【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本明細書中、「質量%」は、%(W/W)を表す。以下、上付きの「TM」は商品名を示す。
【0068】
<Md−アルギン酸ナトリウムおよび低分子量アルギン酸ナトリウムの調製方法>
本発明の実施例では、Md−アルギン酸ナトリウムを調製するためのアルギン酸原料として、サンサポート
TMP−80、P−71(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を用いた。また、以下の方法で4種類のMd−アルギン酸ナトリウムであるMDA−01、MDA−02、MDA−03、MDA−04を調製した。さらに、対照としてM
wが100,000g/mol以下であるが、G含有量が85%未満である低分子アルギン酸ナトリウム、LA−01およびLA−02を調製した。
【0069】
MDA−01
20gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−80)を200mlの0.3Mの塩酸に懸濁後、25℃で17時間攪拌した。この上清をデカントで除き、50ml の0.3M塩酸を加えて95で2時間加熱した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨て50mlの超純水に懸濁し、この操作を2回繰り返した。沈殿を50mlの超純水に懸濁し、0.5MのNaOHを用いてpHを3.5に調整し、これを25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿を100mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0070】
MDA−02
80gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−80)を800mlの0.3Mの塩酸に懸濁後、25℃で17時間攪拌した。この上清をデカントで除き、200ml の0.3M塩酸を加えて95で6時間加熱した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨て600mlの超純水に懸濁し、この操作を2回繰り返した。沈殿を600mLの超純水に懸濁し、0.5MのNaOHを用いてpHを3.5に調整し、これを25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿に600mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0071】
MDA−03
6gのアルギン酸原料(サンサポート
TM P−80)を194gのpH6.5のリン酸緩衝液(200mM)に分散させた。この分散液に216Uのアルギン酸リアーゼ(商品名:アルギン酸リアーゼS、ナガセエンザイム社製)酵素液を加え、40℃で30分酵素処理後、1.0Mの水酸化ナトリウムを2.0ml添加して酵素を失活させた。この溶液を0.1Mの塩酸でpH3.5に調整し、25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿に100mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0072】
MDA−04
6gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−80)を194gのpH6.5のリン酸緩衝液(200mM)に分散させた。この分散液に216Uのアルギン酸リアーゼ(商品名:アルギン酸リアーゼS、ナガセエンザイム社製)酵素液を加え、40℃で60分酵素処理後、1.0Mの水酸化ナトリウムを2.0ml添加して酵素を失活させた。この溶液を0.1Mの塩酸でpH3.5に調整し、25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿に100mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0073】
LA−01
20gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−80)を150ml の0.3M塩酸に懸濁に懸濁後、25℃で17時間攪拌した。上清をデカントで除き、50ml の0.3M塩酸を加えて95で2時間加熱した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨て50mlの超純水に懸濁し、この操作を2回繰り返した。200mlの超純水に懸濁し、0.5Mの水酸化ナトリウムを用いてpHを4.0に調整し、これを25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清のみを回収し、これを0.5Mの塩酸を用いてpH2.6に調整した。懸濁液を750ラgで15分間遠心分離し、上清を捨て100mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0074】
LA−02
20gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−71)を150ml の0.3M塩酸に懸濁に懸濁後、25℃で17時間攪拌した。上清をデカントで除き、50ml の0.3M塩酸を加えて95で2時間加熱した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨て50mlの超純水に懸濁し、この操作を2回繰り返した。200mlの超純水に懸濁し、0.5Mの水酸化ナトリウムを用いてpHを4.0に調整し、これを25℃で17時間攪拌した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清のみを回収し、これを0.5Mの塩酸を用いてpH2.6に調整した。懸濁液を750×gで15分間遠心分離し、上清を捨て100mlの超純水に懸濁後、4.0MのNaOHを用いてpHを7.0に調整し、沈殿を溶解させた。この溶液をGF/Aガラスフィルター(孔径1.6μm)でろ過後、フリーズドライにより粉末試料を回収した。
【0075】
これらのアルギン酸原料、Md−アルギン酸ナトリウムおよび低分子アルギン酸ナトリウムのG含有率及びM
wを後述の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(1)G含有率の測定方法
アルギン酸原料、Md−アルギン酸ナトリウムおよび低分子アルギン酸ナトリウムのG含有率は、
1H−NMRで測定した際に観測されるグルロン酸の1位炭素に結合したプロトンに由来する5.00〜5.15ppmのピーク面積を、この5.00〜5.15ppmのピーク面積およびマンヌロン酸の1位の炭素に結合したプロトンに由来する4.60〜4.75ppmのピーク面積の和で除した値とした。
【0077】
G含有率(%)=グルロン酸由来のピーク面積/(グルロン酸由来ピーク面積+マンヌロン酸由来のピーク面積)×100
【0078】
試料の調製方法と
1H−NMR測定方法を以下に記載する。
【0079】
アルギン酸原料、Md−アルギン酸ナトリウムもしくは低分子アルギン酸ナトリウムを重水に溶解した後に凍結乾燥をした。この操作を3回繰り返し、交換可能なプロトンを除いた後、更に24時間減圧乾燥した。減圧乾燥された試料を約2質量%になるように重水に溶解し、内部標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(TSP)を添加した。
1H−NMRの測定にはNMR測定装置ECA600(日本電子社)を用い、以下条件で測定した。
【0080】
<
1H−NMRの測定条件>
フィールド磁場強度:14.096T
周波数:600MHz
パルス角度:45°
パルス時間:6.75マイクロ秒
リラクゼーション時間:5秒
積算回数:128回
測定温度:70℃
【0081】
(2)重量平均分子量(M
w)の測定方法
アルギン酸原料、Md−アルギン酸ナトリウムおよび低分子アルギン酸ナトリウムのM
wは、試料希薄溶液をサイズ分離クロマトグラフィーで分離し、多角度光散乱検出器と屈折率検出器を用いて、以下の方法で測定した。
【0082】
<M
w測定方法>
乾燥重量1.5gのアルギン酸原料、Md−アルギン酸ナトリウムもしくは低分子アルギン酸ナトリウムを100gのイオン交換水に添加し、ポリトロン式攪拌機を使用して、回転速度26,000rpmで1分間攪拌することによって分散させて、1.5質量%の分散液を調製した。この分散液を0.5MのNaNO
3水溶液で30倍希釈し、ポリトロン式攪拌機を使用して、回転速度26,000rpmで1分間攪拌することによって0.05%(W/W)の分散液を調製した。当該分散液を、孔径0.45μmのPTFEメンブランフィルターを用いてろ過することによって不溶物を除去した後、以下の条件でゲルろ過クロマトグラフィーに供し、多角度光散乱検出器(DAWN−EOS、ワイアットテクノロジー社)及び屈折率検出器(RI−101、昭和電工社)の測定値から解析ソフトウェア(ASTRA Version 4.9、ワイアットテクノロジー社)を用いて重量平均分子量:M
w(g/mol)を算出した。
【0083】
[ゲル濾過クロマトグラフィーの測定条件]
カラム: OHpak SB−806M HQ (昭和電工社)
カラム温度:25℃
流速:0.5 ml/min
溶出溶媒:0.5 M NaNO
3
試料液注入量:100μl
【0084】
【表1】
【0085】
分析の結果、アルギン酸原料であるサンサポート
TMP−80、P−71のMwは、いずれも100,000g/molより高く、G含有率は85%より低かった。一方、Md−アルギン酸ナトリウムであるMDA−01〜04のM
wは、いずれも100,000g/molより低く、G含有率は85%より高かった。さらに、低分子アルギン酸ナトリウムであるLA−01、LA−02のM
wはいずれも100,000g/molより低く、G含有率は85%より低かった。
【0086】
<Md−ペクチンおよび低分子量ペクチンの調製方法>
本発明の実施例では、Md−ペクチンを調製するためのペクチン原料として、サンサポート
TM P−160、P−161(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を用いた。
また、以下の方法で4種類のMd−ペクチン、MDP−01、MDP−02、MDP−03、MDP−04を調製した。さらに、対照としてM
wが100,000g/mol以下であるが、DMが40%より大きい低分子ペクチン、LP−01およびLP−02を調製した。
【0087】
MDP−01
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−160)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を1,000倍希釈して使用した)酵素液を添加し、40℃で120分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液に1.0ml(45U相当)のペクチンメチルエステラーゼ(商品名:Novo shape XL、Novozyme社製を100倍希釈して使用した)を添加し、40℃で360分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0088】
MDP−02
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−160)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を超純水で1,000倍希釈)酵素液を添加し、40℃で120分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液に1.0ml(45U相当)のペクチンメチルエステラーゼ(商品名:Novo shape XL、Novozyme社製を超純水で100倍希釈)を添加し、40℃で600分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0089】
MDP−03
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−160)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を超純水で1,000倍希釈)酵素液を添加し、40℃で120分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液に1.0ml(45U相当)のペクチンメチルエステラーゼ(商品名:Novo shape XL、Novozyme社製を超純水で100倍希釈)を添加し、40℃で900分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0090】
MPD−04
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−161)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を超純水で1,000倍希釈)酵素液を添加し、40℃で30分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液に1.0ml(45U相当)のペクチンメチルエステラーゼ(商品名:Novo shape XL、Novozyme社製を超純水で100倍希釈)を添加し、40℃で360分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0091】
LP−01
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−160)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を超純水で1,000倍希釈)酵素液を添加し、40℃で120分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0092】
LP−02
30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−160)を970gの超純水に分散させた。この分散液に1.0ml(200U相当)のペクチナーゼ(商品名:Pectinex YieldMASH、Novozyme社製を超純水で1,000倍希釈)酵素液を添加し、40℃で180分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液に1.0ml(45U相当)のペクチンメチルエステラーゼ(商品名:Novo shape XL、Novozyme社製を超純水で100倍希釈)を添加し、40℃で120分酵素処理後、90℃以上で30分間加熱して酵素を失活させた。この溶液からスプレードライにより粉末試料を回収した。
【0093】
これらのペクチン原料、Md−ペクチンおよび低分子ペクチンのDMおよびM
wを後述の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0094】
(1)DMの測定方法
0.1gのペクチン原料、Md−ペクチンもしくは低分子ペクチンをマグネットスターラーで撹拌しながら9.9gの超純水に分散させた。この分散液0.675ml を測りとり、これに0.075mlの100mM硫酸銅溶液を添加して撹拌混合した。これに0.75mlの1.0M水酸化ナトリウムを添加し混合後、4℃で1.5時間静置した。これを10,000×gで12分間遠心分離し、上清を1.0M塩酸でpH7.5に調整し、2.0mlに定容した。0.5ml(12.5Uに相当)のアルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.13、シグマ社製)を添加撹拌し、25℃で1時間以上静置後、2.5mlの2,4−pentandione試薬(シグマ社製)を添加撹拌した。これを40℃で30分静置、さらに25℃で30分静置後、412nmの吸光度からメタノールを定量した。
【0095】
DM(%)=(メタノールのモル数/ガラクツロン酸のモル数)×100
【0096】
(2)重量平均分子量(M
w)の測定方法
ペクチン原料、Md−ペクチンおよび低分子ペクチンのM
wは、試料希薄溶液をサイズ分離クロマトグラフィーで分離し、多角度光散乱検出器と屈折率検出器を用いて、以下の方法で測定した。
【0097】
<M
w測定方法>
乾燥重量1.5gのペクチン原料、Md−ペクチンもしくは低分子ペクチンを100gのイオン交換水に添加し、ポリトロン式攪拌機を使用して、回転速度26,000rpmで1分間攪拌することによって分散させて、1.5質量%の分散液を調製した。この分散液を0.5MのNaNO
3水溶液で30倍希釈し、ポリトロン式攪拌機を使用して、回転速度26,000rpmで1分間攪拌することによって0.05%(W/W)の分散液を調製した。当該分散液を、孔径0.45μmのPTFEメンブランフィルターを用いてろ過することによって不溶物を除去した後、以下の条件でゲルろ過クロマトグラフィーに供し、多角度光散乱検出器(DAWN−EOS、ワイアットテクノロジー社)及び屈折率検出器(RI−101、昭和電工社)の測定値から解析ソフトウェア(ASTRA Version 4.9、ワイアットテクノロジー社)を用いて重量平均分子量:M
w(g/mol)を算出した。
【0098】
[ゲル濾過クロマトグラフィーの測定条件]
カラム: OHpak SB−806M HQ (昭和電工社)
カラム温度:25℃
流速:0.5 ml/min
溶出溶媒:0.5 M NaNO
3
試料液注入量:100μl
【0099】
【表2】
【0100】
分析の結果、ペクチン原料であるサンサポート
TMP−160のMwは100,000g/molより高く、DMは40%より高かった。サンサポート
TMP−161のM
wは、100,000g/molより高く、DMは40%より低かった。一方、Md−ペクチンであるMDP−01〜04のM
wは、いずれも100,000g/molより低く、DMは40%より低かった。さらに、低分子ペクチンである、LP−01、LP−02のM
wはいずれも100,000g/molより低く、DMは40%より高かった。
【0101】
実験例1
Md−アルギン酸ナトリウム、アルギン酸原料および低分子アルギン酸ナトリウムを用いて、後記(1−1)に記載の方法により濃厚流動食を調製し、後記(1−2)に記載の方法で、人工胃液と接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
【0102】
(1−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.40gの塩化カルシウム(2水和物)、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および0.20gのクエン酸三ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、乳化剤製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を0.1g添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合し、撹拌した後、0.30gのアルギン酸原料(サンサポート
TMP−71、三栄源エフ・エフ・アイ社製)および表3に記載の分量のMd−アルギン酸ナトリウムもしくは、表4に記載の分量のアルギン酸原料もしくは低分子アルギン酸ナトリウムを添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。この分散液を14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例1〜4および比較例1〜5の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した濃厚流動食のpHは6.8〜7.0であった。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
(1−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定
人工胃液に接触する前の粘度を測定する場合、80g濃厚流動食をキャップで密閉できる内径35mm、高さ10mmのガラス製円筒管に入れて測定した。また、人工胃液に接触した後の粘度を測定する場合は、上記のガラス製円筒管に16gの人工胃液(0.7%塩酸及び0.2%食塩の水溶液、pH1.2)を入れ、そこに64gの濃厚流動食を加えて、ガラス製円筒管をキャップで封をし、10回転倒させて人工胃液と濃厚流動食を混和し、37℃で30分間静置した後、20℃に戻してから粘度を測定した。
【0106】
<粘度の測定条件>
B型回転粘度計(BLII型、東京計器株式会社製)にて粘度を測定した。
測定温度:20℃
回転速度:12rpm
【0107】
外観の観察
人工胃液に接触後の濃厚流動食の外観を主に胃液部と濃厚流動食部との分離の観点から観察した。分離した人工胃液は濃厚流動食の上部に透明もしくは白濁した半透明の層として観察される。分離の有無を以下の4段階で評価した。
◎ 人工胃液層の分離が見られない。
○ 人工胃液層の分離が僅かに見られる。
△ 人工胃液層の分離が見られる。
× 人工胃液層の分離が際立って見られる。
【0108】
(1−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
実施例1〜4の各濃厚流動食は、人工胃液に接触前の粘度がいずれも250mPa・s以下であった。また、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s以上であった。さらに、人工胃液に接触後の外観を観察すると、実施例1〜4の濃厚流動食は、柔軟なゲル状であり、人工胃液を取り込んで一体的にゲル化していた。
本粘度測定法で250mPa・s以下の粘度であるとき、経鼻用の細管を通した場合においても重力のみで流動(流出)させることが可能であるため、本発明の濃厚流動食は介護者や被介護者の負担を低減させ、かつ胃内では十分に高粘度になって胃食道逆流を防ぐことができる。
【0111】
一方、0.3質量%のアルギン酸原料を含有するがMd−アルギン酸ナトリウムを含有しない比較例1は、人工胃液に接触前の粘度は低く投与しやすいが、人工胃液に接触後の粘度が2,000mPa・s以下であり、十分な粘度増加がみられなかった。また、合計0.7質量%のアルギン酸原料を含有するがMd−アルギン酸ナトリウムを含有しない比較例2および3は、人工胃液に接触前の粘度が高くなりすぎた。また、比較例1〜3の人工胃液に接触後の外観を観察した結果、ゲル化した濃厚流動食部と胃液部が分離していた。ゲル化した濃厚流動食部は胃食道逆流しないが、分離している胃液部は粘度が低いため胃食道逆流の原因になる可能性がある。
【0112】
低分子アルギン酸を含有するがMd−アルギン酸ナトリウムを含有しない比較例4および5は人工胃液に接触前の粘度は250mPa・s以下と十分に低かったが、人工胃液に接触後の粘度が2,000mPa・s以下であり、十分な粘度増加がみられなかった。また、外観観察の結果、ゲル化した濃厚流動食部と胃液部がわずかに分離していることが確認された。
【0113】
以上の結果から、投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製するためには、Md−アルギン酸ナトリウムが必須であることが確認された。
【0114】
実験例2
Md−アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸原料を用いて、後記(2−1)に記載の方法により濃厚流動食を調製し、後記(2−2)に記載の方法で、人工胃液と接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
【0115】
(2−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.40gの塩化カルシウム(2水和物)、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および0.20gのクエン酸三ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、乳化剤製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を0.1g添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合し、撹拌した後、表6に記載のアルギン酸ナトリウム、Md−アルギン酸ナトリウムおよび/もしくは低分子アルギン酸ナトリウムを添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。この分散液を14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例2、実施例5〜19および比較例6〜16の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した濃厚流動食のpHは6.6〜6.9であった。
【0116】
【表6】
【0117】
(2−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定および外観の観察は、(1−2)と同じ方法を用いた。
(2−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観を表7に示す。
【0118】
【表7】
【0119】
アルギン酸原料であるサンサポート
TMP−71及びMd−アルギン酸ナトリウムであるMDA−02を含有している実施例2および実施例5〜19の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下であった。また、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s以上であった。さらに、人工胃液に接触後の外観を観察すると、実施例2、7、8、9、13、14、18、19の濃厚流動食は、柔軟なゲル状であり、人工胃液を取り込んで一体的にゲル化し、人工胃液部の分離も見られなかった。また、実施例5、6、10、11、12、15、16、17の濃厚流動食は、人工胃液に接触後、比較的硬くて脆いゲルを形成するものの、人工胃液部の分離は僅かだった。
Md−アルギン酸ナトリウムのみを含有する比較例6〜11について濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下だったが、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s未満であり、十分な粘度増加がみられなかった。また、比較例6〜11の濃厚流動食は、人工胃液に接触後、部分的に凝集・不溶化し、胃液部と濃厚流動食部が完全に分離した。
また、Md−アルギン酸ナトリウムと低分子アルギン酸ナトリウムとの組み合わせである比較例12〜16の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下だったが、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s未満であり、十分な粘度増加が見られなかった。また、比較例12〜16の濃厚流動食は、比較例6〜11の濃厚流動食と同様に、人工胃液に接触後、部分的に凝集・不溶化し、胃液部と濃厚流動食部が完全に分離した。
【0120】
以上の結果から、濃厚流動食が投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製するためには、Md−アルギン酸ナトリウムとアルギン酸原料が共に必要であることが確認された。
実験例3
Md−アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸原料用いて、後記(3−1)に記載の方法により濃厚流動食を調製し、後記(3−2)に記載の方法で、人工胃液と接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
(3−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および表8に記載の塩化カルシウム(2水和物)およびクエン酸三ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、乳化剤製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.1gを添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合し、撹拌した後、0.3gのアルギン酸ナトリウム(サンサポート
TMP−71)、0.4gのMd−アルギン酸ナトリウム(MDA−02)を添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。この分散液を14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例2、実施例20〜29および比較例17〜22の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した濃厚流動食のpHは6.7〜7.1であった。
【0121】
【表8】
*実験例1の実施例2と同じ組成である。
【0122】
(3−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定および外観の観察は、(1−2)と同じ方法を用いた。
(3−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観を表9に示す。
【0123】
【表9】
【0124】
カルシウムとキレート剤であるクエン酸三ナトリウムを含有する実施例2および実施例20〜29の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下であった。また、人工胃液と接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s以上であった。さらに、人工胃液に接触後の外観を観察すると、カルシウム含有率が0.03〜0.11質量%である、実施例2および実施例20〜25の濃厚流動食は、柔軟なゲル状であり、人工胃液を取り込んで一体的にゲル化し、人工胃液部の分離も見られなかった。また、カルシウム含有率が0.22〜0.44質量%である実施例26〜29の濃厚流動食は、人工胃液に接触後、比較的硬くて脆いゲルを形成するものの、人工胃液部の分離は僅かだった。
カルシウム、キレート剤ともに含有しない比較例17およびキレート剤を含有するがカルシウムを含有しない比較例18の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、250mPa・s以下だったが、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも殆ど増粘せず、粘度は2,000mPa・s未満であった。これらの濃厚流動食は人工胃液に接触後、低粘度の溶液状であったため、人工胃液との分離は見られなかった。
また、カルシウムを含有するが、キレート剤を含有しない比較例19、あるいはキレート剤の含有率が0.01質量%と極端に低い比較例20の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、800mPa・sを超え、柔らかいゲル状になっていた。一方、キレート剤の含有率が1.50質量%と極端に高い比較例21の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は250mPa・sより高く、人工胃液に接触後も粘度増加がみられなかった。さらに、カルシウムの含有率が2.50質量%と極端に高い比較例22の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は1,000mPa・sを超え、柔らかいゲル状になっていた。
【0125】
以上の結果から、濃厚流動食が投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製するためには、カルシウムとキレート剤が共に必要であることが確認された。
【0126】
実験例4
Md−ペクチン、ペクチン原料および低分子ペクチンを用いて、後記(4−1)に記載の方法により濃厚流動食を調製し、後記(4−2)に記載の方法で、人工胃液と接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
【0127】
(4−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.40gの塩化カルシウム(2水和物)、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および0.20gのクエン酸三ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、0.1gの乳化製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合し、撹拌した後、0.30gのペクチン原料(サンサポート
TMP−161、三栄源エフ・エフ・アイ社製)および表10に記載のMd−ペクチンもしくは、表11に記載の分量のペクチン原料もしくは低分子ペクチンを添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。この分散液を14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例30〜33および比較例23〜27の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した基本濃厚流動食のpHは5.6〜5.8であった。
【0128】
【表10】
【0129】
【表11】
【0130】
(4−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定および外観の観察は、(1−2)と同じ方法を用いた。
(4−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観を表12に示す。
【0131】
【表12】
【0132】
実施例30〜33の各濃厚流動食は、人工胃液に接触前の粘度がいずれも250mPa・s以下であった。また、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2000mPa・s以上であった。さらに、人工胃液に接触後の外観を観察すると、実施例30〜33の濃厚流動食は、人工胃液とともに粘ちょうなゾル状になっていた。
本粘度測定法で250mPa・s以下の粘度であるとき、経鼻用の細管を通した場合においても重力のみで流動(流出)させることが可能であるため、本発明の濃厚流動食は介護者および被介護者の負担を低減させ、かつ胃内では十分に高粘度になって胃食道逆流を防ぐことができる。
【0133】
一方、0.3%のペクチン原料を含有するがMd−ペクチンを含有しない比較例23の濃厚流動食は、人工胃液に接触前の粘度は250mPa・s以下の粘度であったが、人工胃液に接触後の粘度が2,000mPa・s以下であり、十分な粘度増加がみられなかった。また、合計1.5質量%のペクチン原料を含有する比較例24および25は、人工胃液に接触前の粘度が著しく高く、人工胃液に接触後も濃厚流動食と人工胃液が混ざらず分離した。
【0134】
低分子ペクチンを含有する比較例26および27の人工胃液に接触前の粘度は250mPa・s以下と十分に低かったが、人工胃液に接触後の粘度が2,000mPa・s以下であり、十分な粘度増加がみられなかった。また、外観観察の結果、粘ちょうなゾル状となった濃厚流動食部と胃液部が僅かに分離していることが確認された。
【0135】
以上の結果から、投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製するためには、Md−ペクチンが必須であることが確認された。
【0136】
実験例5
Md−ペクチンおよびペクチン原料用いて、後記(5−1)に記載の方法により調製した濃厚流動食を調製し、後記(5−2)に記載の方法で、人工胃液に接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
【0137】
(5−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.40gの塩化カルシウム(2水和物)、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および0.20gのクエン酸3ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、乳化剤製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を0.1g添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合、撹拌した後、表13に記載分量のペクチン原料、Md−ペクチンおよび/もしくは低分子ペクチンを添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例31、実施例34〜42および比較例28〜34の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した基本濃厚流動食のpHは5.5〜5.8であった。
【0138】
【表13】
*実験例4の実施例31と同じ組成である。
【0139】
(5−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定および外観の観察は、(1−2)と同じ方法を用いた。
(5−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観(人工胃液部の分離)を表14に示す。
【0140】
【表14】
*実験例4の実施例31と同じ組成である。
【0141】
ペクチン原料であるサンサポート
TMP−161及びMd−ペクチンであるMDP−02を含有している実施例31および実施例34〜42の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下であった。また、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s以上であった。さらに、人工胃液に接触後の外観を観察すると、実施例31および実施例34〜40の濃厚流動食は、粘ちょうなゾル状であり、人工胃液部の分離は見られなかった。また、実施例41、42の濃厚流動食は、人工胃液に接触後、柔らかいゲルを形成しており、僅かに人工胃液部の分離が見られた。
【0142】
Md−ペクチンのみを含有する比較例28〜31の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下だったが、人工胃液と接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s未満であり、十分な粘度増加がみられなかった。Md−ペクチンと低分子ペクチンを含有するがペクチン原料を含有しない比較例32〜34の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下だったが、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s未満であり、十分な粘度増加が見られなかった。また、比較例28〜34の濃厚流動食は、僅かにとろみのついた溶液状であり、人工胃液部の分離は見られなかった。
【0143】
以上の結果から、投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製する為には、Md−ペクチンとペクチン原料が共に必要であることが確認された。
【0144】
実験例6
Md−ペクチンおよびペクチン原料用いて、後記(6−1)に記載の方法で濃厚流動食を調製し、後記(6−2)に記載の方法で、人工胃液に接触する前後の濃厚流動食の粘度および人工胃液に接触後の外観を評価した。
【0145】
(6−1)濃厚流動食の調製
4.7gのデキストリン、7.3gのグラニュー糖、0.34gの塩化マグネシウム(6水和物)、0.12gの塩化カリウム(無水)および表15に記載の分量の塩化カルシウム(2水和物)及びクエン酸三ナトリウムを80gのイオン交換水に添加混合し分散させた。この分散液を80℃まで加熱し、乳化剤製剤であるホモゲン
TM897(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を0.1g添加撹拌後、40℃以下まで冷却した。これに3.0gのカゼインナトリウムを添加撹拌した。この分散液に3.5gのコーン油を添加混合し、撹拌した後、0.3gのペクチン原料(サンサポート
TMP−161)、1.2gのMd−ペクチン(MDP−02)を添加混合し、イオン交換水で全量を100.0gに調整した。14.7MPaで1回ホモジナイズすることによって実施例31、実施例43〜50および比較例36〜41の濃厚流動食を調製した。なお、ここで調製した基本濃厚流動食のpHは5.6〜5.8であった。
【0146】
【表15】
*実験例4の実施例31と同じ組成である。
【0147】
(6−2)粘度測定および外観の観察
粘度測定および外観の観察は、(1−2)と同じ方法を用いた。
(6−3)結果
人工胃液に接触前後の濃厚流動食の粘度及び両者の比(粘度の増加率)、及び外観(人工胃液部の分離)を表16に示す。
【0148】
【表16】
* 実験例4の実施例31と同じ組成である。
【0149】
カルシウムとキレート剤であるクエン酸三ナトリウムを含有する実施例31および実施例43〜50の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、いずれも250mPa・s以下であり、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも2,000mPa・s以上であった。さらに、これら全ての実施例の人工胃液に接触後の外観は、粘ちょうなゾル状であり、人工胃液部の分離も見られなかった。
【0150】
カルシウム、キレート剤ともに含有しない比較例36およびキレート剤を含有するがカルシウムを含有しない比較例37の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、250mPa・s以下だったが、人工胃液に接触後の粘度は、いずれも殆ど増粘せず、粘度は2,000mPa・s未満であった。これらの濃厚流動食は人工胃液に接触後、低粘度の溶液状であったため、人工胃液との分離は見られなかった。
【0151】
また、カルシウムを含有するが、キレート剤を含有しない比較例38、あるいはキレート剤の含有率が0.01質量%と極端に低い比較例39の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は、1,000mPa・sを超え、粘ちょうなゾル状になっていた。一方、キレート剤の含有率が1.50質量%と極端に高い比較例40の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は250mPa・sより高く、人工胃液に接触後も十分な粘度増加がみられなかった。さらに、カルシウムの含有率が2.00質量%と極端に高い比較例22の濃厚流動食の人工胃液に接触前の粘度は1,000mPa・sを超え、粘ちょうなゾル状になっていた。
【0152】
以上の結果から、投与しやすく、胃内で増粘して胃食道逆流を防止する本特許の濃厚流動食を調製する為には、カルシウムとキレート剤が共に必要であることが確認された。