(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共重合化合物が、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEGジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート)から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂混合物。
前記A成分が、前記反応樹脂モルタルに加えて、更に水硬性または重縮合性無機化合物を含有し、前記B成分が、前記硬化剤に加えて、更に水を含有していることを特徴とする、請求項11に記載の多成分モルタル系組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の主題は、ビニルエステル樹脂と、少なくとも二つのメタクリレート基を有する架橋剤としての
共重合性化合物とを含み、該共重合性化合物の一部または全部までもがイタコン酸エステルに替えられる樹脂混合物である。
【0011】
本発明の意味で、ビニルエステル樹脂は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート末端基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはポリマー、いわゆる(メタ)アクリレート官能化樹脂であり、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレートもこれに属す。
【0012】
末端位置にのみ不飽和基を有するビニルエステル樹脂は、例えばエポキシドモノマー、エポキシドオリゴマーまたはエポキシドポリマー(例えばビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、フェノール−ノボラック型のエポキシドまたはテトラブロムビスフェノールーAをベースとするエポキシドオリゴマー)を、例えば(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドで変換することにより得られる。好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリレート官能化樹脂、及びエポキシドモノマー、エポキシドオリゴマーまたはエポキシドポリマーをメタクリル酸またはメタクリルアミド、好ましくはメタクリル酸で変換することにより得られる樹脂である。こうした化合物の例は、特許出願、米国特許第3297745号明細書、米国特許第3772404号明細書、米国特許第4618658号明細書、英国特許出願公開第2217722号明細書、独国特許出願公開第3744390号明細書及び独国特許出願公開第4131457号明細書から知られている。
【0013】
ビニルエステル樹脂として特に適していて好ましいのは、例えば独国特許出願公開第3940309号明細書に記載されているような、例えば二官能性及び/または多官能性のイソシアネートを、適当なアクリル化合物で、場合によっては少なくとも2つのヒドロキシル基を含むヒドロキシル化合物の関与の下で変換することによって得られる(メタ)アクリレート官能化樹脂である。
【0014】
イソシアネートとしては、脂肪族(環式または直鎖)及び/または芳香族の二官能性または多官能性イソシアネート、またはそのプレポリマーを用いることができる。こうした化合物の使用は湿潤能力の向上、従って付着特性の改善に役立つ。芳香族二官能性または多官能性イソシアネート、またはそのプレポリマーが好ましく、芳香族二官能性または多官能性プレポリマーが特に好ましい。例として、鎖補強向上のためのトルイレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)及びポリマー性ジイソシアネートジフェニルメタン(pMDI)、並びに可撓性を高めるヘキサンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)を挙げることができ、そのうちポリマー性ジイソシアネートジフェニルメタン(pMDI)が特別に好ましい。
【0015】
アシル化合物としては、アクリル酸及び炭化水素残基上で置換されているアクリル酸、例えばメタクリル酸、多原子価アルコールを有するアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシル基を含むエステル、ペンタエリルトリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートが適している。アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステルまたはメタクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートが好ましいが、それは特にこうした化合物が鹸化反応の立体障害に役立つからである。
【0016】
場合によっては使用可能なヒドロキシ化合物として適しているのは、二価または多価アルコール、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレンの誘導体、例えばエタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、他のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエタノールアミン、更にビスフェノールAもしくはFもしくはそのエトキシ化/プロポキシル化用生成物及び/もしくは水和化用もしくはハロゲン化用生成物、より高い価数のアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール及びペンタエリトリトール、ヒドロキシル基を含有するポリエーテル、例えば脂肪族もしくは芳香族のオキシランのオリゴマー及び/または多環式エーテル、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化スチレン及びフラン、主鎖にビスフェノールAもしくはFのもののような芳香族構造単位を含有するポリエーテル、前述のアルコールまたはポリエーテル及び二炭酸またはそれらの無水物、例えばアジピン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸などをベースとしたヒドロキシル基含有ポリエステルである。特に好ましいのは、樹脂の鎖補強のための芳香族構造単位を有するヒドロキシル化合物、架橋密度を高めるための、フマル酸など不飽和構造単位を含有するヒドロキシル化合物、分岐または星状のヒドロキシル化合物、特に三価以上の原子価アルコール及び/またはそれらの構造単位を含有するポリエーテルまたはポリエステル、反応性希釈剤中の樹脂またはその溶液のより低い粘度及びより高い反応性と架橋密度を達成するための分岐または星状のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0017】
ビニルエステル樹脂は、好ましくは500乃至3000ダルトン、より好ましくは500乃至1500ダルトン(ISO 13885−1による)の分子量
を有する。ビニルエステル樹脂は、0乃至50mg KOH/樹脂g、好ましくは0乃至30mg KOH/樹脂g(ISO 2114−2000による)の範囲の酸価を有する。
【0018】
本発明に従って使用可能なこれらの樹脂は全て、例えばより低い酸価、水酸化物価または無水物価を達成するために、当業者に知られている方法により修飾されてもよく、または可撓性単位を基本構造に導入することよって、より可撓にされるなどしてもよい。
【0019】
更に、樹脂は、過酸化物のようなラジカル反応開始剤で重合され得る他の反応性基、例えば、イタコン酸、シトラコン酸及びアリル基などから誘導された反応性基を含有していてもよい。
【0020】
ベース樹脂は樹脂混合物に対し20乃至100重量%、好ましくは50乃至70重量%の量、使用される。
【0021】
本発明によれば樹脂混合物は架橋剤として少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の共重合性化合物を含有し、該架橋剤は、樹脂混合物に対し0乃至80重量%、好ましくは30乃至50重量%の量、添加される。
【0022】
前記少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する共重合性化合物は、好ましくは200乃至500g/molの範囲の平均分子量
を有する。
【0023】
適当な共重合性化合物は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びその異性体、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、PEGジ(メタ)アクリレート、例えばPEG200ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPGジ(メタ)アクリレート、例えばPPG250ジ(メタ)アクリレート、1,10ーデカンジオールジ(メタ)アクリレート及び/またはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから成る群から選択されている。
【0024】
好ましくは前記少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する共重合性化合物は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及び/またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートから成る群から選択されている。
【0025】
本発明によれば、前記少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する共重合性化合物は、下に記載するイタコン酸エステルのうちの1種または複数種に換えられ、前記共重合性化合物の100重量%まで換えられてよい。
【0026】
イタコン酸及びそのエステル誘導体は、バイオマスから得られる貴重な化学物質と認識された。従って、これらの化合物は基本的に再生可能な原料をベースとした出発化合物として適している。
【0027】
発明者らは、これをベースに、硬化特性に関しても硬化された材料の特性に関しても結合剤の特性に何ら負の影響を及ぼさない、結合剤の構成成分を提供できることを示すことができた。イタコン酸及びそのエステルは、一般に同じ条件下でメタクリル酸エステルよりもゆっくり重合することが知られているにもかかわらす、そうなのである。むしろ、イタコン酸をベースとする化合物によって、ビニルエステル樹脂をベースとする結合剤の特性に、ねらいを定めて影響を与えることができることを示すことができた。
【0028】
本発明によればイタコン酸エステルは、一般式(I)または(II)の化合物である。
【0030】
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2は水素またはC
1−C
6−アルキル基を表し、X及びZはそれぞれ互いに独立にC
2−C
10−アルキル基を表す。)
【0031】
式(I)の化合物は、例えば無水イタコン酸をヒドロキシ置換(メタ)アクリレートで変換することにより得ることができ、末端のカルボキシル基と2つのラジカル重合可能な炭素二重結合を有する化合物が得られる。
【0032】
ヒドロキシ置換(メタ)アクリレートは再生可能な原料から得ることができ、従って再生可能な原料をベースとする構成成分にできるだけ多く基づく樹脂混合物の処方において、特に興味深い。これは脂肪族C
2−C
10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートで、そのうちメタアクリレート化合物が特に好ましい。
【0033】
例えば好ましいヒドロキシプロピルメタクリレートの合成に必要なプロピレングリコールはグリセロールから得ることができる(シー・イー・ピー マガジン オルグ.(CEPmagazine.org)、 www.aiche.org/cep (2007年8月)、スザンヌ シェリー(Suzanne Shelley)による論文「ピロピレングリコールへの再生可能ルート(A Renewable Route to Propylene Glycol)」中)。グリセロールはバイオディーゼル製造の基本的な副産物である。従ってグリセロールは、ピロピレングリコールの製造にとって、原油から得られる従来の原料に代わる、安価で持続的に利用可能で環境に優しい代替物である。
【0034】
例えばヒドロキシエチルメタクリレートの合成に必要なエチレングリコールも、エチレンオキシド及びその誘導体、例えばバイオマス、例えば糖液またはサトウキビから得られるグリコールのような原料から得ることができる。
【0035】
C
2−及びC
3−ヒドロキシアルキルメタクリレートは市販されている。
【0036】
発明者らは、イタコン酸エステルの末端のカルボキシル基が対応するアルコールによってエステル化される場合にのみ、貯蔵安定的な樹脂混合物が式(I)のイタコン酸エステルによって得られることを見出した。
【0037】
従って式(I)中のR
2は好ましくはC
1−C
6ーアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、メチル基が最も好ましい。これらの化合物も再生可能な原料から得られ、例えばメタノール及びエタノールはバイオマスから得られる。
【0038】
式(II)の化合物は、約二倍の量の無水イタコン酸をジオールで変換することにより得ることができ、2つの末端のガルボキシル基と2つのラジカル重合可能な炭素二重結合とを有する化合物が得られる。
【0039】
ジオールは再生可能な原料から得ることができ、従って再生可能な原料をベースとする構成成分にできるだけ多く基づく樹脂混合物の処方において、特に興味深い。従って本発明によればジオールは、脂肪族C
2−C
10−アルカンジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1.3プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチルー2−エチルヘキサンー1,3ジオール、2,2ージメチルー1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルー1,6−ヘキサンジオール、特にエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)である。
【0040】
C
2−C
10ーアルカンジオールの使用には、これらが植物由来のC−2−乃至C−10−基本構成単位から得られるという利点がある。好ましい1,3−プロパンジオールは例えば生物工学的にグリセロールから得ることができる。グリセロールはあらゆる植物油の構成成分として、例えば脂肪酸製造及びバイオディーゼル製造の際の副産物として生じる。
【0041】
この場合も、ジイタコン酸エステルの末端のカルボキシル基が対応するアルコールによってエステル化される場合にのみ、貯蔵安定的な樹脂混合物が式(II)のイタコン酸エステルによって得られることが観察された。
【0042】
従って式(II)中のR
2も、好ましくはC
1−C
6ーアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、メチル基が最も好ましい。これらの化合物も再生可能な原料から得られ、例えばメタノール及びエタノールはバイオマスから得られる。
【0043】
こうして一般式(I)及び(II)のイタコン酸エステルは完全に再生可能な原料から得られる。
【0044】
最も好ましいのは、R
1及びR
2がメチル基である一般式(I)のイタコン酸エステルである。これらのイタコン酸エステルにより、イタコン酸二重結合のみを有するイタコン酸エステル比べて、貯蔵安定的で、かつより高い反応性も有し、末端のカルボキシル基を有する化合物に比べて、より迅速な硬化を示す樹脂混合物を製造することができる。
【0045】
前記樹脂混合物は、架橋剤としての少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する共重合性化合物に加え、(メタ)アクリレート基を有する更に別な低粘度の共重合性化合物を反応性希釈剤として含んでいてよい。適当な反応性希釈剤は欧州特許出願公開1935860号明細書及び独国特許出願公開第19531649号明細書に記載されている。
【0046】
原則として、他の通常の反応性希釈剤、例えばスチレン、α−メチルスチレン、アルキル化スチレン、例えばtert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル及び/またはアリル化合物も、単独で、または(メタ)アクリル酸エステルと混合して使用されてよい。
【0047】
本発明の更に別な好ましい実施形態によれば、前記樹脂混合物は予め促進された形で存在する、つまり少なくとも1種の硬化剤用促進剤を含有している。硬化剤用の好ましい促進剤は、芳香族アミン及び/またはコバルト、マンガン、錫、バナジウムもしくはセリウムの塩である。アルキルエステルまたはヒドロキシアルキルエステルで対称または非対称に置換されたアニリン、p−トルイジン、m−トルイジン及びキシリジンが、促進剤として特に有利であることが証明された。例えば以下の好ましい促進剤、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチロールアニリン、N−エチル−N−エチロールアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−トルイジン、N,N−ジイソプロピリデン−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチロール−p−トルイジン、N,N−ジエチロール−m−トルイジン、N,N−ジイソプロピル−m−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)キシリジン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルーp−トルイジン、オクタン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、バナジウム(IV)アセチルアセトネート及びバナジウム(V)アセチルアセトネートを挙げることができる。
【0048】
本発明によれば促進剤または促進剤混合物は、樹脂混合物に対し0.05乃至5重量%、好ましくは1乃至2重量%の量、使用される。
【0049】
本発明の更に別な実施形態にて、前記樹脂混合物は、貯蔵安定性を保証するため及びゲル時間の調整のために、更に少なくとも重合抑制剤を含有する。本発明によれば、重合抑制剤として、当業者に知られているような、ラジカル重合性化合物のために通常使用される重合抑制剤が適している。好ましくは重合抑制剤は、フェノール性化合物及び非フェノール性化合物、例えば安定なラジカル及び/またはフェノチアジンの中から選択されている。
【0050】
市販のラジカル硬化性反応樹脂の構成成分であることが多いフェノール性抑制剤として考慮の対象となるのは、フェノール、例えば2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’メチレン−ジ−p−クレゾール、ピロカテコール及びブチルピロカテコール、例えば4−tert−ブチルピロカテコール、4,6−ジ−tert−ブチルピロカテコール、ヒドロキノン、例えばヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、またはその2つ以上の混合物である。
【0051】
これらは反応樹脂処方に対し、好ましくは1重量%まで、特に0.0001乃至0.5重量%、例えば0.01乃至0.1の重量%の含有量を有する。
【0052】
非フェノール性重合抑制剤としては、好ましくは、フェノチアジン、例えばフェノチアジン及び/またはその誘導体または組合せ、または安定な有機ラジカル、例えばガルビノキシル−及びN−オキシルラジカルが考慮の対象となる。
【0053】
N−オキシルラジカルとしては、例えば独国特許出願公開第19956509号明細書に記載されているようなものが使用されてよい。適当な安定なN−オキシルラジカル(ニトロキシルラジカル)は、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−4−オール(TEMPOLとも称される)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−4−オン(TEMPONとも称される)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペルジン(4−カルボキシ−TEMPOとも称される)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYLとも称される)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミンの中から選択されてよい。更に、適当なN−オキシル化合物は、オキシム、例えばアセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、サリチルオキシム、ベンゾオキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、アセトン−O−(ベンジルオキシカルボニル)オキシムなどである。
【0054】
重合抑制剤は、樹脂組成物の所望の特性に依存して、単独でまたはその2種以上の組合せとして使用されてよい。ここでフェノール性重合抑制剤と非フェノール性重合抑制剤との組合せは、反応樹脂処方のゲル時間の本質的にドリフトフリーの設定の調整も示すように、相乗効果を可能にする。
【0055】
反応樹脂処方に対する非フェノール性重合抑制剤の重量による含有量は、好ましくは1ppm乃至2重量%の範囲、好ましくは10ppm乃至1重量%の範囲である。
【0056】
本発明による樹脂混合物は、化学的固定技術用の反応樹脂モルタル製造のために使用される。
【0057】
従って本発明の更に別な対象は、前記樹脂混合物に加え、通常の無機骨材、例えば充填剤、増粘剤、チキソトロープ剤、非反応性溶媒、流動性改善剤及び/または湿潤剤を含有する反応樹脂モルタルである。充填剤は好ましくは、石英の粒子、ガラス質溶融シリカ、コランダム、炭化カルシウム、硫酸カルシウム、ガラス、及び/または様々な大きさ及び形の有機ポリマー、例えば砂や粉としての、球または中空の球の形の、更に有機ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミドの繊維の形の、またはポリマーの微小球(ビーズ重合体)の形の有機ポリマーを含む群から選択されている。好ましく、かつより顕著に補強的に作用するのは、球状の不活性物質(球形)である。
【0058】
無機骨材は30乃至80%の量、反応樹脂モルタルに含有されていてよい。
【0059】
増粘剤またはチキソトロープ剤としては、ケイ酸塩、ベントナイト、ラポナイト、発熱性ケイ酸、ポリアクリレート及び/またはポリウレタンをベースとしたものが好ましい。
【0060】
本発明の更に別な対象は、少なくとも2つの(空間的に)分離された成分A及びBを含む多成分モルタル系である。この多成分モルタル系は2つ以上の別個で、互いに結ばれ、かつ/または互いに入れ子になった容器を含み、一つが成分A、反応樹脂モルタルを、他方が成分B、硬化剤を容れており、該硬化剤は場合によっては無機及び/または有機骨材で充填されていてよい。
【0061】
この多成分モルタル系はカートリッジ、カプセルまたはフィルムバッグの形で存在していてよい。本発明による反応樹脂モルタルを目的に従って使用する際、成分A及び成分Bが、機械力の作用を受けて、またはガス圧力により、カートリッジ、カプセルまたはフィルムバッグから押し出され、好ましくはスタティックミキサーを用いて相互に混合され、該スタティックミキサーを通って構成成分が案内されて掘削孔に導入され、その後、繋留ねじ切りロッドなどのような固定すべきデバイスが、硬化しつつある反応樹脂が装填された掘削孔に挿入され、位置合わせされる。
【0062】
好ましい硬化剤は貯蔵安定的な有機過酸化物である。特によく適しているのは過酸化ジベンゾイル及び過酸化メチルエチルケトン、更にtert−ブチルベンゾエート、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ラウロイル及びクメンヒドロペルオキシド、並びにtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートである。
【0063】
ここで過酸化物は反応樹脂モルタルに対し0.2乃至10重量%、好ましくは0.3乃至3重量%の量、使用される。
【0064】
本発明による多成分モルタル系の特に好ましい実施形態では、前記A成分は前記硬化性成分(a)に加えて、更に水硬性または重縮合性無機化合物、特にセメントを、前記B成分は前記硬化剤に加えて、更に水を含んでいる。このようなハイブリッド系は独国特許出願公開第4231161号明細書に詳しく記載されている。ここで前記A成分は、好ましくは水硬性または重縮合性無機化合物として、セメント、例えば、ポルトランドセメントまたはアルミナセメントを含み、酸化鉄フリーまたは酸化鉄低含有セメントが特に好ましい。水硬性無機化合物として、石膏もそのまま、またはセメントと混ぜて使用可能である。
【0065】
前記A成分は重縮合性無機化合物として、ケイ質の重縮合性化合物、特に可溶性の、溶解された、かつ/または非晶質の二酸化ケイ素を含有する物質を含んでいてもよい。
【0066】
本発明の利点は、相応なイタコン酸エステルを選択することにより、樹脂混合物または樹脂混合物を含有する反応樹脂モルタルの硬化特性に影響を与えることができる点にある。更に、従来の石油化学に基づく樹脂混合物、従ってこの樹脂混合物を含有する反応樹脂モルタルの一部を、該反応樹脂モルタルの特性に負の影響を与えずに、バイオに基づく成分に替えることが可能であることを示すことができた。
【0067】
以下の例が本発明の更なる説明に役立つ。
【実施例】
【0068】
例1
基準樹脂として、欧州特許第0713015号明細書に従って以下の樹脂混合物が用意される。
ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物60gが25℃で供される。0.03mlのジブチル錫ジラウレートを添加後、7gのジプロピレングリコールが滴下されて加えられる。軽くトレース加熱された状態で、添加の際内部温度は55℃に上昇する。
次いで55℃で30分攪拌される。その後80gのヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)が滴下されて加えられる。ここで内部温度は、軽くトレース加熱された状態で95℃に上昇する。このバッチは95℃で2時間、DIN EN 1242により定められているように、残基−NCO含有量が0.2%を下回るまで、攪拌される。次いで80gの1,4−ブタンジオールジメタクリレートがコモノマーとして添加される。次いで0.1gのフェノチアジン、1gのtert−ブチルピロカテコール及び7gのジイソプロパノール−p−トルイジンが促進剤として添加される。
【0069】
例2
コモノマーとしての80gの1,4−ブタンジオールジメタクリレートの代わりに、40gの1,4−ブタンジオールジメタクリレートと40gの4−(2−メタクリロイルオキシ)エチル)−1−メチル−2−メチレンスクシネート(式I:X=−CH
2−CH
2−、R
1=CH
3、R
2=CH
3)とから成るコモノマー混合物が生成されることを除いて、例1と同様に樹脂混合物が生成される。
【0070】
例3
コモノマーとしての80gの1,4−ブタンジオールジメタクリレートの代わりに、40gの1,4−ブタンジオールジメタクリレートと40gの1−ジメチルーO’4,O4−プロパン−1,3−ジイル−ビス(2−メチレンスクシネート)(式II:Z=−CH
2−CH
2−CH
2、R
2=CH
3)とから成るコモノマー混合物が生成されることを除いて、例1と同様に樹脂混合物が生成される。
【0071】
反応樹脂モルタルの製造
ハイブリッドモルタル製造のために、例1乃至3の樹脂混合物が、30乃至40重量パーセントの石英砂、15乃至25重量パーセントのセメント及び1乃至5重量パーセントの発熱性ケイ酸と溶解機で混合されて均質なモルタル材料にされる。
硬化剤成分
硬化剤成分製造のために、40gの過酸化ジベンゾイル、250gの水、25gの発熱性ケイ酸、5gの層状珪酸塩及び適当な粒径分布の700gの石英粉が溶解機で混合されて均質な材料にされる。
【0072】
それぞれの反応樹脂モルタルと硬化剤成分とが5:1の体積比で混合され、その結合耐荷重が測定される。
【0073】
破壊結合応力の決定
硬化された材料の破壊結合応力を決定するために、ねじ切り繋留ロッドM12が使用され、該ねじ切り繋留ロッドは前記の例の反応樹脂モルタル組成物により、コンクリートに設けた直径14mm、掘削孔深さ72mmの掘削孔中にダボ装着される。これは、十分に洗浄されたハンマードリルで掘削された掘削孔で、硬化は常時20℃で行われた。平均破壊荷重はねじ切り繋留ロッドの中心引き抜きにより決定される。それぞれ5本のねじ切り繋留ロッドがダボ装着され、24時間硬化後、荷重値が決定される。こうして決定された結合耐荷重((N/mm
2)が、平均値として以下の表1に挙げられている。
【0074】
【表1】
【0075】
例えばヒルティ社のHIT HY200Aのような、極めて高い結合耐荷重を有する市販されている製品は、同等の条件下で約30N/mm
2の値に達する。こうして、例2乃至3に基づくテストされたプロトタイプは、有望な荷重プロファイルを有することが示される。