特許第6378867号(P6378867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378867測定データのグラフ表示方法およびデータ選択用補助プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378867
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】測定データのグラフ表示方法およびデータ選択用補助プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20180813BHJP
   G06F 19/20 20110101ALI20180813BHJP
   G06Q 10/10 20120101ALI20180813BHJP
【FI】
   G06Q50/04
   G06F19/20
   G06Q10/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-182393(P2013-182393)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-49803(P2015-49803A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年12月8日
【審判番号】不服2017-11876(P2017-11876/J1)
【審判請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
【合議体】
【審判長】 佐藤 智康
【審判官】 上嶋 裕樹
【審判官】 相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−37086(JP,A)
【文献】 特開2007−46932(JP,A)
【文献】 特開2002−366882(JP,A)
【文献】 エクスメディア,EXCEL2000 for Windows SUPER MASTER,株式会社エクスメディア/工藤雅俊,2000年8月2日,初版,第306〜307頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00 - 99/00
G06F19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが設けられたワークシートを表示するとともに、そのワークシート上にグラフを表示する機能を備えた表計算ソフトをインストールしたコンピュータを用いて、分析装置もしくは測定装置から出力される複数の試料ごとの各測定データを、上記ワークシート中のセルのうちあらかじめ試料ごとに1つのセルまたは複数のセルで設定されている「特定のセル」にそれぞれ関連づけて記憶しておき、その記憶されている各測定データのうち、選択された試料に関する測定データをグラフ表示する方法であって、上記ワークシート上のいずれかの、少なくとも上記「特定のセル」以外である測定データが記憶されていない「空のセル」を含むセルが選択されたとき、
上記ワークシート中の上記複数の「特定のセル」の範囲全体を取得し、
上記選択されたセルを取得し、
上記複数の「特定のセル」のそれぞれについて、上記選択されたセルと重なっているか否かを判別するようにして上記複数の「特定のセル」のみのなかから、選択されたセルと一致するセルを抽出し、
その抽出した「特定のセル」に関連づけられて記憶している測定データをグラフ表示用の元データとして、上記ワークシート上にグラフ表示することを特徴とする測定データのグラフ表示方法。
【請求項2】
上記ワークシート上のセルの選択は、任意の複数個同時に可能であり、上記「特定のセル」の複数が選択されたセルと一致する場合には、その複数の「特定のセル」にそれぞれ関連づけて記憶している各測定データを、それぞれグラフ表示用の元データとして同一のグラフ上に複数のグラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の測定データのグラフ表示方法。
【請求項3】
複数のセルが設けられたワークシートを表示するとともに、そのワークシート上にグラフを表示する機能を備えた表計算ソフトをコンピュータにインストールして、分析装置もしくは測定装置から出力される複数の試料ごとの各測定データを、上記表計算ソフトのワークシートにあらかじめ試料ごとに1つのセルまたは複数のセルで設定されている「特定のセル」にそれぞれ関連づけて記憶し、上記ワークシート上の1つまたは複数のセルの選択により、選択されたセルに関連づけられている測定データをグラフ表示用の元データとして上記特定のワークシート上にグラフ表示を行うように設定した状態で、少なくとも上記「特定のセル」以外である測定データが記憶されていない「空のセル」を含むように上記セルの選択変更操作があったときに動作するプログラムであって、
上記ワークシート中の上記複数の「特定のセル」の範囲全体を取得し、
上記セル選択変更後の選択されたセルの範囲を取得し、
上記複数の「特定のセル」のそれぞれについて、上記セル選択変更後の選択されたセルの範囲との重なりを逐次判別するようにし、重なっているセルに関連づけられた測定データをグラフ表示用の元データとしてグラフ表示することを特徴とする表計算ソフトによるグラフ表示時におけるデータ選択用補助プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分析装置や測定装置から出力された複数の試料についての各測定データを、表計算ソフトを用いてグラフ表示する方法と、その方法を実現すべく、表計算ソフトによりグラフ表示する際に動作する補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種分析装置や測定装置においては、測定結果の判定や解析などのデータ処理を行うためにパーソナルコンピュータと接続する構成が多用されている。例えばリアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いた遺伝子増幅産物の解析に際しては、前処理したサンプルにPCR反応液を添加し、リアルタイムPCR装置を用いてPCR増幅を行った後、温度を順次変化させて蛍光強度を測定し、温度と蛍光強度の負微分値で表される融解曲線を得て、その融解曲線から特定の遺伝子の存在の有無、ひいては各種ウイルスの存在の有無を判定する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
既に実用化されているこの種の装置においては、リアルタイムPCR装置本体とパーソナルコンピュータとを組み合わせ、リアルタイムPCR装置本体から出力される各温度における蛍光強度の測定データをパーソナルコンピュータに取り込み、このパーソナルコンピュータにより、上記した融解曲線のピーク位置に基づいて特定の遺伝子の有無を自動的に判定する(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
このような分析装置や測定装置が組み合わされたパーソナルコンピュータにおいては、測定データの保管や整理等のためのツールとして、Excel(マイクロソフト社製;登録商標)やOpenOffice.org(オープンソース)などの各種表計算ソフトが用いられることが多い。
【0005】
表計算ソフトにおいては、一般に、分析装置や測定装置から該当の形式で出力された測定結果を取り込んで記憶するとともに、その測定結果に対して指定された加工等を施したデータを作成して記憶したり、更には、通常、これらのデータを適宜のグラフにして表示するグラフ表示機能を備えている。
【0006】
このようなシステムによれば、装置の操作者は、分析結果や測定結果を感覚的に把握するために、あるいはコンピュータによる判定の根拠となった測定結果を確認するために、表計算ソフトに記憶した測定結果ないしはその結果に所定の加工を施したもの(以後本明細書においてはこれらを総称して「測定データ」と称する)等を必要に応じてグラフ化して表示させることができる。
【0007】
ここで、分析装置や測定装置からの測定データを、表計算ソフトを用いて整理して記憶する場合、個々の試料についての測定データは表計算ソフトのワークシートには直接的に表示されず、各試料ごとの測定データは隠しシートまたは別の任意のシートに内部データとして保存され、ワークシートには各試料ごとにあらかじめ設定されている1つないしは数個のセルに関連づけられる。この各試料ごとに関連づけられたセルには、例えば試料番号などが表示され、そのセルを選択することにより、該当の測定データが読み出されてグラフ表示のための元データとなる。複数のセルを選択した場合には、該当する複数の試料についての測定データが同一グラフ上にグラフ表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4815980号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社島津製作所 2013年3月1日付プレスリリース「反応液量が100μLまで対応でき汎用性の高い96ウェル型遺伝子検出装置」[online] 平成25年8月18日検索 インターネット<URL;http://www.shimadzu.co.jp/news/press/n00kbc0000000qub.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記したような表計算ソフトを利用してパーソナルコンピュータに複数の試料の測定データを、各試料ごとにあらかじめ設定されている特定のセルに関連づけて個々に記憶するシステムにおいては、表計算ソフトの設定にもよるが、特定のセルが表示されるワークシート上にグラフを表示し、かつ、そのワークシート上の特定のセルの選択により任意の1つもしくは複数の試料に関する測定データをグラフ表示できることから、操作が簡単で、多数のデータを1つずつ順番にグラフ表示したり、あるいは複数のグラフを様々な組み合わせのもとにグラフ表示することができるという利点がある反面、以下に示す問題がある。
【0011】
すなわち、ワークシート上のセルのうち、測定データが関連づけられた特定のセル以外のセル、つまり空のセルを誤って、あるいは意図せずに選択してしまうと、その時点で表示されている測定データに基づくグラフが選択外となって測定データの存在しない空のグラフが表示され、結果的にその時点で表示されていたグラフが消えてしまうという不具合が生じる。
【0012】
また、例えば空のセルを含むワークシート上の全てのセルを選択すると、選択された全てのセルをチェックすることになるため、処理に時間を要し利用者にストレスを感じさせることになる。
【0013】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、空のセルを選択しても既表示のグラフが消えず、また、空のセルを含む多数のセルを選択した場合でも、処理に要する時間が一定の限度を越えることのない測定データのグラフ表示方法と、その方法を実現するための表計算ソフトによりグラフ表示する際に動作する補助プログラムの提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の測定データのグラフ表示方法は、複数のセルが設
けられたワークシートを表示するとともに、そのワークシート上にグラフを表示する機能
を備えた表計算ソフトをインストールしたコンピュータを用いて、分析装置もしくは測定
装置から出力される複数の試料ごとの各測定データを、上記ワークシート中のセルのうち
あらかじめ試料ごとに1つのセルまたは複数のセルで設定されている「特定のセル」にそ
れぞれ関連づけて記憶しておき、その記憶されている各測定データのうち、選択された試
料に関する測定データをグラフ表示する方法であって、上記ワークシート上のいずれかの
、少なくとも上記「特定のセル」以外である測定データが記憶されていない「空のセル」を含むセルが選択されたとき、上記ワークシート中の上記複数の「特定のセル」の範囲全体を取
得し、上記選択されたセルを取得し、上記複数の「特定のセル」のそれぞれについて、上
記選択されたセルと重なっているか否かを判別するようにして上記複数の「特定のセル」
のみのなかから、選択されたセルと一致するセルを抽出し、その抽出した「特定のセル」
に関連づけられて記憶している測定データをグラフ表示用の元データとして、上記ワーク
シート上にグラフ表示することによって特徴づけられる(請求項1)。
【0015】
ここで、本発明においては、上記ワークシート上のセルの選択は、任意の複数個同時に可能であり、上記特定のセルの複数が選択されたセルと一致する場合には、その複数の特定のセルにそれぞれ関連づけて記憶している各測定データを、それぞれグラフ表示用の元データとして同一のグラフ上に複数のグラフを表示する構成(請求項2)を採用することができる。
【0016】
一方、本発明の表計算ソフトによるグラフ表示時におけるデータ選択用補助プログラム
は、複数のセルが設けられたワークシートを表示するとともに、そのワークシート上にグ
ラフを表示する機能を備えた表計算ソフトをコンピュータにインストールして、分析装置
もしくは測定装置から出力される複数の試料ごとの各測定データを、上記表計算ソフトの
ワークシートにあらかじめ試料ごとに1つのセルまたは複数のセルで設定されている「特
定のセル」にそれぞれ関連づけて記憶し、上記ワークシート上の1つまたは複数のセルの
選択により、選択されたセルに関連づけられている測定データをグラフ表示用の元データ
として上記特定のワークシート上にグラフ表示を行うように設定した状態で、少なくとも上記「特定のセル」以外である測定データが記憶されていない「空のセル」を含むように上記セルの
選択変更操作があったときに動作するプログラムであって、上記ワークシート中の上記複
数の「特定のセル」の範囲全体を取得し、上記セル選択変更後の選択されたセルの範囲を
取得し、上記複数の「特定のセル」のそれぞれについて、上記セル選択変更後の選択され
たセルの範囲との重なりを逐次判別するようにし、重なっているセルに関連づけられた測
定データをグラフ表示用の元データとしてグラフ表示することによって特徴づけられる(
請求項3)。

【0017】
本発明は、ワークシート上のセルの選択によるグラフ表示を行うにあたり、各試料の測定データごとに関連づけられている各特定のセルについてのみ、選択されたセルに含まれるか否かを判別し、含まれているセルがあれば該当の測定データのグラフ表示を実行し、ワークシート上の特定のセル以外のセルについては、選択されたセルに対する一致ないしは重なりを判別しないことで、課題を解決しようとするものである。
【0018】
すなわち、グラフ表示のためのセルの選択があったとき、試料の測定データと関連づけられている特定のセルについてのみ、選択されたセルとの一致をチェックし、一致するものがあればそのセルに関連づけられて記憶している測定データをグラフ表示のための元データとして供する一方、ワークシート上の特定のセル以外のセルについては、選択されたセルとの一致等のチェックを行わない。したがって、特定のセル以外のセルを選択しても、その選択は自動的に無効とされ、グラフ表示には何ら反映されない。しかも、特定のセルのみが選択されたセルとの一致(重なり)のチェックに供されるため、特定のセル以外の無関係なセルを多数個選択していても、チェックに要する時間は長くならない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分析装置もしくは測定装置から出力された複数の試料についての各測定データを、表計算ソフトのワークシート上であらかじめ試料ごとに設定されている特定のセルに関連づけて記憶し、このワークシート上のセルの選択により、該当の測定データを当該ワークシート上にグラフ表示するにあたり、セルの選択があったとき、上記の各特定のセルについてのみ、選択されたセルとの一致をチェックして、一致しているセルに関連づけて記憶している測定データを元データとしてグラフ表示を行うので、意図せずに、あるいは誤って特定のセル以外のセルを選択しても、その選択は実質的に無効となってグラフ表示には反映されないので、従来のようにその時点で表示されているグラフが突然消去されたり、あるいは、特定のセル以外の多数のセルを選択した場合に処理に要する時間が長くなってしまうという不具合も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の表計算ソフトによるグラフ表示時におけるデータ選択用補助プログラムの動作手順を表すフローチャート。
図2】本発明の実施形態におけるコンピュータ画面上のワークシートの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態の表計算ソフトによるグラフ表示時におけるデータ選択用補助プログラムの動作手順を表すフローチャートであり、図2は同じく本発明の実施の形態においてコンピュータ画面に表示されるワークシートの例を示す図である。
【0022】
図1のフローチャートで表されるプログラムは、図2のコンピュータ画面上で、オペレータがグラフ表示すべき測定データを変更したときに表計算ソフトにより自動的に発せられるイベントを起点として動作する。
【0023】
図2に示す表計算ソフトのワークシートWSが表示されるコンピュータは、分析装置もしくは測定装置に接続されており、試料ごとの測定データは、これらの装置に専用のソフトウェアから当該表計算ソフト型式で出力され、当該表計算ソフトのワークシートに記憶される。その各測定データないしはその測定データに所定の加工を施したものを、ワークシートWS上にあらかじめ試料ごとに設定されている特定のセルに関連づけて記憶する。ワークシートWSには多数個のセルが設けられており、この例では、そのうち、第2〜(2+試料数−1)行の左端第1〜第3列(A,B,C列)のセルが特定のセルに設定されている。すなわち、各行が各試料に対応し、その各行の左端第1〜第3列のいずれかのセルを選択することにより、それぞれの行に対応する試料の測定データを選択することができる。実際の各測定データは、隠しシートに内部データとして保存されており、ワークシートWS上には表示されず、ワークシートWS上の上記の特定のセルの選択によってアクセスされるようになっている。
【0024】
この例は、前記したリアルタイムPCR法を用いた遺伝子増幅産物の解析を行うためにリアルタイムPCR装置に接続されるコンピュータの画面を示しており、左端第1列のセルに各試料をそれぞれ収容するウェル名、第2列に目標遺伝子、例えばノロウイルス由来の遺伝子の有無の判定結果、第3列に指標が表示されており、これらのセルがいずれも各試料の測定データに関連づけられた特定のセルに設定されている。測定データは、前処理したサンプルにPCR反応液を添加してPCR増幅した後に、温度を変化させつつ蛍光強度を測定して得られるデータであって、温度と蛍光強度の負微分値で表される融解曲線データである。
【0025】
ワークシートWS上にはグラフ表示エリアGAが設定されており、このグラフ表示エリアGA内に、選択された試料の測定データを元データとしたグラフ、この例では横軸が温度、縦軸が蛍光強度の負微分値で表される融解曲線が表示される。図2においては、ウェル名A1,B1,F1およびH1の試料の測定データを元データとした4つの融解曲線が表示されている。前記した左端第2列の判定結果は、表計算ソフトにインストールされている専用のソフトウェア(データ選択用補助プログラムを含む)により、融解曲線のピーク位置が規定の位置にあるか否かの判定に基づくものである。そして、この判定結果の確認のために、融解曲線の表示、参照が推奨されている。
【0026】
次に、図1のフローチャートを参照して、以下にグラフ表示の対象データの変更時における動作について述べる。
【0027】
グラフ表示の選択変更は、例えばマウスにより該当の試料に関する特定のセルをクリックするか、あるいは隣接するものを複数にわたって選択する場合にはマウスでクリック&ドラッグするか、あるいはクリック&シフト+クリックし、更には離散した複数のものを選択する場合には、例えばキーボードのコントロールキーを押しながらマウスでクリックする等の公知の手法により行うことができる。このようなセルの選択変更操作があったとき、図1のフローチャートで表される補助プログラムが起動する。この補助プログラムは、表計算ソフト内にイベント発生時の動作プログラムとして作成することができる。
【0028】
さて、オペレータによりセルの変更のための操作が行われると、まず、その操作が処理対象のワークシートであるか否かを判別し、そうである場合に限り、処理対象のグラフが設定されているか否かを判別する。処理対象のグラフが設定されていると、このワークシートに関連してグラフ表示用のデータが既に格納されているか否かを判別する。データが格納されていれば、以下に示すグラフ表示の変更動作を開始する。
【0029】
まず、あらかじめ設定されている、グラフに表示する測定データが関連づけられている特定のセル範囲を取得した後、オペレータの操作により新たに選択されたセルの範囲を取得する。次に、上記で取得した特定のセル範囲のうち、同一データが関連づけられているセルごとに複数のセル範囲に分割する。つまり、図2の例では、各行の左端3列ずつのグループに分割する。試料の数がn個であるとすると、分割数はn個となる。
【0030】
次に、これまでグラフ表示されていたデータに関連する特定のセル範囲、すなわち現時点までのグラフ表示を行っていたグラフ表示用のセル範囲を一旦リセットした後、各試料の測定データごとに分割したn組のセル範囲、つまりn組の特定のセルについて、1からnまでにわたり、新たなセルの選択範囲と重なっているか否かを判別し、重なっていればそのi番目のセルをグラフ表示用のセル範囲に追加する。この動作を1からnまで、つまり記憶している測定データの数だけ実行することにより、新たなグラフ表示用のセル範囲が決定する。そして、このように決定したグラフ表示用のセル範囲に対応する測定データを元データに設定してグラフ表示を実行する。
【0031】
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、グラフ表示をすべき測定データの選択変更があったとき、新たに選択されたセルが測定データと関連づけられた特定のセルに重なっているか否かをチェックするのではなく、測定データと関連づけられたそれぞれの特定のセルが、新たに選択されたセルに重なっているか否かをチェックしてグラフ表示する測定データを決定する点であり、これにより、特定のセル以外の空のセルを大量に選択しても、特定のセルの数だけ選択セルとの重なりをチェックすればよいため、処理時間が長くなってしまうことがなく、また、空のセルだけを選択した場合においても、特定のセルとの重なりがないため、それまで表示していたグラフが消えてしまうこともない。
【0032】
なお、以上の実施の形態においては、測定データを隠しシートに内部データとして保存したが、本発明は特にこの点に限定されるものではなく、図2に示した特定のワークシート以外の任意のシートに測定データを保存するように構成し得ることは勿論である。また、以上の実施の形態においては、PCR法に基づく遺伝子検出のための融解曲線の表示に本発明を適用した例を示したが、本発明は、複数の試料に関する測定データのうちの任意のものを表計算ソフトを用いてグラフ表示する他の分析装置や測定装置に対して広く適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
WS ワークシート
GA グラフ表示エリア
図1
図2