特許第6379048号(P6379048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6379048-風管分岐具および風管の分岐構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379048
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】風管分岐具および風管の分岐構造
(51)【国際特許分類】
   E21F 1/06 20060101AFI20180813BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20180813BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   E21F1/06
   F16L41/02
   F24F13/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-8744(P2015-8744)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-132937(P2016-132937A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】足達 康軌
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−315080(JP,A)
【文献】 特開平06−129586(JP,A)
【文献】 実開平03−086286(JP,U)
【文献】 実開昭49−007519(JP,U)
【文献】 特開2007−146990(JP,A)
【文献】 米国特許第04457541(US,A)
【文献】 特開平11−325568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00− 1/06
F16L 41/02
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風管を構成する複数の管体の接続部に介設する、風管分岐具であって、
前記管体の内周面および外周面から挟み込むように配置して一体化可能に構成した、一組の筐体を少なくとも備え、
前記一組の筐体のうち、一方の筐体には上下に貫通する貫通孔を設け、
他方の筐体には前記貫通孔に挿通可能な筒部を設け、
前記筒部の内部を、前記風管内部と連通する分岐路とすることを特徴とする、
風管分岐具。
【請求項2】
前記一組の筐体の何れかまたは両方において、前記管体との接触面にシール部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の風管分岐具。
【請求項3】
複数の管体を接続してなる風管の分岐構造であって、
前記管体同士の接続態様が、該管体の周方向に設けたファスナー構造によるものであり、
請求項1または2に記載の風管分岐具を、前記ファスナー構造の始端と終端との間の間隙に配置することを特徴とする、
風管の分岐構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの換気ダクトなどに用いる風管を分岐するための風管分岐具、および風管の分岐構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、トンネル切羽に新鮮な空気を送り込むために、風管を設置することが一般的である。
この風管は切羽近傍にのみ空気を送る構造となっているため、トンネルの途中で風管から空気を得るためには、以下の方法の何れかを選択している。
・方法A:分岐専用の風管を別途設置する。
・方法B:風管に孔を開けて分岐路を形成する。
【0003】
例えば、前記方法Aのように、風管に分岐路を設けた多孔式の分岐風管として特許文献1に記載の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−30129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の方法では、以下のような課題がある。
(1)分岐の柔軟性に乏しい。
施工が進むにつれて、風管を分岐させたい位置が変化することが多い。
しかし、前記方法Aでは、分岐専用の風管をその都度交換しなければならず、交換作業に手間も時間もかかってしまう。
また、前記方法Bの場合であっても、一度開けた孔の修復作業を行わなければならないため、前記方法Aと同様、作業効率が悪い。
【0006】
以上説明した通り、本発明は、必要に応じて、風管から容易に分岐路を形成可能な装置ならびに構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、風管を構成する複数の管体の接続部に介設する、風管分岐具であって、前記管体の内周面および外周面から挟み込むように配置して一体化可能に構成した、一組の筐体を少なくとも備え、前記一組の筐体のうち、一方の筐体には上下に貫通する貫通孔を設け、前記一組の筐体のうち、他方の筐体には前記貫通孔に挿通可能な筒部を設け、前記筒部の内部を、前記風管内部と連通する分岐路とすることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記一組の筐体の何れかまたは両方において、前記管体との接触面にシール部を設けたことを特徴とする。
また、本願の第3発明は、複数の管体を接続してなる風管の分岐構造であって、前記管体同士の接続態様が、該管体の周方向に設けたファスナー構造によるものであり、前記第1または第2発明に記載の風管分岐具を、前記ファスナー構造の始端と終端との間の間隙に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)分岐路の形成・解除・変更が容易である。
風管を構成する管体の接続部への脱着作業でもって、容易に分岐路の形成・解除・変更を、短時間で実現することができる。
(2)任意の箇所に分岐路を形成できる。
管体の長さを変更して接続部の位置や数を調整することにより、分岐可能な箇所を自由に設計することができる。
(3)空気の漏れを防止できる。
風管分岐具の設置に伴い、管体同士が未接続となった箇所からの空気の漏れを、前記筐体と管体との間に設けたシール部によって閉塞空間に留めておくことができる。
(4)送気を中断する必要が無い。
管体の周方向に設けたファスナーによって管体同士を接続する場合には、ファスナーの一部を開いて、本発明に係る風管分岐具を取り付けることができるため、送気を中断する必要も無い。
(5)風管の損傷が無い。
既存風管を改造したり、孔を設けたりする必要がないため、風管の損傷の恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る風管の分岐構造を示す概略図。
図2】本発明に係る風管分岐具の取付状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に、本発明に係る風管の分岐構造の概略図を示す。
本発明に係る風管の分岐構造は、複数の管体Cを接続してなる風管Bと、該管体Cの接続部Dに介設する風管分岐具Aとを、少なくとも具備してなる。
その他、本発明に係る風管の分岐構造は、風管Bの分岐部分から必要な箇所まで分岐路を構築するように、前記風管分岐具Aの解放端に接続可能な分岐用管体(図示せず)などを具備することができる。
以下、各構成要素について説明する。
【0012】
風管Bは、トンネルの換気ダクトなどを構成する部材である。
風管Bは、複数の管体Cを順次接続して構成する。
管体Cは、軸方向への伸縮が自在なように蛇腹構造とするなど、公知の構造を採用することができる。
【0013】
管体Cの端部には、隣り合う管体Cと接続するための接続部Dを設ける。
接続部Dには、公知の接続機構から、接続が容易で空気漏れの少ない接続機構を適宜選択することができる。
本実施例では、該管体Cの周縁に全周に亘って気密性を具備するファスナーを設けることによって、接続部Dを形成している。
【0014】
風管分岐具Aは、風管Bから分岐路を形成するための装置である。
図2に、風管分岐具Aを取り付けた状態の風管Bを、風管Bの軸方向から見た際の概略断面図を示す。
風管分岐具Aは、前記風管Bを構成する複数の管体Cの接続部Dに配置するとともに、前記管体Cの内周面および外周面から挟み込むように配置して一体化可能に構成した、一組の筐体を少なくとも備える。
以下、各構成要素について説明する。
【0015】
一組の筐体は、前記管体Cの内周面および外周面から挟み込むための部材である。
前記一組の筐体のうち、一方の筐体には上下に貫通する貫通孔を設け、他方の筐体には前記貫通孔に挿通可能な筒部を設ける。
以下、一組の筐体のうち、一方の筐体を「外側筐体10」と定義し、他方の筐体を「内側筐体20」と定義して説明する。
【0016】
外側筐体10は、前記管体Cの外周面側に配置する部材である。
本実施例では、外側筐体10の平面形状は円盤形状としているが、特に限定するものではない。
外側筐体10の本体部分の素材は、樹脂製としておくと、軽量で取付易く、風管の損傷を防止出来る点で好ましい。また、外側筐体10の本体部分の素材を鋼製とすると、転用回数が増える点で有益である。
外側筐体10には、上下に貫通する貫通孔11を設けておく。
【0017】
外側筐体10の底面には、前記貫通孔11の周囲を取り囲むようにシール部12を配置しておくことができる。
シール部12の素材には、公知の素材を用いれば良く特段限定するものではないが、一般的には、ゴム、発泡ゴム、スポンジ等の弾性体を用いるものとする
【0018】
内側筐体20は、前記管体Cの内周面側に配置する部材である。
本実施例では、内側筐体20の平面形状は円盤形状としているが、特に限定するものではない。
内側筐体20の本体部分の素材は、外側筐体10と同様、樹脂製や構成とすることができる。
【0019】
[筒部の形成]
内側筐体20には、前記した外側筐体10の貫通孔11に挿通可能な外径を呈する筒部21を立設しておく。
筒部21の外周面には、雄ねじ部22を形成しておく。
筒部21の上下端は開口しておくことで、管体C(風管B)の内部と連通する分岐路Fとすることができる。
内側筐体20の上面には前記管体Cの周囲を取り囲むようにシール部23を配置しておくことができる。シール部23の素材には前記外側筐体10のシール部12と同様、公知の素材を用いれば良い。
【0020】
再度図2を参照しながら、本発明に係る風管分岐具Aの設置手順について説明する。
(1)風管分岐具を設ける箇所
管体Cの接続部DとしてファスナーEを用いた場合には、該ファスナーD1の始端(リテーナー)E1と終端(上止め)E2との間の間隙部分に、風管分岐具Aを配置する。
(2)各筐体の配置
風管Bの内周面側から内側筐体20を配し、外周面側に外側筐体10を配置し、前記内側筐体20の筒部21を前記外側筐体10の貫通孔11に挿通する。
このように、風管Bは、外側筐体10および内側筐体20によって内外周面から挟まれた状態となる。
(3)ナットによる締結
そして、筒部21の雄ねじ部22に対応するナット30を締結し、該ナット30によって、風管Bを外側筐体10および内側筐体20で強固に挟み込み、各筐体を一体化する。
(4)シール部による閉塞空間
前記したファスナーEの間隙部分は、外側筐体10および内側筐体20のシール部12,23によって閉塞した空間(閉塞空間G)内に留まるため、前記したファスナーEの間隙部分を経由して、風管Bの外へと空気が漏れることはない。
(5)分岐路の構築
筒部21の内部は、風管の内外を連通する分岐路Fとなる。
この筒体21の上端に、別途分岐用管体(図示せず)を連結するなどして、所望の箇所まで分岐路Fを延長する事ができる。
なお、風管Bについて、将来的な分岐が可能なように事前に風管分岐具Aを設けてある場合には、筒部21の上端に蓋材(図示せず)を設けるなどして閉口しておけばよい。
【0021】
以上、本願発明によれば、容易に風管から分岐路を形成することができる。
よって、作業員の熱中症対策用の送風や、ミスト発生装置との組み合わせによる覆工コンクリートの養生装置、エアカーテン、スポット的な換気、スポット的な粉塵作業(箱抜き作業、はつり、発電の設置等、トラミキポンプ車へのスポット送気、覆工、インバート打設時にスポット送気)、横連絡坑等の枝分かれしたトンネルへの送気など、多種多様な用途での活用が期待できる。
【実施例2】
【0022】
以下、本願発明に係る風管分岐具は、以下の様な変形例とすることができる。
【0023】
<1>第1変形例
実施例1に記載の外側筐体10の貫通孔11に、内側筐体20の筒部21に設けた雄ねじ部22に対応する雌ねじ部を形成して、前記ナット30を省略するとともに、外側筐体10にナット30の機能を兼用させることができる。
【0024】
<2>第2変形例
外側筐体10に筒部21を設け、内側筐体20に貫通孔11を設けた構造としてもよい。
このとき、内側筐体20の貫通孔11に雌ねじ部を形成しておき、外側筐体10に前記ナット30の機能を兼用させると、風管Bの内部から別途ナット30を締結する必要が無いため、有益である。
【0025】
<3>第3変形例
各筐体10,20と風管Bとの接触態様が十分に気密性を保持できる程度の状態であれば、実施例1で設けたシール部12,23は本発明において必須ではない。
例えば、各筐体10,20の素材を弾性変形可能な素材とすれば、各筐体10,20自身がシール部12,23の機能を兼用することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 風管分岐具
10 外側筐体
11 貫通孔
12 シール部
20 内側筐体
21 筒部
22 雄ねじ部
23 シール部
30 ナット
B 風管
C 管体
D 接続部
E ファスナー
F 分岐路
G 閉塞空間
図1
図2