特許第6379022号(P6379022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379022
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-247020(P2014-247020)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-109862(P2016-109862A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】316018166
【氏名又は名称】エイチピー プリンティング コリア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】大和田 諭
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−160273(JP,A)
【文献】 特開2006−145841(JP,A)
【文献】 実開平03−129972(JP,U)
【文献】 特開2002−278329(JP,A)
【文献】 実開平03−018056(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0233991(US,A1)
【文献】 特開平09−022207(JP,A)
【文献】 特開昭60−007454(JP,A)
【文献】 特開2003−228266(JP,A)
【文献】 特開2003−186371(JP,A)
【文献】 特開2011−043578(JP,A)
【文献】 特開2005−338309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙のトナー像面に当接されて、保持部により回転可能に保持されたトナー像側回転体と、
前記用紙の前記トナー像面の反対側の面である反トナー像面に当接されて、前記トナー像側回転体との間に前記用紙を狭持するニップ部を形成する反トナー像側回転体と、
前記用紙の搬送方向における上流側から前記ニップ部に前記用紙を案内する定着前ガイドと、を備え、
前記定着前ガイドは、
前記用紙の搬送経路に対する前記反トナー像側回転体側に配置され、前記反トナー像面に当接される案内部と、
前記案内部を、前記トナー像側回転体及び前記反トナー像側回転体との間に所定の隙間を形成する画像形成状態から、前記トナー像側回転体及び前記反トナー像側回転体から離れる方向に移動可能に支持する支持部とをし、
前記支持部は、前記搬送経路に対する前記トナー像側回転体側を回転中心として、前記案内部を回動可能に支持する、定着装置。
【請求項2】
前記画像形成状態において、前記案内部の前記ニップ部側の先端は、前記ニップ部の両端を通る直線であるニップラインに対する前記トナー像側回転体側に位置する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着前ガイドは、前記案内部を前記トナー像側回転体及び前記反トナー像側回転体に近づく方向に付勢する付勢部材を更に有する、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記画像形成状態において前記定着前ガイドに当接される位置決め部を有する、請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記案内部の前記ニップ部側の先端面は、前記トナー像側回転体の軸線方向に直交する断面において、前記ニップ部側に凸となる曲線をなしている、請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【請求項7】
前記定着装置に前記用紙を搬送する搬送装置と、
少なくとも前記定着装置及び前記搬送装置を収容する筐体と、
前記筐体を開閉すると共に前記搬送装置に連結されるカバーと、を備え、
前記搬送装置は、前記カバーの開閉に連動して前記トナー像側回転体及び前記反トナー像側回転体から離れる、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送装置に設けられた付勢部材を含み、その付勢部材は、前記カバーが閉じられた際に、前記案内部を前記トナー像側回転体及び前記反トナー像側回転体に近づく方向に付勢する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着装置は、前記ニップ部を通過した前記用紙を案内し、前記用紙が接触する表面部の少なくとも一部がフッ素系樹脂からなる定着後ガイドを更に備える、請求項6〜の何れかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、転写ユニットでトナー像を担持された用紙が定着装置に搬送され、定着装置において当該トナー像が定着される。従来の定着装置としては、定着前のトナー像が担持された用紙をトナー像側回転体及び反トナー像側回転体によって形成されるニップ部で挟持すると共に、用紙を案内する定着前ガイドをニップ部よりも上流側に備えたものが知られている。例えば、特許文献1に記載された画像形成装置に係る熱定着装置では、トナー像が転写された転写紙を、熱定着ローラと、この熱定着ローラに圧接される加圧ローラと、によって挟持している。そして、熱定着ローラ及び加圧ローラの圧接部よりも転写紙の挿入側(上流側)には、転写紙の搬送性を安定させるための用紙搬送ガイドが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−244440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、定着装置では、ニップ部を通過している途中で紙詰まり(ジャム)が発生した際に、ジャムの状態によっては用紙をニップ部の上流側へ引き抜くことでジャム処理を行う場合がある。しかしながら、特許文献1に記載された画像形成装置に係る熱定着装置では、用紙搬送ガイドが熱定着ローラ及び加圧ローラに接近して配置されると共に、加圧ローラに近接する方向に回動する。このため、転写紙が加圧ローラ側に入り込み、この転写紙が用紙搬送ガイドに接触しながら引き抜かれることで用紙搬送ガイドが塑性変形し、転写紙の搬送性が不安定になるおそれがある。従って、ジャム処理を容易に行うことが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ジャム処理を容易に行うことができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る定着装置は、用紙のトナー像面に当接されて、保持部により回転可能に保持されたトナー像側回転体と、用紙のトナー像面の反対側の面である反トナー像面に当接されて、トナー像側回転体との間に用紙を狭持するニップ部を形成する反トナー像側回転体と、用紙の搬送方向における上流側からニップ部に用紙を案内する定着前ガイドと、を備え、定着前ガイドは、用紙の搬送経路に対する反トナー像側回転体側に配置され、反トナー像面に当接される案内部と、案内部を、トナー像側回転体及び反トナー像側回転体との間に所定の隙間を形成する画像形成状態から、トナー像側回転体及び反トナー像側回転体から離れる方向に移動可能に支持する支持部と、を有する。
【0007】
この定着装置によれば、ニップ部の上流側に配置された定着前ガイドの案内部は、画像形成状態においてトナー像側回転体及び反トナー像側回転体との間に所定の隙間を形成しており、この案内部は、ジャム処理時において、案内部を支持する支持部によってトナー像側回転体及び反トナー像側回転体から離れる方向に移動する。これにより、用紙がアコーディオン状になっても、案内部に引っ掛かりにくくなる。このため、用紙をニップ部の上流側に引き抜く場合に用紙が定着前ガイドに接触して定着前ガイドを塑性変形させることを抑制できる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0008】
ここで、支持部は、搬送経路に対するトナー像側回転体側を回転中心として、案内部を回動可能に支持してもよい。この場合、案内部が回動しながらトナー像側回転体側に移動するため、反トナー像側回転体側においてジャム処理のための作業スペースを広くすることができる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0009】
また、画像形成状態において、案内部のニップ部側の先端は、ニップ部の両端を通る直線であるニップラインに対するトナー像側回転体側に位置してもよい。この場合、案内部のニップ部側の先端がトナー像側回転体に近づけて配置されるため、ニップ部に用紙を精度よく案内することができる。
【0010】
また、定着前ガイドは、案内部をトナー像側回転体及び反トナー像側回転体に近づく方向に付勢する付勢部材を更に有してもよい。この場合、案内部がトナー像側回転体及び反トナー像側回転体から離れる方向に移動可能であるため、ジャム処理を容易に行うことができる。また、案内部のニップ部側の先端が付勢部材によって画像形成状態に保持される。このため、ニップ部に用紙を精度よく案内することができる。
【0011】
また、保持部は、画像形成状態において定着前ガイドに当接される位置決め部を有してもよい。この場合、画像形成状態において、案内部のニップ部側の先端と、トナー像側回転体及び反トナー像側回転体と、の間に形成される隙間を一定に保つことができる。このため、ニップ部に用紙を精度よく案内することができる。
【0012】
また、案内部のニップ部側の先端面は、トナー像側回転体の軸線方向に直交する断面において、ニップ部側に凸となる曲線をなしていてもよい。この場合、ジャム処理時に用紙をニップ部の上流側に引き抜く際に、用紙が案内部に接触しても、用紙が案内部のニップ部側の先端面に引っかかり難い。このため、案内部が塑性変形することを抑制できる。
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備えている。この画像形成装置によれば、上記作用効果を好適に実現することができる。
【0014】
ここで、定着装置に用紙を搬送する搬送装置と、少なくとも定着装置及び搬送装置を収容する筐体と、筐体を開閉すると共に搬送装置に連結されるカバーと、を備え、搬送装置は、カバーの開閉に連動してトナー像側回転体及び反トナー像側回転体から離れてもよい。この場合、ジャム処理時にカバーにより筐体を開く際に、カバーの動作に連動して搬送装置がトナー像側回転体及び反トナー像側回転体から離れる。このため、ジャム処理のための作業スペースを広くすることができる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0015】
また、定着装置は、ニップ部を通過した用紙を案内し、用紙が接触する表面部の少なくとも一部がフッ素系樹脂からなる定着後ガイドを更に備えてもよい。この場合、用紙がニップ部の下流側へスムーズに排出されるため、ニップ部におけるジャムの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジャム処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る画像形成装置を示す側面図である。
図2図1中の定着装置部分の拡大図である。
図3】定着装置を示す斜視図である。
図4】定着前ガイドを示す斜視図である。
図5】案内部のニップ部側の先端を示す側面図である。
図6】定着装置、及びジャムが発生した用紙を示す側面図である。
図7】カバーを開いた状態の画像形成装置を示す側面図である。
図8図7中の定着装置を示す側面図である。
図9】案内部が移動した状態の定着装置を示す側面図である。
図10】ジャム処理時における、案内部と、トナー像側回転体又は反トナー像側回転体と、の間の隙間の変化を示すグラフである。
図11】案内部のニップ部側の先端、及びジャムが発生した用紙を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、画像形成装置を水平面に設置した場合の上下方向を「上下」とする。また、図面中の同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る画像形成装置を示す側面図、図2は、図1中の定着装置部分の拡大図、図3は、定着装置を示す斜視図である。本実施形態に係る画像形成装置1は、コピー用紙等の用紙に対しトナー像を担持させ定着させることで、当該用紙に文字、画像等を印刷するものである。図1〜3に示すように、画像形成装置1は、筐体2、カバー3、搬送装置4、定着装置5、及び転写ユニット(不図示)等を備えている。なお、転写ユニットは、用紙の片面に、印刷するトナー像を担持させるためのものである。
【0020】
筐体2は、画像形成装置1の外壁を形成し、搬送装置4、定着装置5、及び転写ユニットを含む図示しない各種装置を収容している。筐体2は、箱型をなすと共に、その側面に矩形状の開口部が設けられている。
【0021】
カバー3は、筐体2の側面の開口部に、開閉可能に設けられている。具体的には、カバー3は、その下端において、筐体2の開口部の下部とヒンジ6を介して連結されており、このヒンジ6を中心として筐体2の外側へ回動することにより開閉される(図7参照)。また、カバー3は、閉じた状態を維持するラッチ機構(不図示)を有する。なお、カバー3は、画像形成装置1の使用時には閉じられており、筐体2の内部の調整等を行う際に開かれる。
【0022】
搬送装置4は、転写ユニットにおいてトナー像が担持された用紙を定着装置5へ搬送するためのものである。搬送装置4は、カバー3に連結して取り付けられているため、カバー3の開閉に連動して、ヒンジ6を中心として回動する。搬送装置4の上部には、第1付勢部材7が設けられている。
【0023】
第1付勢部材7は、平板状の弾性部材を屈曲させた板バネによって構成され、上方から押下された場合に反発力を生じる。第1付勢部材7は、カバー3側に広がる略V字状に形成されている。第1付勢部材7は、カバー3が閉じられることによって後述する定着前ガイド12の案内部15の下に入り込み、定着前ガイド12を上方に付勢する。また、第1付勢部材7は、カバー3が開かれることによって定着前ガイド12の案内部15の下から外れ、定着前ガイド12に対して付勢しなくなる。なお、第1付勢部材は、板バネに限定されるものではなく、引張ばね、圧縮ばね等を用いてもよい。
【0024】
定着装置5は、トナー像が担持された用紙を加圧しながら加熱することでトナー像を定着させるものである。定着装置5は、ケース8、トナー像側回転体9、保持部10、反トナー像側回転体11、定着前ガイド12、定着後ガイド13、及びランプ22を有する。
【0025】
ケース8は、定着装置5の外壁を形成するものであり、その内部に定着装置5を構成する他の部材が収容されている。ケース8は、略直方体形状をなしている。ケース8は、カバー3が閉じた状態において、カバー3の内壁面に沿って水平方向に延在すると共に、搬送装置4の上方に近接して配置されている。
【0026】
トナー像側回転体9は、定着前のトナー像が担持された用紙のトナー像面に当接し、後述する反トナー像側回転体11との間で当該用紙を挟持するニップ部14を形成する。トナー像側回転体9は、ケース8に対して自由に回転可能である。また、トナー像側回転体9は、可撓性を有する筒状のベルトによって構成され、軸線方向がカバー3の内壁に沿うようにケース8の内部に配置されている。トナー像側回転体9を構成するベルトの内側には、ランプ22がトナー像側回転体9の延在方向に沿って延在する。ランプ22は、輻射によってトナー像側回転体9を内側から加熱する。
【0027】
保持部10は、トナー像側回転体9をケース8に対して回転可能に保持する。また、保持部10は、トナー像側回転体9を保持することで、トナー像側回転体9が回転しながら大きく撓んで変形することを抑制する。保持部10は、トナー像側回転体9の回転軌道を規制するガイド機構(不図示)と、定着前ガイド12を当接させて位置決めする位置決め部19と、を有している。
【0028】
反トナー像側回転体11は、筒状のローラによって構成され、外力によって凹む柔軟性を有している。また、反トナー像側回転体11は、回転駆動機構(不図示)を備えている。反トナー像側回転体11は、トナー像側回転体9と平行に並んで配置され、トナー像側回転体9を挟んで保持部10と互いに押圧し合う状態となっている。また、上述したように、トナー像側回転体9は、ケース8に対して自由に回転可能である。以上により、回転駆動機構によって反トナー像側回転体11が回転駆動されると、トナー像側回転体9が反トナー像側回転体11に従動して回転する。
【0029】
トナー像側回転体9および反トナー像側回転体11の当接部位は、ニップ部14を形成している。上述したように、トナー像側回転体9は、保持部10によって大きく撓んで変形することが抑制されているのに対し、反トナー像側回転体11は、柔軟性を有している。このため、ニップ部14において、反トナー像側回転体11はトナー像側回転体9によって押し潰され、トナー像側回転体9のニップ部14の形状に合わせて略平面状に変形している。
【0030】
図4は、定着前ガイドを示す斜視図、図5は、案内部のニップ部側の先端を示す側面図である。図1図5に示すように、定着前ガイド12は、搬送装置4からニップ部14に搬送される用紙が、ニップ部14に進入する際に傾かないように案内する。定着前ガイド12は、用紙の搬送経路のうち、搬送装置4とニップ部14との間に設けられており、案内部15、支持部16、及び第2付勢部材17を有している。
【0031】
案内部15は、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11の延在方向に沿って延在する長尺状の平板からなり、短手方向が略上下方向を向いている。カバー3が閉じた状態において、案内部15の上側の先端15aは、ニップ部14に近接する位置に配置されている。なお、案内部15のニップ部14側の先端15aの先端面は、トナー像側回転体9の軸線方向に直交する断面において、ニップ部14側に凸となる曲線をなしている。また、カバー3が閉じた状態において、案内部15の下側の先端15bは、搬送装置4の上部に設けられた第1付勢部材7に当接している。これにより、案内部15は、第1付勢部材7の反発力を受けてニップ部14に近づく方向に付勢されている。
【0032】
案内部15は、用紙の搬送経路に対する反トナー像側回転体11側に配置されており、定着前のトナー像が担持された用紙のトナー像面の反対側の面である反トナー像面に当接している。
【0033】
支持部16は、案内部15を支持すると共に、ニップ部14から離れる方向に移動可能とする。支持部16は、案内部15の長手方向の両端部において屈曲し、トナー像側回転体9側へ向かって延びて、その先端はトナー像側回転体9の下方に位置している。そして、当該先端の近傍が、ケース8に対し回転中心軸18を介して回動可能に取り付けられている。このように、支持部16は、用紙の搬送経路に対するトナー像側回転体9側を回転中心として案内部15を回動可能に支持している。その結果、支持部16は、案内部15とトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11との間に所定の隙間が形成された画像形成状態(詳細は後述)から、案内部15がトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動可能となる。なお、ケース8には、案内部15がトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動し過ぎないように案内部15の移動を規制する移動規制部材21が設けられている。
【0034】
第2付勢部材17は、案内部15をニップ部14に近づく方向に付勢するものである。第2付勢部材17は、トーションスプリングであり、一端が支持部16の先端の近傍に掛止され、他端がケース8に掛止されている。なお、第2付勢部材17としてはトーションスプリングに限定されるものではなく、引張ばね、圧縮ばね等を用いてもよい。
【0035】
上述したように、カバー3が閉じた状態において、定着前ガイド12は、第1付勢部材7及び第2付勢部材17によって、案内部15がニップ部14に近づく方向に付勢されている。これにより、保持部10に設けられた位置決め部19に定着前ガイド12の一部が押し当てられることで、案内部15の上側の先端15aと、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11と、の間に所定の隙間が形成された状態(すなわち、画像形成状態)が維持される(図4図5参照)。そして、定着前ガイド12に対しニップ部14から遠ざかる方向の外力が働いた場合、定着前ガイド12の案内部15は、第1付勢部材7及び第2付勢部材17による付勢力に抗して、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動する。なお、画像形成状態において、案内部15の上側の先端15aは、ニップ部14の両端を通る直線であるニップライン20に対するトナー像側回転体9側に位置している(図2参照)。
【0036】
定着後ガイド13は、定着装置5のニップ部14においてトナー像が定着された後、搬送方向に搬送された用紙を、定着装置5の下流側の搬送経路へ案内するためのものである。定着後ガイド13は、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11の延在方向に沿って延在する長尺状の平板からなり、短手方向の中央付近において屈曲している。定着後ガイド13の下側の先端13cは、トナー像側回転体9の上面に近接して配置されている。そして、定着後ガイド13は、屈曲部13bにおいて反トナー像側回転体11側に屈曲し、上側の先端13aまで延びている。定着後ガイド13は、定着装置5を通過した用紙が接触する表面部、すなわち反トナー像側回転体11側の表面の少なくとも一部がフッ素系樹脂により形成されている。これにより、表面部の水との接着エネルギーが小さい値(一例として、PFA又はPTFE系のフッ素系樹脂を用いた場合、42dyn/cm以上、43dyn/cm以下程度)となる。なお、定着後ガイド13の表面部において、フッ素系樹脂により形成される領域は、反トナー像側回転体11側の表面全体でなくてもよく、例えば上側の先端13aから屈曲部13bまでの間、屈曲部13bの近傍のみ等であってもよい。
【0037】
続いて、定着装置5及び画像形成装置1の動作について説明する。
【0038】
まず、画像形成装置1の使用時において、図1,2に示すように、カバー3は閉じられた状態となっている。この状態において、定着前ガイド12は、案内部15の下側の先端15bが第1付勢部材7に当接している。これにより、定着前ガイド12は、案内部15が第1付勢部材7の反発力を受けてニップ部14に近づく方向に付勢されている。また、定着前ガイド12は、第2付勢部材17によって案内部15がニップ部14に近づく方向に付勢されている。
【0039】
このとき、画像形成装置1は画像形成状態となっているため、ニップ部14に用紙を精度よく案内することができる。更に、案内部15の上側の先端15aが、ニップライン20に対するトナー像側回転体9側に位置することで、トナー像側回転体9に近づけられているため、より精度よく案内することができる。
【0040】
次に、転写ユニットにおいて片面にトナー像が担持された用紙が、搬送装置4によって定着装置5へ搬送されると共に、当該用紙は、定着前ガイド12によってニップ部14へ案内される。ニップ部14では、用紙のトナー像面がトナー像側回転体9に当接され、反トナー像面が反トナー像側回転体11に当接される。反トナー像側回転体11は、トナー像側回転体9を挟んで保持部10と互いに押圧し合う状態となっているため、用紙は、トナー像側回転体9と反トナー像側回転体11とによって形成されるニップ部14で挟持され、加圧される。また、このとき、トナー像側回転体9は、ランプ22の輻射によって加熱される。以上により、用紙は、ニップ部14において加圧されると共に加熱され、担持されていた定着前のトナー像が定着する。
【0041】
また、トナー像側回転体9はケース8に対して自由に回転可能である。一方、反トナー像側回転体11は、回転駆動機構によってケース8に対して回転駆動されている。従って、トナー像側回転体9は、反トナー像側回転体11が回転駆動されることによって、反トナー像側回転体11に従動して回転する。よって、ニップ部14に搬送された用紙は、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11によって挟持された状態で、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11が回転することにより、搬送方向に送り出される。
【0042】
定着装置5から搬送方向に送り出された用紙は、定着後ガイド13によって定着装置5の下流側の搬送経路へ案内される。定着後ガイド13は、定着装置5を通過した用紙が接触する表面部、すなわち反トナー像側回転体11側の表面の一部がフッ素系樹脂により形成されているため、水との接着エネルギーが小さく離型性がよい。このため、用紙が定着後ガイド13によってスムーズに案内され、ニップ部14におけるジャムの発生が抑制される。
【0043】
続いて、ジャム処理における、画像形成装置1及び定着装置5の動作について詳細に説明する。ここでは、一例として、ニップ部14の周辺で発生したジャムに対し、用紙をニップ部14の上流側に引き抜くことによるジャム処理ついて説明する。
【0044】
図6は、定着装置、及びジャムが発生した用紙を示す側面図、図7は、カバーを開いた状態の画像形成装置を示す側面図、図8は、図7中の定着装置を示す側面図、図9は、案内部が移動した状態の定着装置を示す側面図である。図6では、ニップ部14の下流側で、用紙がアコーディオン状になった状態をジャムの一例として示している。この場合、図7に示すように、まず、カバー3を開けることで、筐体2に収容された定着装置5を露出する。このとき、画像形成装置1では、カバー3に搬送装置4が連結されているため、カバー3を開ける動作に連動して搬送装置4がトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れるように移動する。これにより、定着装置5の近傍に配置された搬送装置4が定着装置5から自動的に離れるため、用紙をニップ部14の上流側に引き抜くことによるジャム処理において、作業スペースが広く確保される。また、図8に示すように、カバー3を開けることで、第1付勢部材7と案内部15の下側の先端15bとが離間し、案内部15が第1付勢部材7によって付勢されなくなる。
【0045】
ジャム処理において用紙をニップ部14の上流側に引き抜く際に、例えば定着前ガイド12に用紙が引っ掛かった場合を考える。この場合、図9に示すように、定着前ガイド12の案内部15は、第2付勢部材17による付勢力に抗してトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動する。このため、定着前ガイド12は、塑性変形し難い。なお、案内部15は、移動規制部材21に当接するまで移動すると、当該移動規制部材21によってそれ以上の移動が規制される。
【0046】
図10は、ジャム処理時における、案内部と、トナー像側回転体又は反トナー像側回転体と、の間の隙間の変化を示すグラフである。図10は、横軸にジャム処理の作業時間、縦軸に先端15aとトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11との隙間を示しており、時間軸に沿って画像形成状態から、案内部15をトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動させながらジャム処理を行っている状態を経て、再度画像形成状態に戻る様子を模式的に示している。図10に示すように、画像形成装置1では、案内部15の上側の先端15aと、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11と、の隙間を拡大できるため、ジャム処理を容易に行うことができる。また、ジャム処理後に再度画像形成状態に戻ることによって、ジャム処理後においてもニップ部に用紙を精度よく案内することができる。
【0047】
図11は、案内部のニップ部側の先端、及びジャムが発生した用紙を示す側面図である。図11に示すように、案内部15の上側の先端15aは、ニップ部14と対向する先端面が曲面をなしているため、用紙がアコーディオン状のジャムを発生したような場合であっても、用紙を搬送経路の上流側に引き抜いた際に用紙が先端15aの先端面に引っ掛かり難く、定着前ガイド12が塑性変形し難い。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る定着装置5によれば、ニップ部14の上流側に配置された定着前ガイド12の案内部15は、画像形成状態においてトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11との間に所定の隙間を形成しており、この案内部15は、ジャム処理時において、案内部15を支持する支持部16によってトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動する。これにより、用紙がアコーディオン状になっても、案内部15に引っ掛かりにくくなる。このため、用紙をニップ部14の上流側に引き抜く場合に用紙が定着前ガイド12に接触して定着前ガイド12を塑性変形させることを抑制できる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0049】
ここで、支持部16は、搬送経路に対するトナー像側回転体9側を回転中心として、案内部15を回動可能に支持している。これにより、案内部15が回動しながらトナー像側回転体9側に移動するため、反トナー像側回転体11側においてジャム処理のための作業スペースを広くすることができる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0050】
また、画像形成状態において、案内部15のニップ部14側の先端15aは、ニップ部14の両端を通る直線であるニップライン20に対するトナー像側回転体9側に位置している。これにより、案内部15のニップ部14側の先端15aがトナー像側回転体9に近づけて配置されるため、ニップ部14に用紙を精度よく案内することができる。
【0051】
また、定着前ガイド12は、案内部15をトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11に近づく方向に付勢する第2付勢部材17を更に有している。これにより、案内部15がトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に移動可能であるため、ジャム処理を容易に行うことができる。また、案内部15のニップ部14側の先端15aが第2付勢部材17によって画像形成状態に保持される。このため、ニップ部14に用紙を精度よく案内することができる。
【0052】
また、保持部10は、画像形成状態において定着前ガイド12に当接される位置決め部19を有している。これにより、画像形成状態において、案内部15のニップ部14側の先端15aと、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11と、の間に形成される隙間を一定に保つことができる。このため、ニップ部14に用紙を精度よく案内することができる。
【0053】
また、案内部15のニップ部14側の先端15aの先端面は、トナー像側回転体9の軸線方向に直交する断面において、ニップ部14側に凸となる曲線をなしている。これにより、ジャム処理時に用紙をニップ部14の上流側に引き抜く際に、用紙が案内部15に接触しても、用紙が案内部15のニップ部14側の先端15aの先端面に引っかかり難い。このため、案内部15が塑性変形することを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、上記定着装置5を備えている。この画像形成装置1によれば、上記作用効果を好適に実現することができる。
【0055】
ここで、定着装置5に用紙を搬送する搬送装置4と、少なくとも定着装置5及び搬送装置4を収容する筐体2と、筐体2を開閉すると共に搬送装置4に連結されるカバー3と、を備え、搬送装置4は、カバー3の開閉に連動してトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる。これにより、ジャム処理時にカバー3により筐体2を開く際に、カバー3の動作に連動して搬送装置4がトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる。このため、ジャム処理のための作業スペースを広くすることができる。従って、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0056】
また、定着装置5は、ニップ部14を通過した用紙を案内し、用紙が接触する表面部の少なくとも一部がフッ素系樹脂からなる定着後ガイド13を更に備えている。これにより、用紙がニップ部14の下流側へスムーズに排出されるため、ニップ部14におけるジャムの発生を抑制できる。
【0057】
[第2実施形態]
本実施形態は、第2付勢部材17が設けられていない点で、第1実施形態と主に相違している。
【0058】
本実施形態における画像形成装置1では、ジャム処理時にカバー3を開けることで定着前ガイド12の案内部15が第1付勢部材7によって付勢されなくなると、案内部15は、画像形成状態から、支持部16の回転中心軸を回転中心としてトナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11から離れる方向に自重によって回動する。このとき、案内部15は、移動規制部材21に当接するまで回動すると、当該移動規制部材21によってそれ以上の回動が規制される。これにより、本実施形態に係る画像形成装置1では、案内部15の上側の先端15aと、トナー像側回転体9及び反トナー像側回転体11と、の隙間が自動的に拡大されるため、用紙をニップ部14の上流側に引き抜くジャム処理において、作業スペースが広く確保される。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、定着前ガイド12は、第1付勢部材7及び第2付勢部材17、又は、第1付勢部材7のみを備えることでニップ部14に近づく方向に付勢されているが、第2付勢部材17のみを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…画像形成装置、5…定着装置、9…トナー像側回転体、11…反トナー像側回転体、12…定着前ガイド、14…ニップ部、15…案内部、16…支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11