(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378975
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】集合住宅火災報知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20180813BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20180813BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20180813BHJP
H04M 9/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
G08B25/00 520A
G08B17/00 C
G08B25/04 J
H04M9/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-168742(P2014-168742)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-46647(P2016-46647A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】太田 稔
【審査官】
西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−126827(JP,A)
【文献】
特開2002−334383(JP,A)
【文献】
特開平06−282786(JP,A)
【文献】
特開平06−301876(JP,A)
【文献】
特開2002−260116(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0302045(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0315224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00、
23/00−31/00
H04M 9/00− 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合玄関機を介して来訪者と通話する機能に加えて、住戸内に設置された火災感知器が接続されて火災発生を外部に通知する機能を備えた居室親機と、前記居室親機と中継器を介して接続され、前記居室親機から火災発生信号が送信されたら近隣の住戸に火災が発生したことを通知する地区ベル信号を送出する住棟受信機とを有する集合住宅火災報知システムにおいて、
前記居室親機は、前記住棟受信機から送信された地区ベル信号を前記中継器を介して受けて警報発報動作する火災受信機を内蔵し、
前記住棟受信機と前記中継器との間で伝送される前記火災発生信号及び前記地区ベル信号は前記住棟受信機と前記中継器との間に配設された同一の通信線を使用して送受され、
更に前記住棟受信機は前記中継器を駆動するための電源部を備えて、前記通信線には前記中継器を駆動する電力が重畳されて成り、
前記中継器は、前記地区ベル信号を受けてインピーダンスが変化するインピーダンス可変回路を具備する一方、前記火災受信機は前記インピーダンス可変回路のインピーダンスの所定値への変化を検出して警報発報動作を実施することを特徴とする集合住宅火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅において火災が発生したら、発生住戸だけでなく近隣の住戸に対しても火災発生を報知する集合住宅火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅において火災が発生したら、火災が発生した住戸だけでなく、隣接する住戸等の近隣の住戸に対しても火災発生の警報を報音する集合住宅火災報知システムが普及している(例えば、特許文献1参照)。
この集合住宅火災報知システムは、管理人室等に集合住宅全体の火災感知器の感知信号を管理する住棟受信機を設置すると共に、各住戸に設置されているインターホン機器である居室親機に、住棟受信機から送信される警報発報させるための地区ベル信号を受信したら発報動作する火災受信機(P型受信機或いはGP型受信機)を内蔵させて構成され、この居室親機と住棟受信機とが中継器を介して接続されて全体のシステムが構成されている。
こうして、火災感知器が火災を感知するとその信号が住棟受信機に送信され、住棟受信機から自動的に近隣の住戸の居室親機に対して地区ベル信号が送信されて火災の発生を通知し、警報を発報させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−326392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の集合住宅火災報知システムでは、住棟受信機から送出される地区ベル信号が火災受信機を警報発報させる電源を兼ねていたため、住棟受信機から中継器まで火災発生信号伝送のための配線に加えて地区ベル信号専用の配線が敷設されていた。また、住棟受信機には同時に多数の火災受信機に対して地区ベル信号を送信するだけの容量を備えた電源部が必要であった。
尚、住棟受信機と居室親機との間で地区ベル信号の伝送を通信で行い、火災受信機の電源を居室親機の電源で賄うことで、住棟受信機と居室親機の間の配線数を削減した集合住宅火災報知システムもあるが、この場合通信方式を業界で統一するのが難しいため汎用性が無く住棟受信機と居室親機の組合せが可能な機種が限定されていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、住棟受信機が送出する地区ベル信号に電源としての機能を無くして地区ベル専用の配線を無くし、且つ中継器から火災受信機に送信する地区ベル信号は単純な信号として住棟受信機と居室親機の組合せに汎用性を持たせた集合住宅火災報知システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、集合玄関機を介して来訪者と通話する機能に加えて、住戸内に設置された火災感知器が接続されて火災発生を外部に通知する機能を備えた居室親機と、前記居室親機と中継器を介して接続され、前記居室親機から火災発生信号が送信されたら近隣の住戸に火災が発生したことを通知する地区ベル信号を送出する住棟受信機とを有する集合住宅火災報知システムにおいて、前記居室親機は、前記住棟受信機から送信された地区ベル信号を前記中継器を介して受けて警報発報動作する火災受信機を内蔵し、前記住棟受信機と前記中継器との間で伝送される前記火災発生信号及び前記地区ベル信号は
前記住棟受信機と前記中継器との間に配設された同一の通信線を使用して送受され、
更に前記住棟受信機は前記中継器を駆動するための電源部を備えて、前記通信線には前記中継器を駆動する電力が重畳されて成り、前記中継器は、前記地区ベル信号を受けてインピーダンスが変化するインピーダンス可変回路を具備する一方、前記火災受信機は前記インピーダンス可変回路のインピーダンスの所定値への変化を検出して警報発報動作を実施することを特徴とする。
この構成によれば、住棟受信機から送信される地区ベル信号は、火災発生信号を伝送する通信線を使用して送信されるため、従来のように専用線が必要なく、住棟受信機と中継器との間の配線を減らすことができコストを削減できる。
また、中継器から居室親機へ送信される地区ベル信号の送信は、インピーダンスの変化で実施されるため、通信により実施する場合に比べて火災受信機の地区ベル信号受信回路は簡易な回路で済む。そのため火災受信機を内蔵した居室親機と住棟受信機及び中継器の組合せに汎用性を持たせることができる。
【0007】
更に、中継器自体に電源を設ける必要がないため、設置場所が制限されず、適宜場所に容易に設置できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、住棟受信機から送信される地区ベル信号は、火災発生信号を伝送する通信線を使用して送信されるため、従来のように専用線が必要なく、住棟受信機と中継器との間の配線を減らすことができコストを削減できる。
また、中継器から居室親機へ送信される地区ベル信号の送信は、インピーダンスの変化で実施されるため、通信により実施する場合に比べて火災受信機の地区ベル信号受信回路は簡易な回路で済む。そのため火災受信機を内蔵した居室親機と住棟受信機及び中継器の組合せに汎用性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る集合住宅火災報知システムの一例を示す構成図である。
【
図2】
図1の構成の要部を回路ブロックで示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る集合住宅火災報知システムの一例を示す構成図であり、機器が共通するため集合住宅インターホンシステムと合わせて示している。1は火災感知器、2は信号を中継する中継器、3は火災感知器1の感知動作を受けて近隣の住戸に火災発生を通知する住棟受信機、4は来訪者からの呼び出しに応答するインターホン機器である居室親機、5は個々の住戸玄関に設置されて居住者を呼び出すための玄関子機、6は集合住宅エントランスに設置されて来訪者が居住者を呼び出して通話するための集合玄関機、7は管理人室に設置されて居住者と通話するための管理室親機、8は機器間の通話路を制御する制御機である。
また、9は火災感知器1の信号を中継すると共に火災感知器1をテストするために住戸玄関等に設置された遠隔試験機能付中継器であり、10はエントランスや廊下等の共用部に設置されて火災発生の警報等を報音するスピーカである。
【0011】
中継器2は居室親機4の近傍に配置されて、2線から成り火災発生信号を伝送する伝送線L2、及び2線から成る地区ベル回線L3により居室親機4と接続されている。また、住棟受信機3とは2線から成る通信線L1で接続されている。
尚、住戸内に設置された火災感知器1は、遠隔試験機能付中継器9を介して居室親機4に接続されている。
【0012】
一方、集合住宅インターホンシステムは、集合玄関機6と管理室親機7がそれぞれ伝送線L11,L12で制御機8に接続され、居室親機4は親機幹線L13により制御機8に接続されている。玄関子機5は伝送線L14により居室親機4に接続されている。
【0013】
このように構成された集合住宅インターホンシステムの居室親機4に、住棟受信機3から送出された地区ベル信号を受信したら発報通知する火災受信機の機能が組み込まれ、中継器2、住棟受信機3、及び居室親機4とで集合住宅火災報知システムを構成している。
【0014】
図2は集合住宅火災報知システムを構成する中継器2、住棟受信機3、そして居室親機4の要部を回路ブロック図で示している。
図2に示すように、中継器2は通信線L1を介して住棟受信機3と通信する通信IF21、居室親機4から伝送線L2を介して火災発生信号を受信する火災IF22、住棟受信機3から通信線L1を介して地区ベル信号を受信したらインピーダンス値が所定値に変化するインピーダンス可変回路23、中継器2全体を制御する中継器CPU24、電源部25等を備えている。
【0015】
住棟受信機3は、中継器2と通信する通信IF31、自身に加えて通信線L1を介して中継器2の電源部25に電力を供給するための電源部32、火災発生信号を受信したら地区ベル信号を生成する住棟受信機CPU33等を備えている。中継器2の駆動電力は、地区ベル信号として送出した従来の火災受信機を駆動する電力に比べて僅かで済み、中継器2が多数存在しても住棟受信機3に設ける電源部32は比較的小さくて済む。
【0016】
居室親機4は、接続されている火災感知器1が感知動作したら火災発生信号を出力する火災信号出力部41、地区ベル回線L3を介して中継器2から地区ベル信号を受信する地区ベルIF42、警報音及びメッセージを報音するための音声回路43及びスピーカ44、火災発生等を表示する表示部45、居室親機4全体を制御する親機CPU46、中継器9が接続される火災IF47等を備えている。
尚、地区ベルIF42、音声回路43、スピーカ44、表示部45、そして親機CPU46により地区ベル信号を受信したら警報を発報する火災受信機を構成している。また、火災信号受信部41には、伝送線L2の断線検出のための終端器41aが設けられている。
【0017】
上記のように構成された集合住宅火災報知システムの動作は以下のようである。集合住宅内の何れかの住戸で火災感知器1が火災を感知すると、その住戸の居室親機4に感知信号が送信される。
感知信号を受信した居室親機4は、親機CPU46の制御により警報発報が成される。例えば警報音に加えて「室内の火災感知器が動作しました」のメッセージがスピーカ44から報音され、居住者に対して誤動作かどうかの確認が促される。その後一定時間が経過しても感知信号を継続して受信したら、火災信号出力部41から火災発生信号が出力される。
【0018】
この信号を伝送線L2を介して火災IF22で受信した中継器2は、中継器CPU24が居室親機4のID情報(住戸番号情報)を附加して通信IF21、通信線L1を介して住棟受信機3に対して送信する。
【0019】
住棟受信機3は、この火災発生信号を受信すると信号に添付されているID情報から送信元の住戸を把握し、別途記憶している近隣情報データから隣接する住戸及び上下の住戸等の近隣の住戸を読み取り、それらの住戸の居室親機4に対して地区ベル信号を送信する。この地区ベル信号は、通信線L1を介して送信先の居室親機4に接続されている中継器2が受信し、中継器CPU24の制御によりインピーダンス可変回路23のインピーダンスを所定値に変更する。例えば、所定値を0オームとし、スイッチ素子を使用して開放状態(インピーダンス無限大)から短絡状態(インピーダンス0オーム)に変更する。
【0020】
居室親機4の地区ベルIF42は、地区ベル回線L3を介して電圧値の変化や電流値の変化によりこのインピーダンスの変化を検出し、この変化が所定値への変化である場合は、親機CPU46が地区ベル信号が送信されたことを認識してスピーカ44に警報発報動作させる。例えば、スピーカ44から警報音と共に「近隣で火災が発生しました」のメッセージが報音される。尚、インピーダンスの変化により地区ベル信号を認識した親機CPU46は、地区ベル信号の受信に対する応答信号を中継器2に返信することはない。インピーダンス値の変更は、警報の継続時間に合わせて継続される。
【0021】
このように、住棟受信機3から送信される地区ベル信号は、火災発生信号を伝送する通信線L1を使用して送信されるため、従来のように専用線が必要なく、住棟受信機3と中継器2との間の配線を減らすことができコストを削減できる。
また、中継器2から居室親機4へ送信される地区ベル信号の送信は、インピーダンスの変化で実施されるため、通信により実施する場合に比べて火災受信機の地区ベルIF42は簡易な回路で済む。そのため火災受信機を内蔵した居室親機4と住棟受信機3及び中継器2の組合せに汎用性を持たせることができる。
更に、中継器2の電源は通信線L1を介して住棟受信機3から供給されるため、中継器2自体に電源を設ける必要がない。よって、中継器2の設置場所は制限されず適宜場所に容易に設置できる。例えば、居室親機4にインピーダンス可変回路23により地区ベル信号を送信する中継器2は居室親機4の近傍に容易に設置でき、そうすることで配線量を最小限に抑制できる。
【0022】
尚、インピーダンス可変回路23は、数段階でインピーダンス値が変化する回路であっても良く、抵抗値を数段階設定して切り替えることで地区ベル信号の種類を複数設定することが可能となり、例えば自住戸に対して左右或いは上下のどの住戸で火災が発生したか通知することも可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・火災感知器、2・・中継器、3・・住棟受信機、4・・居室親機、6・・集合玄関機、23・・インピーダンス可変回路、24・・中継器CPU、32・・電源部、41・・火災信号出力部、42・・地区ベルIF、45・・表示部、46・・親機CPU(警報制御部)、L1・・通信線、L3・・地区ベル回線。