特許第6379164号(P6379164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6379164組み立てが確実なバランスばねスタッドホルダー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379164
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】組み立てが確実なバランスばねスタッドホルダー
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/32 20060101AFI20180813BHJP
   G04B 18/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G04B17/32
   G04B18/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-232341(P2016-232341)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-106914(P2017-106914A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】15199637.8
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フローラン・ストラーム
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ヴィラール
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ケラン
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・コニュ
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−102550(JP,A)
【文献】 特開2015−121534(JP,A)
【文献】 特開2013−61340(JP,A)
【文献】 スイス国特許発明第287611(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/32−17/34
G04B 18/00−18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリー(1)であって、
バランスばねスタッド(7)と、及びバランスばねスタッドホルダー(4)が固定されるバランスコック(2)とを有し、
前記スタッドホルダーは、前記バランスばねスタッドを中に収容するハウジング(53、53’、514)が設けられた保持手段(5)と、弾性アーム(62)を有するグリップ手段(6)とを有し、
前記バランスばねスタッド(7)は円錐側面状の輪郭(73)を有し、前記弾性アーム(62)は前記輪郭(73)の円錐側面の傾斜に垂直な力を与え、これによって前記バランスばねスタッド(7)を鉛直方向(z軸方向)に押し込むとともにそのハウジング(53、53’、514)内にxy平面に沿った方向に押し込むよう構成され、
少なくとも前記グリップ手段は、前記保持手段に対して動くことができ、これによって、前記バランスばねスタッドをそのハウジング内にロックする
ことを特徴とするアセンブリー。
【請求項2】
前記保持手段(5)及び前記グリップ手段(6)は、隆起(8)に回転自在にマウントされるように構成する環状材の形態である
ことを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項3】
前記保持手段は、2つの延長部分(52)が設けられたバランスばねスタッド受容手段(51)を有する保持リング(50)の形態であり、
前記延長部分(52)は、前記保持リング(50)から突き出ており、ハウジング(53)を形成してこのハウジング(53)内に前記バランスばねスタッド(7)を収容することができる
ことを特徴とする請求項2に記載のアセンブリー。
【請求項4】
前記保持手段は、1つの延長部分(52’)が設けられたバランスばねスタッド受容手段(51)を有する保持リング(50)の形態であり、
前記延長部分には、ハウジング(53)を形成する開口が設けられており、
このハウジング(53)内に前記バランスばねスタッド(7)を収容することができる
ことを特徴とする請求項2に記載のアセンブリー。
【請求項5】
前記グリップ手段は、弾性アーム(62)を有するグリップリング(60)であって前記グリップリングの曲がりの方向と実質的に同じ方向に前記グリップリング(60)から前記弾性アーム(62)が延在しているようなグリップリング(60)の形態であり、
これによって、前記グリップリング(60)と前記弾性アーム(62)の間に空間(64)を形成し、
この空間(64)によって、前記バランスばねスタッドが前記空間に入ることができ、
前記バランスばねスタッドがそのハウジング(53、53’)に前記弾性アームによって押し込まれることが可能になる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のアセンブリー。
【請求項6】
前記保持手段は、グリップ手段の一方の要素を構成する弾性アーム(512)を有する保持リング(500)であって前記弾性アーム(512)が前記リングから延在し、前記バランスばねスタッドを収容するハウジング(514)を前記リングとともに形成するような保持リング(500)の形態である
ことを特徴とする請求項2に記載のアセンブリー。
【請求項7】
前記グリップ手段は、グリップ手段の他方の要素を構成するスタッド(602)が配置されるフレーム(604)を有するグリップリング(600)の形態であり、
前記フレームと前記スタッド(602)は、前記保持リング(500)に対する前記グリップリングの回転にともなって回転し、これによって、前記スタッド(602)前記弾性アーム(512)に接触して応力を発生させるよう構成して、前記バランスばねスタッド(7)がロックされる
ことを特徴とする請求項6に記載のアセンブリー。
【請求項8】
前記フレーム(604)は、溝(612)が設けられた構造を有し
前記溝は、前記弾性アームを入れることができ、
前記保持リングに対する前記グリップリングの回転によって、前記弾性アームが変形して、前記バランスばねスタッド(7)をロックするように構成している
ことを特徴とする請求項に記載のアセンブリー。
【請求項9】
前記フレーム(604)は、互いに横材(606)によって接続された少なくとも2つの半径方向に延在するアーム(605)を有し、
前記バランスばねスタッドが前記アームと接触をするリスクなしでロックされることが可能になるように、前記少なくとも2つのアームは離れている
ことを特徴とする請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項10】
前記グリップリング及び前記保持リングはそれぞれ、半径方向に延在する位置合わせ用延長材(56、66)を有し、
ピンセットタイプの工具によって前記位置合わせ用延長材(56、66)をつかんで前記グリップリング及び前記保持リングを回転させることが可能になっている
ことを特徴とする請求項5又は7に記載のアセンブリー。
【請求項11】
前記グリップリング及び前記保持リングの前記位置合わせ用延長材(56、66)どうしは、前記バランスばねスタッドがロックされて前記位置合わせ用延長材(56、66)どうしを同時につかむことができるようになっているときに、対面するように構成しており、これによって、前記バランスコックに対する前記バランスばねスタッドの位置の角度的調整を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項12】
伝達歯車列にエネルギーを供給するエネルギー源がマウントされている主板を有する計時器用ムーブメントであって、
この歯車列は、パルスがばね仕掛けバランスによって提供されるエスケープシステムのパレットレバーによってその回転が統制される回避車を介してエスケープシステムと連係しており、
前記バランスばねは、請求項1〜11のいずれかに記載のアセンブリーにマウントされている
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスばねスタッド及びスタッドホルダーを有する計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式腕時計において、ばね仕掛けバランスデバイスを有する規制メンバーを用いることはよくある。伝統的に、バランスばねの内側端は、バランススタッフに設けられたコレットに取り付けられている。バランスばねの内側端を取り付けて位置合わせするために、バランスばねスタッドを収容するスタッドホルダーを用いることが知られている。これは、クランプ用ねじを用いて、スタッドホルダー内にて係合しているバランスばねの部分に対してスタッドをクランプする。
【0003】
このようなアセンブリーにおいて、スタッドホルダーは、伝統的に、バランススタッフの一方の端を取り付けるために用いられるバランスコックに取り付けられる。バランスコックは、バランススタッフのための緩衝デバイスを装備したセッティングを組み入れるように構成している。既知のスタッドホルダーは、2つのリングを用いる。これらの2つのリングは、セッティングにおいて回転可能に動くことができるようにマウントされる。リングはそれぞれ、音叉ないしY字の形の延伸部を有し、このY字形のフォークがハウジングを形成する。
【0004】
そして、中にバランスばねスタッドが収容されるように第1のリングが用いられ、ねじによって固定される。他方で、中に調整要素を収容するように第2のリングが用いられる。この調整要素によって、バランスばねの制限を調整してレートを調整して、バランスばねの周波数を調整することが可能になる。
【0005】
しかし、このようなデバイスには、アフターセールスサービスによってメンテナンスないし修理作業が行われる際に使用が複雑になるという課題がある。実際に、多くの部品があること及び適所に保持するためにバランスばねスタッドをねじ込むことが必要であることによって、このような作業が難しくなり、調整ステップが後で必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、バランスばねスタッドの組み立て又は分解を単純化して良好に保持することができる計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリーを提案することによって、従来技術の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリーであって、バランスばねスタッドと、及びバランスばねスタッドホルダーが固定されるバランスコックとを有し、前記スタッドホルダーは、前記バランスばねスタッドを中に収容するハウジングが設けられた保持手段と、及びグリップ手段とを有し、少なくとも前記グリップ手段は、前記保持手段に対して動くことができ、これによって、前記バランスばねスタッドをそのハウジング内にロックするものに関する。
【0008】
本発明の利点は、アフターセールスサービス時に「ケイ素製バランスばね/バランスコック」アセンブリーを容易に分解することが可能になるということである。グリップ手段によってバランスばねスタッドをアンロックすることによって、バランスばねを損傷させるリスクなしで、「バランスコック/バランスばねスタッドホルダー/ショックアプソーバー」部分から「バランス/バランスばね/バランスばねスタッド」部分を単純に取り除くことができる。
【0009】
第1の好ましい実施形態において、前記保持手段及び前記グリップ手段は、隆起に回転自在にマウントされるように構成する環状材の形態である。
【0010】
第2の好ましい実施形態において、前記保持手段は、2つの延長部分が設けられたバランスばねスタッド受容手段を有する保持リングの形態であり、前記延長部分は、前記保持リングから突き出ており、ハウジングを形成してこのハウジング内に前記バランスばねスタッドを収容することができる。
【0011】
第3の好ましい実施形態において、前記保持手段は、前記保持リングから突き出る1つの延長部分を有するバランスばねスタッド受容手段を有する保持リングの形態であり、前記延長部分には、ハウジングを形成する開口が設けられており、このハウジング内に前記バランスばねスタッドを収容することができる。
【0012】
第4の好ましい実施形態において、前記グリップ手段は、弾性アームを有するグリップリングであって前記グリップリングの曲がりの方向と実質的に同じ方向に前記グリップリングから前記弾性アームが延在しているようなリングの形態であり、これによって、前記グリップリングと前記弾性アームの間に空間を形成し、この空間によって、前記バランスばねスタッドが前記空間に入ることができ、前記バランスばねスタッドがそのハウジングに前記弾性アームによって押し込まれることが可能になる。
【0013】
第5の好ましい実施形態において、前記保持手段は、弾性アームを有する保持リングであって前記弾性アームが前記リングから延在し、前記バランスばねスタッドを収容するハウジングを前記リングとともに形成するような保持リングの形態である。
【0014】
第6の好ましい実施形態において、前記グリップ手段は、スタッドが配置されるフレームを有するグリップリングの形態であり、前記フレームと前記スタッドは、前記保持リングに対する前記グリップリングの回転が前記スタッドによって前記弾性アームによって与えられる応力を発生させて、前記バランスばねスタッドアセンブリーがロックされる。
【0015】
第7の好ましい実施形態において、前記グリップ手段は、溝が設けられた構造が配置されるフレームを有するグリップリングの形態であり、前記溝は、前記弾性アームを入れることができ、前記保持リングに対する前記グリップリングの回転によって、前記アームが変形して、前記バランスばねスタッドアセンブリーをロックするように構成している。
【0016】
別の好ましい実施形態において、前記フレームは、互いに横材によって接続された少なくとも2つの半径方向に延在するアームを有し、前記バランスばねスタッドが前記アームと何らかの接触をするリスクなしで適所にセットされロックされることが可能になるように、前記少なくとも2つのアームは離れている。
【0017】
別の好ましい実施形態において、前記グリップリング及び前記保持リングはそれぞれ、半径方向に延在する位置合わせ用延長材を有し、ピンセットタイプの工具によって前記位置合わせ用延長材をつかんで前記グリップリング及び前記保持リングを回転させることが可能になっている。
【0018】
別の好ましい実施形態において、前記グリップリング及び前記フレームの前記アームの前記位置合わせ用延長材は、単一部品のみを形成している。
【0019】
別の好ましい実施形態において、前記グリップリング及び前記保持リングの前記位置合わせ用延長材どうしは、前記バランスばねスタッドがロックされて前記位置合わせ用延長材どうしを同時につかむことができるようになっているときに、対面するように構成しており、これによって、前記バランスコックに対する前記バランスばねスタッドの位置の角度的調整を行う。
【0020】
添付図面に図示されている本発明の少なくとも1つの実施形態は、もっぱら例として与えられ、これらには制限されず、これについての下記の詳細な説明を読むことで、本発明の目的、利点及び特徴が明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の斜視図を示している。
図2】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の斜視図を示している。
図3】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の斜視図を示している。
図4】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の断面図を示している。
図5】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の拡大平面図を示している。
図6】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の変種の斜視図を示している。
図7】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の変種の斜視図を示している。
図8】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の変種の斜視図を示している。
図9】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の変種の断面図を示している。
図10】本発明に係る保持アセンブリーの第1の実施形態の変種の拡大平面図を示している。
図11】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の斜視図を示している。
図12】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の斜視図を示している。
図13】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の斜視図を示している。
図14】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の断面図を示している。
図15】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の裏側から見た平面図を示している。
図16】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の変種の斜視図を示している。
図17】本発明に係る保持アセンブリーの第2の実施形態の変種の裏側から見た平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、バランスばねスタッドの組み立て/分解を単純化させる計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリーを提供するという広い観念から生じたものである。
【0023】
図1は、本発明に係る保持又は支持アセンブリー1を示している。このアセンブリー1は、バランスコック2にマウントされており、バランスばねスタッド7の保持のために用いられるバランスばねスタッドホルダー4を有する。
【0024】
本発明に係るバランスばねスタッドホルダー4は、保持手段5及びグリップ手段6を有する。保持手段5は、バランスばねスタッド7を支持するために用いられ、グリップ手段6は、バランスばねスタッド7の位置を保持手段5上にロックするために用いられる。
【0025】
図1〜5に示す第1の実施形態において、保持手段5は、保持リング50の形態である。この保持リング50は、閉じていても開いていてもよく、隆起8上に配置されるような寸法構成を有する。バランスコック2は、ピボットデバイス80を有するように作ることができ、このピボットデバイス80は、ジュエル穴と受け石82及びばね83が設けられたセッティング81の形態であったり、バランススタッフが中で係合する穴85が設けられたスタッド84の形態であったりすることができる。隆起8は、このピボットデバイス80であることができる。この隆起8は環状である。
【0026】
保持リング50は、ピボットデバイス8に圧力ばめされている。すなわち、セッティング80又はスタッド83に圧力ばめされている。保持リング50の鉛直方向の変位を防ぐために、スタッド83又はセッティング80の周部にわたって延在する溝を設けることができる。保持リング50は、さらに、バランスばねスタッド受容手段51を有する。この受容手段51は、保持リング50から外側に平行に延在する突き出ている2つの延長部分52を有する。これらの2つの延長部分52は、互いに離れて配置して、ハウジング空間53を形成する。このハウジング空間53の中に、バランスばねスタッド7を収容することができる。したがって、これらの2つの延長部分は保持リング50から突き出るが、バランスコック2からも突き出ることがわかる。
【0027】
この第1の実施形態において、グリップ手段6は、グリップリング60の形態である。グリップリング60は、閉じていても開いていてもよく、保持リング50のように、ピボットデバイス8に接して配置されるような寸法構成を有する。このようにして、グリップリング60は、ピボットデバイス8に圧力ばめされる。保持リング50の周部と平行な溝であってスタッド83又はセッティング80の周部にわたって延在する溝を設けて、グリップリング60の鉛直方向の変位を防ぐことができる。このようにして、グリップリング60は、保持リング50の上に位置する。グリップリング60は、さらに、弾性アーム62を有する。このアーム62は、グリップリング60から延在しており、自由端63を有する。アーム62は、グリップリング60の曲がりの方向と実質的に同じ方向にグリップリング60から延在している。これによって、グリップリング60とアーム62の間に空間64が形成される。
【0028】
このデバイスを動作させるために、バランスばねスタッド7は、保持リング50のハウジング53内に配置される。そして、グリップリング60は、弾性アーム62の端63がバランスばねスタッド7の近くの方に動くように回転する。弾性アーム62の自由端63は、巧みに、突起65を有し、これによって、バランスばねスタッド7に部分的に接触するように構成している。結果的に、組み立てに責任を負う操作者は、グリップリング60を回転させるときに、わずかな力を加えることになる。この応力の影響の下では、弾性アーム62は、変形して脇に移動する。このことによって、バランスばねスタッド7を挿入するための空間が大きくなる。突起65を備える弾性アーム62の自由端63をバランスばねスタッド7が通り抜けるときに、弾性アーム62は、その安静位置ないし初期位置に戻る傾向がある。この場合、弾性アーム62は、バランスばねスタッドに力を与える傾向がある。スタッド7が保持リング50のハウジング53内にあるので、この弾性アーム62が与える力によって、バランスばねスタッド7の位置をロックすることが可能になる。グリップリング60及び保持リング50は、これらとピボット手段8の間の摩擦がリングの不時の回転を防ぎつつリングの回転を可能にするような寸法構成でなければならない。したがって、グリップ手段6によってバランスばねスタッド7をアンロックすることによって、バランスばねを損傷させるリスクなしで、「バランスコック/バランスばねスタッドホルダー/ショックアプソーバー」部分から「バランス/バランスばね/バランスばねスタッド」部分を単純に取り除くことができる。
【0029】
図4及び5に示す好ましい変種において、バランスばねスタッド7は、バランスばねを頭部72に取り付けることを可能にするような本体71を有する。この頭部72は、本体71よりも直径が大きい円錐側面状の輪郭73を有する。バランスばねスタッドの頭部72を、突き出ている2つの延長部分52上に置くことができる。そして、この円錐側面状の輪郭73にてバランスばねスタッド7と接触する弾性アーム62は、円錐側面の傾斜に垂直な力を与える。これによって、バランスばねスタッド7を、突き出ている2つの延長部分52に対してz軸の方向に押し込み、そして、バランスばねスタッド7のハウジング内にxy平面に沿った方向に押し込む。ハウジング53及び/又はバランスばねスタッド7は、角度的にロックするために平坦な部分を有することができる。
【0030】
図2に示す好ましい変種では、保持リング50及びグリップリング60はそれぞれ、位置合わせ用延長材56、66を有する。このようにして、グリップリング60及び保持リング50にはそれぞれ、半径方向に延在する延長材が設けられており、この延長材があることで、ピンセットタイプの工具によってつかむことが可能になる。巧妙なことに、図3に示すように、これらの延長材56、66は、バランスばねスタッド7がロックされているときに、延長材56、66が対面するように構成している。この構成によって、グリップ手段60と保持手段50を同時に回転させることが可能になる。
【0031】
この図6〜10に示す第1の実施形態の変種では、保持リング50は、バランスばねスタッド受容手段51が、バランスばねスタッド7のためのハウジング53’を形成する開口によって穴を開けられた単一の延長材52’の形態であるように作られる。この場合、グリップリング60は、保持リング50の下に配置され、バランスばねスタッド7の頭部72は、逆円錐側面状の輪郭73’を有する。この変種の構成において、アセンブリーは類似しており、これによって、弾性アーム62がバランスばねスタッド7の円錐側面73’と接触し、円錐側面73’の傾斜に垂直な力が発生する。この力は、バランスばねスタッド7をそのハウジング53’内にZ軸に沿った方向に押し込み、そして、そのハウジング53’内にXY平面に沿った方向に押し込む。ハウジング及び/又はバランスばねスタッドは、角度的ロックを達成するために平坦な部分を有することができる。
【0032】
図11〜15に示す第2の実施形態において、保持手段5は、保持リング500の形態である。保持リング500は、閉じていても開いていてもよく、実質的に環状であるピボットデバイス8に接して配置されるような寸法構成を有する。保持リングは、ピボットデバイス8に圧力ばめされる。すなわち、セッティング80又はスタッド83に圧力ばめされる。スタッド83又はセッティング80の周部にわたって延在する溝を設けて、保持リング500の鉛直方向の変位を防ぐことができる。保持リング500は、さらに、バランスばねスタッド受容手段510を有する。この受容手段510は、弾性アーム512を有し、これは、リング500から延在しており、バランスばねスタッド7を収容するハウジング514をリング500とともに形成している。
【0033】
この第2の実施形態において、グリップ手段6は、グリップリング600の形態である。グリップリング600は、閉じていても開いていてもよく、保持リング500のように、ピボットデバイス8に接して配置されるような寸法構成を有する。このようにして、グリップリング600は、ピボットデバイス8に圧力ばめされる。スタッド83又はセッティング80の周部にわたって保持リング500の周部と平行に延在する溝を設けて、グリップリング600の鉛直方向の変位を防ぐことができる。このようにして、グリップリング600は、保持リング500の上に位置する。
【0034】
グリップリング600は、フレーム604にマウントされるスタッド602を有する。実際に、この第2の実施形態の動作原理によると、このスタッド602を用いて弾性アーム512に応力を与えて、バランスばねスタッド7をロックする。そして、グリップリング600は、スタッド602が弾性アーム512と接触するように回転する。グリップリング600の回転が継続すると、弾性アーム512に与えられる応力がこの弾性アーム512を変形させ、バランスばねスタッド7をロックする。フレーム604によって、スタッド602が中心点から動くことが可能になる。伝統的な手法で、フレーム604は、自由端605’にスタッド602が設けられているアーム604であることができる。スタッド602がフレーム604と一体的であったり、自由端605’に穴が設けられ、この穴の中にスタッド602が配置され固定されることができる。
【0035】
有利な変種において、フレームは、グリップリング600から半径方向に延在する少なくとも2つのアーム605a、605bを有し、これらのアーム605どうしが、棒ないし横材606によって接続されている。棒606に突起が設けられ、この突起にスタッドが配置される。この構成によって、アームを1つのみ有するフレームよりも剛性が良くなる。
【0036】
この図11に示すフレーム構成において、少なくとも2つのアーム605の間の間隔は、バランスばねスタッド7が、グリップリングの回転時に、アームと接触せずにその間隔の間に収容されることができるほど十分に大きくされる。好ましいことに、フレーム604のアーム605のうちの1つは、バランスばねスタッド7がロックされているときに、アーム605が保持リング500の位置合わせ用延長材516に面しているように構成している。したがって、この構成によって、操作者がピンセットによってアーム605と延長材516をつかみ、2つのリング500及び600の角度的位置を変えることが可能になる。したがって、このことによって、バランスばねスタッド7のロックを変更せずに、角度的調整をすることが可能になる。
【0037】
好ましい構成では、フレーム604は、4つのアーム605を有する。第2のアーム605と第3のアーム605の間の間隔は、バランスばねスタッド7を収容することのために選ばれる。第4のアーム605は、延長材516と連係して2つのリング500、600の角度的位置を変更することができるように構成している。
【0038】
バランスばねスタッド7が、バランスばねと頭部720の取り付けを可能にするように構成している本体710を有することを想到することかできる。この頭部720は、円筒状の輪郭730を有している。図14に示すように、本体710には、さらに、弾性アーム512の台を形成する突出部740が設けられている。
【0039】
図16及び17に示す第2の実施形態の変種では、フレーム604は1つのアーム609を有しており、このアーム609の自由端609’は、構造610にて終わっている。この構造610は、ガイド溝と同様な溝612が形成されている部分611の形態である。この溝612の中に、保持リング500の弾性アーム512が収容される。弾性アーム512の張りによって、構造610の溝612の壁のうちの1つと弾性アーム512が、恒久的に接触することが可能になる。結果的に、フレーム604を担持するグリップリング600が回転しているときに、構造610の溝によってガイドされる弾性アーム512が変形する。この変形によって、弾性アーム512がバランスばねスタッド7をつかみ、バランスばねスタッド7の位置をロックすることが可能になる。
【0040】
添付の請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱せずに、上記の本発明の様々な実施形態に対して当業者に明らかな様々な変更及び/又は改善及び/又は組み合わせを行うことができることは明らかである。
【0041】
例えば、バランスばねは、バランスばねスタッドホルダーの寸法よりも小さな直径であることを想到することができる。これによって、バランスばねがバランスばねスタッドホルダーによって保護される。実際に、ケイ素製バランスばねを用いることが一般的になっている。この材料には、有利な反磁性的な特性があるからである。しかし、ケイ素は、過度の衝撃があった場合には壊れてしまう脆弱な材料である。バランスばねがバランスばねスタッドホルダーよりも小さな寸法構成を有するように、バランスばねスタッドホルダー及びバランスばねを構成することによって腕時計が時を刻んでいるときやアフターセールスサービスのときに発生しうるあらゆる衝撃に対してケイ素製バランスばねを保護するようにスタッドホルダーが用いられる。
【符号の説明】
【0042】
1 アセンブリー
2 バランスコック
4 バランスばねスタッドホルダー
5 保持手段
6 グリップ手段
7 バランスばねスタッド
8 隆起
50 保持リング
51 バランスばねスタッド受容手段
52、52’ 延長部分
53、53’、514 ハウジング
56、66 位置合わせ用延長材
60、600 グリップリング
62、512 弾性アーム
64 空間
500 保持リング
602 スタッド
604 フレーム
605 アーム
606 横材
612 溝
図1
図2
図3
図4
図5
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図17