特許第6379162号(P6379162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379162
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】PoEベースの電力供給方法及びPSE
(51)【国際特許分類】
   H04L 29/00 20060101AFI20180813BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20180813BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H04L13/00 T
   H04L12/28 200Z
   H04L25/02 K
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-230304(P2016-230304)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2017-103768(P2017-103768A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】201510863963.9
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲伝▼▲楓▼
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−180046(JP,A)
【文献】 特表2016−535330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 29/00
H04L 12/28
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー・オーバー・イーサネット(PoE)に基づく電力供給方法であって、
給電機器(PSE)が受電装置(PD)に給電した後、前記PSEが、前記PSEと前記PDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するステップと、
前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、前記PSEが、前記PDに第1のイーサネットパケットを送信するステップであって、前記第1のイーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記PSEが前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下を決定する前記ステップは、
前記PDへの給電前に、前記PSEが、前記ネットワークケーブルのインピーダンスを決定するステップと、
前記PDへの給電後に、前記PSEが、前記ネットワークケーブルの電流を決定するステップと、
前記ネットワークケーブルの前記電流と前記ネットワークケーブルの前記インピーダンスとの積を、前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下として用いるステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PSEが前記ネットワークケーブルのインピーダンスを決定する前記ステップは、
前記PSEが、前記ネットワークケーブルの長さを決定し、前記ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
前記PSEが、前記ネットワークケーブルカテゴリに従って、前記ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定するステップと、
前記単位長さ当たりのインピーダンスと前記ネットワークケーブルの前記長さとの積を、前記ネットワークケーブルの前記インピーダンスとして用いるステップと、
を含み、
前記PSEが前記ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定する前記ステップは、
前記PSEが、複数の出力電力における前記ネットワークケーブルの信号対雑音比(SNR)を決定し、前記ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定するステップと、
前記PSEが、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、前記第1の対応関係とに従って、前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PSEが前記PDに前記第1のイーサネットパケットを送信する前に、前記方法は更に、
前記PSEが、前記ネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップであって、前記電流変化率は、前記PDの負荷消費電力の変化率閾値を示すのに用いられる、ステップ、
を含み、
対応して、前記第1のイーサネットパケットは更に、前記ネットワークケーブルの前記電流変化率を含み、
前記PSEが前記ネットワークケーブルの電流変化率を決定する前記ステップは、具体的には、
前記PSEが、前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定するステップと、
前記PSEが、前記PSEのポート速度と、前記最大通信帯域幅と、前記PSEが前記PDに対して出力する出力電圧とに従って、前記ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するステップと、
前記PSEが前記出力電圧を前記PDに対して出力した後に、前記PSEが、設定された単位時間に従って前記出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、前記ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧が前記ノイズ電圧閾値に等しくなるまで、前記ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するステップと、
前記PSEが、最後の調整プロセスにおいて、前記設定された単位時間内に前記ネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ノイズ電圧閾値は、以下の式
【数14】
を満たし、式中、UNは前記ノイズ電圧閾値であり、UOは前記PSEが前記PDに対して出力する前記出力電圧であり、Cは前記PSEの前記ポート速度であり、Wは前記最大通信帯域幅である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PSEが、前記PDに第1の電圧インパルスを送信し、前記PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するステップと、
前記PSEが、前記第1の電圧インパルス及び前記第2の電圧インパルスに従って、前記ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定するステップと、
前記PSEが、挿入損失と温度との対応関係に従って、前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定するステップと、
前記PSEが前記ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、前記PSEが、前記PDに第2のイーサネットパケットを送信するステップであって、前記第2のイーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
給電機器(PSE)であって、
受電装置(PD)に給電するように構成されるPSEチップと、
前記PSEチップが前記PDに給電した後、前記PSEと前記PDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定し、前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、前記PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成されるプロセッサであって、前記第1のイーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、プロセッサと、
を備えるPSE。
【請求項8】
前記PSEチップは更に、前記PDへの給電後に、前記ネットワークケーブルの電流を決定するように構成され、
前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下を決定するとき、前記プロセッサは、具体的には、
前記PSEチップが前記PDに給電する前に、前記ネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、
前記ネットワークケーブルの前記電流と前記ネットワークケーブルの前記インピーダンスとの積を、前記ネットワークケーブルの前記線間電圧降下として用いるように構成される、
請求項7に記載のPSE。
【請求項9】
前記ネットワークケーブルの前記インピーダンスを決定するとき、前記プロセッサは、具体的には、前記ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定し、前記ネットワークケーブルカテゴリに従って、前記ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定し、前記単位長さ当たりのインピーダンスと前記ネットワークケーブルの長さとの積を、前記ネットワークケーブルの前記インピーダンスとして用いるように構成され、
前記PSEチップは更に、前記ネットワークケーブルの前記長さを決定するように構成され、
前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブルカテゴリを決定するとき、前記プロセッサは、具体的には、
複数の出力電力における前記ネットワークケーブルの信号対雑音比(SNR)に従って、前記ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定し、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、前記第1の対応関係とに従って、前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブルカテゴリを決定するように構成され、
前記PSEチップは更に、前記複数の出力電力における前記ネットワークケーブルの前記SNRを検出及び取得するように構成される、
請求項8に記載のPSE。
【請求項10】
前記プロセッサは更に、前記PDに前記第1のイーサネットパケットを送信する前に、電流変化率を決定するように構成され、前記電流変化率は、前記PDの負荷消費電力の変化率閾値を示すのに用いられ、
対応して、前記第1のイーサネットパケットは更に、前記ネットワークケーブルの前記電流変化率を含み、
前記プロセッサは、具体的には、
前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定し、
前記PSEのポート速度と、前記最大通信帯域幅と、前記PSEが前記PDに対して出力する出力電圧とに従って、前記ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するように構成され、
前記PSEチップは更に、前記出力電圧を前記PDに対して出力した後、設定された単位時間に従って前記出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、前記ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧が前記ノイズ電圧閾値に等しくなるまで、前記ネットワークケーブルのノイズ電圧を調整するように構成され、
前記プロセッサは、最後の調整プロセスにおいて、前記設定された単位時間内に前記ネットワークケーブルの電流変化率を決定する、
請求項9に記載のPSE。
【請求項11】
前記PSEチップは更に、前記PDに第1の電圧インパルスを送信し、前記PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するように構成され、
前記プロセッサは更に、前記第1の電圧インパルス及び前記第2の電圧インパルスに従って、前記ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定し、挿入損失と温度との対応関係に従って、前記ネットワークケーブルの前記ネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定し、前記ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、前記PDに第2のイーサネットパケットを送信するように構成され、前記第2のイーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、
請求項7乃至10のいずれか一項に記載のPSE。
【請求項12】
パワー・オーバー・イーサネット(PoE)に基づく電力供給方法であって、
受電装置(PD)が、給電機器(PSE)によって供給された電力を受け取るステップであって、前記PDはネットワークケーブルを介して前記PSEに接続する、ステップと、
前記PDが、前記PSEによって送信されたイーサネットパケットを受信し、前記イーサネットパケットに従って前記PDの負荷消費電力を低減するステップであって、前記イーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記イーサネットパケットは更に電流変化率を含み、
前記イーサネットパケットに従って前記PDの負荷消費電力を低減する前記ステップは、
前記命令情報に従って前記PDの前記負荷消費電力を低減し、単位時間内における負荷消費電力の変化率が前記電流変化率よりも小さくなるようにするステップ、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
受電装置(PD)であって、
給電機器(PSE)によって供給された電力を受け取る手段であって、前記PDはネットワークケーブルを介して前記PSEに接続する、手段と、
前記PSEによって送信されたイーサネットパケットを受信し、前記イーサネットパケットに従って前記PDの負荷消費電力を低減する手段であって、前記イーサネットパケットは、前記PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、手段と、
を備えるPD。
【請求項15】
前記イーサネットパケットは更に電流変化率を含み、
前記イーサネットパケットに従って前記PDの負荷消費電力を低減することは、
前記命令情報に従って前記PDの負荷消費電力を低減し、単位時間内における負荷消費電力の変化率が前記電流変化率よりも小さくなるようにすること、
を含む、請求項14に記載のPD。
【請求項16】
前記イーサネットパケットは更に、前記PDに負荷消費電力を低減するように指示するための原因情報を含み、前記原因情報は、
前記ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいことと、
前記ネットワークケーブルのネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いことと、
のうちいずれか1つを含む、
請求項14又は15に記載のPD。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術分野に関し、特に、PoEベースの電力供給方法及びPSEに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー・オーバー・イーサネット(Power over Ethernet、略称PoE)技術は、イーサネットを用いて端末に電力を供給する技術であり、インターネットプロトコル(Internet Protocol、略称IP)電話、携帯電話充電器、カードリーダ、カメラ、データコレクタ等の端末の電源問題を効果的に解決することができる。このような端末では電源システムのケーブル接続は考慮されなくなり、ネットワークに接続されるとデバイスに電源が供給される。PoEシステムには、給電機器(Power Sourcing Equipment、略称PSE)と受電装置(Powered Device、略称PD)が含まれる。PSEは、PDに電力を供給するように構成される。
【0003】
PoE技術の発達とPoE規格の改善により、より多くのタイプのデバイスが遠隔電源をサポートし、デバイスの負荷は完全に同じではない。しかしながら、PoE関連規格では、PSEの出力電圧は一般に固定されており、例えば53.5ボルト(英語:volt、記号:V)に固定されている。ネットワークケーブルが比較的長く、或いはPSEとPDとの間の伝送電力が比較的大きいために、線間電圧降下が大きすぎると、PDが受け取る電圧が満足できなくなり、PDの正常動作に更に影響してしまう。
【発明の概要】
【0004】
PSEの出力電圧が一定値である場合に、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が大きすぎるためにPDが受ける電圧を満足することができず、PDの正常動作に更に影響してしまうという課題を解決するために、本願は、PoEベースの電力供給方法及びPSEを提供する。
【0005】
第1の態様によれば、PoEベースの電力供給方法が提供される。本方法は、
給電機器(PSE)がPDに電力を供給した後、PSEが、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するステップと、
ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEが、PDに第1のイーサネットパケットを送信するステップであって、第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む。
【0006】
上述の方法を採用することにより、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEは、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDの電力制御管理を実行する。このようにして、PDがその負荷を減少させ、必要な電圧値が下げられる。したがって、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0007】
第1の態様に関して、第1の可能な実施方式では、PSEがネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するステップは、
PDへの給電前に、PSEが、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、PDへの給電後に、PSEが、ネットワークケーブルの電流を決定し、ネットワークケーブルの電流とネットワークケーブルのインピーダンスとの積を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いるステップ、又は、
PSEが、PDの両端間の電圧を検出し、PSEがPDに対して出力する出力電圧とPDの両端間の電圧との差を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いるステップ、又は
PSEが、PSEの出力電力と、PDの負荷消費電力と、ネットワークケーブルの電流とを決定し、PSEの出力電力とPDの負荷消費電力との差を電流で割った商を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いるステップ、
を含む。
【0008】
第1の態様の第1の可能な実施方式に関して、第1の態様の第2の可能な実施方式では、PSEがネットワークケーブルのインピーダンスを決定するステップは、
PSEが、ネットワークケーブルの長さを決定し、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
PSEが、ネットワークケーブルカテゴリに従って、ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定するステップと、
単位長さ当たりのインピーダンスとネットワークケーブルの長さとの積を、ネットワークケーブルのインピーダンスとして用いるステップと、
を含む。PSEがネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップは、
PSEが、複数の出力電力におけるネットワークケーブルの信号対雑音比(SNR)を決定し、ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定するステップと、
PSEが、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、第1の対応関係とに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
を含む。
【0009】
第1の態様並びに第1の態様の第1及び第2の可能な実施方式のうちいずれか1つに関して、第1の態様の第3の可能な実施方式では、本方法は更に、
PSEが、PDに第1の電圧インパルスを送信し、PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するステップと、
PSEが、第1の電圧インパルス及び第2の電圧インパルスに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定するステップと、
PSEが、挿入損失と温度との対応関係に従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定するステップと、
PSEがネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、PSEが、PDに第2のイーサネットパケットを送信するステップであって、第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む。
【0010】
上述の方法を採用することにより、PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。
【0011】
第1の態様の第1〜3の可能な実施方式のうちいずれか1つに関して、第1の態様の第4の可能な実施方式では、PSEがPDに給電する前に、本方法は更に、
PSEが、PDの現在の負荷消費電力を検出し、検出されたPDの現在の負荷消費電力に従って、PDを分類してPDのクラスを決定するステップと、
PDのクラスに従って、PDの最大負荷消費電力と、PSEがPDに対して出力する最大出力電圧とを決定するステップと、
PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定するステップであって、過電流閾値は、PSEがPDへの電力供給を制御する際に用いられる、ステップと、
を含む。
【0012】
上述の方法を採用することにより、各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、対応するネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力に応じて、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0013】
第1の態様の第2の可能な実施方式に関して、第1の態様の第5の可能な実施方式では、PSEがPDに第1のイーサネットパケットを送信する前に、本方法は更に、PSEが、ネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップであって、電流変化率は、PDの負荷消費電力の変化率閾値を示すのに用いられる、ステップ、を含み、
対応して、第1のイーサネットパケットは更に、ネットワークケーブルの電流変化率を含み、
PSEがネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップは、具体的には、
PSEが、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定するステップと、
PSEが、PSEのポート速度と、最大通信帯域幅と、PSEがPDに対して出力する出力電圧とに従って、ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するステップと、
PSEが電圧をPDに対して出力した後に、PSEが、設定された単位時間に従って出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧がノイズ電圧閾値に等しくなるまで、ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するステップと、
PSEが、最後の調整プロセスにおいて、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップと、
を含む。
【0014】
上述の方法を採用することにより、PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEは、ネットワークケーブルの電流変化率、すなわちPDの負荷消費電力の変化率閾値を決定し、第1のイーサネットパケットを用いてPDにネットワークケーブルの電流変化率を送信するので、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0015】
第1の態様第5の可能な実施方式に関して、第1の態様の第6の可能な実施方式では、ノイズ電圧閾値は、以下の式
【0016】
【数1】
を満たす。式中、Uはノイズ電圧閾値であり、UはPSEがPDに対して出力する出力電圧であり、CはPSEのポート速度であり、Wは最大通信帯域幅である。
【0017】
第2の態様によれば、給電機器(PSE)が提供される。PSEは、上述のPoEベースの電力供給方法においてPSE動作の機能を実現する。機能はハードウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実行される対応するソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェア又はソフトウェアは、上述の機能に対応する1以上のモジュールを含む。
【0018】
可能な実施方式では、PSEは、PSEチップ、プロセッサ、バス及びインタフェースを備える。PSEチップ、プロセッサ及びインタフェースは、バスを用いて相互に接続される。ここで、
PSEチップは、PDに給電するように構成され、
プロセッサは、PSEチップがPDに給電した後、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定し、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、インタフェースを用いて、PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成され、第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含み、
インタフェースは、PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成される。
【0019】
別の可能な実施方式では、PSEは、
PDに給電するように構成される電源ユニットであって、PDはネットワークケーブルを用いてPSEに接続される、電源ユニットと、
電源ユニットがPDに給電した後、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するように構成される処理ユニットと、
ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成される送信ユニットであって、第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、送信ユニットと、
を備える。
【0020】
第3の態様によれば、PoEベースの電力供給システムが提供される。本システムは、上述の態様で説明されたPSE及びPDを備える。PSEは、ネットワークケーブルを用いてPDに接続され、PDに電力を供給する。
【0021】
PSEは、PDへの給電後に、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定し、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成され、第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含み、
PDは、PSEによって供給される電力を受け取り、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEによって送信される第1のイーサネットパケットを受信し、第1のイーサネットパケットの命令情報に従って、負荷消費電力を低減するように構成される。
【0022】
本発明で提供されるPoEベースの電力供給方法を採用することにより、PSEがPDに電圧を出力した後、PSEは、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定する。ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEはPDに第1のイーサネットパケットを送信する。第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。このようにして、PSEは、PDに対する電力制御管理を実行することができる。PDは、第1のイーサネットパケットを受信した後、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報に従って、PDの負荷を低減することができる。命令情報は、第1のイーサネットパケットに含まれる。これにより、PDが受け取る電圧がPDの負荷の電力要件を満たすことができ、PDが正常に動作することが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るPoEベースの電力供給システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る、PoEベースの電力供給方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る、PoEベースの電力供給方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るPSEの概略構造図である。
図6】本発明の実施形態に係るPSEの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明瞭にするために、以下、添付図面を参照して本発明を更に詳しく説明する。明らかに、記載される実施形態は、本発明の実施形態の全部ではなく一部に過ぎない。当業者が本発明の実施形態に基づいて創意工夫なく得た他の実施形態は、全て本発明の保護範囲に包含されるものとする。
【0025】
PSEの出力電圧が固定である場合に、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が大きすぎるためにPDが受ける電圧を満足することができず、PDの正常動作に影響してしまうという課題を解決するために、本発明の実施形態は、PoEベースの電力供給方法及びPSEを提供する。本発明の方法及び装置は、同じ発明概念に基づく。方法及び装置は、同様の原理を採用することによって課題を解決する。したがって、装置及び方法の実施については相互に参照することができ、両方について同じ内容は繰り返し説明されない。
【0026】
本発明の実施形態では、PSEがPDに電圧を出力した後、PSEは、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定し、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEはPDに第1のイーサネットパケットを送信する。それによりPDは、第1のイーサネットパケットを受信した後、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報に従って、PDの負荷を低減する。命令情報は、第1のイーサネットパケットにおいて搬送される。これにより、PDが受け取る電圧がPDの負荷の電力要件を満たすことができ、PDが正常に動作することが保証される。
【0027】
本発明の実施形態で提供されるPoEベースの電力供給方法は、PoE技術を用いるネットワークに適用可能である。本願は、PoEベースの電力供給システムを提供する。本システムは、PSE101及びPDを含む。図1に示されるように、例えば、PSE101には3つのPD(PD102,PD103,PD104)が接続される。当然ながら、受電装置以外の端末(図示なし)もPSE101に接続されてよい。本発明はそれに限定するものではない。
【0028】
PSE101は、イーサネット上のデータ転送を実施するためのネットワークデバイスであり、PoE対応のイーサネットスイッチ、ルータその他のネットワークデバイスであってよい。本発明はそれに限定するものではない。
【0029】
PSE101は電源管理システムを備え、標準のネットワークケーブルを用いてPD102,PD103,PD104に個別に接続される。標準のネットワークケーブルには、カテゴリ5ケーブル(CAT5)、カテゴリ5拡張ケーブル、カテゴリ6ケーブル(CAT6)等が含まれる。PSE101は、ネットワークケーブルを用いて各PDに電流を流してPDに電圧を供給することで、PDが正常に動作するようにし、また、ネットワークケーブルを用いて各PDとデータをやりとりする。
【0030】
PSE101は更に、電力の計画及び管理を実施してよい。PSE101は、各PDに電圧を出力した後、PSE101とPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定する。PSE101と任意のPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が所定の線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSE101は、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を搬送する第1のイーサネットパケットをPDに送信して、PDに負荷消費電力を低減させる。例えば、アイドル状態であるか或いはデータ伝送を受けていない内部機能モジュール又はサービスモジュールがある場合、PDはモジュールの電源を遮断する。
【0031】
PD102,PD103,PD104は、IP電話、携帯機器充電器、カードリーダ、カメラ等の端末機器であってよい。PD102、PD103又はPD104は、PSE101によって供給される電力を受け入れ、PSEによって送信された第1のイーサネットパケットを受信すると、第1のイーサネットパケット内の命令情報に従って負荷消費電力を低減する。
【0032】
図2を参照する。図2は、本発明の実施形態に係る、PoEベースの電力供給方法のフローチャートである。本方法は、以下の要素を含む。
【0033】
ステップ201:PSEがPDに給電した後、PSEが、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定する。
【0034】
任意に、PSEがステップ201を実行するとき、以下のいくつかの方式が含まれる。
【0035】
第1の方式:PSEは、PDの両端間の電圧を検出し、PSEがPDに対して出力する出力電圧とPDの両端間の電圧との差を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0036】
第2の方式:PSEは、ネットワークケーブルの電流とネットワークケーブルのインピーダンスとの積を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0037】
具体的には、PSEは、PDへの給電前にネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、PDへの給電後にネットワークケーブルの電流を決定する。
【0038】
第3の方式:PSEは、PSEの出力電力と、PDの負荷消費電力と、ネットワークケーブルの電流とを決定し、PSEの出力電力とPDの負荷消費電力との差を電流で割った商を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0039】
第1の方式では、PSEは、PSEがPDに対して出力する出力電圧Uを決定することができ、従来の方式でPDの両端間の電圧Uを検出することができる。そして、ネットワークケーブルの線間電圧降下Uは式1を満たす。
【0040】
=U−U 式1
第2の方式では、PSEは、PDに電圧を出力する前にネットワークケーブルのインピーダンスRを決定し、電圧を出力した後にネットワークケーブルの電流Iを決定する。そして、ネットワークケーブルの線間電圧降下Uは式2を満たす。
【0041】
=R*I 式2
第3の方式では、PSEは、PSEの出力電力Pと、PDの負荷消費電力Pと、ネットワークケーブルの電流Iとを決定する。そして、ネットワークケーブルの線間電圧降下Uは式3を満たす。
【0042】
【数2】
式3
第2の方式において、PSEがネットワークケーブルのインピーダンスを決定するステップは、
PSEが、ネットワークケーブルの長さを決定し、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
PSEが、ネットワークケーブルカテゴリに従って、ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定するステップと、
単位長さ当たりのインピーダンスとネットワークケーブルの長さとの積を、ネットワークケーブルのインピーダンスとして用いるステップと、
を含む。ネットワークケーブルのインピーダンスRは式4を満たす。
【0043】
R=r0*L 式4
式中、r0はネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスであり、Lはネットワークケーブルの長さである。
【0044】
PSEは、ネットワークケーブル内の1対の線を用いることによってのみPDに電圧を供給する。したがって、上述のステップでは、計算によって得られるネットワークケーブルのインピーダンスは、ネットワークケーブル内の1対の線のインピーダンスである。本発明の本実施形態では、ネットワークケーブルのインピーダンスは、ネットワークケーブルにおいてPDに電圧を供給するために用いられる1対の線のインピーダンスである。
【0045】
従来のネットワークケーブルは、カテゴリ5ケーブル(CAT5)、カテゴリ5拡張ケーブル、カテゴリ6ケーブル(CAT6)等の複数のネットワークケーブルカテゴリに分類される。各カテゴリは更に、非シールドより対線(Unshielded Twisted Paired、略称UTP)とシールドより対線(Shielded Twisted Paired、略称STP)に分類される。ネットワークケーブルの材料は、ネットワークケーブルの種類によって異なる場合がある。異なるネットワークケーブル材料に対応する単位長さ当たりのインピーダンスは異なる。したがって、各ネットワークケーブルカテゴリには、対応する単位長さ当たりのインピーダンスがある。
【0046】
任意に、PSEは、ネットワークケーブルの長さを決定するとき、仮想ケーブルテスト(Virtual Cable Test、略称VCT)機能を用いて、ネットワークケーブルの長さがLであることを自動的に検出することができる。
【0047】
任意に、PSEがネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップは、
PSEが、複数の出力電力におけるネットワークケーブルの信号対雑音比(Signal Noise Ratio、略称SNR)を検出し、ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定するステップと、
PSEが、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、第1の対応関係とに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
を含む。
【0048】
各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係を図3に示す。図3は、ネットワークケーブルの長さが変化しない状態における各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係を示す。図中の各線は、1つのネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係を表す。各ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係は、ネットワークケーブルカテゴリに対応する斜線の傾きを用いて表すこともできる。本発明はそれに限定するものではない。
【0049】
ステップ202:ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEはPDに第1のイーサネットパケットを送信する。第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。
【0050】
命令情報はインジケータであってもよく、或いは第1のイーサネットパケットのフラグであってもよく(フラグはPSEによって値が割り当てられている)、或いは第1のイーサネットパケットに含まれる他のデータであってもよい。命令情報は、例えば指定された機能モジュール又はサービスモジュールを遮断する等、負荷消費電力を低減する方法をPDに指示するために用いられる。任意に、第1のイーサネットパケットは更に、負荷消費電力を低減するようにPDに指示するための原因情報、すなわち、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいことをPDに通知する情報を含むことができる。
【0051】
PoE規格では、PSEが任意のPDに対して出力する電圧は、例えば53.5Vに固定される。一般に、PDの両端間の電圧が42.5V未満の場合、PDは正常に動作することができない。したがって、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下は、固定値と42.5Vとの差より小さくなければならない。例えば、PSEがPDに対して出力する電圧が53.5Vであるとき、ステップ202では、線間電圧降下閾値は11Vに設定されてよい。
【0052】
以上のステップを用いることにより、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEは、PDに対して電力制御管理を実行する。すなわち、PSEは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を搬送する第1のイーサネットパケットをPDに送信して、PDに負荷消費電力を低減させる。例えば、アイドル状態であるか或いはデータ伝送を受けていない内部機能モジュール又はサービスモジュールがある場合、PDはモジュールの電源を遮断する。このようにして、PDがその負荷を低減し、所要の電圧値が低下するので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0053】
任意に、本方法は更に、
PSEが、PDに第1の電圧インパルスを送信し、PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するステップと、
PSEが、第1の電圧インパルス及び第2の電圧インパルスに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定するステップと、
PSEが、挿入損失と温度との対応関係に従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定するステップと、
PSEがネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、PSEが、PDに第2のイーサネットパケットを送信するステップであって、第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む。ネットワークケーブル温度閾値は、居住環境やネットワーク配備の要件に従って設定されてよく、例えば摂氏60度に設定されてよい。
【0054】
ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失は式5を満たす。
【0055】
【数3】
式5
式中、ILはネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失であり、uは第1の電圧インパルスであり、uは第2の電圧インパルスである。uとuは、PSEの物理層(Physical Layer、略称PHY)の時間領域リフレクトメトリ(Time Domain Reflectometry、略称TDR)技術を用いて決定されてよい。
【0056】
ネットワークケーブル 挿入損失とネットワークケーブル温度との対応関係は、式6を満たす。
【0057】
【数4】
式6
式中、Tはネットワークケーブルの温度であり、kはネットワークケーブルの温度変化係数であり、fはPSEのポート帯域幅周波数である。
【0058】
式6では、PSEは、PHYでオートネゴシエーションによってfを取得することができる。更に、ネットワークケーブルの初期温度T0において、PDが最初に電源投入されたときのネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失はIL0であることが知られている。PSEは、f、T0、IL0及び式6に従って、ネットワークケーブルの温度変化係数kを決定することができる。更に、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失k及びfが決定された後、式6を用いてネットワークケーブル温度を決定することができる。
【0059】
任意に、第2のイーサネットパケットと第1のイーサネットパケットは、同じイーサネットパケットであっても異なるイーサネットパケットであってもよい。任意に、第2のイーサネットパケットは更に、PDに負荷消費電力を低減するように指示するための原因情報、すなわち、ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いことをPDに通知するための情報を含んでよい。明らかに、第1のイーサネットパケット又は第2のイーサネットパケットが、PDに負荷消費電力を低減するように指示するための原因情報を含む場合、第1のイーサネットパケットと第2のイーサネットパケットは異なる。任意に、PSEが、線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいと決定し、ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定すると、PSEは、第1のイーサネットパケットと第2のイーサネットパケットの両方を送信してよく、或いは、2つのうちのいずれかを直接送信してよく、或いは、第1のイーサネットパケットと第2のイーサネットパケットを1つのイーサネットパケットに結合して送信してよい。本発明はそれに限定するものではない。
【0060】
ネットワークケーブル温度が高すぎると回線が不安定になりやすく、ネットワークケーブルの性能が低下する。規格では、ネットワークケーブルの最高動作温度は60℃であると規定されている。PSEがネットワークケーブルを用いてPDに電圧を供給するとき、ネットワークケーブルは、PDの負荷が比較的高いこと、又はネットワークケーブルの電流が比較的高いことが原因で、熱くなる可能性が非常に高い。しかしながら、従来のPoEベースのネットワークでは、ネットワークケーブルの温度がリアルタイムでモニタリングされない。その結果、ネットワークケーブルの動作信頼性が低下し、ネットワークに安全脅威が存在する。
【0061】
上述の方式では、PSEはネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングする。更に、ネットワークケーブル温度が指定されたネットワークケーブル温度閾値に達すると、PSEはまた、PDに対して電力制御管理を実行する。すなわち、PSEは、PDに負荷消費電力を低減するように命令する命令情報を搬送する第2のイーサネットパケットをPDに送信して、PDに負荷消費電力を低減させる。例えば、アイドル状態であるか或いはPD内でデータ伝送を受けていない機能モジュール又はサービスモジュールについて、PDはモジュールの電源を遮断することにより、負荷消費電力を低減する。このようにして、PDが必要とする電圧が低下し、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないことが保証され、ネットワークケーブルの動作信頼性やネットワーク全体の安全性が確保される。
【0062】
任意に、PSEがPDに電圧を出力する前に、本方法は更に、
PSEが、PDの現在の負荷消費電力を検出し、検出されたPDの現在の負荷消費電力に従ってPDに対して分類を実行して、PDのクラスを決定するステップと、
PDのクラスに従って、PDの最大負荷消費電力とPSEがPDに対して出力する最大出力電圧とを決定するステップと、
PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定するステップであって、過電流閾値は、PSEがPDへの電力供給を制御する際に用いられる、ステップと、
を含む。
【0063】
例えば、PSEが電圧をPDに対して出力した後に、PSEはネットワークケーブルの電流を決定する。ネットワークケーブルの電流が過電流閾値以上であるとき、PSEはPDへの電力供給を遮断する。
【0064】
従来のPoE規格では、接続されたPDは、PDの負荷消費電力に従って分類される。各クラスには、PSEの出力電力、PDの最大負荷消費電力、出力電圧範囲等の対応するパラメータが設定される。
【0065】
PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定するステップは、
PSEが式7
【0066】
【数5】
式7
を用いて、PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、PDの最大負荷消費電力におけるPDの両端間の電圧を決定するステップであって、式中、PSmaxはPDの最大負荷消費電力であり、UOmaxはPDの最大負荷消費電力においてPSEがPDに対して出力する最大出力電圧であり、Rはネットワークケーブルのインピーダンスであり、UはPDの最大負荷消費電力におけるPDの両端間の電圧である、ステップと、
PSEが式8
【0067】
【数6】
式8
を用いて、PDの最大負荷消費電力におけるPDの両端間の電圧と、PDの最大負荷消費電力とに従って、PDの最大負荷消費電力におけるネットワークケーブルの電流を決定するステップと、
PSEが、PDの最大負荷消費電力におけるネットワークケーブルの電流Imaxに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値Icutを決定するステップであって、Icut>Imaxである、ステップと、
を含む。
【0068】
従来のPoEベースのネットワークでは、PSEがPDの負荷電力に従ってPDを分類した後、PSEと全てのPDとの間のネットワークケーブルに対して同じ過電流閾値が設定される。このように、PSEは、高電力電源の場合には、ネットワークケーブル間の線路損失又は電流不均衡の問題を考慮することができない。その結果、PSEによってPDに供給される電圧は、PDの負荷要件を満たすことができず、PDの電源がオフにされる可能性がある。
【0069】
上述の方式では、各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0070】
任意に、上述の実施形態では、PSEがPDに第1のイーサネットパケットを送信する前に、本方法は更に、PSEが、ネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップ、を含む。電流変化率は、PDの負荷電力の変化率閾値を示すのに用いられる。対応して、ステップ202でPSEがPDに送信する第1のイーサネットパケットは、ネットワークケーブルの電流変化率を更に含む。任意に、PSEがPDに送信する第2のイーサネットパケットも、ネットワークケーブルの電流変化率を含んでよい。
【0071】
任意に、PSEがネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップは、具体的には、
PSEが、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定するステップと、
PSEが、PSEのポート速度と、最大通信帯域幅と、PSEがPDに対して出力する出力電圧とに従って、ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するステップと、
PSEが電圧をPDに対して出力した後に、PSEが、設定された単位時間に従って出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧がノイズ電圧閾値に等しくなるまで、ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するステップと、
PSEが、最後の調整プロセスにおいて、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップと、
を含む。
【0072】
電流変化率は、PDの負荷消費電力の単位時間内の変化率閾値である。
【0073】
ステップ202の後、PDは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を搬送する第1のイーサネットパケットを受信し後に、命令情報に従ってPDの負荷消費電力を低減する。しかしながら、PDの負荷が変化すると、それに応じてPSEとPDとの間のリンク上のノイズが変化し、結果として信号対雑音比が低下する。Shannonの公式(式9)によれば、信号対雑音比が減少すると、リンクの速度も減少することが分かる。また、PDがその負荷消費電力を低減させるプロセスにおいて、単位時間内におけるPDの負荷消費電力の変化率が大きすぎると、リンク速度がPSEのポート速度よりも小さくなることがあり、更にサービスパケットの損失をもたらし、PSE及びPDの作業効率に影響する。したがって、PDがその負荷を減少させるプロセスでは、単位時間内における負荷消費電力の変化率が、リンク上でサービスパケット損失が発生しない範囲内であることが保証される必要がある。
【0074】
【数7】
式9
式中、Cはリンク速度であり、Wはネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅であり、Sは平均信号電力であり、Nは平均ノイズ電力である。
【0075】
SNRは、式10又は式11を用いて表すことができる。
【0076】
【数8】
式10
式中、UはPSEがPDに対して出力する出力電圧であり、Uはネットワークケーブルのノイズ電圧である。
【0077】
【数9】
式11
したがって、式10及び式11に従って、式12を得ることができる。
【0078】
【数10】
式12
PSEのポート速度がリンク速度と等しいことが保証される場合、ノイズ電圧閾値は、式12及び式9に従って得られ、以下の式13が成り立つ。
【0079】
【数11】
式13
式中、Uはノイズ電圧閾値であり、UはPSEがPDに対して出力する出力電圧であり、CはPSEのポート速度であり、Wは最大通信帯域幅である。
【0080】
PSEがネットワークケーブルのノイズ電圧がノイズ電圧閾値と等しいことを検出すると、設定された単位時間内に得られる電流変化率は、設定された単位時間内にPDが負荷消費電力を調整する変化率である。したがって、単位時間内の負荷消費電力の変化率が負荷消費電力調整中の電流変化率よりも小さいことを保証するだけで、PDはリンク速度がPSEのポート速度と等しいことと、PSEとPD間のデータ伝送中にパケット損失が発生しないことを保証することができ、リンクの伝送信頼性が確保される。
【0081】
本発明の上述の実施形態で提供されるPoEベースの電力供給方法を採用することにより、PSEとPDとの間の線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きい場合、PSEはPDに対して電力制御管理を実行して、PDに負荷消費電力を低減させる。このようにして、PDがその負荷を低減し、所要の電圧値が低減されるので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0082】
PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。
【0083】
各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0084】
PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEは、PDの負荷消費電力の変化率閾値を決定し、それにより、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0085】
上述の実施形態に基づき、本発明は更に、PoEベースの電力供給方法を提供する。図4を参照すると、方法のプロセスは以下を含む。
【0086】
ステップ401:PSEが、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定する。
【0087】
任意に、PSEがネットワークケーブルのインピーダンスを決定するステップは、
PSEが、ネットワークケーブルの長さを決定し、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
PSEが、ネットワークケーブルカテゴリに従って、ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定するステップと、
単位長さ当たりのインピーダンスとネットワークケーブルの長さとの積を、ネットワークケーブルのインピーダンスとして用いるステップと、
を含む。
【0088】
任意に、ネットワークケーブルの長さを決定するとき、PSEはVCT機能を用いて、ネットワークケーブルの長さがLであることを自動的に検出することができる。
【0089】
任意に、PSEがネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップは、
PSEが、複数の出力電力におけるネットワークケーブルのSNRを検出し、ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定するステップと、
PSEが、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、第1の対応関係とに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するステップと、
を含む。各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係を図3に示す。
【0090】
ステップ402:PSEが、PDに対して分類を実行してPDのクラスを決定し、PDに対応するクラスに従って、PDの最大負荷消費電力と、PSEがPDに対して出力する最大出力電圧とを決定する。
【0091】
PSEがPDに対して分類を実行することは、PDの現在の負荷消費電力を検出し、PDの現在の負荷消費電力に従ってPDに対応するクラスを決定することである。
【0092】
PDのクラスに従って、PSEの出力電力、PDの最大負荷消費電力、出力電圧範囲等、クラスに対応するパラメータを決定することができる。
【0093】
ステップ403:PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定する。
【0094】
任意に、PSEは、式7を用いて、PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、PDの最大負荷消費電力におけるPDの両端間の電圧を決定してよい。
【0095】
PSEは、式8を用いて、PDの最大負荷消費電力におけるPDの両端間の電圧と、PDの最大負荷消費電力とに従って、PDの最大負荷消費電力におけるネットワークケーブルの電流を決定する。
【0096】
PSEは、PDの最大負荷消費電力におけるネットワークケーブルの電流Imaxに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値Icutを決定する。Icut>Imaxである。
【0097】
このようにして、各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0098】
ステップ404:PSEは、PDに対して電圧を出力することにより、PDに電力を供給する。ネットワークケーブルの電流は、過電流閾値よりも小さい。
【0099】
ステップ405:PSEが、ネットワークケーブルの線間電圧降下を決定する。
【0100】
ステップ405が実行されるとき、具体的には、以下のいくつかの方法が含まれる。
【0101】
第1の方式:PSEは、PDの両端間の電圧を検出し、PSEがPDに対して出力する出力電圧とPDの両端間の電圧との差を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0102】
第2の方式:PSEが、PDに対して電圧を出力する前に、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、電圧をPDに対して出力した後、ネットワークケーブルの電流を決定し、ネットワークケーブルの電流とネットワークケーブルのインピーダンスとの積を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0103】
第3の方式:PSEは、PSEの出力電力と、PDの負荷消費電力と、ネットワークケーブルの電流とを決定し、PSEの出力電力とPDの負荷消費電力との差を電流で割った商を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いる。
【0104】
ステップ406:PSEは、線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいか否かを判定する。線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きい場合、PDの負荷消費電力を低減する処理を行う。線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きくない場合、ステップ405の実行に進む。
【0105】
ステップ407及びステップ408は、PDの負荷消費電力を低減するプロセスである。任意に、ステップ407は、ステップ404の後の任意の時点で実行される。本発明はこれに限定するものではなく、図面には1つの実行方式のみを示す。
【0106】
ステップ407:PSEとPDとの間のリンク速度がPSEのポート速度と等しいとき、PSEが、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定する。
【0107】
任意に、PSEがステップ407を実行するとき、
PSEが、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定するステップと、
PSEが、PSEのポート速度と、最大通信帯域幅と、PSEがPDに対して出力する出力電圧とに従って、ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するステップと、
PSEが電圧をPDに対して出力した後に、PSEが、設定された単位時間に従って出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧がノイズ電圧閾値に等しくなるまで、ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するステップと、
PSEが、最後の調整プロセスにおいて、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定するステップであって、電流変化率は、単位時間内におけるPDの負荷消費電力の変化率閾値である、ステップと、
を含む。
【0108】
ステップ408:PSEが、第1のイーサネットパケットを生成し、第1のイーサネットパケットをPDに送信する。第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報と、電流変化率とを含む。
【0109】
命令情報はインジケータであってよく、或いは第1のイーサネットパケット内のフラグであってもよく(フラグはPSEによって値が割り当てられている)、或いは第1のイーサネットパケットに含まれる他のデータであってもよい。命令情報は、例えば指定された機能モジュール又はサービスモジュールを遮断する等、負荷消費電力を低減する方法をPDに指示するために用いられる。任意に、第1のイーサネットパケットは更に、負荷消費電力を低減するようにPDに指示するための原因情報、すなわち、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいことをPDに通知する情報を含むことができる。
【0110】
ステップ408の後、PDは、PSEが送信した第1のイーサネットパケットを受信し、第1のイーサネットパケットの命令情報に従ってPDの負荷消費電力を調整し、単位時間内の負荷消費電力の変化率が電流変化率よりも小さいことを保証する。
【0111】
ステップ409:PSEが、ネットワークケーブルのネットワークケーブル温度を決定する。
【0112】
PSEがステップ409を実行するとき、
PSEが、PDに第1の電圧インパルスを送信し、PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するステップと、
PSEが、第1の電圧インパルス及び第2の電圧インパルスに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定するステップと、
PSEが、挿入損失と温度との対応関係に従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定するステップと、
PSEがネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、PSEが、PDに第2のイーサネットパケットを送信するステップであって、第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む、ステップと、
を含む。ネットワークケーブル温度閾値は、居住環境やネットワーク配備の要件に従って設定されてよく、例えば摂氏60度に設定されてよい。
【0113】
ステップ410:PSEが、ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いか否かを決定する。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高い場合、PDの負荷消費電力を低減するプロセスを実行する。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高くない場合、ステップ409の実行に進む。
【0114】
ステップ411及びステップ412は、PDの負荷消費電力を低減するプロセスである。任意に、ステップ411は、ステップ404の後の任意の時点で実行される。本発明はこれに限定するものではなく、図面には1つの実行方式のみを示す。
【0115】
ステップ411:PSEとPDとの間のリンク速度がPSEのポート速度と等しいとき、PSEが、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定する。このステップはステップ407と同じであり、したがってここでの説明は省略する。具体的な適用シナリオでは、ネットワークケーブルの電流変化率は1回だけ計算されてよく、PSEによって決定された後に記憶される。続いて第1のイーサネットパケット又は第2のイーサネットパケットを送信する必要がある場合、記憶されたネットワークケーブルの電流変化率は、第1のイーサネットパケット又は第2のイーサネットパケットで直接搬送されてよい。
【0116】
ステップ412:PSEが、第2のイーサネットパケットを生成し、第2のイーサネットパケットをPDに送信する。第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報と、電流変化率とを含む。
【0117】
ステップ412の後、PDは、PSEから送信された第2のイーサネットパケットを受信し、第2のイーサネットパケットの命令情報に従ってPDの負荷消費電力を調整し、単位時間内における負荷消費電力の変化率が電流変化率より小さくなることを保証する。
【0118】
本発明の上述の実施形態で提供されるPoEベースの電力供給方法を採用することにより、PSEとPDとの間の線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいと、PSEは、PDに対して電力制御管理を実行して、PDに負荷消費電力を低減させる。このようにして、PDはその負荷を低減し、所要の電圧値が低減されるので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0119】
更に、PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。
【0120】
各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、対応するネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力に応じて、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0121】
PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEはPDの負荷消費電力の変化率閾値を決定するので、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0122】
本発明は更に、図2及び図4に示されるPoEベースの電力供給方法においてPSEの機能を実現するように構成されるPSEを提供する。図5を参照すると、PSE500は、電源ユニット501、処理ユニット502及び送信ユニット503を備える。
【0123】
電源ユニット501は、PDに給電するように構成される。PDは、ネットワークケーブルを用いてPSE500に接続される。
【0124】
処理ユニット502は、電源ユニット501がPDに給電した後、PSE500とPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するように構成される。
【0125】
送信ユニット503は、ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成される。第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。
【0126】
任意に、PSE500は更に、電源ユニット501がPDに給電した後、ネットワークケーブルの電流を決定するように構成される第1の決定ユニット504を備える。
【0127】
ネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するとき、処理ユニット502は、具体的には、
電源ユニット501がPDに電力を供給する前にネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、
ネットワークケーブルの電流とネットワークケーブルのインピーダンスとの積を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いるように構成される。
【0128】
任意に、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定するとき、処理ユニット502は、具体的には、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定し、ネットワークケーブルカテゴリに従って、ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定し、単位長さ当たりのインピーダンスとネットワークケーブルの長さとの積を、ネットワークケーブルのインピーダンスとして用いるように構成される。
【0129】
PSE500は更に、ネットワークケーブルの長さを決定するように構成される第2の決定ユニット505を備える。
【0130】
ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するとき、処理ユニット502は、具体的には、
複数の出力電力におけるネットワークケーブルのSNRに従って、ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定し、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、第1の対応関係とに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するように構成される。
【0131】
PSE500は更に、複数の出力電力におけるネットワークケーブルのSNRを検出及び取得するように構成されるSNR検出ユニット506を備える。
【0132】
任意に、PSE500は更にインパルス検出ユニット507を備える。インパルス検出ユニット507は、PDに第1の電圧インパルスを送信し、PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するように構成される。
【0133】
処理ユニット502は更に、第1の電圧インパルス及び第2の電圧インパルスに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定し、挿入損失と温度との対応関係に従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定するように構成される。
【0134】
送信ユニット503は更に、ネットワークケーブル温度が所定のネットワークケーブル温度閾値よりも高いとき、PDに第2のイーサネットパケットを送信するように構成される。第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。
【0135】
任意に、PSE500は更に、PDの現在の負荷消費電力を検出するように構成される消費電力検出ユニット508を備える。具体的には、消費電力検出ユニット508は、電源ユニット501がPDに電力を供給する前に、PDの現在の負荷消費電力を検出する。
【0136】
処理ユニット502は更に、消費電力検出ユニット508によって検出されたPDの現在の負荷消費電力に従って、PDを分類してPDのクラスを決定し、PDのクラスに従って、PDの最大負荷消費電力と、PDに対して出力される最大出力電圧とを決定し、PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定するように構成される。過電流閾値は、PSEがPDへの電力供給を制御する際に用いられる。
【0137】
任意に、処理ユニット502は更に、ネットワークケーブルの電流変化率を決定するように構成される。電流変化率は、PDの負荷消費電力の変化率閾値を示すのに用いられる。具体的には、処理ユニット502は、送信ユニット503がPDに第1のイーサネットパケットを送信する前に、ネットワークケーブルの電流変化率を決定する。
【0138】
対応して、第1のイーサネットパケットは更に、ネットワークケーブルの電流変化率を含む。
【0139】
ネットワークケーブルの電流変化率を決定するとき、処理ユニット502は、具体的には、
ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定し、
PSE500のポート速度と、最大通信帯域幅と、電源ユニット501がPDに対して出力する出力電圧とに従って、ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するように構成される。
【0140】
電源ユニット501は更に、電圧をPDに対して出力した後、ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧がノイズ電圧閾値に等しくなるまで、設定された単位時間に従って出力電圧の電圧値を調整するように構成される。PSE500は更に、電源ユニット501が電圧を調整した後に毎回、ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するように構成されるノイズ電圧測定ユニット509を備える。
【0141】
処理ユニット502は、最後の調整プロセスにおいて、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定する。
【0142】
任意に、ノイズ電圧閾値は、以下の式
【0143】
【数12】
を満たす。式中、Uはノイズ電圧閾値であり、Uは電源ユニット501がPDに対して出力する出力電圧であり、CはPSE500のポート速度であり、Wは最大通信帯域幅である。
【0144】
本発明の本実施形態で提供されるPSEを採用することにより、PSEとPDとの間の線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEは、PDに対して電力制御管理を実行して、PDに負荷消費電力を低減させる。このようにして、PDはその負荷を低減し、所要の電圧値が低減されるので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0145】
PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。
【0146】
各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0147】
PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEはPDの負荷消費電力の変化率閾値を決定するので、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0148】
なお、本発明の実施形態におけるユニットの分割は例示的なものであり、論理的な機能分割に過ぎず、実際の実装においては他の分割であってよい。本願の実施形態における機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合されてもよいし、ユニットの各々が物理的に単独で存在してもよいし、2以上のユニットが1つのユニットに統合されてもよい。上述の統合ユニットは、ハードウェアの形態で実装されてもよく、ソフトウェア機能ユニットの形態で実装されてもよい。
【0149】
統合ユニットがソフトウェア機能ユニットの形態で実装され、独立した製品として販売又は使用される場合、統合ユニットはコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。このような理解に基づき、本願の技術的解決策は本質的に、或いは従来技術に寄与する部分、或いは技術的解決策の全部又は一部は、ソフトウェア製品の形態で実施されてよい。コンピュータソフトウェア製品は、記憶媒体に格納され、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、ネットワーク装置等であってよい)又はプロセッサに、本出願の実施形態に記載された方法のステップの全部又は一部を実行するよう指示するためのいくつかの命令を含む。上述の記憶媒体は、USBフラッシュドライブ、リムーバブルハードディスク、読出し専用メモリ(Read-Only Memory、略称ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、略称RAM)、磁気ディスク、光ディスク等の、プログラムコードを格納することのできる任意の媒体を含む。
【0150】
本発明は更に、図2及び図4に示されるPoEベースの電力供給方法においてPSEの機能を実現するように構成されるPSEを提供する。図6を参照する。PSE600は、PSEチップ601、プロセッサ602、バス603及びインタフェース604を備える。
【0151】
PSEチップ601と、プロセッサ602と、インタフェース604とは、バス603を用いて相互に接続される。バス603は、周辺コンポーネント相互接続(peripheral component interconnect、略称PCI)バス、拡張業界標準アーキテクチャ(extended industry standard architecture、略称EISA)バス等であってよい。バスは、アドレスバス、データバス、制御バス等に分類することができる。表現を容易にするために、図6においてバスは1本の太い線のみを用いて表される。しかしながら、1つのバス又は1つのタイプのバスしか存在しないことを意味するものではない。
【0152】
インタフェース604には、ネットワークケーブルを用いてPDが接続される。PSE600は、インタフェース604を用いてPDと通信し、PDに電力を供給する。
【0153】
PSEチップ601は、PDに電力を供給するように構成される。
【0154】
プロセッサ602は、PSEチップ601がPDに電力を供給した後、PSE600とPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下を決定し、
ネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、インタフェース604を用いてPDに第1のイーサネットパケットを送信するように構成される。第1のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。
【0155】
任意に、PSEチップ601は更に、PDへの給電後に、ネットワークケーブルの電流を決定するように構成される。
【0156】
ネットワークケーブルの線間電圧降下を決定するとき、プロセッサ602は、具体的には、
PSEチップ601がPDに電力を供給する前に、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定し、
ネットワークケーブルの電流とネットワークケーブルのインピーダンスとの積を、ネットワークケーブルの線間電圧降下として用いるように構成される。
【0157】
任意に、ネットワークケーブルのインピーダンスを決定するとき、プロセッサ602は、具体的には、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定し、ネットワークケーブルカテゴリに従って、ネットワークケーブルカテゴリに対応する単位長さ当たりのインピーダンスを決定し、単位長さ当たりのインピーダンスとネットワークケーブルの長さとの積を、ネットワークケーブルのインピーダンスとして用いるように構成される。
【0158】
PSEチップ601は更に、ネットワークケーブルの長さを決定するように構成される。
【0159】
ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するとき、プロセッサ602は、具体的には、
複数の出力電力におけるネットワークケーブルの信号対雑音比(SNR)に従って、ネットワークケーブルの出力電力とSNRとの第1の対応関係を決定し、各種ネットワークケーブルカテゴリの出力電力とSNRとの対応関係と、第1の対応関係とに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリを決定するように構成される。
【0160】
PSEチップ601は更に、複数の出力電力におけるネットワークケーブルのSNRを検出及び取得するように構成される。
【0161】
任意に、PSEチップ601は更に、PDに第1の電圧インパルスを送信し、PDによって受信される第2の電圧インパルスを検出するように構成される。
【0162】
プロセッサ602は更に、第1の電圧インパルス及び第2の電圧インパルスに従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失を決定し、挿入損失と温度との対応関係に従って、ネットワークケーブルのネットワークケーブル挿入損失に対応するネットワークケーブル温度を決定し、ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値よりも高いと決定した場合、PDに第2のイーサネットパケットを送信するように構成される。第2のイーサネットパケットは、PDに負荷消費電力を低減するように命令するための命令情報を含む。
【0163】
任意に、PSEチップ601は更に、PSEチップ601がPDに電力を供給する前に、PDの現在の負荷消費電力を検出するように構成される。
【0164】
プロセッサ602は更に、PSEチップ601によって検出されたPDの現在の負荷消費電力に従って、PDを分類してPDのクラスを決定し、PDのクラスに従って、PDの最大負荷消費電力と、最大PSEチップ601がPDに対して出力する出力電圧とを決定し、PDの最大負荷消費電力と、ネットワークケーブルのインピーダンスと、最大出力電圧とに従って、ネットワークケーブルの過電流閾値を決定するように構成される。過電流閾値は、PSE600がPDへの電力供給を制御する際に用いられる。
【0165】
任意に、プロセッサ602は更に、PDに第1のイーサネットパケットを送信する前に、電流変化率を決定するように構成される。電流変化率は、PDの負荷消費電力の変化率閾値を示すのに用いられる。
【0166】
対応して、第1のイーサネットパケットは更に、ネットワークケーブルの電流変化率を含む。
【0167】
プロセッサ602は、具体的には、
ネットワークケーブルのネットワークケーブルカテゴリに対応する最大通信帯域幅を決定し、
PSE600のポート速度と、最大通信帯域幅と、PSEチップ601がPDに対して出力する出力電圧とに従って、ネットワークケーブルのノイズ電圧閾値を決定するように構成される。
【0168】
PSEチップ601は更に、電圧をPDに対して出力した後、設定された単位時間に従って出力電圧の電圧値を調整し、各電圧調整の後に、ネットワークケーブルの測定されたノイズ電圧がノイズ電圧閾値に等しくなるまで、ネットワークケーブルのノイズ電圧を測定するように構成される。
【0169】
プロセッサ602は、最後の調整プロセスにおいて、設定された単位時間内にネットワークケーブルの電流変化率を決定する。
【0170】
任意に、ノイズ電圧閾値は、以下の式
【0171】
【数13】
を満たす。式中、Uはノイズ電圧閾値であり、UはPSEチップ601がPDに対して出力する出力電圧であり、CはPSEのポート速度であり、Wは最大通信帯域幅である。
【0172】
PSE600は更に、プログラム等を記憶するように構成されるメモリを備えてよい。具体的には、プログラムはプログラムコードを含んでよい。プログラムコードはコンピュータ操作命令を含む。メモリは、ランダムアクセスメモリ(random access memory、略称RAM)を含むことができ、或いは、例えば少なくとも1つのディスクメモリ等の不揮発性メモリ(non-volatile memory)を更に含むことができる。プロセッサ602は、メモリに記憶されたプログラムを実行して上述の機能を実現することにより、図2及び図4に示されるPoEベースの電力供給方法を実現する。
【0173】
本発明の本実施形態で提供されるPSEを採用することにより、PSEとPDとの間の線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEは、PDに対して電力制御管理を実行して、PDに負荷消費電力を低減させる。このようにして、PDはその負荷を低減し、所要の電圧値が低減されるので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。
【0174】
PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。
【0175】
各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。
【0176】
PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEはPDの負荷消費電力の変化率閾値を決定するので、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0177】
要約すると、本発明の実施形態で提供されるPoEベースの電力供給方法及びPSEによれば、PSEとPDとの間のネットワークケーブルの線間電圧降下が線間電圧降下閾値よりも大きいとき、PSEは、PDに対して電力制御管理を実行して、PDに負荷消費電力を低減させる。このようにして、PDはその負荷を低減し、所要の電圧値が低減されるので、PSEによってPDに供給される電圧はPDの電力要求を満たすことができ、よって、PDの正常な動作が保証され、停電の発生が回避される。PSEは更に、ネットワークケーブル温度をリアルタイムでモニタリングすることができる。ネットワークケーブル温度がネットワークケーブル温度閾値に達した場合、PDに負荷消費電力を低減させるために、PDに対しても電力制御管理が実行される。このようにして、PDが必要とする電圧値を下げ、ネットワークケーブル温度がそれ以上悪化しないようにし、ネットワークケーブルの動作信頼性を確保すると共に、PoEベースのネットワーク全体の安全性を確保する。各PDに電力を供給するプロセスにおいて、PSEは、各ネットワークケーブルのインピーダンスとPDの最大負荷消費電力とに従って、過電流閾値を設定する。インピーダンスの異なるネットワークケーブルに対しては、異なる過電流閾値が設定される。これにより、ネットワークケーブル間の電流不均衡によって引き起こされるPSEの過負荷ポートのリスクが大幅に低減され、更にPDの電源オフにつながり、PDの動作信頼性が確保される。PDに負荷消費電力を低減するように指示する前に、PSEはPDの負荷消費電力の変化率閾値を決定するので、PDが負荷消費電力を調整するとき、負荷消費電力の実際の変化率は負荷消費電力の変化率閾値よりも小さい。これにより、リンク速度がPSEのポート速度と等しいことが保証され、PSEとPDとの間のデータ伝送中にサービスパケット損失が発生しないことが保証されるので、リンクの伝送信頼性が保証される。
【0178】
当業者であれば、本発明の実施形態が方法、システム又はコンピュータプログラム製品として提供され得ることを理解できるであろう。したがって、本発明は、ハードウェアのみの実施形態、ソフトウェアのみの実施形態、又はソフトウェアとハードウェアの組合わせを備えた実施形態の形式を採用することができる。更に、本発明は、コンピュータ使用可能なプログラムコードを含む1以上のコンピュータ不揮発性記憶媒体(ディスクメモリ、CD−ROM、光メモリ等を含むがこれらに限定されない)上に実装されるコンピュータプログラム製品の形態を採用してよい。
【0179】
本発明の実施形態に係る方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して、本発明を説明した。なお、フローチャート及び/又はブロック図における各プロセス及び/又は各ブロックと、フローチャート及び/又はブロック図におけるプロセス及び/又はブロックの組合わせを実現するために、コンピュータプログラム命令を採用することができる。このようなコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、組込みプロセッサ、或いは任意の他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに対して提供されて、機械を生成することができる。よって、コンピュータ或いは任意の他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサによって実行される命令は、フローチャートの1以上のプロセス及び/又はブロック図の1以上のブロックにおいて特定の機能を実現するための装置を生成する。
【0180】
このようなコンピュータプログラム命令は、コンピュータその他のプログラマブルデータ処理装置に特定の方式で動作するよう指示することができるコンピュータ可読メモリに格納されてよく、それにより、コンピュータ可読メモリに格納された命令は、命令装置を含むアーチファクトを生成する。命令装置は、フローチャートの1以上のプロセス及び/又はブロック図の1以上のブロックにおいて特定の機能を実現する。
【0181】
このようなコンピュータプログラム命令は、コンピュータその他のプログラマブルデータ処理装置にロードされてよく、一連の動作及びステップがコンピュータその他のプログラマブルデバイス上で実行され、それによりコンピュータ実装処理を生成することができる。したがって、コンピュータその他のプログラマブルデバイス上で実行される命令は、フローチャートの1以上のプロセス及び/又はブロック図の1以上のブロックにおいて特定の機能を実現するステップを提供する。
【0182】
本発明の一部の実施形態を説明したが、当業者が基本的な発明概念を学べば、これらの実施形態に対して変更及び修正を行うことができる。したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲に包含される実施形態と全ての変更及び修正を包含するものと解釈されることが意図される。
【0183】
当然ながら、当業者であれば、本発明の実施形態の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に様々な修正及び変形を加えることができる。本発明は、以下の特許請求の範囲とそれらの均等技術によって規定される保護範囲に包含されるという条件で、これらの修正及び変形を包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6