特許第6378873号(P6378873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378873
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】人工地盤及び人工地盤の構築工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/06 20060101AFI20180813BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   E04G23/06 Z
   E04G23/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-248405(P2013-248405)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105534(P2015-105534A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】浦邉 雅章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝憲
(72)【発明者】
【氏名】大友 亮介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】田屋 裕司
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−147782(JP,A)
【文献】 特開2012−162959(JP,A)
【文献】 特開2009−068247(JP,A)
【文献】 特開2007−154528(JP,A)
【文献】 特開2006−124962(JP,A)
【文献】 特開2001−303599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/06
E04G 23/08
E02D 3/08
E02D 3/12
E02D 27/28
E02D 29/04
E02D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体された既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間に流動化処理土を流し込んで第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層の上に前記既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固めた締固層を積層した第二層を形成する第二層形成工程と、
を有し、
前記底盤部上にはスラブがあり、
前記第一層形成工程では、前記スラブに孔を形成し、前記孔から前記スラブと前記底盤部との間の前記空間に、前記流動化処理土を流し込み、
前記第二層形成工程では、前記スラブを解体して、前記解体コンクリートを含む前記再生材を埋め戻す、
人工地盤の構築工法。
【請求項2】
解体された既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間に流動化処理土を流し込んで第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層の上に前記既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固めた締固層を積層した第二層を形成する第二層形成工程と、
を有し、
前記第二層形成工程では、上層面が計画床付レベルよりも上側に位置するように前記第二層を形成し、
前記第二層形成工程の後に、前記第二層の上に前記第二層に使用した前記再生材よりも粒度が大きい再生材を埋め戻して施工地盤を形成する施工地盤形成工程を有し、
前記施工地盤形成工程の後に、前記施工地盤及び前記第二層の上部を前記計画床付レベルまで掘削する掘削工程を有する、
人工地盤の構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工地盤及び人工地盤の構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜特許文献4には、既存構造物の解体により発生する解体コンクリートを再生した再生材を埋め戻して締固め、支持地盤や施工地盤として使用する技術が開示されている。
【0003】
特許文献5には、地下構造部の底盤部と地下外壁と、それらを自立状態に支持する構造部とを、少なくとも残す状態に地下構造部を解体し、底盤部と地下外壁と構造部とで構成される地下残留部の空間部に、流動化処理土を流し込んで一体的な基礎地盤を構築し、その基礎地盤上に新規建物を建築する建物建て替える技術が開示されている。
【0004】
ここで、既存構造物の地下躯体の残留部の空間には、柱、梁、壁などが残されている。特に、底盤部上の空間(ピット部分)は基礎梁に囲まれている。よって、解体コンクリートを含む再生材で埋め戻し、重機や人力で締め固めることは非常に効率が悪い。また、流動化処理土による埋め戻しだけでは、流動化処理土の費用だけでなく、解体コンクリートの搬出費用及び処分費用が必要となり、コストが増大する。
【0005】
よって、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤を効率的に低コストで構築することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−124962号公報
【特許文献2】特開2010−189960号公報
【特許文献3】特開平11−336335号公報
【特許文献4】特開平11−350746号公報
【特許文献5】特開2007−170070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤を効率的に低コストで構築することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、解体された既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間に流動化処理土を流し込んで第一層を形成する第一層形成工程と、前記第一層の上に前記既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固めた締固層を積層した第二層を形成する第二層形成工程と、を有し、前記底盤部上にはスラブがあり、前記第一層形成工程では、前記スラブに孔を形成し、前記孔から前記スラブと前記底盤部との間の前記空間に、前記流動化処理土を流し込み、前記第二層形成工程では、前記スラブを解体して、前記解体コンクリートを含む前記再生材を埋め戻す、人工地盤の構築工法。
【0009】
請求項1に記載の発明では、第一層形成工程で、既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間は、例えば、基礎梁などが残っているが、流動化処理土を流し込むことで、既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を上部に埋め戻すことが可能な第一層が形成される。
【0010】
そして、この第一層の上に、解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固めた締固層が積層した第二層を形成することで、底盤部上に人工地盤を容易に低コストで構築することができると共に、解体コンクリートの搬出費用や処分費用が抑制される。
【0011】
したがって、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤を効率的に低コストで構築することができる。
【0012】
請求項2の発明は、解体された既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間に流動化処理土を流し込んで第一層を形成する第一層形成工程と、前記第一層の上に前記既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固めた締固層を積層した第二層を形成する第二層形成工程と、を有し、前記第二層形成工程では、上層面が計画床付レベルよりも上側に位置するように前記第二層を形成し、前記第二層形成工程の後に、前記第二層の上に前記第二層に使用した前記再生材よりも粒度が大きい再生材を埋め戻して施工地盤を形成する施工地盤形成工程を有し、前記施工地盤形成工程の後に、前記施工地盤及び前記第二層の上部を前記計画床付レベルまで掘削する掘削工程を有する、人工地盤の構築工法。
【0013】
請求項2に記載の発明では、第一層形成工程で、既存構造物の地下躯体の底盤部上の空間は、例えば、基礎梁などが残っているが、流動化処理土を流し込むことで、既存構造物の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材を上部に埋め戻すことが可能な第一層が形成される。
【0014】
そして、第二層形成工程で、この第一層の上に解体コンクリートを含む再生材を埋め戻して締め固め締固層を積層した第二層を形成することで底盤部上に人工地盤を容易に低コストで構築することができると共に、解体コンクリートの搬出費用や処分費用が抑制される。
【0015】
したがって、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤を効率的に低コストで構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤を効率的に低コストで構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工地盤及びこの人工地盤の上に更に再生材を埋め戻して施工地盤を構築した状態を示す断面図である。
図2図6に示す底盤部を含む地下躯体の一部を残して既存構造物を解体した状態の断面図である。
図3図2の状態から地下躯体のスラブと底盤部との間の空間部に流動化処理土流し込んで固めて第一層を構築した状態の断面図である。
図4図3の第一層の上に再生材で埋め戻して第二層を構築した状態の断面図である。
図5図1の状態から計画床付レベルまで掘削し、新築構造物を構築した状態の断面図である。
図6】底盤部を含む地下躯体の一部を残して既存構造物を解体した状態を模式的に示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<人工地盤及び人工地盤の構築工法>
本発明の一実施形態に係る人工地盤及び人工地盤の構築工法について、既存構造物の地下躯体以浅に人工地盤を構築する工程で説明していく。
【0019】
図6に示すように、複数階からなる地下躯体(地下構造部)12を有する鉄筋コンクリート製(又は鉄骨鉄筋コンクリート製)の既存構造物10が、地盤80に構築されている。そして、既存構造物10を解体して、新たに新築構造物150(図5参照)を構築する。この新築構造物150(図6参照)の地下の計画床付レベルLは、既存構造物10の地下躯体12以浅に計画されている。
【0020】
まず、図6及び図2に示すように、底盤部14を含む地下躯体12の一部を残して既存構造物10を解体重機で解体する。
【0021】
図2に示すように、地下躯体12のスラブ16にコア(孔)18を形成する。そして、図3に示すように、地下躯体12のスラブ16のコア18から、スラブ16と底盤部14との間の空間部20(図6も参照)に、図示してないポンプで流動化処理土30を流し込んで固める。なお、この流動化処理土30で構築した層を第一層102とする。
【0022】
なお、流動化処理土30は、土や土砂等の被処理土、セメント及び水を流動化処理土製造装置で混練して作製した流動性を有する埋め戻し材である。よって、空間部20には地下躯体12の柱、梁、壁などが存在するが、流動化処理土30は流動性があるので、スラブ16と底盤部14との間の空間部20の隅々まで行き渡り、迅速に埋め戻すことができる。また、締め固めも不要である。
【0023】
図1示すように、スラブ16(図3参照)を解体すると共に、既存構造物10(図6参照)の解体によって発生した解体コンクリートと再生砕石とを含む再生材40を第一層102の上に埋め戻し、転圧作業を行って締め固め第二層106を構築する。なお、第二層106の上層面106Aは、計画床付レベルLよりも上側に位置する。また、本実施形態では、第二層106は、約30cmの厚さに締固めた締固層104が11層形成されることで構築されている。
【0024】
なお、流動化処理土30で構成された第一層102と、再生材40で構成された複数(本実施形態では11層)の締固層104からなる第二層106と、で本発明の一実施形態に係る人工地盤100が構成されている。
【0025】
更に、図4に示すように、第二層106の上に再生材42を埋め戻す。そして、人工地盤100の上に埋め戻された再生材42の施工地盤上で各種建設作業を行う。なお、再生材42は、第二層102に使用した再生材40よりも粒度が大きい。また、第二層106の上に埋め戻す再生材42は、締め固めが行われていない(締め固める必要はない)。
【0026】
図5に示すように、新築構造物150を建設する際に、埋め戻した再生材42(施工地盤)及び人工地盤100の第二層106の上部(一部)を計画床付レベルLまで掘削する。そして、計画床付レベルLを下端とする直接基礎152を構築し、新築構造物150を建設する。なお、本実施形態では、新築構造物150の基礎は、直接基礎152と図示していない杭とを有するパイル・ドラフト基礎である。
【0027】
<作用及び効果>
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
既存構造物10の地下躯体12の底盤部14の上の空間部20は、例えば、柱、梁、壁などが残っているが、流動化処理土30を流し込むことで、既存構造物10の解体によって発生した解体コンクリートを含む再生材40を上部に埋め戻すことが可能な第一層102が形成される。
【0029】
そして、この第一層102の上に、解体コンクリートを含む再生材40を埋め戻して締め固め第二層106を形成することで、底盤部14の上に、新築構造物150を支持することが可能な人工地盤(支持地盤)100を容易に低コストで構築することができると共に、解体コンクリートの搬出量及び処理量が削減され、この結果、搬出費用及び処理費用が抑制される。
【0030】
したがって、既存構造物10の地下躯体12以浅に計画床付レベルLが計画された人工地盤(支持地盤)100を効率的に低コストで構築することができる。
【0031】
ここで、既存構造物10の解体によって発生した解体コンクリートは、建設現場からトラックで搬出する。この建設現場が、繁華街、ビジネス街、或いは住宅地の近隣などの場合、トラックの通行が制限される場合がある。このようにトラックの通行が制限されると解体コンクリートの搬出に多くの時間が必要となり、建設工期に影響を与えることになる。しかし、本発明を適用することで、解体コンクリートを含む再生材40を人工地盤100に用いることが可能となり、解体コンクリートの搬出量が削減され、トラックの通行が制限されることによる建設工期への影響が抑制される。
【0032】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
本発明は、既存構造物の地下躯体以浅に計画された人工的に作られる建設用の地盤全般に適用することができる。
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0033】
10 既存構造物
12 地下躯体
14 底盤部
20 空間部(空間)
30 流動化処理土
40 再生材
100 人工地盤
102 第一層
106 第二層
図1
図2
図3
図4
図5
図6