特許第6378981号(P6378981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378981真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置、および、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378981
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置、および、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20180813BHJP
   C01B 21/04 20060101ALI20180813BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01D53/04 220
   C01B21/04 D
   C01B13/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-180961(P2014-180961)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-55213(P2016-55213A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤峰 智也
(72)【発明者】
【氏名】池田 朋史
(72)【発明者】
【氏名】亀田 吉典
(72)【発明者】
【氏名】泉 順
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−088304(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/191097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
C01B 13/02
C01B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物質を含有する混合ガスが流通する供給流路と、
前記供給流路から前記混合ガスが導かれる吸着塔と、
前記吸着塔内に設けられ、常温よりも高温で前記混合ガスに接触すると該混合ガスに含有される酸素を吸着する吸着剤と、
前記吸着剤を、前記酸素を吸着する温度に保持する温度保持手段と、
前記吸着塔よりも前記混合ガスの流通方向の下流側に配され、該吸着塔内を吸引するポンプと、
前記供給流路を連通させて、前記ポンプによって前記吸着塔内を吸引することで、該吸着塔内に前記混合ガスを供給して前記吸着剤に前記酸素を吸着させるとともに、該混合ガスから該酸素が取り除かれた分離ガスを該吸着塔内から排出する吸着処理を行い、該供給流路を遮断して、該ポンプによって該吸着塔内を吸引することで、該酸素を該吸着剤から脱着させるとともに、該脱着させることで得られた吸着ガスを該吸着塔内から排出する脱着処理を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項2】
前記ポンプには、前記分離ガスが流通する分離ガス流路および前記吸着ガスが流通する吸着ガス流路が接続され、
前記制御手段は、
前記吸着処理を行う場合、前記分離ガス流路を連通させるとともに、前記吸着ガス流路を遮断し、
前記脱着処理を行う場合、前記分離ガス流路を遮断するとともに、前記吸着ガス流路を連通させることを特徴とする請求項1に記載の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項3】
記吸着剤よりも前記混合ガスの流通方向の上流側、および、下流側の双方に配され、前記混合ガス、前記分離ガス、および、前記吸着ガスが流通するとともに、該分離ガスおよび該吸着ガスのうちいずれか一方または双方の熱を蓄熱して該混合ガスに伝熱する、もしくは、該混合ガスの熱を蓄熱して該分離ガスおよび該吸着ガスのうちいずれか一方または双方に伝熱する蓄熱体を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項4】
前記供給流路は、前記吸着塔の一端および他端の双方に接続され、前記ポンプは、前記吸着塔の一端および他端の双方に接続され、
前記制御手段は、前記混合ガスの供給方向、前記分離ガスの排出方向、および、前記吸着ガスの排出方向を制御することを特徴とする請求項3に記載の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項5】
前記分離ガスと前記吸着ガスとは容量が異なり、
前記制御手段は、
前記吸着処理および前記脱着処理を含む処理工程を繰り返し行い、
1の処理工程の吸着処理または脱着処理では、前記吸着塔の一端側および他端側のうち、前回の処理工程の吸着処理または脱着処理において容量の多いガスを排出した側と異なる側から該容量の多いガスを排出させ、
1の処理工程の吸着処理では、前回の処理工程の吸着処理または脱着処理において容量の多いガスを排出した側から前記混合ガスを供給させることを特徴とする請求項4に記載の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項6】
前記吸着剤は、化学吸着によって物質を吸着することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置。
【請求項7】
複数の物質を含有する混合ガスが流通する供給流路から該混合ガスが導かれる吸着塔内に設けられた吸着剤に、常温より高温で該混合ガスを接触させることにより、該混合ガスに含有される酸素を該吸着剤に吸着させる真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法であって、
前記供給流路を連通させて、該吸着塔よりも該混合ガスの流通方向の下流側に配されたポンプによって該吸着塔内を吸引することで、該吸着塔内に該混合ガスを供給して前記吸着剤に酸素を吸着させるとともに、該混合ガスから該酸素が取り除かれた分離ガスを該吸着塔内から排出する吸着処理を行う工程と、
前記供給流路を遮断して、前記ポンプによって該吸着塔内を吸引することで、前記酸素を該吸着剤から脱着させるとともに、該脱着させることで得られた吸着ガスを該吸着塔内から排出する脱着処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガスから所定の物質を分離するガス分離装置およびガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合ガスから所定の物質(ガス)を分離する技術として、圧力スイング吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)法が知られている。PSA法は、吸着剤に対する物質の吸着量が、物質の種類および各物質(ガス)の分圧によって異なることを利用したガスの分離方法である。PSA法では、吸着剤が充填された吸着塔に混合ガスを供給し、混合ガスに含まれる所定の物質を吸着剤に選択的に吸着させる処理(吸着処理)と、所定の物質が吸着した後の吸着剤から所定の物質を脱着させる処理(脱着処理)と、において圧力差を付けることで、混合ガスから所定の物質を分離する。
【0003】
従来、PSA法を利用したガス分離装置では、混合ガスを加圧して吸着塔に供給するブロワと、吸着塔から所定の物質を吸引する真空ポンプとが設けられており、吸着処理においてブロワが駆動され、脱着処理において真空ポンプが駆動される。しかし、従来のガス分離装置では、ブロワおよび真空ポンプの双方が必要となるため、装置自体の容積が大きく設置場所が限定されてしまったり、ブロワや真空ポンプのメンテナンスコストがかかったりするという課題があった。
【0004】
そこで、混合ガスとしての空気を加圧して吸着塔に供給する機能(加圧機能)と、吸着塔を減圧して吸着剤に吸着した窒素を吸引する機能(減圧機能)とを担う1台の空気ポンプを、吸着塔よりも空気の流れ方向の上流側に設け、この空気ポンプを駆動して吸着処理および脱着処理を実行するガス分離装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−90155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のガス分離装置では、吸着処理および脱着処理が1台の空気ポンプによって実行されるため、従来のガス分離装置と比較して、装置自体の容積を小さくすることができ、また、メンテナンスコストを低減できるといった利点がある。
【0007】
しかし、このような空気ポンプは、加圧機能および減圧機能の双方を担うため、空気ポンプ内部からのガスの漏出、外部から空気ポンプ内部への空気の流入を防止する必要があり、このためのシール構造が複雑となる。したがって、空気ポンプ自体が高価となるといった課題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、低コストで効率よく、混合ガスから所定の物質を分離することが可能な、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置、および、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置は、複数の物質を含有する混合ガスが流通する供給流路と、前記供給流路から前記混合ガスが導かれる吸着塔と、前記吸着塔内に設けられ、常温よりも高温で前記混合ガスに接触すると該混合ガスに含有される酸素を吸着する吸着剤と、前記吸着剤を、前記酸素を吸着する温度に保持する温度保持手段と、前記吸着塔よりも前記混合ガスの流通方向の下流側に配され、該吸着塔内を吸引するポンプと、前記供給流路を連通させて、前記ポンプによって前記吸着塔内を吸引することで、該吸着塔内に前記混合ガスを供給して前記吸着剤に前記酸素を吸着させるとともに、該混合ガスから該酸素が取り除かれた分離ガスを該吸着塔内から排出する吸着処理を行い、該供給流路を遮断して、該ポンプによって該吸着塔内を吸引することで、該酸素を該吸着剤から脱着させるとともに、該脱着させることで得られた吸着ガスを該吸着塔内から排出する脱着処理を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記ポンプには、前記分離ガスが流通する分離ガス流路および前記吸着ガスが流通する吸着ガス流路が接続され、前記制御手段は、前記吸着処理を行う場合、前記分離ガス流路を連通させるとともに、前記吸着ガス流路を遮断し、前記脱着処理を行う場合、前記分離ガス流路を遮断するとともに、前記吸着ガス流路を連通させるとしてもよい。
【0011】
また、本発明の前記真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置、前記吸着剤よりも前記混合ガスの流通方向の上流側、および、下流側の双方に配され、前記混合ガス、前記分離ガス、および、前記吸着ガスが流通するとともに、該分離ガスおよび該吸着ガスのうちいずれか一方または双方の熱を蓄熱して該混合ガスに伝熱する、もしくは、該混合ガスの熱を蓄熱して該分離ガスおよび該吸着ガスのうちいずれか一方または双方に伝熱する蓄熱体を備えるとしてもよい。
【0012】
また、本発明の前記供給流路は、前記吸着塔の一端および他端の双方に接続され、前記ポンプは、前記吸着塔の一端および他端の双方に接続され、前記制御手段は、前記混合ガスの供給方向、前記分離ガスの排出方向、および、前記吸着ガスの排出方向を制御するとしてもよい。
【0013】
また、本発明の前記真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置は、前記分離ガスと前記吸着ガスとは容量が異なり、前記制御手段は、前記吸着処理および前記脱着処理を含む処理工程を繰り返し行い、1の処理工程の吸着処理または脱着処理では、前記吸着塔の一端側および他端側のうち、前回の処理工程の吸着処理または脱着処理において容量の多いガスを排出した側と異なる側から該容量の多いガスを排出させ、1の処理工程の吸着処理では、前回の処理工程の吸着処理または脱着処理において容量の多いガスを排出した側から前記混合ガスを供給させるとしてもよい。
【0014】
また、本発明の前記吸着剤は、化学吸着によって物質を吸着するとしてもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法は、複数の物質を含有する混合ガスが流通する供給流路から該混合ガスが導かれる吸着塔内に設けられた吸着剤に、常温より高温で該混合ガスを接触させることにより、該混合ガスに含有される酸素を該吸着剤に吸着させる真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法であって、前記供給流路を連通させて、該吸着塔よりも該混合ガスの流通方向の下流側に配されたポンプによって該吸着塔内を吸引することで、該吸着塔内に該混合ガスを供給して前記吸着剤に酸素を吸着させるとともに、該混合ガスから該酸素が取り除かれた分離ガスを該吸着塔内から排出する吸着処理を行う工程と、前記供給流路を遮断して、前記ポンプによって該吸着塔内を吸引することで、前記酸素を該吸着剤から脱着させるとともに、該脱着させることで得られた吸着ガスを該吸着塔内から排出する脱着処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低コストで効率よく、混合ガスから所定の物質を分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態にかかるガス分離装置を説明する図である。
図2】第1の実施形態にかかるガス分離方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図3】吸着処理および脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図である。
図4】第2の実施形態にかかるガス分離装置を説明する図である。
図5】第2の実施形態にかかるガス分離方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図6】第1の吸着処理および第1の脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図である。
図7】第2の吸着処理および第2の脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
以下の実施形態では、複数の物質を含有する混合ガスから所定の物質(ガス)を分離する、PSA法を利用した、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離装置(以下、単に「ガス分離装置」と称する)、および、真空下で圧力変動吸着を行うガス分離方法(以下、単に「ガス分離方法」と称する)について説明する。ここでは、混合ガスとして空気を例に挙げ、空気から窒素(N)および酸素(O)をそれぞれ分離する構成を例に挙げて説明する。
【0020】
(第1の実施形態:ガス分離装置100)
図1は、第1の実施形態にかかるガス分離装置100を説明する図である。図1に示すように、ガス分離装置100は、筒形状(例えば、円筒形状)の吸着塔110を備えている。吸着塔110内には、吸着剤120(図1中、クロスハッチングで示す)が設けられ(充填され)ている。吸着剤120は、所定の圧力および温度環境下で空気に接触すると、空気(混合ガス)に含有される酸素(被吸着物)を吸着して、空気から酸素を分離する。
【0021】
吸着剤120は、例えば、構造式A1−x1−y3−zで表されるペロブスカイト型酸化物である。ここで、Aはランタノイド元素またはアルカリ土類金属元素であり、Bはランタノイド元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素の群のうちいずれかの元素ドーパントであり、Cはチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)の群から選択される1または複数の元素であり、Dはチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の群から選択される1または複数の元素であり、かつ、Cとは異なる元素である。具体的に説明すると、吸着剤120は、例えば、La1−xSrCo1−yFe3−z(La:Sr:Co:Fe=1:9:9:1)である。
【0022】
ペロブスカイト型酸化物は、所定の温度(例えば、250℃〜900℃)において、酸素を選択的に吸着する(化学吸着)。したがって、吸着剤120として、ペロブスカイト型酸化物を利用することにより、空気から選択的に酸素を吸着することができる。また、ペロブスカイト型酸化物は、250℃〜900℃において、圧力を変化させることにより、酸素の吸着および脱着(吸着していた物質が界面から離れること)を容易に行うことが可能となる。
【0023】
また、吸着塔110の内部には、酸素を吸着する温度に吸着剤120を加熱する加熱部(温度保持手段)112が設けられている。本実施形態では、吸着剤120としてペロブスカイト型酸化物を採用しているため、加熱部112は、吸着剤120を250℃〜900℃に加熱する。加熱部112は、例えば、電気ヒータ、ガス燃焼式ヒータ、または、ガス分離装置100が設置されるプラントの排熱を供給する手段で構成される。
【0024】
また、吸着塔110の外壁には、断熱材(温度保持手段)114が配されており、吸着塔110から外部への放熱を抑制している。したがって、温度保持手段(加熱部112および断熱材114)によって、吸着剤120が、酸素を吸着する温度(250℃〜900℃)に保持されることとなる。
【0025】
吸着塔110には、吸着塔110内に空気を供給するための供給口116が設けられており、供給口116には、空気が流通する供給配管(供給流路)130の一端が接続されている。本実施形態において、供給配管130の他端の開口は、大気開放されている。つまり、供給配管130は、混合ガスの供給源と、供給口116とを接続する配管であると言える。また、供給配管130には、供給配管130を開閉するためのバルブ132が設けられている。
【0026】
ポンプ140は、入口が、第1排出配管142を介して、吸着塔110に設けられた排出口118に接続されており、吸着塔110内を吸引する。また、ポンプ140の出口には、第2排出配管144、分岐ユニット146、分離配管150(分離ガス流路)を介して、窒素貯留タンク152が接続されるとともに、第2排出配管144、分岐ユニット146、吸着配管160(吸着ガス流路)を介して、酸素貯留タンク162が接続される。また、分離配管150には、分離配管150を開閉するためのバルブ154が設けられ、吸着配管160には、吸着配管160を開閉するためのバルブ164が設けられている。
【0027】
制御手段170は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してガス分離装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御手段170は、ポンプ140を駆動制御するとともに、バルブ132、154、164を開閉制御する。
【0028】
(ガス分離方法)
続いて、ガス分離装置100を用いたガス分離方法について説明する。図2は、第1の実施形態にかかるガス分離方法の処理の流れを説明するためのフローチャートであり、図3は、吸着処理および脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図である。
【0029】
図2に示すように、ガス分離装置100では、吸着処理および脱着処理を含む処理工程を繰り返し行う。なお、運転開始前においてバルブ132、154、164は閉じられており、制御手段170は、ガス分離装置100の運転開始時にポンプ140の駆動を開始する。また、制御手段170は、停止指示が入力された場合には、ポンプ140を停止し、バルブ132、154、164を閉じる。
【0030】
(吸着処理:ステップS210)
制御手段170は、バルブ132、154を開、バルブ164を閉にする。そうすると、図3(a)に示すように、供給配管130が連通されて、空気が吸着塔110内に供給され、供給された空気は、吸着塔110を流通(通過)してポンプ140に到達することとなる。これにより、吸着塔110内に空気を供給して吸着剤120に酸素を吸着させるとともに、空気から酸素が取り除かれた窒素富化ガス(分離ガス)を吸着塔110内から排出する吸着処理が実行されることとなる。
【0031】
また、制御手段170は、バルブ154を開、バルブ164を閉にする。すなわち、分離配管150を連通させるとともに、吸着配管160を遮断することから、吸着塔110内から排出された窒素富化ガスは、分離配管150を流通して窒素貯留タンク152に送出されることとなる。
【0032】
(ステップS212)
制御手段170は、上記吸着処理ステップS210を開始してから、所定の吸着時間Tqが経過したか否かを判定し、吸着時間Tqが経過するまで(ステップS212におけるNO)、バルブ132、154を開状態、バルブ164を閉状態に維持し、吸着時間Tqが経過したら(ステップS212におけるYES)、ステップS214に処理を移す。なお、吸着時間Tqは、吸着塔110の容積、吸着剤120の種類や大きさ、空気中の酸素濃度、ポンプ140の能力に応じて予め設定される。
【0033】
(脱着処理:ステップS214)
制御手段170は、バルブ132、154を閉、バルブ164を開にする。そうすると、図3(b)に示すように、供給配管130が遮断され、ポンプ140によって吸着塔110内が吸引される(吸着塔110内が負圧になる)。これにより、酸素を吸着剤120から脱着させるとともに、脱着させることで得られた酸素富化ガス(吸着ガス)が吸着塔110内から排出される脱着処理が実行されることとなる。
【0034】
また、制御手段170はバルブ154を閉、バルブ164を開にする。すなわち、分離配管150を遮断するとともに、吸着配管160を連通させることから、吸着塔110内から排出された酸素富化ガスは、吸着配管160を流通して酸素貯留タンク162に送出されることとなる。
【0035】
(ステップS216)
制御手段170は、上記脱着処理ステップS214を開始してから、所定の脱着時間Tdが経過したか否かを判定し、脱着時間Tdが経過するまで(ステップS216におけるNO)、バルブ132、154を閉状態、バルブ164を開状態に維持し、脱着時間Tdが経過したら(ステップS216におけるYES)、吸着処理ステップS210に処理を移す。なお、脱着時間Tdは、吸着塔110の容積、吸着剤120の種類や大きさ、ポンプ140の能力に応じて予め設定される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態にかかるガス分離装置100およびこれを用いたガス分離方法によれば、吸着処理および脱着処理を1台のポンプ140で実行することができるため、吸着処理用のブロワと脱着処理用の真空ポンプを備えたガス分離装置と比較して、ガス分離装置100自体の容積を小さくすることができ、また、メンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態にかかるガス分離装置100では、吸着塔110よりも空気の流通方向の下流側にポンプ140を配する構成により、吸着塔110内およびポンプ140内を負圧もしくは大気圧に維持することができる。このため、従来のガス分離装置に設けられた、加圧機能および減圧機能の双方を担う空気ポンプと異なり、ポンプ140は、外部からポンプ140内への空気の流入を防止できるシール構造を備えれば足りる。したがって、従来のガス分離装置と比較して、ポンプ140のシール構造を簡素化することができ、ポンプ140自体のコストを、加圧機能および減圧機能の双方を担う従来の空気ポンプよりも削減することが可能となる。
【0038】
また、ポンプ140内のみならず、吸着塔110、供給配管130、第1排出配管142、第2排出配管144、分岐ユニット146、分離配管150、吸着配管160等のガス分離装置100の系内全体のシール構造を簡素化することが可能となり、ガス分離装置100のコストを削減することができる。
【0039】
また、加圧機能および減圧機能の双方を担う空気ポンプを備えた従来のガス分離装置では、空気ポンプが吸着塔よりも空気の流通方向の上流側に設けられているため、空気ポンプには、空気全量が流通することとなる。
【0040】
しかし、本実施形態にかかるガス分離装置100では、吸着塔110よりも空気の流通方向の下流側にポンプ140を配する構成により、ポンプ140には、窒素富化ガスのみもしくは酸素富化ガスのみが流通することとなり、従来のガス分離装置と比較してポンプ140の容量を小さくすることが可能となる。したがって、ポンプ140自体のコスト(設備費)を低減することができ、また、ポンプ140の消費電力を削減することが可能となる。
【0041】
また、混合ガスが腐食性のガスである場合、吸着塔よりも混合ガスの流通方向の上流側にポンプを配した従来のガス分離装置では、ポンプは、腐食性のガスを吸引することとなるため、ポンプ自体を耐食性とする必要がある。
【0042】
しかし、本実施形態にかかるガス分離装置100では、吸着塔110よりも混合ガスの流通方向の下流側にポンプ140を配しているため、ポンプ140は、分離ガスおよび吸着ガスのみを吸引し、混合ガス(腐食性のガス)が流入することはない。したがって、ポンプ140を耐食性にする必要はなく、ポンプ140自体のコスト(設備費)を低減することができる。
【0043】
(第2の実施形態:ガス分離装置300)
図4は、第2の実施形態にかかるガス分離装置300を説明する図である。図4に示すように、ガス分離装置300は、吸着塔110と、加熱部112と、断熱材114と、吸着剤120と、蓄熱体320(図4中、320a、320bで示す)と、供給配管(供給流路)130A、130Bと、バルブ132A、132Bと、ポンプ140と、接続管330、340と、バルブ332、342と、分岐ユニット350と、第1排出配管352と、第2排出配管144と、分岐ユニット146と、分離配管150と、窒素貯留タンク152と、バルブ154と、吸着配管160と、酸素貯留タンク162と、バルブ164と、制御手段370とを含んで構成される。なお、上述したガス分離装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成および機能の異なる蓄熱体320、供給配管130A、130B、バルブ132A、132B、接続管330、340、バルブ332、342、分岐ユニット350、第1排出配管352、制御手段370について説明する。
【0044】
本実施形態の吸着塔110は、蓄熱体320を収容している。蓄熱体320は、吸着剤120よりも空気の流通方向の上流側および下流側の双方に配される。換言すれば、吸着塔110内において、吸着剤120が2つの蓄熱体320で挟まれている。また、ポンプ140が駆動されることで、空気、窒素富化ガス、および、酸素富化ガスが、蓄熱体320を流通することとなる。
【0045】
蓄熱体320は、蓄熱する機能(熱を保持する機能)を有し、窒素富化ガスおよび酸素富化ガスの熱を蓄熱して、蓄熱した熱を空気に付与(伝熱)する。つまり、窒素富化ガスおよび酸素富化ガスと、空気とは、蓄熱体320によって間接的に熱交換されることとなる。蓄熱体320による熱交換機構(蓄熱機構および伝熱機構)については、後に詳述する。
【0046】
吸着剤120における流体(空気、窒素富化ガス、酸素富化ガス)の流通方向の両側に蓄熱体320a、320bを配することにより、吸着剤120から外部への熱の流出を、例えば、10%未満に低減することができる。したがって、吸着剤120の加熱に要するエネルギーを低減することができ、吸着剤120の加熱に要する電力原単位を削減することが可能となる。つまり、低コストで、窒素富化ガスおよび酸素富化ガスを製造することができる。
【0047】
蓄熱体320は、例えば、ライナー間ピッチ2mm程度、平板厚さ0.5mm程度のステンレス製蓄熱材ハニカムを挙げることができる。また、蓄熱体320は、吸着剤120と同一の部材で構成されていてもよい。かかる構成により、蓄熱体320においても酸素を吸着および脱着することが可能となる。さらに、蓄熱体320は、所定の圧力および吸着剤120よりも常温(例えば、5℃〜30℃)に近い温度環境下で空気に接触すると、酸素を吸着する物質(例えば、活性炭(MSC)や、低温で作動する複合酸化物等の吸着剤)で構成されてもよい。これにより、蓄熱体320において、より効率的に酸素を吸着および脱着することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態において、吸着塔110の一方の開口310A(一端側)に供給配管130Aが接続されており、他方の開口310B(他端側)に供給配管130Bが接続されており、供給配管130Aにはバルブ132Aが、供給配管130Bにはバルブ132Bが設けられている。本実施形態の吸着処理では、空気が開口310A(供給配管130A)を通じて吸着塔110内に供給されるとともに、窒素富化ガスが開口310Bを通じて吸着塔110内から排出される場合と、空気が開口310B(供給配管130B)を通じて吸着塔110内に供給されるとともに、窒素富化ガスが開口310Aを通じて吸着塔110内から排出される場合があるため、開口310A、310Bそれぞれが、空気の供給口としても、窒素富化ガスおよび酸素富化ガスの排出口としても機能することとなる。
【0049】
また、吸着塔110の開口310Aは、接続管330、分岐ユニット350、第1排出配管352を介してポンプ140の入口に接続されている。吸着塔110の開口310Bは、接続管340、分岐ユニット350、第1排出配管352を介してポンプ140の入口に接続されている。また、接続管330にはバルブ332が、接続管340にはバルブ342が設けられている。
【0050】
制御手段370は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してガス分離装置300全体を管理および制御する。本実施形態において、制御手段370は、ポンプ140を駆動制御するとともに、バルブ132A、132B、332、342、154、164を開閉制御する。
【0051】
(ガス分離方法)
続いて、ガス分離装置300を用いたガス分離方法について説明する。図5は、第2の実施形態にかかるガス分離方法の処理の流れを説明するためのフローチャートであり、図6は、第1の吸着処理、第1の脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図であり、図7は、第2の吸着処理、第2の脱着処理におけるバルブの開閉状態を説明するための図である。
【0052】
図5に示すように、ガス分離装置300では、第1の吸着処理および第1の脱着処理を含む処理工程と、第2の吸着処理および第2の脱着処理を含む処理工程を交互に繰り返す。なお、運転開始前においてバルブ132A、132B、332、342、154、164は閉じられており、制御手段370は、ガス分離装置300の運転開始時にポンプ140の駆動を開始する。また、制御手段370は、停止指示が入力された場合には、ポンプ140を停止し、バルブ132A、132B、332、342、154、164を閉じる。
【0053】
(第1の吸着処理:ステップS410)
制御手段370は、バルブ132A、342、154を開、バルブ132B、332、164を閉にする。そうすると、図6(a)に示すように、開口310Aが供給口として機能し、供給配管130Aを通じて空気が吸着塔110内に供給され、供給された空気は、吸着塔110を流通(通過)してポンプ140に到達することとなる。これにより、吸着処理が実行されることとなる。
【0054】
なお、第1の吸着処理ステップS410においては、常温の空気が、蓄熱体320aを流通して吸着剤120に到達するとともに、吸着剤120によって加熱された窒素富化ガスが、蓄熱体320bを流通することとなる。このため、蓄熱体320bは、流通過程において窒素富化ガスによって加熱されることとなる。
【0055】
また、制御手段370は、バルブ342、154を開、バルブ164を閉にする。すなわち、接続管340、分離配管150を連通させるとともに、接続管330、吸着配管160を遮断することから、吸着塔110内から排出された窒素富化ガスは、接続管340、分離配管150を流通して窒素貯留タンク152に送出されることとなる。
【0056】
(ステップS412)
制御手段370は、上記第1の吸着処理ステップS410を開始してから、所定の吸着時間Tqが経過したか否かを判定し、吸着時間Tqが経過するまで(ステップS412におけるNO)、バルブ132A、342、154を開状態、バルブ132B、332、164を閉状態に維持し、吸着時間Tqが経過したら(ステップS412におけるYES)、ステップS414に処理を移す。
【0057】
(第1の脱着処理:ステップS414)
制御手段370は、バルブ132A、342、154を閉、バルブ332、164を開にする。ここで、バルブ132Bは閉状態に維持されているため、図6(b)に示すように、供給配管130Bの遮断が維持されたまま、供給配管130Aを通じて、ポンプ140によって吸着塔110内が吸引される(吸着塔110内が負圧になる)。これにより、脱着処理が実行されることとなる。
【0058】
なお、第1の脱着処理ステップS414においては、吸着剤120によって加熱された酸素富化ガスが蓄熱体320aを流通することとなるため、蓄熱体320aは、流通過程において酸素富化ガスによって加熱されることとなる。
【0059】
また、制御手段370はバルブ342、154を閉、バルブ332、164を開にする。すなわち、接続管340、分離配管150を遮断するとともに、接続管330、吸着配管160を連通させることから、吸着塔110内から排出された酸素富化ガスは、接続管330、吸着配管160を流通して酸素貯留タンク162に送出されることとなる。
【0060】
(ステップS416)
制御手段370は、上記第1の脱着処理ステップS414を開始してから所定の脱着時間Tdが経過したか否かを判定し、脱着時間Tdが経過するまで(ステップS416におけるNO)、バルブ132A、132B、342、154を閉状態、バルブ332、164を開状態に維持し、脱着時間Tdが経過したら(ステップS416におけるYES)、ステップS418に処理を移す。
【0061】
このように、制御手段370は、第1の吸着処理ステップS410において、吸着塔110の一端側から窒素富化ガスを排出し、第1の脱着処理ステップS414において、吸着塔110の他端側から酸素富化ガスを排出する。これにより、吸着剤120の両側に配された蓄熱体320a、320bを、双方とも加熱することができる。
【0062】
しかし、1の処理工程(第1の吸着処理ステップS410、および、第1の脱着処理ステップS414)において、蓄熱体320aは、高温の酸素富化ガスによって加熱され、蓄熱体320bは、高温の窒素富化ガスによって加熱される。ただし、空気中における窒素と酸素との割合は、約8:2であるため、蓄熱体320を流通する流体の流量に差(約4倍)が生じる。つまり、蓄熱体320に対する加熱量に差が生じてしまう。
【0063】
そこで、制御手段370は、後述する第2の吸着処理S418において、前回の処理工程の吸着処理(第1の吸着処理S410)で窒素富化ガスを排出した側と異なる側から窒素富化ガスを排出し、後述する第2の脱着処理S422において、前回の処理工程の脱着処理(第1の脱着処理S414)で酸素富化ガスを排出した側と異なる側から酸素富化ガスを排出する。こうすることで、蓄熱体320a、320bを実質的に均一に加熱することが可能となる。
【0064】
(第2の吸着処理:ステップS418)
制御手段370は、バルブ132B、332、154を開、バルブ132A、342、164を閉にする。そうすると、図7(a)に示すように、開口310Bが供給口として機能し、供給配管130Bを通じて空気が吸着塔110内に供給され、供給された空気は、吸着塔110を流通(通過)してポンプ140に到達することとなる。これにより、吸着処理が実行されることとなる。
【0065】
つまり、第2の吸着処理ステップS418においては、吸着剤120によって加熱された窒素富化ガスが、蓄熱体320aを流通することとなる。このため、蓄熱体320aは、流通過程において窒素富化ガスによって加熱されることとなる。
【0066】
また、第2の吸着処理ステップS418においては、常温の空気が蓄熱体320bを流通して、吸着剤120に到達することとなる。このように、制御手段370は、第2の吸着処理ステップS418において、吸着塔110の開口310A(一端側)および開口310B(他端側)のうち、前回の吸着処理(第1の吸着処理ステップS410)において窒素富化ガスを排出した側から、空気を供給する。換言すれば、制御手段370は、前回高温の窒素富化ガスによって加熱された蓄熱体320bに空気を流通させることにより、流通過程において、蓄熱体320bによって空気を加熱するとともに、蓄熱体320bを、空気によって冷却する。つまり、蓄熱体320bによって、窒素富化ガスと、空気とを間接的に熱交換させる。これにより、別途の加熱装置を要さずとも、吸着剤120に到達する空気を加熱することができ、吸着剤120の加熱量を低減することが可能となる。
【0067】
また、制御手段370は、バルブ332、154を開、バルブ342、164を閉にする、すなわち、接続管330、分離配管150を連通させるとともに、接続管340、吸着配管160を遮断することから、吸着塔110内から排出された窒素富化ガスは、接続管330、分離配管150を流通して窒素貯留タンク152に送出されることとなる。
【0068】
(ステップS420)
制御手段370は、上記第2の吸着処理ステップS418を開始してから、所定の吸着時間Tqが経過したか否かを判定し、吸着時間Tqが経過するまで(ステップS420におけるNO)、バルブ132B、332、154を開状態、バルブ132A、342、164を閉状態に維持し、吸着時間Tqが経過したら(ステップS420におけるYES)、ステップS422に処理を移す。
【0069】
(第2の脱着処理:ステップS422)
制御手段370は、バルブ132B、332、154を閉、バルブ342、164を開にする。ここで、バルブ132Aは閉状態に維持されているため、図7(b)に示すように、供給配管130Aの遮断が維持されたまま、供給配管130Bを通じて、ポンプ140によって吸着塔110内が吸引される(吸着塔110内が負圧になる)。これにより、脱着処理が実行されることとなる。
【0070】
つまり、第2の脱着処理ステップS422においては、吸着剤120によって加熱された酸素富化ガスが、蓄熱体320bを流通することとなる。このため、蓄熱体320bは、流通過程において酸素富化ガスによって加熱されることとなる。
【0071】
また、制御手段370はバルブ332、154を閉、バルブ342、164を開にする。すなわち、接続管330、分離配管150を遮断するとともに、接続管340、吸着配管160を連通させることから、吸着塔110内から排出された酸素富化ガスは、接続管340、吸着配管160を流通して酸素貯留タンク162に送出されることとなる。
【0072】
(ステップS424)
制御手段370は、上記第2の脱着処理ステップS422を開始してから、所定の脱着時間Tdが経過したか否かを判定し、脱着時間Tdが経過するまで(ステップS424におけるNO)、バルブ132A、132B、332、154を閉状態、バルブ342、164を開状態に維持し、脱着時間Tdが経過したら(ステップS424におけるYES)、ステップS410に処理を移す。
【0073】
そして、次回の処理工程の第1の吸着処理ステップS410では、前々回の処理工程の第1の脱着処理S414で酸素富化ガスによって、また、前回の処理工程の第2の吸着処理S418で窒素富化ガスによって加熱された蓄熱体320aを通じて常温の空気を吸着剤120に到達させるため、酸素富化ガスおよび窒素富化ガスの熱で常温の空気を加熱することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態にかかるガス分離装置300およびこれを用いたガス分離方法によれば、吸着剤120よりも空気の流通方向の上流側、および、下流側の双方に蓄熱体320を配するといった簡易な構成で、加熱部112による吸着剤120の加熱エネルギーを低減することができ、ガス分離装置300のランニングコストを削減することが可能となる。
【0075】
また、1の蓄熱体320に着目すると、吸着処理において常温の空気(100%)が通過し、次に行われる脱着処理において高温の酸素富化ガス(約20%)が通過し、続いて行われる吸着処理において高温の窒素富化ガス(約80%)が通過するという処理を繰り返す。したがって、1の蓄熱体320において、高温の酸素富化ガスおよび高温の窒素富化ガスが排出されるときに保持した熱と、空気が供給されるときに付与する熱とを実質的に等しくすることが出来るため、1の蓄熱体320において外部から加えられる熱を理論上ゼロとすることができる。
【0076】
なお、本明細書のガス分離方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
例えば、上記実施形態において、混合ガスとして空気を、被吸着物として酸素を、分離ガスとして窒素富化ガスを、吸着ガスとして酸素富化ガスを例に挙げて説明した。しかし、混合ガス、被吸着物、分離ガス、吸着ガスは、吸着剤の種類に応じて適宜変更されるものである。
【0079】
また、上記実施形態において、吸着剤120としてペロブスカイト型酸化物を例に挙げて説明したため、温度保持手段(加熱部112および断熱材114)が、吸着剤120を常温よりも高温に保持する構成を例に挙げて説明した。しかし、温度保持手段は、被吸着物を吸着する温度に吸着剤120を保持すればよい。
【0080】
例えば、吸着剤120をNa−K−A系ゼオライトや、Na−X系ゼオライトとした場合、温度保持手段は、常温よりも低温(例えば、−30℃)に吸着剤120を保持する。なお、Na−K−A系ゼオライトを吸着剤120として用いた場合、吸着剤120は、混合ガス中の酸素を吸着することとなる。また、Na−X系ゼオライトを吸着剤120として用いた場合、吸着剤120は、混合ガス中のキセノンを吸着することとなる。
【0081】
また、常温よりも低温に吸着剤120を保持する場合、温度保持手段は、被吸着物を吸着する温度に吸着剤120を冷却する冷却部と断熱材とを含んで構成されるとよい。
【0082】
また、被吸着物を吸着する温度が常温より低温である吸着剤120を採用する場合、蓄熱体320は、混合ガスの熱を蓄熱して分離ガスおよび吸着ガスのうちいずれか一方または双方に伝熱することとなり、混合ガスを冷却することとなる。また、蓄熱体320は、外部から吸着剤120への熱の流入を低減することとなる。
【0083】
また、上記実施形態において、ペロブスカイト型酸化物として、La1−xSrCo1−yFe3−z(La:Sr:Co:Fe=1:9:9:1)を例に挙げたが、La1−xSrCo1−yFe3−z(La:Sr:Co:Fe=1:9:5:5)であってもよい。また、異なる原子の組み合わせのペロブスカイト型酸化物として、BaFe1−y3−zが挙げられる。
【0084】
また、上記実施形態において、吸着剤120と蓄熱体320とが分離して形成される場合を例に挙げて説明した。しかし、吸着剤120と蓄熱体320とが連続して形成されてもよい。例えば、吸着剤120と蓄熱体320とが同一の部材で構成されている場合、吸着剤120と蓄熱体320とが連続して形成されることとなる。
【0085】
また、上記実施形態において、吸着塔110内に蓄熱体320が収容される構成を例に挙げて説明した。しかし、蓄熱体320は、少なくとも、吸着剤120よりも混合ガスの流通方向の上流側、および、下流側の双方に配されればよく、必ずしも吸着塔110内に配される必要はない。
【0086】
また、上記実施形態において、吸着剤120が空気から窒素富化ガスと、酸素富化ガスとを分離する構成を例に挙げて説明したため、制御手段370は、吸着処理において、窒素富化ガス(分離ガス)を排出する側を前回の吸着処理と異ならせるとともに、前回の吸着処理において窒素富化ガスを排出した側から空気(混合ガス)を供給する構成について説明した。しかし、吸着ガスが分離ガスよりも容量が多い場合に、制御手段は、脱着処理において、吸着ガスを排出する側を前回の脱着処理と異ならせるとともに、吸着処理において、前回の脱着処理において脱着ガスを排出した側から混合ガスを供給するとよい。
【0087】
また、上記第2の実施形態において、第1の吸着処理および第1の脱着処理、もしくは、第2の吸着処理および第2の脱着処理において、窒素富化ガス(分離ガス)を排出する側と、酸素富化ガス(吸着ガス)を抜く側とを異ならせる構成を例に挙げて説明した。しかし、第1の吸着処理および第1の脱着処理、もしくは、第2の吸着処理および第2の脱着処理において、窒素富化ガス(分離ガス)を排出する側と、酸素富化ガス(吸着ガス)を抜く側とは、同じであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、供給配管130の他端の開口が大気開放される構成を例に挙げて説明した。しかし、供給配管130に混合ガスが流通されればよく、供給配管130の他端の開口に混合ガスの供給源(例えば、ボンベ、タンク)を接続してもよい。
【0089】
また、上記実施形態において、制御手段370は、脱着処理において、脱着処理を開始してから、所定の脱着時間Tdが経過したか否かを判定し、脱着時間Tdが経過するまで脱着処理を実行し、脱着時間Tdが経過したら、次回の吸着処理の実行を開始する構成を例に挙げて説明した。しかし、ガス分離装置100が、吸着塔110内の圧力を測定する圧力測定部を備え、制御手段は、圧力測定部が測定した吸着塔110内の圧力に基づいて、脱着処理から吸着処理への切り替えを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、混合ガスから所定のガスを分離するガス分離装置およびガス分離方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
100、300 ガス分離装置
110 吸着塔
112 加熱部(温度保持手段)
114 断熱材(温度保持手段)
120 吸着剤
130 供給配管(供給流路)
140 ポンプ
150 分離配管(分離ガス流路)
160 吸着配管(吸着ガス流路)
170、370 制御手段
320 蓄熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7