特許第6379150号(P6379150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6379150光学的表示ユニットの製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379150
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】光学的表示ユニットの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20180813BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180813BHJP
   B65H 20/16 20060101ALI20180813BHJP
   B65H 39/065 20060101ALI20180813BHJP
   B65H 39/14 20060101ALI20180813BHJP
   B65H 20/12 20060101ALI20180813BHJP
   B29C 65/50 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G02F1/13 101
   G09F9/00 342
   B65H20/16
   B65H39/065
   B65H39/14
   B65H20/12
   B29C65/50
【請求項の数】19
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-205082(P2016-205082)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-66841(P2018-66841A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-204522(P2016-204522)
(32)【優先日】2016年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】小塩 智
(72)【発明者】
【氏名】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】由良 友和
(72)【発明者】
【氏名】北田 和生
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−115615(JP,A)
【文献】 特開2015−045820(JP,A)
【文献】 特開2005−043384(JP,A)
【文献】 特開2011−257463(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0190995(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/163827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/1335,
G09F 9/00,
B29C 65/48,
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介して前記キャリアフィルム上に連続的に支持された複数の光学フィルムシートとを含むウェブ状の光学フィルム積層体を搬送し、剥離位置において、前記キャリアフィルムから前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを順次剥離し、貼合位置において、前記光学フィルムシートをパネル部材に貼り合わせることによって、光学的表示ユニットを連続的に製造する製造装置であって、
前記製造装置は前記剥離位置と該剥離位置の上流側所定位置との間に往復動する保持装置を配備しており、
前記保持装置は、前記上流側所定位置において、前記光学フィルム積層体の幅方向の両端を含む位置を保持し、前記保持装置に保持された状態で前記光学フィルム積層体を一定の距離だけ移動させ、前記剥離位置において、前記キャリアフィルムから前記粘着剤層と共に剥離された前記光学フィルムシートの先端が前記剥離位置の下流側所定位置に達したときに、前記光学フィルム積層体を解放することを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記保持装置は、前記光学フィルム積層体の搬送に同期して移動することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記保持装置は保持手段を含み、前記保持手段は、前記光学フィルム積層体の端部を挟持する一対の把持手段、前記光学フィルム積層体の端部の一方を吸着する吸盤又は吸引手段、或いは、前記光学フィルム積層体の端部を挟持する円筒形の一対の挟持ローラのいずれかである請求項1または2のいずれかに記載の製造装置。
【請求項4】
前記製造装置は前記剥離位置に頂部を有する断面楔形構造体を配備し、前記断面楔形構造体は、前記光学フィルム積層体を搬送させながら、前記剥離位置において、前記キャリアフィルムの背面を前記頂部で屈曲させて巻き取り、前記キャリアフィルムから前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシート剥離し、剥離された前記光学フィルムシートの前記先端を前記下流側所定位置に達するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製造装置。
【請求項5】
前記下流側所定位置が前記貼合位置より下流側にある請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記製造装置は前記剥離位置に吸着固定部を有する回転ドラムを配備し、前記回転ドラムは、前記光学フィルム積層体を搬送させながら、前記剥離位置において、前記光学フィルムシートの背面を前記回転ドラムに吸着固定し、前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを前記キャリアフィルムから剥離しながら前記回転ドラムに巻き取り、前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートの前記先端を前記下流側所定位置に吸着搬送するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製造装置。
【請求項7】
前記光学フィルム積層体は、少なくとも矩形状に成形された粘着剤層を含む光学フィルムシートを前記キャリアフィルムに並べて添設されたものか又は前記キャリアフィルムに粘着剤層を介して積層された光学フィルムに長手方向に一定間隔に入れた幅方向の切込みによって粘着剤層を含む光学フィルムシートが成形されたもののいずれかであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の製造装置。
【請求項8】
前記保持装置の前記光学フィルム積層体に対する保持位置は、前記貼合位置に送られる直前の前記光学フィルムシートの後端の近傍位置であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の製造装置。
【請求項9】
前記保持装置の前記光学フィルム積層体に対する保持位置は、前記貼合位置に送られる直前の前記光学フィルムシートの次の前記光学フィルムシートの先端の近傍位置であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の製造装置。
【請求項10】
前記保持装置は、前記光学フィルム積層体の搬送に連動し、前記光学フィルム積層体の両側の張力の弛み又は張力の弛みによる強弱を矯正し、前記キャリアフィルムから剥離されて前記下流側所定位置に送られる前記粘着剤層を含む前記光学フィルムシートの横方向のズレやバタつきを抑制することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の製造装置。

【請求項11】
光学的表示ユニットの製造装置において、キャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介して前記キャリアフィルム上に連続的に支持された複数の光学フィルムシートとを含むウェブ状の光学フィルム積層体を搬送し、剥離位置において、前記粘着剤層と共に前記キャリアフィルムから前記光学フィルムシートを順次剥離し、貼合位置において、前記光学フィルムシートをパネル部材に貼り合わせることによって、光学的表示ユニットを連続的に製造する製造方法であって、
前記製造装置は、前記剥離位置と該剥離位置の上流側所定位置との間に往復動する保持装置を配備しており、
前記光学フィルム積層体が前記上流側所定位置に達したときに前記保持装置が前記光学フィルム積層体の幅方向の両端を含む位置を保持する、保持工程と、
前記光学フィルム積層体が前記保持装置によって保持された状態で一定の距離だけ移動する、往路移動工程と、
前記剥離位置において前記キャリアフィルムから前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを剥離する、剥離工程と、
前記光学フィルムシートの先端が前記剥離位置の下流側所定位置に達したときに、前記保持装置が前記光学フィルム積層体を解放し、前記上流側所定位置に戻る、復路移動工程と、
前記貼合位置において前記パネル部材に剥離された前記光学フィルムシートを前記粘着剤層によって貼り合わせる、貼合工程と、
からなることを特徴とする製造方法。
【請求項12】
前記保持装置は、前記光学フィルム積層体の搬送に同期して往路移動することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記製造装置は前記剥離位置に頂部を有する断面楔形構造体を配備しており、前記剥離工程は、前記光学フィルム積層体を搬送させながら、前記剥離位置において前記キャリアフィルムの背面を前記断面楔形構造体の前記頂部で屈曲させて巻き取り、前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを前記キャリアフィルムから剥離することを特徴とする請求項11又は12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記下流側所定位置が前記貼合位置より下流側にある請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記製造装置は前記剥離位置に吸着固定部を有する回転ドラムを配備しており、前記剥離工程は、前記光学フィルム積層体を搬送させながら、前記剥離位置において、前記光学フィルムシートの背面を前記回転ドラムに吸着固定し、前記キャリアフィルムから前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを前記回転ドラムに巻き取り、前記粘着剤層と共に前記光学フィルムシートを前記キャリアフィルムから剥離することを特徴とする請求項11又は12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記光学フィルム積層体は、少なくとも矩形状に成形された粘着剤層を含む光学フィルムシートを前記キャリアフィルムに並べて添設されたものか又は前記キャリアフィルムに粘着剤層を介して積層された光学フィルムに長手方向に一定間隔に入れた幅方向の切込みによって粘着剤層を含む光学フィルムシートが成形されたもののいずれかであることを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
前記保持装置が前記光学フィルム積層体に対する保持位置は、直前の前記光学フィルムシートの後端の近傍位置であることを特徴とする請求項11から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
前記保持装置の前記光学フィルム積層体に対する保持位置は、前記貼合位置に送られる直前の前記光学フィルムシートの次の前記光学フィルムシートの先端の近傍位置であることを特徴とする請求項11から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
前記往路移動工程は、前記光学フィルム積層体の搬送に連動し、前記光学フィルム積層体の両側の張力の弛み又は張力の弛みによる強弱を矯正し、前記キャリアフィルムから剥離されて前記下流側所定位置に送られる前記粘着剤層を含む前記光学フィルムシートの横方向のズレやバタつきを抑制するようにしたことを特徴とする請求項11から18のいずれかに記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的表示ユニットを連続的に製造するための製造装置及び製造方法に関する。より具体的には、本発明は、矩形状のパネル部材に貼り合わされる光学フィルムシートの貼合位置のバラツキを制御し、両者の貼合精度を高めるようにした光学的表示ユニットの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1又は特許文献4に示されるように、近年、光学的表示ユニットの製造現場において、ロール・トゥ・パネル(RTP)方式による製造装置及び製造方法が採用されている。
【0003】
RTP方式においては、通常、以下のように光学的表示ユニットが連続的に製造される。まず、ウェブ状の光学フィルム積層体がロールから繰り出される。光学フィルム積層体は、ウェブ状のキャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に積層された粘着剤層と、該粘着剤層を介してキャリアフィルム上に積層されたウェブ状の光学フィルムとを含んで構成されている。
【0004】
光学フィルムは、単層のものであっても複層のものであってもよい。繰り出されたウェブ状の光学フィルム積層体には、幅方向の切込線が連続的に入れられることにより、隣接する切込線の間に粘着剤層を含むシート状の光学フィルム、所謂、光学フィルムシートが形成される。
【0005】
ウェブ状のキャリアフィルム上に連続的に支持された光学フィルムシートは、貼合位置に接して配置されるか又は貼合位置の近くに配置される剥離手段によって粘着剤層と共にキャリアフィルムから剥離され、貼合位置に送られる。貼合位置に到達した光学フィルムシートは、貼合位置に設けられた貼合手段によって、別途貼合位置に搬送されてくるパネル部材の一方の面に貼り合わされる。
【0006】
液晶ディスプレイの場合は、一方の面に光学フィルムシートが積層されたパネル部材は、他方の面にも別の光学フィルムシートを貼り合わせる。他方の面に貼り合わせる場合には、別の剥離手段によって粘着剤層と共に別のウェブ状のキャリアフィルムから剥離された別の光学フィルムシートが、最初の光学フィルムシートとパネル部材とを貼り合わせる位置と同一又は別の貼合位置に送られ、パネル部材の他方の面に貼り合わされる。
【0007】
こうしたRTP方式の普及に伴い、光学的表示ユニットの製造装置又は製造方法に要求される連続的製造の高速化、光学的表示ユニットの大型化にも拘わらず、貼合精度は、現実には、狭額化等の要請から1ミリ以内のものが要求されている。
【0008】
本来、RTP方式において、貼合位置に搬送される矩形状のパネル部材に対してウェブ状のキャリアフィルムから剥離される粘着剤層を含む可撓性の光学フィルムシートを精度よく位置付けることは容易ではない。それにも拘らず、RTP方式の製造装置又は製造方法として、今や、高速化、大型化、高精度という三位一体の課題解決が求められるようになっている。
【0009】
具体的な技術的課題は、ウェブ状の光学フィルム積層体のウェブ状のキャリアフィルムに連続的に貼り合された長手方向を横断する切込線を有する光学フィルムシートをキャリアフィルムから順次剥離し、それに対応する矩形状のパネル部材に貼り合せて光学的表示ユニットを連続的に製造する際に、光学フィルム積層体の搬送時に発生する光学フィルム積層体の両側の張力弛みや強弱によって、横方向のズレや光学フィルムのバタつきが発生する。そして光学フィルム積層体の横方向のズレやバタつきが原因でパネル部材と光学フィルムシートとの貼付精度に生じるバラツキをいかに制御するかということである。より具体的には、それは、そうしたバラツキを制御できるRTP方式の製造装置又は製造方法を実現することである。
【0010】
従来は、特許文献4又は特許文献5に示されるように、光学フィルム積層体の搬送時に発生する光学フィルム積層体の横方向のズレやバタつきに起因する光学フィルムシートのズレ位置にパネル部材の姿勢を合わせるように調整させていた。しかし、近年の狭額縁化に伴い、前述の調整では光学フィルムシートをパネル部材に高速化および大型化に対応して高精度に貼り合わせるという要求に応えることは難しくなってきている。
【0011】
より詳細には、特許文献4には、同文献の図6に示されるように、送られる光学フィルムシートの中心線にパネル部材の中心線を合わせ貼り合わせることが記載されている。ところが、本発明者らは、光学フィルム積層体の搬送時に発生する光学フィルム積層体の両側の張力弛みによる横方向のズレやバタつきに起因する光学フィルムシートのズレを所与の条件と考えるのではなく、高速化および大型化に対応する高精度の貼り合わせを実現するための新たな技術的課題と捉え、こうした課題に積極的に挑戦し、本課題を解決するに至った。
【0012】
こうした課題に対しては、まず、粘着剤層と共に光学フィルムシートが、搬送される光学フィルム積層体のキャリアフィルムから、横方向のズレやバタつきを生じることなく確実に剥離される剥離手段を用いることが条件となる。RTP方式における剥離手段は、通常、特許文献1の図10又は特許文献4の図5に示される断面楔形又はナイフ形構造体が用いられる。もちろん剥離手段として他に、特許文献2の図8のサンクションドラムや特許文献3の図9のラミネートドラムに示される吸着固定部を有する回転ドラムを用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許4377964号公報
【特許文献2】特許4346971号公報
【特許文献3】大韓民国登録特許第10−1540431号公報
【特許文献4】WO2011/155036 A1
【特許文献5】大韓民国公開特許第10−2015−11575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、キャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介して前記キャリアフィルム上に連続的に支持された複数の光学フィルムシートとを含むウェブ状の光学フィルム積層体を搬送し、剥離位置において、キャリアフィルムから粘着剤層と共に光学フィルムシートを順次剥離し、貼合位置において、光学フィルムシートをパネル部材に貼り合わせることによって、光学的表示ユニットを連続的に製造する製造装置において、高速化および大型化に対応する高精度の貼り合わせをいかに実現するかということにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、こうした課題に挑戦するRTP方式の製造装置及び製造方法に関する。より具体的には、本発明は、剥離位置において、キャリアフィルムから粘着剤層と共に光学フィルムシートを順次剥離し、貼合位置において、光学フィルムシートをパネル部材に貼り合わせることによって光学的表示ユニットを連続的に製造する製造装置において、該製造装置の剥離位置と該剥離位置の上流側所定位置との間で往復動する保持装置を配備し、該保持装置は、上流側所定位置において、光学フィルム積層体の両端を含む幅方向を保持し、保持装置に保持された状態で光学フィルム積層体を一定の距離だけ移動させ、剥離位置において、キャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離された光学フィルムシートの先端を剥離位置の下流側所定位置に送り、そこで保持された状態の光学フィルム積層体を解放することによって、解決することができるようにしたものである。
【0016】
本発明は、その一態様において、光学的表示ユニットを連続的に製造するRTP方式の製造装置10を提供する。本製造装置10は、図1に示されるように、R1から繰り出されるキャリアフィルム2とキャリアフィルム2の一方の面に形成された粘着剤層4と粘着剤層4を介してキャリアフィルム2の上に連続的に支持された複数の光学フィルムシート3とを含むウェブ状の光学フィルム積層体1を搬送し、剥離位置100において、R2に巻き取られるキャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を順次剥離し、貼合位置200において、剥離された光学フィルムシート3をパネル部材5に貼り合わせることによって、光学的表示ユニット6を連続的に製造する製造装置10である。
【0017】
本製造装置10はさらに、剥離位置100と剥離位置100の上流側所定位置300との間に往復動する保持装置50を配備する。保持装置50は、拡大図の図2から図4のそれぞれに示される。それは、図2または図3の上流側所定位置300において、光学フィルム積層体1の両端を含む幅方向を保持し、光学フィルム積層体1を保持された状態で一定の距離だけ移動する(図4)。次に、それは、図2または図3の剥離位置100において、R2で巻き取られるキャリアフィルム2から粘着剤層4と共に剥離された光学フィルムシート3の先端31が剥離位置100の下流側所定位置400に達したときに、光学フィルム積層体1を解放する。
【0018】
保持装置50は保持手段51を含む。保持手段51は光学フィルム積層体1の搬送に同期して移動することができる。保持手段51は、光学フィルム積層体1の送り方向に対して左右から両端部11を挟持する手段であれば、例えば、図5に示される一対の把持手段511、光学フィルム積層体1の両端部11の一方を吸着する吸盤又は吸引手段512、或いは、光学フィルム積層体1の両端部11を挟持する円筒形の一対の挟持ローラ513などを用いることができる。
【0019】
本製造装置10は、剥離位置100に、搬送される光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2を巻き取り、それにより、粘着剤層4を露出させ、該粘着剤層4と共に光学フィルムシート3をキャリアフィルム2から剥離させるための剥離手段110が配備される。剥離位置100に配備される剥離手段110は、図2に示される頂部61を有する断面楔形構造体60を用いることができる。
【0020】
この剥離手段110は、光学フィルム積層体1を搬送させながら、剥離位置100において、キャリアフィルム2の背面20を頂部61で屈曲させて巻き取り、それにより粘着剤層4と共に光学フィルムシート3をキャリアフィルム2から剥離し、光学フィルムシート3の先端31を下流側所定位置400へと送る剥離作用を有する。
【0021】
この剥離手段110を用いた場合には、下流側所定位置400は貼合位置200よりも下流側にあることが望ましい。下流側所定位置400が貼合位置200よりも下流側にあると、貼合位置200において、まず剥離された光学フィルムシート3の先端31はパネル部材5に貼付固定される。次に光学フィルムシート3の先端31が更に下流にある下流側所定位置400に達してから、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11の保持を開放することになるため、光学フィルムシート3は、横方向のズレやバタつきをより確実に抑制することができる。
【0022】
本製造装置10はまた、剥離位置100に図2の剥離構造と異なる剥離手段110を配備することもできる。それは、図3に示される。その剥離手段110は、吸着固定部71を有する回転ドラム70であり、該回転ドラム70は、詳細は後述するように、貼合手段210と協働して作動する。
【0023】
この剥離手段110は、光学フィルム積層体1を搬送しながら、剥離位置100において、回転ドラム70の吸着固定部71に光学フィルムシート3の先端31の背面30を吸着固定し、次に、回転ドラム70を始動しながらキャリアフィルム2を巻き取り、それにより、粘着剤層4と共に光学フィルムシート3をキャリアフィルム2から剥離し、剥離された光学フィルムシート3を吸着搬送する剥離作用を有する。
【0024】
次に回転ドラム70に吸着固定された光学フィルムシート3の先端31が貼合位置200よりも上流側にある下流側所定位置400に吸着搬送されると、そこで、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11の保持を開放することになる。光学フィルムシート3は吸着固定されたまま、貼合位置200まで回転ドラム70で吸着搬送されるため、光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきは、より確実に抑制されることになる。
【0025】
本製造装置10の光学フィルム積層体1は、図1に示されるように、少なくとも矩形状に成形された粘着剤層4を含む光学フィルムシート3をキャリアフィルム2に並べて添設されたもの、或いは、本製造装置10のR3に示される切込装置を用い、キャリアフィルム2に粘着剤層4’を介して積層された光学フィルム3’に長手方向に一定間隔に入れた幅方向の切込み12によって粘着剤層4を含む光学フィルムシート3が成形されたもの、そのいずれかを用いるのが好ましい。
【0026】
保持装置50の光学フィルム積層体1に対する保持位置501は、図4に示されるように、光学フィルムシート3の後端32の近傍位置であることが好ましい。
【0027】
保持装置50は、光学フィルム積層体1の搬送と連動し、光学フィルム積層体1の両側の張力の弛み又は張力の弛みによる強弱を矯正し、キャリアフィルム2から剥離されて下流側所定位置400に送られる粘着剤層4を含む光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきを抑制することができる。
【0028】
本発明は、他の態様において、光学的表示ユニット6を連続的に製造するRTP方式の製造方法を提供する。
【0029】
本製造方法は、図1に示されるように、光学的表示ユニット6の製造装置10において、R1から繰り出されるキャリアフィルム2と該キャリアフィルム2の一方の面に形成された粘着剤層4と該粘着剤層4を介してキャリアフィルム2の上に連続的に支持された複数の光学フィルムシート3とを含むウェブ状の光学フィルム積層体1を搬送し、剥離位置100において、キャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を順次剥離する。本製造方法はさらに、貼合位置200において、剥離された光学フィルムシート3をパネル部材5に貼り合わせることによって、光学的表示ユニット6を連続的に製造する。
【0030】
本製造方法に用いる製造装置10は、剥離位置100と該剥離位置100の上流側所定位置300との間に往復動する保持装置50を配備する。
【0031】
本製造方法は、光学フィルム積層体1が搬送され、光学フィルムシート3の後端32が剥離位置100の上流側所定位置300に達したときに、
初期位置500の保持装置50が搬送中の光学フィルム積層体1の幅方向の両端部11を保持する保持工程Aと、
保持装置50が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態で光学フィルム積層体1を一定の距離Lだけ移動する往路移動工程Bと、
剥離位置100において、剥離手段110が光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を剥離する剥離工程Cと、
光学フィルムシート3の先端31が剥離位置100の下流側所定位置400に達したときに、保持装置50が光学フィルム積層体1を解放する解放工程Dと、保持装置50が初期位置300に戻る復路移動工程Eと、
貼合位置200において、貼合手段210がパネル部材5に剥離された光学フィルムシート3を粘着剤層4によって貼り合わせる貼合工程Fと
からなる。
【0032】
本製造方法の保持工程Aにおいて、保持装置50の保持手段51が光学フィルム積層体1を保持する保持位置501は、光学フィルムシート3の後端32の近傍位置にすることが好ましい。
【0033】
本製造方法の往路移動工程Bは、光学フィルム積層体1の搬送に同期させることが好ましく、キャリアフィルムの巻取りを含む貼り合せ動作に同期することがより好ましい。
【0034】
本製造方法の往路移動工程Bはさらに、光学フィルム積層体1の搬送に連動させて光学フィルム積層体1の両側の張力の弛み又は張力の弛みによる強弱を矯正し、下流側所定位置400に送られる粘着剤層4を含む光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきを抑制することができる。
【0035】
本製造方法に用いる製造装置10の剥離位置100に配備される剥離手段110は、頂部61を有する断面楔形構造体60または吸着固定部71を有する回転ドラム70のいずれかを用いることができる。
【0036】
本製造方法の剥離工程Cは、剥離位置100に剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60が配備された場合には、光学フィルム積層体1を搬送させながらキャリアフィルム2の背面20を断面楔形構造体60の頂部61で屈曲させてキャリアフィルム2を巻き取ることができる。
【0037】
なお、剥離手段110として断面楔形構造体60を用いる場合には、下流側所定位置400は貼合位置200よりも下流側にあることが望ましい。というのは貼合位置200よりも下流側に下流側所定位置400があると、光学フィルムシート3の先端はパネル部材5に貼合位置200で固定され、更に下流にある下流側所定位置400に光学フィルムシート3の先端が達してから前記光学フィルム積層体1の保持が開放されることになる。それにより、光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきを、より確実に抑制することができるからである。
【0038】
他方、本製造方法の剥離工程Cは、剥離位置100に剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70が配備された場合には、光学フィルム積層体1を搬送させながら、剥離位置100において、回転ドラム70の吸着固定部71に光学フィルムシート3の先端31の背面30を吸着固定し、回転ドラム70を始動しながらキャリアフィルム2が巻き取られる。それにより、粘着剤層4と共に光学フィルムシート3は、キャリアフィルム2から剥離され、回転ドラム70によって貼合位置200に向けて吸着搬送する。
【0039】
回転ドラム70に吸着固定された光学フィルムシート3の先端31は、貼合位置200よりも上流側にある下流側所定位置400に吸着搬送されると、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11の保持を開放することになる。一方で、光学フィルムシート3は、吸着固定されたまま貼合位置200まで回転ドラム70で吸着搬送されるため、光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきは、より確実に抑制されることになる。
【0040】
本製造方法に用いられる光学フィルム積層体1は、図1に示されるように、少なくとも矩形状に成形された粘着剤層4を含む光学フィルムシート3をキャリアフィルム2に並べて添設されたもの、或いは、本製造方法の製造装置10に示される切込装置R3を用い、キャリアフィルム2に粘着剤層4’を介して積層された光学フィルム3’に長手方向に一定間隔に幅方向の切込みを入れる工程によって粘着剤層4を含む光学フィルムシート3が成形されたもの、そのいずれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の製造装置を表す模式図である。
図2】本発明の製造装置の剥離位置に頂部を有する断面楔型構造体を備えた往復働する保持装置の拡大模式図である。
図3】本発明の製造装置の剥離位置に吸着固定部を有する回転ドラムを備えた往復働する保持装置の拡大模式図である。
図4】本発明の往復働する保持装置の動作を表す模式図である。
図5】本発明の保持装置を構成する保持手段の模式図である。
図6A】本発明の光学フィルム積層体に対する保持位置を光学フィルムシート3の後端32の近傍位置である往復働する保持装置の各々を平面図、側面図、底面図である。
図6B】本発明の光学フィルム積層体に対する保持位置を光学フィルムシート3に続く光学フィルムシート3の先端31の近傍位置である往復働する保持装置の各々を平面図、側面図、底面図である。
図7】本発明の保持手段の一態様である。
図8】頂部を有する断面楔型構造体を備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置における第1の動作フローを表す。
図9】頂部を有する断面楔型構造体を備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置における第2の動作フローを表す。
図10】頂部を有する断面楔型構造体を備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置による製造方法の工程(a)から(f)を表す。
図11】吸着固定部を有する回転ドラムを備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置における第1の動作フローを表す。
図12】吸着固定部を有する回転ドラムを備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置における第2の動作フローを表す。
図13】吸着固定部を有する回転ドラムを備えた往復働する保持装置を有する本発明の製造装置による製造方法の工程(a)から(f)を表す。
図14】実施例及び比較例の貼合精度の測定方法の説明図である。
図15】実施例及び比較例の実測データである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明による光学的表示ユニットを連続的に製造する製造装置及び製造方法を説明する。図1は、RTP方式の製造装置10の剥離位置100において、剥離手段110によって、駆動手段82、83によりR1から繰り出されるウェブ状の光学フィルム積層体1を構成するキャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を順次剥離し、貼合位置200において、貼合手段210が光学フィルムシート3をパネル部材5に粘着剤層4を介して貼り合わせ、それにより、光学的表示ユニット6を連続的に製造する製造装置または製造方法を表す模式図である。但し、ここに示された装置は、剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60を用いたものである。
【0043】
図2は、図1に示された製造装置10の剥離位置100に剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60が配備された一実施形態である。この製造装置10を用いると、剥離位置100において、駆動手段83によるR2の巻取駆動(図1)によって、キャリアフィルム2の背面20を断面楔形構造体60の頂部61で屈曲させてキャリアフィルム2を巻き取り、それにより、キャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を剥離する。剥離された光学フィルムシート3は、貼合位置200に送られ、貼合手段210によって、パネル部材5に粘着剤層4を介して貼り合わされる。
【0044】
剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60を用い、貼合位置200において、光学フィルムシート3をパネル部材5に貼り合わせる製造装置10による動作フローは、詳細は後述されるように、図8および図9に示される。
【0045】
図3は、図1に示された製造装置10の剥離位置100に剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70を配備された他の実施形態である。この製造装置10を用いると、剥離位置100において、回転ドラム70の吸着固定部71が光学フィルムシート3の先端31の背面30を吸着固定し、駆動手段83によるR2のキャリアフィルム2の巻取駆動(図1)と連動するように回転ドラム70を作動し、それにより、粘着剤層4と共に光学フィルムシート3をキャリアフィルム2から剥離し、剥離された光学フィルムシート3を貼合位置200に送る。貼合位置200において、回転ドラム70は貼合手段210と協働し、光学フィルムシート3を粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合わされる。
【0046】
剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70を用い、貼合位置200において、光学フィルムシート3をパネル部材5に貼り合わせる製造装置10による動作フローは、詳細は後述されるように、図11および図12に示される。
【0047】
図2または図3に示される製造装置10はさらに、剥離位置100の直前かまたは剥離位置100に位置するガイドローラ80と上流側ガイドローラ81との間に上流側所定位置300が定めら、上流側所定位置300とガイドローラ80との間で往復動する保持装置50を配備する。
【0048】
製造装置10に配備された保持装置50が往復動する距離Lは、光学フィルムシート3の送り方向の長さLに等しい距離かまたは光学フィルムシート3の送り方向の長さLより短い距離とすることが好ましい。というのは、製造装置10の貼合位置200において、光学フィルム積層体1が1回の貼合動作で搬送される距離は、通常、光学フィルムシート3の送り方向の長さLと等しく、それ以上にはならないためである。したがって、保持装置50が光学フィルム積層体1の両端部11を保持しながら移動する距離Lは、光学フィルムシート3の送り方向の長さLになるかまたは長さLより小さい。
【0049】
図8は、頂部61を有する断面楔型構造体60を備えた往復働する保持装置50を有する製造装置10における第1の動作フローである。それはまた、保持装置50の移動距離Lが光学フィルムシート3の送り方向の長さLになる製造装置10による第1の動作フローのStepである。以下、Step1からStep6をより詳細に説明する。
【0050】
Step1は、光学フィルムシート3の先端31(または後端32)をセンサ90(図1)で検出し、同時にパネル部材5の位置を別のセンサ91(図1)で検出する段階を含む。Step1はさらに、光学フィルムシート3の位置に合わせるようにパネル部材5を貼合位置200に搬送し、光学フィルムシート3の位置とパネル部材5の位置とを調整し、貼合手段210によって、光学フィルムシート3の先端31とパネル部材5の先端55を把持する段階である。
【0051】
Step2は、上流側所定位置300において、保持装置50の保持手段51によって、光学フィルム積層体1の両端部11を保持固定する段階である。往復働する保持装置の動作を表す図4に示されるように、保持手段51による光学フィルム積層体1の保持位置501は、先行する貼合対象の光学フィルムシート3の後端32かまたは隣接する後続の光学フィルムシート3の前端31のいずれかであることが好ましい。
【0052】
ところで、保持手段51が光学フィルム積層体1を保持固定するタイミングは、貼合手段210によって、パネル部材5に先端に対し光学フィルムシート3の先端31を押圧固定した直後であることが好ましい。というのは、このようなタイミングで行うと、先端31が保持固定された光学フィルムシート3は上流側に張られることになり、それにより光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきがより確実に抑制されるためである。
【0053】
ここで検討すべきことは、光学フィルムシート3の長さが短く、保持手段51が移動できる距離を十分にとれない場合か、または、設備の設計上保持手段51が貼合対象のフィルムシート3の後端32を保持できない場合に光学フィルム積層体1の保持位置501(上流側所定位置300)をどの位置に定めるか、である。
保持手段51が移動できる距離をとれる程度に上流側所定位置300をさらに上流側に定めることはできる。しかし、上流側所定位置300は先行する貼合対象の光学フィルムシート3から離れるほど、先行する貼合対象の光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきを抑制する効果は低下する。したがって、保持位置501は保持手段51が移動できる距離をとれる程度に上流側に設定し、かつ、先行する貼合対象の光学フィルムシート3により近い位置に定めることが好ましい。
【0054】
Step3は、貼合位置200において、貼合手段210によって、剥離された光学フィルムシート3を粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合せる作動を開始する段階である。Step3はさらに、キャリアフィルム2が光学フィルムシート3の長さLに相当する距離だけ巻き取られる段階と、それと同時に、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態で移動する段階とを含む。
【0055】
Step4は、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態を解除する段階である。この段階で、保持手段51で保持された光学フィルム積層体1は解放される。この段階は、光学フィルムシート3とパネル部材5との貼合動作中かまたは貼合動作の完了直前である。
【0056】
Step5は、貼り合手段210が作動を停止し、光学フィルムシートパネル部材5との貼合動作が完了する段階である。Step5はさらに、駆動手段83によるR2の巻取を停止する段階を含む。
【0057】
ステップ6は、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を上流側所定位置に戻し、保持装置50が隣接する後続の光学フィルム積層体1を保持固定する準備段階である。
【0058】
図9は、頂部61を有する断面楔型構造体60を備えた往復働する保持装置50を有する製造装置10における第2の動作フローである。それはまた、保持装置50の移動距離Lが光学フィルムシート3の送り方向の長さL以下になる製造装置10による第2の動作フローのStep1からStep6である。以下、図8に示された第1の動作フローとの相違点を中心に第2の動作フローのStep1からStep6を説明する、
【0059】
Step1は、光学フィルムシート3の先端31(または後端32)をセンサー(図1)で検出し、同時にパネル部材5の位置を別のセンサー91(図1)で検出し、さらに光学フィルムシート3の位置に合わせるようにパネル部材5を貼合位置200に搬送し、光学フィルムシート3の位置とパネル部材5の位置とを調整する段階である。したがって、図8の第1の動作フローのように、貼合位置200において、貼合手段210が光学フィルムシート3とパネル部材5とを把持することはない。
【0060】
Step2は、図8における第1の動作フローのStep3に相当する段階である。それは、貼合位置200において、貼合手段210によって、キャリアフィルム2から剥離された光学フィルムシート3を粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合せる作動を開始する段階であるが、図8における第1の動作フローのStep2の段階に先立つStepである。具体的には、保持手段51が光学フィルム積層体1を保持固定する段階に先立って貼合手段210の作動が開始される。Step2はさらに、キャリアフィルム2が光学フィルムシート3の長さLに相当する距離だけ巻き取られる段階を含む。
【0061】
Step3は、Step2で開始された光学フィルムシート3とパネル部材5との貼合動作の途中で、保持装置50の保持手段51が始動する初期位置300’において、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持固定する段階である。初期位置300’は、上流側所定位置300に相当する位置である。Step3はさらに、光学フィルムシート3とパネル部材5との貼合動作に連動し、保持手段51が所定距離Lだけ移動する段階を含む。
【0062】
保持手段51が光学フィルム積層体1を保持固定するタイミングは、すでに光学フィルムシート3の先端31とパネル部材5の先端55とが貼合手段210によって把持された状態にある。この状態でStep3において、光学フィルムシート3の上流側にある光学フィルム積層体1の両端部11が保持手段51によって保持固定される。貼合手段210によって先端31が把持された光学フィルムシート3に続く光学フィルム積層体1が保持手段51によって保持固定されるので、光学フィルムシート3は上流側に張られ、それにより、光学フィルムシート3の横方向のズレやバタつきがより確実に抑制される。
【0063】
ところで、往復働する保持装置の動作を表す図4に示されるように、保持手段51による光学フィルム積層体1の保持位置501は、先行する貼合対象の光学フィルムシート3の後端32または隣接する光学フィルムシート3の前端31であることが好ましい。
【0064】
ここで検討すべきことは、光学フィルムシート3の長さが短く、保持手段51が移動できる距離を十分にとれない場合か、または、設備の設計上保持手段51が貼合対象のフィルムシート3の後端32を保持できない場合に光学フィルム積層体1の保持位置501(上流側所定位置300)をどの位置に定めるか、である。保持手段51が移動できる距離をとれる程度に上流側所定位置をさらに上流側に定めることはできる。しかし、上流側所定位置は先行する貼合対象の光学フィルムシートから離れるほど、先行する貼合対象の光学フィルムシートの横方向のズレやバタつきを抑制する効果は低下する。したがって、保持位置501は保持手段51が移動できる距離をとれる程度に上流側に設定し、かつ、先行する貼合対象の光学フィルムシートにより近い位置に定めることが好ましい。
【0065】
Step4は、図8における第1の動作フローのStep4に相当する。それは、光学フィルム積層体1を保持手段51で保持された状態で予め定められた距離Lだけ移動させた後、光学フィルム積層体1を解放する段階である。
【0066】
Step5は、貼り合手段210が作動を停止し、光学フィルムシートパネル部材5との貼合動作が完了する段階である。Step5はさらに、駆動手段83によるR2の巻取を停止する段階を含む。
【0067】
ステップ6は、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を初期位置(上流側所定位置300)に戻す段階である。ステップ6はさらに、保持装置50が隣接する後続の光学フィルム積層体1を保持固定する準備段階を含む。
【0068】
図11は、吸着固定部71を有する回転ドラム70を備えた往復働する保持装置50を有する製造装置10における第1の動作フローである。それはまた、保持装置50の移動距離Lが光学フィルムシート3の送り方向の長さLになる製造装置10による第1の動作フローのStepである。以下、Step1からStep9をより詳細に説明する。
【0069】
Step1は、センサ(図示せず)により光学フィルムシート3の先端31(または後端32)を検出する段階である。但し、剥離手段110として断面楔型構造体60を用いた場合と異なり、この段階で、剥離位置100の先端位置に回転ドラム70の吸着固定部71の位置と光学フィルムシート3の先端31の位置が到達することが本製造装置10の特徴である。
【0070】
Step2は光学フィルムシート3の先端31の背面30を回転ドラム70の吸着固定部71に吸着固定する段階である。それと同時かまたは遅れることなく、Step3は、上流側所定位置において、先行する貼合対象の光学フィルムシート3に隣接する光学フィルムシートを含む光学フィルム積層体1の両端部11を保持手段で保持固定する段階である。
【0071】
Step4は、回転ドラム70で光学フィルムシート3の吸着搬送を開始する段階である。より詳細に説明すると、光学フィルムシート3の先端31の背面30は、Step2において、回転ドラム70の吸着固定部71にすでに吸着固定されている。Step4は、剥離位置100においては、駆動手段83によるR2の巻取動作に連動し、光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2が巻き取られる一方、回転ドラム70をガイドローラ80の位置から始動し、それにより、吸着固定部71に吸着固定された粘着剤層4と共に光学フィルムシート3がキャリアフィルム2から剥離され、露出された粘着剤層4と共に光学フィルムシート3が回転ドラム70によって下流側所定位置400に向けて吸着搬送される段階である。キャリアフィルム2を光学フィルムシート3の長さL分だけ巻き取る段階と、それと同時に、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態で距離Lだけ移動する段階とを含む。
【0072】
Step5およびStep6は、同時であることが好ましい。Step5は
下流側所定位置400に達したときに保持手段51が光学フィルム積層体1の保持状態を解除し、それにより光学フィルム積層体1は解放される段階である。それと同時に、Step6は、回転ドラム70による光学フィルムシート3の吸着搬送を停止する段階である。Step6はさらに、駆動手段83によるR2へのキャリアフィルム2の巻き取りを停止する段階を含む。
【0073】
Step7は、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を上流側所定位置300に戻す段階である。ステップ7はさらに、保持装置50が先行するキャリアフィルム3に隣接する光学フィルム積層体1の両端部11を保持する準備段階を含む。
【0074】
Step8は、センサ(図示せず)でパネル部材5の位置を検出する一方、回転ドラム70を再作動し、光学フィルムシート3を吸着搬送を再開し、貼合位置200において、光学フィルムシート3の先端31とパネル部材5の先端55との位置を調整する段階である。
【0075】
Step9は、貼合位置200において、回転ドラム70と協働する貼合手段210の一方貼合ローラ201とによって、パネル部材5に回転ドラム70に吸着搬送された光学フィルムシート3を貼り合せる段階である。
【0076】
図12は、吸着固定部71を有する回転ドラム70を備えた往復働する保持装置50を有する製造装置10における第2の動作フローである。それはまた、保持装置50の移動距離Lが光学フィルムシート3の送り方向の長さL以下になる製造装置10による第2の動作フローである。以下、図11に示された第1の動作フローとの相違点を中心に第1の動作フローのStep1からStep9を説明する。
【0077】
Step1およびStep2は、第1の動作フローの場合と同じ段階である。
Step1は、センサ(図示せず)により光学フィルムシート3の先端31(または後端32)を検出する段階である。この段階で、剥離位置100の先端位置に回転ドラム70の吸着固定部71の位置と光学フィルムシート3の先端31の位置が到達することが第1の動作フローの場合と同じである。Step2は、光学フィルムシート3の先端31の背面30を回転ドラム70の吸着固定部71に吸着固定する段階である。
【0078】
Step3は、回転ドラム70で光学フィルムシート3の吸着搬送を開始する段階である。より詳細に説明すると、この段階では、すでにStep2において、光学フィルムシート3の先端31の背面30が回転ドラム70の吸着固定部71に吸着固定されている。
【0079】
Step3は、剥離位置100においては、駆動手段83によるR2の巻取動作に連動し、光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2が巻き取られる一方、回転ドラム70をガイドローラ80の位置から回転始動し、それにより、吸着固定部71に吸着固定された粘着剤層4と共に光学フィルムシート3がキャリアフィルム2から剥離され、露出された粘着剤層4と共に光学フィルムシート3が回転ドラム70によって下流側所定位置400に吸着搬送される段階である。Step3はさらに、キャリアフィルム2を光学フィルムシート3の長さL分だけ巻き取る段階を含む。
【0080】
Step4は、回転ドラム70がキャリアフィルム2から剥離された粘着剤層4を含む光学フィルムシート3を吸着搬送している搬送中の光学フィルム積層体1の両端部11を、保持手段51が保持固定する段階である。それと同時に、Step4は、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態で距離Lだけ移動する段階とを含む。
【0081】
Step5およびStep6は、第1の動作フローのときと同様に、同時であることが好ましい。Step5は、下流側所定位置400に達したときに保持手段51が光学フィルム積層体1の保持状態を解除し、光学フィルム積層体1を解放する段階である。それと同時に、Step6は、回転ドラム70による光学フィルムシート3の吸着搬送を停止する段階である。Step6はさらに、駆動手段83によるR2のキャリアフィルム2の巻き取りを停止する段階を含む。
【0082】
Step7は、図11における第1の動作フローのStep7に相当する。それは、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を初期位置300’(ステップ4の固定位置)に戻す段階である。初期位置300’は、図10における上流側所定位置300に相当する位置である。ステップ7はさらに、保持装置50が隣接する後続の光学フィルム積層体1を保持固定する準備段階を含む。
【0083】
Step8およびStep9は、第1の動作フローのStep8およびStep9に相当する。Step8は、センサ(図示せず)でパネル部材5の位置を検出する一方、回転ドラム70を再作動し、光学フィルムシート3の吸着搬送を再開し、貼合位置200において、光学フィルムシート3の先端31とパネル部材5の先端55との位置を調整する段階である。Step9は、貼合位置200において、回転ドラム70と該回転ドラム70と協働する貼合ローラ201から構成される貼合手段210’によって、パネル部材5に回転ドラム70に吸着搬送された光学フィルムシート3を貼り合せる段階である。
【0084】
光学的表示ユニット6の製造装置10を用いた製造方法は、典型的には、図2および図10の製造工程を表す(a)から(f)に示される。これは、剥離位置100に配備された剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60が配備された製造装置10を用いた製造方法である。これと対比されるのは、図3および図13の製造工程を表す(a)から(f)に示される、剥離位置100に配備された剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70が配備された製造装置10を用いた製造方法である。
【0085】
剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60が配備された製造装置10を用いた図2に示される製造方法の製造工程の(a)は、光学フィルム積層体1が搬送され、光学フィルムシート3とパネル部材5の貼り合せ準備が整った状態である。
【0086】
製造工程の(b)は、図10に示されるように、貼合手段210が作動し、パネル部材5の先端55と光学フィルムシート3の先端31を挟み込む工程である。
【0087】
製造工程の(c)は、その直後に保持装置50が作動を開始し、上流側所定位置300で光学フィルム積層体1の両端部11を含む幅方向を保持する工程である。
【0088】
それに続く製造工程の(d)は、パネル部材5と光学フィルムシート3との貼り合せ動作に連動し、保持装置50が光学フィルム積層体1を保持した状態で一定の距離Lを移動する工程である。
【0089】
保持装置50は、図6Aまたは図6Bのいずれでもよい。また保持手段51の一例は、図7に示される。因みに、図6Aまたは図6Bの上面図は、図7に示される保持アーム510に設けた保持部514とシリンダー516に取り付けた保持部515とで光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態を示すものである。
【0090】
保持装置50はさらに、光学フィルム積層体1の幅より広いガイドローラ80と上流側ガイドローラ81とを両側から支えるL型またはT型枠体を構成する支柱801、801と、該支柱801,801に装備された左右のガイドレール802、802と、該ガイドレール802,802に光学フィルム積層体1の両端部11,11を保持する保持手段51,51とからなる。
【0091】
図6Aに示される保持装置50において、保持手段51で保持される光学フィルム積層体1の保持位置501は、パネル部材5に貼り合わされる光学フィルムシート3の後端32の近傍位置である。図6Bに示される保持装置50において、保持手段51で保持される光学フィルム積層体1の保持位置501は、パネル部材5に貼り合わされる光学フィルムシート3に続く光学フィルムシート3の先端31の近傍位置である。
【0092】
保持装置50は、好ましくは、光学フィルム積層体1の搬送に同期して往路移動するかまたはキャリアフィルム2の巻取動作に同期して往路移動する。保持装置50によって保持された状態で光学フィルム積層体1を移動させる距離Lは、パネル部材5のサイズや設備設計によって光学フィルムシート3の送り方向の長さLに等しい場合と光学フィルムシート3の送り方向の長さLより短い長さとなる場合とが想定される。
【0093】
製造工程(d)の貼合動作は、剥離位置100において、キャリアフィルム2から粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を剥離しながら、貼合位置200において、光学フィルムシート3が粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合わされる。これは、剥離動作に連続する貼合動作であることに特徴がある。
【0094】
製造工程の(e)は、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態を解除する工程である。この工程において、保持手段51で保持された光学フィルム積層体1は解放される。この工程は、光学フィルムシート3とパネル部材5との貼合動作中かまたは貼合動作の完了直前である。
【0095】
製造工程の(f)は、貼り合手段210が作動を停止し、光学フィルムシートパネル部材5との貼合動作が完了する工程である。この工程はさらに、駆動手段83によるR2の巻取を停止する工程と、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を上流側所定位置300に戻し、保持手段51が光学フィルム3に続く光学フィルム積層体1を保持固定する準備する工程を含む。
【0096】
剥離手段110として頂部61を有する断面楔形構造体60が配備された製造装置10を用いた他の製造方法は、上記した製造方法の製造工程の(c)および(d)を、図10に示されていない製造工程の(c’)および(d’)に置換したものである。
【0097】
具体的には、製造工程の(c’)は、パネル部材5と光学フィルムシート3との貼り合せ動作を開始する。これに続く製造工程の(d’)において、保持装置50が搬送中の光学フィルム積層体1の両端部11を保持固定する。保持装置50がさらに、光学フィルム積層体1を保持した状態で一定の距離Lを移動する。両者の違いは、保持装置50による光学フィルム積層体1の保持固定した後にパネル部材5と光学フィルムシート3との貼り合せ動作を開始する前者に対し、後者は、貼り合せ動作を開始した後に搬送中の光学フィルム積層体1を保持固定する点にある。
【0098】
いずれの製法方法においても、貼合手段210は、図2に示されるように一対の貼合ローラ201,202で構成されており、貼合位置200において、光学フィルムシート3が粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合わされ、光学的表示ユニット6が連続的に製造される。
【0099】
剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70が配備された製造装置10を用いた図3に示される本製造方法の製造工程の(a)は、光学フィルム積層体1が搬送され、図13に示されるように、光学フィルムシート3の先端31の背面30を回転ドラム70の吸着固定部71に固定する準備が整った状態である。したがって、製造工程の(b)は、ガイドローラ80と回転ドラム70の吸着固定部71とに把持された光学フィルムシート3の先端31の背面30を吸着固定する工程になる。
【0100】
製造工程の(c)は、図13に示されるように、保持手段51が光学フィルムシート3に続く光学フィルム積層体1の両端部11を保持固定する工程である。製造工程の(d)は、それと同時か直後に、回転ドラム70の吸着搬送を開始する工程である。
【0101】
それと同時に、製造工程の(d)はさらに、剥離位置100において、光学フィルムシート3の吸着搬送に連動する駆動手段83によるR2の巻取動作によって光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2が巻き取られる一方、回転ドラム70をガイドローラ80の位置から回転作動を開始し、それにより、キャリアフィルム2から光学フィルムシート3を剥離し、回転ドラム70が露出された粘着剤層4と共に光学フィルムシート3を下流側所定位置400に吸着搬送する工程を含む。
【0102】
製造工程の(e)は、図13に示されるように、光学フィルムシート3の先端31が下流側所定位置400に達したとき、保持手段が光学フィルム積層体1の保持状態を解除し、光学フィルム積層体1を解放する工程である。それと同時に、製造工程の(e)はさらに、回転ドラム70による光学フィルムシート3の吸着搬送を停止する工程と、駆動手段83の作動停止によりR2へのキャリアフィルム2の巻き取り動作を停止する工程を含む。
【0103】
製造工程の(f)は、図13に示されるように、光学フィルム積層体1を解放した保持手段51を上流側所定位置300に戻し、保持手段51が次なる保持動作を準備する工程と、センサ(図示せず)でパネル部材5の位置を検出し、回転ドラム70を再作動し、光学フィルムシート3の吸着搬送を再開し、貼合位置200において、光学フィルムシート3の先端31とパネル部材5の先端55との位置を調整する工程と、貼合位置200において、回転ドラム70と該回転ドラム70と協働する貼合ローラ201とから構成される貼合手段210によって、パネル部材5に回転ドラム70に吸着搬送された光学フィルムシート3を貼り合せる工程と、からなる。
【0104】
剥離手段110として吸着固定部71を有する回転ドラム70が配備された製造装置10を用いた他の製造方法は、上記した製造方法の製造工程の(c)および(d)を、図13に示されていない製造工程の(c’)および(d’)に置換したものである。
【0105】
具体的には、製造工程の(c’)は、回転ドラム70がキャリアフィルム2から剥離された粘着剤層4を含む光学フィルムシート3を吸着搬送している搬送中の光学フィルム積層体1の両端部11を、保持手段51が保持固定する工程である。これに続く製造工程の(d’)は、それと同時に、保持手段51が光学フィルム積層体1の両端部11を保持した状態で距離Lだけ移動する工程である。製造工程の(d’)において、キャリアフィルム2から剥離された光学フィルムシート3の先端31は、回転ドラム70により吸着搬送されて下流側所定位置400に達する。両者の違いは、保持装置50が光学フィルム積層体1を保持固定した後に回転ドラム70の回転始動を開始する前者に対し、後者は、回転ドラム70の回転始動を開始した後に、保持装置50が搬送中の光学フィルム積層体1を保持固定する点にある。
【0106】
いずれの製法方法においても、貼合手段210は、図3に示されるように一対の貼合ローラ201と回転ドラム70とからで構成されており、貼合位置200において、光学フィルムシート3が粘着剤層4を介してパネル部材5に貼り合わされ、光学的表示ユニット6が連続的に製造される。
【作用効果】
【0107】
図14は、実施例及び比較例の貼合精度の測定方法の説明図である。パネル部材5の表面に破線で示された矩形が光学フィルムシート3の貼付予定位置であり、実線で示された矩形が光学フィルムシート3の実際の貼付位置になる。本発明のRTP方式による製造装置および製造方法において求められる貼合精度は、1200mm×750mm程度のパネル部材5の大きさと1000mm×700mm程度の光学フィルムシートの大きさとから、毎分5〜6台程度で製造される光学的表示ユニット6の精度を想定すると、具体的イメージに近くなる。
【0108】
図15は、剥離手段として頂部61を有する断面楔型構造体を用いたRTP設備の実施例及び比較例である。図15は、光学フィルムシート3の貼付予定位置(破線)と実際の貼付位置(実線)とのズレている程度を実施例1と比較例1に示す。実施例1と比較例1で用いられた光学フィルムシート3は、日東電工(株)製偏光フィルム(型式:SEG1423DU)を用い、パネル部材5は、SHARP製液晶TV(型式:AQUOS LC−55W30)から取り出したパネル部材を用いた。ズレ距離は、パネル部材の搬送方向の後端部から同じく搬送方向の光学フィルムシート3後端部までの距離を手動で計測し、それに基づき貼付予定位置からのズレ距離を計算で求めた。
【0109】
実施例1は、光学フィルム積層体1の両端部11を上流側所定位置300において保持装置50の保持手段51で保持した状態で一定の距離Lだけ移動させ、光学フィルムシート3の先端31が下流側所定位置400に到達したときに保持手段51が解放する機構を用いて、パネル部材5と光学フィルムシート3を貼り付けた光学的表示ユニットにおける光学フィルムシート3の貼付予定位置とのズレ距離を計測したものである。因みに保持装置50の移動距離Lは100mmの設定である。
【0110】
比較例1は、光学フィルム積層体1の両端部11を保持装置50で保持した状態で一定の距離Lだけ移動させる保持装置50の保持工程を用いない同じ製造装置によるものである。
【0111】
図15から明らかなことは、1000mm×700mm程度の光学フィルムシートの大きさのズレ距離は、本発明を用いた実施例1では、10回の計測で0〜0.1mm範囲に収まり、0.1mmを超えるズレは生じていない。これに対して保持装置50の保持工程を用いない製造装置による比較例1では、10回の計測で、全て0.1mm以上である。しかも0.2mm以内の計測はわずか1回に過ぎない。それは、0.3mmを超える計測もあるように、ズレ距離が殆ど0.2mm以上で、0.3mm前後で、バラついているという結果である。
【0112】
これらのデータから明らかなことは、本発明のRTP方式による製造装置および製造方法において実現した貼合精度は、従来技術では到底達成し得ない高い貼付精度であるということである。
【0113】
RTP方式による製造装置および製造方法において、R1から繰り出される長尺ウェブ状の光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2に形成される光学フィルムシート3は、長尺ウェブ状であるが故に左右に動かすことが困難であり、パネル部材5に精度よく位置合せするは困難である。したがって、特許文献4に示されるように、これまでは、パネル部材5を光学フィルムシート3に位置合せするしかなく、光学フィルムシート3の位置を高精度に検出し、パネル部材の位置を検出された光学フィルムシート3の位置に高精度に位置合せする技術が開発されてきた。しかしながら、近年のディスプレイの大型化および狭額縁化等に伴い、貼り始めの位置合せを高精度に行っても貼り付けの途中のズレやフィルムのバタつきによって、貼り終りまで高い貼付精度を維持することが難しい。
【0114】
本発明の光学フィルム積層体1の両端部11を保持装置50で保持した状態で一定の距離Lだけ移動させる工程を組み込んだRTP方式による製造装置および製造方法は、従来技術では達成し得ない高精度な貼付精度を得ることができ、近年の狭額縁化の要望に十分に応えることができものである。
【0115】
以上で、本発明は仮に限定された実施例と図面により説明されたが、本発明はこれにより限定されることはなく、本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者により本発明の技術思想と以下の記載される特許請求の範囲の均等の範囲内で様々な修正および変形が可能であることは言うまでのないことである。

【符号の説明】
【0116】
R1:繰出装置
R2:巻取装置
R3:切込装置
1:光学フィルム積層体
2:キャリアフィルム
20:キャリアフィルムの背面
3:光学フィルムシート
30:光学フィルムシートの背面
31:光学フィルムシートの先端
32:光学フィルムシートの後端
4:粘着剤層
5:パネル部材
55:パネル部材の先端
6:光学的表示ユニット
10:製造装置
12:切込線
50:保持装置
51:保持手段
60:断面楔形構造体
61:頂部
70:回転ドラム
71:吸着固定部
80:ガイドローラ
81:上流側ガイドローラ
82:駆動手段
83:駆動手段
90:光学積層体または光学フィルムシート先端位置検出センサ
91:パネル位置検出センサ
100:剥離位置
110:剥離手段
200:貼合位置
210:貼合手段
201:貼合ローラ
202:貼合ローラ
300:上流側所定位置
400:下流側所定位置
501:保持位置
510:保持アーム
511:一対の把持手段
512:吸盤又は吸引手段
513:一対の挟持ローラ
514:保持部
515:保持部
516:シリンダー516
801:支柱
802:ガイドレール

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15