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特許6379110電気ケーブル接続のための非イソシアネート系シーラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379110
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電気ケーブル接続のための非イソシアネート系シーラント
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20180820BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C09K3/10 L
   C08G59/66
   C09K3/10 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-549647(P2015-549647)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-508173(P2016-508173A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】US2013076242
(87)【国際公開番号】WO2014100242
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】61/745,521
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ニコル・ナイト
(72)【発明者】
【氏名】ナーザン・ウィルモット
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・エス・アテイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ヒース
(72)【発明者】
【氏名】ハーシャッド・エム・シャー
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03567677(US,A)
【文献】 米国特許第05232996(US,A)
【文献】 国際公開第2007/077888(WO,A1)
【文献】 特開平11−021352(JP,A)
【文献】 特開2010−100704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10− 3/12
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09D 1/00−201/10
C08G 59/00− 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル接続部を作製する方法であって、
a)高分子絶縁体を有する第1のケーブルの第1の裸導体端を、高分子絶縁体を有する第2のケーブルの第2の裸導体端と接続して、導体接続部を製作するステップと、
b)前記導体接続部上に、かつ前記第1のケーブルおよび前記第2のケーブルの前記高分子絶縁体を接触させて、硬化性反応混合物を適用するステップと、
c)前記硬化性反応混合物を硬化させて、前記導体接続部上に、かつ前記第1および第2のケーブルのそれぞれの前記高分子絶縁体に固着された高分子絶縁シースを形成するステップと、を含み、
前記硬化性反応混合物は、1)チオール基と反応可能である脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する、平均で少なくとも2つの基を有する、少なくとも1つのポリエン化合物であって、前記脂肪族炭素−炭素二重結合のうちの少なくとも1つが、1500〜8000原子質量単位の分子量を有する脂肪族スペーサ基であって、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)鎖または重合エチレンオキシドを25重量%まで含む不規則プロピレンオキシド−共−エチレンオキシド鎖である脂肪族スペーサー基によって、前記脂肪族炭素−炭素二重結合のそれぞれから分離される、ポリエン化合物と、2)成分1)の100重量部当たり10〜150重量部の、分子当たり平均で少なくとも1.5個のエポキシ基および最大1000のエポキシ当量重量を有する、少なくとも1つのエポキシ樹脂と、3)少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つの硬化剤と、4)少なくとも1つの塩基性触媒と、を含有する、方法。
【請求項2】
前記脂肪族スペーサ基の分子量が、少なくとも2000原子質量単位である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族スペーサー基の分子量が、4000〜8000原子質量単位である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、最大250のエポキシ当量重量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、ポリフェノール化合物の少なくとも1つのポリグリシジルエーテルを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記硬化剤が、2〜4個のチオール基を含有する少なくとも1つのポリチオール化合物、またはそれぞれが2〜4個のチオール基を含有する2つ以上のポリチオール化合物の混合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリチオール化合物(複数可)が、50〜250のチオール当量重量を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基触媒が、少なくとも1つのアミン化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記塩基触媒が、少なくとも1つの環状または二環式アミジン触媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記末端脂肪族炭素−炭素二重結合が、アクリレート基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブル接続のための非イソシアネート系シーラント、および電気ケーブルを接続する方法に関する。
【0002】
電気ケーブルが接続される際、接続部周辺の電気絶縁体を修復する必要がある。これを成し遂げる1つの一般的な方法は、接続部周辺に硬化性有機樹脂を成型することである。成型された樹脂は接続部周辺にシースを形成し、ケーブルの高分子電気絶縁体へ固着する。これにより、単に電気絶縁を提供するだけでなく、例えば水等の湿気および液体の侵入を防ぐ連続的なシールが形成される。
【0003】
硬化性有機樹脂は幾つかの基準を満たす必要がある。硬化された際、それはケーブル絶縁体に良好に接着せねばならない。硬化した樹脂とケーブル絶縁体との間の接着は、液体および湿分を通さないものでなくてはならず、良好な耐水安定性を有する必要がある。接続されたケーブルが、修理のために簡単に行けるような所ではない場所で長年にわたり運用される場合もあるため、この接着は持続性がなくてはならない。硬化した樹脂はまた、例えば室温下1kHzで5以下の比誘電率を有する等、良好な電気絶縁体でなければならない。硬化した樹脂は、ケーブルを通る電流により生み出される電場の存在下における絶縁破壊に対して耐性を持たねばならない。
【0004】
硬化性有機樹脂にとって、加工特性もまた重要な属性である。ケーブル接合は、現場、すなわちケーブルを使用する場所で、頻繁に行われる。加えて、特定の接合部を作るために必要となる有機樹脂の量は、ある時は至って少なく、約1キログラム以下であるが、幾つかの場合において、この量は相当に大きくなり得、体積で最大30リットル以上の量となる。これらを考慮すると、硬化性ポリマー系は、単純な方法を用いて適用が可能である必要がある。複雑なポリマー加工設備は通常これらの現場内の場所で利用可能ではなく、いかなる場合においても、このような少ない量の材料で都合をつけねばならないため、うまく適合されないことがしばしばである。現場内適用のために別に考慮すべき事柄は、加熱設備が通常利用可能でないということである。これは、硬化性有機樹脂が、用途のために、加熱されることなく、周囲温度で適用および硬化が可能でなければならないことを意味する。
【0005】
これらのケーブル接続用途において用いられる硬化性有機樹脂系は、混合され、ケーブル接続部へ適用され、その後接続部周辺にシースを形成するために硬化される、2つの液体成分を典型的に含む。この液体成分は、低〜中程度の粘度であるべきで、それにより混合および適用が容易になされ得る。混合された成分は、混合、および混合物の接続部上への適用を完了する時間を許容するため、数分以上の可使時間を有する必要がある。反応混合物が接続部へ適用された後、ケーブル絶縁体に強く固着するポリマーを形成するために、適度に素早く硬化するべきである。
【0006】
現在まで、二成分ポリウレタンおよび二成分エポキシ樹脂系が、この用途に関して主に使用されてきた。ポリウレタン系は大変満足に役立つが、ポリイソシアネート化合物が適切に取り扱われなかった場合、作業員の曝露の可能性が懸念される。加えて、ポリイソシアネートは、水と反応して二酸化炭素を生成する可能性があり、これは発泡につながり得る。
【0007】
エポキシ樹脂系には2つの主な問題が存在する。第1に、それらは完全に申し分がないというには硬過ぎ、かつ脆過ぎる傾向にある。第2の問題は、硬化反応が高い発熱性を持つ傾向にあるということである。反応熱は、大きな温度上昇を引き起こす。多くの場合、この温度上昇はケーブル、特に高分子絶縁体に損傷を与えるのに十分である。この損傷は、絶縁体における故障につながる。
【0008】
したがって、良好な可使時間を有し、加熱無しに室温で硬化し、高い発熱性を持たず、硬化して低い電気誘電率を有するポリマーを形成し、電場の存在下で絶縁破壊に耐え、電気ケーブルにおいて用いられる高分子絶縁体と良好な接着を形成する、ケーブル接続のための、イソシアネートを用いない硬化性樹脂系を提供することが望ましいであろう。
【0009】
この発明は、一態様において、ケーブル接続部を作製する方法であって、
a)高分子絶縁体を有する第1のケーブルの第1の裸導体端を、高分子絶縁体を有する第2のケーブルの第2の裸導体端と接続して、導体接続部を製作するステップと、
b)導体接続部上に、かつ第1のケーブルおよび第2のケーブルの高分子絶縁体を接触させて、硬化性反応混合物を適用するステップと、
c)硬化性反応混合物を硬化させて、導体接続部上に、かつ第1および第2のケーブルのそれぞれの高分子絶縁体に固着された高分子絶縁シースを形成するステップと、を含む方法であり、
硬化性反応混合物は、1)チオール基と反応可能である脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する、平均で少なくとも2つの基を有する、少なくとも1つのポリエン化合物であって、このような脂肪族炭素−炭素二重結合のうちの少なくとも1つが、少なくとも1000原子質量単位の分子量を有する脂肪族スペーサ基によって、該脂肪族炭素−炭素二重結合のそれぞれから分離される、ポリエン化合物と、2)成分1)の100重量部当たり10〜150重量部の、分子当たり平均で少なくとも1.5個のエポキシ基および最大1000のエポキシ当量重量を有する、少なくとも1つのエポキシ樹脂と、3)少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つの硬化剤と、4)少なくとも1つの塩基性触媒と、を含有する。
【0010】
この発明は、ケーブル接続のための、容易に加工され得る熱硬化性の弾性接続組成物を提供する。接続組成物はイソシアネート化合物の存在を必要としない。組成物は有用に低い粘度を有する。組成物は、室温または若干低い温度でも自然に硬化し得、したがって、加熱無しに使用され得る。硬化した組成物は、高分子ケーブル絶縁体に強く固着し、有用な電気特性ならびに気体および液体に対する低い浸透性を提示する、強固な弾性シースを形成する。
【0011】
本発明に従い接続される電気ケーブルは、1つ以上の導体(電線)および導体を囲む高分子電気絶縁体を含む。典型的に、導体は個々に絶縁され、多線式ケーブルの場合、個々に絶縁された電線は別の高分子絶縁体に覆われる。高分子絶縁体は、例えば、ネオプレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、別の種類のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、例えばアクリロニトリルのポリマーまたはコポリマー等の二トリルゴム、例えばブタジエンのポリマーまたはコポリマー等のジエンゴム、ポリウレタン、およびそれに類するものであり得る。導体は、典型的に銅、アルミニウム、および鋼等の金属である。導体の大きさの範囲は、例えば、AWG(American Wire Gauge)40(直径約0.0799mm)〜4/0(直径約11.684mm)であり得る。
【0012】
ケーブル接続部は、第1のケーブルの裸(すなわち、非絶縁)導体端を、第2のケーブルの裸導体端と接続し、導体接続部を製作することによって作製される。多線式ケーブルが接続される場合、ケーブルのそれぞれの導体のそれぞれが、同じ様式で接続される。同様に、2つ以上のケーブルが接続される場合、全てのケーブルの導体は、必要であれば個々の接合部上に絶縁テープまたは他の絶縁体を適用することを含む、特定の配線プロトコルの必要に応じて接続される。次いで、硬化性反応混合物が、導体接続部上に、かつ第1のケーブルおよび第2のケーブルの高分子絶縁体を接触させて、適用される。硬化性反応混合物を硬化させて、導体接続部上に、かつ第1および第2のケーブルのそれぞれの高分子絶縁体に固着された高分子絶縁シースを形成する。
【0013】
適用および硬化ステップを鋳型において行うことはしばしば都合がよく、この鋳型により、反応混合物をそれが硬化するまで固定する任意の装置を意図する。鋳型は、ケーブル導体接続部上に対応するように適合された、1ピースまたは2ピース型を有する。典型的な鋳型は、鋳型が閉じられた際、その端部がケーブル周りに密接に対応するように設計される。代わりに(あるいは、加えて)、反応混合物が、それが硬化する前に漏れ出すのを防ぐために、テープまたは他の手段を使用することで、鋳型の端部は塞がれ得る。このような鋳型は、典型的に、ケーブル接続部を取り囲むリザーバを形成する広断面積の中央部分を有し、硬化性反応混合物をリザーバに導入するための開口部を有する。このような鋳型の例は、3M United Kingdom PLCによって、そのScotchcast(商標)Flexible Power Cable Jointing Kits、82−Fおよび82−BFシリーズにおいて製品化されるものである。ある実施形態において、鋳型はケーブル接続部上に布置され、硬化性反応混合物が鋳型の中に注ぎ込まれ硬化する。
【0014】
硬化性反応混合物は、ポリエン化合物、エポキシ樹脂、チオール基を含有する硬化剤、および少なくとも1つの塩基性触媒を含有する。
【0015】
ポリエン化合物は、チオール−エン付加反応を為すことのできる、少なくとも2つの脂肪族炭素−炭素二重結合(「エン基」)を有する。これらのエン基のうちの少なくとも1つは、少なくとも1000原子質量単位の分子量を有する軟質脂肪族スペーサ基によって、他のエン基のそれぞれから間隔を空けられる。これらのエン基のそれぞれが、このような軟質脂肪族スペーサ基によって、他のエン基のそれぞれから間隔を空けられることが好まれる。エン基は、好ましくは末端、すなわち分子鎖の端部にある。
【0016】
ポリエンは、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更により好ましくは4以下のエン基を有する。
【0017】
エン基は、脂肪族、あるいは、より低い程度で好ましくは、脂環式炭素−炭素二重結合であり、ここで水素原子がこの炭素原子のうちの少なくとも1つに結合される。炭素−炭素二重結合は、次の形を持ち得、
−RC=CR′R′′
式中、R、R′、およびR′′は、独立して、水素または有機置換基であり、R、R′、およびR′′のうちの少なくとも1つが水素原子であった場合、有機置換基は置換され得る。R、R′、およびR′′のうちのいずれかが、例えば、最大12の、好ましくは最大4の、より好ましくは最大3の炭素原子を有する、アルキルまたは置換アルキル基であってよい。Rは好ましくは水素またはメチルである。R′およびR′′がそれぞれ水素であることが好まれ、R、R′、およびR′′がすべて水素であることがより好まれる。
【0018】
幾つかの実施形態において、エン基は、末端α,β−不飽和カルボキシレート基、例えば、アクリレート(−O−C(O)−CH=CH)基、またはメタクリレート(−O−C(O)−C(CH)=CH)基等の形で提供される。幾つかの実施形態において、エン基は末端ビニル(−CH=CH)基である。ビニル基は、ビニルアリール基であってもよく、ここでビニル基は、例えばフェニル環等の芳香環の環炭素へ直接結合される。幾つかの実施形態において、エン基は末端アリル(−CH−CH=CH)基である。ポリエン化合物は、異なる形式のエン基を有してよく、あるいは全てのエン基は同一であり得る。
【0019】
スペーサ基はそれぞれ、少なくとも1000原子質量単位の、好ましくは少なくとも1500原子質量単位の、より好ましくは少なくとも2000原子質量単位の、更により好ましくは少なくとも3000原子質量単位の、ならびに幾つかの実施形態において少なくとも4000原子質量単位の重量を有する。軟質スペーサ基の重量は、20,000と同等、および好ましくは最大12,000、より好ましくは最大8000であり得る。スペーサ基はそれぞれ、好ましくは、硬化の際結果として生じる弾性体において、−20℃以下の、好ましくは−35℃以下の、およびより好ましくは−40℃以下のガラス転移温度を有する弾性相をもたらす、少なくとも1000原子質量単位の分子量を有する少なくとも1つの鎖を含む。
【0020】
スペーサ基は脂肪族である。好まれる脂肪族スペーサ基は、直列もしくは分岐脂肪族炭素−炭素単結合および/または非共役二重結合、脂肪族エーテル結合、脂肪族アミン結合、ならびに/あるいはそれらの主鎖内の類似の結合の配列を含有する基を含む。このような配列は、例えば、少なくとも原子5個の、または少なくとも原子10個の長さであってよく、最大原子数百個の長さであってよい。これらの配列は、アミド、ウレタン、尿素、エステル、イミドカルボネート等の様々な結合基で散在している。これらの配列は芳香族基で散在し得、その場合、このような芳香族基は、脂肪族スペーサ基の重量の好ましくは25%以下、好ましくは5%以下を構成する。
【0021】
好まれる実施形態において、スペーサ基のそれぞれは、このようなスペーサ基の全てまたは一部を形成し得る脂肪族ポリエーテル鎖を含有する。脂肪族ポリエーテル鎖は、少なくとも500、より好ましくは少なくとも1000、更により好ましくは少なくとも1500から20,000程の、好ましくは最大12,000、およびより好ましくは最大8,000の分子量を有する。ポリエーテル鎖は、例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等のポリマーであってよい。例えば1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド等のポリマーのような側鎖基を有するポリエーテル鎖が、良好な特性を有する相間離隔されたポリマーを形成する際に特に良好な結果をもたらすことが発見されている。特に好まれるスペーサ基は、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)鎖、または、エチレンオキシド鎖が、共重合エチレンオキシドの重量により、最大40%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大約15%を含有する、不規則プロピレンオキシド−共−エチレンオキシド鎖を含有する。このような特に好まれるスペーサ基は、末端ポリ(エチレンオキシド)セグメントを有し得、その場合、このようなセグメントは全体として、ポリエーテルの総重量の40%超、好ましくは25%以下、およびより好ましくは15%以下を構成すべきではない。
【0022】
ポリエン化合物の好まれる種類はエン末端ポリエーテルであり、特に少なくとも2000(好ましくは少なくとも4000)から最大12,000(好ましくは最大8,000)の分子量、および分子当たり2〜8個、好ましくは2〜6個または2〜4個のエン基を有するエン末端ポリエーテルである。これらの材料を作製するために、幾つか手法が存在する。1つの手法は、ポリエーテルポリオールのヒドロキシ基を、ポリエーテル鎖の末端に結合を形成するためにヒドロキシ基と反応する官能基も有するエン化合物で、キャップすることを含む。このようなキャッピング化合物の例としては、例えば3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)、または2−イソシアネートエチルアクリレートを含む、エン含有イソシアネート化合物が挙げられる。エン末端ポリエーテルはまた、ポリエーテルポリオールを、ビニルベンジルクロリド等のエチレン性不飽和ハロゲン化合物、ビニルトリメトキシルシラン等のエチレン性不飽和シロキサン、またはエチレン性不飽和エポキシド化合物でキャップすることにより調製することもできる。
【0023】
エン末端ポリエーテルを作製する別の手法は、先に説明されたポリエーテルポリオールを、ポリイソシアネート化合物、好ましくはジイソシアネートでキャップすることである。ポリイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはトルエンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、およびそれに類するものであってよい。これは、ウレタン基および末端イソシアネート基を含有するプレポリマーを生成する。イソシアネート基は次いで、ヒドロキシ基および先に説明されたエン基を有する、イソシアネート反応性キャッピング化合物との反応によりキャップされる。このようなイソシアネート反応性キャッピング化合物の例としては、例えば、アリルアルコール、ビニルアルコール、ならびにヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート等の、ヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート化合物が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂は、分子当たり平均で少なくとも1.5個、好ましくは少なくとも1.8個のエポキシ基、および最大1000のエポキシ当量重量を有する、1つ以上の材料である。エポキシ当量重量は好ましくは最大500、より好ましくは最大250、および更により好ましくは最大225である。エポキシ樹脂は、好ましくは分子当たり最大8個のエポキシ基、およびより好ましくは1.8〜4個、特に1.8〜3個を有する。
【0025】
エポキシ樹脂は、他の成分との容易な混合を促進するため、好ましくは室温で液体である。しかしながら、特にエポキシ樹脂がポリエン化合物に可溶性である場合、固体(25℃で)エポキシ樹脂を使用することも可能である。
【0026】
有用なエポキシ樹脂の中に、例えば、ポリフェノール化合物のポリグリシジルエーテルが挙げられ、これにより化合物が2個以上の芳香族ヒドロキシ(フェノール)基を有することが意味される。ポリフェノール化合物の1つの形式は、例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラメチルビフェノール、またはそれらの2つ以上の混合物等の、ジフェノール(すなわち、ちょうど2つの芳香族ヒドロキシ基を有する)である。このようなジフェノールのポリグリシジルエーテルは、エポキシ当量重量が約1000以下、好ましくは約250以下、およびより好ましくは約225以下である場合、先進される。
【0027】
ポリフェノールの好適なポリグリシジルエーテルは、構造(I)により表されるものを含み、
【0028】
【化1】
【0029】
構造中、それぞれのYは独立してハロゲン原子であり、それぞれのDは、1〜約10個の、好ましくは1〜約5個の、より好ましくは1〜約3個の炭素原子、−S−、−S−S−、−SO−、−SO、−CO3−−CO−、または−O−を好適に有する二価炭化水素基であり、それぞれのmは0、1、2、3、または4であってよく、ならびにpは、化合物が最大1000の、好ましくは170〜500の、およびより好ましくは170〜225のエポキシ当量重量を有するような数字である。pは典型的に0〜1、特に0〜0.5である。
【0030】
ポリフェノールの脂肪酸変性ポリグリシジルエーテル、例えばThe Dow Chemical CompanyからのD.E.R.3680等は、有用なエポキシ樹脂である。
【0031】
ポリフェノールの、他の有用なポリグリシジルエーテルは、エポキシノボラック樹脂を含む。エポキシノボラック樹脂は、一部または全てのフェノール基がエピクロロヒドリンでキャップされ、対応するグリシジルエーテルを生成する、メチレン架橋ポリフェノール化合物として一般的に説明され得る。フェノール環は非置換であってよく、あるいは好ましくは6個の炭素原子を有するアルキル、およびより好ましくはメチルが存在する場合、1つ以上の置換基を含有してよい。エポキシノボラック樹脂は、約156〜300の、好ましくは約170〜225の、および特に170〜190のエポキシ当量重量を有してよい。エポキシノボラック樹脂は、例えば、分子当たり2〜10個の、好ましくは3〜6個の、より好ましくは3〜5個のエポキシ基を含有してよい。好適なエポキシノボラック樹脂の中には、一般的な構造を有するものがあり、
【0032】
【化2】
【0033】
構造中、Iは0〜8、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3であり、それぞれのR′は独立してアルキルまたは不活性置換アルキルであり、それぞれのxは独立して0〜4、好ましくは0〜2、およびより好ましくは0〜1である。R′は好ましくは存在するならばメチルである。
【0034】
ポリフェノール化合物の他の有用なグリシジルエーテルとしては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらは、例えばビフェノールのジグリシジルエーテルまたはエポキシノボラック樹脂等の芳香族エポキシ樹脂と一緒に、好ましく使用される。
【0035】
また別の有用なエポキシ樹脂としては、ポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられ、ここでエポキシ当量重量は最大1000、好ましくは最大500、より好ましくは最大250、および特に最大200である。これらは、分子当たり2〜6個のエポキシ基を含有してよい。ポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコール、ならびにグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の高官能ポリオールであってよい。
【0036】
更なる他の有用なエポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンと、米国特許第5,112,932号において説明されるオキサゾリドン含有化合物と、脂環式エポキシドと、D.E.R.(商標)592およびD.E.R.(商標)6508(The Dow Chemical Company)として商業的に販売されるもの等の先進エポキシ−イソシアネートコポリマーと、ならびに例えば国際公開第WO 2008/140906号において説明されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
エン化合物(複数可)(すなわち、上の成分1))および下に説明されるチオール官能プレポリマーを作製する際に使用される任意のエン化合物の100重量部当たり、10〜150重量部のエポキシ樹脂(複数可)が、反応混合物へ提供され得る。エン化合物(複数可)に応じて、エポキシ樹脂の量は、弾性体の特性を調節する必要に応じて、変化し得る。エポキシ樹脂の、エン化合物に対するこの比率は、高い伸び率(少なくとも50%で、多くの場合少なくとも100%)および良好な引張強度(少なくとも2100kPa(約300psi)、好ましくは少なくとも3500kPa(約500psi))の組み合わせを有する弾性体を提供するために、発見されている。この広範な範囲内において、エポキシ樹脂の量が増えるにつれ、伸び率は一般的に低下し、一方で引張強度および係数は増加する傾向にある。エポキシ樹脂の量が前述の範囲内である場合、エポキシ樹脂は、主に硬化したエン化合物(成分1))によって構成される連続的な相の中に分散した、不連続な樹脂相を形成するように硬化する傾向にある。
【0038】
エポキシ樹脂が大量に提供される場合、位相反転がしばしば確認され、この中で、硬化したエポキシ樹脂が主に最終ポリマーの連続相を構成し、従来型の強靭化エポキシ樹脂と類似する特性を有する、低伸び率の生成物に帰着する。このような低伸び率の材料の形成を避けるために、エン化合物(複数可)(成分1))の100重量部当たり、100重量部以下のエポキシ樹脂(複数可)を提供することが好まれる。より好まれる量は、エン化合物(成分1))の100重量部当たり、最大80重量部のエポキシ樹脂(複数可)である。より高い引張強度を提供するために、好まれる低量は、エン化合物(複数可)(成分1))の100重量部当たり、少なくとも25または少なくとも50重量部のエポキシ樹脂である。
【0039】
反応混合物は、高分子量ポリマーを形成するために、エン化合物(成分1))のエン基およびエポキシ樹脂(複数可)のエポキシ基の両方と反応し得る、少なくとも1つのポリチオールを更に含む。
【0040】
ポリチオール硬化剤は、少なくとも2個のチオール基を含有する。ポリチオールは、好ましくは、チオール基当たり最大500、より好ましくは最大200、および更により好ましくは最大150の当量重量を有する。このポリチオール化合物は、分子当たり最大8個の、好ましくは最大4個のチオール基を含有してよい。
【0041】
好適なポリチオール化合物の中には、2〜8個の、好ましくは2〜4個のヒドロキシ基および最大約75の当量重量を有する低分子量ポリオールのメルカプトアセテートおよびメルカプトプロピオネートエステルがあり、ここで一部または全てのヒドロキシ基は、メルカプトアセテートおよび/またはメルカプトプロピオネートでエステル化される。このような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等が挙げられる。
【0042】
他の好適なポリチオール化合物としては、例えば1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール等のアルキレンジチオール、例えば1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,2,3−トリ(メルカプトメチル)プロパン、1,2,3−トリ(メルカプトエチル)エタン、(2,3−ジ((2−メルカプトエチル)チオ)1−プロパンチオール)等のトリチオール、およびそれに類するものが挙げられる。更なる別の有用なポリチオール化合物は、少なくとも2つのメルカプト置換基を脂肪酸鎖上に有する、例えば以下の構造を有するメルカプト置換脂肪酸である。
【0043】
【化3】
【0044】
チオール硬化剤は、チオール基を有するプレポリマーを形成するために、直前に説明されたチオール化合物の過剰量を、本明細書において説明されるポリエン化合物と反応させることによって作製されるチオール官能プレポリマーを含んでもよい。
【0045】
使用される硬化剤の量は、硬化した生成物において求められる特性に依存して大きく変化し得、幾つかの場合、所望される硬化反応の形式に依存する。
【0046】
反応混合物中に存在する硬化剤の量は大きく変化し得る。硬化剤の最大量は、エンおよびエポキシ基の当量当たり、最大1.25当量、好ましくは最大1.15当量、および幾つかの場合最大1.05当量のチオール基を典型的に提供する。硬化剤の過剰量が大きいほど、ポリマー特性が劣化する傾向にある。エポキシ樹脂(複数可)は自身で重合可能であり、多くの場合エン化合物もまた、自己重合が可能であるため、反応混合物中でエポキシおよび/またはエン基を過剰に提供することが可能である。したがって、例えば、エポキシおよびエン基の当量当たり、硬化剤中わずかに0.1、わずかに0.25、またはわずかに0.5のチオール基の当量が提供され得る。
【0047】
幾つかの実施形態において、硬化剤の量は定比に近く、すなわち、チオール当量の総数が、反応混合物へ提供されるエポキシおよびエン基の当量の合計数と多少近い。したがって、例えば、反応混合物中に存在するエポキシおよびエン基の当量当たり、0.75〜1.25当量、0.85〜1.15当量、または0.85〜1.05当量のチオール基が、硬化剤によって提供され得る。
【0048】
本反応混合物は、少なくとも1つの塩基性触媒を含有する。本発明の目的のために、塩基性触媒は、チオラートアニオンを形成するために、チオール基から水素を直接的または間接的に抜き出すことのできる化合物である。幾つかの実施形態において、塩基性触媒は、チオール基および/またはアミン水素を含有しない。好ましくは、触媒は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10のpKaを有する物質の共役塩基である。好ましくは、触媒は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10の共役酸pKaを持つ材料である。
【0049】
触媒の有用な形式の中に、炭酸カリウムおよびカルボン酸カリウムが例である、強塩基と弱酸の塩、様々なアミン化合物、ならびに様々なホスフィン等の無機化合物が挙げられる。
【0050】
好適なアミン触媒としては、様々な第三級アミン化合物、例えば1,8−ジアザビシクロ−5.4.0−ウンデセン−7等の環状アミジン化合物,第三級アミノフェノール化合物、ベンジル第三級アミン化合物、イミダゾール化合物、またはこれらのうち任意の2つ以上の混合物が挙げられる。第三級アミノフェノール化合物は、1個以上のフェノール基および1個以上の第三級アミノ基を含有する。第三級アミノフェノール化合物の例としては、モノ、ビス、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ならびにこれらのうち2つ以上の混合物が挙げられる。ベンジル第三級アミン化合物は、第三級窒素原子を有する化合物であり、第三級窒素原子上の少なくとも1つの置換基がベンジルまたは置換ベンジル基である。有用なベンジル第三級アミン化合物の例は、N,N−ジメチルベンジルアミンである。
【0051】
イミダゾール化合物は、1つ以上のイミダゾール基を含有する。イミダゾール化合物の例としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1)′]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチルイミダゾリル−(1)′]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1)′]エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾリウム−イソシアヌル酸付加物、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、および前述のイミダゾール化合物のいずれかを脱水すること、またはそれらをホルムアルデヒドで凝縮することにより得られる、2つ以上のイミダゾール環を含有する化合物が挙げられる。
【0052】
他の有用な触媒としては、ホスフィン化合物、すなわち、一般式RPを有する化合物が挙げられ、ここでそれぞれのRはヒドロカルビル、または不活性置換ヒドロカルビルである。ジメチルフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン等が、このようなホスフィン触媒の例である。
【0053】
塩基性触媒は、触媒的に有効な量で存在する。好適な量は、典型的に、硬化剤中のチオール基の当量当たり、触媒約0.01〜約10モルである。好まれる量は、硬化剤中のチオール基当量当たり、触媒0.5〜1モルである。
【0054】
前述の原料に加え、反応混合物は様々な他の材料を含有してよい。
【0055】
存在し得る他の材料の1つはフリーラジカル開始剤であり、特に、50〜160℃の、特に65〜120℃の、およびより好ましくは70〜100℃の範囲の温度に加熱された際フリーラジカルを生成する、熱分解性フリーラジカル開始剤である。このような熱分解性フリーラジカル開始剤化合物は、10分半減期温度、50〜120℃を有し得る。フリーラジカル開始剤の存在は、ポリエン化合物のエン基がカチオン性またはアニオン性メカニズムを介して容易に硬化可能でない場合に好まれ、エン基がビニル、ビニルアリール、またはアリルである場合よく起こる。
【0056】
フリーラジカル開始剤の存在は、二重メカニズム硬化が起こることを許容し得、ここでチオールとのエン反応がフリーラジカルメカニズムを介して起こり、エポキシ硬化がアニオン性(塩基触媒化)メカニズムを介して起こる。所望されるならば、フリーラジカル開始剤によるフリーラジカルの形成を促進する条件へ反応混合物をまず供し、次いでエポキシ樹脂成分を硬化するのに十分な条件に供することにより、このような手法はエンおよびエポキシ反応が経時的に起こることを許容する。代わりに、例えば、熱活性化フリーラジカル開始剤を選択することと、フリーラジカル開始剤を活性化し、エポキシ硬化反応を促進するために十分な高温に、反応混合物を曝すこととにより、両方の硬化メカニズムが同時に起こり得る。
【0057】
あるエン化合物、特に末端アクリレートおよび/またはメタクリレートエン基を有するものは、フリーラジカルの存在下において単独重合し得る。したがって、幾つかの実施形態において、アクリレートおよび/またはメタクリレートエン基を有するエン化合物の過剰量(硬化剤中のチオール基の量を超える)は、エン/チオール硬化反応に加えてエン化合物の単独重合のある程度の量を促進するために、フリーラジカル開始剤と併せて提供され得る。他の実施形態において、エン化合物は、例えば、フリーラジカル条件下で有意な程度には単独重合しないビニルおよび/またはアリルエン基を含有する。このような場合においても、フリーラジカル開始剤の存在は、エン基がチオール基とフリーラジカルメカニズムを介して反応し、エポキシが塩基触媒化メカニズムを介して硬化する、二重硬化メカニズムを許容するため、やはり有益であり得る。
【0058】
好適なフリーラジカル発生剤の例としては、例えば、ペルオキシ化合物(例えば、過酸化物、過硫酸塩、過ホウ酸塩、および過炭酸塩)、アゾ化合物、およびそれに類するものが挙げられる。具体的な例としては、過酸化水素、ジ(デカノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルネオデカノエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルペルオキシド−2−エチルヘキサノエート、ジ(t−ブチル)ペルオキシド、t−ブチルペルオキシジエチルアセテート、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、およびそれに類するものが挙げられる。
【0059】
フリーラジカル開始剤の有用な量は、エン化合物(複数可)の100重量部当たり、0.2〜10重量部である。
【0060】
別の任意の成分は、1つ以上の低当量重量エン化合物である。このような化合物(複数可)は、先に説明された1個以上のエン基を有し、例えばエン基当たり最大約450、好ましくは最大約250の当量重量を有し得る。このような低当量重量エン化合物は、例えば、低(最大125、好ましくは最大75)当量重量ポリオールを、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)、もしくは2−イソシアネートエチルアクリレート等の不飽和イソシアネート化合物、ビニルベンジルクロリド等のエチレン性不飽和ハロゲン化合物、ビニルトリメトキシルシラン等のエチレン性不飽和シロキサン、エチレン性不飽和エポキシド化合物、またはヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートでキャップすることにより生成し得る。低当量重量エン化合物はまた、ポリイソシアネートを、好ましくはジイソシアネートを、ヒドロキシ基および先に説明されたエン基を有するイソシアネート反応性キャッピング化合物でキャップすることにより、生成され得る。他の有用な低当量重量エン化合物としては、ジビニルベンゼン等のジビニルアレーン化合物が挙げられる。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態において、高および低当量重量エン化合物の混合物は、(1)ポリイソシアネートの過剰量を、任意に鎖延長剤の存在下で、イソシアネート終端ポリエーテル化合物未反応(単量体)ポリイソシアネートを含有する準プレポリマーを形成するために、ポリエーテルポリオールと反応させることと、次いで(2)イソシアネート基を、ヒドロキシ基および先に説明されたエン基を有するイソシアネート反応性キャッピング化合物でキャップすることと、により生成され得る。これは、高および低当量重量エン化合物の混合物を生成するために、プレポリマー分子および残存する単量体イソシアネート化合物をキャップする。
【0062】
反応混合物は、上に説明されたものに加えて、他の材料を含有してもよい。このような追加的な材料としては、例えば、1つ以上の着色剤、1つ以上の反応性希釈剤、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の保存剤、1つ以上の難燃剤、1つ以上の繊維、1つ以上の非繊維状粒状充填剤(ミクロンおよびナノ粒子を含む)、1つ以上の湿潤剤、およびそれに類するものが挙げられ得る。
【0063】
反応混合物は、好ましくは、二酸化マンガン、チラム、およびイソシアネート化合物を実質的に含まない。このような化合物は、存在する場合は、反応混合物の重量の好ましくは最大で1%、より好ましくは最大で0.25%を構成する。最も好ましくは、反応混合物はこれらの化合物のいずれをも測定可能な量で含有しない。
【0064】
適用を促進するために、出発物質を二成分系へ配合することが、しばしば都合がよい。第1の成分は、エポキシ樹脂および少なくとも一部のポリエン化合物(複数可)を含有する。第2の成分は、硬化剤を含有する。混合を促進するために、第1および第2の成分が混合温度で類似の粘度を有する(例えば低粘度成分の粘度の50%以内、より好ましくは25%以内)ように配合することが、しばしば有益である。ポリエン化合物が最も高い粘度を有する反応成分である傾向にあるため、第1の成分が第2の成分よりもかなり高い粘度を有する傾向にある。これらの成分の粘度を類似にするための1つの方法は、第1および第2の成分の間でポリエン化合物を分割することであり、それによりポリエン化合物の一部が第1および第2の化合物のそれぞれの中に存在する。
【0065】
触媒を第2の成分に配合することが一般的に好まれる。
【0066】
混合および適用は、任意の簡便な様式でなされ得る。材料が2つの成分に配合された、好まれる場合において、これらの成分は単純に周囲温度、または任意の望ましい高温で組み合わされる。これらの成分の混合は、特定の用途および利用可能な設備に依存して、任意の簡便な方法でなされ得る。成分の混合は、手または様々な種類のバッチ混合装置を使用することによりそれらを混合する、バッチ法でなされ得、次いで好ましくは反応混合物を先に説明されたように鋳型のリザーバへ導入することにより、ケーブル接続部へ適用される。2つの成分は、別個のカートリッジ内に包装され、混合およびそれらの接続部への適用のための静的混合装置を通じて同時に送出され得る。代わりに、2つの成分をバリアシールのあるパウチに包装することもできる。パウチの内容物は、手または任意の好適な設備によって混合され、次いでケーブル接続部へ注ぎ出され得る。
【0067】
特に工業用の場面において、他の連続的調量および送出システムもまた、反応混合物を混合および送出するために有用である。
【0068】
多くの場合において、硬化は、室温(約20℃)または室温より僅かに低い温度で、自然に進行する。このため、反応混合物はしばしば、0〜45℃、好ましくは5〜40℃の周囲温度でケーブル接続部へそれを適用することと、外部熱の更なる適用無しに反応混合物を自然に硬化させることとにより、硬化する。周囲条件下での硬化からタックフリー状態に至るまで、周囲温度に依存して、典型的に30分〜8時間が必要である。完全硬化には、典型的に5〜30時間かかる。硬化をもたらすための更なる熱の適用が必要なわけではないが、硬化を速めるために所望されるならば、適用された反応混合物はもちろん加熱され得る。
【0069】
硬化反応は一般的に発熱性であり、対応する温度の上昇が起こり得る。この発明の利点は、発熱性の温度上昇は一般的に穏やかであり、ケーブル接続適用に関して有用である多くのエポキシ樹脂系よりかなり低いことである。本発明の反応混合物は、下記実施例1Bにおいて説明される方法に従って評価される際、典型的に120℃以下の発熱温度を提示する。
【0070】
幾つかの実施形態において、硬化は、反応混合物をフリーラジカルおよび/またはフリーラジカルを発生させる条件に曝すことにより行われ得る。これは、所望されるならば、高温硬化を行うことに加えてなされ得る。フリーラジカルは、様々な方法で提供され得る。幾つかの実施形態において、反応混合物は、光源、好ましくは水銀放電灯またはUV生成LED等の紫外線光源に曝される。紫外線光源は、例えば、10mW/cm〜10W/cmの強さのUV照射を提供し得る。他の実施形態において、反応混合物はプラズマに曝される。更なる他の実施形態において、フリーラジカルは、先に説明されたように、フリーラジカル開始剤を分解することにより生成される。この最後の場合、フリーラジカルは、反応混合物を高温に曝すことにより熱的に生成され得、それによりフリーラジカル硬化メカニズムを促進し、エポキシ樹脂(複数可)の硬化剤との反応を加速させる。
【0071】
フリーラジカル条件は、エン−チオール硬化反応を促進するものの、エポキシ硬化反応は促進しない傾向にある。それ故、フリーラジカル硬化が行われる場合でも、エポキシ硬化反応のための触媒を提供することが通常必要である。
【0072】
幾つかの場合、特にエン化合物がアクリレートおよび/またはメタクリレートエン基を含有する場合、フリーラジカル条件はまた、エン化合物(複数可)の単独重合を促進し得る。このような単独重合を促進することが所望される場合、反応混合物は、アクリレートおよび/またはメタクリレートエン基を有する少なくとも1つのエン化合物を好ましくは含み、また、硬化剤の量に応じてエンおよびエポキシ基の過剰量を、例えば硬化剤中のチオール基当量当たり、少なくとも1.25、最大10ものエンおよびエポキシ基当量を、好ましくは含む。エンの単独重合が所望されない場合、エン化合物は、アクリレートおよびメタクリレート基等の、フリーラジカル条件下で単独重合するエン基を持たないことが好まれる。
【0073】
硬化したポリマーは弾性を持つ。それは、ASTM D1708に従って決定される、少なくとも50%の、好ましくは少なくとも100%の破断伸び率を典型的に有する。破断伸び率は1000%以上であり得る。典型的な伸び率は100〜400%、特に100〜250%である。引張強度はしばしば少なくとも100kPa(約150psi)、少なくとも2000kPa(約300psi)であり、幾つかの実施形態において少なくとも3500kPa(約500psi)であり、特に好まれる実施形態において少なくとも7000kPa(約1000psi)である。引張強度は28,000kPa(約4000psi)以上の場合もあるが、より典型的に最大21000kPa(約3000psi)であり、または最大14000kPa(約2000psi)である。より硬い弾性体も生成され得るが、多くの実施形態において、弾性体は、60〜95の、より典型的に70〜95の、および更により典型的に70〜90のショアA硬度を有する。この発明の利点は、出発物質の選択、出発物質の比率、およびある程度の硬化の様式を通じて、特性が適合され得ることである。
【0074】
下記の実施例は本発明を説明するために提供されるものであり、その範囲を制限しない。全ての部およびパーセントは、特に指示の無い限り、重量によるものである。
【0075】
実施例1
A.アクリレート末端ポリエーテルの合成
74.5g(428ミリモル)のトルエンジイソシアネート(TDI、2,4−および2,6−異性体の80/20混合物)を、乾燥した、塔頂攪拌機、温度制御プローブ、添加漏斗、および窒素入口を備える2L四つ首丸底フラスコに装入する。フラスコおよびその内容物を80℃へ加熱し、827g(207ミリモル)の、分子量4000、名目官能価2のポリ(プロピレンオキシド)ジオールを添加する。溶液を、ジオールを添加した後、30分間撹拌する。一滴のジブチル錫ジラウレートを添加し、反応を更に2時間撹拌する。生成物は、滴定により決定された、2.04重量%のイソシアネート含量を有する、イソシアネート末端プレポリマーである。
【0076】
881.2グラムのプレポリマーを、45℃の温度にする。54.3g(467.6ミリモル)のヒドロキシエチルアクリレート(95%)および一滴のジブチル錫ジラウレートを添加する。FT−IRによる観測で測定可能なイソシアネート基が残存しなくなるまで、反応混合物を45℃で撹拌する。結果として得られる生成物は、分子当たり2つの末端アクリレート(−O−C(O)−CH=CH)基でキャップされたポリエーテルである。
【0077】
B.相セグメント化弾性体の生成
150.00gの、Aにおいて生成されたアクリレート末端ポリエーテル、および100.00gの180エポキシ当量重量のビスフェノールAのジグリシジルエーテル(D.E.R.383、The Dow Chemical Companyから)を、高速実験室混合器で均一になるまで混合する。別個に、26.41gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Sigma Aldrich technical grade)を、99mg(トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)に基づいて1モル%)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU、Sigma Aldrich technical grade)と、高速実験室混合器で均一になるまで混合する。次いで、チオール/触媒混合物を74.68gのアクリレート末端プレポリマー/エポキシ樹脂混合物と、透明な混合物を生成するように、高速混合器で混合する。出発物質のこれらの割合は、アクリレートおよびエポキシ基の合計当量当たり、約1.0当量のチオール基を提供する。混合物を、50℃に温められた鋳型に注ぎ込む。次いで、満たされた鋳型を、夜通し50℃のオーブン内に置く。タックフリーのプラークが得られる。硬化したプラークは、先に説明された計算で、25重量%の硬化したエポキシ樹脂を含有する。
【0078】
プラークは、6200kPa(約900psi)の引張強度および約120%の破断伸び率(ASTM D1708により測定)を有する。ショアA硬度は78である。
【0079】
硬化したプラークの2in×2in(5cm×5cm)断片を、脱イオン水中に置き、4週間70℃に加熱する。次いで試料を乾燥し、その質量増加、引張強度、伸び率、およびショアA硬度を測定する。試料は、おそらくは水との反応および/または吸収により、質量において2.0%増加する。20%の引張強度の低下が確認され、これは、攻撃的な条件下においても耐水安定性が良好であることを示す。
【0080】
硬化したプラークの2in×2in(5cm×5cm)断片を、空気中で4週間、120℃に加熱する。試料は、その初期の重量からたった0.6%しか失わない。
【0081】
上に説明されたものと同じ配合を混合し、厚さ30ミルのフィルムとして成型し、室温で硬化する。硬化したフィルムは、60Hzで6.2の誘電率を有する。この値は、ケーブル接続材料にとって好適である。
【0082】
反応混合物を、発熱性温度上昇に関して次のように評価する。アクリレート末端ポリエーテル/エポキシ樹脂混合物を、上に説明されたように調製し、少なくとも4時間、ASTM実験室条件と平衡化するようにする25.64gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Sigma Aldrich technical grade)を、97mg(トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)に基づいて1モル%)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU、Sigma Aldrich technical grade)と、高速実験室混合器で均一になるまで混合する。高速混合は、この系内に多量の熱をもたらすことはなく、したがってこの系は混合後再度平衡化しない。25.23gのチオール/DBU混合物を、74.77gのアクリレート/エポキシ混合物へ添加し、次いで一様になるまで高速混合する。高速混合の結果、30〜35℃へ温度が上昇する。100gの透明な混合物を、蓋および熱電対アセンブリのついた、ほぼ断熱的な容器に入れる。温度プロファイルを、温度が室温(約23℃)に下がるまで記録する。硬化中実現された最高温度は、46分で103℃である。
【0083】
この系をケーブル接続部に適用し、硬化させる際、硬化した弾性体は弾性絶縁シースを接続部上に形成し、この弾性絶縁シースはケーブル絶縁体に良好に接着し、遮水コーティングを形成する。
【0084】
実施例2〜3
実施例2:末端アクリレート基当たり約2150の当量重量を有するアクリレート末端ポリエーテルを、実施例1において説明された一般的な様式で作製する。弾性体実施例2を、下の表1において明示される配合を使用し、このアクリレート末端ポリエーテルから作製する。アクリレート末端ポリエーテルを、エポキシ樹脂と、高速実験室混合器で混合し、次いでチオールおよび触媒の混合物を撹拌混合する。結果として得られた反応混合物を、50℃に温められた鋳型に注ぎ込む。次いで、満たされた鋳型を、夜通し50℃のオーブン内に置く。タックフリーのプラークが得られる。第2の100gの試料を説明されたように調製し、実施例1のように、硬化中、温度を記録する。
【0085】
チオール基で終わるプレポリマーを形成するために、アクリレート末端ポリエーテルの半分をトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)と前もって反応させることを除き、同じ様式で実施例3を作製する次いで、エポキシ樹脂および残存するアクリレート末端ポリエーテルをプレポリマーと反応させる。厚さ30ミルのフィルムを、上に説明されたように調製する。
【0086】
実施例2および3のそれぞれに関する、発熱データ、引張強度、伸び率、ショアA硬度、吸水率、引張劣化、重量損失、誘電特性は、表1において報告される通りである。
【0087】
実施例2および3をケーブル接続部に適用し、硬化させる際、それぞれの場合における硬化した弾性体は、弾性絶縁シースを接続部上に形成し、この弾性絶縁シースはケーブル絶縁体に良好に接着し、遮水コーティングを形成する。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例4
末端アクリレート基当たり約2150の当量重量を有するアクリレート末端ポリエーテルを、実施例1において説明された一般的な様式で作製する。弾性体実施例4を、下の表1において明示される配合を使用し、このアクリレート末端ポリエーテルから作製する。アクリレート末端ポリエーテルを、エポキシ樹脂と、高速実験室混合器で混合し、次いでチオールおよび触媒の混合物を撹拌混合する。結果として得られた反応混合物を、50℃に温められた鋳型に注ぎ込む。次いで、満たされた鋳型を、夜通し50℃のオーブン内に置く。タックフリーのプラークが得られる。引張強度、伸び率、ショアA硬度、吸水率、引張劣化、重量損失、誘電特性は、表2において報告される通りである。
【0090】
【表2】
【0091】
この系をケーブル接続部に適用し、硬化させる際、硬化した弾性体は弾性絶縁シースを接続部上に形成し、この弾性絶縁シースはケーブル絶縁体に良好に接着し、遮水コーティングを形成する。
【0092】
実施例5〜6
末端アクリレート基当たり約2150の当量重量を有するアクリレート末端ポリエーテルを、実施例1Aにおいて説明された一般的な様式で作製する。弾性体実施例5〜6を、下の表1において明示される配合を使用し、このアクリレート末端ポリエーテルから作製する。それぞれの場合において、アクリレート末端ポリエーテルを、エポキシ樹脂と、高速実験室混合器で混合し、次いでチオールおよび触媒の混合物を撹拌混合する。結果として得られた反応混合物を、50℃に温められた鋳型に注ぎ込む。次いで、満たされた鋳型を、夜通し50℃のオーブン内に置く。タックフリーのプラークが得られる。引張強度、伸び率、およびショア硬度は、表3において報告される通りである。
【0093】
【表3】
【0094】
これらの系をケーブル接続部に適用し、硬化させる際、それぞれの場合における硬化した弾性体は、弾性絶縁シースを接続部上に形成し、この弾性絶縁シースはケーブル絶縁体に良好に接着し、遮水コーティングを形成する。
【0113】
上述は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の他の及びさらなる実施形態を、その
基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下に続く特許請求
の範囲により決定される。

上記の開示によって提供される発明の例として、以下のものが挙げられる。
[1] ケーブル接続部を作製する方法であって、
a)高分子絶縁体を有する第1のケーブルの第1の裸導体端を、高分子絶縁体を有する第2のケーブルの第2の裸導体端と接続して、導体接続部を製作するステップと、
b)前記導体接続部上に、かつ前記第1のケーブルおよび前記第2のケーブルの前記高分子絶縁体を接触させて、硬化性反応混合物を適用するステップと、
c)前記硬化性反応混合物を硬化させて、前記導体接続部上に、かつ前記第1および第2のケーブルのそれぞれの前記高分子絶縁体に固着された高分子絶縁シースを形成するステップと、を含み、
前記硬化性反応混合物は、1)チオール基と反応可能である脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する、平均で少なくとも2つの基を有する、少なくとも1つのポリエン化合物であって、前記脂肪族炭素−炭素二重結合のうちの少なくとも1つが、少なくとも1000原子質量単位の分子量を有する脂肪族スペーサ基によって、前記脂肪族炭素−炭素二重結合のそれぞれから分離される、ポリエン化合物と、2)成分1)の100重量部当たり10〜150重量部の、分子当たり平均で少なくとも1.5個のエポキシ基および最大1000のエポキシ当量重量を有する、少なくとも1つのエポキシ樹脂と、3)少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つの硬化剤と、4)少なくとも1つの塩基性触媒と、を含有する、方法。
[2] 前記脂肪族スペーサ基が、少なくとも2000原子質量単位の分子量を有する少なくとも1つのポリ(アルキレンオキシド)鎖を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記ポリ(アルキレンオキシド)鎖が、4000〜8000原子質量単位の重量を有する、[2]に記載の方法。
[4] 前記エポキシ樹脂が、最大250のエポキシ当量重量を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記エポキシ樹脂が、ポリフェノール化合物の少なくとも1つのポリグリシジルエーテルを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記硬化剤が、2〜4個のチオール基を含有する少なくとも1つのポリチオール化合物、またはそれぞれが2〜4個のチオール基を含有する2つ以上のポリチオール化合物の混合物を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記ポリチオール化合物(複数可)が、50〜250のチオール当量重量を有する、[6]に記載の方法。
[8] 前記塩基触媒が、少なくとも1つのアミン化合物を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記塩基触媒が、少なくとも1つの環状または二環式アミジン触媒を含む、[8]に記載の方法。
[10] 前記末端脂肪族炭素−炭素二重結合が、アクリレート基である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。