特許第6378930号(P6378930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378930
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】地下駅空調方法及び地下駅空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20180813BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20180813BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20180813BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180813BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20180813BHJP
【FI】
   F24F11/46
   F24F11/72
   B61B1/02
   F24F7/06 B
   F24F110:10
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-103733(P2014-103733)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-218972(P2015-218972A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514126038
【氏名又は名称】近藤 靖史
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖史
【審査官】 関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102345432(CN,A)
【文献】 中国実用新案第201882076(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 11/00−11/08
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームドア装置が設置されている地下駅の空調負荷を軽減させる、地下駅の空調方法であって、
地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより低いときには、
前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域から、車両の走行に伴う列車風を前記プラットホームに導入し、
地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより高いときには、
前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両の走行に伴う列車風が前記プラットホームに流入することを抑えることを特徴とする、地下駅の空調方法。
【請求項2】
冬期においては、トンネル内の温度、若しくは温湿度または外気の温度に基づいて、前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両の走行に伴う列車風が前記プラットホームに流入することを抑えることを特徴とする、請求項1に記載の地下駅の空調方法。
【請求項3】
車両がプラットホームに停車している間は、前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両からの高温空気が前記プラットホームに流入することを抑えることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の地下駅の空調方法。
【請求項4】
プラットホームドア装置が設置されている地下駅の空調システムであって、
前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側に開口部が形成され、
前記開口部には、当該開口部を開閉自在な開閉部材が設けられ、
前記地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより低いときには、前記開口部を開放し、
前記地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより高いときには、
前記開口部を閉鎖するように構成されたことを特徴とする、地下駅空調システム。
【請求項5】
冬期においては、トンネル内の温度、若しくは温湿度または外気の温度に基づいて、前記開口部を閉鎖するように構成されたことを特徴とする、請求項に記載の地下駅空調システム。
【請求項6】
車両がプラットホームに停車している間は、前記開口部を閉鎖するように構成されたことを特徴とする、請求項4〜5のいずれか一項に記載の地下駅空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下鉄道の地下駅におけるプラットホームの空調方法及び空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下鉄道の地下駅では地上駅と異なり、いわば半開放空間であるため構内を換気する必要がある。また最近では、乗降客の快適性を向上させるために、夏期や中間期において、冷房設備を稼働させてプラットホーム部を冷房する例が増えている。
【0003】
ところが地下駅では、車両走行に伴ってプラットホーム部に流入する列車風(いわゆるピストン風)の風量は、換気に必要な給気風量の数倍にも達する。現在の多くの地下駅では、この列車風がプラットホーム部に流入しても、これをそのままプラットホーム部の空調負荷として処理する。
【0004】
そのため、夏期や中間期の冷房運転時において、プラットホーム部の設計条件よりもエンタルピの高い列車風が大量に流入した場合には、膨大な空調負荷が必要となる。列車風がそのようにエンタルピが高くなるのは、車両の機器自体からの放熱、車両に搭載された冷房機器からの排熱、さらには運行本数の増加が原因と考えられる。
【0005】
一方最近では、乗客の転落防止の観点から、プラットホームの軌道部側に面する部分に、ホームドアと一般的に呼称されている可動式のプラットホームドア装置が設置される地下駅が増えている。その中でいわゆるフルスクリーンタイプのホームドア装置を採用して、軌道部とプラットホーム部をほぼ完全に遮蔽している地下駅では、ホームと軌道の気流の流通を遮断することで列車風の影響を抑え、空調効果を高めると考えられている。
【0006】
特許文献1に開示された技術は、このようなプラットホームの床と天井との間に設置されているフルスクリーンタイプのプラットホームドア装置に対して適用されるものであり、プラットホームの長手方向に沿って設けられてプラットホームドア装置の上部を構成する通気用のダクトと、このダクトに設けられて前記プラットホーム側に開口する通気口と、前記ダクト内に設けられて制御装置に制御されて運転される空気調和装置とを備え、空気調和装置の運転によって冷気が空気調和装置から前記ダクトおよび通気口を経てプラットホームへ送出されるように構成されている。
【0007】
一方、特許文献2には、軌道上に開閉自在な扉を設置し、プラットホームの端部付近からプラットホーム区域外のトンネル内への暖気や冷気の無駄な流出を防止することで、地下駅のプラットホームの空調の効率化を図ることが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−89916号公報
【特許文献2】特開2012−21753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで列車風のエンタルピは、常にプラットホーム部の設計条件よりも高いとは限らず、プラットホーム部の設計条件よりも低い場合がある。たとえば回生ブレーキの採用等、省電力化された車両の機器自体からの放熱が少なかったり、車両に搭載された冷房機器が運転を停止している、運行本数が少ない、さらにはラッシュ時など多くの乗降客でプラットホーム部が混雑している等の条件によって、列車風のエンタルピの方がプラットホーム部の設計条件より低くなることがある。
【0010】
しかしながら特許文献1の技術は、プラットホームにおける軌道部に対面する側を閉鎖しているので、前記したように、列車風のエンタルピがプラットホーム部の設計条件より低い場合でも、これを利用することはできない。そのため、省エネに関してさらなる改善すべき点がある。
【0011】
さらに既存のいわゆる腰高位置のプラットホームドア(可動式ホーム柵とも呼称される)が設置されている駅に対して特許文献1の技術を適用する際には、大規模な改修が必要となる。また特許文献2については、そもそも軌道上に扉という障害物を設置するので、車両の運行の安全上問題がある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両の運行の安全に全く支障を与えることなく、しかも従来放置されていたエンタルピの低い列車風を有効に利用するようにして、前記問題の解決を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は、プラットホームドア装置が設置されている地下駅の空調負荷を軽減させる、地下駅の空調方法であって、
地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより低いときには、
前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域から、車両の走行に伴う列車風を前記プラットホームに導入し、
地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより高いときには、
前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両の走行に伴う列車風が前記プラットホームに流入することを抑えることを特徴としている。
なおここでトンネル内空気のエンタルピとは、地下トンネルすべての区間のトンネル内空気のエンタルピであってもよく、また所定区間ごとに分けたトンネル区間の空気のエンタルピであってもよい。ここで所定区間とは駅と駅との間のトンネル区間や、複数の駅間トンネル区間、駅と駅との間(例えば中央部)で区画して、プラットホーム部端部から当該区画した部分までのトンネル区間の空気のエンタルピとしてもよい。
【0014】
さらにまた冬期においては、トンネル内の温度、若しくは温湿度または外気の温度に基づいて、前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両の走行に伴う列車風が前記プラットホームに流入することを抑えるようにしてもよい。
【0015】
また車両がプラットホームに停車している間は、前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側開口区域を閉鎖して、車両からの高温空気が前記プラットホームに流入することを抑えるようにしてもよい。
【0016】
別な観点によれば、本発明は、前記した空調方法を実施するのに適した空調システムとして、前記プラットホームドア装置における軌道部とプラットホームを隔てる腰壁の上側に開口部が形成され、前記開口部には、当該開口部を開閉自在な開閉部材が設けられ、前記地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより低いときには、前記開口部を開放し、前記地下駅に対して冷房運転を実施している場合に、トンネル内空気のエンタルピが当該地下駅のプラットホームのエンタルピより高いときには、前記開口部を閉鎖するように構成されたことを特徴としている。
かかる場合、冬期においては、トンネル内の温度、若しくは温湿度または外気の温度に基づいて、前記開口部を閉鎖するようにしてもよい。
また車両がプラットホームに停車している間は、前記開口部を閉鎖するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両の運行の安全に全く支障を与えることなく、しかも従来放置されていたエンタルピの低い列車風を有効に利用でき、地下駅の空調負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態にかかる地下駅空調システムを軌道方向からみて模式的に示し、鉄道車両が駅に停車中の様子を示す説明図である。
図2】実施の形態にかかる地下駅空調システムをプラットホームから軌道側をみて模式的に示した説明図である。
図3】実施の形態にかかる地下駅空調システムを平面視で模式的に示した説明図である。
図4】実施の形態にかかる地下駅空調システムを軌道方向からみて模式的に示し、鉄道車両がトンネル内を通過中の駅の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明すると、図1は、実施の形態にかかる地下駅空調システムを軌道方向からみて模式的に示し、図2は同じくプラットホームから軌道側をみた説明図である。この例では、既存のいわゆる腰高位置のプラットホームドア装置1、2が採用された地下駅に適用されている。
【0025】
すなわちこの地下駅のプラットホーム3における幅方向両側端部には、プラットホーム3と軌道部4、5を隔てるように、腰壁6、7が設置されている。腰壁6、7は同一構成であり、ここでは腰壁6について説明する。腰壁6は、一般成人の腰から胸までの高さ、例えば床上から1.1m程度の高さを有し、所定間隔ごとに設置されている。そして腰壁6、6間には、開閉ドア10が設けられている。開閉ドア10は、横方向(プラットホームの長手方向)にスライドし、乗客Fの車両11への乗り降り時には、スライドして腰壁6内に収納され、乗客Fの昇降スペースを確保するようになっている。
【0026】
この腰壁6の上側には、所定間隔で適宜の枠体12が設けられ、開口部13が形成されている。この例では、枠体12の上部はプラットホームの天井部14と固定されている。
【0027】
開口部13には、開閉部材としてルーバー21が設けられている。ルーバー21は、水平方向に配置された細長の羽板21aが、高さ方向に複数平行に配置されている。もちろん羽板21aは、垂直方向に配置されたものを、水平方向に複数平行に配置されたものでもよい。さらにまた、このようなルーバーではなく、上下方向あるいは左右方向にスライドするシャッタ、扉体を採用してもよい。
【0028】
この例で採用されているルーバー21の羽板21aは、モータ(図示せず)等の駆動によって回動して開口部13を閉鎖したり、あるいは開放することが可能であり、また回動角度によって開口部13の開口率を変更することが可能になっている。
【0029】
図3に示したように、プラットホーム3端部近傍のトンネル内には、トンネル内の温湿度を測定するセンサ31、32が設けられ、これらセンサ31、32からの検出結果は、制御装置Cへと出力される。なおこれらセンサ31、32のトンネル内の設置個所、設置数は、状況に応じて任意に設定できる。またプラットホーム3上においても、同様に、温湿または温湿度を検出するセンサ33が設置されている。このセンサ33からの検出結果は、制御装置Cへと出力される。
制御装置Cには、地下駅の空調を担っている空調装置34の運転状況、さらにはプラットホーム3上の温湿度等の情報、車両11の接近状況やプラットホーム3での停車状況等も入力される。そして制御装置Cは、これら入力された情報に基づき、例えばあらかじめ定められたプラットホーム3上での温湿度条件等と比較して、ルーバー21の羽板21aの開閉や開度等を制御するようになっている。
【0030】
実施の形態にかかる空調システムは以上のように構成されており、次にその運転例について説明する。
【0031】
例えば夏期や中間期において、空調装置34が冷房運転している場合、トンネル内空気のエンタルピがプラットホーム3のエンタルピ(すなわちプラットホーム3上の空間のエンタルピ)より低いときには、図4に示したように、ルーバー21の羽板21aを開放するようにして、開口部13を開放させる。これによって、車両11の走行による列車風(いわゆるピストン流)が、開口部13、及び開閉ドア10上部の開口から、プラットホーム3に流入し、空調装置34の冷房負荷が軽減される。
【0032】
逆にトンネル内空気のエンタルピがプラットホーム3のエンタルピより高いときには、図1に示したように、ルーバー21の羽板21aを閉鎖するようにして、開口部13を閉鎖させる。これによって、車両11の走行による列車風は開閉ドア10上部の開口からの流入にとどまり、やはり空調装置34の冷房負荷が軽減される。
【0033】
ところで、車両11がプラットホーム3に停車しているときには、当該車両11からはブレーキ発熱や、搭載している室外機から大量の放熱が行われ、周囲に高温の空気流を発生させている。したがってかかる場合も、図1に示したように、ルーバー21の羽板21aを閉鎖することにより、これら高温空気が、開口部13からプラットホーム3へと流入することを防止でき、その分、冷房負荷は軽減される。
【0034】
さらにまた車両11がプラットホーム3から発車したときには、地下駅全体が負圧になる。したがってその際にも、ルーバー21の羽板21aを閉鎖することにより、地下駅全体の負圧度を緩和させることができ、これによって地上から駅出入り口や駅舎の隙間等を通じて、コンコースやプラットホーム3に流れ込む空気の量を低減させることができる。したがって夏期においては、地上の高温空気が地下駅内や地下一階コンコース部に流入する量を低減させることができ、その分空調負荷が軽減できる。
【0035】
一方、冬期においては、センサ31、32、33からの検出結果に基づき、列車風の流入によって、プラットホーム3上の快適性が損なわれる場合、たとえば高温多湿の空気や低温低湿の列車風がプラットホーム3内に流入すると判断される場合には、ルーバー21の羽板21aを閉鎖するように制御してもよい。そのようにルーバー21の羽板21aを閉鎖する制御を行った場合、夏期の場合と同様に、地上の空気(低温空気)が、駅出入り口や駅舎の隙間等から地下一階コンコース部に流入する量を低減させることができ、その分、暖房負荷が軽減できる。
なお上下線の軌道部4、5のトンネル近傍にそれぞれセンサ31、32を設置したのは、上下線で各々エンタルピが異なる場合があることを想定したからである。
【0036】
このように実施の形態にかかる空調システムによれば、年間を通じてプラットホーム部の空調負荷を軽減させることができ、それによって空調設備の縮小も可能となる。もちろん軌道部4、5上には、空調システムに関連する機器類は設置する必要がないので、車両の走行には全く影響を与えず、車両運行の安全性は確保されている。
【0037】
なおトンネル内空気のエンタルピとプラットホーム3のエンタルピとの比較は、圧力等があらかじめ設計段階等で分かっているので、制御装置Cによる演算、判断、ルーバー21に対する制御は、トンネル内の温度や温湿度を検出するセンサ31、32及びプラットホーム3に設置された温度や温湿度を検出するセンサ33による検出結果に基づいて判断するのがより実際的である。
ただし実際の運用については、たとえば1日のうちではトンネル内空気のエンタルピとプラットホーム3のエンタルピに差が変動すると思われる日中とラッシュ時、あるいは1年を通しては夏季や中間期と冬季とで、あらかじめ各々の場合の各エンタルピを予め求めておき、それに基づいて、所定の時間帯や、所定の日にち帯で、決まった開閉制御を行うようにしてもよい。もちろんこれらを組み合わせて開閉制御するようにしてもよい。
またエンタルピの計算については、単位質量あたりエンタルピ(比エンタルピ)を基にして、トンネル内空気のエンタルピとプラットホーム3のエンタルピを比較するようにしてもよい。
【0038】
さらにまた前記実施の形態では、開閉ドア10の上部空間には、開口が形成されたままであるから、列車風はこの開口からプラットホーム3へと流入してしまう。したがって、この開口を開閉するシャッタ等を別途設け、ルーバー21の羽板21aが開閉される場合には、ルーバー21の羽板21aと連動して開閉するようにすれば、列車風のプラットホーム3への流入をさらに抑えることができる。ただし、かかる場合、乗客の乗り降り時は常に当該シャッタは開放させておく必要がある。
【0039】
ところでプラットホーム3上の二酸化炭素の濃度は安全性、快適性の点から、所定濃度以下に維持する必要がある。そのため、適宜外気をプラットホーム3に導入する場合がある。かかる場合、プラットホーム3上の二酸化炭素の濃度が所定の濃度よりも高い場合には、図4に示したように、ルーバー21の羽板21aを開放するようにして、開口部13を開放させ、トンネル内の空気を車両11の走行による列車風(いわゆるピストン流)によって、積極的にプラットホーム3に導入するようにしてもよい。これによって、外気負荷と搬送動力の低減が図れる。
【0040】
なお前記した実施の形態は、成人の胸〜腰あたりの高さがある腰壁のあるいわゆる可動式ホーム柵タイプのプラットホームドア装置を利用したものであったが、本発明は、フルスクリーンタイプのプラットホームドア装置に対しても適用が可能である。
【0041】
フルスクリーンタイプのプラットホームドア装置が設置される場合には、プラットホームと軌道部とを仕切る区画壁の一部、たとえばガラスや透明プラスチックパネルの左右端部、中央部、天井近く、床近くに開口部を形成し、当該開口部に、前記したようにシャッターやルーバーなどの開閉装置を設ければよい。また区画壁自体を、枠体以外は開口部として、当該開口部に前記開閉装置を設けた構成としてもよい。かかる場合、開閉部材を縦または横の桟状に形成し、全閉時にはプラットホームと軌道部との間を、密に断つことができ、保守にも便利である。もちろんフルスクリーンタイプであるから、全閉時におけるプラットホームの空調負荷は、既述の腰高位置のプラットホームドア装置より、さらに低くすることができる。
【0042】
なおフルスクリーンタイプのプラットホームドア装置が既に設置されている場合には、開閉ドア以外の壁体部分を、腰高位置の高さの腰壁に変更して、その上部に開口部を形成して、当該開口部に、開閉部材としてルーバーやシャッター等を設ければよい。
【0043】
なおトンネル内やプラットホーム部の状態を検出するセンサは、温湿度センサではなく、温度センサのみを用いても本発明は成立する。例えば湿度を測定してエンタルピを算出するのでなく、単純に温度のみを開閉部材の指標としても、上述の装置発明の実施は成立する。また、駅舎の入口近傍にセンサを設置したり、気象データの通信を受けて開閉部材の開閉を行っても同様である。後者は冬季に外気温度が低温のときに開閉部材を閉鎖することで、列車の走行に伴う屋外空気の侵入、下降を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、プラットホームドア装置が設置される地下駅の空調に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1、2 プラットホームドア装置
3 プラットホーム
4、5 軌道部
6、7 腰壁
10 開閉ドア
11 車両
12 枠体
13 開口部
14 天井部
21 ルーバー
21a 羽板
31、32、33 温湿度センサ
34 空調装置
図1
図2
図3
図4