特許第6378935号(P6378935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378935
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   B60H1/00 102P
   B60H1/00 102A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-108858(P2014-108858)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-223903(P2015-223903A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深津 啓太
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091660(JP,A)
【文献】 特開2011−057129(JP,A)
【文献】 特開平09−150617(JP,A)
【文献】 特開2009−113560(JP,A)
【文献】 特開2005−170121(JP,A)
【文献】 特開2002−144844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源としてのエンジンの上方に設けられた車室の前側において車室の内側と外側とを仕切る仕切板に空調用開口部が設けられた車両用の空気調和装置であって、
空調用開口部の車室内側に設けられ、空気を冷却するエバポレータと空気を加熱するヒータが前後方向に収容される空調ケースと、
空調用開口部の車室内側に設けられ、空調ケース内に空気を供給する送風ユニットと、を備え、
空調ケースは、空調用開口部に向かって開口されたケース開口部が設けられたケース本体と、ケース開口部を開閉可能なケースカバーと、を有し、
ケースカバーは、空調用開口部の車室外側からケース本体に対して着脱可能であり、
エバポレータは、ケース本体内において、長手方向が車両の幅方向に向くとともに、短手方向が上下方向に向くように配置され、ケースカバーが取り外された状態で、空調用開口部及びケース開口部を介して前面側が車室外に露出しており、
ヒータは、ケース本体内において、長手方向が車両の幅方向に向くとともに、短手方向が前後方向に向くようにエバポレータの後方に配置され、
エバポレータ及びヒータは、ケース本体に対してケースカバーを取り外してケース開口部を開放した状態で、ケース本体に対して空調用開口部の車室外側から着脱可能である
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
ケースカバーは、ねじ状の締結部材によってケース本体に対して締結され、
締結部材は、車両の前面から後方に向かって挿入することによってケースカバーとケース本体とを締結する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
空調用開口部の車室外側には、車室外の空気を取り込む外気取込口が設けられ、外気取込口から取り込んだ空気を送風ユニットの空気吸入部に案内する外気取込カバーが車両の前面から着脱可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンの上方に運転席を備えた車両に用いられる車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置としては、空気を冷却するエバポレータと空気を加熱するヒータが収容される空調ケースと、空調ケース内に空気を供給する送風ユニットと、がそれぞれ車室内の前側であって、インストルメントパネルの内部に設けられているものが知られている。
【0003】
この車両用空気調和装置は、インストルメントパネルを外して空調ケースや送風ユニットを車室内に露出させた状態とすることで、空調ケースのエバポレータやヒータ、送風ユニットの電動モータ等の構成部品のメンテナンスや交換を可能としている。
【0004】
前記車両用空気調和装置では、構成部品の交換作業の際に、インストルメントパネルを取り外す作業や、空調ケースや送風ユニットから構成部品を取り外す作業など、車室内において行う作業が多数発生する。このため、前記車両用空気調和装置では、構成部品の交換作業が煩雑となる。
【0005】
そこで、エバポレータの交換を車室外から可能とする車両用空気調和装置としては、空調ケース及び送風ユニットを車室内の前側に配置するとともに、車室の内側と外側とを仕切る仕切板に開口部を形成し、開口部を介して車両の前面側からエバポレータを交換可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2553596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、エバポレータが交換可能な車両用空気調和装置では、エバポレータ以外の構成部品が、依然として車室内側からの交換作業となるため、エバポレータ以外の構成部品を交換する作業が容易ではない。
【0008】
本発明の目的とするところは、種々の構成部品を車両の前面側から交換することを可能とし、構成部品を着脱する作業を容易とすることのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、走行用の駆動源としてのエンジンの上方に設けられた車室の前側において車室の内側と外側とを仕切る仕切板に空調用開口部が設けられた車両用の空気調和装置であって、空調用開口部の車室内側に設けられ、空気を冷却するエバポレータと空気を加熱するヒータが前後方向に収容される空調ケースと、空調用開口部の車室内側に設けられ、空調ケース内に空気を供給する送風ユニットと、を備え、空調ケースは、空調用開口部に向かって開口されたケース開口部が設けられたケース本体と、ケース開口部を開閉可能なケースカバーと、を有し、ケースカバーは、空調用開口部の車室外側からケース本体に対して着脱可能であり、エバポレータは、ケース本体内において、長手方向が車両の幅方向に向くとともに、短手方向が上下方向に向くように配置され、ケースカバーが取り外された状態で、空調用開口部及びケース開口部を介して前面側が車室外に露出しており、ヒータは、ケース本体内において、長手方向が車両の幅方向に向くとともに、短手方向が前後方向に向くようにエバポレータの後方に配置され、エバポレータ及びヒータは、ケース本体に対してケースカバーを取り外してケース開口部を開放した状態で、ケース本体に対して空調用開口部の車室外側から着脱可能である。
【0011】
これにより、種々の構成部品が、空調用開口部から車両の前方に露出され、車両の前方から着脱可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、種々の構成部品を空調用開口部から着脱可能とすることができるので、構成部品の交換作業を容易とすることを可能とし、メンテナンスや修理の作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す車両用空気調和装置の要部側面断面図である。
図2】車両用空気調和装置の概略構成図である。
図3】送風ユニット及び空調ユニットの正面図である。
図4】送風ユニット及び空調ユニットの平面図である。
図5】送風ユニット及び空調ユニットの一側面図である。
図6】送風ユニット及び空調ユニットの他側面図である。
図7】送風ユニットの全体斜視図である。
図8】送風ユニットの分解斜視図である。
図9】延出部と凹部との関係を示す上部ファンケース及びファンモータを下方から見た図である。
図10】車両の前面パネルを取り外した状態を示す図である。
図11】外気取込カバーを取り外した状態を示す図である。
図12】エバポレータ及びヒータコアの取り外し方法を示す図である。
図13】本発明の他の実施形態を示す車両用空気調和装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図12は、本発明の一実施形態を示すものである。尚、本実施形態における前後方向、左右方向(幅方向)及び上下方向を表す記載は、本発明の車両用空気調和装置を備えた車両の前後方向、左右方向(幅方向)及び上下方向に対応するものとする。
【0015】
本発明の車両用空気調和装置は、走行用の動力源としてのエンジンEの上方に車室Cが設けられたキャブオーバー型のトラック等の車両に適用されるものである。
【0016】
この車両には、図1に示すように、車室Cの前側において、車室C内と車室C外とを仕切る仕切板1が設けられている。仕切板1には、幅方向に延びる矩形状の空調用開口部1aが設けられている。
【0017】
車両用空気調和装置10は、車室C内の温度を低下させるための冷房運転、車室C内の温度を上昇させるための暖房運転、車室C内の湿度を低下させるための除湿運転を行うものである。
【0018】
車両用空気調和装置10は、図2に示すように、車室C内に供給する空気を冷却及び除湿するために、冷媒を循環させて冷媒の状態を変化させるための冷媒回路11を有している。
【0019】
冷媒回路11には、吸入した冷媒を圧縮して吐出するための圧縮機12と、圧縮機12から吐出された冷媒を凝縮するためのコンデンサ13と、コンデンサ13において凝縮した冷媒を減圧するための膨張弁14と、膨張弁14において減圧した冷媒を蒸発させるためのエバポレータ15と、が銅やステンレス等の金属製の管によって接続されている。
【0020】
また、車両用空気調和装置10は、図2に示すように、車室C内に供給するする空気を加熱するためのヒータとしてのヒータコア16を備えている。ヒータコア16は、フィンとチューブとからなる熱交換器であり、エンジンEを冷却するためのエンジン冷却回路17に接続されている。ヒータコア16は、エンジンEから排出された熱を吸収したエンジン冷却水がチューブ内を流通し、エンジン冷却水と車室C内に供給する空気とを熱交換する。
【0021】
車室C内には、エバポレータ15及びヒータコアが配置されている。一方、車室C外には、圧縮機12、コンデンサ13、膨張弁14が配置されている。このため、冷媒回路11及びエンジン冷却回路17は、空調用開口部1aを介して車室Cの内外に渡って設けられている。
【0022】
車両用空気調和装置10は、空調用開口部1aの車室C外側に設けられ、車室C外の空気を取り込むための外気取込カバー100と、空調用開口部1aの車室C内側に設けられ、車室C外の空気及び車室C内の空気の一方又は両方を吸入して吐出するための送風ユニット200と、空調用開口部1aの車室C内側において送風ユニット200と幅方向に隣接して設けられ、送風ユニット200から送られた空気を冷却又は加熱して車室C内に供給するための空調ユニット300と、を備えている。
【0023】
外気取込カバー100は、図1に示すように、空調用開口部1aを車室C外側から覆うとともに、前方に向かって張り出すように設けられている。外気取込カバー100の下部には、車室C外の空気を取り込むための外気取込口101が設けられている。外気取込口101は、幅方向に延びると共に下方に向けて開口されている。外気取込カバー100の内部には、外気取込口101と送風ユニット200の空気を吸入する部分とを連通する連通路102が幅方向に延びるように設けられている。
【0024】
外気取込カバー100は、仕切板1に着脱可能に取り付けられるカバー本体110と、カバー本体110に着脱自在に取り付けられる取込口形成部材120と、カバー本体110と取込口形成部材120との間に設けられた外気フィルタ130と、を有している。
【0025】
取込口形成部材120は、カバー本体110に対してクリップやねじ等の締結部材によって着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0026】
外気フィルタ130は、車室C外から取り込んだ空気中に含まれる異物や塵埃等を除去するためのものである。外気フィルタ130は、連通路102内を幅方向に延びることによって、連通路102を前後方向に仕切るように配置されている。外気フィルタ130は、カバー本体110に対して取込口形成部材120を取り外すことによって着脱される。
【0027】
外気取込カバー100は、カバー本体110の外周部を仕切板1の空調用開口部1aの縁部にねじ等の締結部材103によって締結することで、仕切板1に着脱可能に取り付けられる。ここで、仕切板1及びカバー本体110は、仕切板1の前面側から後方に向かって締結部材103を挿入することで、互いに締結される。また、カバー本体110の幅方向の一端部には、冷媒回路11及びエンジン冷却回路17が貫通している。さらに、カバー本体110の前方には、冷媒回路11に接続された膨張弁14が配置されている。また、膨張弁14の外周部は、図6に示すように、膨張弁14に対して着脱自在に設けられた弁カバー14aによって覆われている。
【0028】
送風ユニット200は、上部側に設けられた送風機210と、下部側に設けられ、車室C外の空気と車室C内の空気のそれぞれの割合を調整して送風機210に吸入させるための空気吸入部220と、を有している。
【0029】
送風機210は、外周部に複数の翼が設けられた円筒状の羽根車211と、羽根車211を回転させるための駆動部としてのファンモータ212と、羽根車211の外周側を囲む円筒状のファンケース213と、を有している。送風機210は、羽根車211の回転軸が上下方向に向くように配置され、羽根車211の回転軸の上端側にファンモータ212が連結されている。送風機210は、羽根車211の下側の面から空気を吸入し、幅方向の空調ユニット300側に向かって空気を吐出する。
【0030】
ファンケース213は、ファンモータ212が取り付けられる上部ファンケース213aと、空気吸入口(図示せず)が設けられた下部ファンケース213bと、を有している。ファンケース213は、上部ファンケース213aが空調ユニット300側の部材及び車両側の部材に固定されており、下部ファンケース213bが上部ファンケース213aに対して着脱可能である。
【0031】
上部ファンケース213aの後側には、図7及び図8に示すように、幅方向一対の係合孔213cが設けられている。下部ファンケース213bの後側には、一対の係合孔213cのそれぞれに係合可能な一対の係合突起213dが後方に張り出している。下部ファンケース213bは、係合突起213dを係合孔213cに係合させた状態で、図3に示すように、空調ユニット300側から送風ユニット200側に向かって張り出す取付片213eと共に前側を締結部材213fによって締結することによって取り付け位置が保持される。ここで、下部ファンケース213bの前側と取付片213eは、仕切板1の前面側から後方に向かって締結部材213fを挿入することで、互いに締結される。
【0032】
ファンモータ212は、上部ファンケース213aに対して着脱可能に取り付けられる。ファンモータ212の外周部には、図9に示すように、互いに周方向に間隔をおいて設けられ、径方向外側に延びる複数の延出部212aが設けられている。また、上部ファンケース213aの内周部には、図9に示すように、上部ファンケース213aに対してファンモータ212を周方向一方に回転させることで延出部212aが係合可能な凹部212bが設けられている。ファンモータ212は、図9に示すように、上部ファンケース213aの内周部に下方から挿入し、周方向一方に回転させることで、延出部212aを凹部212bに係合させることで取り付けられる。また、ファンモータ212は、上部ファンケース213aに取り付けられた状態で、周方向他方に回転させることで、延出部212aの凹部212bに対する係合が解除され、上部ファンケース213aから取り外される。このとき、ファンモータ212の回転軸には、羽根車211が連結されており、上部ファンケース213aに対してファンモータ212及び羽根車211が着脱される。また、ファンモータ212は、図3に示すように、ファンモータ212と上部ファンケース213aとを締結部材212cによって締結することによって、上部ファンケース213aに対して周方向の回転が規制される。ここで、ファンモータ212と上部ファンケース213aとは、仕切板1の前面側から後方に向かって締結部材212cを挿入することで、互いに締結される。
【0033】
空気吸入部220は、下部ファンケース213bに着脱可能に取り付けられている。空気吸入部220は、上面に設けられた上面開口部221(図8)と、前面側に設けられ、外気取込カバー100の連通路102を流通する空気を吸入するための外気吸入口222(図3)と、後面側に設けられ、車室C内の空気を吸入するための内気吸入口223(図7及び図8)と、を有している。
【0034】
空気吸入部220の内気吸入口223には、送風機210が吸入する車室C内の空気中に含まれる異物や塵埃等を除去するための内気フィルタ223aが設けられている。内気フィルタ223aは、内気吸入口223を覆うように設けられ、空気が通過可能なメッシュ状のフィルタカバー223bに着脱可能に取り付けられている。フィルタカバー223bは、内気吸入口223に着脱可能に取り付けられている。
【0035】
空気吸入部220は、外気吸入口222及び内気吸入口223の開度を調整するためのダンパ機構を有している。ダンパ機構は、電動モータによって駆動されるようになっている。
【0036】
また、空気吸入部220は、送風機210に対して着脱可能に取り付けられている。下部ファンケース213bの後側には、図7及び図8に示すように、幅方向一対の係合孔224が設けられている。空気吸入部220の上部の後側には、図7及び図8に示すように、一対の係合孔224のそれぞれに係合可能な一対の係合突起225が後方に張り出している。空気吸入部220は、係合突起225を係合孔224に係合させた状態で、図3に示すように、前側の上部から上方に向かって延びる幅方向一対の取付片227を上部ファンケース213aに締結部材226によって締結することによって取り付け位置が保持される。ここで、空気吸入部220の前側の上部と上部ファンケース213aとは、仕切板1の前面側から後方に向かって締結部材226を挿入することで、互いに締結される。
【0037】
空調ユニット300は、内部に空気が流通可能な空調ケース310と、空調ケース310内を流通する空気を冷却するためのエバポレータ15と、空調ケース310内の空気を加熱するためのヒータコア16と、空調ケース310内を流通する空気のうちヒータコア16で加熱する空気の風量を調整するエアミックスダンパ320と、を有している。
【0038】
空調ケース310の幅方向の送風ユニット200側の面の前側には、送風ユニット200から送られた空気を流入させるための流入開口(図示せず)が設けられている。空調ケース310の上面の幅方向内側には、車室C内のセンターベント吹出口(図示せず)に連通する一対のセンターベント開口311が幅方向中央部に設けられている。一対のセンターベント開口311の幅方向両側には、車室C内のサイドベント吹出口(図示せず)に連通する一対のサイドベント開口312が設けられている。また、空調ケース310の上部の前側には、車室C内のデフロスタ吹出口(図示せず)に連通する幅方向一対のデフロスタ開口313が前方に臨むように設けられている。さらに、空調ケース310の上部の幅方向両側面には、車室C内のフット吹出口(図示せず)に連通するフット開口314が設けられている。
【0039】
また、空調ケース310の下部側の前面には、図12に示すように、空調ケース310の内面を前方に向かって開放するためのケース開口部310aが設けられている。ケース開口部310aは、空調ケース310に対して着脱可能に取り付けられる1つのケースカバー315によって閉鎖されている。ここで、空調ケース310とケースカバー315とは、図3に示すように、仕切板1の前面側から後方に向かって締結部材316を挿入することで、互いに締結される。
【0040】
空調ケース310内には、前側にエバポレータ15が配置され、エバポレータ15の後側にヒータコア16が配置されている。エバポレータ15は、長手方向が幅方向に向くとともに、短手方向が上下方向に向くように配置されている。また、エバポレータ15には、冷媒回路11の一部とボックス型の膨張弁14が一体に形成されている。ヒータコア16は、長手方向が幅方向に向くとともに、短手方向が略前後方向に向くように配置されている。エバポレータ15及びヒータコア16は、図12に示すように、ケースカバー315を空調ケース310から取り外した状態で、仕切板1の前面側から空調ケース310に対して取り外すとともに、仕切板1の前面側からの取り付けが可能である。
【0041】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、送風ユニット200及び空調ユニット300のそれぞれの構成部品の交換やメンテナンスを次のように行う。
【0042】
まず、作業者は、車両の前面に位置するフロントパネルを取り外して、仕切板1を露出させる。これにより、車両の前面には、図10に示すように、仕切板1の空調用開口部1aの前面を覆う外気取込カバー100が露出した状態となる。
【0043】
次に、作業者は、仕切板1の前面側からドライバー等の工具を用いて締結部材103を外して外気取込カバー100を仕切板1から取り外す。これにより、車両の前面には、図11に示すように、空調用開口部1aが露出するとともに、空調用開口部1aを介して送風ユニット200及び空調ユニット300の前面側が露出する。
【0044】
送風ユニット200において、内気フィルタ223aの清掃や交換を行う場合に、作業者は、仕切板1の前面側から締結部材226を外すとともに、空気吸入部220を前方に移動させて係合孔224と係合突起225との係合を解除し、下部ファンケース213bから空気吸入部220を取り外す。これにより、作業者は、空気吸入部220の内気吸入口223を目視しながらフィルタカバー223bを取り外して内気フィルタ223aの清掃や交換を行うことが可能となる。
【0045】
また、ファンモータ212の修理や交換を行う場合に、作業者は、空気吸入部220を下部ファンケース213bから取り外した状態で、仕切板1の前面側から締結部材103を外すとともに、下部ファンケース213bを前方に移動させて係合孔213cと係合突起213dとの係合を解除し、上部ファンケース213aから下部ファンケース213bを取り外す。上部ファンケース213aから下部ファンケース213bを取り外した後、作業者は、締結部材212cを外すとともに、ファンモータ212の周方向他方に回転させることで、延出部212aと凹部212bとの係合を解除する。これにより、作業者は、ファンモータ212を上部ファンケース213aに対して下方に移動させることによって取り外すことが可能となる。
【0046】
作業者は、取り外したファンモータ212、下部ファンケース213b及び空気吸入部220を取り外したときと逆の順番で、それぞれ仕切板1の前面側から取り付けることによって、送風ユニット200を組み付けることが可能である。
【0047】
また、空調ユニット300において、エバポレータ15及びヒータコア16の修理や交換を行う場合に、作業者は、仕切板1の前面側から締結部材316を外してケースカバー315を取り外す。これにより、車両の前面には、空調用開口部1aを介して空調ケース310の内部が露出する。この状態で作業者は、仕切板1の前面側から空調用開口部1aを介してエバポレータ15及びヒータコア16を、順に取り出すことが可能である。
【0048】
作業者は、取り外したエバポレータ15及びヒータコア16を取り外したときと逆の順番でそれぞれ仕切板1の前面側から取り付け、ケースカバー315を取り付けることによって、空調ユニット300を組み付けることが可能である。
【0049】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、空調用開口部1aの車室C内側に設けられ、空気を冷却するエバポレータ15と空気を加熱するヒータコア16が前後方向に収容される空調ケース310を備え、空調ケース310は、空調用開口部1aに向かって開口されたケース開口部310aが設けられ、ケース開口部310aを開閉可能なケースカバー315と、を有し、ケースカバー315は、空調用開口部1aの車室C外側から着脱可能であり、エバポレータ15及びヒータコア16は、ケースカバー315を取り外してケース開口部310aを開放した状態で、空調ケース310に対して空調用開口部1aの車室C外側から着脱可能である。
【0050】
これにより、空調ケース310内のエバポレータ15及びヒータコア16が空調用開口部1aから着脱可能とすることができるので、エバポレータ15及びヒータコア16の交換作業を容易とすることを可能とし、メンテナンスや修理の作業効率を向上させることが可能となる。
【0051】
また、ケースカバー315は、ねじ状の締結部材316によって空調ケース310に対して締結され、締結部材316は、車両の前面から後方に向かって挿入することによってケースカバー315を空調ケース310に対して締結する。
【0052】
これにより、ケースカバー315を空調ケース310に対して締結する作業が容易となるので、メンテナンスや修理の作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0053】
また、空調用開口部1aの車室C内側に設けられ、空調ケース310内に空気を供給する送風ユニット200を備え、送風ユニット200は、羽根車211を回転させるファンモータ212と、空調ケース310内に供給する空気を吸入する空気吸入部220と、を有し、空気吸入部220は、空調用開口部1aの車室C外側から送風ユニット200に対して着脱可能であり、ファンモータ212は、空気吸入部220を送風ユニット200から取り外した状態で、空調用開口部1aの車室C外側から送風ユニット200に対して着脱可能である。
【0054】
これにより、送風ユニット200の内気フィルタ223a及びファンモータ212が空調用開口部1aから着脱可能とすることができるので、内気フィルタ223a及びファンモータ212の交換作業を容易とすることを可能とし、メンテナンスや修理の作業効率を向上させることが可能となる。
【0055】
また、空気吸入部220は、ねじ状の締結部材226によって送風ユニット200に対して締結され、締結部材226は、車両の前面から後方に向かって挿入することによって送風ユニット200に対して空気吸入部220を締結する。
【0056】
これにより、空気吸入部220を送風機210に対して締結する作業が容易となるので、メンテナンスや修理の作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0057】
また、ファンモータ212は、羽根車211の回転軸を中心に回転させることで、上部ファンケース213aに対して着脱される。
【0058】
これにより、上部ファンケース213aに対してファンモータ212を着脱する作業が容易となるので、メンテナンスや修理の作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0059】
また、空調用開口部1aの車室C外側には、外気取込口101から取り込んだ空気を送風ユニット200の空気吸入部220に案内する外気取込カバー100が車両の前面から着脱可能に設けられている。
【0060】
これにより、外気取込カバー100を車両の前面側から取り外すことによって、送風ユニット200及び空調ユニット300が空調用開口部1aを介して車両の前面から露出させることが可能となるので、メンテナンスや修理の作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0061】
図13は、本発明の他の実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0062】
本実施形態の送風ユニット200の空気吸入部220の外気吸入口222には、外気の臭気の濃度を検出するための臭気検出部222aが設けられている。臭気検出部222aは、所定以上の臭気の濃度を検出して外気吸入口222からの空気の吸入を遮断するために用いられる。臭気検出部222aは、空調ユニット300側に向かって幅方向に張り出すように設けられ、その内部に周知の臭気センサが取り付けられている。
【0063】
また、本実施形態では、カバー本体110の前方に張り出す膨張弁14の張出寸法が小さく、空調用開口部1aの上下方向の開口寸法が小さい。
【0064】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、空調ユニット300においてケースカバー315を取り外す場合に、作業者は、送風ユニット200から空気吸入部220を取り外すとともに、膨張弁14の外周部を覆う弁カバー14aを取り外した後に、仕切板1の前面側から締結部材316を外してケースカバー315を取り外す。これにより、車両の前面には、空調用開口部1aを介して空調ケース310の内部が露出する。この状態で作業者は、仕切板1の前面側から空調用開口部1aを介してエバポレータ15及びヒータコア16を、順に取り出すことが可能である。
【0065】
このように、本実施形態では、空調用開口部1aの車室C内側に設けられ、空気を冷却するエバポレータ15と空気を加熱するヒータコア16が前後方向に収容される空調ケース310を備え、空調ケース310は、空調用開口部1aに向かって開口されたケース開口部310aが設けられ、ケース開口部310aを開閉可能なケースカバー315と、を有し、ケースカバー315は、空調用開口部1aの車室C外側から着脱可能であり、エバポレータ15及びヒータコア16は、空気吸入部220及び弁カバー14aを取り外した後にケースカバー315を取り外してケース開口部310aを開放した状態で、空調ケース310に対して空調用開口部1aの車室C外側から着脱可能である。
【0066】
これにより、空調ケース310内のエバポレータ15及びヒータコア16が空調用開口部1aから着脱可能とすることができるので、エバポレータ15及びヒータコア16の交換作業を容易とすることを可能とし、メンテナンスや修理の作業効率を向上させることが可能となる。
【0067】
尚、前記実施形態における空調用開口部1aの上下方向及び幅方向の開口寸法は、それぞれ大きい方が作業効率の向上に有利であるが、最低限送風ユニット200のファンモータ212、空気吸入部220、ケースカバー315、エバポレータ15及びヒータコア16が取り外すことが可能な上下方向及び幅方向の開口寸法を有するものであればよい。
【0068】
また、前記実施形態では、空調用開口部1aの前方に膨張弁14を配置したものを示したが、これに限られるものではない。膨張弁14を空調用開口部1aの範囲外の仕切板1の前方に配置するようにすれば、ケースカバー315の着脱作業がより容易となるため、空調用開口部1aの上下方向及び幅方向の寸法をより小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…仕切板、1a…空調用開口部、10…車両用空気調和装置、15…エバポレータ、16…ヒータコア、100…外気取込カバー、200…送風ユニット、210…送風機、211…羽根車、212…ファンモータ、213…ファンケース、220…空気吸入部、300…空調ユニット、310…空調ケース、310a…ケース開口部、315…ケースカバー。
図1
図2
図3
図4
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図13