(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、以下に示す複数の実施の形態に共通の事項を説明する。
本実施の形態で説明するインバータ回路は、例えばエアコンや冷蔵庫等の圧縮機に用いられるモータなどの負荷に電力を供給するために用いられる。すなわち、インバータ回路は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換(整流)し、その直流電圧を平滑化した後に、負荷を制御するのに適した交流電圧に変換する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態が適用されるインバータ回路100の一例を示す図である。
ここでは、交流電源は三相交流電源PSであるとし、モータなどの負荷も三相交流電圧で制御されるモータMであるとする。
インバータ回路100は、三相交流電源PSから供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流部1と、整流部1から出力された直流電圧を平滑化する平滑化部2とを備える。また、インバータ回路100は、平滑化された直流電圧を三相交流電圧に変換して、モータMに供給するインバータ部3を備える。そして、インバータ回路100は、整流部1と平滑化部2との間に設けられた抑制部6を備える。抑制部6は、平滑化部2の直流電圧が印加されるDCリンク4における過電圧又は過電流の発生を抑制する。
【0025】
インバータ回路100において、整流部1、抑制部6、平滑化部2、インバータ部3の順に接続されている。すなわち、整流部1と抑制部6とは、端子P1、P2で接続されている。抑制部6と平滑化部2とは、端子P3、P4で接続されている。平滑化部2とインバータ部3とは、端子P5、P6で接続されている。後述するように、端子P2、P4、P6は、共通電位を供給する共通電位線5に接続されている。
ここで、端子P1は整流部1の一方の出力端子、端子P2は整流部1の他方の出力端子である。また、端子P3は平滑化部2の一方の入力端子、端子P4は平滑化部2の他方の入力端子である。
【0026】
整流部1は、例えば6つの整流ダイオードDcから構成されるダイオードブリッジである。三相交流電源PSから供給される各相の交流電圧を直流電圧に整流するように、6つの整流ダイオードDcがブリッジ状に接続されている。
【0027】
平滑化部2は、平滑コンデンサ(平滑キャパシタ)Csを備える。ここでは、静電容量及び体積が大きい電解コンデンサを用いず、静電容量及び体積が小さいセラミックコンデンサやフィルムコンデンサを用いている。インバータ回路100は、いわゆるコンデンサ(キャパシタ)レスである。
【0028】
インバータ部3は、例えば6つのスイッチング回路を備える。各スイッチング回路は、スイッチング素子Stと、逆方向電流を流す帰還ダイオードDfとを備える。そして、インバータ部3は、各スイッチング回路におけるスイッチング素子Stのオン・オフの制御により、モータMに対して三相交流電圧を供給する。
インバータ部3は、平滑化部2から出力される直流電圧において、脈流の振幅が予め定められた値以上であっても、モータMに対してその脈流の影響が表れないように制御される。よって、平滑化部2から出力される直流電圧における脈流の振幅が大きくても、平滑化部2に電解コンデンサを用いた場合と同様なモータMの制御が実現できる。
なお、スイッチング素子Stには、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などを用いうる。
【0029】
モータMは、例えばDCブラシレスモータである。なお、モータMは、他の三相交流モータであってもよい。
抑制部6については、後述する。以下の複数の実施の形態で説明する抑制部6は、それぞれを区別するため、抑制部6A、6Bなどと表記する。
【0030】
そして、平滑化部2における平滑コンデンサCsの一方の端子及び、この端子が接続された端子P2、P3の間など、直流電圧が印加される部分がDCリンク4である。なお、平滑コンデンサCsの他方の端子は、端子P2、P4、P6に接続された共通電位線5に接続されている。DCリンク4の電圧(DCリンク電圧)とは、共通電位線5の電位とDCリンク4の電位との差である。
【0031】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の一例を示す図である。
第1の実施の形態におけるインバータ回路100は、
図1に示した抑制部6として抑制部6Aを備えている。抑制部6Aは、例えばモータMが緊急停止した際などに発生する誘導起電流によって、インバータ回路100が故障するのを抑制する。すなわち、モータMが緊急停止した際に発生する誘導起電流が、インバータ部3を構成する各スイッチング回路に流れる。これにより、DCリンク4の電圧が上昇する。この際、DCリンク4の電圧がスイッチング素子Stの破壊電圧以上の過電圧になると、スイッチング素子Stが破壊されるおそれがある。そこで、抑制部6Aは、モータMの緊急停止の際などに、DCリンク4が、過電圧となることを抑制する。
また、抑制部6Aは、電源電流における高調波電流成分を抑制する。
【0032】
抑制部6Aは、DCリアクタLp、抵抗Rp、コンデンサCpを備える。DCリアクタLpは、端子P1と端子P3との間に接続されている。抵抗RpとコンデンサCpとは直列接続された直列回路であって、DCリアクタLpと並列接続されている。
【0033】
例えば、平滑化部2における平滑コンデンサCsの静電容量は、1〜100μFが好ましく、ここでは40μFに設定されている。DCリアクタLpのインダクタンスは、1〜10mHが好ましく、ここでは2mHに設定されている。抵抗Rpの抵抗値は、5〜100Ωが好ましく、ここでは15Ωに設定されている。コンデンサCpの静電容量は、1〜100μFが好ましく、ここでは10μFに設定されている。
なお、抵抗Rpの抵抗値及びコンデンサCpの静電容量は、DCリンク4の電圧上昇が、スイッチング素子Stの破壊電圧を下回るように設定されればよい。
【0034】
<DCリンク4の過電圧の抑制>
ここで、インバータ回路100における抑制部6Aにより、DCリンク4の過電圧が抑制されることを説明する。
図3は、第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100を示す図である。
第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100では、
図2に示したインバータ回路100において、抑制部6Aの代わりにDCリアクタLdcを備えている。
なお、DCリアクタLdcのインダクタンスは2mHに設定されている。
他の構成は、
図2に示したインバータ回路100と同様であるので、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0035】
図4は、
図2に示す第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100と、
図3に示す第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100とを比較した図である。ここでは、モータMが緊急停止した際に、最もDCリンク4の電圧が大きくなる可能性がある最悪ケースについて、DCリンク4の電圧(DCリンク電圧)を示している。具体的には、モータMを5ms近傍において緊急停止させて、DCリンク4の電圧をシミュレーションした。なお、
図4では、
図3に示した第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100を“DCリアクタLdcのみのインバータ回路”と表記する。
【0036】
図4に示すように、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100では、DCリンク電圧の上昇は873Vである。これに対し、第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100(DCリアクタLdcのみのインバータ回路100)では、DCリンク電圧の上昇は、972Vである。すなわち、インバータ回路100の抑制部6Aは、DCリンク4の電圧上昇を100V程度抑制している。
【0037】
図5は、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の実機による実測結果を示す図である。
図5の上部は、モータMの緊急停止の際における測定期間全体を、
図5の下部は、上部の中央部においてDCリンク4の電圧が上昇している部分の拡大図である。
図5では、実測されたDCリンク4の電圧(DCリンク電圧)及びDCリアクタLpを流れる電流(DCリアクタ電流)を示している。
図4に示したシミュレーション結果が、実際のインバータ回路100のDCリンク4の電圧(DCリンク電圧)の上昇を模擬できているか否かを、実機により確認した。
【0038】
図5は、最悪ケースを完全に実現したものではないが、モータMの緊急停止後におけるDCリンク4の電圧(DCリンク電圧)の上昇傾向をほぼ再現できている。すなわち、510VであったDCリンク電圧が、モータMの緊急停止後に、791Vに上昇している。
なお、この791Vは、シミュレーション結果で得られた873Vよりも低い。
【0039】
以上説明したように、インバータ回路100に抑制部6Aを設けることにより、DCリンク4の過電圧の発生が抑制されている。
【0040】
<高調波電流の抑制>
次に、インバータ回路100における抑制部6Aが、モータMの負荷変動などにより発生する高調波電流を抑制できることを説明する。
図6は、インバータ回路100の3つのモデル(シミュレーションモデル)について、電源電流の周波数応答特性を示した図である。各シミュレーションモデルでは、
図2に示していないEMI(Electro-Magnetic Interference)フィルタ7を加えるとともに、モータMを負荷電流源CCで代替させている。
EMIフィルタ7は、整流部1と抑制部6(抑制部6を備えない場合は、平滑化部2)との間に設けられ、DCリアクタLfとコンデンサCfとを備える。
ここでは、一例として、DCリアクタLfのリアクタンスは20μH、コンデンサCfの静電容量は1μFである。
なお、
図6では、インバータ回路100の三相の内の一相のみ取り出して記載している。
【0041】
各シミュレーションモデルについて説明する。
第1のシミュレーションモデルは、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100から抑制部6Aを省略したものである。
第2のシミュレーションモデルは、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の抑制部6Aの代わりに、DCリアクタLdcを設けたものである。すなわち、第2のシミュレーションモデルは、
図3に示した第1の実施の形態が適用されないインバータ回路100に対応する。
第3のシミュレーションモデルは、
図2に示した第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100に対応する。
【0042】
第1のシミュレーションモデルは、
図6に示すように、抑制部6Aを備えていない。よって、EMIフィルタ7におけるDCリアクタLf及びコンデンサCfと、平滑コンデンサCsとでLC共振回路が構成される。上述したように、DCリアクタLfのリアクタンスは20μH、コンデンサCfの静電容量は1μF、平滑コンデンサCsの静電容量は、40μFである。したがって、共振周波数は5.56kHzとなる。
共振周波数が他のシミュレーションモデルに比べ高周波数帯域側になり、高調波電流成分のうち特に高周波数帯域のものが抑制できない。よって、例えば各国の高調波対策基準を満たすことができないおそれがある。
【0043】
第2のシミュレーションモデルは、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の抑制部6Aの代わりに、DCリアクタLdcを設けている。よって、DCリアクタLdcと平滑コンデンサCsとでLC共振回路が構成される。上述したように、DCリアクタLdcのリアクタンスは2mH、平滑コンデンサCsの静電容量は40μFである。したがって、100〜1000Hzの帯域に共振周波数が発生する。
このことから、高調波電流の高周波数帯域成分は十分に抑えることができる。しかし、このLC共振回路の共振周波数において共振ピークが大きいために、高調波電流のうち低周波数帯域成分が増幅され、十分な高調波電流対策とならないおそれがある。
【0044】
これらに対して、第3のシミュレーションモデルは、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100に対応し、抑制部6Aを備えている。これにより、DCリアクタLpと平滑コンデンサCsとによるLC共振回路の共振周波数における共振ピークが低減され、高調波電流のうち低周波数帯域成分が十分に低減される。
すなわち、負荷電流源CCが、高調波電流の発生源となる。そして、この高調波電流の高周波数帯域成分が平滑コンデンサCsにより、バイパスされる。この高調波電流の低周波数帯域成分がDCリアクタLpにより抑制される。さらに、平滑コンデンサCsとDCリアクタLpとのLC共振回路を流れる電流が、抵抗RpとコンデンサCpとの直列回路により低減される。
【0045】
次に、各シミュレーションモデルにおける電源の電流波形について説明する。
図7は、第1のシミュレーションモデルにおける電源の電流波形を示す図である。
図7(a)は第1のシミュレーションモデルを示す図、
図7(b)は、電源電流と時間との関係を示す図である。
図7(b)に示す電源の電流波形には、
図6に示した高周波数帯域の高調波が重畳している。
【0046】
図8は、第2のシミュレーションモデルにおける電源の電流波形を示す図である。
図8(a)は第2のシミュレーションモデルを示す図、
図8(b)は、電源電流と時間との関係を示す図である。
図8(b)に示す電源の電流波形には、
図7に示した高周波数帯域の高調波は抑制されているが、
図6に示した低周波数帯域の高調波が重畳している。しかも、低周波数帯域の高調波は、次に示す第3のシミュレーションモデルに比べて大きい。
【0047】
図9は、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100に対応する第3のシミュレーションモデルにおける電源の電流波形を示す図である。
図9(a)は第3のシミュレーションモデルを示す図、
図9(b)は、電源電流の時間との関係を示す図である。
図9(b)に示す電源の電流波形では、
図8に比べ、低周波数帯域の高調波の振幅が低減されている。
【0048】
以上説明したように、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100に対応する第3のシミュレーションモデルにおいて、電源電流における高調波電流が最も抑制されている。
【0049】
次に、各シミュレーションモデルについて、電源高調波電流の指標であるTHC(Total Harmonic Current)及びPWHC(Partial Weighted Harmonic Current)を算出した結果を説明する。
THC及びPWHCは、それぞれ式(1)及び式(2)により算出される。
【0051】
ここで、Ih:次数hにおける電流スペクトラム振幅、Iref:電源周波数(h=1)における電流スペクトラム振幅、電源周波数:50Hzである。
【0052】
表1は、算出されたTHC、PWHCを示す表である。表1には、上記した3つのシミュレーションモデルについて、THC、PWHCを示している。
【0054】
第1のシミュレーションモデルでは、THCは最も小さい30.2%であるが、PWHCは最も大きい56.2%である。第2のシミュレーションモデルでは、THCは最も大きい39.0%であるが、PWHCは最も小さい50.0%である。これらに対し、第3のシミュレーションモデルでは、THCが31.8%と最も小さい値(30.2%)に近く且つPWHCが50.5%と最も小さい値(50.0%)に近い。
すなわち、第3のシミュレーションモデルに対応する第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100は、電源電流における高調波電流をバランスよく抑制している。
【0055】
第1の実施の形態におけるインバータ回路100は、平滑化部2に静電容量が小さく、体積も小さい平滑コンデンサCsを使用して全体を小型化している。しかし、抑制部6Aは、モータMが緊急停止した際などに発生する誘導起電流によって、DCリンク4が過電圧になることを抑制する。よって、DCリンク4の電圧が、インバータ部3のスイッチング素子Stなどが破壊電圧を超えて上昇して、インバータ回路100が故障することが抑制される。
【0056】
さらに、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の抑制部6Aは、平滑コンデンサCsとDCリアクタLpとが構成するLC共振回路の共振ピークを低減する。これにより、電源電流における高調波電流を低減している。
【0057】
加えて、抑制部6Aは、DCリアクタLpと、DCリアクタLpに並列接続された、抵抗RpとコンデンサCpとの直列回路により構成されている。すなわち、抑制部6Aは、受動回路(受動部品)のみで構成されている。よって、複雑な制御回路(制御ロジック)を用いることなく、モータMの緊急停止の際などに発生するDCリンク4の過電圧が抑制される。したがって、インバータ回路100を廉価に製造できる。
【0058】
次に、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例について説明する。
上記においては、抑制部6Aは、主としてインバータ部3が破壊されることを抑制するものであった。しかし、その他の素子の破壊電圧に基づいて抑制部6Aを構成する抵抗Rpの抵抗値及びコンデンサCpの静電容量を設定してもよい。
【0059】
また、インバータ回路100の故障とは、インバータ部3が破壊されることだけを指すものではない。例えば、モータMが緊急停止した際に発生する誘導起電流により何らかの不具合が発生して、インバータ回路100が機能を十分に果たせなくなることを含む概念である。
【0060】
上記においては、抑制部6Aの抵抗Rpの抵抗値及びコンデンサCpの静電容量などのパラメータは、上記の故障を防止する観点から設定した。しかし、例えば、平滑コンデンサCsとDCリアクタLpとが構成するLC共振回路の共振ピークの抑制も勘案して設定してもよい。そして、DCリンク4の電圧とLC共振回路の共振ピークの双方について予め定められた重みづけを行いながら上記のパラメータを設定してもよい。
【0061】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100における抑制部6Aは、DCリアクタLpと、DCリアクタLpに並列接続された、抵抗RpとコンデンサCpとの直列回路とにより構成されていた。この抑制部6Aにより、モータMの緊急停止の際などに発生するDCリンク4の過電圧を抑制した。
第2の実施の形態のインバータ回路100は、第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100における抑制部6Aと異なる構成の抑制部6Bを備える。そして、抑制部6Bにより、モータMの緊急停止の際などに発生するDCリンク4の過電圧を抑制する。
【0062】
図10は、第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100の一例を示す図である。
第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100は、
図1の抑制部6として抑制部6Bを備えている。
図1に示した第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100と同じ部分は、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分である抑制部6Bを説明する。
【0063】
抑制部6Bは、サージアブソーバSAと、制御スイッチ素子Scと、過電圧検出手段の一例としての過電圧検出回路61とを備えている。サージアブソーバSAと制御スイッチ素子Scとは、直列に接続されている。サージアブソーバSA側が、端子P3(端子P1)に接続され、制御スイッチ素子Sc側が、端子P4(端子P2)に接続されている。
そして、過電圧検出回路61は、端子P3(端子P1)と端子P4(端子P2)との間に設けられ、DCリンク4の電圧を検出する。
【0064】
サージアブソーバSAには、例えば酸化亜鉛を用いたバリスタやマイクロギャップなどを用い得る。バリスタは、予め定められた電圧(放電開始電圧)以上の電圧が印加されると、オフ状態からオン状態に移行し、瞬時に電流が流れ始める特性を有している。バリスタは、電力耐量(エネルギ耐量)が大きく、放電開始電圧以上になったときに、放電により瞬時に大きな電流が流れても、放電に伴う瞬時電力を吸収できる。
制御スイッチ素子Scは、例えばIGBTなどであって、制御ゲートGcに予め定められた電圧が印加されると、オフ状態からオン状態に移行する。
過電圧検出回路61は、DCリンク4の電圧が予め定められた検出電圧を超えたか否かを検出する。そして、DCリンク4の電圧が検出電圧を超えた場合に、制御スイッチ素子Scをオフ状態からオン状態に移行させる電圧を制御ゲートGcに供給する。
なお、サージアブソーバSAの放電開始電圧は、過電圧検出回路61の検出電圧より低く設定されている。
【0065】
抑制部6Bの動作を説明する。
インバータ回路100が正常に動作している場合には、DCリンク4の電圧は、過電圧検出回路61の検出電圧以下である。この場合、過電圧検出回路61は、制御スイッチ素子Scをオフ状態に維持する電圧を制御ゲートGcに供給する。制御スイッチ素子Scがオフ状態であるので、制御スイッチ素子Scに直列接続されたサージアブソーバSAには電流が流れない。
モータMの緊急停止の際などに、DCリンク4の電圧が上昇して検出電圧を超える。すると、過電圧検出回路61は、制御スイッチ素子Scがオフ状態からオン状態に移行させる電圧を制御ゲートGcに供給する。これにより、制御スイッチ素子Scがオン状態になって、制御スイッチ素子ScとサージアブソーバSAとの直列回路に、DCリンク4の電圧が印加される。このとき、DCリンク4の電圧は、制御スイッチ素子ScとサージアブソーバSAとで分圧される。オン状態の制御スイッチ素子Scの抵抗値はサージアブソーバSAの抵抗値に比べて小さい。よって、DCリンク4の電圧のほとんどは、サージアブソーバSAに印加される。
このとき、サージアブソーバSAに印加された電圧がサージアブソーバSAの放電開始電圧を超えているので、サージアブソーバSAは、オフ状態からオン状態に移行する。そして、DCリンク4から、サージアブソーバSA及び制御スイッチ素子Scを介して、共通電位線5に向かって電流が流れ、DCリンク4の電圧が低下する。
【0066】
なお、DCリンク4の電圧が検出電圧以下になると、過電圧検出回路61は、制御スイッチ素子Scがオン状態からオフ状態に移行する電圧を制御ゲートGcに供給する。これにより、制御スイッチ素子Scがオン状態からオフ状態に移行し、サージアブソーバSAもオン状態からオフ状態に移行する。すると、DCリンク4から、サージアブソーバSA及び制御スイッチ素子Scを介して、共通電位線5に向かって流れる電流が遮断される。そして、DCリンク4の電圧が、抑制部6Bの影響を受けない状態になる。
すなわち、DCリンク4が検出電圧を超えると、抑制部6Bを動作させ、DCリンク4の電圧が検出電圧以下になると、抑制部6Bの動作を停止させている。
【0067】
なお、サージアブソーバSAを用いないで、制御スイッチ素子ScをDCリンク4と共通電位線5との間に設けることが考えられる。しかし、DCリンク4が過電圧になって、制御スイッチ素子Scをオフ状態からオン状態に移行させると、瞬間的にDCリンク4から共通電位線5に大きな瞬時電力が流れる。制御スイッチ素子Scにこの瞬時電力を吸収させると、制御スイッチ素子Scは、安定動作領域を外れ、破壊されてしまうおそれがある。
【0068】
また、制御スイッチ素子Scを用いないで、サージアブソーバSAをDCリンク4と共通電位線5との間に設けることが考えられる。しかし、バリスタなどのサージアブソーバSAは、制御スイッチ素子Scに比べて、漏れ電流が大きい。このため、サージアブソーバSAは、オフ状態であっても電力を消費してしまう。
また、DCリンク4において抑制したい過電圧に対応した放電開始電圧のサージアブソーバSAを選択することが必要になる。例えば、三相交流電源PSの線間電圧が220Vである場合、正常な状態のDCリンク4の電圧は、約540Vである。この場合、DCリンク4の電圧が600Vになった時に、サージアブソーバSAを動作させようとすると、放電開始電圧が600VであるサージアブソーバSAを用いることになる。
【0069】
そこで、第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100では、サージアブソーバSAと制御スイッチ素子Scとの直列回路を用いている。正常な状態、すなわち、DCリンク4の電圧が検出電圧以下である場合には、サージアブソーバSAと制御スイッチ素子Scとの直列回路に電流が流れない。よって、正常な状態において、電力の消費が抑制される。
また、DCリンク4の電圧が検出電圧を超える場合に、制御スイッチ素子Scをオフ状態からオン状態に移行させて、サージアブソーバSAをオン状態にする。よって、サージアブソーバSAの放電開始電圧を、DCリンク4の過電圧を検出する検出電圧と別に設定することができる。例えば、過電圧検出回路61の検出電圧を600Vとする場合、放電開始電圧が検出電圧の600Vより低い450VのサージアブソーバSAが使用できる。放電開始電圧(450V)を、抑制部6Bを動作させる電圧(600V)より低く設定することで、確実にサージアブソーバSAを動作させることができる。
さらに、サージアブソーバSAは、瞬時電力を吸収する能力(電力耐量)が大きいため、瞬時電力により破壊されにくい。
【0070】
図11は、第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100の抑制部6Bにおける過電圧検出回路61を一例で示す図である。
以下では、
図10に示した第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100と同じ部分は、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分である抑制部6Bの過電圧検出回路61を説明する。
【0071】
過電圧検出回路61は、抵抗R1、R2、R3、R4、差動増幅器Op、pnpバイポーラトランジスタTr及び参照電源Vrefを備えている。
抵抗R1と抵抗R2とは、直列接続され、DCリンク4と共通電位線5との間に接続されている。
pnpバイポーラトランジスタTr、抵抗R3、抵抗R4は、この順に直列接続され、駆動電源Vddと共通電位線5との間に接続されている。
【0072】
差動増幅器Opは、+入力端子、−入力端子、出力端子を備え、+入力端子の電圧と−入力端子の電圧との差に対応した電圧を出力端子から出力する。ここでは、差動増幅器Opの+入力端子は、抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、−入力端子は参照電源Vrefの一方の端子に接続されている。そして、差動増幅器Opの出力端子は、pnpバイポーラトランジスタTrのベース端子に接続されている。
参照電源Vrefの他方の端子は、共通電位線5に接続されている。
駆動電源Vddの電圧は、例えばDC15Vである。そして、駆動電源Vddは、差動増幅器Opを駆動する電源としても用いられている。
また、参照電源Vrefの電圧は、例えばDC2.5Vである。
【0073】
過電圧検出回路61の動作を説明する。
抵抗R1と抵抗R2とで、DCリンク4の電圧を分圧する。分圧された電圧が差動増幅器Opの+入力端子に入力される。そして、差動増幅器Opによって、+入力端子の電圧であるDCリンク4の分圧された電圧と、−入力端子の電圧である参照電源Vrefの電圧とが比較される。すなわち、過電圧検出回路61の検出電圧は、抵抗R1と抵抗R2とで分圧された電圧で設定されている。
【0074】
まず、DCリンク4の電圧が検出電圧以下である場合、すなわち、インバータ回路100が正常な状態にある場合を説明する。この場合、抵抗R1と抵抗R2により分圧された電圧(差動増幅器Opの+入力端子の電圧)は、参照電源Vrefの電圧(差動増幅器Opの−入力端子の電圧)以下である。すると、差動増幅器Opは、pnpバイポーラトランジスタTrをオフ状態に維持する電圧を出力端子から出力する。pnpバイポーラトランジスタTrがオフ状態であると、制御スイッチ素子Scの制御ゲートGcは、共通電位線5の電位(共通電位)となる。よって、制御スイッチ素子Scは、オフ状態で、サージアブソーバSAはオフ状態である。
【0075】
一方、DCリンク4の電圧が検出電圧を超えた場合、すなわち、インバータ回路100が異常な状態になった場合を説明する。この場合、抵抗R1と抵抗R2とにより分圧された電圧(差動増幅器Opの+入力端子の電圧)が参照電源Vrefの電圧(差動増幅器Opの−入力端子の電圧)を超える。すると、差動増幅器Opは、pnpバイポーラトランジスタTrをオフ状態からオン状態に移行する電圧を出力端子から出力する。これにより、pnpバイポーラトランジスタTrはオフ状態からオン状態に移行する。すると、制御スイッチ素子Scの制御ゲートGcは、駆動電源Vddの電圧を抵抗R3と抵抗R4とで分圧された電圧となる。この分圧された電圧は、制御スイッチ素子Scをオフ状態からオン状態に移行させる電圧になるように設定されている。よって、制御スイッチ素子Scがオフ状態からオン状態に移行し、サージアブソーバSAがオフ状態からオン状態に移行する。そして、DCリンク4から共通電位線5に向かって電流が流れる。これにより、DCリンク4の電圧が低下する。
【0076】
そして、DCリンク4の電圧が、検出電圧以下になると、DCリンク4の抵抗R1と抵抗R2とで分圧された電圧(差動増幅器Opの+入力端子の電圧)が、参照電源Vrefの電圧以下に低下する。そして、差動増幅器Opの出力端子が、pnpバイポーラトランジスタTrをオン状態からオフ状態に移行させる電圧に移行する。これにより、pnpバイポーラトランジスタTrがオン状態からオフ状態に移行する。そして、制御ゲートGcが、制御スイッチ素子Scをオン状態からオフ状態に移行させる電圧に移行する。よって、制御スイッチ素子Scがオン状態からオフ状態に移行し、サージアブソーバSAがオン状態からオフ状態に移行する。
【0077】
この過電圧検出回路61では、DCリンク4の電圧を分圧する抵抗R1、R2に高耐圧の部品を必要とする。しかし、差動増幅器Op、pnpバイポーラトランジスタTr、抵抗R3、R4には、低耐圧の汎用部品が使用できる。なお、制御スイッチ素子Scについても、低耐圧の汎用部品が使用できる。よって、インバータ回路100を廉価に製造できる。
【0078】
以上、差動増幅器Opを用いた過電圧検出回路61を説明した。過電圧検出回路61は、他の構成であってもよく、シャントレギュレータと呼ばれる回路などを使用してもよい。
【0079】
図12は、第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100におけるDCリンク4の電圧の一例を示す図である。
図12の上部は、DCリンク4の電圧(DCリンク電圧)と時間との関係を示し、
図12の下部は、制御ゲートGcの電圧(ゲート電圧)と時間との関係を示す。
図12において、12msの時点でモータMの緊急停止が発生している。その後、DCリンク電圧は、一旦急激に低下するが、その後、誘導起電流により上昇する。そして、DCリンク電圧が800Vを超えると(24msの時点)、過電圧検出回路61が働く。そして、過電圧検出回路61は、制御スイッチ素子Scをオフ状態からオン状態に移行させる電圧を制御ゲートGcに印加する。これにより、制御スイッチ素子Scがオフ状態からオン状態に移行するとともに、サージアブソーバSAもオフ状態からオン状態に移行する。そして、DCリンク4からサージアブソーバSA及び制御スイッチ素子Scを介して共通電位線5に電流が流れ、DCリンク電圧が低下する。
DCリンク電圧が低下すると(25msの時点)、過電圧検出回路61は、制御スイッチ素子Scをオン状態からオフ状態に移行させる電圧を制御ゲートGcに印加する。これにより、制御スイッチ素子Scがオン状態からオフ状態に移行するとともに、サージアブソーバSAもオン状態からオフ状態に移行する。
この場合、DCリンク電圧の最大値は840Vであった。
【0080】
図13は、第2の実施の形態が適用されないインバータ回路100におけるDCリンク4の電圧の一例を示す図である。第2の実施の形態が適用されないインバータ回路100は、
図10(
図11)に示すインバータ回路100において、抑制部6Bを備えない。
図12と同様に、12msの時点でモータMの緊急停止が発生している。その後、DCリンク電圧は、一旦急激に低下するが、その後、誘導起電流により上昇する。そして、最大値916Vに達した。
【0081】
以上説明したように、第2の実施の形態が適用されるインバータ回路100の抑制部6Bは、DCリンク4の過電圧の発生を抑制する。よって、インバータ回路100におけるインバータ部3のスイッチング素子Stなどが破壊電圧を超えて破壊されることによってインバータ回路100が故障することが抑制される。
なお、第2の実施の形態に第1の実施の形態を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態におけるインバータ回路100の抑制部6A及び第2の実施の形態におけるインバータ回路100の抑制部6Bは、DCリンク4の過電圧の発生を抑制した。
第3の実施の形態におけるインバータ回路100の抑制部6は、インバータ回路100に電源を投入した際に、平滑コンデンサCsに流れ込む突入電流により発生する過電流を抑制する。
また、第3の実施の形態におけるインバータ回路100の抑制部6は、電源電流における高調波電流を抑制する。
【0083】
図14は、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の一例を示す図である。
第3の実施の形態におけるインバータ回路100は、
図1の抑制部6として抑制部6Cを備えている。
図1に示した第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100と同じ部分は、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分である抑制部6Cを説明する。
なお、三相交流電源PSは三相4線式であるとし、三相をR相、S相、T相、中性点(中性線)をN相と表記する。また、整流部1の6つの整流ダイオードDcを整流ダイオードDc1〜Dc6と表記する。
【0084】
第3の実施の形態におけるインバータ回路100の抑制部6Cは、コンデンサC1、C2、スイッチSw1、Sw2、Sw3、電流制限抵抗R5を備えている。
コンデンサC1、C2は直列接続されて直列回路を構成し、一方の端子がDCリンク4に、他方の端子が共通電位線5に接続されている。そして、コンデンサC1、C2の接続点は、電流制限抵抗R5の一方の端子に接続されている。電流制限抵抗R5の他方の端子は、スイッチSw1の一方の端子に、スイッチSw1の他方の端子は、三相交流電源PSのN相に接続されている。
そして、三相交流のS相と整流部1との間にスイッチSw2、T相と整流部1との間にスイッチSw3を設けている。
一例として、三相交流電源PSの線間電圧は400V、平滑コンデンサCsの静電容量は40μF、コンデンサC1、C2の静電容量はそれぞれ0.22μFである。そして、電流制限抵抗R5の抵抗値は800Ωである。
ここで、スイッチSw1が第2のスイッチの一例であり、スイッチSw2、Sw3が第1のスイッチの一例である。
【0085】
<突入電流により発生する過電流の抑制>
第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100における突入電流によって発生する過電流の抑制について説明する。
インバータ回路100に電源を投入する際、スイッチSw1を閉(オン)にし、スイッチSw2、Sw3を開(オフ)にする。そして、三相交流電源PSをオンにする。
すると、三相交流電源PSのR相を介して、コンデンサC1、C2が充電される。すなわち、R相が正の位相のとき、整流ダイオードDc1を介して、コンデンサC1が充電される。一方、R相が負の位相のとき、整流ダイオードDc2を介して、コンデンサC2が充電される。すなわち、R相が正の位相のときには、整流ダイオードDc2が逆方向に接続されているので、三相交流電源PSのR相からは、コンデンサC1しか見えない。逆に、R相が負の位相のときには、整流ダイオードDc1が逆方向に接続されているので、三相交流電源PSのR相からは、コンデンサC2しか見えない。
そして、コンデンサC1が充電されているとき、コンデンサC2に蓄積された電荷により、平滑コンデンサCsが充電される。逆に、コンデンサC2が充電されているとき、コンデンサC1に蓄積された電荷により、平滑コンデンサCsが充電される。
【0086】
そして、平滑コンデンサCsが予め定められた電圧に充電された後、スイッチSw1を開(オフ)にするとともに、スイッチSw2、Sw3を閉(オン)にする。
なお、三相交流電源PSをオンにしてから、予め定められた時間の経過後に、スイッチSw1を開(オフ)にするとともに、スイッチSw2、Sw3を閉(オン)にしてもよい。
これにより、インバータ回路100は、通常の動作状態に移行する。
【0087】
第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100では、三相交流電源PSのR相により、コンデンサC1、C2を交互に充電する。そして、充電したコンデンサC1、C2に蓄積された電荷により、平滑コンデンサCsを徐々に充電する。この繰り返しにより、平滑コンデンサCsが充電される。
すなわち、スイッチSw1と電流制限抵抗R5とで構成される回路は充電回路である。
【0088】
一方、インバータ回路100が抑制部6Cを備えない場合では、三相交流電源PSをオンにすると、平滑コンデンサCsを充電する電流が流れる。この電流は、突入電流と呼ばれ、平滑コンデンサCsの静電容量が大きいほど大きい。突入電流が大きいと、整流部1の整流ダイオードDcが破壊されるおそれがある。したがって、整流部1の整流ダイオードDcを破壊するおそれがある電流を、過電流として抑制することが求められる。
【0089】
これに対して、第3の実施の形態におけるインバータ回路100では、コンデンサC1、C2の静電容量を、平滑コンデンサCsの静電容量より小さく設定している。そして、電流制限抵抗R5を設けている。このことで、三相交流電源PSのR相からインバータ回路100に流れ込む突入電流を小さく抑えている。よって、整流部1の整流ダイオードDcが過電流によって破壊されることを抑制し、これにより、インバータ回路100が故障することが抑制される。
【0090】
なお、コンデンサC1、C2の代わりに、平滑コンデンサCsを2つのコンデンサの直列回路とすることが考えられる。しかし、2つのコンデンサのそれぞれの静電容量は、平滑コンデンサCsの2倍となり、大型化してしまう。また、三相交流電源PSのR相から、2つのコンデンサのそれぞれに大きな突入電流が流れることになる。
【0091】
さらに、三相交流電源PSは線間電圧が400Vである場合、N相とR相、S相、T相との間は230Vである。よって、スイッチSw1、Sw2、Sw3には、400Vに対応する高価で大型のリレーではなく、200V系に広く使用されている廉価で小型のリレーが適用できる。よって、インバータ回路100を廉価且つ小型にできる。
また、平滑コンデンサCsを2つのコンデンサの直列回路とする場合に比べ、静電容量が小さいコンデンサC1、C2を用いるので、インバータ回路100を小型にできる。
【0092】
<高調波電流の抑制>
第1の実施の形態が適用されるインバータ回路100は、電源電流における高調波電流が抑制できることを説明した。
第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100でも、電源電流における高調波電流が抑制されることを説明する。インバータ回路100の抑制部6CにおけるコンデンサC1、C2の直列回路は、平滑コンデンサCsと並列に設けられている。よって、コンデンサC1、C2も平滑コンデンサCsと同様に平滑コンデンサとして機能する。
【0093】
図15は、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100に対する電源電流を示す図である。
図15(a)は、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100、
図15(b)は、第3の実施の形態が適用されないインバータ回路100に対する電源電流である。
図15(a)の第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100は、
図14に示したインバータ回路100である。ここでは、平滑コンデンサCsの静電容量は10μF、コンデンサC1、C2の静電容量はそれぞれ20μFである。つまり、平滑コンデンサCsとコンデンサC1、C2とを合計した静電容量は20μFである。そして、電流制限抵抗R5は25Ωである。
一方、
図15(b)の第3の実施の形態が適用されないインバータ回路100は、
図14に示したインバータ回路100から抑制部6Cを除いたものである。そして、平滑コンデンサCsの静電容量は20μFである。
すなわち、DCリンク4における静電容量は、いずれにおいても20μFで同じである。
なお、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100及び第3の実施の形態が適用されないインバータ回路100は、整流部1と抑制部6との間にDCリアクタを備える。このDCリアクタのリアクタンスは75μHである。
【0094】
図15(a)の電源電流と
図15(b)の電源電流とを比較すると、
図15(a)の方が、
図15(b)に比べ、電源電流の振幅における変動が少ない。
【0095】
表2は、高調波電流スペクトラム振幅Ihを電源周波数(h=1)における電流スペクトラム振幅Irefで除した値(Ih/Iref)を示す表である。ここでは、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100と、第3の実施の形態が適用されないインバータ回路100とを示している。なお、表2には、THC及びPWHCも示している。
【0097】
第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100は、第3の実施の形態が適用されないインバータ回路100に比べ、I5/Iref、I11/Iref、I13/Irefが改善している。よって、THC及びPWHCが改善している。
すなわち、DCリンク4における静電容量は同じであるが、コンデンサC1、C2の直列回路を平滑コンデンサCsに並列に配置した場合の方が、THCなどが改善する。
【0098】
<第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例>
次に、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例を説明する。
図14に示したインバータ回路100は、三相4線式の三相交流電源PSに接続されていた。変形例のインバータ回路100は、三相3線式の三相交流電源PSに接続されている。
図16は、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例を示す図である。
変形例のインバータ回路100では、三相交流電源PSのS相にスイッチSw1が接続されている。そして、N相を用いていない。
一例として、三相交流電源PSの線間電圧は200V、平滑コンデンサCsの静電容量は40μF、コンデンサC1、C2の静電容量はそれぞれ0.22μFである。そして、電流制限抵抗R5は800Ωである。
【0099】
インバータ回路100に電源を投入する際、スイッチSw1を閉(オン)とし、スイッチSw2、Sw3を開(オフ)とする。そして、三相交流電源PSをオンにする。すると、R相とS相との線間電圧が正の位相のとき、コンデンサC1が充電され、R相とS相との線間電圧が負の位相のとき、コンデンサC2が充電される。その後の動作は、
図14に示した三相4線式のインバータ回路100と同様であるので。説明を省略する。
【0100】
なお、スイッチSw1は、スイッチSw2が設けられたS相又はスイッチSw3が設けられたT相のいずれかに接続されることが必要である。
図16から分かるように、スイッチSw1をR相に接続しても、コンデンサC1、C2には電圧が印加されない。
【0101】
図16に示した第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例においても、抑制部6は、インバータ回路100に電源を投入した際の過電流を抑制する。これにより、インバータ回路100が故障することが抑制される。また、抑制部6は、電源電流における高調波電流を抑制する。
【0102】
以上、第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100を説明した。
図14に示した第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の整流部1と抑制部6の間に、
図3に示したDCリアクタLdcを用いてもよい。さらに、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と組み合わせて用いてもよい。
図16に示した第3の実施の形態が適用されるインバータ回路100の変形例においても同様である。
【0103】
第1の実施の形態から第3の実施の形態において、インバータ回路100の負荷を、モータMとしたが、他の負荷であってもよい。なお、誘導性の負荷(リアクタンスの要素が大きい負荷)の場合に効果が大きい。
さらに、第1の実施の形態から第3の実施の形態において、三相の場合を説明したが、単相の交流電源と単相のモータなどの負荷とを接続するインバータ回路100に、抑制部6A、6B、6Cを適用しても構わない。
【0104】
第1の実施の形態から第3の実施の形態において、インバータ回路100には、上記したリアクタンス、静電容量、抵抗値の素子が用いられているので、小型に構成することができる。
【0105】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施の形態の組み合わせを行っても構わない。