囲気下で25mlのジオキサンと混合する。757mg(7.64mmol)のナトリウム-tert-ブチラート、785μl(9.55mmol)のプロピルアミン、87mg(0.10mmol)のトリス-(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)及び114mg(0.38mmol)の2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルを加える。反応混合物を80℃で2時間撹拌する。反応混合物を水で希釈してEtOAcで抽出する。有機層を0.1N NaOH水溶液で洗浄する。水層を混ぜ合わせ、1N HClで酸性にし、EtOAcで抽出する。水層をNaClで飽和させてACN/EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせてMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。生成物をTFA塩として単離する。
C21H26FN3O3*C2HF3O2(M=501.5g/mol)
ESI-MS:388 [M+H]+
Rt(HPLC):0.71分(方法B)
【0130】
例VII
2-(4-(1-[6-(2,2-ジフルオロ-プロポキシ)-5-フルオロ-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-プロピオン酸
【0131】
【化46】
【0132】
a)10mlのTHF中の1.50g(5.00mmol)の例Vと0.84g(5.00mmol)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンの混合物に1.48ml(10.5mmol)のTEAを加える。反応混合物を室温で4時間撹拌する。次に反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、水及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させる。溶媒を真空中で除去する。
C19H21ClFN3O3(M=393.8g/mol)
ESI-MS:394 [M+H]+
Rt(HPLC):1.07分(方法B)
b)695mg(7.24mmol)の2,2-ジフルオロプロパノールを4mlのTHFに溶かす。421mg(9.65mmol)の水素化ナトリウム(鉱油中55%)をゆっくり少しずつ加える。それを15分間撹拌する。1.90g(4.82mmol)の上記生成物を4mlのTHFに溶かしてゆっくり加える。反応混合物を50℃で2時間撹拌する。反応混合物を室温に冷まして16時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、THFを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出する。水層を1N HClで酸性にしてEtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせてMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C20H22F3N3O4 (M=425g/mol)
ESI-MS:426 [M+H]+
Rt(HPLC):0.97分(方法B)
【0133】
例VIII
2-(4-(1-[5-クロロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル−プロピオン酸
【0134】
【化47】
【0135】
a)ACN中の0.92g(5.0mmol)の4,5,6-トリクロロピリミジン、1.50g(5.00mmol)の例V及び2.07g(15.0mmol)のK2CO3の混合物を室温で16時間及び70℃でさらに4時間撹拌する。1.0mlのTEAを加えて反応混合物を70℃で1時間及び室温で2日間撹拌する。次に反応混合物をろ過し、沈殿物をEtOAcで洗浄し、溶媒を真空中で除去する。残渣を水及びEtOAcで洗浄し、有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。必要留分を混ぜ合わせ、ACNを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C19H21Cl2N3O3 (M=410.3g/mol)
ESI-MS:410 [M+H]+
Rt(HPLC):1.11分(方法B)
b)835mg(9.26mmol)の2-メチル-プロパン-1,2-ジオールを4mlのTHFに溶かす。424mg(9.72mmol)の水素化ナトリウム(鉱油中55%)をゆっくり少しずつ加える。それを15分間撹拌する。1.90g(4.82mmol)の上記生成物を4mlのTHFに溶かしてゆっくり加える。反応混合物を室温で3時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、THFを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出する。水層を1N HClで酸性にしてEtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせてMgSO4上で乾燥させ、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C21H26ClN3O5(M=435.9g/mol)
ESI-MS:436 [M+H]+
Rt(HPLC):0.58分(方法E)
【0136】
例IX
2-(4-[1-(2-ジメチアルアミノ-5-フルオロ-ピリミジン-4-イル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-プロピオン酸
【0137】
【化48】
【0138】
a)0.840g(5.00mmol)の2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジンを50mlのアセトンに溶かして0℃に冷却する。2.07g(15.0mmol)のK2CO3及び1.50g(5.00mmol)の例Vを加える。反応混合物を室温で16時間及び70℃でさらに5時間撹拌する。0.70mlのTEAを加えて反応混合物を室温で16時間撹拌する。次に反応混合物をろ過し、沈殿物をEtOAcで洗浄し、溶媒を真空中で除去する。残渣を水及びEtOAcで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。必要留分を混ぜ合わせ、ACNを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C19H21ClFN3O3(M=393.8g/mol)
ESI-MS:394 [M+H]+
Rt(HPLC):1.06分(方法B)
b)1.10g(2.79mmol)の上記生成物を10mlのNMPに溶かす。1.17ml(8.38mmol)のTEA及び456mg(5.59mmol)のジメチルアミン塩酸塩を加えて反応混合物を60℃で16時間撹拌する。6当量のTEAと6当量のジメチルアミン塩酸塩を加えて90℃で21時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。必要留分を混ぜ合わせ、ACNを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C21H27FN4O3(M=402.5g/mol)
ESI-MS:403 [M+H]+
Rt(HPLC):0.78分(方法B)
c)1.00g(2.48mmol)の上記生成物を20mlのEtOHに溶かす。9.94ml(9.94mmol)の1N NaOH水溶液を加えて50℃で2時間撹拌する。反応混合物を1N HCl水溶液で酸性にする。EtOHを真空中で除去する。残渣をEtOAcで抽出する。水層をNaClで飽和させ、もう一度EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C19H23FN4O3(M=374.4g/mol)
ESI-MS:375 [M+H]+
Rt(HPLC):0.68分(方法B)
【0139】
例X
2-ブロモ-5-(2,2-ジフルオロ-シクロプロピルメトキシ)-ピリジン
【0140】
【化49】
【0141】
100mlのACN中の5.00g(28.7mmol)の2-ブロモ-5-ヒドロキシピリジン、6.14g(35.9mmol)の1-ブロモメチル-2,2-ジフルオロシクロプロパン及び9.93g(71.8mmol)のK2CO3の混合物を70℃で14時間撹拌する。反応混合物をEtOAcで希釈し、水及び1N NaOH水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C9H8BrF2NO (M=264.1g/mol)
ESI-MS:264 [M+H]+
Rt(HPLC):0.84分(方法E)
【0142】
例XI
2-(4-(1-[5-(2,2-ジフルオロ-シクロプロピルメトキシ)-ピリジン-2-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-プロピオン酸
【0143】
【化50】
【0144】
1.40g(4.67mmol)の例Vを30mlのジオキサンに窒素雰囲気下で溶かす。1.20g(12.1mmol)のナトリウムtert.ブチラート及び0.80g(3.0mmol)の例Xを加える。次に139mg(0.15mmol)のトリス-(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)及び181mg(0.61mmol)の2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルを加えて反応混合物を80℃で3時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出する。有機層を0.1N NaOH水溶液で洗浄する。混ぜ合わせた水層を1N HCl水溶液で酸性にしてEtOAcで抽出する。水層をNaClで飽和させ、もう一度EtOAcで抽出する。有機層を混ぜ合わせ、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C22H24F2N2O4 (M=418.4g/mol)
ESI-MS:419 [M+H]+
Rt(HPLC):0.71分(方法B)
【0145】
例XII
(R)-2-(4-[1-(2クロロ-ピリミジン-4-イル)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0146】
【化51】
【0147】
0.50g(1.9mmol)の例IIIを10mlのACNに溶かす。0.50ml(2.9mmol)のDIPEA及び284mg(1.91mmol)の2,4-ジクロロピリミジンを加える。反応混合物を室温で一晩撹拌する。溶媒を真空中で除去する。残渣を水及びEtOAcで希釈する。層を分ける。有機層を10%KHSO4水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C19H23ClN4O2 (M=374.9g/mol)
ESI-MS:375 [M+H]+
Rt(HPLC):1.05分(方法C)
【0148】
例XIII
2-(4-(1-[5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-プロピオン酸
【0149】
【化52】
【0150】
a)工程VIIa)
b)398mg(4.42mmol)の2-メチル-プロパン-1,2-ジオールを50mlのTHFに溶かす。分子ふるいを加えて15分間撹拌する。分子ふるいをろ別する。130mg(2.95mmol)の水素化ナトリウム(鉱油中55%)をろ液に加える。混合物を10分間撹拌してから580mg(1.47mmol)の上記生成物(工程XIIIa)を加える。反応混合物を室温で45分間及び50℃で一晩撹拌する。130mg(2.95mmol)の水素化ナトリウム(鉱油中55%)及び580mg(1.47mmol)の上記生成物を加える。反応混合物を50℃で5時間撹拌してから50℃で一晩撹拌する。溶媒を真空中で除去する。残渣 を水/DMFに溶かし、HClで酸性にしてから分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C21H26FN3O5 (M =419.5g/mol)
ESI-MS:420 [M+H]+
Rt(HPLC):0.86分(方法B)
【0151】
例XIV
2-(4-[1-(5-フルオロ-6-プロピルアミノ-ピリミジン-4-イル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-プロピオン酸
【0152】
【化53】
【0153】
a)工程VIIa)
b)420mg(1.07mmol)の上記生成物、0.11ml(1.3mmol)のプロピルアミン及び0.37ml(2.1mmol)のDIPEAを4mlのNMPに溶かす。反応混合物を封管中80℃で一晩撹拌する。350μlのプロピルアミンを加えて反応混合物を80℃で2日間撹拌する。反応混合物を水/MeOHで希釈し、分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
C22H29FN4O3 (M =416.5g/mol)
ESI-MS:417 [M+H]+
Rt(HPLC):0.86分(方法B)
c)10mlのEtOH中の450mg(1.08mmol)の上記生成物及び2.16ml(2.16mmol)の1N NaOH水溶液の混合物を室温で2時間撹拌する。2mlの1N NaOH水溶液を加えて室温で一晩撹拌する。真空中でEtOHを除去する。残渣を水で希釈し、1N HCl水溶液で酸性にする。EtOAcを加えて層を分ける。水層をもう一度EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C20H25FN4O3 (M =388.4g/mol)
ESI-MS:389 [M+H]+
Rt(HPLC):0.73分(方法B)
【0154】
例XV
1-ブロモ-4-シクロブトキシ-ベンゼン
【0155】
【化54】
【0156】
25mlのDMF中の2.50g(14.5mmol)の4-ブロモフェノール、2.04ml(21.7mmol)のシクロブチルブロミド及び7.99g(57.8mmol)のK2CO3の混合物を120℃で一晩撹拌する。反応混合物を水及びEtOAcで抽出する。有機層を乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C10H11BrO (M =227.1g/mol)
ESI-MS:227 [M+H]+
Rt(HPLC):1.39分(方法D)
【0157】
例XVI
2-ブロモ-5-(2,2-ジフルオロ-シクロプロピルメトキシ)-ピリジン
【0158】
【化55】
【0159】
10mlのACN中の0.30g(1.7mmol)の2-ブロモ-5-ヒドロキシピリジン、0.59g(3.5mmol)の1-ブロモエチル-2,2-ジフルオロシクロプロパン及び0.60g(4.3mmol)のK2CO3の混合物を70℃で一晩撹拌する。反応混合物をアルミナ/活性炭でろ過する。溶媒を真空中で除去する。
C9H8BrF2NO (M=264.1g/mol)
ESI-MS:264 [M+H]+
Rt(HPLC):0.91分(方法A)
【0160】
例XVII
1-ブロモ-4-シクロブチルメトキシ-ベンゼン
【0161】
【化56】
【0162】
3mlのDMF中の2.50g(14.5mmol)の4-ブロモフェノール、2.44ml(21.7mmol)のブロモメチルシクロブタン及び7.99g(57.8mmol)のK2CO3の混合物を100℃で一晩撹拌する。反応混合物を水及びEtOAcで抽出する。有機層を乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。
C11H13BrO (M=241.1g/mol)
ESI-MS:240 [M*+]
Rt(HPLC):1.33分(方法A)
【0163】
例XVIII
2-クロロ-5-(2,2-ジフルオロ-シクロプロピルメトキシ)-ピリミジン
【0164】
【化57】
【0165】
3mlのDMF中の150mg(1.15mmol)の2-クロロ-5-ヒドロキシピリミジン、295mg(1.72mmol)の1-ブロモエチル-2,2-ジフルオロシクロプロパン及び318mg(2.30mmol)のK2CO3の混合物を80℃で一晩撹拌する。反応混合物を水及びDCMで抽出する。有機層を乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(MeOH/H2O/NH4OH)で精製する。
C8H7ClF2N2O (M=220.1g/mol)
ESI-MS:221 [M+H]+
Rt(HPLC):1.21分(方法G)
【0166】
例XIX
2-エトキシ-4-ヨード-ピリジン
【0167】
【化58】
【0168】
80mlのEtOH中の40.0g(167mmol)の2-クロロ-4-ヨードピリジン及び70.0ml(188mmol)のナトリウムエトキシドの混合物を還流させながら一晩撹拌する。溶媒を真空中で除去する。残渣を水及びDCMで抽出する。有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,DCM)で精製する。
C7H8INO (M =249.1g/mol)
ESI-MS:250 [M+H]+
【0169】
最終化合物の調製
例1
例1.1(一般経路)
2-(4-(1-[5-クロロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-N-シクロプロピル-プロピオンアミド
【0170】
【化59】
【0171】
4.4mg(0.010mmol)の例VIIIを100μLのDMFに溶かし、5.2μl(0.030mmol)のDIPEA及び3.5mg(0.010mmol)のTBTUを加える。この混合物を室温で10分間撹拌する。次に100μlのDMF中の0.6mg(0.01mmol)のシクロプロピルアミンの混合物を加えて反応混合物を室温で3時間撹拌する。13.3μl(0.040mmol)の3N K2CO3水溶液を加える。20分後に塩基性アルミナのパッドを通して反応混合物をろ過し、DMF/MeOH(9/1)で溶出する。真空中で溶媒を除去して表題化合物を得る。
C24H31ClN4O4(M=475.0g/mol)
ESI-MS:475 [M+H]+
Rt(HPLC):1.05分(方法H)
例1.1に類似して下記化合物を調製する。
【0172】
【化60】






















【0173】
* 例1.4、1.6、1.10、1.13、1.14:シクロプロパンにおける立体化学は、R,R及びS,S(すなわち、trans)の混合である。
【0174】
例2
例2.1(一般経路)
(R)-2-(4-[1-(2-ジエチアルアミノ-ピリミジン-4-イル)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0175】
【化61】
【0176】
50mg(0.13mmol)の例XII、40μl(0.38mmol)のジエチルアミン及び30μl(0.17mmol)のDIPEAを2mlのACNに溶かす。反応混合物を封管中110℃で3時間撹拌してからHPLC-MS(MeOH/H2O/TFA)で精製して表題化合物をTFA塩として得る。
C23H33N5O2(M=411.6g/mol)
ESI-MS:412 [M+H]+
Rt(HPLC):0.90分(方法F)
例2.1に類似して下記化合物を調製する。
例2.2では、反応時間は140℃で2時間であり、3.5当量のN-エチルメチルアミンを加える。
例2.3、2.4、2.5及び2.6では、反応時間は90℃で3時間である。
例2.3、2.4及び2.5では2.2当量のDIPEAを加える。
例2.3では、4.1当量のN-メチル-N-プロピルアミンを加える。
例2.4では、2.6当量の3,3-ジフルオロピロリジン塩酸塩を加える。
例2.6では、2.5当量のモルホリンを加える。
【0177】
【化62】
【0178】
例2.1、2.2、2.3、2.4、2.5及び2.6はTFA塩として単離される。
【0179】
例3
例3.1(一般経路)
N-シクロプロピル-2-(4-(1-[5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-プロピオンアミド
【0180】
【化63】
【0181】
3mLのDMF中42mg(0.10mmol)の例XIIIに42μl(0.30mmol)のTEA及び32mg(100μmol)のTBTUを加えて室温で10分間撹拌する。次に14μl(0.20mmol)のシクロプロピルアミンを加え、結果として生じる混合物を室温で一晩撹拌する。混合物をそのまま分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C24H31FN4O4 (M=458.5g/mol)
ESI-MS:459 [M+H]+
Rt(HPLC):0.67分(方法J)
例3.1に類似して下記化合物を調製する。
例3.5及び3.6では、1.1当量のアミンを加える。
例3.11では、4.0当量のアミンを加える。
例3.13では、1.2当量のアミンを加える。混合物をそのまま分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
【0182】
【化64】

【0183】
* 例3.2、3.9:シクロプロパンにおける立体化学は、R,R及びS,S(すなわちtrans)の混合である。
【0184】
例4
例4.1(一般経路)
2-(4-[1-(4-エトキシル-フェニル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0185】
【化65】
【0186】
不活性雰囲気下で1.5mlのジオキサン中の55mg(0.21mmol)の例III、42mg(0.21mmol)の4-ブロモフェネトール、81mg(0.84mmol)のナトリウムtert.ブトキシド、25mg(84μmol)の2-(ジ-t-ブチルホスフィノ)ビフェニル及び19mg(21μmol)のトリス(ジベンジリデンアセチン)ジパラジウム(0)の混合物を45℃で一晩撹拌する。粗混合物をそのまま分取HPLC-MS(MeOH/H2O/NH4OH)で精製する。
C23H30N2O3 (M=382.5g/mol)
ESI-MS:383 [M+H]+
Rt(HPLC):1.15分(方法A)
例4.1に類似して下記化合物を調製する。
【0187】
【化66】
【0188】
例5
2-(4-[1-(2-シクロプロピル-ピリミジン-4-イル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0189】
【化67】
【0190】
不活性雰囲気下で50mg(0.13mmol)のXIIを3mlのジオキサンに溶かす。30mg(0.35mmol)のシクロプロピルボロン酸、55mg(0.26mmol)のK3PO4及び5mg(0.01mmol)の1,1´-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)を加える。反応混合物を90℃で一晩撹拌する。同量のボロン酸、塩基及び触媒を加える。反応混合物をマイクロ波オーブン内で120℃にて5時間及び100℃で一晩撹拌する。反応混合物をMeOH及び水で希釈し、ろ過し、分取HPLC-MS(MeOH/H2O/NH4OH)で精製する。
C22H28N4O2 (M=380.5g/mol)
ESI-MS:381 [M+H]+
Rt(HPLC):1.14分(方法A)
【0191】
例6
例6.1 異性体1及び例6.1 異性体2)
(R及びS)-2-(4-(1-[5-クロロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-ピリミジン-4-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-N-シクロプロピル-プロピオンアミド
【0192】
【化68】
【0193】
例1.1の立体異性体を分取キラルHPLCにより分離する。
Rt(キラルHPLC):5.16分(方法K) 異性体1
Rt(キラルHPLC):5.69分(方法K) 異性体2
分取キラルHPLC後、異性体1及び2は単一の立体異性体である。しかしながら、アミドに対してα位の絶対立体化学を決定しなかった。従って、単に、例番号に付した文字列「異性体1」又は「異性体2」と共にアスタリスク(*)によってキラリティーを表示する。ピロリジン環における立体中心は示すとおりである。
例6.1の異性体1及び例6.1の異性体2に類似して下記化合物を調製する。
【0194】
【化69】


【0195】
* 例6.2では、分離のために2つの後続キラルHPLC法が必要である。方法Kは6.2の異性体1及び6.2の異性体2をもたらす。異性体3及び4は、混合物(Rt=3.63分;方法K;最終溶出留分)として単離される。後者の混合物を2つ目のキラルHPLC(方法L)にさらすと6.2の異性体3及び6.2の異性体4がもたらされる。
【0196】
例7
例7.1(一般経路)
2-(4-[1-(4-シクロブトキシ-フェニル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0197】
【化70】
【0198】
2mLのジオキサン中の30mg(0.10mmol)の例III、27mg(0.12mmol)の1-ブロモ-4-シクロブトキシ-ベンゼン及び40mg(0.40mmol)のナトリウムtert.ブトキシドに不活性雰囲気下で、ジオキサンに溶かした10mg(0.01mmol)のクロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2´,4´,6´-トリ-プロピル-1, 1´-ビフェニル)[2-(2-アミノエチル)フェニル]パラジウム(II)を加える。反応混合物を封管中70℃で一晩撹拌する。溶媒を真空中で除去する。残渣をDMFに溶かし、分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C25H32N2O3(M=408.6g/mol)
ESI-MS:409 [M+H]+
Rt(HPLC):0.68分(方法I)
例7.1に類似して下記化合物を調製する。
例7.8は、水及びEtOAcで抽出し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣を分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
例7.9、7.22及び7.33は、室温で一晩撹拌してから水及びEtOAcで抽出し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空中で除去する。残渣をまずフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,PE/EtOAc=1/1-EtOAc)で精製してから分取HPLC-MS(ACN/H2O/TFA)で精製する。
【0199】
【化71】







【0200】
例8
例8.1(一般経路)
2-(4-[1-(5-シクロペンチルオキシ-3-フルオロ-ピリジン-2-イル)-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0201】
【化72】
【0202】
30mg(0.10mmol)の例IIIを0.25mlのDCMに溶かす。20mg(0.12mmol)の2-クロロ-5-シクロペンチルオキシ-3-フルオロ-ピリジンを0.25mlのDCMに溶かし、例IIIとの混合物に加える。反応混合物を70℃でDCMが蒸発するまで撹拌する。封管し、180℃で3時間加熱する。200μlのNMPを加えて180℃で24時間撹拌する。反応混合物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C25H32FN3O3(M=441.6g/mol)
ESI-MS:442 [M+H]+
Rt(HPLC):0.70分(方法I)
例8.1に類似して下記化合物を調製する。
【0203】
【化73】
【0204】
例9
例9.1(一般経路)
2-(4-(1-[5-(2,2-ジフルオロ-シクロプロピルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-(R)-ピロリジン-3-イルオキシ)-フェニル)-N-エチル-プロピオンアミド
【0205】
【化74】
【0206】
44mg(0.20mmol)の例XVIIIを1mlのNMPに溶かす。30mg(0.10mmol)の例IIIを1mlのNMPに溶かし、例XVIIIとの混合物に加える。30μlのDIPEAを加え、封管中140℃で反応混合物を3時間撹拌する。反応混合物を分取HPLC-MS(ACN/H2O/NH4OH)で精製する。
C23H28F2N4O3(M=446.5g/mol)
ESI-MS:447 [M+H]+
Rt(HPLC):0.56分(方法I)
例9.1に類似して下記化合物を調製する。
【0207】
【化75】
【0208】
分析方法
【0209】
分析カラム:XBridge C18(Waters) 2.5μm;3.0×30mm;
カラム温度:60℃;流速:2.2ml/分。
【0210】
分析カラム:Sunfire C18(Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃。
【0211】
分析カラム:Stablebond C18(Waters) 1.8μm;3.0×30mm;
カラム温度:60℃;流速:2.2ml/分。
【0212】
分析カラム:XBridge C18(Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃。
【0213】
分析カラム:XBridge C18(Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃。
【0214】
分析カラム:Stablebond C18(Agilent) 1.8μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃。
【0215】
分析カラム:Sunfire C18 (Waters) 3.5μm;4.6×30mm;カラム温度:60℃。
【0216】
分析カラム:Sunfire C18(Waters) 3.5μm;4.6×30mm;
カラム温度:60℃; 流速:2.5ml/分。
【0217】
分析カラム:XBridge C18(Waters) 1.7μm;3.0×30mm;
カラム温度:60℃;流速:1.5ml/分。
【0218】
分析カラム:XBridge C18(Waters) 2.5μm;3.0×30mm;
カラム温度:60℃;流速:2.0ml/分。
【0219】
方法K
分析カラム:Daicel Chiralpak(登録商標) AYH, 5μm;4.6×250mm、流速:4.0ml/分
【0220】
方法L
分析カラム:Daicel Chiralpak(登録商標) AYH、5μm;4.6×250mm、流速:4.0ml/分
【0221】
方法M
分析カラム:Daicel Chiralpak(登録商標) AYH、5μm;4.6×250mm、流速:4.0ml/分