特許第6378947号(P6378947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378947
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 16/00 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   B25D16/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-131662(P2014-131662)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-7688(P2016-7688A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02418635(GB,A)
【文献】 特開平09−168978(JP,A)
【文献】 特開昭61−197170(JP,A)
【文献】 特開2010−012557(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1413401(EP,A1)
【文献】 特開2004−167638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00−17/32
B23B 45/16
F16H 1/02
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、駆動ギヤと、シャフトに固定されて前記駆動ギヤと噛合する従動ギヤと、ピストンシリンダを有する打撃機構とを備え、前記従動ギヤに、回転運動をアームの往復運動に変換する変換部材を備えた前記シャフトの端部が固定されて、前記アームが、前記ピストンシリンダに設けられた二股部に連結軸を介して連結された電動工具であって、
前記ハウジング側に、前記従動ギヤの回転中心と同軸の軸部を設ける一方、前記従動ギヤの端面に前記軸部の端部が同軸で挿入する凹部を形成して、前記従動ギヤを前記軸部により前記凹部内に収容した軸受を介して回転可能に保持すると共に、前記従動ギヤの歯部を前記軸受の外側にオーバーラップさせて、
前記二股部の間に、コ字状に折曲形成され、前記二股部の対向面にそれぞれ当接する一対の側板と、前記一対の側板を連結する底板とからなり、前記一対の側板に、前記連結軸が貫通する透孔をそれぞれ形成して前記アームと前記二股部との接触を防止するためのガイドプレートが設けられて、各前記透孔は、前記側板と前記底板との境目まで達するように前記底板寄りに形成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記軸部は、前記ハウジング側に固定されたピンであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記駆動ギヤはモータの出力軸に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記シャフトに、最終出力軸への回転伝達部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤを用いてモータの回転を出力部に伝達するハンマドリル等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の電動工具は、ハウジング内に、モータと、モータの駆動で動作する打撃機構等の出力部とを収容し、モータの出力軸の回転をギヤを用いて出力部に伝達するようになっている。例えば特許文献1に開示されるハンマドリルでは、ハウジング内に、前向きに収容したモータと、その出力軸の回転をギヤを介して中間軸に伝達し、中間軸から最終出力軸であるツールホルダが保持する先端工具に回転や打撃を伝達可能となっている。図3は特許文献1記載のものと同様のハンマドリルを示す一部縦断面図で、このハンマドリル50では、ハウジング51内に前向きに収容したモータ52の出力軸53と平行に中間軸54を配置し、中間軸54の上方に、先端工具Tが装着可能なツールホルダ56を含む打撃機構55を設けている。ハウジング51内には、出力軸53を保持するインナハウジング57が設けられて、中間軸54は、後端がインナハウジング57にボールベアリング58を介して、前端がハウジング51の前部にボールベアリング59を介してそれぞれ軸支されている。
【0003】
中間軸54の後部には、出力軸53の先端に設けた駆動ギヤとしての第1ギヤ60と噛合する従動ギヤとしての第2ギヤ61が設けられ、その前方には、スワッシュベアリング63によって回転運動をアーム64の前後運動に変換するボススリーブ62が設けられている。中間軸54の前部には、ツールホルダ56に設けた第4ギヤ66と噛合する第3ギヤ65が設けられ、第3ギヤ65とボススリーブ62との間には、ボススリーブ62に係脱可能なクラッチ67が設けられている。
そして、打撃機構55は、アーム64に後端が連結されてツールホルダ56内を前後移動可能なピストンシリンダ68と、ピストンシリンダ68内で連動する打撃子69と、打撃子69の前方でツールホルダ56内に収容される中間子70とを備えている。
【0004】
よって、モータ52の出力軸53が回転すると、第1ギヤ60と噛合する第2ギヤ61を介して中間軸54が回転し、第3ギヤ65から第4ギヤ66を介してツールホルダ56へ回転が伝達される。一方、図示しない切替レバーでクラッチ67をボススリーブ62と係合させると、中間軸54の回転がクラッチ67を介してボススリーブ62に伝わり、アーム64を往復動させてピストンシリンダ68を前後動させ、ピストンシリンダ68内の打撃子69を連動させてその前方の中間子70を介して先端工具Tを打撃する。クラッチ67の位置の切替により、先端工具Tが回転のみ行うドリルモードと、先端工具Tが回転に加えて打撃されるハンマドリルモードとが選択可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−167638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動工具には、常にコンパクト化の要請があるものの、このハンマドリル50においては、従動側のシャフトである中間軸54を軸支するボールベアリング58は、インナハウジング57で保持されているため、第2ギヤ61はボールベアリング58の前方に隣接させて設けざるを得ない。すなわち、中間軸54の後端ではボールベアリング58と第2ギヤ61とを後方から順番に配置することになるため、中間軸54の短縮化は難しく、全体のコンパクトの達成は困難となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、従動側のシャフトを短縮化して全体のコンパクト化が達成可能な電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ハウジング内に、駆動ギヤと、シャフトに固定されて駆動ギヤと噛合する従動ギヤと、ピストンシリンダを有する打撃機構とを備え、従動ギヤに、回転運動をアームの往復運動に変換する変換部材を備えたシャフトの端部が固定されて、アームが、ピストンシリンダに設けられた二股部に連結軸を介して連結された電動工具であって、ハウジング側に、従動ギヤの回転中心と同軸の軸部を設ける一方、従動ギヤの端面に軸部の端部が同軸で挿入する凹部を形成して、従動ギヤを軸部により凹部内に収容した軸受を介して回転可能に保持すると共に、従動ギヤの歯部を軸受の外側にオーバーラップさせて、二股部の間に、コ字状に折曲形成され、二股部の対向面にそれぞれ当接する一対の側板と、一対の側板を連結する底板とからなり、一対の側板に、連結軸が貫通する透孔をそれぞれ形成してアームと二股部との接触を防止するためのガイドプレートが設けられて、各透孔は、側板と底板との境目まで達するように底板寄りに形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、軸部を、ハウジング側に固定されたピンとしたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、駆動ギヤはモータの出力軸に設けられることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、シャフトに、最終出力軸への回転伝達部材が設けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、従動ギヤの凹部に軸部で支持される軸受を収容して歯部を軸受の外側にオーバーラップさせているので、従動側のシャフトを短縮化して全体のコンパクト化が達成可能となる。
また、ガイドプレートの採用により、二股部を含むピストンシリンダの全長が短くなって全体のコンパクト化に繋がる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ピンによって軸部が簡単に形成可能となる。
請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、シャフトをモータの出力軸と最終出力軸との間に配置される中間軸として変換部材から最終出力軸に打撃動作を伝達する打撃機構を備えた電動工具において、効果的なコンパクト化が可能となる。
請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、回転伝達部材から最終出力軸に回転動作を伝達するハンマドリル等の電動工具において効果的なコンパクト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ハンマドリルの一部縦断面図である。
図2】ガイドプレートの斜視図である。
図3】従来のハンマドリルの一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動工具の一例であるハンマドリルの一部縦断面図で、ハンマドリル1は、モータ3を前向き(図1の左側を前方とする。)に収容したモータハウジング2の前方に、打撃機構6を収容した前ハウジング5を後方から図示しない複数のボルトで連結し、モータハウジング2の後方に、スイッチを収容した図示しないハンドルを連結してなる。モータ3の出力軸4には、モータ冷却用のファン7が固着されて、先端には駆動ギヤとしての第1ギヤ8が形成されている。
前ハウジング5の内部には、前方へ突出する筒状部10を備えたインナハウジング9が保持されて、モータ3の出力軸4は、ボールベアリング11を介してインナハウジング9に保持されて前ハウジング5内に突出している。
【0012】
また、前ハウジング5内において、出力軸4の下方側には、シャフトとしての中間軸12が出力軸4と平行に設けられている。この中間軸12は、前端がボールベアリング13を介して前ハウジング5に支持される一方、後端には、出力軸4の第1ギヤ8と噛合する従動ギヤとしての第2ギヤ14が固定されて、この第2ギヤ14が、インナハウジング9に設けた軸部としてのピン15により、軸受としてのボールベアリング16を介して支持されている。詳しくは、インナハウジング9に中間軸12と同軸で圧入したピン15の先端を、第2ギヤ14の後端面に同軸で形成した凹部17内に挿入した状態で、ボールベアリング16の内輪16aをピン15の外周面に、外輪16bを凹部17の内周面にそれぞれ固定することで、ボールベアリング16を凹部17内に収容した状態となっている。よって、第2ギヤ14の後端面は、インナハウジング9に近接し、歯部14aはボールベアリング16の外側でボールベアリング16にオーバーラップする位置に形成されている。
【0013】
さらに、中間軸12の前部には、回転伝達部材としての第3ギヤ18が形成され、第3ギヤ18と第2ギヤ14との間には、変換部材としてのボススリーブ19が回転可能に設けられて、ボススリーブ19の外周には、軸心から傾斜したスワッシュベアリング20を介してアーム21が上向きに設けられて筒状部10内に突出している。第3ギヤ18には、クラッチ22が、中間軸12と一体回転且つ前後移動可能に設けられている。このクラッチ22には、前ハウジング5に設けられた図示しない切替レバーが係合しており、切替レバーの回転操作によりクラッチ22が前後移動して、ボススリーブ19と係合する後退位置と、ボススリーブ19から離間する前方位置とに切替可能となっている。
【0014】
そして、打撃機構6は、中間軸12の上方で、前端に先端工具Tを装着可能な最終出力軸としての筒状のツールホルダ23を備えている。このツールホルダ23は、前側部分が前ハウジング5内でボールベアリング24に軸支され、後端がインナハウジング9の筒状部10の先端に保持されるメタル軸受25によって軸支され、中間部外周に設けた第4ギヤ26を、中間軸12の第3ギヤ18に噛合させている。また、ツールホルダ23の後部には、アーム21に連結軸27によって連結されたピストンシリンダ28が前後移動可能に収容されている。このピストンシリンダ28は、後端面から後方へ突設した二股部29を左右から貫通する連結軸27に、アーム21を下方から貫通させることでアーム21と連結されるが、この二股部29の間には、アーム21と二股部29との接触を防止するために、ガイドプレート30が設けられている。
【0015】
このガイドプレート30は、図2に示すように、コ字状に折曲形成された金属板で、二股部29の対向面にそれぞれ当接する左右の側板31,31と、両側板31,31を連結する底板32とからなり、左右の側板31,31に、連結軸27が貫通する透孔33,33を形成したものであるが、ここでの透孔33は、側板31と底板32との境目まで達するように底板32寄り(図1の組み付け状態では前方寄り)に形成されている。よって、この透孔33に合わせた位置で二股部29に連結軸27を貫通させることで、連結軸27とピストンシリンダ28の後端面との距離が近くなり、二股部29を含むピストンシリンダ28の全長が短くなって全体のコンパクト化に繋がっている。
【0016】
一方、ピストンシリンダ28の内部には、空気室34を介して打撃子35が前後移動可能に収容されている。打撃子35の前方でツールホルダ23内には、中間子36が設けられて、ツールホルダ23の前端に装着された先端工具Tの後端に当接可能となっている。37は、ツールホルダ23の前端に設けられて先端工具Tを抜け止めする操作スリーブである。
【0017】
以上の如く構成されたハンマドリル1においては、ハンドルに設けたトリガを押し込み操作してスイッチをON動作させると、モータ3が駆動して出力軸4が回転し、第1ギヤ8が噛合する第2ギヤ14を介して中間軸12を回転させる。このとき切替レバーの操作によってクラッチ22の前進位置を選択していれば、中間軸12の回転は第3ギヤ18及び第4ギヤ26を介してツールホルダ23に伝わり、ツールホルダ23が保持する先端工具Tを回転させるドリルモードとなる。また、クラッチ22の後退位置を選択していれば、中間軸12の回転はボススリーブ19にも伝わり、スワッシュベアリング20を介してアーム21の前後への揺動に変換される。よって、ツールホルダ23の回転と共に、ピストンシリンダ28が前後移動して打撃子35を連動させ、中間子36を介して先端工具Tを打撃するハンマドリルモードとなる。
【0018】
このハンマドリル1では、前述のように第2ギヤ14の凹部17にボールベアリング16を収容してインナハウジング9に設けたピン15によって軸支させて歯部14aをボールベアリング16にオーバーラップさせることで、第2ギヤ14を従来よりも後方へシフトさせている。従って、第2ギヤ14が固定される中間軸12の短縮化を図ることができると共に、これに合わせた打撃機構6も後方寄りに配置でき、前後方向の寸法を短くすることができる。
【0019】
このように、上記形態のハンマドリル1によれば、インナハウジング9に、第2ギヤ14の回転中心と同軸のピン15を固定する一方、第2ギヤ14の端面にピン15の端部が同軸で挿入する凹部17を形成して、ピン15の外周面にボールベアリング16の内輪16aを、凹部17の内周面にボールベアリング16の外輪16bをそれぞれ固定し、第2ギヤ14をピン15により凹部17内に収容したボールベアリング16を介して回転可能に保持すると共に、第2ギヤ14の歯部14aをボールベアリング16の外側にオーバーラップさせたことで、従動側の中間軸12を短縮化して全体のコンパクト化が達成可能となる。
【0020】
特にここでは、軸部をインナハウジング9に固定されたピン15としているので、ピン15によって軸部が簡単に形成可能となる。
また、第2ギヤ14に、回転運動を往復運動に変換するボススリーブ19を備えた中間軸12の端部を固定して、第1ギヤ8をモータ3の出力軸4に設け、ボススリーブ19を打撃機構6に用いて、中間軸12に、ツールホルダ23へ回転伝達する第3ギヤ18を設けているので、中間軸12からボススリーブ19を介してツールホルダ23に打撃動作を伝達し、第3ギヤ18を介してツールホルダ23に回転伝達するタイプにおいて効果的なコンパクト化が可能となっている。
【0021】
なお、上記形態では、軸受としてボールベアリングを用いているが、ニードルベアリング等の他の転がり軸受でもよいし、転がり軸受に限らず、オイレスベアリング等の滑り軸受も採用できる。
また、軸部としては別体のピンに限らず、インナハウジング等のハウジング側に一体形成されたものであってもよい。
さらに、本発明はハンマドリルに限らず、駆動ギヤから従動ギヤへ回転伝達する構造を有する電動工具であれば、電動ハンマ等の他のタイプでも採用可能である。よって、駆動ギヤはモータの出力軸に設けられる場合に限らず、出力軸の後段に複数の中間シャフトが設けられるような場合は、中間シャフト間のギヤ同士に本発明は採用できる。従って、ギヤもスパーギヤ以外に、ヘリカルギヤやベベルギヤ等であっても差し支えない。勿論コンパクト化は前後方向に限らず、電動工具のタイプやギヤの配置によっては上下方向等の他の方向でのコンパクト化に繋がる場合もあり得る。
【符号の説明】
【0022】
1・・ハンマドリル、2・・モータハウジング、3・・モータ、4・・出力軸、5・・前ハウジング、6・・打撃機構、8・・第1ギヤ、9・・インナハウジング、11,13,16,24・・ボールベアリング、16a・・内輪、16b・・外輪、12・・中間軸、14・・第2ギヤ、14a・・歯部、15・・ピン、17・・凹部、18・・第3ギヤ、19・・ボススリーブ、21・・アーム、22・・クラッチ、23・・ツールホルダ、27・・連結軸、28・・ピストンシリンダ、29・・二股部、30・・ガイドプレート、31・・側板、32・・底板、33・・透孔、35・・打撃子。
図1
図2
図3