(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図10は、従来技術に係る一般的な水晶発振器用ICを用いた発振回路を示すブロック図である。同図に示すように、発振回路100は、ICチップ1(図中の点線部分)内に集積されたレギュレータ2、発振器3、分周回路4、レベルシフタ5および出力回路6を有している。レギュレータ2は電源7の電源電圧VDDを所定の内部定電圧VREGに降圧する。発振器3は内部定電圧VREGで駆動され、外付けの水晶振動子8を振動させることにより所定周波数の出力信号を分周回路4に送出する。分周回路4は内部定電圧VREGで駆動され、発振器3の出力信号の周波数を適宜分周してレベルシフタ5に送出する。レベルシフタ5は発振器3の出力信号の電圧を適宜増幅して出力する。出力回路6は、レベルシフタ5の出力信号を出力端子9に送出する際のバッファ回路として機能する。ここで、レベルシフタ5および出力回路6には電源電圧VDDが印加されている。
【0003】
かかるICチップ1では、発振周波数の安定化や、発振回路100全体の消費電力の低減のため、ICチップ1にレギュレータ2を内蔵して、外部から供給される電源電圧VDDよりも低い内部定電圧VREGを生成し、この内部定電圧VREGを発振器3および分周回路4の駆動電圧としている。
【0004】
ICチップ1内に内蔵されるレギュレータ2としては、従来からリニアレギュレータが汎用されている。
図11は一般的なリニアレギュレータの構成を示すブロック図である。同図に示すように、レギュレータ2では、出力電圧となる内部定電圧VREGが基準電圧源01の出力電圧である基準電圧VREFと一致するようにオペアンプ02を用いて、MOSトランジスタTRのオン抵抗を制御している。基準電圧源01は、CMOS回路ではバンドギャップリファレンスを利用して好適に構成し得る。
【0005】
図11に示すレギュレータ2におけるMOSトランジスタTRは、可変抵抗素子と等価であり、抵抗による電力の損失が必ず発生する。例えば、内部定電圧VREGで駆動される発振器3と分周回路4の消費電流をI_opとすると、
図11のMOSトランジスタTRで消費される電力損失は、P_loss=I_op×(VDD-VREG)、と表せる。
【0006】
これに具体的な数値を当てはめてレギュレータ2における電力損失を考察する。ここで、[I_op=20μA, VDD=1.8V, VREG=0.8V]とすると、P_loss=20μA×(1.8V-0.8V)=20μW、となる。これに対し、発振器3および分周回路4の本来の消費電力は、P_op=I_op×VREG=20μA×0.8V=16μW、となる。
【0007】
この数値例のような、低消費電流型の発振回路100では、電源電圧VDDが内部定電圧VREGよりも比較的高い領域では、本来動作に必要な電力P_opよりも、レギュレータ2で消費される電力P_lossの方が大きくなってしまう。
【0008】
なお、消費電流の抑制を目的とした発振回路(クロック信号生成回路)を開示する従来技術としては特許文献1が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、電源電圧を発振器の駆動電圧である内部定電圧に降圧する際の消費電力を低減し得る発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
電源から印加される電源電圧を降圧して発振器を駆動させる発振回路であって、
スイッチング素子のオン・オフ制御により前記電源電圧を所定の内部定電圧に降圧するスイッチング型降圧手段と、
前記内部定電圧の印加により駆動される発振器とを有するとともに、
前記スイッチング型降圧手段は、前記発振器の出力信号を利用した所定周波数のクロック信号で前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成し、
前記スイッチング型降圧手段は、複数個のコンデンサと複数個のスイッチ手段のオン・オフ状態の組み合わせとで前記各コンデンサが直列に接続される充電モードと、前記各コンデンサが並列に接続される放電モードとを形成する一方、前記充電モードでは直列に接続された前記コンデンサの両端に前記電源電圧が印加されて前記コンデンサが充電され、前記放電モードでは前記電源を切離した状態で前記各コンデンサに充電された充電電圧が出力されるとともに、
前記スイッチ手段のオン・オフ制御を、前記クロック信号により行うようにした容量分圧型降圧回路を有し、
さらに前記スイッチング型降圧手段が、前記容量分圧型降圧回路とともに、当該容量分圧型降圧回路の出力電圧を調整する第1のレギュレータを有するとともに、
前記第1のレギュレータが、前記容量分圧型降圧回路の出力側と当該スイッチング型降圧手段の出力端子との間に接続された第1のトランジスタを有しており、
第1の基準電圧源に設定した前記所定の内部定電圧を表す第1の基準電圧と、前記出力端子の電圧とに基づき前記出力端子の電圧が前記所定の内部定電圧になるように前記第1のトランジスタを制御するように構成したことを特徴とする発振回路にある。
【0012】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する発振回路において、
前記発振器の出力信号を分周する分周回路を有するとともに、
前記スイッチング型降圧手段は、前記分周回路が出力する所定周波数のクロック信号で前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したことを特徴とする発振回路にある。
【0015】
本発明の
第3の態様は、
第1または第2の態様に記載する発振回路において、
前記第1のレギュレータは、前記電源と前記出力端子との間に、前記第1のトランジスタに対して並列に接続されるとともに前記第1のトランジスタよりもオン抵抗が大きい第2のトランジスタを有するとともに、前記第1の基準電圧と、前記出力端子の電圧とに基づき前記出力端子の電圧が前記所定の内部定電圧になるように前記第1のトランジスタとともに前記第2のトランジスタを制御することを特徴とする発振回路にある。
【0016】
本発明の
第4の態様は、
第3の態様に記載する発振回路において、
前記スイッチング型降圧手段は、前記電源電圧を所定の設定電圧に降圧して前記容量分圧型降圧回路に印加する第2のレギュレータを有するとともに、
前記第2のレギュレータは、前記電源と前記容量分圧型降圧回路の入力側との間に接続された第3のトランジスタを有しており、
第2の基準電圧源に設定した前記所定の設定電圧と、前記容量分圧型降圧回路への入力電圧とに基づき前記容量分圧型降圧回路の前記入力電圧が前記設定電圧になるように前記第3のトランジスタを制御することを特徴とする発振回路にある。
【0018】
本発明の
第5の態様は、
第1〜
第4の態様のいずれか一つに記載する発振回路において、
前記スイッチング型降圧手段の前記スイッチング素子のオン・オフ状態のデューティ比を制御することにより前記スイッチング型降圧手段の出力電圧を制御するデューティ変調器を有するとともに、
前記所定の内部定電圧を表す第3の基準電圧と、前記スイッチング型降圧手段の出力端子の電圧とを比較して両者の偏差が零になるように前記デューティ変調器を介して前記デューティ比を制御することを特徴とする発振回路にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スイッチング型降圧手段で、電源電圧を発振器の駆動電圧である内部定電圧に降圧するようにしたので、発振回路における消費電力を可及的に低減し得る。同時に、スイッチング型降圧手段のスイッチング用のクロック信号は内蔵する発振器の出力信号に基づいて生成しているので、スイッチング型降圧手段のスイッチングに必要なクロック信号を別途発生させる必要がないばかりか、発振器自体の発振出力を利用しているので、異なる周波数間の干渉によるノイズの発生を未然に防止し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の実施の形態に係る発振回路を示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係る発振器200は、ICチップ11(図中の点線部分)内に集積されたスイッチング型降圧手段12、発振器3、分周回路4、レベルシフタ5および出力回路6を有している。スイッチング型降圧手段12は、電源7の電源電圧VDDを所定の内部定電圧VREGに降圧する。スイッチング型降圧手段12の具体的な構成に関しては後に詳述する。
【0023】
発振器3は内部定電圧VREGで駆動され、外付けの水晶振動子8を振動させることにより所定周波数の出力信号を分周回路4に送出する。分周回路4は内部定電圧VREGで駆動され、発振器3の出力信号の周波数を適宜分周してレベルシフタ5に送出する。レベルシフタ5は発振器3の出力信号の電圧を適宜増幅して出力する。出力回路6は、レベルシフタ5の出力信号を出力端子9に送出する際のバッファ回路として機能する。ここで、レベルシフタ5および出力回路6には電源電圧VDDが印加されている。
【0024】
かかるICチップ11では、発振周波数の安定化や、発振回路200全体の消費電力の低減のため、ICチップ11にスイッチング型降圧手段12を内蔵して、外部から供給される電源電圧VDDよりも低い内部定電圧VREGを生成している。具体的には、スイッチング型降圧手段12が、スイッチング素子(
図1には図示せず)のオン・オフ制御により電源電圧VDDを内部定電圧VREGに降圧する。ここで、スイッチング型降圧手段12のスイッチング素子は、分周回路4の出力信号である所定周波数のクロック信号でそのオン・オフ状態が制御される。この場合の外部供給電圧VDDは、通常は1.8V±10%〜5.0V±10%の範囲である。これに対し、内部定電圧VREGは、低消費電力化のため、最近では1V以下という非常に低い電圧に設定することも多い。
【0025】
このように本形態では
図10に示す発振器100におけるレギュレータ2の代わりにスイッチング型降圧手段12を用いており、しかもスイッチング型降圧手段12のスイッチング素子のオン・オフ状態の制御は分周回路4の出力信号である所定周波数のクロック信号を利用して行っているので、発振回路における消費電力を可及的に低減し得る(この点に関しては後に詳述する)。また、スイッチング型降圧手段12のスイッチングに必要なクロック信号を別途発生させる必要がないばかりか、発振器3自体の発振出力を利用することで異なる周波数間の干渉によるノイズの発生を未然に防止し得る。
【0026】
図2および
図3は、
図1のスイッチング型降圧手段の具体例である容量分圧型降圧回路を、充電時の態様(
図2)および放電時の態様(
図3)でそれぞれ示す回路図である。
【0027】
図2および
図3に示すように、容量分圧型降圧回路13は、2個のコンデンサC1,C2および5個のスイッチ手段SW1、SW2、SW3、SW4,SW5からなり、スイッチ手段SW1〜SW5のオン・オフ制御により
図2に示す充電モードと、
図3に示す放電モードとを交互に繰り返す。すなわち、充電モードにおいては
図2(a)に示すように、スイッチ手段SW1,SW2がオン状態、スイッチ手段SW3〜SW5がオフ状態となってコンデンサC1,C2を電源7と接地端子14との間に直列に接続する。この場合の等価回路を
図2(b)に示す。一方、放電モードにおいては
図3(a)に示すように、スイッチ手段SW1,SW2がオフ状態、スイッチ手段SW3〜SW5がオン状態となってコンデンサC1,C2をVREG端子15と接地端子14との間に並列に接続する。この場合の等価回路を
図3(b)に示す。かくしてコンデンサC1,C2の容量が同一である場合、充電モードにおいて電源電圧VDDとなっているコンデンサC1,C2間の電圧が、放電モードにおいて各コンデンサC1,C2の両端電圧である1/2(VDD)に降圧され、内部定電圧VREGとしてVREG端子15に生成される。
【0028】
さらに詳言すると、充電モードではコンデンサC1,C2は直列接続になっており、コンデンサC1のHi側端子が電源7に接続されている。一方、放電モードではコンデンサC1,C2が並列接続になっており、コンデンサC1,C2はいずれもHi側端子がVREG端子15に接続されている。ここで、コンデンサC1,C2の各容量値が等しいとすると、充電モードではコンデンサC1,C2によって電源電圧VDDが半分に分圧されるので、コンデンサC1,C2にはVDD/2の電圧に見合った電荷が充電される。一方、放電モードでは、コンデンサC1,C2が接地端子14の電位である設置電位GND基準で並列に接続されるので、VREG端子15の電位はVDD/2となる。このように、充電モードと放電モードとを周期的に繰り返すことで、理想的にはロス無しで電源電圧VDDVの半分以下の電圧を得ることができる。ここで、VREG端子15に比較的大きなコンデンサを別途配置することで、内部定電圧VREGを平滑化することができる。
【0029】
容量分圧型降圧回路13のスイッチ手段SW1〜SW5は、MOSトランジスタで好適に形成し得るが、分周回路4の出力信号である所定周波数のクロック信号CLによりそのオン・オフ状態が制御される。
図4は本形態に係る分周回路の詳細な構成を示す回路図である。同図に示すように、分周回路4は、直列に接続したn(n=自然数)段の分周器41,42,・・・,4nと、各分周器41〜4nのいずれかの出力信号を選択するクロック選択回路45を具備している。そして、入力端子40を介して供給される発振器3の出力信号を、n段の分周器41〜4nで1/2
nに分周し、所定周波数の矩形パルス信号を出力端子46を介してして出力する。同時に、クロック選択回路45では、所定周波数のクロック信号CLが選択され、容量分圧型降圧回路13に供給される。ここで、充電モードと放電モードの各期間、T1(充電モードである期間)、T2(放電モード2である期間)の比であるDUTY比を制御することで、0〜(VDD/2)2の範囲で、VREG端子15に出力される内部定電圧VREGを制御することも可能である。
【0030】
かくして、本形態においては発振器3で生成する所定周波数の出力信号を適宜分周して容量分圧型降圧回路13のスイッチ手段SW1〜SW5のスイッチング信号を形成している。ここで、発振器3の出力信号の周波数、特に低周波数の場合には、分周することなく直接、発振器3の出力信号を容量分圧型降圧回路13にスイッチング信号として供給することもできる。この場合には分周回路4は、勿論省略することができる。
【0031】
<第2の実施の形態>
図5は本発明の第2の実施の形態の要部であるスイッチング型降圧手段の他の例を示す回路図である。
図1に示す第1の実施の形態に係る発振回路200は、スイッチング型降圧手段12を容量分圧型降圧回路13のみで形成したものであるが、
図5に示すように、容量分圧型降圧回路13と第1のレギュレータ60とを組み合わせてスイッチング型降圧手段12Aを構成することもできる。ここで、レギュレータ60は、容量分圧型降圧回路13の出力電圧を調整するもので、容量分圧型降圧回路13の出力側とVREG端子15との間に接続されたMOSトランジスタTR1を有している。そして、基準電圧源63に設定した内部定電圧VREGを表す基準電圧VREF1と、VREG端子15の電圧とに基づきVREG端子15の電圧が内部定電圧VREGになるようにオペアンプ64を介してMOSトランジスタTR1を制御する。
【0032】
本形態によれば、容量分圧型降圧回路13の出力電圧と内部定電圧VREGとの間に偏差を生起していても、内部定電圧VREGは最終的にレギュレータ60で高精度に調整される。したがって、発振器3および分周回路4の駆動電圧となる内部定電圧VREGを高精度に所定値に保持することができる。ちなみに、容量分圧型降圧回路13では、DUTY比の制御で出力電圧、すなわち内部定電圧VREGを調整することもできるが、DUTY比の制御は、容量分圧型降圧回路13では、複雑化しがちである。これに対し本形態では、DUTY可変回路を用いることなく、DUTY比固定で容量分圧型降圧回路13は単純に、例えば電源電圧VDD÷2程度の電圧を出力するように構成することができる。
【0033】
<第3の実施の形態>
図6は本発明の第3の実施の形態の要部であるスイッチング型降圧手段を示す回路図である。同図に示すように、本形態におけるスイッチング型降圧手段12Bは、
図5に示すスイッチング型降圧手段12Bと同様に、容量分圧型降圧回路13と、第1のレギュレータ61とを組み合わせて容量分圧型降圧回路13の出力電圧を調整するものであるが、本形態における第1のレギュレータ61は、
図5に示す第1のレギュレータ60におけるMOSトランジスタTR1の他にMOSトランジスタTR2を有している。すなわち、MOSトランジスタTR2は、電源7とVREG端子15との間に、MOSトランジスタTR1に対して並列に接続されるとともにMOSトランジスタTR1よりもオン抵抗が大きいものを選定してある。そして、MOSトランジスタTR1と同様に、基準電圧VREF1と、VREG端子15の電圧とに基づきVREG端子15の電圧が所定の内部定電圧VREGになるようにオペアンプ64を介して制御される。なお、
図6中、
図5と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
本形態によれば、当該発振回路200の始動時におけるスイッチング型降圧手段12Bの円滑な始動が確保される。すなわち、本形態では、容量分圧型降圧回路」13が分周回路4の出力であるクロック信号CLを利用している関係上、内部定電圧VREGが得られない始動時にはクロック信号CLを得ることが困難となり、何らかの手段で容量分圧型降圧回路13を始動してやる必要がある。本形態ではMOSトランジスタTR2を介して電源電圧VDDがVREG端子15を介して直接分周回路4に印加されるので、始動時の分周回路4の駆動電流を良好に供給することができる。一方、容量分圧型降圧回路13が内部定電圧VREGを生成した後は、
MOSトランジスタTR2にはほとんど電流は流れない。(MOSトランジスタTR1のオン抵抗)≪(MOSトランジスタTR2のオン抵抗)となっているからである。また、電源電圧VDDが小さくなるとスイッチング型降圧手段12Cの出力が下がり始め、全体の消費電力削減効果は急速に悪化するが、この場合でもMOSトランジスタTR2を介して電流を流すことができるので、従来技術と同様のリニアレギュレータとしては動作させることができる。このように、リニアレギュレータと併用した場合には、最大効率は得られないが、電源電圧VDDが低い場合に効率が極端に悪化することを防止できる。
【0035】
<第4の実施の形態>
図7は本発明の第4の実施の形態の要部であるスイッチング型降圧手段を示す回路図である。同図に示すように、本形態におけるスイッチング型降圧手段12Cは、
図6に示す第1のレギュレータ61の他に第2のレギュレータ62を有している。第2のレギュレータ62は、電源電圧VDDを所定の設定電圧に降圧して容量分圧型降圧回路13に印加するもので、電源7と容量分圧型降圧回路13との間に接続されたMOSトランジスタTR3を有している。MOSトランジスタTR3は、基準電圧源65に設定した基準電圧VREF2と、容量分圧型降圧回路13の入力側の電圧とに基づき容量分圧型降圧回路13の入力電圧が所定の基準電圧VREF2になるようにオペアンプ66を介して制御される。ここで、基準電圧VREF2は電源電圧VDD/2程度に設定することができる、なお、
図7中、
図6と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
本形態によれば、高い電源電圧VDDをレギュレータ62で大きく降圧して容量分圧型降圧回路13に供給することができる。このため、電源電圧VDDが高圧で、内部定電圧VREGとの差が大きい場合に特に有用なものとなる。さらに詳言すると、発振器3などは基準電圧VREF1に設定されている基準電圧VREF1(=内部定電圧VREG)で動作する。内部定電圧VREGの電圧自体は、オペアンプ64とMOSトランジスタTR1,TR2によって精度良く制御されている。MOSトランジスタTR2は直接電源7に接続されているが、MOSトランジスタTR2は容量分圧型降圧回路13の出力側に接続されている。ここで、MOSトランジスタTR1は、前述の如くMOSトランジスタTR2よりも大きなサイズ、すなわち低抵抗に作ってある。例えば、MOSトランジスタTR1,TR2のチャネル長を同じにすると、MOSトランジスタTR1のチャネル幅をMOSトランジスタTR2の5倍以上に設定しておく。
【0037】
また、本形態における容量分圧型降圧回路13はオペアンプ66とMOSトランジスタTR3で制御された基準電圧VREF2で駆動される。このため、電源電圧VDDが基準電圧VREF2とほぼ等しい時に最大の電力削減効果を発揮する。容量分圧型降圧回路13によって基準電圧VREF2から基準電圧-VREF1までの降圧が理想的にはロスなく行われるからである。ここで、MOSトランジスタTR1のソース/ドレイン間の電位差が小さくなるように両基準電圧VREF1,VREF2を設定しておけば、MOSトランジスタTR1による電力消費はわずかである。
【0038】
上述の動作を具体的な数値を用いて説明する。基準電圧VREF1は、低消費電力の発振器3などを動作させる電圧であり、ここでは0.8V程度に設定する。一方、容量分圧型降圧回路13に供給される電圧となる、基準電圧VREF2は1.8V程度に設定する。MOSトランジスタTR1,TR2は共に低閾値(ここではほぼ0Vと仮定する)のNMOSトランジスタであり、またMOSトランジスタTR2のインピーダンスはチャネル幅の設定で、MOSトランジスタTR1の1/5に設定する。
【0039】
内部定電圧VREGの下で消費されるオペアンプ電流64の電流 I_OP=20μA とし、MOSトランジスタTR1に約16μA、MOSトランジスタTR2に約4μAの電流が流れるとする。電源電圧VDD=1.8Vの時、容量分圧型降圧回路13が(VDD/2)の場合、その出力は0.9Vであるので、MOSトランジスタTR1の両端電位差は0.1Vであり、MOSトランジスタTR1でのロス電力は、16μA×0.1V=1.6μWである。MOSトランジスタTR2でのロス電力は、4μA×(1,8−0.8)V=4μWである。MOSトランジスタTR3の両端電位差はゼロであるからロス電力は無視して良い。したがって、トータルのロス電力は5.6Wとなる。これは、
図10に示すレギュレータ2の場合、同じ電源条件でのロス電力が20μWであるので、本形態におけるロス電力の削減量が14.4μW、すなわち70パーセント以上削減できることになる。消費電流に換算すると、約8μAの削減に相当する。
【0040】
なお、電源電圧VDDが1.8Vより大きくなると、MOSトランジスタTR3でのロス電力が発生しはじめ、全体の消費電力は徐々に上昇する。ただし、消費電流に換算した場合の削減量は約8μAでほぼ一定である。逆に、電源電圧VDDが1.8Vよりも小さくなると、スイッチング型降圧手段12Cの出力が下がり始め、全体の消費電力削減効果は急速に悪化する。しかし、その場合でもMOSトランジスタTR2を介して電流を流すことができるので、従来通りのリニアレギュレータとしては動作させることができる。このように、リニアレギュレータと併用した場合には、最大効率は得られないが、電源電圧VDDが低い場合に効率が極端に悪化することを防止できる。
【0041】
図8は
図7に示すスイッチング型降圧手段12Cを有する発振回路のSPICEシミュレーション結果を示すグラフである。同図は、消費電流を
図10に示す従来技術に係る発振回路との比較において示している。当該シミュレーションに用いた発振回路は、約16MHzの水晶発振を、9段分周(1/512)し、32kHzの計時用クロックを出力するものである。スイッチング降圧手段12Cのクロック信号CLは、分周2段目(約4MHz)から取っている。横軸が外部から与える電源電圧VDD、縦軸がオペアンプ64や基準電圧源63からなるバイアス回路および出力回路6までを含む、全体の消費電流であり、一点差線が従来技術に係るレギュレータ2を用いた場合(
図10参照)、実線が本発明の第4の実施の形態に係る場合(
図7参照)の消費電流である。
【0042】
図8を参照すれば、電源電圧VDDが比較的高い領域では、約8μAで一定の消費電流削減効果が得られている。電源電圧VDDが極めて低い領域では、第4の実施の形態に係る場合の消費電流の削減効果はなく、電源7に直結したレギュレータだけが有効となるので、従来技術における消費電流とほぼ一致していることがわかる。これにより、本願発明では電源電圧VDDが1.4V以上の領域で消費電流(消費電力)の顕著な削減効果が得られている。
【0043】
<第5の実施の形態>
図9は本発明の第5の実施の形態の要部であるスイッチング型降圧手段を示す回路図である。同図に示すように、本形態に係るスイッチング型降圧手段12Dは、デューティ変調器69を有している。デューティ変調器69は、分周回路4からのクロック信号CLを入力して容量分圧型降圧回路13のスイッチング素子SW1〜SW5(
図2および
図3参照)のオン・オフ状態の比であるデューティ比を制御する。このことによりスイッチング型降圧手段12の出力電圧である内部定電圧VREGを所定値に制御する。そこで、本形態におけるスイッチング型降圧回路12は、所定の内部定電圧VREGを表す基準電圧VREF3を生成する基準電圧源67と、基準電圧VREF3とスイッチング型降圧手段12の出力電圧とを比較する比較器68とを有している。比較器68は内部定電圧VREGと基準電圧VREF3の偏差が零になるようにデューティ変調器69を制御して最適なデューティ比でスイッチング型降圧手段12のスイッチング素子SW1〜SW5のオン・オフ制御を行う。
【0044】
本形態によれば、一定周波数のクロック信号CLのデューティー比を制御することでスイッチング型降圧回路12の出力電圧を調整してVREG端子9に高精度の内部定電圧VREGを生成させることができる。
【0045】
<他の実施の形態>
上記実施の形態では、スイッチング降圧手段12A〜12Dを容量分圧型降圧回路13を含むものとしたが、これに限るものではない。容量分圧型降圧回路13は簡単な回路で所定の降圧を行うことができるが、電源電圧VDDを降圧する降圧回路であれば、他の構成でも構わない。例えば、DC/DCコンバータでも良い。この場合でも、スイッチング信号は発振器3の出力信号、またはこれを分周器4で分周して得るクロック信号CLを利用してスイッチングパルスとすることは必須である。
【0046】
また、発振器3は、上記実施の形態では水晶発振器としたが、これに限るものではない。例えば水晶振動子8を使用しないRC発振器、MEMS発振器など、あらゆる種類の発振器を適用することができる。