特許第6378934号(P6378934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千住スプリンクラー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000002
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000003
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000004
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000005
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000006
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000007
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000008
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000009
  • 特許6378934-スプリンクラーヘッド 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378934
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/12 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   A62C37/12
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-108757(P2014-108757)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-223248(P2015-223248A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雅春
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝
(72)【発明者】
【氏名】立石 豊
(72)【発明者】
【氏名】大越 久誉
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−032759(JP,U)
【文献】 特開2002−017886(JP,A)
【文献】 特開2010−193986(JP,A)
【文献】 特開平11−123250(JP,A)
【文献】 実開昭61−151750(JP,U)
【文献】 実開昭63−122452(JP,U)
【文献】 実公昭42−16553(JP,Y1)
【文献】 米国特許第4273195(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/00−37/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有する本体と、
ノズル出口から放水方向へ延出されたアームと、
アームの先端に設置されたデフレクターと、
ノズル出口を閉塞する弁と、
デフレクターと弁の間に設置され、常時は弁を閉止位置に保持しており火災の熱により分解作動する感熱分解部とを備えており、
弁のノズル出口との接触面には樹脂シートが貼付され、
一端側の平面の内側に設置した開口には段が設けられており、他端側は本体に係合可能な脚を有するハンガー設けられ、
開口は弁の側面を保持可能であり、段から開口の内側に弁を差し込み可能であることを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
ハンガーの開口と弁は、弁のシート貼付面から離間した位置で係合している請求項1記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
開口の形状は略D字型であり直線部分と曲線部分を有しており、直線部分と曲線部分の間には段が設置されており、直線部分の長さは曲線部分の径寸法よりも大きい請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
弁の側面には溝が形成されており、その溝がハンガーの開口の縁に差し込まれて係合している請求項1〜請求項3何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
ハンガーの開口において、弁の差込み部付近に弁の溝径よりも狭い括れ部を有する請求項4記載のスプリンクラーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは建物内の天井や壁面に設置され、本体の一端には給水源に続いたノズルを有しており、ノズルは弁体により封止されている。弁体は本体の他端側に配置された感熱分解部によって支持されており、火災が発生すると感熱分解部が分解作動して弁体がノズルから離れてノズル内から水が放出される。ノズルから放出された水はノズルの出口側の延長上に設けられたデフレクターに衝突して四方へ飛散して火災を消火する。
【0003】
上記のスプリンクラーヘッドの一例としてフレームヨーク型のスプリンクラーヘッドがある(例えば、特許文献1参照)。図9に示すフレームヨーク型のスプリンクラーヘッド100の本体101は、内部がノズル102となっている。ノズル102の出口付近には2本の湾曲したアーム103が設置されており、アーム103はノズル102の延長上で連結し、その連結部Bにはデフレクター104が設置されている。
【0004】
ノズル102は円盤状の弁105によって封止されており、弁105とアーム103の連結部の間には感熱分解部106が設置されている。弁105のノズル側の面にはシール部材として銅製のパッキン107が設置されている。
【0005】
上記のフレームヨーク型スプリンクラーヘッドでは、しばしばロッジメントが問題となる。ロッジメントとはスプリンクラーヘッドの作動時に弁や感熱分解部の構成部品が、ノズルからの水流によってデフレクターやアームの連結部に係留されてしまう現象である。
【0006】
ロッジメントが発生すると係留された部品が散水の妨げとなり正規の散水パターンが得られずに散水分布に偏りが生じてしまう。そのため従来のフレームヨーク型スプリンクラーヘッドでは様々なロッジメント対策が施されてきた(例えば、特許文献2、3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−123250号公報
【特許文献2】実開昭61−151750号公報
【特許文献3】実開昭63−122452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のフレームヨーク型スプリンクラーヘッド(以下、「スプリンクラーヘッド」という)は、建物内のスプリンクラー設備に用いられる他に、駐車場に設置される泡消火設備の感知ヘッドとしても用いられている。駐車場に設置されたスプリンクラーヘッドは常に自動車の排気ガスに曝されており、排気ガスに含まれる化学成分が銅製のパッキンを劣化させるおそれがある。
【0009】
また、建物内に設置されるスプリンクラー設備においても、環境問題や省資源化への対応として、スプリンクラー設備に用いる消火水を中水や地下水等にする動きがあり、水質の変化・多様化によって従来よりも銅パッキンが劣化しやすい状況にある。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、駐車場での使用や配管内の消火水の性質に影響されにくいシール部材を用いるとともに、ロッジメントを防止可能な作動信頼性に優れたスプリンクラーヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドを提供する。
すなわち、ノズルを有する本体と、ノズル出口から放水方向へ延出されたアームと、アームの先端に設置されたデフレクターと、ノズル出口を閉塞する弁と、デフレクターと弁の間に設置され、常時は弁を閉止位置に保持しており火災の熱により分解作動する感熱分解部とを備えており、弁のノズル出口接触面には樹脂シートが貼付され、弁を保持可能な開口および本体に係合可能な脚を有するハンガーを設けたスプリンクラーヘッドである。
【0012】
これによれば、シール部材を従来の銅パッキンから樹脂シートに替えたことで多様な水質に対しても腐食や劣化を防ぎ長期間シール性能を維持することができる。また、弁にハンガーを設置してハンガーの脚を本体と係合させたことでスプリンクラーヘッドの作動時にノズル内の水の圧力によって弁が開放すると、脚の本体との係合位置を支点として弁体が回転移動する。その回転移動によって弁をノズルの水流から遠ざけながらスプリンクラーヘッドの外部に放出するのでロッジメントを防止することができる。
【0013】
加えて、ハンガーの開口に弁を係合させたことでスプリンクラーヘッドの作動時に弁体とハンガーが一体に動作して、動作の途中で外れないように構成している。また、ハンガーの外縁には脚以外の突出部を設けていない。これによりハンガーがデフレクターや本体のアームに引っかかることを防止している。
【0014】
さらに、弁とハンガーとを弁の樹脂シート貼付面から離間した位置で係合させると、ハンガーを弁体に係合するときにハンガーによって樹脂シートに傷が付くことを防止できる。具体的な構成として、弁の側面に形成した溝とハンガーの開口の縁を差し込んで係合させることができる。
【0015】
開口に段を設けると、ハンガーの内側に形成した開口の縁に弁の溝を差し込むことができる。また、弁の差込み部付近に弁の溝径よりも狭い括れ部を形成すると、弁を開口の内側に保持して弁の移動を阻止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、駐車場での使用や配管内の水の性質に影響されにくいシール部材を用いてシール性能の劣化を防ぐとともに、ロッジメントを防止可能な作動信頼性に優れたスプリンクラーヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のスプリンクラーヘッドの正面図
図2図1のX−X断面図
図3図1のY−Y断面図(感熱分解部は省略)
図4】(a)ハンガーの平面図、(b)ハンガーの側面図、(c)弁を設置したハンガーの側面図
図5】弁を設置する前のハンガーの斜視図
図6】弁を設置した後のハンガーの斜視図
図7】スプリンクラーヘッドの作動時の弁およびハンガーの動作を示す図
図8】スプリンクラーヘッドの散水時の断面図
図9】従来のスプリンクラーヘッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のスプリンクラーヘッドSは本体1、デフレクター2、弁3、ハンガー4、感熱分解部5から構成される。
【0019】
本体1は筒状であり内部にノズル11を有する。本体1の外部は牡ネジ12が形成されており、牡ネジ12は消火設備配管Pの牝ネジと螺合する(図1参照)。ノズル11の内部にはノズルチップ11Aが設置されている。ノズル11から放出される水量はノズルチップ11Aに穿設されたオリフィス11Bの穴径により調整される。
【0020】
ノズル11の出口側の端部には弁座13が形成されている。弁座13はノズル11側に凹んだ凹部として形成されている。
【0021】
本体1には、弁座13の近傍からノズル11から放出される水の放出方向に伸びる2本のアーム14、14が設置されている。アーム14、14は弁座13の近傍から湾曲して伸長してノズル11の中心軸の延長上で連結しており、連結部分はボス15となっている。ボス15の内部はノズル11の中心軸上に形成された牝ネジ16を有する。牝ネジ16にはネジ頭の無い止めネジ17が螺合される。
【0022】
本体1の弁座13付近の外周面には、後述するハンガー4の脚42が係合される段部18が形成されている。段部18は2本のアーム14から離れた位置に設けられている。
【0023】
デフレクター2は、ボス15の先端に設置される。デフレクター2は円盤状をしており、周縁部には波状に連続する爪21が形成されている。
【0024】
弁3は円盤状であり、ノズル11側の面にはシール部材として樹脂シート31が設置されている。本実施形態ではフッ素樹脂性のシートを接着剤で弁体3に貼り付けて弁体3と一体に構成している。
【0025】
弁3の樹脂シート31が貼付された側と反対側の面には感熱分解部5の支柱51が係止されるライン状の溝32が刻設されている。また、弁体3の側面には溝33が刻設されており、溝33はハンガー4の開口41と係合される。
【0026】
ハンガー4は金属の薄板から形成される。ハンガー4は弁3を係止する開口41と、ハンガー4の外縁から延出して形成された脚42を有する。ハンガー4は中間部分の屈曲部43で折り曲げられて段43Aが形成されおり、段43Aにより開口41が形成された開口面44と脚42とに区切られている。
【0027】
図4(a)に示す開口41は略D字型をしており、図中において屈曲部43の縁が直線部分411であり、直線部分411の右側が曲線部分41Aとなっている。直線部分411と曲線部分41Aの間には段43Aが形成されており、直線部分411と曲線部分41Aの間には段差がある。この段43Aから開口41の内側に弁3の溝33を差込むことができる。
【0028】
曲線部分41Aの径は弁体3の溝33の幅Wよりも僅かに大径となっている。また、直線部分411の長さLは曲線部分41Aの径寸法Dよりも大きい。また、段43Aと曲線部分41Aとの間にはテーパー41Bが付けられており、弁3の溝33と開口41の縁がスムーズに係合できるように構成している。
【0029】
さらに、図4(a)や図5に示すように、テーパー41Bと曲線部分41Aの境を若干内側に突出させて括れ部41Cを設けると、曲線部分41Aに弁3を保持させた後に開口41の内側に弁3を保持することができる。括れ部41Cの幅は弁3の溝33の径よりも僅かに狭く形成されており、弁3が括れ部41Cを通過する際には開口部44が弾性変形して弁3が開口41に差し込まれる。
【0030】
脚42は開口面44に対して略90°屈曲して形成されている。脚42は弁3が開口41に差し込まれた後に折り曲げられる。具体的には図4(b)に示すように弁3が開口41に差し込まれる前の段階では、脚42と開口面44とは屈曲部43の段43Aを境にして平行に形成されている。
【0031】
図4(c)は、開口41に弁3を差し込んだ後に脚42を折り曲げた状態である。これにより、図4(b)の状態においては、屈曲部43の段43Aによって脚42と開口面44が段違いになっていることで脚42の下方を通過して弁3の溝33と開口41の縁を係合させることができる。脚42を折り曲げた図4(c)の状態では脚42がストッパーとなり、弁3が開口41から外れないように構成している。
【0032】
脚42の先端には本体1の段部18との係合部45が設けられている。係合部45はT字形状となっており、本体1の段部18と係合する。
【0033】
感熱分解部5は、支柱51、天秤52、レバー53、シリンダー54、プランジャー55、低融点合金56、集熱板57から構成される。感熱分解部5については実公昭42−16553号や、特開平11−123250号に詳細な説明が記載されているのでここでの説明は省略する。
【0034】
続いて、本発明のスプリンクラーヘッドの作動について説明する。
【0035】
スプリンクラーヘッドSは、天井または屋根の付近に敷設された給水配管Pに接続されている。給水配管Pは図示しない給水源と接続されており、その内部には水が充填されている。
【0036】
火災が発生すると、感熱分解部5の低融点合金56が溶融して感熱分解部5が分解作動する。それにより弁3は感熱分解部5の支持から開放され、ノズル11内部に充填されている水の圧力によって弁座13から離れる。
【0037】
弁3と係合しているハンガー4の脚42は、本体1の段部18と係合しており、弁3およびハンガー4は段部18を支点として回転動作をする(図7参照)。この回転動作によってノズル11から放出される水の流れに対して弁3およびハンガー4を遠ざけることができる。
【0038】
弁3とハンガー4は所定の位置まで回転動作すると、段部18と脚42の係合が外れて弁3およびハンガー4は本体1から脱落する。これにより弁3およびハンガー4がデフレクター2やアーム14に係留されずにノズル11から放出される水がデフレクター2に衝突して四方に飛散され、火災が消し止められる。
【0039】
上記実施形態の変形例として、スプリンクラーヘッドの作動時に弁3とハンガー4が一体に動作できれば、弁3とハンガー4の係合構造は先に説明した差込み構造に限らず、嵌合や螺合、接着剤による接合等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記では放水方向が上向きのスプリンクラーヘッドについて説明したが、放水方向が下方や水平方向のスプリンクラーヘッドにも適用可能である。また本願発明は、上記に説明したスプリンクラー設備に設置されるスプリンクラーヘッドの他に、泡消火設備の感知ヘッドや閉鎖型泡ヘッドにも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 本体
11 ノズル
13 弁座
14 アーム
18 段部
2 デフレクター
3 弁
31 樹脂シート
32 溝
33 側面の溝
4 ハンガー
41 開口
42 脚
5 感熱分解部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9