(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤における1分子あたりの前記アルコキシシリル基の数をSとし、前記有機官能基の数をOとした場合に、下記関係式(2)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像表示体。
0.01≦O/S≦50 (2)
前記(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が有する有機官能基が、エポキシ基、チオール基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像表示体。
前記(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤の含有量を、前記(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜3重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像表示体。
前記粘着剤組成物中に、(B´)成分として、低分子型シランカップリング剤を含有するとともに、当該(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤の含有量を、前記(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像表示体。
前記(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体が、単量体成分としての下記(a1)〜(c1)成分に由来した重合体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像表示体。
(a1)アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
:単量体成分の合計に対して20〜85重量%
(b1)ハードモノマー
:単量体成分の合計に対して5〜40重量%
(c1)分子内に水酸基を有するビニル化合物
:単量体成分の合計に対して10〜40重量%
前記(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体が、単量体成分としての下記(a2)〜(b2)成分に由来した重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像表示体。
(a2)アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
:単量体成分の合計に対して50〜95重量%
(b2)分子内にカルボキシル基を有するビニル化合物
:単量体成分の合計に対して5〜30重量%
前記(C)成分としての架橋剤が、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤、あるいはいずれか一方であるとともに、当該(C)成分としての架橋剤の含有量を、前記(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の画像表示体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、
図1に示すように、段差部20が設けられた透明硬質板18を画像表示装置100の表面に固定するためのシート状粘着剤10a
を積層してなる画像表示体であって、
透明硬質板18がプラスチックからなり、シート状粘着剤が、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤と、(C)成分としての架橋剤と、を含む粘着剤組成物からなり、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が、ポリマー鎖に対して複数のアルコキシシリル基と、複数の有機官能基と、を結合してなるポリマー型シランカップリング剤であるとともに、
シート状粘着剤の膜厚を30〜200μmの範囲内の値とし、
シート状粘着剤をソーダライムガラスに貼付・加圧してから、23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後に測定される粘着力を10N/25mm以上の値とし、
シート状粘着剤のゲル分率を50〜80%の範囲内の値と
し、かつ、シート状粘着剤の23℃における貯蔵弾性率を0.01〜0.2MPaの範囲内の値とすることを特徴とする
画像表示体である。
以下、本発明の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0024】
1.(A)成分:(メタ)アクリル酸エステル重合体
(1)種類
(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステル重合体であって、所謂アクリルポリマーである。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。
【0025】
また、(A)成分の構成単位として、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および分子内に官能基を有するビニル化合物を含有することが好ましい。
炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜使用することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシルおよび(メタ)アクリル酸ドデシル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0026】
また、分子内に官能基を有するビニル化合物としては、例えば、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0027】
ここで、(A)成分の構成単位における、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと分子内に官能基を有するビニル化合物の配合割合は、得られるシート状粘着剤に所定の粘着力およびゲル分率を付与し、かつ、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤との間の相互作用を有効にする観点から、重量比で95:5〜60:40であることが好ましく、90:10〜65:35であることがより好ましく、80:20〜70:30であることがさらに好ましい。
【0028】
また、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体が、単量体成分としての下記(a1)〜(c1)成分に由来した重合体であることが好ましい。
(a1)アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
:単量体成分の合計に対して20〜85重量%
(b1)ハードモノマー
:単量体成分の合計に対して5〜40重量%
(c1)分子内に水酸基を有するビニル化合物
:単量体成分の合計に対して10〜40重量%
この理由は、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体を、これらの単量体成分に由来した重合体とすることにより、粘着力およびゲル分率をより容易に所定の範囲内の値に調節して、段差追従性と、耐ブリスター性という相反特性をより効果的に両立させることができるためである。
すなわち、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体中に所定量の(a1)成分を含有させることにより、得られるシート状粘着剤に対して、適切な粘着力を与えるとともに、段差追従性に寄与する柔軟性を与えることができる。
また、所定量の(b1)成分を含有させることにより、得られるシート状粘着剤に対して、適切な剛性を付与し、耐ブリスター性試験や段差追従性試験における経時安定性を向上させることができる。
また、所定量の(c1)成分を含有させることにより、得られるシート状粘着剤の架橋密度を適切なものとして、耐ブリスター性を発揮させるとともに、湿熱環境下での白化現象(粘着剤層の両面をガラス等の硬質板で保護し、湿熱環境下に投入した後、取り出した際に粘着剤層が白化する現象)を有効に防止することができる。
なお、後述する(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤により得られる耐ブリスター性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体が比較的多量の(c1)成分を含有する構成となっている。
これにより、ポリマー型シランカップリング剤のアルコキシシリル基の加水分解反応や有機官能基としてのエポキシ基の開環反応を生起しやすい環境を実現し、耐ブリスター性試験の比較的早い段階において、該ポリマー型シランカップリング剤が被着体あるいはシート状粘着剤中の他の成分(例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体)との間で化学結合を形成し、耐ブリスター性の向上が図られるものと推定される。
したがって、(a1)成分の配合量の下限値を40重量%以上の値とすることがより好ましく、50重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(a1)成分の配合量の上限値を80重量%以下の値とすることがより好ましく、70重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
また、(b1)成分の配合量の下限値を7.5重量%以上の値とすることがより好ましく、15重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(b1)成分の配合量の上限値を35重量%以下の値とすることがより好ましく、30重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
また、(c1)成分の配合量の下限値を12.5重量%以上の値とすることがより好ましく、15重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
さらに、(c1)成分の配合量の上限値を30重量%以下の値とすることがより好ましく、20重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
なお、(a1)成分としてのアルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、先に列挙した炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましいが、そのうち下記(b1)成分に該当するものは、(a1)成分には含まれないものとする。
また、(b1)成分としてのハードモノマーとは、芳香族環を含有しないビニル化合物であって、当該ハードモノマーのみを重合して得たホモポリマーにおけるガラス転移温度が70℃以上、好ましくは75〜200℃、特に好ましくは80〜180℃のビニル化合物である。
かかるハードモノマーは、アクリル系のモノマーであることが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg:180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg:115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg:141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg:89℃)、アクリルアミド(Tg:165℃)等が挙げられる。
これらの中でも、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンが好ましい。
また、(c1)成分としての分子内に水酸基を有するビニル化合物は、先に列挙した分子内に官能基を有するビニル化合物のうち、官能基として水酸基を有するものを用いることが好ましい。
【0030】
また、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体が、単量体成分としての下記(a2)〜(b2)成分に由来した重合体であることが好ましい。
(a2)アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
:単量体成分の合計に対して50〜95重量%
(b2)分子内にカルボキシル基を有するビニル化合物
:単量体成分の合計に対して5〜30重量%
この理由は、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体を、これらの単量体成分に由来した重合体とすることにより、粘着力およびゲル分率をより容易に所定の範囲内の値に調節して、段差追従性と、耐ブリスター性という相反特性をより効果的に両立させることができるためである。
すなわち、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体中に所定量の(a2)成分を含有させることにより、得られるシート状粘着剤に対して適切な粘着力を付与することができる。
また、所定量の(b2)成分を含有させることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体に剛性を持たせるとともに、得られるシート状粘着剤に対して、適切な程度の架橋構造を形成することができる。これにより、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体を用いたシート状粘着剤は、段差追従性と耐ブリスター性のいずれにも優れたものとなる。
ここで、架橋に使用されなかった(b2)成分は、湿熱環境下での白化現象を防止するのに寄与する。
なお、後述する(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤により得られる耐ブリスター性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体が比較的多量の(b2)成分を含有する構成となっている。
これにより、ポリマー型シランカップリング剤のアルコキシシリル基の加水分解反応や有機官能基としてのエポキシ基の開環反応を生起しやすい環境を実現し、耐ブリスター性試験の比較的早い段階において、該ポリマー型シランカップリング剤が被着体あるいはシート状粘着剤中の他の成分(例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体)との間で化学結合を形成し、耐ブリスター性の向上が図られるものと推定される。
したがって、(a2)成分の配合量の下限値を70重量%以上の値とすることがより好ましく、80重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(a2)成分の配合量の上限値を93重量%以下の値とすることがより好ましく、91重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
また、(b2)成分の配合量の下限値を7重量%以上の値とすることがより好ましく、9重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
さらに、(b2)成分の配合量の上限値を20重量%以下の値とすることがより好ましく、15重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0031】
(2)重量平均分子量
また、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を20万〜90万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の重量平均分子量が20万未満の値となると、(A)成分同士の絡み合いが不十分となることにより、得られるシート状粘着剤の凝集力が低下したり、あるいは、弾性率が低下したりして、十分な耐ブリスター性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の重量平均分子量が90万を超えた値となると、(A)成分同士の絡み合いが過多になって、得られるシート状粘着剤の弾性率が高くなり過ぎてしまい、十分な段差追従性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の重量平均分子量の下限値を25万以上の値とすることがより好ましく、30万以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(A)成分の重量平均分子量の上限値を80万以下の値とすることがより好ましく、70万以下の値とすることがさらに好ましい。
【0032】
2.(B)成分:ポリマー型シランカップリング剤
(1)構造
また、本発明のシート状粘着剤は、
図2(a)に示すように、(B)成分として、ポリマー鎖(モノマー単位の繰り返し構造を有するものをいう)に対して複数のアルコキシシリル基と、複数の有機官能基と、を結合してなるポリマー型シランカップリング剤を含むことを特徴とする。
すなわち、(B)成分としての所定のポリマー型シランカップリング剤は、ガスの発生源である透明硬質板との貼付面において、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(C)成分としての架橋剤とにより形成された3次元網目構造に対して複雑に絡みつきながら偏在しているものと推定され、優れた段差追従性を保持しつつ、優れた耐ブリスター性をシート状粘着剤に付与することができる。
つまり、かかる(B)成分の作用により、シート状粘着剤における透明硬質板との貼付面側の3次元網目構造を局所的に緻密化させることができることから、優れた段差追従性を保持しつつ、優れた耐ブリスター性を付与することができるものと推測される。
なお、(B)成分としての所定のポリマー型シランカップリング剤によるこのような効果は、
図2(b)に示す従来からの低分子型シランカップリング剤単独では得られないことが確認されている(比較例1〜5参照)。
なお、
図2においては、アルコキシシリル基としてトリエトキシシリル基を、有機官能基としてエポキシ基を記載している。
【0033】
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤における1分子あたりのアルコキシシリル基の数をSとし、有機官能基の数をOとした場合に、下記関係式(2)を満足することが好ましい。
0.01≦O/S≦50 (2)
この理由は、O/Sの値が0.01未満の値となると、アルコキシシリル基の数に対する有機官能基の数の割合が過度に小さくなって、有機官能基と(A)成分との化学結合が不十分となる場合があるためである。一方、O/Sの値が50を超えた値となると、アルコキシシリル基の数に対する有機官能基の数の割合が過度に大きくなって、アルコキシシリル基の数が低下することにより、湿熱条件下での粘着力低下を抑制する効果が不十分となる場合があるためである。
したがって、O/Sの下限値を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
また、O/Sの上限値を20以下の値とすることがより好ましく、10以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤における1分子あたりのアルコキシシリル基の数Sは、通常1〜50個の範囲内とすることが好ましく、有機官能基の数Oは、通常1〜50個の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が有する有機官能基が、エポキシ基、チオール基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの有機官能基であれば、(A)成分と(C)成分とにより形成された3次元網目構造と、(B)成分との間の相互作用を、さらに促進させることができるためである。
すなわち、(A)成分中の官能基と反応(水素結合も含む)しやすい有機官能基を選択することによって、(A)成分と(B)成分とが相互作用し、新たな高次構造を形成することができるためである。
【0035】
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が有するアルコキシシリル基が、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基およびジメチルエトキシシリル基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらのアルコキシシリル基であれば、(B)成分をガスの発生源である透明硬質板との貼付面側に効果的に偏在させることができるためである。
すなわち、湿熱条件下で縮合反応をする際に被着体と反応しやすく、密着性を向上させることができるためである。
【0036】
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤のポリマー鎖部分の構成は、特に制限されるものではないが、エステル連鎖、ビニル連鎖、アクリル連鎖、エーテル連鎖およびウレタン連鎖等で構成されるものが好ましく、特に、エーテル連鎖とすることが好ましい。
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、有機官能基を複数有するエーテル系化合物の構造中における一部の水酸基と、低分子型シランカップリング剤とを反応させることで得ることができる。
【0037】
(2)重量平均分子量
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤の重量平均分子量を500〜10000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の重量平均分子量が500未満の値となると、(A)成分と(C)成分とにより形成された3次元網目構造に対して複雑に絡みつくことが困難になり、耐ブリスター性を十分に向上させることが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の重量平均分子量が10000を超えた値となると、(A)成分との相溶性が悪化することにより、得られるシート状粘着剤のヘイズ値が高くなったり、粘着力が低下したりする場合があるためである。
したがって、(B)成分の重量平均分子量の下限値を750以上の値とすることがより好ましく、1000以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(B)成分の重量平均分子量の上限値を9500以下の値とすることがより好ましく、9000以下の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
(3)含有量
また、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤の含有量を、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜3重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が0.05重量部未満の値となると、耐ブリスター性を十分に向上させることが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の含有量が3重量部を超えた値となると、(A)成分と相分離化することにより、ヘイズ値が上昇したり、粘着力が低下したりする場合があるためである。
したがって、(B)成分の含有量の下限値を0.08重量部以上の値とすることがより好ましく、0.1重量部以上の値とすることがさらに好ましく、0.55重量部以上の値とすることが特に好ましい。
また、(B)成分の含有量の上限値を2重量部以下の値とすることがより好ましく、1重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
3.(B´)成分:低分子型シランカップリング剤
(1)種類
また、(B)成分としての
図2(a)に示すポリマー型シランカップリング剤に加えて、(B´)成分としての
図2(b)に示す低分子型シランカップリング剤を使用することも好ましい。
この理由は、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤を併用することにより、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤の含有量を減らした場合であっても、優れた耐ブリスター性を保持できるばかりか、段差追従性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、低分子型シランカップリング剤が有する耐ブリスター性の補助効果により、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤と(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体の絡み付き、および架橋に起因するシート状粘着剤の剛性の増大を伴わずに、耐ブリスター性のみを向上させることができるものと推定される。
【0040】
また、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤とは、モノマーユニットの繰り返し構造を分子中に有さない、所謂ポリマー型でなはないシランカップリング剤をいう。
また、分子量は、および500未満であることが好ましい。
また、その種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。
中でも、ポリマー型シランカップリング剤との親和性の観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有の低分子型シランカップリング剤が好ましい。
なお、これらの低分子型シランカップリング剤の加水分解縮合物であるオリゴマー型シランカップリング剤を(B)成分と併用することもできる。
【0041】
(2)含有量
また、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤の含有量を、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B´)成分の含有量が0.01重量部未満の値となると、その添加効果が十分に発揮されない場合があるためである。一方、(B´)成分の含有量が5重量部を超えた値となると、耐ブリスター性が低下しやすくなる場合があるためである。
よって、(B´)成分の含有量の下限値を0.05重量部以上の値とすることがより好ましく、0.15重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(B´)成分の含有量の上限値を3重量部以下の値とすることがより好ましく、1重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
4.(C)成分:架橋剤
また、本発明のシート状粘着剤は、(C)成分として、架橋剤を含むことを特徴とする。
この理由は、(C)成分としての架橋剤により、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体同士を架橋して、3次元網目構造を形成し、所定粘着力および所定ゲル分率とすることができ、ひいては優れた段差追従性を得ることができるためである。
また、形成された3次元網目構造が(B)成分としての所定のポリマー型シランカップリング剤と相互作用することにより、優れた段差追従性を保持しつつ、優れた耐ブリスター性を得ることができるためである。
【0043】
(1)種類
また、かかる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤を好ましく挙げることができる。
中でも、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤、あるいはいずれか一方とすることが好ましい。
この理由は、これらの熱架橋剤であれば、粘着力およびゲル分率をより容易に所定の範囲内の値に調節することができるためである。
【0044】
また、イソシアネート系架橋剤の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、水素化トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナートおよびその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。
【0045】
また、エポキシ系架橋剤の具体例としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアネート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0046】
(2)含有量
また、(C)成分としての架橋剤の含有量を、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して0.01〜0.5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(C)成分の含有量が0.01重量部未満の値となると、十分な3次元網目構造を形成することが困難になって、特に優れた耐ブリスター性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(C)成分の含有量が0.5重量部を超えた値となると、3次元網目構造が過度に緻密になって、優れた段差追従性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(C)成分の含有量の下限値を0.02重量部以上の値とすることがより好ましく、0.03重量部以上の値とすることがさらに好ましい。
また、(C)成分の含有量の上限値を0.45重量部以下の値とすることがより好ましく、0.4重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
5.添加剤
また、添加剤として、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を配合することも好ましい。
また、その場合、添加剤の種類にもよるが、その配合量を、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
なお、本発明のシート状粘着剤は、熱架橋のみで十分な性能を発揮できることから、基本的に多官能(メタ)アクリレート等の光硬化成分の添加は不要である。
また、粘着特性等の微調整のために、少量の光硬化成分を添加する場合には、その配合量を、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.3重量部以下の値とすることが好ましく、0.2重量部以下の値とすることがより好ましく、0.1重量部以下の値とすることがさらに好ましい。
【0048】
6.粘着剤組成物の調製
本発明のシート状粘着剤を製造するために用いる粘着剤組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に、上述した必須成分としての(A)〜(C)成分等を加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
また、使用する溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤等が挙げられる。
【0049】
7.膜厚
また、本発明のシート状粘着剤の膜厚を30〜200μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、シート状粘着剤の膜厚が30μm未満の値となると、十分な段差追従性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、シート状粘着剤の膜厚が200μmを超えた値となると、シート状粘着剤をロール状等に巻回して保管した場合に、膜厚のバラツキが大きくなり光学用途では使用できなくなる場合があるためである。
したがって、シート状粘着剤の膜厚の下限値を50μm以上の値とすることがより好ましく、75μm以上の値とすることがさらに好ましい。
また、シート状粘着剤の膜厚の上限値を190μm以下の値とすることがより好ましく、180μm以下の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
8.シート状粘着剤の特性
(1)粘着力
(1)−1 常態初期粘着力V1
また、ソーダライムガラスに貼付・加圧してから、23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後に測定される粘着力をV1(N/25mm)とした場合に、V1を10N/25mm以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、V1が10N/25mm未満の値となると、段差に対する密着力が不十分になって段差追従性を得ることが困難になるとともに、透明硬質板から発生したガスを抑え込む力が不足して耐ブリスター性を得ることも困難になる場合があるためである。一方、V1が過度に大きな値となると、本発明の用途においては2次的に求められ得る程度の特性に過ぎないが、リワーク性が低下する場合がある。
したがって、V1の下限値を12.5N/25mm以上の値とすることがより好ましく、15N/25mm以上の値とすることがさらに好ましい。
また、V1の上限値を50N/25mm以下の値とすることがより好ましく、45N/25mm以下の値とすることがさらに好ましく、35N/25mm以下の値とすることが特に好ましい。
なお、V1の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0051】
(1)−2 湿熱初期粘着力V2
また、ソーダライムガラスに貼付・加圧してから、60℃、90%RHの環境下に24時間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後に測定される粘着力をV2(N/25mm)とした場合に、V2を10N/25mm以上の値とすることが好ましい。
V2が10N/25mm未満の値となると、湿熱環境下の初期段階において耐ブリスター性を維持するだけの被着体への密着力が得られなくなる場合があるものと推定される。
すなわち、耐ブリスター性試験の初期においては、外部環境の湿熱によりシート状粘着剤の粘着力が一旦低下し、その後、湿熱の影響によりポリマー型シランカップリング剤が加水分解することにより被着体への粘着力を回復させるものと推定される。
ここで、V2が低くなり過ぎる場合、当該シート状粘着剤は耐ブリスター性試験の初期段階において、被着体への密着力が不十分となり、ブリスターの発生を抑えられず、その結果、当該初期段階で発生したブリスターがその後の時間経過とともに耐ブリスター性の悪化を誘引するものと推定される。一方、V2が過度に大きな値になると、本発明の用途においては2次的に求められ得る程度の特性に過ぎないが、リワーク性が得られなくなる場合がある。
したがって、V2の下限値を12.5N/25mm以上の値とすることがより好ましく、15N/25mm以上の値とすることがさらに好ましい。
また、V2の上限値を35N/25mm以下の値とすることが好ましく、32.5N/25mm以下の値とすることがより好ましく、30N/25mm以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、V2の測定は、耐ブリスター性試験初期の実際の環境下での粘着力との相関性を高めるため、湿熱環境下に放置してから、常態環境下に1時間という非常に短い時間だけ放置した後に行っている。
また、V2の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0052】
(1)−3 関係式(1)
また、上述したV1(N/25mm)およびV2(N/25mm)が、下記関係式(1)を満足することが好ましい。
V1−V2≦10 (1)
この理由は、V1−V2が10N/25mmを超えた値となると、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が加水分解、脱水縮合をする過程で、一度、粘着力が過度に低下してしまうことから、十分な耐ブリスター性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、V1−V2の上限値を9N/25mm以下の値とすることがより好ましく、8N/25mm以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、V1−V2の下限値は、0N/25mmであっても構わない。
【0053】
(2)ゲル分率
また、ゲル分率を50〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、ゲル分率が50%未満の値となると、十分な3次元網目構造を形成することが困難になって、特に優れた耐ブリスター性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、ゲル分率が80%を超えた値となると、3次元網目構造が過度に緻密になって、優れた段差追従性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、ゲル分率の下限値を55%以上の値とすることがより好ましく、60%以上の値とすることがさらに好ましく、65%以上の値とすることが特に好ましい。
また、ゲル分率の上限値を77.5%以下の値とすることがより好ましく、75%以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、ゲル分率の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0054】
(3)貯蔵弾性率
また、23℃における貯蔵弾性率(G’)を0.01〜0.3MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、貯蔵弾性率(G’)が0.01MPa未満の値となると、耐ブリスター性が悪化する場合があるためである。一方、貯蔵弾性率(G’)が0.3MPaを超えた値となると、段差追従性が悪化する場合があるためである。
したがって、23℃における貯蔵弾性率(G’)の下限値を0.02MPa以上の値とすることがより好ましく、0.05MPa以上の値とすることがさらに好ましい。
また、23℃における貯蔵弾性率(G’)の上限値を0.25MPa以下の値とすることがより好ましく、0.2MPa以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、貯蔵弾性率の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0055】
9.適用対象
また、本発明のシート状粘着剤は、
図1に示すように、段差部20が設けられた透明硬質板18を画像表示装置100の表面に固定するためのシート状粘着剤10aである。
より具体的には、
図1に示すような、例えば、液晶モジュールのような表示体モジュール60の上にタッチパネル50を搭載した画像表示装置100におけるOCA層10aが挙げられる。
かかる用途であれば、従来のエアギャップを容易に充填して画像表示装置100における表示画像の視認性を向上させることができる。
また、タッチパネル50の下側に配置される表示体モジュール60と、タッチパネル50とを、基板70を介して電気的に接続する配線部分(80a、80b)を隠すためにカバープレートとしての透明硬質板18の下面における外周部に設けられる額縁状の印刷層18aによる段差部20に対して効果的に追従して、空隙が形成されることを防止することができる。
また、それと同時に、プラスチックからなる透明硬質板18から発生するガスに起因するブリスターの発生についても、効果的に抑制することができる。
なお、10b、10cはOCA層であり、12a、12bはハードコートフィルムであり、14a、14bは透明導電膜であり、90は筐体である。
【0056】
10.シート状粘着剤の製造方法
また、本発明のシート状粘着剤は、下記工程(1)〜(3)を経て製造することが好ましい。
(1)(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤と、(C)成分としての架橋剤と、を含む粘着剤組成物であって、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤が、ポリマー鎖に対して複数のアルコキシシリル基と、複数の有機官能基と、を結合してなるポリマー型シランカップリング剤である粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布する工程
(3)粘着剤組成物を架橋させて、塗布層をシート状粘着剤とする工程
以下、各工程について説明する
【0057】
(1)工程(1):粘着剤組成物の準備工程
工程(1)は、(A)〜(C)成分を含む粘着剤組成物を準備する工程である。
かかる粘着剤組成物については、既に説明したため省略する。
【0058】
(2)工程(2):塗布工程
工程(2)は、
図3(a)に示すように、粘着剤組成物1を、剥離フィルム2aに対して塗布する工程である。
かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布して剥離層を設けたものが挙げられる。
なお、かかる剥離フィルムの膜厚は、通常20〜150μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0059】
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて粘着剤組成物を塗布して塗布層を形成した後、乾燥させることが好ましい。
このとき、塗布層の膜厚は、乾燥時において30〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、乾燥環境としては、通常50〜150℃で、10秒〜10分の範囲内の値とすることが好ましい。
【0060】
(3)工程(3):架橋工程
工程(3)は、塗布層の粘着剤組成物を架橋させて、塗布層をシート状粘着剤とする工程である。
すなわち、
図3(b)に示すように、剥離フィルム2aの上で乾燥させた状態の塗布層1の表面に対し、さらに別の剥離フィルム2bを積層した状態で架橋させて、
図3(c)に示すように2つの剥離フィルム(2a、2b)に挟持された状態のシート状粘着剤10とすることが好ましい。
なお、
図3(b)においては、加熱することにより架橋を促進させる態様を示しているが、特に加熱をせず、常温環境に放置して架橋させることもできる。
また、2つの剥離フィルムの内の一方における剥離力が、他の一方における剥離力と異なることが好ましい。
この理由は、剥離力が異なることにより、得られたシート状粘着剤を使用するに際し、シート状粘着剤を傷つけることなく、一方の剥離フィルムを剥がすことができるためである。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0062】
[実施例1]
1.(A)成分の調製
酢酸エチル溶媒中、(a1)成分としてのアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)60重量部、(b1)成分としてのメタクリル酸メチル(MMA)20重量部、(c1)成分としてのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)20重量部を重合することにより、(A)成分としての重量平均分子量50万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の酢酸エチル溶液を得た。
【0063】
なお、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー(株)製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0064】
2.(B)成分の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器および滴下装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、エポキシ当量220のソルビトール系ポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、デナコールEX−610U)100重量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン39.8重量部を仕込んだ後、80℃にて4時間加熱撹拌した。
その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが消滅したことを確認して反応終了とし、有機官能基がエポキシ基、アルコキシシリル基がトリエトキシシリル基、O/S(1分子あたりの有機官能基の数/アルコキシシリル基の数)=3、重量平均分子量3500の(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を得た。
【0065】
3.粘着剤組成物の調製
上述のようにして得た(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部(固形分換算値、以下同じ)と、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤0.4重量部と、(C)成分としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)0.25重量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度39重量%の粘着剤組成物の塗布溶液を得た。
なお、粘着剤組成物の組成を表1に示す。
【0066】
4.シート状粘着剤の製造
得られた粘着剤組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック(株)製、SP−PET752150)の剥離処理面に、乾燥後の膜厚が50μmになるようにナイフコーターで塗布した後、100℃で4分間加熱処理して塗布層を形成した。
次いで、得られた塗布層の露出面を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック(株)製、SP−PET382120)の剥離処理面に対して貼合し、23℃、50%RHの環境下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/シート状粘着剤(膜厚:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを得た。
なお、シート状粘着剤の膜厚は、JIS K 7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック(株)製、PG−02)を用いて測定した。
【0067】
5.評価
(1)粘着力の評価
(1)−1 常態初期粘着力
得られたシート状粘着剤の常態初期粘着力V1(N/25mm)を評価した。
すなわち、得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出したシート状粘着剤の面を基材フィルムとしての膜厚100μmのポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、A4300)に貼合し、粘着力測定用粘着シートとした。
次いで、裁断装置(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた粘着力測定用粘着シートを幅25mm×長さ100mmの大きさに裁断して、測定用サンプルとした。
次いで、得られた測定用サンプルから重剥離型剥離シートを剥離した後、ソーダライムガラス(日本板硝子(株)製)に貼合した。
次いで、測定サンプルが貼合されたソーダライムガラスを、オートクレイブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃の条件で20分間加圧した後、23℃、50%RHの環境下に24時間、放置した。
次いで、測定用サンプルにつき、引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、テンシロン)を用いて、下記条件にて常態初期粘着力V1(N/25mm)を測定した。得られた結果を表2に示す。
なお、記載した条件以外の点については、JIS Z 0237:2009に準拠して測定した。
剥離速度:300mm/分
剥離角度:180°
【0068】
(1)−2 湿熱初期粘着力
得られたシート状粘着剤の湿熱環境下における初期粘着力である湿熱初期粘着力V2(N/25mm)を評価した。
すなわち、23℃、50%RHの環境下に24時間放置する代わりに、60℃、90%RHの環境下に24時間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後に粘着力を測定したほかは、常態初期粘着力V1の場合と同様に湿熱初期粘着力V2(N/25mm)を測定した。
また、常態初期粘着力V1に対する湿熱初期粘着力V2の低下量(V1−V2)を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0069】
(1)−3 湿熱耐久粘着力
得られたシート状粘着剤の湿熱環境下における耐久粘着力である湿熱耐久粘着力V3(N/25mm)を評価した。
すなわち、23℃、50%RHの環境下に24時間放置する代わりに、60℃、90%RHの環境下に72時間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後に粘着力を測定したほかは、常態初期粘着力V1の場合と同様に湿熱耐久粘着力V3(N/25mm)を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0070】
(2)ゲル分率の評価
得られたシート状粘着剤のゲル分率(%)を評価した。
すなわち、得られた粘着シートの両面の剥離シートを剥離し、約0.1gの粘着剤を取り出してテトロンメッシュ(#200)に包み、酢酸エチルを溶剤としたソックスレー抽出装置(東京ガラス器械(株)製、脂肪抽出器)による還流を用いて、粘着剤の非ゲル分を抽出し、初期の質量との比よりゲル分率(%)を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0071】
(3)貯蔵弾性率の評価
得られたシート状粘着剤の23℃における貯蔵弾性率(G’)(MPa)を評価した。
すなわち、得られた粘着シートから、厚さ50μmの粘着剤を複数取り出してこれらを積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作成し、ねじり剪断法により、下記の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。得られた結果を表2に示す。
<貯蔵弾性率(G’)の測定条件>
・測定装置:レオメトリック(株)製、動的粘弾性測定装置 DYNAMIC ANALYZER RDAII
・周波数 :1Hz
・温度 :23℃
【0072】
(4)ヘイズ値の評価
得られたシート状粘着剤のヘイズ値(%)を評価した。
すなわち、得られた粘着シートの両面の剥離シートを剥離し、測定試料とし、得られた測定試料について、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業(株)製、NDH−2000)を用いて、JIS K 7105に準拠しながら、拡散透過率(Td%)および全光線透過率(Tt%)を測定し下式(3)にてヘイズ値(%)を算出した。得られた結果を表2に示す。
なお、ヘイズ値は、本発明の用途において、2%以下であることが好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
ヘイズ値=(Td/Tt)×100 (3)
【0073】
(5)耐ブリスター性の評価
得られたシート状粘着剤をポリメタクリル酸メチル樹脂板に貼付した場合の耐ブリスター性を評価した。
すなわち、得られた粘着シートの両面の剥離シートを剥離し、一方の面がITOフィルムのITO面側に接するように貼合し、もう一方の面にポリメタクリル酸メチル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、アクリライトL001)を貼合して、ITOフィルム/シート状粘着剤/ポリメタクリル酸メチル樹脂板の構成からなるサンプルを作成した。
次いで、得られたサンプルをオートクレイブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃の環境で30分間加圧した後、23℃、50%RHの環境下に一晩、放置した。
次いで、サンプルを85℃、85%RHの環境下に72時間放置した後、目視にて観察を行い、下記基準に沿って耐ブリスター性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:気泡や浮きや剥がれが確認されない
○:微発泡が数個程度確認される
△:微発泡が全体的に確認される
×:気泡、気泡跡、浮きや剥がれが確認される
【0074】
なお、上述したITOフィルムは、以下のようにして作成した。
すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルムを縦100mm×横100mmにカットした後、ITOターゲット(酸化錫10重量%、酸化インジウム90重量%)を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上にスパッタリングを行い、縦60mm×横60mmの正方形状、厚さ30nm、表面抵抗250Ω/□の透明導電性層を形成した。
次いで、得られた透明導電性層の表面上に格子状にパターン化されたフォトレジスト膜を形成した。
次いで、室温下にて、10重量%の塩酸に1分間浸漬することによりエッチング処理を行った後、フォトレジスト膜を除去し、導電性パターン層を有するITOフィルムを得た。
当該ITOフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、線幅2mmの透明導電性の線により1辺2mmの正方形の空隙が格子状に区画化されたパターン形状を有する厚さ30nmの導電性パターン層を有するものであった。
【0075】
(6)段差追従性の評価
得られたシート状粘着剤の段差追従性を評価した。
すなわち、得られた粘着シートの両面の剥離シートを剥離し、一方の面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、A4300、厚み:100μm)に貼合し、もう一方の面にガラス表面に紫外線硬化型インクを額縁状にスクリーン印刷してなる段差付ガラス板を貼合して、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シート状粘着剤/段差付ガラス板の構成からなるサンプルを作成した。
次いで、得られたサンプルをオートクレイブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃の環境で30分間加圧した後、サンプルを85℃、85%RHの環境下に72時間放置した。その後、23℃、50%RHの環境下に取り出し、目視にて観察を行い、下記基準に沿って段差追従性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:気泡や浮きや剥がれが確認されない
○:直径0.2mm以下の気泡が確認される
×:直径0.2mmを超えた気泡、もしくは浮きや剥がれが確認される
【0076】
なお、上述した段差付ガラス板は以下のようにして4種類作成した。
すなわち、ガラス板(NSGプレシジョン(株)製、コーニングガラス イーグルXG、縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ(株)製、POS−911墨)を5μm、10μm、15μm、20μmとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm、幅5mm)にスクリーン印刷した。
次いで、紫外線を照射(80W/cm
2、メタルハライドランプ2灯、ランプ高さ15cm、ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm、20μm)を有する段差付ガラス板を作成した。
【0077】
[実施例2]
実施例2では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分の含有量を0.7重量部に変えたほかは、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0078】
[実施例3]
実施例3では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分の含有量を0.25重量部に変えるとともに、さらに、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.25重量部含有させたほかは、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0079】
[実施例4]
実施例4では、粘着剤組成物を調製する際に、下記のようにして調製した(A)成分を用い、(B)成分として、有機官能基がエポキシ基、アルコキシシリル基がトリエトキシシリル基、O/S=3であり、重量平均分子量が4500のポリマー型シランカップリング剤を用いるとともに、その含有量を0.5重量部とし、(C)成分として1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製、TETRAD−C)を用いるとともに、その含有量を0.05重量部としたほかは、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤は、原料物質であるポリグリシジルエーテルの種類および3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランの配合量を変更したほかは、実施例1と同様に合成した。
【0080】
また、実施例4における(A)成分は、以下のようにして調製した。
すなわち、単量体成分として、(a2)成分としてのアクリル酸n−ブチル(BA)90重量部、(b2)成分としてのアクリル酸(AA)10重量部を用いたほかは、実施例1と同様に調製し、重量平均分子量40万の(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。
【0081】
[実施例5]
実施例5では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分の含有量を0.70重量部に変えたほかは、実施例4と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
[実施例6]
実施例6では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分の含有量を0.25重量部に変えるとともに、さらに、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.25重量部含有させたほかは、実施例4と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0083】
[比較例1]
比較例1では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を用いず、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.2重量部含有させたほかは、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0084】
[比較例2]
比較例2では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を用いず、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.4重量部含有させたほかは、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0085】
[比較例3]
比較例3では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を用いず、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.25重量部含有させたほかは、実施例4と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0086】
[比較例4]
比較例4では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を用いず、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.4重量部含有させたほかは、実施例4と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0087】
[比較例5]
比較例5では、粘着剤組成物を調製する際に、(B)成分としてのポリマー型シランカップリング剤を用いず、(B´)成分としての低分子型シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM403、分子量236)を0.25重量部含有させ、さらに(C)成分として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートに代えて、光硬化成分であるジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの混合品(東亜合成(株)製、アロニックスM315)を10重量部含有させた。
また、得られた粘着剤組成物の塗布溶液を塗布、乾燥して塗布層を形成した後、以下の条件で紫外線を照射した以外、実施例1と同様にシート状粘着剤を製造し、評価した。得られた結果を表2に示す。
<紫外線照射条件>
・ランプ :フュージョン(株)製、無電極ランプ H・バルブ
・照度 :600mW/cm
2
・光量 :150mJ/cm
2
・照度・光量計:アイグラフィックス(株)製、UVPF−36
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】