(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378946
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】螺旋膜を備える流体脱気モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 61/00 20060101AFI20180813BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20180813BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20180813BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B01D61/00
B01D19/00 H
B01D19/00 101
B01D63/06
B01D63/00 510
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-130984(P2014-130984)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-9239(P2015-9239A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】14/303,778
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/839,746
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513237308
【氏名又は名称】アイデックス ヘルス アンド サイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クワン リウ
(72)【発明者】
【氏名】カール シムズ
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ ガーナー
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−502315(JP,A)
【文献】
特開2001−164369(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0002573(US,A1)
【文献】
米国特許第03751879(US,A)
【文献】
特開2003−038904(JP,A)
【文献】
特開平07−031804(JP,A)
【文献】
特開平01−310705(JP,A)
【文献】
特開平09−201412(JP,A)
【文献】
特開2000−334250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00
B01D 19/00
B01D 63/00
B01D 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を脱気する脱気モジュールにおいて、該脱気モジュールが、
内室を画定し、ハウジング軸線を有するハウジングであって、排気ポート、並びに、前記液体が前記内室内を通過して流れることを可能にする、それぞれが前記内室に対して開いた流体入口ポート及び流体出口ポートを有するハウジングと、
前記ハウジングに固定され、前記内室内で前記ハウジング軸線に沿って軸線方向に延びる長さを有するセルと、
前記ハウジングの内面と前記セルの外面との間の隙間で前記セルの周りに螺旋状に巻き付けられた管状分離膜であって、前記管状分離膜が管孔を形成し、前記管孔が、前記管孔を排気するために前記排気ポートと流体連通しており、前記管状分離膜が、前記内室と前記管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁を形成する、管状分離膜と、
前記セルの前記外面から延びる複数のセル・ストラットであって、前記管状分離膜を、前記セルの前記外面から離隔した関係に維持し、前記管状分離膜と前記セルの前記外面との間に第1の間隔を半径方向に形成する、複数のセル・ストラットと、
前記ハウジングの前記内面から延びる複数のハウジング・ストラットであって、前記管状分離膜を、前記ハウジングの前記内面から離隔した関係に維持し、前記管状分離膜と前記ハウジングの前記内面との間に第2の間隔を半径方向に形成する、複数のハウジング・ストラットと
を備え、前記ハウジング・ストラットと前記セル・ストラットとが周方向にずれている、脱気モジュール。
【請求項2】
前記ハウジングが、ハウジング・シェルに密封係合されたハウジング・キャップを備える、請求項1に記載された脱気モジュール。
【請求項3】
前記セルが前記ハウジング・キャップから延びる、請求項2に記載された脱気モジュール。
【請求項4】
前記第1及び第2の間隔が50〜500マイクロメートルである、請求項1に記載された脱気モジュール。
【請求項5】
前記複数のセル・ストラットが、前記セルの前記外面に沿って実質的に軸線方向に延びて、それぞれの隣り合うセル・ストラットの組の間、および前記管状分離膜と前記セルの前記外面との間に軸線方向の流路を形成している、請求項1に記載された脱気モジュール。
【請求項6】
前記複数のハウジング・ストラットが、前記ハウジングの前記内面に沿って実質的に軸線方向に延びて、それぞれの隣り合うセル・ストラットの組の間、および前記管状分離膜と前記ハウジングの前記内面との間に軸線方向の流路を形成している、請求項5に記載された脱気モジュール。
【請求項7】
前記セル・ストラットが、前記第1の間隔及び前記セルの外周に比例した周方向間隔だけ周方向に離隔している、請求項6に記載された脱気モジュール。
【請求項8】
前記流体入口ポートが、前記セルを通して前記内室と流体連通している、請求項1に記載された脱気モジュール。
【請求項9】
前記セルが、前記流体入口ポートから前記内室へ前記液体を移動させるためのセル流路を含む、請求項8に記載された脱気モジュール。
【請求項10】
前記セル流路が、前記ハウジング軸線に沿って前記セルの長さを通じて軸線方向に延びる、請求項9に記載された脱気モジュール。
【請求項11】
前記第1の間隔と前記第2の間隔とが実質的に等しい、請求項1に記載された脱気モジュール。
【請求項12】
液体を脱気する脱気システムにおいて、該脱気システムが、液体源、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された脱気モジュール、輸送導管、ポンプ、及び真空源を備え、
前記輸送導管が、前記液体源を前記流体入口ポートに流体結合し、
前記ポンプが、前記液体源からの前記液体を前記脱気モジュールの前記内室内を通過させるようになっており、
前記真空源が、前記排気ポートを通して前記管孔を排気するようになっている、脱気システム。
【請求項13】
前記液体がポンプ給送されて前記管状分離膜と接触するようになっている、請求項12に記載された脱気システム。
【請求項14】
液体を脱気する方法において、該方法が、
(a)請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された脱気モジュールを準備するステップと、
(b)前記液体を記流体入口ポートを通過させて前記内室内の前記管状分離膜に接触させるステップと、
(c)前記排気ポートを通して前記管孔を排気するステップと、
(d)前記液体を前記内室から前記流体出口ポートを通して流出させるステップと
を含む、液体を脱気する方法。
【請求項15】
前記液体を20ml/分を超える流量で前記脱気モジュール内を通過させるステップを含む、請求項14に記載された液体を脱気する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く言えば流体脱気システムに関するものであり、より詳細に言えば、流量の比較的大きい領域で液体から気体を除去する装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
混入気体を液体から除去することは、さまざまな製造プロセス及び/又は分析プロセスにおける重要な課題である。液体からの脱気が広く利用されている実際のプロセスは、液体クロマトグラフィで行われている。このような用途では溶存気体の存在が望ましくないことがあり、溶存気体の存在によりその用途の機能又は正確さが阻害される。
【0003】
例えば、液体クロマトグラフィの場合、クロマトグラフィ移動相中の溶存気体が気泡の形で現れることがあり、それらの気泡によりクロマトグラフィ検出器のノイズ及びドリフトが生じることがある。さらに、気泡の存在により、検出器に誤った吸収信号が生じることもある。
【0004】
クロマトグラフ分析が多様化するにつれて、比較的大きい流体流量(>20ml/分)を使用する用途、特に、合成後の混合溶液から又は天然抽出物から化合物を分離及び精製する用途がより一般的になっている。液体クロマトグラフィにおけるこのような流量は「分取(preparative)」規模の液体クロマトグラフィとして知られており、通常、少なくとも20ml/分の移動相(溶媒)流量を含み、この流量が100〜250ml/分になる場合もある。対照的に、分析規模の液体クロマトグラフィでは一般に0.1〜10ml/分の移動相流量である。分析規模HPLCに対してはさまざまな脱気解決策が整っており、最も一般的な解決策は、フロースルー(flow−through)配置の半透過性(液体不透過性、気体透過性)管を利用することである。この配置では、液体溶媒から管壁を通して気体種を除去することを助ける環境内に置かれた管の管孔(lumen)を通して溶媒移動相が流される。このような脱気システムは、例えば米国特許第3,751,879号、5,340,384号、5,980,742号、6,248,157号及び6,494,938号に記載されている。それらの内容はここに援用される。
【0005】
しかしながら、上記の従来の脱気システムで使用されるこれらの配置は、分取規模の液体クロマトグラフィで利用される溶媒流量を適切に脱気するには適当ではない。溶媒流量の大きい領域で脱気する1つの方法は、複数の管状膜を脱気モジュールとして中空繊維の束として使用する方法であり、場合により100本を超える中空繊維分離膜が1つに束ねられる。中空繊維脱気束配置の例が、米国特許第3,339,341号、3,422,008号及び4,351,092号に記載されている。しかしながら、一般に、このような中空繊維脱気モジュールの製造は難しく、特に、繊維が(膜特性にとっては望ましい)PTFE、Teflon(商標) AFなどの低表面エネルギー材料から製造されていると、繊維をハウジングに入れることが困難である。
【0006】
流量の大きい領域において液体を脱気する他の方法は、脱気モジュール内で平膜(flat membrane)を使用する方法である。しかしながら、このような平膜脱気モジュールの製造は、モジュール内に平膜を密封すること、及びピンホールのない均一な平膜を製造することが難しいことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,751,879号明細書
【特許文献2】米国特許第5,340,384号明細書
【特許文献3】米国特許第5,980,742号明細書
【特許文献4】米国特許第6,248,157号明細書
【特許文献5】米国特許第6,494,938号明細書
【特許文献6】米国特許第3,339,341号明細書
【特許文献7】米国特許第3,422,008号明細書
【特許文献8】米国特許第4,351,092号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、流量の大きな流体の脱気に有効であり、経済的且つ再現可能に製造することのできる脱気モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、流量の比較的大きい液体を経済的に脱気することができる。液体の脱気を実行する脱気モジュールは、脱気モジュール・ハウジングの内室内において螺旋状に巻き付けられた管状分離膜を含む。この巻き付けられた管状膜は、対向する表面間の軸線方向の隙間に螺旋状に配置することができ、この隙間は、膜と、対向する表面のうちの1つ又は複数の表面との間に所定の間隔を有することができる。
【0010】
一具体例によれば、本発明の脱気モジュールはハウジングを有し、ハウジングは、内室を画定し、ハウジング軸線を有するとともに
、排気ポート、並びにそれぞれが内室に対して開いた流体入口ポート及び流体出口ポートを有し、流体入口ポート及び流体出口ポートは液体が内室内に流れることを可能にしている。この脱気モジュールはさらに、ハウジングに固定されセルを有し、セルは、内室内でハウジング軸線に沿って軸線方向に延びる長さを有する。ハウジングの内面とセルの外面との間の隙間で、セルの周りに管状分離膜が螺旋状に巻き付けられている。この膜は管孔を画定し、この管孔は、管孔を排気するために排気ポートと流体連通している。この管状分離膜は、内室と管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁を形成する。この脱気モジュールはさらにハウジング・ストラットを含む。ハウジング・ストラットは、ハウジングの内面から延びて、膜とハウジングの内面とを離隔した関係に維持し、膜とハウジングの内面との間に第
2の間隔が半径方向に形成される。セルの外面からセル・ストラットが延びて、管状分離膜とセルの外面とを離隔した関係に維持し、膜とセルの外面との間に第
1の間隔が半径方向に形成される。
【0011】
他の具体例によれば、本発明の脱気モジュールはハウジングを有し、ハウジングは、内室を画定し、ハウジング軸線を有するとともに、排気ポート、流体入口ポート及び流体出口ポートを有する。この脱気モジュールはさらに、内室内に固定されたセルを有し、セルは、ハウジング軸線に沿って軸線方向に延びて、内室内に、第1の表面及び第1の表面に対して実質的に平行な第2の表面を半径方向の境界とする周方向/軸線方向の(circumaxial)隙間を形成する。管状分離膜は管孔を画定し、この管孔は、管孔を排気するために排気ポートと流体連通している。この管状分離膜は、内室と管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁を形成する。この管状分離膜は、周方向/軸線方向の隙間で、セルの周りに螺旋状に巻き付けられており、この管状分離膜は、管状分離膜と第1の表面との間の第1の間隔及び管状分離膜と第2の表面との間の第2の間隔を維持するように支持される。第1及び第2の間隔は50〜500マイクロメートルであることが好ましい。
【0012】
本発明の脱気システムは、液体源および脱気モジュールを含む。ハウジングは、内室を画定し、ハウジング軸線を有し、排気ポート、流体入口ポート及び流体出口ポートを有する。脱気モジュールはさらに、内室内に固定されたセルを含み、セルは、ハウジング軸線に沿って軸線方向に延びて、内室内に、ハウジング及びセルを半径方向の境界とする周方向/軸線方向の隙間を形成する。管状分離膜は、管孔を画定し、この管孔は、管孔を排気するために排気ポートと流体連通している。この管状分離膜は、内室と管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁を形成する。この管状分離膜は、周方向/軸線方向の隙間で、セルの周りに螺旋状に巻き付けられており、この管状分離膜は、管状分離膜とハウジングの内面との間の第
2の間隔及び管状分離膜とセルの外面との間の第
1の間隔を維持するように支持される。この脱気システムはさらに、液体源を流体入口ポートに流体結合する輸送導管と、液体源からの液体を脱気モジュールの内室内に通過させるポンプとを含む。この脱気システムは、排気ポートを通して管孔を排気する真空源を備える。
【0013】
液体を脱気する方法は、ハウジングを有する脱気モジュールを準備するステップを含む。ハウジングは、内室を画定し、ハウジング軸線を有するとともに、排気ポート、流体入口ポート及び流体出口ポートを有する。脱気モジュールはさらに、内室内に固定されたセルを含み、セルは、ハウジング軸線に沿って軸線方向に延びて、内室内に、ハウジング及びセルを半径方向の境界とする周方向/軸線方向の隙間を形成する。管状分離膜は、管孔を画定し、この管孔は、管孔を排気するために排気ポートと流体連通している。この管状分離膜は、内室と管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁を形成する。この管状分離膜は、周方向/軸線方向の隙間で、セルの周りに螺旋状に巻き付けられており、この管状分離膜は、管状分離膜と第1の表面との間の第1の間隔及び管状分離膜と第2の表面との間の第2の間隔を維持するように支持されている。この脱気方法はさらに、液体を流体入口ポートを通過して内室内の管状分離膜に接触させるステップと、排気ポートを通して管孔を排気するステップとを含む。液体は次いで、流体出口ポートを通して内室から流出される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明による流体脱気モジュールの略断面図。
【
図3】
図2の流体脱気モジュールの一部分の略透視図。
【
図4】
図2の流体脱気モジュールの一部分の略透視。
【
図5】
図2の流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図6】
図2の流体脱気モジュールの一部分の略上面断面図。
【
図7】
図2の流体脱気モジュールの一部分の略上面断面図。
【
図8】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図9】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図10】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図11】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図12】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【
図13】本発明による流体脱気モジュールの一部分の略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の脱気モジュール10は、例えば、クロマトグラフィ・カラム内で分析される移動相を脱気するために液体クロマトグラフィ装置に組み込むことができる。しかしながら、脱気モジュール10は、安定した高品質の結果を達成し維持するために脱気された液体を用いるさまざまな他の液体供給用途に使用できる。他の用途例には、例えばインクジェット・プリンタなどで使用されるインク送りシステム、半導体ウェーハ製造プロセス及び製薬などがある。
【0016】
脱気モジュール10の一具体例は、脱気すべき流体が半透過性分離膜16と接触できる内室14を画定するハウジング12を含む。好ましい例では、分離膜16は、1本又は数本の管の形態をとり、内室14とそれぞれの管状分離膜16の管孔との間に気体透過性かつ液体不透過性の障壁が形成される。このような分離膜の一例は、DuPontから入手可能なTeflon(商標)AFから形成された膜などの非多孔性フッ化コポリマーである。この分離膜は、ある種の気体種に対して既知の透過速度及び既知の選択性値を有するため特定の用途に適していることがある。代替の分離膜材料としては、PTFE、ePTFE、PVDF、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン並びに表面がフッ素化されたポリプロピレン及びポリメチルペンテンから製造された細孔材料が含まれる。しかしながら、管状分離膜16は、脱気用途で利用される気体透過性かつ液体不透過性の障壁を有するさまざまな材料から製造できることを理解すべきである。
【0017】
ハウジング12は、単片体又は多片体として形成でき、
図1Aに示された例は、ハウジング・シェル18と、キャップ境界面22においてハウジング・シェル18と密封係合したハウジング・キャップ20とを含む。ハウジング・キャップ20とハウジング・シェル18との間の密封係合を強化するため、ハウジング・キャップ20のガスケット座26にゴムOリングなどのガスケット24を配置して、ハウジング・キャップ20とハウジング・シェル18とを密封状態になるように押し付けることができる。内室14内を通過する移動相の流れとの望ましくない相互作用を回避するため、ハウジング12は、比較的に頑丈で不活性の1種又は数種の材料から製造されることが好ましい。例としてハウジング12は、ステンレス鋼若しくは他の金属、又は合金、或いはさまざまなポリマー材料から製造できる。
【0018】
管状分離膜16をその周りに巻き付けることができ、並びに/又はその中を通して内室14内へ及び/若しくは内室14外へ流体を分配できる物体として、内室14内にセル30を配置することができる。内室14内の所望の位置に配置するため、セル30は、ハウジング12に固定することができる。ある例では、セル30は、ハウジング・キャップ20と一体に形成されるか、又はハウジング・キャップ20に固定される。この配置が
図1Aに示されている。通常、セル30は内室14内においてハウジング軸線32に沿って軸線方向に配置できる。
【0019】
図1A及び
図1Bに示された例では、ハウジング12が、対応するそれぞれの真空継手44を受け入れる第1の排気ポート40及び第2の排気ポート42を含む。真空継手44は、分離膜管16の対応するそれぞれの管孔を、分離膜管16の管孔を排気するための真空源に流体結合する。したがって、動作時には、気体が内室14内の流体から分離膜16の管状壁を通り抜けて拡散するための駆動力を発生させるため、分離膜管16を所定の程度に排気することができる。管状分離膜16の壁を通り抜けて拡散した気体種は、対応するそれぞれの第1及び第2の排気ポート40、42を通して除去することができる。この「真空脱気」の概念は当技術分野においてよく知られているが、通常、管状分離膜16の管孔を排気すること、及び気体を含む液体を、管状分離膜16によって画定された膜壁の外面と接触させることを含む前述の配置では使用されない。このような配置は「アウトサイドイン(outside−in)」真空脱気と呼ばれることがある。
【0020】
これに加えて又はこうする代わりに、拡散した気体を、スイープ(sweep)ガスを使用して管状分離膜16の管孔を排気することもできる。特定の例では、拡散された気体を排気ポート40を通してスイープするため、及び管状分離膜16の管孔内での凝縮を防ぐために、環境空気が管孔内に引き込まれるように、ポート42のところに空気抜きが設けられる。
【0021】
ハウジング12はさらに、流体を内室14に流入させ内室14から流出させるための対応するそれぞれの流体継手ユニット54を受け入れる流体入口ポート50及び流体出口ポート52を含む。本明細書の目的上、用語「流体」は、気体を含む液体であって、1種又は数種の気体種の濃度を閾値よりも低く維持したい液体を含むことができる。分離膜16の管孔内の環境のターゲット気体種の分圧(1つ又は複数)が、液体中のターゲット気体種の分圧(1つ又は複数)よりも低いときに、この1種又は数種の気体種は、管状分離膜16との機能可能な接触を介して液体から部分的に又は完全に除去することができる。いくつかの例では、このような環境が、真空脱気の十分に理解された原理に従って、管孔を所定の程度に排気することによって達成される。一例では、液体が、方向矢印56に沿って流体入口ポート50を通過し、セル30内の分配流路58を通って内室14に入る。流体入口ポート50と流体出口ポート52との間を流体が流れることにより、セル30の長さ「L」に沿って分離膜16との流体接触が生じる。後により詳細に説明するが、分離膜16をセル30とハウジング12との間にこのように配置することにより、流体入口ポート50を通過した20ml/分を超える液体流量が、流体出口ポート52から内室14を出るときまでに、十分に脱気できる程度に、脱気効率の向上が促進される。
【0022】
分離膜管16A、16Bは、セル30とハウジング12との間の空間内においてセル30の周りに螺旋状に巻き付けることができる。分離膜16は、隙間60として画定することのできるセル30の外面31とハウジング12の内面13との間に配置されることが好ましい。他の例では、隙間60は、分離膜16が配置された内室14内の実質的に対向する表面間の空間を含む。本発明の観点は、隙間60の寸法の制御、特にセル30の外面31と分離膜16の間の間隔(第1の間隔66)及びハウジング12の内面13と分離膜16との間の間隔(第2の間隔68)の寸法の制御である。隙間60及びこのような分離間隔の制御により、フロースルー脱気モジュール内での脱気能力が劇的に向上できることを本出願人は見出した。
【0023】
管状分離膜16の隙間60への正確な配置を助けるため、セル30の外面31から延びた1つ又は複数のセル・ストラット62により、管状分離膜16を外面31から離隔した関係に支持及び/又は維持することができ、ハウジング12の内面13から延びた1つ又は複数のハウジング・ストラット64により、内面13と管状分離膜16の間の少なくとも1つの所定の第2の間隔68を支持及び/又は維持することができる。1つ又は複数のセル・ストラットは、セル30の外面31から離隔した関係で管状分離膜16を支持して第1の間隔66を定めることができ、ハウジング・ストラット64は、ハウジング12の内面13と分離膜16の間の間隔を第2の間隔68として維持する役目を果たすことができる。ある例では、セル・ストラット62がセル30に結合され、第1の間隔66に実質的に等しい1つ又は複数の寸法だけ外面31から延びる。ある例では、ハウジング・ストラット64がハウジング12に結合され、第2の間隔68に実質的に等しい寸法だけ内面13から延びる。
【0024】
脱気効率を高めるためには、気体移動抵抗を低減させなければならない。膜式真空脱気用途では、移動抵抗は、主に液相及び膜に由来する。液相移動抵抗を低減させるためには、隙間60(溶媒深さ)を小さくする。しかしながら、隙間60がより小さいと、内室14内を通過する移動相の流動抵抗が増大する。隙間60がより小さいと、製造が難しくなることもある。したがって、第1及び第2の間隔66、68を十分に維持して内室14内を通過する移動相の流れの圧力降下の増大を制限しながら、隙間60のサイズを低減させる努力を均衡させることが好ましい。他の詳細な構成の使用により、例えば液相の局所混合などによって、液相抵抗の低減を助けることができる。
【0025】
内室14に沿った圧力降下を計算するため、ダルシー・ワイズバッハの式(Darcy−Weisbach equation)
【数1】
を使用する。
【0026】
上式で、
Δ
p=摩擦による圧力降下
L=内室14の長さ
D=内室14の水力直径
ρ=流体の密度
V=流れの平均速度
f
D=ダルシーの摩擦係数
である。
【0027】
流れパターンの環形成(D=D
1−D
2=2l)(D
1は大きい方の円筒の内径、D
2は小さい方の円筒の外径、lは隙間である)を考慮すると、圧力降下は、
【数2】
となる。大部分の流れが分類される層流に関しては
【数3】
であり、圧力降下は、
【数4】
となる。したがって、圧力降下は隙間60の3乗に反比例する。隙間60に対して適当な寸法は、分離膜16とセル30の外面31との間の半径方向の間隔及び分離膜16とハウジング12の内面13との間の半径方向の間隔であるそれぞれ第1及び第2の間隔66、68から導き出すことができることを本出願人は確認した。第1及び第2の間隔66、68は、セル・ストラット62及びハウジング・ストラット64のそれぞれの高さ寸法63、65によって制御できる。セル・ストラット62のストラット高さ63は5〜500マイクロメートル(2〜20ミル)にできることを本出願人は確認した。同様に、ハウジング・ストラット64のストラット高さ65は50〜500マイクロメートル(2〜20ミル)にできる。ストラット高さ63、65は、対応するそれぞれの第1及び第2の間隔66、68に対して正確に等しくなくてもよいが、セル・ストラット及びハウジング・ストラット62、64の存在及び寸法により、気体移動抵抗の低減と内室14内の圧力降下の増大との間のバランスを達成する第1及び第2の間隔66、68の好ましい半径方向寸法が提供される。したがって、第1及び第2の間隔66、68は、少なくとも約125マイクロメートル(5ミル)、好ましくは50〜500マイクロメートル(約2〜20ミル)の半径方向寸法を有する。
【0028】
隙間60は、内室14内において管状分離膜16が配置された流路又は他の流れ領域として定義できることを理解すべきである。特に、隙間16は、セル30の外面31とハウジング12の内面13との間だけに限定されない。管状分離膜16と流体とを接触させるための流路を設けるために内室14内に他の構造体が存在することが考えられる。
【0029】
セル・ストラット62及びハウジング・ストラット64は、管状分離膜16と半径方向に隣接する構造体との間の第1及び第2の間隔66、68を維持するために有効なさまざまな構造体の例である。このような半径方向の間隔により、管状分離膜16の半径方向内側および半径方向外側の両方に流体流路が提供される。このような流路の存在は、分離膜への気体の液相移動抵抗を低減させる働きをし、較正された間隔寸法により、有効な圧力降下パラメータの範囲内でこのような効果が最大となる。
【0030】
いくつかの例では、セル・ストラット62及びハウジング・ストラット64が、軸線方向の流路70、72を画定するために軸線方向に整列した一群を形成する。軸線方向の流路70、72は、脱気モジュール10の大量輸送特性の助けになることを本出願人は確認した。すなわち、セル・ストラット62の群は互いに軸線方向に整列することができ、及び/又はハウジング・ストラット64の群は互いに軸線方向に整列することができる。したがって、セル・ストラット62及びハウジング・ストラット64は、内室14内を通過する移動相の流路を画定する役目と、管状分離膜16から半径方向の所望の第1及び第2の間隔66、68を維持する役目の両方を果たす。
【0031】
ある例では、内室14内で管状分離膜16が螺旋状に巻き付けられる。
図1Aに示された例では、管状分離膜16が、第1の排気ポート40と第2の排気ポート42との間を連続的に延在し、当接した構成で螺旋状に巻き付けられ、巻き付けられた管コイルは、長さ「L」に沿って軸線方向に当接して隣り合う関係にある。本発明では、管状分離膜16の他の巻き付けパターン及び配置も企図されており、その場合の代替配置例が他の図面に示されている。
【0032】
他の例が
図2〜
図7に示されている。この例では、脱気モジュール110は、ハウジング・シェル118およびハウジング・キャップ120を有するハウジング112を含む。この例では、ハウジング・キャップ120は、継手ユニット144を受け入れるように構成された第1及び第2の排気ポート140、142、並びに流体継手ユニット154を受け取るように構成された流体入口ポート及び流体出口ポート150、152を含む。セル130の周り、特にセル130から半径方向外側へ延びるセル・ストラット162の周りに、管状分離膜116が螺旋状に巻き付けられる。
図4は、ハウジング・キャップ120から軸線方向に延在するセル130の分離図である。セル・ストラット162が、セル130の外面131で外周に沿って互いに実質的に平行に、実質的に軸線方向に延びている。複数のセル・ストラット162により、例えば50〜500マイクロメートルの所望の第1の間隔166を維持することの助けとなることを本出願人は確認した。したがって、セル・ストラット162を、第1の間隔166、セル130の外周及び分離膜116の物理特性に比例した周方向の間隔180だけ周方向に離隔させることができる。
【0033】
図5は、ハウジング・シェル118から半径方向内側へ延びるハウジング・ストラット164を示す、ハウジング112の分離断面図である。この例では、ハウジング・ストラット164は、実質的に平行に延び、且つハウジング・シェル118に沿って実質的に軸線方向に延びて、管状分離膜116とハウジング・シェル118との間の第2の間隔168を形成する。セル・ストラット162と同様に、複数のハウジング・ストラット164も所望の第2の間隔168の維持を助けることを本出願人は確認した。ハウジング・シェル118の周りのハウジング・ストラット164の周方向間隔182も、セル・ストラット162の周方向間隔180と同様に決定することができる。
【0034】
図6は、脱気モジュール110の端面透視図を示す。内室114内のセル・ストラット162とハウジング・ストラット164との間に分離膜116が配置されている。
図7は、螺旋状に巻き付けられた管状分離膜118が取り外された同様の透視図を示す。
図7は、ある例では、所望の第1及び第2の間隔166、168を適切に維持する隙間160内の位置に分離膜116を最もよく保持するため、ハウジング・ストラット164とセル・ストラット162とが周方向にずれていることを示している。しかしながら、セル・ストラット162及びハウジング・ストラット164の他の配置及び他の相対配置も、本発明の脱気モジュールに有用であると考えられる。
【0035】
図8〜
図13は、本発明の脱気モジュールの代替例の略断面図である。脱気モジュール210は、ハウジング・シェル218に形成された流体入口ポート250及び流体出口ポート252、並びにハウジング・キャップ220に形成された第1の排気ポート240を含む。流体入口ポート250により、流体継手ユニット254を通過した流体が、方向矢印256に沿ってセル230のセル流路233内に移動されることが可能になり、この流体は、内室214内へ分配されて、螺旋状に巻き付けられた管状分離部材216と接触させられる。この例では、セル230の周りに単一の分離膜管216が螺旋状に巻き付けられ、分離膜管216の端部217が密封され、排気ポート240を通した真空源との連通によって管状膜216の管孔から十分に排気することができる。
【0036】
図9に示された脱気モジュール310は脱気モジュール210に似ているが、流体入口ポート350、流体出口ポート352及び第1の排気ポート340がそれぞれハウジング312のハウジング・キャップ320に配置されている。
【0037】
図10に示された脱気モジュール410は脱気モジュール10に似ているが、2本の別個の管状分離膜416が、軸線方向に接した関係で螺旋状に巻き付けられており、それぞれの端部417A、417Bが閉じられている点が異なる。
【0038】
図11に示された脱気モジュール510は管状分離膜516の任意選択の配置を示しており、管状分離膜516が螺旋状に巻き付けられているが、軸線方向に接した関係にはない。むしろ、少なくともいくつかのコイルが軸線方向に間隔を置いて配置され、隣接するコイル間に軸線方向の間隔519を設けている。ある例では、このような軸線方向の間隔519により膜に対する気体種の移動抵抗がさらに低減することを本出願人は確認した。この移動抵抗の低減は、接触に使われる膜表面積が増えること、管状分離膜516の軸線方向に離隔したコイル巻きパターンに起因する流体流れの混合効果によるようであると考えられる。
【0039】
他の分離膜コイル巻きパターン配置例が
図12に示されている。この配置では、分離部材616は、軸線方向に離隔するとともに、隣接コイルに対して半径方向に変位した複数のコイルを有することができる。このような配置により、液相からの気体種の移動抵抗がさらに低減できる。
【0040】
図13は、密封された端部717を有する単一の分離膜管716を備える他の代替例の脱気モジュール710を示す。
【0041】
本発明の脱気システム802の例が
図14に示されている。脱気システム802は、液体源804及び脱気モジュール810を含む。液体源804から液体を輸送導管806を通って流すためにポンプ808が備えられている。移送導管806は、液体源804を脱気モジュール810の流体入口850に流体結合している。ポンプ808により、液体源804からの液体が脱気モジュール810の内室内に通させることが好ましい。脱気システム802はさらに、脱気モジュール810の排気ポート840を通して内室内の管状分離膜の管孔を排気する真空源845を含むことが好ましい。脱気された液体は、脱気モジュール810から、流体出口ポート852を通って、クロマトグラフィ・カラム、液体分析装置、インク送り機構などの機能システムへと流出する。液体は、ポンプ給送されて、20ml/分を超える流量で脱気モジュール810内の管状膜と接触することが好ましい。
【0042】
本明細書では、特許法に適用し、並びに新規の原理を適用し必要に応じて本発明の実施例を構築し使用するために必要な情報を当業者に提供するために、本発明をかなり詳細に説明した。しかしながら、本発明の要旨を逸脱することなくさまざまな変更を加えることができることを理解すべきである。