特許第6378771号(P6378771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

特許6378771環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法
<>
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000002
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000003
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000004
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000005
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000006
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000007
  • 特許6378771-環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378771
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/00 20060101AFI20180813BHJP
   C22B 59/00 20060101ALI20180813BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20180813BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20180813BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20180813BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C01F17/00 G
   C22B59/00
   C22B7/00 G
   C22B3/04
   C22B3/10
   C22B1/02
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-539290(P2016-539290)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-508692(P2017-508692A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】US2014070806
(87)【国際公開番号】WO2015095303
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】14/137,008
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】マネパリ,サティア・キショー
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,セオドア・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リプキン,ドン・マーク
(72)【発明者】
【氏名】グーリシャンカール,カーシック・ヴィラパッカム
(72)【発明者】
【氏名】リヨンズ,ロバート・ジョセフ
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101705380(CN,A)
【文献】 特開平01−282120(JP,A)
【文献】 特開平01−298019(JP,A)
【文献】 特開昭60−161330(JP,A)
【文献】 特開2006−028015(JP,A)
【文献】 特開2006−200037(JP,A)
【文献】 米国特許第02849286(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
C22B 1/02
C22B 3/04
C22B 3/10
C22B 7/00
C22B 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類(RE)ケイ酸塩及び非RE夾雑物を含有する原材料からRE酸化物成分を抽出する方法であって、
原材料からREを酸中に浸出させて酸溶液を形成する工程と、
酸溶液でシュウ酸塩沈殿を実施して、REシュウ酸塩水和物を形成する工程と、
酸溶液からREシュウ酸塩水和物を分離する工程と、
REシュウ酸塩水和物を熱処理して、原材料から抽出されたRE元素を含有するRE酸化物を形成する工程と
を含んでおり、原材料は、イットリウム(Y)又はイッテルビウム(Yb)の1以上を、RESi7(REDS)又はRE2SiO5(REMS)の1以上の形態で含み、浸出は、実質的に二酸化ケイ素(SiO2)の残留物をもたらす、塩酸(HCl)による処理(92)を含む、方法。
【請求項2】
酸溶液からREシュウ酸塩水和物を分離する工程は、REシュウ酸塩水和物を濾過して洗浄する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シュウ酸塩沈殿を実施する前に、酸溶液で硫酸塩沈殿を実施して、酸溶液から硫酸塩沈殿を分離する工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
らに、酸溶液中で硫酸塩沈殿を実施する工程を含み、硫酸塩沈殿は、Na2SO4又は(NH42SO4の1種を酸溶液に添加して沈殿を形成する工程と、シュウ酸塩沈殿の前に沈殿を酸溶液から分離する工程とを含み、沈殿は、アルカリ土金属又はアルカリ金属の1以上を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
沈殿は、(Ba,Sr)SO4である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
濾過によって(Ba,Sr)SO4沈殿を除去する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
溶液でシュウ酸塩沈殿を実施する工程は、固体としてのシュウ酸又は水溶液中のシュウ酸を加えて、REシュウ酸塩水和物沈殿を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シュウ酸溶液を室温で添加しながら撹拌し、第1の濾過後の、REシュウ酸塩水和物の水洗及びその後の第2の濾過の実施をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
原材料は、(Ba,Sr)SiAl(BSAS)又はSiの1以上を含み、Si、Ba、Sr又はAlの1以上が原材料から除去され
Siの除去は、酸溶液を形成する前記工程の前に、NaOH溶液処理を実施しSiの水溶性複合材を形成させることによって行われ、
Ba及びSrの除去は、酸溶液を形成する前記工程の後で且つREシュウ酸塩水和物を形成する前記工程の前に、硫酸塩沈殿試薬を添加して(Ba,Sr)SOの沈殿を形成させることによって行われ、
Alの除去は、REシュウ酸塩水和物を分離する前記工程において、沈殿せず酸溶液中に残ったAlをREシュウ酸塩水和物から分離することによって行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
原材料は、イットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)をYbYDSの形態で含み、原材料から抽出されたRE元素は、混合(Yb,Y)23を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
原材料は、イットリウム(Y)又はイッテルビウム(Yb)の1以上をREDSの形態で含み、その原材料からY又はYbの1以上が90%を超える収率で抽出回収され、複数の夾雑物は各々100ppm未満に低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
希土類(RE)酸化物成分を、REケイ酸塩を含有する原材料から抽出する方法であって、
原材料を塩酸で処理して原材料由来のREを酸中に浸出させて、酸溶液を形成する工程と、
シュウ酸で処理することによって、酸溶液でシュウ酸塩沈殿を実施して、REシュウ酸塩水和物を形成する工程と、
酸溶液からREシュウ酸塩水和物を分離する工程と、
REシュウ酸塩水和物を熱処理して、原材料から抽出されたRE元素を有するRE酸化物を形成する工程であって、熱処理がREシュウ酸塩水和物を乾燥かつか焼する工程を含む工程と
を含んでおり、原材料は、イットリウム(Y)又はイッテルビウム(Yb)の1以上を、REDS又はREMSの1以上の形態で含み、酸溶液でシュウ酸塩沈殿を実施する工程は、酸溶液で硫酸塩沈殿を実施した後に実施される、方法。
【請求項13】
原材料は、(Y,Yb)2Si27(YbYDS)又はY2SiO5(YMS)の1以上、及び(Ba,Sr)Si2Al28(BSAS)又はSiの1以上を含む非堆積原材料粉末であり、Si、Ba、Sr、及びAlの夾雑物が除去されて、実質的に純粋なRE酸化物が生ずる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
希土類(RE)元素収集回収システムであって、
環境バリアコーティング(EBC)を対象に塗工するためのEBC製造塗工システムであって、EBCは、原材料粉末として塗工され、原材料粉末の少なくとも一部が、対象上に堆積せずに、夾雑物と混合される、EBC製造塗工システムと、
非堆積粉末からRE元素を化学的に抽出するための収集回収システムであって、非堆積粉末由来のREを酸中に浸出させて酸溶液を形成し、酸溶液でシュウ酸塩沈殿を実施してREシュウ酸塩水和物を形成し、酸溶液からREシュウ酸塩水和物を分離し、REシュウ酸塩水和物を熱処理して、非堆積粉末から抽出されたRE成分を有するRE酸化物を形成するように構成された収集回収システムと
を含むシステム。
【請求項15】
EBCは、イットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)をYbYDSの形態で含み、収集回収システムはさらに、混合(Y,Yb)23としてEBCからRE元素を抽出するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境バリアコーティングから希土類成分を回収するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素含有材料、例えば、モノリシックセラミックス、合金、金属間化合物及びそれらの複合材は、航空機用ガスタービン及び産業用ガスタービン機関、ヒートエキスチェンジャ、並びに内燃機関などの用途における高温での作動のために設計された構造に用いるのに望まれる性質を有する。環境バリアコーティング(EBC)がケイ素含有材料に塗工されて、材料は、化学環境及び過剰な熱負荷への有害な曝露から保護される。ゆえに、EBCは、高温の水蒸気含有環境において熱化学的に安定するように、また材料表面と環境との間に曝露経路を提供する連結孔及び垂直方向クラックを最小にするように設計される。
【0003】
EBCは、単層系であっても多層系であってもよく、各層は、例えば熱バリアを提供する、担体の酸化もしくは揮発を軽減する、又は隣接する層もしくは担体との化学反応を防止するといった機能の1以上を果たす。多くのEBC系において、1以上の層が、REケイ酸塩から実質的に形成される。REとして、元素イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、及びルテチウム(Lu)の1つ以上が挙げられる。REケイ酸塩は、例えば、RE一ケイ酸塩(RE2SiO5)であってもRE二ケイ酸塩(RE2Si27)であってもよい。REケイ酸塩は、燃焼雰囲気におけるケイ素の揮発速度が比較的低く、熱伝導率が低く、上述のケイ素含有担体との熱機械適合性が優れている。
【0004】
EBC材料は、溶射(例えば、燃焼溶射又はプラズマ溶射)、スラリーベースの堆積(例えば、スラリー溶射、浸漬、電気泳動堆積)、化学蒸着及び物理蒸着が挙げられる広範なコーティングプロセスを用いて、構成要素上に堆積してよい。
【0005】
EBCの製造又は塗工中に、スクラップができるにつれ、大量のRE含有ケイ酸塩が失われる。例えば、溶射されるEBC層について、原材料粉末の最大90%が、過剰溶射、非付着粒子、又は取付具への堆積となって失われるおそれがある。このスクラップの集合が、典型的には、他の低価値成分又は夾雑物との高価値RE含有材料の混在をもたらす。これらは、元素のケイ素(Si)、並びにバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びアルミニウム(Al)のケイ酸塩(例えば、バリウム−ストロンチウム−アルミノケイ酸塩(BSAS)で見出される)を含み得る。
【0006】
類似した問題が、使用終了時の、EBCでコーティングされた構成要素と関連して生じる。コーティングは、これらの構成要素から、研削グリットブラストなどのプロセスによって剥がされて、機関操作又はストリッピングプロセスに由来する、研磨媒体、REケイ酸塩、Ba/Sr/Al含有ケイ酸塩、元素のSi、二酸化ケイ素、及び他の不純物の混合物がもたらされるおそれがある。
【0007】
現在、REは、EBC過剰溶射(overspray)粉末、EBCスラリー堆積処理、及び剥がされたEBCコーティングから効率的に回収し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国公開特許第102242270号明細書
【発明の概要】
【0009】
一実施形態では、REケイ酸塩及び非RE夾雑物を含有する原材料から、希土類(RE)酸化物成分を抽出する方法が提供される。本方法は、原材料由来のREを酸中に浸出させて酸溶液を形成すること、酸溶液でシュウ酸塩沈殿を実施してREシュウ酸塩水和物を形成すること、及びREシュウ酸塩水和物を酸溶液から分離することを含む。本方法はまた、REシュウ酸塩水和物を熱処理して、原材料から抽出されたRE元素を含有するRE酸化物を形成することを含む。
【0010】
別の実施形態では、前述の方法を実施するように構成された収集回収システムを有するシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】種々の実施形態に係る環境バリアコーティング(EBC)スクラップの収集回収システムのブロック図である。
図2】環境バリアコーティング(EBC)からの希土類(RE)元素の化学抽出のための一実施形態に係る方法のフローチャートである。
図3図2の方法に由来するシュウ酸塩水和物の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4図2の化学プロセスの結果の表である。
図5】実施形態に係る、EBCからのRE元素の化学抽出を示すフロー図である。
図6図5の化学プロセスの結果の表である。
図7図5の化学プロセスの結果の表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の実施形態について、添付の図面と併せて参照することによって、理解を深めることができるであろう。図が種々の実施形態の機能ブロック図又は作動ブロック図を示す程度まで、機能ブロックは、構成要素間又は工程間の区分を必ずしも示すわけではない。ゆえに、例えば、機能ブロックの1つ以上が、単一の構成要素もしくはプロセス、又は多数の構成要素もしくはプロセスにおいて実施されてよい。種々の実施形態が、図面に示される配置及び手段に限定されない。
【0013】
本明細書中で用いられる「システム」、「ユニット」又は「モジュール」(本明細書中に記載されるコントローラなど)という用語は、1以上の機能を実施するように作動するハードウェア及び/又はソフトウェアシステムを備えてよい。例えば、モジュール、ユニット、又はシステムは、タンジブルかつ非一時的なコンピュータ読取り可能記憶媒体(コンピュータメモリなど)に記憶される命令に基づく作動を実施する、コンピュータプロセッサ、コントローラ、又は他の論理ベースのデバイスを備えてよい。或いはその代わりに、モジュール、ユニット、又はシステムは、デバイスの配線論理に基づく作動を実施する配線デバイスを備えてよい。添付の図に示されるモジュール又はユニットは、ソフトウェアの命令もしくはハードウェアに組み込んだ命令に基づいて作動するハードウェア、作動を実施するようにハードウェアを指示するソフトウェア、又はそれらの組合せを表してよい。
【0014】
本明細書中で用いられる、単数形で記載され、かつ単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」で始まる元素又は工程は、排除することが明示的に述べられていない限り、元素又は工程の複数を排除しないと理解すべきである。さらに、言及「一実施形態」は、列挙される特徴を組み込む付加的な実施形態の存在を排除すると解釈されることは想定されていない。さらに、反対のことが明示的に述べられない限り、特定の性質を有する元素又は複数の元素を「含む」又は「有する」実施形態は、その性質を有していない付加的な元素を含んでよい。
【0015】
概して、種々の実施形態が、高価値使用(例えばEBC用)にその後戻すことができる高純度RE含有産物を回収するための、希土類(RE)成分又は元素を低価値成分から抽出又は分離する化学プロセスを提供する。ある実施形態における分離プロセスは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)、及びケイ素(Si)を含有する原材料から、イットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)を分離するように構成される。しかし、種々の実施形態では、EBCは、Ba+Sr+Al+Si+その他、Al+Si+その他、Si+その他、又は他の組合せ、並びに様々な量及び/又は様々な範囲の、有機質及び金属が挙げられる夾雑物を含有し得る。
【0016】
本明細書中に記載される1以上の実施形態を実践することによって、塗工プロセス及びコーティングストリッピング中に収集されるEBCスクラップからの、高価値RE成分の効率的な回収が実現し得る。
【0017】
図1は、EBC塗工プロセス後のRE成分の収集及び回収を可能とする種々の実施形態に係るシステム20のブロック図である。特に、EBC製造/塗工システム22が、EBCの製造、及び/又は対象24への塗工を実現する。例えば、対象24は、ケイ素含有材料であってよく、これに、EBC製造/塗工システム22が、当該技術において知られているように、プラズマ溶射プロセスを用いるなどして、EBCを塗工する。しかし、当該技術におけるあらゆる方法が、対象にEBCを塗工するために用いられてよく、例えば、溶射(燃焼溶射又はプラズマ溶射)、スラリーベースの堆積(例えば、スラリー溶射、浸漬、電気泳動堆積)、化学蒸着及び物理蒸着がある。加えて、対象24は、あらゆる対象であってよく、ケイ素含有材料から形成された対象に限定されない。対象は、例えば、ガスタービン構成要素であってよい。ある実施形態では、また別の例として、対象24は、例えば、とりわけ、航空機用ガスタービン及び産業用ガスタービン機関、ヒートエキスチェンジャ、並びに内燃機関に用いられる、セラミックマトリックス複合材(CMC)担体材料から形成された対象であってよい。
【0018】
加えて、EBC製造/塗工システム22によって対象24に塗工されるEBCは、あらゆるタイプのRE含有EBCであってよい。一実施形態では、分離すべきEBC及び夾雑物は、以下の化学式によって定義される以下の化合物又は組成物(1以上の例示的な実施形態の成分を示す)を含む:(Y,Yb)2Si27(YbYDS)、Y2SiO5(YMS)、(Ba,Sr)Si2Al28(BSAS)、Si。しかし、他の化合物又は組成物が、EBCの一部、又はリサイクル用のインプット原材料を形成し得る。例えば、夾雑物は、限定されないが、SiO2、Al23、Fe23、Fe34、Y23安定化ZrO2、(Ni,Co)CrAlY、及び有機化合物などの化合物を挙げることができる。例えば、EBCは、米国特許第7867575号明細書に記載される耐焼結性、低伝導率、高安定性のEBC/TBCであってよい。別の例として、米国特許第7910172号明細書に記載されるようなEBCを有する構成要素が形成されてよい。他の例が、米国特許第8343589号明細書、米国特許第8273470号明細書、米国特許第8039113号明細書に記載されている。ある実施形態では、原材料は、イットリウム(Y)又はイッテルビウム(Yb)の1以上を、RE2Si27(REDS)又はRE2SiO5(REMS)の1以上の形態で含んでよい。本明細書中で「A」又は「B」の1以上が言及される場合、これは、Aの1以上、Bの1以上、又はAの1以上及びBの1以上を意味することに留意すべきである。例えば、Y又はYbの1以上は、Y、Yb、又はY及びYbを含む。ある実施形態では、原材料は、REDS又はREMSの1以上、及び(Ba,Sr)Si2Al28(BSAS)又はSiの1以上を含む非堆積原材料粉末であって、少なくともSi、Ba、Sr及びAlが除去される非堆積原材料粉末である。ある実施形態では、原材料は、イットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)をYbYDSの形態で含み、原材料から抽出されたRE元素は、混合(Yb,Y)23を含む。ある実施形態では、原材料は、イットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)の1以上をYbYDSの形態で含み、その原材料からY及びYbは、約90%を超える収率で抽出回収され、数の夾雑物は各々100ppm未満に低減する
【0019】
図1に示されるように、例えばEBC層を対象24上に溶射することによって、EBC(又はTBC)を対象24に塗工する場合、原材料粉末の全てが対象24の表面上に堆積しない。コーティングされる対象の幾何構造、プロセスパラメータ、及び用いられるツーリング/フィクスチャリングに応じて、90%を超える原材料粉末が対象24の上に堆積し得ない。特に、矢印26によって示されるように、非堆積原材料粉末は、過剰溶射粉末として失われ得、非付着粒子として部品に当たって跳ね返り得、又は取付具の上にコーティングとして堆積し得る。これらのプロセスにおいて、RE含有原材料粉末は、夾雑物と、コーティングの他の構成要素、例えば元素のケイ素(Si)、及びバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びアルミニウム(Al)のケイ酸塩と混合される。
【0020】
種々の実施形態では、非堆積RE含有原材料を収集かつ回収する収集回収システム28が提供される。特に、収集回収システム28は、混合された非堆積原材料粉末及び夾雑物を収集し、回収のために、RE成分30を低価値成分及び夾雑物から分離する。種々の実施形態では、収集回収システム28は、非堆積原材料粉末が捕獲かつ保持される保持又は貯蔵領域32を含む。例えば、非堆積原材料粉末は、重力によって保持又は貯蔵領域32中に落下してもよいし、ある実施形態では、他の力が加わってもよい(例えば、サイクロンを用いるような真空又は吸引力、ファンから生じる空気流、又は静電力)。その後、収集された非堆積原材料粉末は、本明細書中でより詳細に記載されるように処理されて、RE成分30は、限定されないがEBCが挙げられる高価値塗工への再利用を促進する純度及び形態で、分離回収される。
【0021】
種々の実施形態では、原材料調製工程は、本明細書中に記載される化学抽出プロセスに先立って実施されてよい。例えば、種々の実施形態では、収集回収システム28から収集された粉末又はコーティングが、例えばミリングによって粉砕されて、粒子サイズは減少し、また大きい集塊が壊れる。加えて、原材料中の希土類成分の幾分のアップグレードが、大きな夾雑物(例えば、マスキング材料、機械加工チップス、又は有機性残屑)を取り出すためのスクリーニング、強磁性不純物(例えば、金属又は酸化鉄)を取り出すための磁気分離、又は低密度もしくは高密度の夾雑物を取り出すための重量分離などの技術を用いて、実現し得る。
【0022】
種々の実施形態では、収集回収システム28は、非堆積原材料粉末などのEBCからのREの化学抽出を実施するために用いられる。例えば、一実施形態では、収集回収システム28は、Y、Yb、Si、Ba、Sr、Alを含有する混合EBC原材料からの、酸化物の形態での酸化Y,Ybの回収を実現する。
【0023】
種々の実施形態が、EBCからのREの化学抽出について例えば図2に示される分離回収方法又はプロセスを提供する。これは、ある実施形態では、EBCからのY及びYbの抽出である。しかし、他のREが分離回収されてよく、図2は、実施し得る化学抽出プロセスの一タイプの実例であると理解すべきである。特に、化学抽出を実施するための方法40が、種々の実施形態に従って提供される。
【0024】
方法40は、説明される様々な実施形態の構造又は態様を使用してよく、例えば、収集回収システム28(図1に示される)によって実施し得ることに留意すべきである。種々の実施形態では、ある工程を省略しても追加してもよく、ある工程を組合せてもよく、ある工程を同時に実施しても並行して実施してもよく、ある工程を複数の工程に分割してもよく、ある工程を異なる順序で実施してもよく、ある工程又は一連の工程を反復的に再実施してもよい。以下の記載と共に図2を参照することとする。化学抽出プロセスの一般的な記載が最初に記載されて、具体的な例が後に続くこととなることも留意すべきである。
【0025】
特に、方法40は、粉砕及び/又は篩分けプロセス42を含む。例えば、収集回収システム28(図1に示される)から収集された粉末が、例えばミリングによって粉砕されて、粒子サイズは減少し、また大きい集塊が壊れる。加えて、又は代わりに、篩分けは最初に一部の夾雑物を除去するために実施されてよい。例えば、原材料中の希土類成分の幾分のアップグレードが、大きな夾雑物(例えば、マスキング材料、機械加工チップス、又は有機性残屑)を取り出すためのスクリーニング、強磁性不純物(例えば、金属又は酸化鉄)を取り出すための磁気分離、又は低密度もしくは高密度の夾雑物を取り出すための重量分離などの技術を用いて、実現し得る。
【0026】
方法40はまた、酸浸出44を含む。例えば、図1と関連して記載される非堆積原材料粉末は、濃塩酸(HCl)で処理されてよい。この工程において、酸溶液は、酸溶液中へのRE元素の浸出を引き起こして、シリカリッチな残留物をもたらす。例えば、酸浸出プロセスを用いて、Si及びSiO2が、以降の濾過46によって溶液から除去し得る。種々の実施形態では、酸浸出44は、酸溶液中へのY、Yb、Ba、Sr、及びAlの浸出を引き起こす。HCl、HNO3、H2SO4、及びそれらの混合物などの様々な酸を、REケイ酸塩含有原材料からRE元素を浸出させるために用いることができることに留意すべきである。さらに、pHレベルが異なる酸を、EBC粉末からREを浸出させるのに望まれる通りに、又は必要とされる通りに用いることができることに留意すべきである。また、例えば、EBC粉末を溶融ハロゲン化物塩と反応させる、他の高温固相反応が、REを浸出させるために用いられてよい。
【0027】
ある実施形態では、必要であれば、又は望まれるならば、場合によっては、酸浸出44を実施する前に、NaOH溶液処理によって元素Si不純物を選択的に浸出させてよい。特に、Siは、NaOHと反応することによって水溶性複合材を形成するが、REケイ酸塩はNaOHと反応しない。例えば、REケイ酸塩が夾雑物としてSiのみを含有する実施形態では、純粋なREケイ酸塩を提供するのにNaOH処理が十分であることに留意すべきである。
【0028】
その後、方法40において、溶液は濾過46される。例えば、ある実施形態では、酸浸出の後、溶液は、RE元素を含有する酸溶液からSiO2リッチな残留物を分離するために、濾過される。場合によっては、SiO2リッチな残留物は、溶液中に付加的なRE元素を回収するために、水洗48される。
【0029】
Ba及びSrなどの夾雑物が除去されることになる実施形態では、方法40は、場合によっては、特に、濾過済み酸溶液で硫酸塩沈殿プロセスを実施することによって、硫酸塩を沈殿50させる。或いはその代わりに、硫酸塩沈殿プロセスは、濾過工程46に先立って実施されてよい。
【0030】
種々の実施形態では、Na2SO4、(NH42SO4、又はH2SO4などの硫酸塩沈殿試薬が、50で濾過済み酸溶液に添加される。例示的な実施形態では、Na2SO4が水中に溶解して、室温で濾過済み酸溶液中に撹拌される。Ba及びSr陽イオンを含有する濾過済み酸溶液への硫酸塩の付加により、白色の沈殿(Ba,Sr)SO4が形成される。ゆえに、Ba及びSrが、溶解EBC又はEBC原材料粉末から除去し得る。例えば、硫酸塩沈殿は、例えば当該技術において知られている濾過52によって、分離されてよい。或いはその代わりに、硫酸塩沈殿工程50は、濾過46に先立って実施されてよく、硫酸塩沈殿は、濾過工程46でシリカリッチな沈殿と同時に除去されてよい。種々の実施形態における沈殿は、1以上のアルカリ土又はアルカリ金属を含むことに留意すべきである。
【0031】
硫酸塩沈殿50の終了時に、濾液溶液は、Y、Ybを含み、Y、Ybリッチであり、Al及びSrなどの不純物元素を少量含有し得る。その後、シュウ酸塩沈殿54が実施される。例えば、酸性溶液からの沈殿の濾過52に由来する酸性溶液から、シュウ酸溶液を加えることによってY及びYbがシュウ酸塩として分離され、これは、一実施形態では、RE2(C243・nH2Oを形成する。
【0032】
種々の実施形態では、固体のシュウ酸を水中にプレ溶解させることによってシュウ酸溶液が形成されるが、シュウ酸を酸溶液中に直接添加してもよい。先の濾液溶液へのシュウ酸溶液の付加は、種々の実施形態では、室温で実施されてよく、シュウ酸塩水和物沈殿が形成される。例えば、工程54は、Y及びYbなどのRE元素を選択的に沈殿させる一方、Al、Srなどの不純物元素及び/又は他の遷移金属不純物(他の遷移元素など)が、酸性条件においてシュウ酸塩として沈殿しないので、溶液中に残る。その後、沈殿は濾過56されてよく、例えば当該技術において知られている濾過法によって、Al及びSrなどの不純物からの高純度のRE産物の分離が可能となる。水酸化物などの他の沈殿試薬を、溶液からREを選択的に沈殿させるために用いることができることに留意すべきである。例えば、一実施形態では、NaOHが、水酸化REとしてREを沈殿させるために用いられる。
【0033】
一実施形態では、工程56由来の固体産物は水洗58され、その後酸洗浄の付加的な工程が続く。例えば、場合によっては、又は水洗浄の代わりに、酸洗浄が実施されてよい。特に、例えば残留Srを分離する、又は除去するために、例えば希HCl溶液を沈殿に添加することによって、酸洗浄が実施されてよい。工程58が実施される場合、最終のフィルタ工程が、工程60の前に過剰水/酸を除去するために実施されることに留意すべきである。
【0034】
したがって、Si、Ba、Sr、Al、場合によっては他の不純物を除去した後に、Y及びYbの水和シュウ酸塩が、工程58を実施した後に残る。例えば、本明細書中に記載される方法又はプロセスに由来するシュウ酸(Y,Yb)水和物の画像70が、図3に示されている。その後、乾燥か焼熱処理60が、結果として生じた産物に実施される。例えば、水の一部又は全てを除去するために、シュウ酸(Y,Yb)水和物をオーブン内で乾燥させる(例えば、100℃で15時間)。その後、種々の実施形態における乾燥産物は、さらに加熱されて(例えば、800℃で5時間)、Y及びYbを含有する酸化物が生じる。特に、示される実施形態では、EBC及び非堆積原材料粉末からのREの抽出産物である、高純度(Y,Yb)23が生じる。Y及びYbを含有する酸化物の形成は、当該技術において知られている他のプロセスを用いて実施し得ることに留意すべきである。また、Y23及びYb23が、当該技術において知られている更なる化学プロセス(例えば、溶媒抽出)を用いて、混合酸化物(Y,Yb)23から抽出し得ることも留意すべきである。
【0035】
また、方法40は、EBC及び非堆積原材料粉末からRE(例えば、Y及びYb)を抽出するために、特に、これらのEBC及び非堆積原材料粉末と混合された非RE合金元素(例えば、Si、Al、Ba、Sr)及び夾雑物から分離するために、実施されることも留意すべきである。しかし、変形及び変更が考えられる。例えば、他のREが、僅かに変更された方法40に従って、EBC及び他のRE含有スクラップ材料から抽出されてよい。
【実施例】
【0036】
REの化学抽出の特定の一実施例を記載することとする。この実施例において、Y及びYbを、(Y,Yb)2Si27(YbYDS)、Y2SiO5(YMS)、(Ba,Sr)Si2Al2O8(BSAS)、Si、並びに他の微量の有機不純物及び無機不純物を含むEBC原材料粉末から抽出する。示した実施形態では、以下に記載する化学抽出を用いて、10グラムのEBC過剰溶射粉末バッチを処理した。しかし、他のサイズのバッチを、対応するパラメータを然るべく調整して、処理することができる。
【0037】
特に、10gのEBC過剰溶射粉末を、75℃で24時間、35重量%の濃HCl(25ml)で処理した。酸処理により、酸溶液中へのY、Yb、Ba、Sr、及びAlの浸出が生じる。種々の実施形態では、例えば、HClの、(RE+アルカリ土元素+遷移金属元素+Al)に対するモル比が例えば3から10、ある実施形態では3から6又は3から4.5であるようなモル比によって、処理を定義することができることに留意すべきである。
【0038】
酸処理の後、溶液を濾過し、100mLの蒸留水で洗浄した。残留物は主にSiO2であり、少量が未反応のYbYDSであった。次の工程において、0.5gのNa2SO4を10mlの水中に溶解させ、この溶液を、陽イオンを含有する酸溶液に添加した。混合物を室温で60分間撹拌した。他の実施形態では、例えば、0.4gの(NH4)2SO4を10mlの水中に溶解させ、この溶液を、全陽イオンを含有する酸溶液に添加して、室温で撹拌した。硫酸塩処理により白色の沈殿が形成され(その後(Ba,Sr)SO4と同定された)、この沈殿を、濾過によって除去した。この硫酸塩沈殿工程が終わると、濾液溶液は、Y、Yb及びAlがリッチであり、少量のSrを有した。この酸性溶液から、シュウ酸溶液を加えることによって、Y及びYbをシュウ酸塩としてさらに分離した。シュウ酸溶液は、80mlの水中に固体のシュウ酸8gを溶解させることによって製造した。他の実施形態では、シュウ酸粉末を酸溶液に直接加えてもよい。先の濾液溶液に室温でシュウ酸溶液を加えると、白色の沈殿が形成された。混合物を室温で1時間さらに撹拌した後、濾過し、300mLの蒸留水で洗浄した。硫酸塩の、アルカリ土元素に対するモル比は、種々の実施形態では1から4、例えばある実施形態では1.5から2、他の実施形態では1から1.2であるべきであることに留意すべきである。シュウ酸の、RE元素に対するモル比は、種々の実施形態では1.5から3、ある実施形態では1.5から2.25、他の実施形態では1.5から1.8であるべきである。
【0039】
アルミニウム及びストロンチウムは、酸性条件下でシュウ酸塩として沈殿しないので、これらのイオンは濾液中に取り除かれた。得られた産物(その後シュウ酸(Y,Yb)二水和物と同定された)を、オーブン内で100℃で15時間乾燥させた。乾燥産物を空気中で800℃で5時間か焼すると、混合(Y,Yb)2O3が形成された(X線回折によって確かめられた)。
【0040】
様々なパラメータ(様々な温度、液体又は固体の量、及び期間など)を用いることができることに留意すべきである。加えて、ある実施形態では、用いた試薬の値は、記載した値に近似する程度に僅かに高くても低くてもよい。また、他の実施形態では、乾燥工程及びか焼工程を組合せて、異なる温度で異なる期間実施してよいことにも留意すべきである。
【0041】
先の実施例におけるプロセシングの結果を図4の表80及び表82に示す(インプット産物及びアウトプット産物の組成を各々記載している)。見て分かるように、抽出回収したY及びYbの収率は90%を超えるが、非RE元素(例えば、Si、Ba、Sr、Al)は、アウトプット産物の品質に影響を及ぼさない量にまで引き下げられている。
【0042】
EBC過剰溶射粉末からのREの化学抽出の別の実施例を、図5の質量収支フロー図に示すように記載することとする。この実施例において、また、Y及びYbを、とりわけ、(Y,Yb)2Si2O7(YbYDS)、Y2SiO5(YMS)、(Ba,Sr)Si2Al2O8(BSAS)、及び他の不純物(YSZ、NiCrAlY、Co、及びFeなど)を含むEBC粉末から抽出する。示した実施形態では、以下に記載する化学抽出を用いて、1900グラムの原材料バッチを処理した。しかし、他のサイズのバッチを、対応するパラメータを然るべく一定の比率で調整して、処理することができると理解すべきである。
【0043】
特に、1900gのYbYDSを、30重量%の5リットルの濃HClで、85℃で24時間処理した(92で示す)。混合物は、オイルジャケット付き(oil−jacketed)垂直リアクタ内でインペラを用いて撹拌した。酸処理により、酸溶液中へのY、Yb、Ba、Sr、Al、及び他の元素の夾雑物の浸出が生じる(94に示す)一方で、SiO2リッチな残留物が残される。
【0044】
酸処理の後、溶液を濾過し、4リットルの蒸留水で洗浄した(図5に示さない)。残留物は主にSiO2であり(96で示す)、少量が未反応のYbYDSであった。合計でおおよそ634gのSiO2を96において回収した。次の工程において、100gのNa2SO4を500mlの水中に溶解させて酸溶液に添加し、溶液を室温で60分間撹拌した。
【0045】
硫酸塩処理により白色の沈殿が形成され(その後(Ba,Sr)SO4と同定された)、この沈殿を、濾過によって除去した(100で示す)。この硫酸塩沈殿工程が終わると、残りの濾液溶液は、Y、Yb及びAlがリッチであり、少量のSr及び他の不純物を有した(98で示す)。
【0046】
この酸性濾液溶液から、シュウ酸溶液を加えることによってY及びYbを(Al、Sr、及び他の不純物(104で示す)から)シュウ酸塩として分離した。シュウ酸溶液は、16リットルの水中に固体のシュウ酸1600gを溶解させることによって製造した。シュウ酸溶液を室温で先の濾液溶液に添加して60分間撹拌すると、白色の沈殿が形成された。これはその後、シュウ酸(Y,Yb)水和物(102で示す)と同定された。この沈殿をさらに室温で4.5リットルの水で洗浄した後、最終の濾過を行った。合計で、おおよそ3277gの湿ったシュウ酸(Y,Yb)水和物102を回収した。
【0047】
シュウ酸(Y,Yb)水和物(102で示す)を、オーブン内で80℃で15時間乾燥させ、800°Cで5時間空気中でか焼すると、108で示す高純度の混合(Y,Yb)2O3が形成された。合計でおおよそ1220gの(Y,Yb)2O3を回収した(108)。
【0048】
図6において、表106は、出発EBC過剰溶射粉末及び回収されたRE酸化物の質量収支を示す。過剰溶射粉末は92の原材料を指し、SiO2残留物は96を指し、RE酸化物は108を指す。図7の表110は、出発酸浸出溶液94及びRE酸化物108中に存在する主な、少量の、また微量の不純物元素の元素濃度を示す。図6から見て分かるように、抽出回収したY及びYbの収率は93%以上であるが、主な全夾雑物(Si、Ba、Sr、Al)は、アウトプット産物の品質に影響を及ぼさない量にまで低下した。
【0049】
ゆえに、種々の実施形態は、堆積EBC及び非堆積EBC原材料粉末から高純度のRE酸化物を抽出することを可能とする。過剰溶射粉末中に存在する場合、他の夾雑物(Ca,Co、Cr、Fe、Ni、及びZrなど)もまた、本明細書中に記載したプロセス(例えば、図2に示される方法40)に従うことによって、実質的に低下することに留意すべきである。
【0050】
本明細書中で実施される種々のプロセスは、手動で、自動的に、又はそれらの組合せによって制御し得ることに留意すべきである。例えば、一実施形態では、収集回収システム28は、本明細書中に記載される種々の実施形態の工程(化学抽出プロセスなど)を制御するコントローラ29を備えてよい。例えば、コントローラ29は、種々の実施形態の工程における、様々な流体の量又はプロセシングの期間を制御してよい。ある実施形態では、ユーザの干渉又はインプットが実現されてよい。
【0051】
ゆえに、本明細書中に提供される実施例は、非オートメーション化プロセスを記載しているが、このプロセス及び方法は、限定されないが、計量、混合、リンス及び濾過などのオートメーション化に容易に従うことに留意すべきである。さらに、先に開示されるプロセス及び方法の実施例はバッチプロセスであるが、プロセス及び方法は、当該技術において知られている方法及びプロセスを用いて、連続的な、又は半連続的なユニット操作に容易に従う。
【0052】
先の記載は実例となること、また限定的でないことが想定されると理解すべきである。例えば、前述の実施形態(及び/又はその態様)は、互いと組合せて用いられてよい。また、特定の状況又は材料を、本発明の主題の教示に適応させるような多くの修飾が、その範囲を逸脱することなくなされてよい。本明細書中に記載される材料の寸法及びタイプは、種々の実施形態のパラメータを規定することが想定される一方で、それらは決して限定ではなく、単に例示的な実施形態である。他の多くの実施形態は、先の記載を再検討すれば直ぐに、当業者に明らかとなろう。したがって、本出願の範囲は、添付の特許請求の範囲、及び特許請求の範囲が求める等価物の全範囲に関して決定すべきである。添付の特許請求の範囲において、「備える、含む(including)」や「そこで(in which)」という用語は各々、「備える、含む(comprising)」や「そこで(wherein)」という用語の平易な(plain)英語の等価物として用いられる。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1の」、「第2の」、及び「第3の」などの用語は、単に呼び名として用いられており、それらの目的語に数の要件を課すことが想定されるのではない。さらに、以下の特許請求の範囲の限定は、ミーンズ・プラス・ファンクションの形式で記載されておらず、そのような特許請求の範囲の限定が、更なる構造を欠いた機能の記述が続くフレーズ「ための手段(means for)」を明示的に用いるまで、米国特許法第112条第6パラグラフに基づいて解釈されることが想定されない。
【0053】
本記載は、種々の実施形態を開示するために、また、当業者が、任意の装置又はシステムの製造及び使用、並びに任意の統合された方法の実施が挙げられる種々の実施形態を実践することが可能であるように、実施例を用いている。種々の実施形態の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義されるが、当業者に思い浮かぶ他の例を含んでもよい。そのような他の例は、特許請求の範囲の表現と異ならない構造要素を有するならば、又は特許請求の範囲の表現と実質的に異ならない、等価の構造要素を含むならば、特許請求の範囲内にあることが想定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7