(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃棄物あるいは廃水を処理する嫌気性のメタン発酵槽では、嫌気性処理によりバイオガス(メタンガス)を発生させ、そのガスを有効利用している。この種のメタン発酵槽では、通常消泡剤投入設備の常設を行わない。それは、嫌気性処理においては、発泡は恒常的に発生しないためである。
【0003】
しかし、発泡の原因となる成分が含まれる有機性廃棄物あるいは廃水がメタン発酵槽に投入されたり、該成分がメタン発酵槽に存在している状態で何らかの環境の変化が起こることにより、突発的かつ短時間(数時間)の間に泡が発生・成長することがある。特に有機性廃棄物あるいは廃水に油脂類や蛋白質が多く含まれる場合、粘性の高い泡が発生し易い。この種の泡は破泡しにくく、泡が短時間(数時間)の内に急速に増加し、突発的な発泡となる。突発的な発泡が起こると、メタン発酵槽安全装置から泡が吹き出し、同時にバイオガスが外部に漏洩してしまう恐れがある。バイオガスが漏洩すると、エネルギーの有効利用に支障をきたし、また硫化水素等の臭気が拡散してしまう。
【0004】
従って、このような場合には消泡剤を投入することとなるが、その方法としては、メタン発酵槽につながっている配管(例えば原料投入用配管等)に消泡剤を投入し、投入した消泡剤を、メタン発酵により高圧になっているメタン発酵槽内にポンプを用いて押し込む等の方法があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記消泡剤の投入方法は、作業員の人手によって行われるため、その作業が煩雑であった。また、作業員が定期的に設備を巡回している場合には、上記突発的発泡を確認し、消泡処置を取ることも可能であるが、巡回回数が少ない場合あるいは作業員がいなくなる夜間などは、突発的発泡への対応は困難であった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、多種多様な有機性廃棄物や廃水を投入して嫌気性処理を行うメタン発酵槽において、突発的な泡が発生した場合に、発泡を検知し、速やかに消泡を行うことができる消泡剤投入装置及び消泡剤投入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、嫌気性処理を行うメタン発酵槽に投入する消泡剤を貯留する消泡剤貯留槽と、前記メタン発酵槽内の気圧を検出する圧力センサーと、前記圧力センサーによる測定値が所定値を超えると、前記消泡剤貯留槽内の消泡剤を前記メタン発酵槽に投入する投入手段と、を具備し、前記投入手段は、前記圧力センサーによる測定値が所定値を超え、さらに前記メタン発酵槽で発生して外部に導出したバイオガスを一時貯留するガスホルダ内のバイオガスが所定量に達していない場合に、前記消泡剤貯留槽内の消泡剤を前記メタン発酵槽に投入することを特徴としている。
嫌気性処理を行う水槽であるため、突発的に発泡すると、ガスの排出口が泡によりブロックされることによりバイオガスが排出されなくなり、水槽内の圧力が上昇する。本発明ではこの圧力上昇に着目し、この圧力上昇を突発的な発泡として検知することとした。このように構成することで、容易に突発的な発泡を検知することができ、突発的に発生する泡を確実に速やかに消泡することができる。この消泡剤投入装置によれば、作業員の巡回回数が少ない場合、あるいは作業員がいなくなる夜間に、突発的な泡が発生しても、消泡剤投入が可能となる。
メタン発酵槽内の気圧が上昇する原因としては、上記突発的な発泡の他に、例えばガスホルダの下流側に接続したバイオガス設備の故障や、前記バイオガス設備で使用し切れなかった余剰ガスを燃焼する余剰ガス燃焼装置の故障等がある。このような場合は、ガスホルダ内のバイオガスが所定量以上(例えば満杯)になる。そこで、本発明では、ガスホルダ内のバイオガスが所定量に達した場合は突発的な発泡ではないと判断し、突発的な発泡の時のみに確実に消泡剤を投入できるようにした。
【0015】
また本発明は、
嫌気性処理を行うメタン発酵槽内の気圧を検出する気圧検出工程と、前記メタン発酵槽内の気圧が所定値を
超え、さらに前記メタン発酵槽で発生して外部に導出したバイオガスを一時貯留するガスホルダ内のバイオガスが所定量に達していない場合に、
前記メタン発酵槽内に消泡剤を投入する消泡剤投入工程と、を具備することにより、前記メタン発酵槽内で発生する泡を消泡することを特徴としている。
本発明によれば、突発的な発泡の時のみに確実に消泡剤を投入することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多種多様な有機性廃棄物や廃水を投入して嫌気性処理を行うメタン発酵槽において、突発的な泡が発生した場合でも、その発泡を検知し、速やかに消泡を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる消泡剤投入装置1を含むメタン発酵設備100の概略構成図である。このメタン発酵設備100は、例えば食品廃棄物等の有機性廃棄物をメタン発酵させることでバイオガスを回収すると共に、たい肥も生産する設備の一部に用いられるものである。同図に示すようにメタン発酵設備100は、有機性廃棄物や廃水等の被処理液を収容するメタン発酵槽101と、メタン発酵槽101に前記被処理液を供給する供給用ポンプ103と、メタン発酵槽101内の被処理液を攪拌する攪拌機構105と、メタン発酵槽101内の被処理液に消泡剤を投入する消泡剤投入装置1と、メタン発酵槽101内で処理された後の処理液(消化液)を排水する排水用ポンプ107と、メタン発酵槽101内で発生したバイオガスを導出して一旦貯留するガスホルダ109と、ガスホルダ109に貯留されたバイオガスを利用するバイオガス発電機111及びバイオガスボイラ113等と、余ったバイオガスを燃焼する余剰ガス燃焼装置115等を具備して構成されている。
【0019】
メタン発酵槽101は、収容した被処理液に対して嫌気性微生物によって嫌気性処理を行って、メタン発酵させて処理するものである。攪拌機構105は、攪拌翼105aと、この攪拌翼105aに取り付けた攪拌棒105bをモータ105cによって回転駆動するように構成されている。被処理液は、メタン発酵槽101内において、例えば37℃で、20日間、発酵される。
【0020】
ガスホルダ109は、メタン発酵槽101で発生して外部に導出されたバイオガスを一旦貯留する装置である。ガスホルダ109には、内部の気圧を測定する圧力計や、内部のバイオガスの容量を検出する容量レベル計等が取り付けられている。バイオガス発電機111は、バイオガスをエネルギー源として発電を行う装置である。バイオガスボイラ113は、バイオガスをエネルギー源として温水や蒸気を得る装置である。なお、上記バイオガス発電機111やバイオガスボイラ113のような、バイオガスを利用する設備をバイオガス設備という。余剰ガス燃焼装置115は、非常時やメンテナンス等によりバイオガス設備にバイオガスを供給できない場合や、バイオガス設備でのバイオガスの使用量が少ないような場合に、バイオガスを燃焼して安全に放出するものである。余剰ガス燃焼装置115は、例えば、ガスホルダ109内のガス圧(又はガス容量)が所定の設定値以上になった場合に作動を開始し、ガスホルダ109内のガス圧(又はガス容量)が所定の設定値以下になった場合にバイオガスを遮断して消火・停止するように構成されている。
【0021】
図2は、消泡剤投入装置1の拡大概略構成図である。同図に示すように消泡剤投入装置1は、メタン発酵槽101に投入する消泡剤を貯留する消泡剤貯留槽10と、メタン発酵槽101内の気圧を検出する圧力センサー30と、圧力センサー30による測定値が所定値を超えると消泡剤貯留槽10内の消泡剤をメタン発酵槽101に投入する投入手段50とを具備して構成されている。
【0022】
ここで投入手段50は、前記消泡剤貯留槽10から前記メタン発酵槽101に消泡剤を導く消泡剤投入管51と、メタン発酵槽101内の気圧と消泡剤貯留槽10内の気圧を均一にする均一管53と、消泡剤投入管51中に直列に取り付けられる自動弁55及び元弁57と、自動弁55に並列に取り付けられるバイパス弁59と、均一管53中に取り付けられる切替弁61と、均一管53の上部に接続された配管に取り付けられるエア抜き弁63と、前記消泡剤投入管51のメタン発酵槽101内に突入する先端部分に取り付けられる散水ノズル65と、前記自動弁55の開閉制御を行う制御部67と、を具備して構成されている。また圧力センサー30をメタン発酵槽101に接続する圧力検出用配管31の途中には、センサー用元弁33が取り付けられている。
【0023】
消泡剤貯留槽10は、容器11の上部に蓋13を取り付けて構成されており、メタン発酵槽101の上部に設置されている。消泡剤貯留槽10には、外部から内部の消泡剤の液面高さ(残量状態)を確認できるレベルゲージが設けられている。消泡剤は、いわゆる消泡剤として使用されるものの他、泡を消すものであれば、凝集剤、油脂等、他の各種材料で構成されたものであっても良い。この例では自己乳化タイプの消泡剤を用いている。
【0024】
圧力センサー30は例えば差圧式圧力計であり、圧力検出用配管31を介してメタン発酵槽101内の気圧を測定してその測定値をデジタル信号(検出信号)として出力するものである。この圧力センサー30の検出信号は制御部67に送られ、自動弁55の開閉制御に用いられる。発泡を検出する手段として圧力センサー30を用いたのは、電極式レベル計では簡単に取外しができないため、メンテナンスが難しいこと、一方で発泡が圧力異常として検知できること等の理由からである。
【0025】
消泡剤投入管51は、消泡剤貯留槽10の下部とメタン発酵槽101の上部を接続する配管であり、直線状で略垂直に設置され、消泡剤貯留槽10内の消泡剤が抵抗なく一度に大量に移送できるようにしている。なお、消泡剤投入管51は、必ずしも直線状で略垂直に設置されなくても良く、屈曲管等を用いても良い。均一管53は、消泡剤貯留槽10の上部(気相部分)とメタン発酵槽101の上部(気相部分)とを連結する配管であり、両者の気相部分の圧力を均一にするものである。
【0026】
自動弁55は、電動式、油圧式、空気駆動式等、手動以外の各種方法で弁の開閉を行う開閉弁であり、この例では電磁弁を用いている。自動弁55は、制御部67によって、前記圧力センサー30による測定値が所定値を超えたことを検出すると開くように設定されている。一方、元弁57、バイパス弁59、切替弁61、エア抜き弁63、センサー用元弁33は、何れもこの例では手動弁(例えばボール弁)を用いている。
【0027】
散水ノズル65には、多孔管や分散板等を用い、広い範囲(または集中したい部分)へ消泡剤を散布して消泡することを可能にしている。制御部67はシーケンス制御やマイコン制御等の電気的制御を行うものであり、圧力センサー30からの圧力検出信号や、ガスホルダ109の圧力計(又は容量レベル計等)からの圧力検出信号(又は容量検出信号等)を入力して、自動弁55の開閉制御を行うものである。
【0028】
次に、メタン発酵設備100全体の動作を説明する。食品廃棄物等の有機性廃棄物を破砕、選別して得られた被処理液は、供給用ポンプ103によってメタン発酵槽101内に投入される。投入された被処理液は、メタン発酵槽101内で、攪拌機構105によって攪拌されながら所定温度で発酵され、バイオガスが生成されると同時にメタン発酵消化液が生成される。生成されたバイオガスは、ガスホルダ109に送られて貯留され、必要に応じてバイオガス発電機111やバイオガスボイラ113等の各種バイオガス設備で利用される。バイオガスが余剰となった場合は、余剰ガス燃焼装置115において燃焼されて大気に放出される。一方、消化液は、排水用ポンプ107によって後段の設備に送られて、たい肥が生成され、液体については水処理を行った後に下水道等に放流される。
【0029】
ところで、上記メタン発酵槽101において被処理液を発酵している際、被処理液中に発泡し易い成分が含まれていると、上述したように、突発的かつ短時間(数時間)の間に泡が発生・成長することがある。この突発的な泡を消泡させるのに、上記消泡剤投入装置1が用いられる。以下、消泡剤投入装置1の動作について説明する。
【0030】
まず、
図2において、消泡剤投入装置1の使用準備手順を説明すると、常時閉となっているエア抜き弁63とバイパス弁59の閉を確認する。また常時開となっているセンサー用元弁33の開を確認する。そして切替弁61と元弁57を閉とし、さらに自動弁55を手動で閉にする。次に消泡剤貯留槽10の蓋13を開き、容器11内に所定量の消泡剤を投入した後、前記蓋13を閉じる。次に自動弁55を自動に切り替えて作動状態とし、また圧力センサー30の電源がオン状態であることを確認し、同時に設定圧力値(自動弁55に開を指示する際の圧力値)とタイマ設定時間(自動弁55の開を継続する時間)を確認する。そして元弁57と切替弁61を開けば、消泡剤投入装置1の使用準備が完了する。なお、切替弁61を開くことで、メタン発酵槽101の気相部分の圧力と、消泡剤貯留槽10の気相部分の圧力とは均一になっている。
【0031】
次に、消泡剤投入装置1の運転工程を説明する。
図3は消泡剤投入装置1の運転工程フロー図である。メタン発酵設備100の運転を開始した後、突発的な泡が発生すると、この泡が例えばメタン発酵槽101とガスホルダ109を接続する配管の口を塞ぎ、メタン発酵槽101内の気相部の圧力が急激に上昇する。一方、圧力センサー30は常時メタン発酵槽101内の気圧を測定している(気圧検出工程)。そして制御部67に入力される圧力センサー30の測定圧力値(測定値)が、予め設定した設定圧力値(所定値)を超えた場合(ステップ1)は、次に前記ガスホルダ109内に貯留されているバイオガスが所定量(例えば満杯)に達しているか否かを、ガスホルダ109の圧力計(又は容量レベル計等)によって検出する(ステップ2)。
【0032】
そしてガスホルダ109内のバイオガスが所定量以上でない場合は、突発的な発泡が発生したと判断して、自動弁55を開く(ステップ3)。これによって、消泡剤貯留槽10内の消泡剤が、短時間で大量に、メタン発酵槽101内に投入され、散水ノズル65によって拡散散布される。そして消泡剤が降りかけられた泡は消える(消泡剤投入工程)。なお、メタン発酵槽101内の被処理液は、攪拌機構105によって回転されているので、投入された消泡剤に対して被処理液の表面は回転しており、これによって被処理液の表面全体に消泡剤が降りかけられ、消泡される。自動弁55の開状態は、少なくともタイマ設定時間は継続され、この間に消泡剤貯留槽10内の全ての消泡剤がメタン発酵槽101内に投入される。
【0033】
そして予め設定していたタイマ設定時間を経過したとき(ステップ4)、前記圧力センサー30の測定圧力値が設定圧力値以下となっていれば(ステップ5)、泡が消えたと判断し、自動弁55を閉じる(ステップ6)。
【0034】
一方、ステップ4,5において、タイマ設定時間を経過しても(即ち消泡剤貯留槽10内の消泡剤を全て投入しても)、前記圧力センサー30の測定圧力値が設定圧力値以下に下がらない場合は、消泡剤による効果が無かったか、或いは別の理由でメタン発酵槽101内の圧力が上昇していることが考えられるので、制御部67は異常発生の信号を出力し、例えばこのメタン発酵設備100の図示しない制御盤に異常報知を行う(ステップ7)。このときは、自動弁55を開状態のままにしておき、点検等が行われるまで、そのままの状態を保つ。
【0035】
なお、ステップ2において、ガスホルダ109内のバイオガスが所定量以上であった場合は、これを原因としてメタン発酵槽101内の圧力が上昇しているので(即ち、泡は発生していないので)、自動弁55を開くことなく、制御部67は異常発生の信号を出力して、例えばこのメタン発酵設備100の図示しない制御盤に異常報知を行う(ステップ8)。上記突発的な発泡以外に、メタン発酵槽101内の気圧が上昇する原因としては、例えばガスホルダ109の下流側に接続したバイオガス発電機111やバイオガスボイラ113等のバイオガス設備の故障や、前記バイオガス設備で使用し切れなかった余剰ガスを燃焼する余剰ガス燃焼装置115の故障等によって、バイオガス使用先がなくなったことによりガスホルダ109が満杯となり、そのためにメタン発酵槽101内の圧力が上昇する場合がある。そこで消泡剤投入装置1はそのような場合は、メタン発酵槽101内の測定圧力が設定圧力値を超えても、それが突発的な発泡ではないと判断し、突発的な発泡の時のみに確実に消泡剤を投入するようにし、同時にバイオガス設備や余剰ガス燃焼装置115に故障等が発生した恐れがあることを報知することとしている。
【0036】
なお、消泡剤投入装置1の元弁57とセンサー用元弁33は、通常は開となっており、自動弁55や圧力センサー30が破損した時や取替えの時に消泡剤投入管51や圧力検出用配管31を手動で閉じる安全装置となっている。また元弁57は、消泡剤貯留槽10の点検のため、この消泡剤貯留槽10をメタン発酵槽101から切り離したいような場合にもこれを閉じる。またバイパス弁59は、通常は閉となっており、自動弁55の故障やメンテナンスの際に、必要に応じて手動で開閉するものである。さらにエア抜き弁63は、通常は閉となっており、故障やメンテナンス等の際に、必要に応じて開とするものである(例えば故障によりメタン発酵槽101内のバイオガスの圧力が異常に上昇し、且つ他にガスの逃がし場所が無いような場合に、これを開いてバイオガスの圧力を下げる場合等に使用する)。
【0037】
以上説明した消泡剤投入装置1は、構造が簡単で組み立ても容易であり、またポンプ等の高価な部品も不要なので、装置の低廉化が図れる。また自動弁55の開閉という簡素な構成で消泡剤の投入が行えるので、故障し難く、メンテナンスも容易で、例えば数年間に1度程度しか作動しないような場合でも確実に動作し、電気代や設備維持費も廉価にできる。
【0038】
図4は、本発明の他の実施形態に係る消泡剤投入装置1−2の拡大概略構成図である。同図に示す消泡剤投入装置1−2において、前記
図1〜
図3に示す消泡剤投入装置1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し各符号には添え字「−2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1〜
図3に示す実施形態と同じである。
【0039】
この消泡剤投入装置1−2において、前記消泡剤投入装置1と相違する点は、圧力センサーとして水封装置30−2を用い、自動弁としてボールタップ55−2を用いた点にある。ボールタップ55−2のレバー先端のボール(浮玉)55a−2は、水封装置30−2内に導入されてその水面上に浮いており、一方レバー付け根の弁55b−2は、消泡剤投入管51−2に取り付けられてこれを開閉する。即ち、水封装置30−2内の水面の上下動によってボール55a−2が上下動することで、弁55b−2が開閉するように構成されている。
【0040】
そして、メタン発酵槽101−2内のバイオガスによる圧力上昇によって、水封装置30−2内のボール55a−2が浮いている部分の液面が上昇すると、ボール55a−2が上昇し、予め設定しておいた設定水面を超えた際に(即ち水封装置30−2による測定圧力値が所定値を超えた際に)、弁55b−2が開き、これによって、消泡剤貯留槽10−2内の消泡剤が、短時間で大量に、メタン発酵槽101−2内に投入され、散水ノズル65−2によって拡散散布され、泡を消泡する。消泡によってメタン発酵槽101−2内の圧力が下がると、水封装置30−2内のボール55a−2が浮いている部分の液面が下降してボール55a−2が下降し、弁55b−2が閉じる。
【0041】
なおこの消泡剤投入装置1−2の場合、消泡剤投入管51−2を開とする条件に、ガスホルダ内のバイオガスが所定量に達していないという条件を加えていないが、この条件を加えたい場合は、例えば、ガスホルダ内のバイオガスが所定量に達した場合に閉となる自動弁などを、別途消泡剤投入管51−2に取り付けるなどすれば良い。
【0042】
図5は、本発明の
さらに他の実施形態に係る消泡剤投入装置1−3の拡大概略構成図である。同図に示す消泡剤投入装置1−3において、前記
図1〜
図3に示す消泡剤投入装置1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し各符号には添え字「−3」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1〜
図3に示す実施形態と同じである。
【0043】
この消泡剤投入装置1−3において、前記消泡剤投入装置1と相違する点は、自動弁55の代りに消泡剤移送用ポンプ69−3を設置した点である。そして、制御部67−3に入力された圧力センサー30−3の測定圧力値が、予め設定した設定圧力値を超えた場合は、前記実施形態の場合と同様に、ガスホルダ内のバイオガスの量が所定量以上となっていないことを条件に、消泡剤移送用ポンプ69−3を駆動し、これによって、消泡剤貯留槽10−3内の消泡剤を、短時間で大量に、メタン発酵槽101−3内に投入し、散水ノズル65−3によって拡散散布し、泡を消泡する。この消泡剤投入装置1−3の場合、ポンプ69−3を用いているので、消泡剤貯留槽10−3の設置位置を、メタン発酵槽10−3の設置位置よりも下方とすることも容易に行える。
【0044】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記消泡剤投入装置においては、消泡剤貯留槽内の消泡剤を、簡単な構成でスムーズにメタン発酵槽内に導入させるために、メタン発酵槽内の気圧と、消泡剤貯留槽内の気圧とを均一にする均一管を設置したが、場合によっては均一管の設置を省略しても良い。この場合、例えば消泡剤貯留槽に圧縮空気を供給するコンプレッサ等を取り付けても良い。
【0045】
また上記消泡剤投入装置においては、圧力センサーによる測定値が所定値を越え、さらにガスホルダ内のバイオガスの量が所定量以上となっていない場合に、消泡剤貯留槽内の消泡剤をメタン発酵槽に投入するように構成したが、場合によっては、ガスホルダ内のバイオガスの量が所定量以上になっていないという条件は、これを省略しても良い。従ってこの場合は例えば、圧力センサーによる測定値が所定値を越えたことのみを条件にして自動弁を開き、消泡剤貯留槽内の消泡剤をメタン発酵槽に投入する。なおこの場合、消泡剤投入管に、別途開閉弁を設け、ガスホルダ内のバイオガスの量が所定量以上となった場合はこの開閉弁を閉じるように構成しても良い。
【0046】
また上記各実施形態では、本発明を、食品廃棄物等の有機性廃棄物からバイオガスを発酵させることでバイオガスとたい肥を生産するバイオプラントとして用いる例を示したが、本発明は、他の目的で使用されるメタン発酵槽においても同様に適用することが可能である。要は、嫌気性処理を行うメタン発酵槽に消泡剤を投入する消泡剤投入装置であれば、どのような用途に用いる場合であっても本発明を適用することができる。