(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(R)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩と(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩のラセミ混合物又はその溶媒和物を含むグリコピロレート水溶液を含有する吸収剤パッド。
pHが、25℃で約4.0〜約5.0であり、グリコピロレート水溶液が、クエン酸、クエン酸ナトリウム、又はその組合せを含む緩衝剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の吸収剤パッド。
(R)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩と(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩のラセミ混合物又はその溶媒和物、約0.15重量%の無水クエン酸、約0.06重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、及び約57〜約59.5重量%の脱水エタノールを含むグリコピロレート水溶液であって、約1%〜約6重量%のグリコピロレートトシル酸塩を含む前記グリコピロレート水溶液を含有する、請求項1に記載の吸収剤パッド。
【発明を実施するための形態】
【0025】
用語「固体形態」は、固体状態の材料のクラス又はタイプを指すのにしばしば使用される。固体形態の1種は「多形」であり、それは、同じ化学式を有するが固体状態の構造が異なる2種又は3種以上の化合物を指す。塩は多形性であり得る。多形が元素である場合、それらは同素体と称される。炭素には、グラファイト、ダイヤモンド、及びバックミンスターフラーレンという周知の同素体がある。活性な薬剤成分(「API」, active pharmaceutical ingredient)などの分子の化合物の多形は、改善された溶解性、溶解速度、吸湿性、及び安定性を含むが、これらに限定されない科学的又は商業的必要性に合う化合物を確認するために、しばしば調製され及び研究される。
【0026】
他の固体形態には、塩を含む化合物の溶媒和物及び水和物が含まれる。溶媒和物は、溶媒分子がAPIなどの別の化合物と合体して結晶構造で存在する化合物である。溶媒が水である場合、該溶媒は水和物といわれる。溶媒和物及び水和物は、化学量論的であることも非化学量論的であることもある。一水和物は、1個の水分子が、単位胞中に、例えば、APIに関して化学量論的に存在するときに使用される用語である。
【0027】
特定の固体形態の存在を同定するために、当業者は、典型的には、適切な分析技法を使用して、分析のための形態に関するデータを収集する。例えば、固体形態の化学的同一性は、しばしば
13C−NMR又は
1H−NMR分光法などの溶液状態の技法を用いて決定することができ、そのような技法は、水和物又は溶媒和物における、それぞれ水又は溶媒などの「ゲスト」の化学量論及び存在を決定するのにも有用であり得る。これらの分光学的技法は、例えば、単位胞中に水又は溶媒が存在しない固体形態(しばしば「無水物」と称される)を、水和物又は溶媒和物と識別するためにも使用することができる。
【0028】
溶液状態の分析技法は、固体状態について物質としての情報を提供せず、したがって、例えば、固体状態の技法は、無水物などの固体形態の間を識別するために使用され得る。
無水物及び水和物を含む固体形態を分析して特徴づけするために使用され得る固体状態の技法の例には、単結晶X線回折、X線粉末回折(「XRPD」, x-ray powder diffraction)、固体状態の
13C−NMR、赤外線(「IR」)分光法、ラマン分光法、及び示差走査熱量測定(「DSC」, Differential Scanning Calorimetry)、融点、及び高温顕
微鏡観察などの熱的技法が含まれる。
【0029】
多形は、同じ化学構造を共有するが、分子が固体中に充填されている状態が異なる結晶性形態のサブセットである。分析データに基づいて多形を識別することを試みる場合、形態を特徴づけるデータが探される。例えば、化合物の2つの多形(例えば、I型及びII型)がある場合、X線粉末回折ピークを使用して、そのようなピークがII型のパターンには存在しない角度にI型パターンのピークを見出す場合、形態を特徴づけることができる。そのような場合に、I型を表すその単一のピークにより、それをII型から区別して、さらにI型を特徴づけるために役立てることができる。より多くの形態が存在する場合、そのときは同じ分析が他の多形のためにも行われる。したがって、他の多形に対してI型を特徴づけるために、そのようなピークが他の多形のX線粉末回折パターンに存在しない角度でI型のピークを探すことになる。I型を他の知られた多形と識別するピークの集団、又は実際には単一のピークは、I型を特徴づけるために使用され得るピークの集団である。例えば、2本のピークが多形を特徴づけるなら、その場合、これらの2本のピークが、その多形の存在を同定して、それ故、多形を特徴づけるために使用され得る。当業者は、多形性の多形を特徴づけるために、同じ分析技法を使用する複数の方法を含む多くの方法がしばしばあることを認識するであろう。例えば、3本のX線粉末回折ピークが多形を特徴づけることを見出すこともある。全回折パターンまでの及びそれらを含む追加のピークも、必ずしも必要ではないが、多形を特徴づけるために使用することができる。全回折像内の全てのピークが、結晶性形態を特徴づけるために使用され得るが、その代わりに、及び典型的には、本明細書において開示するように、そのような結晶性形態を特徴づけるために、状況に応じて、そのデータのサブセットを使用することもできる。
【0030】
無水物を水和物と識別するために、データを分析する場合、例えば、2つの固体形態が異なる化学構造を有し、一方は単位胞中に水を有し、他方は有しないという事実に依存することができる。したがって、この特徴は、それだけで化合物の形態を識別するために使用することができて、例えば、水和物には存在しないピークを無水物で確認すること又はその逆も必要ではない場合がある。
【0031】
X線粉末回折パターンは、固体形態を特徴づけるために使用される最も一般的に使用される固体状態の分析技法の1つである。X線粉末回折パターンは、x軸に°2θ(回折角度)及びy軸に強度を表すx−yグラフである。このプロット内のピークは、結晶性の固体形態を特徴づけるために使用することができる。ピーク強度は試料の向きに特に敏感であり得るので、データは、しばしば、y軸におけるピークの強度よりもむしろx軸におけるピークの位置により表される(Pharmaceutical Analysis, Lee & Web, pp.255-257 (2003)を参照されたい)。したがって、強度は、固体形態を特徴づけるために当業者によ
って使用されることは通常ない。
【0032】
いかなるデータ測定においてもそうであるように、X線粉末回折データには変動性がある。ピーク強度における変動性に加えて、x軸におけるピークの位置にも変動性がある。しかしながら、この変動性は、特徴づけの目的のためにピークの位置を報告する場合、通常、考慮に入れることができる。x軸に沿ったピークの位置におけるそのような変動性は、数通りの原因に由来する。1つは試料調製から来る。異なった条件下で調製された同じ結晶性材料の試料は、僅かに異なる回折像を生じ得る。粒子サイズ、水分含有率、溶媒含有率、及び配向などの要因は、試料がX線をいかに回折させるかに全て影響する。変動性の別の原因は、測定器のパラメーターに由来する。異なるX線の測定器は、異なるパラメ
ーターを使用して作動し、これらのことが、同じ結晶性固体形態から僅かに異なる回折パターンを生じさせ得る。同様に、異なるソフトウェアパッケージは、X線データを異なるように処理して、これも変動性を生じさせる。変動性のこれらの及び他の原因は、薬学分野における当業者に知られている。
【0033】
変動性のそのような原因が理由で、状況に応じて、提示されるピーク値の0.1又は0.2°2θ以内のデータを表す°2θにおいて、ピーク値の前に「約」という語を使用してX線回折ピークを列挙するのが普通である。本開示のグリコピロレートトシル酸塩を含むグリコピロレートの固体形態に対応するX線粉末回折データは、熟練した科学者により日常的に較正されて作動される測定器で収集される。したがって、これらのデータと関連する変動性は、±0.2°2θよりも±0.1°2θに近く、実際本発明で使用された測定器ではおそらく0.1未満と予想される。しかしながら、当業者によりどこか他所で使用される測定器は、そのように保守されていないこともあることを考慮に入れて、例えば、本明細書において挙げた全てのX線粉末回折ピークは、±0.2°2θのオーダーの変動性を以て報告されており、本明細書において開示されたときはいつでもそのような変動性を以て報告されることが意図され、本明細書においては、分析出力がその文字盤でたとえそれより高い精度を示唆することがあっても、小数点以下1桁の有意の数字で報告する。
【0034】
単結晶のX線回折は、結晶中における原子の位置及び結合についての3次元構造の情報を提供する。しかしながら、結晶からそのような構造を得ることは、例えば、不十分な結晶サイズ又は単結晶X線回折のために十分な品質の結晶を調製することの困難という理由で、常に可能である又は可能性があるとは限らない。
【0035】
X線粉末回折データも、状況によっては、結晶性構造の結晶学的単位胞を決定するために使用することができる。これが行われる方法は、「指数付け」と呼ばれる。指数付けは、適切なX線粉末回折パターンにおけるピーク位置と矛盾しない結晶学的単位胞のサイズ及び形状を決定する方法である。指数付けは、各ピークについて3つの単位胞長さ(a、b、c)、3つの単位胞角度(α、β、γ)、及び3つのミラー指数ラベル(h、k、l)について解を提供する。長さは、典型的にはオングストローム単位で、角度は度単位で報告される。ミラー指数ラベルは単位のない整数である。好結果の指数付けは、試料が1つの結晶相で構成され、それ故、結晶相の混合物ではないことを示す。
【0036】
IR分光法は、固体形態を特徴づけるために、X線粉末回折と一緒に又は別に使用され得る別の技法である。IRスペクトルにおいては、吸収された光が、グラフのx軸に「波数」(cm
−1)の単位で、y軸上の強度と共にプロットされる。IRピークの位置における変動も存在し、試料条件並びにデータ収集及び処理に基づき得る。本明細書において報告されるIRスペクトルにおける典型的な変動性は、プラス又はマイナス2.0cm
−1のオーダーである。したがって、IRピークを参照する場合、「約」という語の使用は、この変動性を含むことを意図され、本明細書において開示される全てのIRピークは、そのような変動性をもって報告されることが意図される。
【0037】
熱的方法は、固体形態を特徴づける別の典型的な技法である。同じ化合物の異なる多形は、しばしば異なる温度で溶融する。したがって、毛細管融点、DSC、及び高温顕微鏡観察などの方法単独により、又はX線粉末回折、IR分光法、又は両方などの技法との組合せで測定された多形の融点は、多形又は他の固体形態を特徴づけるために使用することができる。
【0038】
いかなる分析技法とも同様に、融点決定も変動しやすい。変動性における共通の原因は、測定器の変動性に加えて、融点が測定される試料内の他の固体形態又は他の不純物の存
在などの束一性に基づく。
【0039】
本明細書において使用する、用語「グリコピロレート」は、同じ塩のグリコピロニウムカチオンを指す。言い換えれば、本明細書において使用されるとき、グリコピロレート及びグリコピロニウムは互換的に使用される。例えば、グリコピロレートトシル酸塩及びグリコピロニウムトシル酸塩は、同じ塩を指す。
【0040】
本発明は、それらの溶液及び種々の固体形態を含むグリコピロレート又はそれらの溶媒和物のトシル酸塩、グリコピロレートトシル酸塩を調製する方法、及びグリコピロレートトシル酸塩の治療的使用を提供する。
【0041】
「グリコピロレートトシル酸塩」により、「3−(2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩」としても知られる3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチル−ピロリジニウムトシル酸塩という化学名を有するグリコピロレートのトシル酸塩又はグリコピロニウムのトシル酸塩、及び下に示す構造:
【0044】
さらに、本明細書において使用する用語「グリコピロレートトシル酸塩」は、例えば、特定のジアステレオマーを含むグリコピロレート出発材料(例えば、R,SジアステレオマーとS,Rジアステレオマーの混合物であった、本発明で使用された臭化グリコピロレート)から生ずるグリコピロレートトシル酸塩などと明示的に又は暗に別の意味に特定されない限り、下にリストを示す4つのジアステレオマー:
(R)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩;
(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩;
(R)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩;及び
(S)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩
のいかなる1つ並びに該ジアステレオマーの2つ、3つ、又は4つのいかなる混合物も含む。
【0045】
一実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(R)−3−((S)−2
−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩である。別の実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩である。別の実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(R)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩である。別の実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(S)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩である。さらに別の実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(R)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩と(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩のラセミ混合物である。さらに別の実施形態において、「グリコピロレートトシル酸塩」は、(R)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩と(S)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩のラセミ混合物である。「グリコピロレートトシル酸塩」の水和物などの溶媒和物は、溶媒和物、例えば、上でリストに挙げた4つのジアステレオマーのいかなる1つ又は該ジアステレオマーの2つの、3つの若しくは4つのいかなる混合物の水和物であってもよい。「トレオ」グリコピロレートトシル酸塩を参照する場合、当業者は、それがR,SジアステレオマーとS,Rジアステレオマーの混合物を指すことを認識するであろう。したがって、トレオグリコピロレートトシル酸塩は、(R)−3−((S)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩と(S)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)−1,1−ジメチルピロリジニウム4−メチルベンゼンスルホン酸塩のラセミ混合物を指す。
【0046】
本発明は、同位体による置換をさらに含むと理解されるべきである。例えば、重水素化されたグリコピロレートは、グリコピロレートの定義内に含まれる。
【0047】
本開示の一実施形態において、アニオンが安息香酸イオン、エジシル酸イオン、シュウ酸イオン、硫酸水素イオン、及びトシル酸イオンから選択される、水和物及び溶媒和物を含むグリコピロレートの塩が提供される。さらなる実施形態において、アニオンが、安息香酸イオン、エジシル酸イオン、シュウ酸イオン、硫酸水素イオン、及びトシル酸イオンから選択される各塩の多形、水和物、溶媒和物、対応する非晶質形態、及びそれらの共結晶を含むグリコピロレートの固体塩が提供される。
【0048】
さらなる実施形態において、グリコピロレート安息香酸塩の結晶性塩が提供される。
図12のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、結晶性グリコピロレート安息香酸塩の一実施形態を特徴づけるために使用できる。ピークのより小さいサブセットが、結晶性グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用することができる。例えば、約8.0、11.8、16.1、17.8、18.8、20.1、又は23.8°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、結晶性グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用することができる。例えば、約8.0°2θ及び16.0°2θにおけるピークは、グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用することができる。別の実施形態において、
図13に示したような約79℃におけるDSCの吸熱は、結晶性グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用することができる。X線データとDSCデータの組合せも、グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用することができる。
例えば、約8.0、11.8、16.1、17.8、18.8、20.1、又は23.8°2θにおけるピークの1又は2以上、例えば、約8.0°2θ及び18.8°2θにおけるピークなどが、約79℃におけるDSCの吸熱と一緒に、グリコピロレート安息香酸塩を特徴づけるために使用できる。
【0049】
追加の実施形態において、ジグリコピロレートエジシル酸塩の結晶性塩が提供される。
図14のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、結晶性ジグリコピロレートエジシル酸塩の一実施形態を特徴づけるために使用できる。ピークのより小さいサブセットが、結晶性ジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.2、9.2、10.4、11.2、12.9、15.3、17.9、18.6、20.9、22.3、又は23.7°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、結晶性ジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約11.2及び17.9°2θにおけるピークが、ジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。別の実施形態において、
図15に示したような約103℃におけるDSCの吸熱が、結晶性ジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。X線データとDSCデータの組合せも、ジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。それに加えて、例えば、約5.2、9.2、10.4、11.2、12.9、15.3、17.9、18.6、20.9、22.3、又は23.7°2θにおけるピーク、例えば約11.2及び17.9°2θにおけるピークの1又は2以上が、約103℃におけるDSCの吸熱と一緒にジグリコピロレートエジシル酸塩を特徴づけるために使用できる。
【0050】
さらなる実施形態において、グリコピロレートシュウ酸塩の結晶性塩が提供される。
図16のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、結晶性グリコピロレートシュウ酸塩の一実施形態を特徴づけるために使用できる。ピークのより小さいサブセットが、結晶性グリコピロレートシュウ酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、例えば、約5.0、8.4、10.7、又は12.1°2θにおけるいかなるピークの1又は2以上も、結晶性グリコピロレートシュウ酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.0及び8.4°2θにおけるピークが、グリコピロレートシュウ酸塩を特徴づけるために使用できる。
【0051】
追加の実施形態において、グリコピロレート硫酸水素塩の結晶性塩が提供される。
図17のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、結晶性グリコピロレート硫酸水素塩の一実施形態を特徴づけるために使用できる。ピークのより小さいサブセットが、結晶性グリコピロレート硫酸水素塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.6、13.1、14.5、17.2、18.2、19.9、20.2、21.4、21.6、22.7、又は28.9°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、例えば、結晶性グリコピロレート硫酸水素塩を特徴づけるために使用することができる。例えば、約5.6及び13.1°2θにおけるピークが、グリコピロレート硫酸塩を特徴づけるために使用できる。別の実施形態において、
図18に示したような約160℃におけるDSCの吸熱及び/又は約169℃における第2の吸熱が、結晶性グリコピロレート硫酸水素塩を特徴づけるために使用できる。X線データとDSCデータの組合せも、グリコピロレート硫酸水素塩を特徴づけるために使用できる。例えば、それに加えて、約5.6、13.1、14.5、17.2、18.2、19.9、20.2、21.4、21.6、22.7、又は28.9におけるピーク、例えば、約5.6及び13.1°2θにおけるピークなどの1又は2以上が、約160℃におけるDSCの吸熱又は約169℃における第2の吸熱又は両方と一緒に、グリコピロレート硫酸水素塩を特徴づけるために使用できる。
【0052】
さらなる実施形態において、グリコピロレート酢酸塩の結晶性塩が提供される。
図22のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、結晶性グリコピロレート酢酸塩の一
実施形態を特徴づけるために使用できる。ピークのより小さいサブセットが、結晶性グリコピロレート酢酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、例えば、約5.2、10.4、10.8、11.3、12.6、15.4、17.5、19.1、又は23.6°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、結晶性グリコピロレート酢酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.2及び11.3°2θにおけるピークが、グリコピロレート酢酸塩を特徴づけるために使用できる。
【0053】
別の実施形態において、結晶性グリコピロレートトシル酸塩一水和物が提供され、本明細書においては、D型グリコピロレートトシル酸塩又はD型又は結晶性グリコピロニウムトシル酸塩一水和物とも称される。D型グリコピロレートトシル酸塩の典型的な調製は、本明細書における実施例8及び9を含む。その結晶構造に基づく、D型グリコピロレートトシル酸塩のORTEP図面を、
図1に示す。D型グリコピロレートトシル酸塩の化学構造は、下の式Iに示す:
式I
【0055】
D型グリコピロレートトシル酸塩に対応するXRPDパターンを
図1に表す。単斜D型グリコピロレートトシル酸塩の結晶構造は、表1に示した結晶データ及び取得パラメーターと共にここで示す。
【0057】
D型グリコピロレートトシル酸塩は、空間群P2
1/nで単斜であることが見出された。150Kで、計算された密度は、1立方センチメートル当たり1.294グラムである
ことが見出された。小数点以下2桁の有意の数字で、単位胞の寸法は:aは約8.87Åに等しく;bは約11.58Aに等しく;及びcは約25.53Aに等しく、対応する単位胞の角度は、α=90.00°、β=96.9°、及びγ=90.00°であると決定された。D型単位胞は、単位胞中にグリコピロレートのR,S及びS,Rジアステレオマーの両方を含むラセミであることが見出された。
【0058】
図2のパターンと実質的に同じパターンが、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。
図2において同定されたピークのより小さいサブセットが、代わりに、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約6.9、10.3、12.6、13.7、14.9、15.3、15.7、16.4、17.7、18.2、又は20.6°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約6.9又は10.3又は12.6、又は20.6°2θにおける単一のピークが、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。別の例において、約6.9及び10.3°2θにおけるピークが、D型グリコピロレートを特徴づけるために使用できる。さらなる例において、約6.9、10.3、及び12.6°2θにおけるピークが、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。さらに別の例において、約10.3及び12.6°2θにおけるピークが、D型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づける。表2に、
図2から選択されるピークを同定してある。完全を期して強度が提供される。
【0060】
さらに、D型グリコピロレートトシル酸塩は、C型グリコピロレートトシル酸塩及び脱水型のD型グリコピロレートトシル酸塩から、D型の単位胞中における水の存在により識別可能であり、したがって特徴づけることができる。
【0061】
D型グリコピロレートトシル酸塩は、
図3におけるIRスペクトルによっても特徴づけることができる。IR分光法のみを検討する場合、IRスペクトル全体をD型グリコピロ
レートトシル酸塩を特徴づけるために使用することができ、又はスペクトルのサブセットを同様に使用することもできる。例えば、約1734、1196、1125、1036、1013及び682cm
−1におけるいかなるピークの1又は2以上も、又はその他を単独で又は組合せでD型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用することができる。
図3におけるIRスペクトルから選択されるピークを下の表3に示す。
【0063】
D型グリコピロレートトシル酸塩は、ここで示したIR及びXRPDデータの両方により特徴づけることができる。例えば、D型グリコピロレートトシル酸塩は、例えば、約6.9、10.3、12.6、13.7、14.9、15.3、15.7、16.4、17.7、18.2、又は20.6°2θから選択される1又は2以上のXRPDピーク及び、例えば、約1734、1196、1125、1036、1013、及び682cm
−1から選択されるIRピークの1又は2以上により特徴づけることができる。
【0064】
D型は、数通りの方法により調製することができる。1つの方法では、臭化グリコピロレートが、トシル酸の銀塩などの金属塩で処理されてグリコピロレート塩を形成する。特に、D型グリコピロレートトシル酸塩は、適切な溶媒中でAgトシル酸塩をグリコピロレート−X(Xはハロゲン化物である)を用いて処理してスラリーを形成させるステップ;スラリーから固体を除去して溶液を得るステップ;該溶液を凍結乾燥して固体を形成させるステップ、該固体を結晶化溶媒に溶解するステップ;及び結晶化溶媒を除去してD型グ
リコピロレートトシル酸塩を形成させるステップにより調製することができる。適切な溶媒は、Agトシル酸塩をグリコピロレート−Xで処理するときに、スラリーを生じさせるものである。適切な溶媒の例は、イソプロパノールなどのアルコールである。結晶化溶媒は、凍結乾燥段階後に生じた十分な固体を溶解して、結晶化溶媒が除去されたときに、D型グリコピロレートが生ずる固体であるような溶媒、又はそれらの混合物である。結晶化溶媒の例は、アセトニトリルと水の混合物である。実施形態は、Xがヨウ化物又は臭化物などのハロゲン化物である場合を含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、結晶化溶媒は、溶液中において凍結乾燥後に得られた固体の温度を下げて、溶媒をデカントすることにより除去される。これらの及び他の実施形態においては、トルエンなどの逆溶媒が、溶解された固体を含有する溶液に添加される。
【0066】
D型グリコピロレートトシル酸塩は、グリコピロレート−Y(Yは有機アニオンである)及びp−トルエンスルホン酸を適切な溶媒中で処理することによっても調製することができる;即ち、溶媒を除去して固体を形成させ、固体を結晶化溶媒に再溶解して溶液を形成させて、結晶化溶媒を除去してD型グリコピロレートトシル酸塩を形成させる。Yの例は酢酸イオンである。
【0067】
幾つかの実施形態においては、トルエンなどの逆溶媒が、溶解された固体を含有する溶液に添加される。
【0068】
米国特許出願第20100276329号明細書に開示されたように、臭化グリコピロレートは、臭化グリコピロレートの溶液を含有するウェットティッシュを使用することなどにより多汗症を治療するために使用することができる。グリコピロニウムは、臭化物又はトシル酸塩などの別の塩のいずれかとして送達されたときに、インビトロでM3ムスカリン様アセチルコリン受容体に対する同等の結合親和性を有するので、活性な臨床的部分は臭化物塩のグリコピロレートカチオン(グリコピロニウム)である。1つの研究において、多汗症に悩む患者が、臭化グリコピロレート調製物に基づいて2%及び4%のグリコピロレートを含有する製剤で治療された。この研究中に、患者において腋窩の発汗が減少したことが観察され、効力応答において用量に依存する傾向も観察された。そのような用量依存性は、グリコピロレートの抗ムスカリン様活性と矛盾しない。したがって、グリコピロレートトシル酸塩は、グリコピロレートトシル酸塩を含有する局所製剤を投与するなどにより、患者における多汗症を治療するために使用することもできる。局所製剤により意味するものは、グリコピロレートトシル酸塩を含むか又は含有する材料又は製剤であり、それは、グリコピロレートトシル酸塩を患者に送達するために使用することができて、グリコピロレートトシル酸塩の薬学的に有効な量を含む。多くの実施形態において、グリコピロレートトシル酸塩はトレオグリコピロレートトシル酸塩である。局所製剤の例には、溶液剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、クリーム基剤、パッチ剤、ペースト剤、洗浄剤、ドレッシング材、マスク、ガーゼ、包帯、綿棒、ブラシ、又はパッドが含まれるが、これらに限定されない。局所製剤の適用は、用量又は放出速度を制御することにより制御することができる。用量は、トレオグリコピロレートトシル酸塩を、例えば、適当な媒体に溶解するか又は分配することにより制御することができる。これらの及び他の用量を制御する製剤が、局所製剤から特定の単位用量、計量された用量、又は複数の用量などの制御された用量を送達するために使用できる。
【0069】
一実施形態において、該局所製剤は吸収剤パッドである。そのような実施形態において、そのような吸収剤パッドは、溶液剤などの別の局所製剤を含有することができる。本明細書において使用される、吸収剤パッドと不織布のウェットティッシュとは互換性であり、同じ意味を有する。別の実施形態においては、溶液中にトレオグリコピロレートトシル酸塩を含有する吸収剤パッドが、多汗症を治療するために使用できる。さらに、グリコピ
ロレート安息香酸塩、エジシル酸塩、シュウ酸塩、又は硫酸水素塩の1又は2以上を溶液中に含有するパッド又はウェットティッシュも、患者における多汗症を治療するために同様に使用することができる。別の実施形態において、トレオグリコピロレートトシル酸塩の薬学的に許容される溶液剤は局所製剤である。
【0070】
別の実施形態において、結晶性グリコピロレートトシル酸塩無水物が開示され、本明細書においてはC型グリコピロレートトシル酸塩又はC型とも称される。C型グリコピロレートトシル酸塩の典型的調製物は、本明細書における実施例11、12、及び13を含む。
【0071】
C型グリコピロレートトシル酸塩に対応するX線粉末回折パターンを
図4に示す。C型グリコピロレートトシル酸塩に対応する赤外線スペクトルは、
図5に示す。C型は、単位胞の寸法を決定するために指数付けされた。指数付けの解を
図6に示す。
【0072】
図4のパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンが、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。
図4で同定されたピークのより小さいサブセットが、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.5、11.0、11.8、13.9、14.9、17.8、19.6、20.4、21.6及び22.1°2θにおけるピークのいかなる1又は2以上も、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。例えば、約5.5又は11.0又は14.9°2θにおける単一のピークが、又はそれらの3つのいかなる組合せも、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。別の例においては、約5.5及び11.0°2θにおけるピークが、C型グリコピロレートを特徴づけるために使用できる。さらなる例においては、約5.5、11.0、及び14.9°2θにおけるピークが、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。表4に、
図4から選択されるピークを同定してある。さらに、C型グリコピロレートトシル酸塩は、D型グリコピロレートトシル酸塩から識別可能であり、その理由は、C型は単位胞中に水を欠くからである。強度は、完全性のために提供される。
【0074】
C型グリコピロレートトシル酸塩も、
図5におけるIRスペクトルにより特徴づけることができる。IR分光法のみを検討する場合、IRスペクトル全体が、C型グリコピロレ
ートトシル酸塩を特徴づけるために使用でき、又は該スペクトルのサブセットも同様に使用できる。例えば、約1733、1236、1211、1198、1186、1177、1120、1032、1008、及び682cm
−1又はその他におけるピークのいかなる1又は2以上も、単独で又は組合せでC型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。
図5中のIRスペクトルから選択されるピークを、下の表5に示す。
【0076】
C型グリコピロレートトシル酸塩は、ここで示されたIR及びXRPDデータの両方により特徴づけることができる。例えば、C型グリコピロレートトシル酸塩は、例えば、約5.5、11.0、11.8、13.9、14.9、17.8、19.6、20.4、21.6、及び22.1°2θから選択される1又は2以上のXRPDピーク及び例えば、1733、1236、1211、1198、1186、1177、1120、1032、1008、及び682cm
−1から選択されるIRピークの1又は2以上により特徴づけることができる。
【0077】
C型は、その熱的特性によっても特徴づけることができる。例えば、C型は、Tzero(
商標)皿タイプの機器構成を用いて、毎分10℃の加熱速度で−30℃から250℃まで測定したとき、約168℃で溶融の吸熱を示す。
【0078】
C型は、そのDSC温度記録図単独で又はX線粉末回折データ、IRデータ、又は両方との組合せにより特徴づけることができる。例えば、C型グリコピロレートトシル酸塩は、約168℃における吸熱を有するDSC温度記録図、及び
図4のX線粉末回折パターン
及び
図5のIRスペクトルにより特徴づけることができる。しかしながら、DSCを使用する場合、C型を特徴づけるためにこれらのデータの全てを使用する必要はない。例えば、約5.5°2θにおける単一のピーク及び約168℃におけるDSCの吸熱が、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる(
図7を参照されたい)。別の例において、約168℃におけるピーク及び約1733cm
−1におけるIRピークが、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。さらに別の例において、168℃における吸熱、約5.5°2θにおけるX線粉末回折ピーク、及び約1733cm
−1におけIRピークが、C型グリコピロレートトシル酸塩を特徴づけるために使用できる。
【0079】
C型は、D型を脱水することにより調製することができる。あるいは、C型は、グリコピロレート塩を、例えば、約50℃などに昇温して溶解することにより調製することもできる。該溶液を室温にゆっくり冷却し、続いて真空濾過してアセトンなどの適切な有機溶媒で洗浄すると、その結果C型が形成される。
【0080】
さらなる実施形態において、脱水型のD型が提供される。脱水D型の典型的調製には、本明細書における実施例10が含まれる。そのような一実施形態において、今後本明細書において脱水D型と称される、水が単位胞中に存在しない脱水型のD型が提供される。脱水D型のX線粉末回折パターンは、
図8で示す。脱水D型及びD型を示す回折パターンの重ね書きを、
図9に示す。
【0081】
脱水D型に対するPawley精密化による指数付けの解が
図10に示され、やはりPawley精密化によるD型の指数付けの解と、水の喪失と整合して小さい単位胞を生ずる体積減少を除いて、実験変動内で同じ比率である単位胞を示す(
図11)。
図11からの指数付けの解は、それぞれ、表1に示す単結晶の検討(150Kで実施される)のパラメーターc、b、及びaに対応するパラメーターa、b、及びcを提示する。
【0082】
D型及び脱水D型からの重ね書きパターンは、これら2つの形態の間に若干のずれがあることを示し、それは下の表6に示す選択されたミラー指数についてのピーク位置の比較でも見ることができる。D型と脱水D型の間のミラー指数における差により、それらが異なる固体形態であることが確認される。
【0084】
脱水D型は、D型は一水和物であるのに対してそれが結晶水を欠くのでD型からさらに識別可能であり、また脱水D型(無水物)のピークはC型(無水物)におけるピークと実
質的に異なるのでC型から識別可能である。例えば、表6が示すように、脱水D型は約6.75°2θにピークを有し、それに対してC型から最も近いピークは、約6.30°2θにあり、0.45°2θの差がある。それに加えて、C型についての指数付けの解は、単位胞が三斜であることを示し、それに対して脱水D型の単位胞は単斜系である。
【0085】
実施形態の別のシリーズにおいて、各々脱水D型と一水和物D型の間で含水率が異なる可変の水和物が提供される。そのような実施形態は、
図9に1例で例示したように、脱水D型とD型の間で含水率の連続を示す。中間の含水率を有する他の材料は、D型と脱水D型の中間であるピークを生ずるX線粉末回折パターンを一般的に示すと予想される。
【0086】
さらなる実施形態において、非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、
図19と実質的に同じ図を示すX線粉末回折パターンを有する。別の実施形態において、本発明の非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、約11.6℃のガラス転移開始温度を有する。さらに別の実施形態において、本発明の非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、
図19と実質的に同じX線粉末回折パターンを有し、約11.6℃のガラス転移開始温度を有する。さらなる追加の実施形態において、本発明の非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、非晶質のハローを示すが、
図19のものとは実質的に同様でないX線粉末回折パターンを有する。
【0087】
本発明の非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、非晶質固体と関連する「非晶質のハロー」を含んでいたX線回折により非晶質であることが観察された。そのような材料は、しばしば「X線非晶質」と呼ばれる。グリコピロレートトシル酸塩を記載するときに本明細書で使用する「非晶質」は、例えば、
図19に示されるようなX線粉末回折により決定される非晶質を意味する。X線非晶質形態についてのDSC及び熱重量分析データを
図20に示し、それに対して変調されたDSC温度記録図を
図23に示す。
【0088】
非晶質グリコピロレートトシル酸塩は、標準的な大気の条件に曝したときに容易に潮解する、極端に吸湿性であることが見出された。それに加えて、極端に低いガラス転移が、グリコピロレートの非晶質形態を首尾よく製剤化することを困難にする。しかしながら、本出願人は、グリコピロレートトシル酸塩の固体分散体を調製することにより、ガラス転移温度を上げて、潮解の起こりやすさを減少させることができた。
【0089】
固体分散体は、凍結乾燥及び噴霧乾燥を含む当技術分野において知られた多数の異なる方法で調製することができる。本発明において、固体分散体は全て凍結乾燥により創出した。本発明において調製された固体分散体は、実施例で示すが、グリコピロレートトシル酸塩の溶液と賦形剤の溶液とを、両方の構成成分が可溶である1又は2以上の溶媒中で合わせることにより調製することができる。該溶液は、濾過されてから、溶液が凍結するように冷却することができる。凍結した後、溶液は凍結乾燥機などの中で、分散体を形成するように乾燥される。固体分散体の存在は、例えば、出発材料のスペクトルを分散体と主張されるものと比較することにより、又は構成成分のいずれとも異なるガラス温度を観察することにより検証することができる。混合物は、2つの出発材料のピークの単に直線的な組合せにより明らかであるが、分散体においては、ピークのずれが、異なる材料、即ち固体分散体の調製を示す。固体分散体は、単一のガラス転移温度の存在によっても明らかである。
【0090】
グリコピロレートトシル酸塩及び単糖類、二糖類を含む賦形剤、及び環状エーテル部分を含有する薬学的に許容されるポリマーを含む固体分散体は、凍結乾燥によるなどの適切な条件下で形成することができる。幾つかの実施形態において、そのような固体分散体は、少なくとも約40℃及び少なくとも約60℃を含む少なくとも約25℃のガラス転移温度を有する。これらの及び他の実施形態において、スクロースのグリコピロレートトシル酸塩に対する重量比は、約9:1である。他の実施形態において、上記環状エーテルはヒ
プロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS, hypromellose acetate succinate)などの6員環であり、そのような固体分散体は、少なくとも約40℃及び少なくとも約60℃を含む少なくとも約25℃のガラス転移温度を有する。これらの及び他の実施形態において、HPMCASのグリコピロレートトシル酸塩に対する重量比は、約1:1である。
【0091】
グリコピロレートトシル酸塩及びポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーなどのポリエチレングリコール部分を含有する薬学的に許容されるポリマー、例えばKollicoat(登録商標)IRなど、又はポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビ
ニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、例えばSoluplus(登録商標)などを含む賦形剤を含む固体分散体が、凍結乾燥によるなどの適切な条件下で形成できる。幾つかの実施形態において、そのような固体分散体は、少なくとも約40℃を含む少なくとも約30℃のガラス転移温度を有する。
【0092】
グリコピロレートトシル酸塩とビニルピロリドン部分を含有する薬学的に許容されるポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン又はビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマーなどを含む賦形剤とを含む固体分散体が、凍結乾燥によるなどの適切な条件下で形成できる。幾つかの実施形態において、そのような固体分散体は、少なくとも約35℃を含み、約60℃をさらに含む少なくとも約25℃のガラス転移温度を有する。本発明において使用されるポリビニルピロリドンポリマーの例は、PVPK29/32及びPVPK90を含む。本発明において使用されるビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマーの例は、Kollidon(登録商標)VA64を含む。
【0093】
本明細書において使用する、用語「薬学的に許容されるポリマー」は、未承認であるが承認待ちの、これらのポリマーを含む薬学的製剤中にあるヒトにおける使用を承認されたポリマーを意味する。
【0094】
HPMCASは、例えば、HPMCAS対グリコピロレートが約1対1の重量比で、グリコピロレートトシル酸塩を含む固体分散体を形成するために使用することができる。そのような調製の例は、実施例19に見出すことができる。
図24は、分散体と構成成分部分との間の差を示すスペクトルの領域の重ね書き赤外線スペクトルである。例えば、グリコピロレートトシル酸塩スペクトルにおいて約1211cm
−1にピークが及びHPMCASスペクトルにおいて約1235cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルにおいて、単一のピークが約1228cm
−1に現れて、材料は物理的混合物ではないことを示す。これは、約42℃において単一のガラス転移温度(Tgと称されることもある)を示す
図25で確認される。
【0095】
HPMCASとグリコピロレートトシル酸塩の1:1固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度のいずれか又は両方により特徴づけることができる。例えば、HPMCAS:グリコピロレートトシル酸塩の1:1固体分散体は、約1228cm
−1におけるピーク、約42℃のガラス転移温度、又は両方により特徴づけることができる。
【0096】
スクロースは、例えば、スクロース対グリコピロレートの約9対1の重量比でグリコピロレートトシル酸塩と共に固体分散体を形成するために使用することができる。そのような調製の例は、実施例20に見出すことができる。
図26は、固体分散体の存在を確認する約62℃における単一のガラス転移温度を示す。このガラス転移温度は、分散体を特徴づけるために使用することができる。
【0097】
ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマーは、グリコピロレートトシル酸塩との固体分散体を、例えば、約1:1〜9:1の比で形成するために使用できる。
1:1分散体を調製する例は実施例21に、及び9:1分散体の例は実施例22に見出すことができる。
図27a及び27bは、1:1分散体と構成成分部分の間の差を示すスペクトルの2つの領域の赤外線スペクトルの重ね書きである。例えば、グリコピロレートトシル酸塩のスペクトルには約1107cm
−1及び1322cm
−1にピークが、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマーのスペクトルには約1092cm
−1及び1331cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルには、このとき、単一のピークが約1099cm
−1及び1324cm
−1に現れて、該材料が物理的混合物ではないことをそれぞれ示す。これは、約32℃に単一のガラス転移温度(Tg, glass transition temperature)を示す
図28で確認される。
図29は、9:1分散体の単一のガラス転移温度が約35℃であることを示す。
【0098】
ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールコポリマーとグリコピロレートトシル酸塩の1:1固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度、又は両方により特徴づけることができる。例えば、分散体の赤外線スペクトル中の約1099cm
−1及び1324cm
−1における1又は2以上のピーク、約32℃におけるガラス転移温度、又はそれらの組合せが、固体分散体を特徴づけるために使用できる。9:1の固体分散体は、約35℃におけるガラス転移温度により特徴づけることができる。
【0099】
ポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーは、グリコピロレートトシル酸塩との固体分散体を、例えば、ポリマー対グリコピロレートの約1対1の重量比で形成するために使用することができる。そのような調製の例は、実施例23に見出すことができる。
図30a、30b、及び30cは、分散体と構成成分部分の間の差を示すスペクトルの領域の赤外線スペクトルの重ね書きである。例えば、グリコピロレートトシル酸塩のスペクトルには約938cm
−1、約1190cm
−1、及び約1448cm
−1にピークが、ポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーのスペクトルには約1及び947cm
−1、約1197cm
−1、及び約1442cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルには、単一のピークが約942cm
−1、約1195cm
−1、及び約1445cm
−1に現れて、該材料は物理的混合物ではないことをそれぞれ示す。これは約40℃に単一のガラス転移温度を示す
図31で確認される。
【0100】
ポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーとグリコピロレートトシル酸塩の1:1固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度のいずれか又は両方により特徴づけることができる。例えば、ポリビニルカプロラクタム−ポリ酢酸ビニル−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー:グリコピロレートトシル酸塩の、1:1固体分散体は、約942cm
−1、約1195cm
−1、又は約1445cm
−1における1又は2以上のピーク、約40℃のガラス転移温度、又はそれらの組合せにより特徴づけることができる。
【0101】
ポリビニルピロリドンポリマーは、グリコピロレートトシル酸塩との固体分散体を、例えば、ポリマー対グリコピロレートの約1対1の重量比又は約8対1の重量比で形成するために使用することができる。そのような調製の例は、実施例24、25及び26に見出すことができる。
図32a、32b、及び32cは、実施例24についての分散体と構成成分部分の間の差を示すスペクトルの領域の赤外線スペクトルの重ね書きである。例えば、実施例24のグリコピロレートトシル酸塩スペクトルには約1283cm
−1及び1651cm
−1にピークが、ポリビニルピロリドンスペクトルには、約1294cm
−1、約1465cm
−1、及び約1641cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルには、ピークが約1288cm
−1、約1461cm
−1、及び約1664cm
−1に現れて、該材料は物理的混合物ではないことをそれぞれ示す。さらに、分散体は、ピークを約1438cm
−1に示し、それに相当するピークは、ポリマー又はグリコピ
ロレートトシル酸塩のいずれにもない。それに加えて、
図33は、実施例24の分散体について、単一のガラス転移温度を約38℃に示す固体分散体を示す。実施例25の8:1分散体は、
図34に見られるように、約26℃の単一のガラス転移温度を示す。
【0102】
実施例24のポリビニルピロリドンを使用する1:1の固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度、又は両方により特徴づけることができる。例えば、赤外線スペクトル中の1288cm
−1、約1461cm
−1、約1664cm
−1、又は約1438cm
−1における1又は2以上のピーク、約38℃のガラス転移温度、又はそれらの組合せにより特徴づけることができる。実施例25のポリマーを使用する8:1の固体分散体は、約26℃のガラス転移温度により特徴づけることができる。
【0103】
実施例26のポリビニルピロリドンは、ポリビニルピロリドン対グリコピロレートトシル酸塩が約1対1の固体分散体を調製するために使用された。
図32dは、分散体と構成成分部分の間の差を示すスペクトルの領域の赤外線スペクトルの重ね書きである。例えば、グリコピロレートトシル酸塩のスペクトルには約1650cm
−1にピークが、ポリビニルピロリドンのスペクトルには約1658cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルには、単一のピークが約1664cm
−1に現れて、該材料は物理的混合物ではないことを示す。これは、単一のガラス転移温度を約36℃に示す
図35で確認される。
【0104】
実施例26のポリビニルピロリドンポリマーとグリコピロレートトシル酸塩の1:1の固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度のいずれか又は両方により特徴づけることができる。例えば、該固体分散体は、約1664cm
−1におけるピーク、約36℃のガラス転移温度、又は両方により特徴づけることができる。
【0105】
ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマーは、グリコピロレートトシル酸塩との固体分散体を、例えば、コポリマー対グリコピロレートの化合物の約1対1の重量比で形成するために使用することができる。そのような調製の例は、実施例27に見出すことができる。
図36a、36b、及び36cは、分散体と構成成分部分の間の差を示すスペクトルの領域の赤外線スペクトルの重ね書きである。例えば、グリコピロレートトシル酸塩のスペクトルには約1381cm
−1、1300cm
−1、1283cm
−1、及び1651cm
−1にピークが、コポリマースペクトルには約1377cm
−1、1293cm
−1、及び1641cm
−1にピークがある。比較により、固体分散体スペクトルには、単一のピークが約1371cm
−1、1287cm
−1、及び1673cm
−1に現れて、それぞれ、該材料は物理的混合物ではないことを示す。これは、ガラス転移温度を約64℃に示す
図37で確認される。
【0106】
ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマーとグリコピロレートトシル酸塩の化合物の1:1の固体分散体は、その赤外線スペクトル、ガラス転移温度のいずれか又は両方により特徴づけることができる。例えば、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマーとグリコピロレートトシル酸塩の1:1固体分散体は、約1371cm
−1、1287、及び1673cm
−1における1又は2以上のピーク、約64℃のガラス転移温度、又はそれらの組合せにより特徴づけることができる。
【0107】
トレオグリコピロレートトシル酸塩は、ラセミシクロペンチルマンデル酸を、有機溶媒などの適切な溶媒中でラセミ1−メチルピロリジン−3−オール及び1,1’−カルボニルジイミダゾールで処理してグリコピロレート塩基を形成させるステップ;グリコピロレート塩基を、アルコールなどの適切な溶媒中で、分割酸で処理してトレオグリコピロレートの塩を形成させるステップ;トレオグリコピロレートの塩を、有機溶媒と水の混合物などの適切な溶媒中で適切な塩基で処理して、トレオグリコピロレート塩基を形成させるス
テップ;及びトレオグリコピロレート塩基を、有機溶媒などの適切な溶媒中で、トシル酸メチルとしても知られるp−トルエンスルホン酸メチルエステル、又はメチル4−ベンゼンスルホネートで処理して、トレオグリコピロレートトシル酸塩を形成させるステップにより調製することができる。次に、本明細書において開示したその後の処理を使用して、例えば、C型、D型、脱水D型、又は非晶質グリコピロレートトシル酸塩を調製することができる。D型の場合、そのようなさらなる処理は、水中における再結晶を含むこともある。トシル酸塩化合物を用いて作業するときは注意を払うべきであり、その理由は、アリールスルホン酸、例えばトシル酸は、アルコールと反応してスルホン酸エステルを形成することができ、それはアルキル化剤であることが当技術分野において知られているからである。さらに、反応平衡が、驚くべきことに解離したトシル酸アニオン方向にあまりに大きくずれているので、1ppmのような少量のエチルトシル酸塩を3%トレオグリコピロレートトシル酸塩製剤に添加した後でさえ、エチルトシル酸塩のレベルは、長期にわたって(25℃/60%相対湿度)及び加速(40℃/75%相対湿度)安定性条件下で減少し、添加後数週間以内にもはや検出可能でなくなる。
【0108】
グリコピロレート塩基の調製のための適切な溶媒には、シクロペンチルマンデル酸、1−メチルピロリジン−3−オール及び1,1’−カルボニルジイミダゾールが可溶な溶媒、例えばトルエンなどが含まれる。分割酸は、4種の異性体の混合物である形成されたグリコピロレート塩基が、分割酸で処理されたときに、実質的に異性体のトレオ対を生成する塩を生ずるように選択される。分割酸は、アルコールなどの溶媒(1例はメタノールである)に溶解され得る。この反応は、生成する塩の異なる溶解度に依存する。1つのそのような分割酸は5−ニトロイソフタル酸であり、それはメタノールに溶解され得る。トレオグリコピロレート塩基の塩及び分割酸からトレオグリコピロレート塩基を形成させるために適切な塩基には、水酸化ナトリウムなどの水酸化物が含まれ、そのような処理は、例えば、トルエンと水の混合物中で行うことができる。生ずる塩基のp−トルエンスルホン酸メチルエステルによる処理は、所望のトレオグリコピロレートトシル酸塩を生ずる。適切な溶媒には、アセトン及び酢酸エチルが含まれる。次に、水による再結晶が使用されてグリコピロレートトシル酸塩一水和物のD型を形成することができる。幾つかの実施形態において、D型の種晶を添加するとD型の形成を助長することができる。次に、D型は、幾つかの実施形態においては乾燥されてもよい。トレオグリコピロレートトシル酸塩の合成のための一般的スキームは、D型の最終的な形成を示すスキーム1に見出すことができる。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、溶液剤ではない局所製剤、例えば、軟膏剤又はクリーム剤などでトレオグリコピロレートトシル酸塩を提供する。そのようなクリーム剤の例はセトマクロゴールクリームである。別の実施形態において、局所製剤はゲル剤である。
【0111】
一実施形態において、局所製剤は、トレオグリコピロレートトシル酸塩を含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、局所製剤は、緩衝剤をさらに含み、及び/又は水溶液であってもよい。緩衝剤が使用される場合、前記緩衝剤は、例えば、クエン酸及びクエン酸ナトリウムであってもよい。緩衝された局所製剤は、エタノールなどのアルコールをさらに含んでいてもよい。
【0112】
別の実施形態において、本発明は、トレオグリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物及び1若しくは2以上の薬学的に許容される添加剤を含む薬学的に許容される溶液剤を提供する。そのような添加剤は、エタノールのような共溶媒及び1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0113】
別の実施形態において、トレオグリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物を含む薬
学的に許容される溶液剤は水性であり、1又は2以上の緩衝剤をさらに含む。多くの実施形態において、薬学的に許容される溶液剤は水性である。緩衝剤の例には、クエン酸及びクエン酸ナトリウム二水和物が含まれるが、これらに限定されない。クエン酸は無水クエン酸を含む。該溶液は、1又は2以上のアルコール、例えばエタノールなどを含有していてもよい。脱水エタノールは、使用され得るアルコールである。本発明の一実施形態において、グリコピロレートトシル酸塩を含む薬学的に許容される水溶液剤は、約0.15重量%の無水クエン酸、約0.06重量%クエン酸ナトリウム二水和物、約57〜約59.5重量%の脱水エタノール、及び約1〜約6重量%のグリコピロレートトシル酸塩を含む。
【0114】
さらに別の実施形態において、該局所製剤は、フィルム形成性であるように調製される。そのような実施形態においては結合剤が使用される。結合剤の例は、ポビドン、例えばポビドンK90などを含む。そのようなフィルム形成性溶液は1又は2以上のフィルム形成剤をさらに含む。フィルム形成剤の例には、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのブチルエステルが含まれる。そのようなフィルム形成剤の例は、Gantrez TMES-425ブチルエステルコポリマーである。
【0115】
さらに別の実施形態において、薬学的に許容される水溶液剤は、フィルム形成性であるように調製される。そのような実施形態においては結合剤が使用される。結合剤の例は、ポビドン、例えばポビドンK90などを含む。そのようなフィルム形成性溶液は1又は2以上のフィルム形成剤をさらに含む。フィルム形成剤の例には、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのブチルエステルが含まれる。そのようなフィルム形成剤の例は、Gantrez TMES-425ブチルエステルコポリマーである。
【0116】
幾つかの実施形態において、薬学的に許容される溶液剤は、担体に吸収される。例えば、そのような担体は、貯蔵において並びに該溶液剤の皮膚の所望の範囲への適用に際して、そのような溶液剤を保持するために適した吸収剤パッドなどのパッド又は不織布ウェットティッシュなどであってよい。
【0117】
本発明に従って、吸収剤パッドは、綿布帛又は非綿布帛に基づくことができる。一実施形態において、吸収剤パッドは、不織レーヨン及びポリプロピレン布帛などの合成不織布の布帛に基づく。一実施形態において、吸収剤パッドは75:25のレーヨンとポリプロピレンのパッドである。
【0118】
幾つかの実施形態において、吸収剤パッド材料はポリプロピレンを含む。他の実施形態において、吸収剤パッドは、実質的に全てポリプロピレンであり、その他の実施形態では、パッドは100%ポリプロピレンである。そのようなパッドは、以下の特性を有する不織布布帛であってよい。
【0120】
パッドに吸収されるグリコピロレートトシル酸塩の溶液剤などの局所製剤のpHは、3.5〜5.5、しばしば約4〜4.7及び約4.1〜4.6を含む約4.0〜5.0である。パッドのためなどのグリコピロレートトシル酸塩一水和物局所製剤について、パッドで使用されるグリコピロレートトシル酸塩一水和物溶液剤の量は、通常は約2.8gを含む約2〜4g又は他の薬学的に許容される量である。
【0121】
溶液剤などの局所製剤は、変化する重量パーセントのグリコピロレートトシル酸塩一水和物などのグリコピロレートトシル酸塩を含有することができる。幾つかの実施形態において、グリコピロレートトシル酸塩一水和物などのグリコピロレートトシル酸塩の重量パーセントは、1.25%〜約4%、2.5%〜3.75%を含み、及び約1.25%、2.5%及び約3.75%の各々を含む約1%〜約4%である。グリコピロレートトシル酸塩一水和物を含むグリコピロレートトシル酸塩の重量パーセントは、グリコピロニウムの重量パーセントのみで表してもよい。これらの重量パーセントについて、重量パーセントは、約1.6%〜約2.4%を含み、及び約0.6%、1.6%及び約2.4%の各々を含む約0.6%〜約3.2%の間で変化してもよい。これらの重量は、D型の重量パーセントに容易に変換される。例えば、1.6%のグリコピロニウムイオンは、2.5%のD型と言い換えられる。それらがパッドに吸収されるか又は他の局所製剤内に含有されるか若しくは含まれるいかなる実施形態においても、グリコピロレートトシル酸塩は、トレオグリコピロレートトシル酸塩であってよい。薬学的に許容される溶液剤を含有する吸収剤パッドなどの局所製剤は、治療されるべき体の範囲に適用できる。
【0122】
グリコピロレートトシル酸塩の水溶液剤を作製する方法は、固体グリコピロレートトシル酸塩を溶液に溶解するように、溶液中の固体グリコピロレートトシル酸塩を水で処理することを含む。1又は2以上の緩衝剤及び/又はアルコールを、該溶液に加えてもよい。そのようにして得られた溶液は、次に、薬学的に許容される量のグリコピロレートトシル酸塩がパッドに吸収されてしまうように、吸収剤パッドを湿らせることができる。アルコールは、脱水エタノールなどのエタノールであってもよい。緩衝剤は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムであってもよい。幾つかの実施形態において、溶解されるべきグリコピロレートトシル酸塩又は溶媒和物は結晶性形態にある。そのような結晶性形態の例はC型又はD型を含む。幾つかの実施形態において、グリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物は、X線非晶質の形態にある。他の実施形態において、上記の方法により作製されたグリコピロレートトシル酸塩の薬学的に許容される水溶液剤を含有するパッドが提供される。加湿は、パッドが小袋中にある間に行うことができる。多くの実施形態において、小袋は、加湿後にヒートシールされる。典型的な小袋材料は、アルミニウム箔を層として含有するラミネートである。この場合に、方法のグリコピロレートトシル酸塩は、トレオグリコピロレートトシル酸塩であってよい。
【0123】
別の実施形態において、グリコピロレートトシル酸塩の薬学的に許容される水溶液剤は、グリコピロレートトシル酸塩を水とエタノールの混合物に溶解することにより調製できる。1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤は、グリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物及び水性溶媒の添加前又は後のいずれかで添加することができる。前記グリコピロレートトシル酸塩は、トレオグリコピロレートトシル酸塩であってよい。
【0124】
グリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物の薬学的に許容される溶液剤は治療的に有用である。例えば、薬学的に許容される溶液剤は、哺乳動物において多汗症を治療するために又は発汗を減少させるために使用することができる。薬学的に許容される溶液剤は、典型的には、溶液剤が吸収されたパッドから適用される。一実施形態において、本発明は、哺乳動物の皮膚に、グリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物の薬学的に許容される溶液剤の治療的有効量を局所的に投与することにより、哺乳動物における多汗症を治
療する方法を提供する。一実施形態において、哺乳動物はヒトである。薬学的に許容される溶液剤は、手、例えば掌、腋窩、脚、例えば足底、鼠径、顔面、例えば頬及び額、並びに胴体、例えば背中及び腹部、又は頭皮を含むが、これらに限定されない1箇所又は数カ所の範囲に、又は全身にさえ適用することができる。幾つかの実施形態において、治療的有効量のグリコピロレートトシル酸塩水溶液剤を、それを必要とする哺乳動物の皮膚に局所投与することを含む、原発性腋窩多汗症を、グリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物で治療する方法。多くの実施形態において、そのような投与は、吸収剤パッドによることができる。他の実施形態において、手掌の又は足底の多汗症をグリコピロレートトシル酸塩又はその溶媒和物で治療する方法が提供される。グリコピロレートトシル酸塩の投薬は毎日であってもよい。グリコピロレートトシル酸塩の前記薬学的に許容される溶液剤は、トレオグリコピロレートトシル酸塩であってもよい。
【0125】
実施例で使用される機器の技法
X線粉末回折(XRPD, X-ray Powder Diffraction)
X線粉末回折(XRPD)−反射の幾何学的配置
XRPDパターンは、長距離高精度焦点線源及びニッケルフィルターを使用して生じさせたCuKα放射線の入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用い
て収集した。該回折計は、対称的Bragg-Brentano光学系を使用して配置した。分析に先立って、ケイ素検体(NIST SRM 640d)を分析して、Si 111ピークの観察される位置
がNISTに保証された位置と一致することを検証した。試料の検体は、ケイ素のゼロバックグラウンド基材の中央に置いた薄い円形層として調製した。散乱線除去スリット(SS, Antiscatter slit)を使用して、空気により発生されるバックグラウンドを最小化した。入射ビーム及び回折されたビームのためのソーラー・スリットを使用して、軸方向の発散からの広がりを最小化した。回折パターンは、試料から240mmの位置にある走査位置敏感検出器(X’Celerator)及びData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して収集した。各パターンについてのデータ取得パラメーターは、X線管:Cu(1.54059Å)、電圧:45kV、アンペア数:40mA、走査範囲:3.50〜40.00°2θ、ステップサイズ:0.017又は0.08°2θ、収集時間:1835〜1947秒、走査速度:1.1又は1.2°/分、発散スリット(DS, divergence slit):1/8°、
入射ビーム散乱線除去スリット(SS, incident-beam antiscatter slit):1/4°、無回転時間:0.0であった。
【0126】
X線粉末回折(XRPD)−透過の幾何学的配置
XRPDパターンは、Optix長距離高精度焦点線源を使用して発生させたCu放射線の
入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用いて収集した。楕円形に
勾配をつけた多層鏡を、検体を通って検出器に至るCuKαX線の焦点を結ばせるために使用した。分析に先立って、ケイ素検体(NIST SRM 640d)を分析して、Si 111ピ
ークの観察される位置がNISTの保証位置と一致することを検証した。試料の検体を、3μmの厚さのフィルムの間に挟んで透過の幾何学的配置で分析した。ビーム止め、短い散乱線除去延長部分、及び散乱線除去ナイフエッジを使用して、空気により発生されるバックグラウンドを最小化した。入射ビーム及び回折されたビームのためのソーラー・スリットを使用して、軸方向の発散からの広がりを最小化した。回折パターンは、検体から240mmの位置にある走査位置敏感検出器(X’Celerator)及びData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して収集した。各パターンについてのデータ取得パラメーターは、X線管:Cu(1.54059Å)、電圧:45kV、アンペア数:40mA、走査範囲:1.0〜39.99°2θ、ステップサイズ:0.017°2θ、収集時間:717〜721秒、走査速度:3.3又は3.2°/分、発散スリット(DS, divergence slit):1/
2°、散乱線除去スリット(SS):無入射ビーム、無回転時間:1.0であった。
【0127】
温度可変X線粉末回折(VT−XRPD, Variable Temperature X-ray Powder Diffra
ction)
XRPDパターンは、長距離高精度焦点線源及びニッケルフィルターを使用して発生させたCuKα放射線の入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用い
て収集した。回折計は、対称的Bragg-Brentano光学系を使用して構成した。データは、Data Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して収集して分析した。分析に先立って、ケイ素検体(NIST SRM 640d)を分析してSi 111ピーク位置を検証した。試料の検体は、
ニッケルコートした銅のウェル中に充填した。散乱線除去スリット(SS)を使用して空気散乱により発生されるバックグラウンドを最小化した。入射及び回折されたビームのためのソーラー・スリットを使用して軸方向の発散からの広がりを最小化した。回折パターンは、試料から240mmの位置にある走査式位置敏感検出器(X’Celerator)を使用して収集した。各パターンについてのデータ取得パラメーターは、X線管:Cu(1.54059Å)、電圧:45kV、アンペア数:40mA、走査範囲:3.50〜26.00°2θ、ステップサイズ:0.008°2θ、収集時間:1869秒、走査速度:0.7°/分、発散スリット(DS):1/8°、入射ビーム散乱線除去スリット(SS):1/4°、無回転時間:0.0であった。
【0128】
Anton Paar社のTTK450ステージを使用してその場でXRPDパターンを非周囲温度で収集した。試料ホルダーの直下にある抵抗加熱ヒーターで試料を加熱して、温度を検体の直下にある白金100抵抗センサーでモニターした。ヒーターへの電力を供給して、Data Collectorとインターフェースで接続したAnton Paar社のTCU100により制御した。
【0129】
赤外線分光法(IR, Infrared Spectroscopy)
IRスペクトルは、Ever-Glomid/far IR線源を装備したNicolet 6700フーリエ変換赤外線(FT−IR, Fourier transform infrared)分光光度計(Thermo Nicolet社)、拡大範囲臭化カリウム(KBr, potassium bromide)ビームスプリッター、及び重水素化
されたトリグリシン硫酸塩(DTGS, deuterated triglycine sulfate)検出器で取得
した。波長の検証はNIST SRM 1921b(ポリスチレン)を使用して実施した。ゲルマニウム(Ge, germanium)結晶を用いる減衰全反射(ATR)アクセサリー(Thunderdome(商標)、Thermo Spectra-Tech社)をデータ取得のために使用した。各スペクトルは、2c
m
−1の分光分解能で収集された256回重合せの走査を表す。バックグラウンドデータのセットは清浄なGe結晶を用いて取得した。Log1/R(R=反射率)スペクトルは、これら2つのデータセットの互いに対する比をとることにより得た。
【0130】
示差走査熱量測定(DSC, Differential Scanning Calorimetry)
DSCは、TA測定器2920示差走査熱量計を使用して実施した。温度較正は、NISTトレーサーインジウム金属を使用して実施した。試料をアルミニウムのDSC皿に入れて蓋を被せ、重量を正確に記録した。秤量されたアルミニウム皿は、試料皿がセルの参照側に置かれるように配置した。変調されたDSCデータ(例えば、
図23を参照されたい)を、冷蔵冷却系(RCS, refrigerated cooling system)を装備したTA測定器Q2000示差
走査熱量計で得た。温度較正は、NISTトレーサーインジウム金属を使用して実施した。該試料をアルミニウムDSC皿に入れて、重量を正確に記録した。皿に蓋を被せ、レーザーピンホールで穿孔して、蓋で密封した。秤量され、クリンプされたアルミニウム皿をセルの参照側に置いた。−50℃から220℃まで2℃/分の加熱速度を基調として、±1℃の変調較差及び60秒の期間を使用してデータを得た。記録されたガラス転移温度は、逆熱流対温度曲線における階段状変化の変曲点から得た。
【0131】
プロトン核磁気共鳴(1H NMR, Proton Nuclear Magnetic Resonance)
溶液NMRスペクトルはVarian社のUNITYINOVA-400分光計で取得した。試料は、TMSを含有するDMSO−d6に少量の試料を溶解することにより調製した。
【0132】
Pawley精密化
指数付け及びそれに続くPawley精密化は、XRPDデータから単位胞体積及び単位胞パラメーターの最も正確な決定を提供する。これらの計算は、Bruker AXS GmbH社(
Karlsruhe、ドイツ)のTOPAS4.2、2009を使用して実施した。バックグラウンドは3次チェビチェフ多項式を使用してモデル化した。ピーク形状は、ローレンツの結晶子サイズの広がりを使用してモデル化し、軸方向の発散は全軸方向のモデルを使用してモデル化した。ピーク位置は、単位胞パラメーターを適合させることにより変化させた。全パターンPawley精密化を、全てのパラメーターで同時にχ2で0.001の収束に向けて実施した。
【0133】
熱重量分析(TGA, Thermogravimetric Analysis)
TG分析は、TA測定器2950熱重量分析計を使用して実施した。温度較正は、ニッケル及びアルメル(商標)を使用して実施した。各試料をアルミニウム皿に入れてTG炉中に挿入した。炉を窒素パージ下で加熱した。データ取得パラメーターは、この報告のデータの部における各温度記録図の上に示した。温度記録図上の方法コードは、開始及び終了温度並びに加熱速度のための略記号であり、例えば、25−350−10は、「25〜350℃まで、10℃/分で」を意味する。
[実施例]
【実施例1】
【0134】
塩の予備選択
14種の塩を標的とした。しかしながら、6種のグリコピロレート塩のみ単離に成功して特徴づけられた:酢酸塩、安息香酸塩、エジシル酸塩、シュウ酸塩、硫酸水素塩、及びトシル酸塩である。これらの塩は、(1)臭化グリコピロレートと塩形成剤としての銀塩との反応、又は(2)グリコピロレート酢酸塩と塩形成剤としての酸との反応のいずれかにより形成した。
【実施例2】
【0135】
グリコピロレート安息香酸塩
グリコピロレート安息香酸塩は、実施例1から経路(1)を使用してただ1度調製した。グリコピロレート安息香酸塩は、各臭化グリコピロレートの飽和水溶液と安息香酸銀とを約92℃で反応させ、続いて濾過してそれに続く母液の凍結乾燥で生成させた。次に該材料を、アセトン/MTBE(1/2、vol/vol)中で再結晶し、超音波処理して白色結晶性固体を形成させた。この材料に関するXRPDパターンは
図12にある。プロトンNMRは、等モル量のグリコピロレート及び安息香酸塩種、並びに水の存在を示した。試料の熱分析は、DSC温度記録図中において、TG掃引線中の25〜80℃における3.5wt%の減少と同時に生じる、79℃で最大になるピークで単一の吸熱を示した。重量減少は水の約1モルと等価であり、一水和物の形成を指示した。
【実施例3】
【0136】
ジグリコピロレートエジシル酸塩
ジグリコピロレートエジシル酸塩は、実施例1から方法(2)を使用して形成させた。第2の1モル当量のグリコピロレート酢酸塩を、グリコピロレート酢酸塩と少量の酢酸銀及び1モル当量の1,2−エタンジスルホン酸との酢酸エチル/イソプロパノール(83/17、vol/vol)中の反応混合物に加えた。該混合物を約5分間撹拌した後、生じた灰色の固体を単離して、真空下に周囲温度で1日間乾燥させた。乾燥した固体は、XRPD(
図14)によれば少量の酢酸銀を含み結晶性であった。XRPDパターンは、指数付けに成功し、それは、該材料が単結晶相で構成されていることを示した。プロトンNMR分光法により、エジシル酸塩1モル当たりグリコピロレート2モル及び水の存在が確認された。試料の熱分析により、TG掃引線中の25〜95℃における3.8wt%の減
少及びDSC温度記録図中における103℃で最大になるピークで単一の吸熱が示された。質量減少は、約2モルの水と等価であり、二水和物を指示した。
【実施例4】
【0137】
グリコピロレートシュウ酸塩
グリコピロレートシュウ酸塩を、実施例1から方法(2)を使用して調製した。等モル量のシュウ酸及びグリコピロレート酢酸塩をメタノールに溶解し、次に急速蒸発させて真空下で乾燥した。生ずるガラス状、ゲル様材料を、酢酸エチル中でスラリー化することにより再結晶して灰色の固体を生成させ、次にそれを真空下で乾燥した後、XRPD及びプロトンNMR分光法により分析した。XRPDパターンは
図16に見出すことができる。
【実施例5】
【0138】
グリコピロレート硫酸水素塩
グリコピロレート硫酸水素塩を、実施例1から方法(2)を使用して、微量の硫酸銀を含む混合物として調製した。等モル量のグリコピロレート酢酸塩及び硫酸を無水酢酸エチル中で約1日間撹拌した後、生じた材料を単離して真空下で乾燥した。該固体は、XRPD、プロトンNMR分光法、熱的技法及び元素分析により特徴づけられた。XRPDパターンは、独特で微量の硫酸銀を含有した(
図17)。XRPDパターンは、28.35°2θにおける硫酸銀ピークを除いて、指数付けに成功し、該グリコピロレート硫酸水素塩が単結晶相で構成されていることを示した。硫酸銀は、出発材料のグリコピロレート酢酸塩中に存在した酢酸銀からおそらく形成された。NMRスペクトルは、グリコピロレートと硫酸水素塩の1:1の比と一致した。熱分析では、160℃にピークの最大がある主要な鋭い吸熱及び169℃にピークの最大がある第2の吸熱、及び25〜180℃で0.2wt%の無視し得る重量減少が示された。元素分析により化学量論の無水塩が確認された。
【実施例6】
【0139】
グリコピロレートトシル酸塩
暗室中で、トシル酸銀(3.5g)を超音波処理により水(約100mL)に溶解した。該溶液を約40℃に加熱して、追加の水を加えた(約15mL)。等モル量の臭化グリコピロレート(5g)(R,S及びS,Rジアステレオマーの混合物)を加えると、直ちに黄色沈殿が生じた。該スラリーを約40℃で終夜撹拌して、次に撹拌しながらゆっくり周囲温度に冷却した。周囲温度で、該固体を真空濾過して、湿っているケークを3回約10mLの水で洗浄した。母液を集めてガラスのミクロファイバーを有する0.2μmのナイロンフィルター(GMF)を通して2回濾過した。濾過後透明な溶液が観察され、約−50℃で凍結乾燥した。6日後に、白色針状で僅かに粘着性のガラス状固体の混合物が観察された。トルエン(約20mL)を加えて、該スラリーを手短かに超音波処理して、次に周囲温度で撹拌した。撹拌を容易にするために、追加のトルエン(約80mL)を加えて、該混合物を周囲条件で1日間放置した。グリコピロレートトシル酸塩の固体を真空濾過により収集して、周囲温度で1日間真空乾燥した。
【実施例7】
【0140】
グリコピロレートトシル酸塩の調製
等モル量のグリコピロレート酢酸塩及びp−トルエンスルホン酸のスラリーを、イソプロパノール(1mL)中で調製した。該混合物を周囲温度で撹拌した。追加のイソプロパノール(0.5mL)を加えて撹拌を改善し、混合物を終夜撹拌した。固体のグリコピロレートトシル酸塩を真空濾過により単離して分析した。
【実施例8】
【0141】
D型グリコピロレートトシル酸塩の調製
実施例6で作製されたグリコピロレートトシル酸塩(1.0569g)を、超音波処理により4mLのACN/H
2O(50/50vol/vol)中に溶解した。該溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して清浄なバイアル中に濾過した。上記の溶媒を開放されたバイアルから周囲条件で部分的に蒸発させた。窒素気流下で、さらに蒸発を続けて実施した。ゲルが生じ、それを40℃で1日間真空乾燥した。トルエン(5mL)を加えて、混合物を約10分間超音波処理して白色固体を沈殿させた。混合物を周囲温度で1日間撹拌した。該固体を真空濾過により単離して、湿っているケークを約10mLのトルエンで洗浄した。固体を周囲温度で1日間真空乾燥した。真空乾燥後、固体をバイアルに入れて蓋をしないまま相対湿度約97%のチェンバー内に置いた。該チェンバーは41℃のオーブン内に置いた。6日後、固体は、XRPDによる分析でD型を示した。
【実施例9】
【0142】
D型の単結晶の調製
実施例6で作製されたグリコピロレートトシル酸塩(54.9mg)を、EtOAc/DMF(87/13vol/vol)に約55℃で24mg/mlになるように溶解した。該溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して、予め温めたバイアル中に熱濾過した。該溶液を含有するバイアルを最初はドライアイス/アセトン浴中に入れ、次に冷凍庫(約−25〜−10℃)に入れた。3日後、該溶液を約50℃に再加熱して、追加のEtOAcを加えて96/4のEtOAc/DMF(vol/vol)中で7mg/mlにした。溶液を高められた温度から速やかに取り出して冷凍庫に入れた。溶媒をデカントして、固体を周囲条件下で乾燥することにより固体を単離した。
【0143】
単結晶データ収集
約0.23×0.20×0.18mmの寸法のC
26H
37NO
7S[C
7H
7O
3S、C
19H
28NO
3、H
2O]の無色の塊を、繊維上にランダム配向で載せた。CuKαの放射線(λ=1.54184Å)を用いて、共焦点の光学系を装備したRigaku社のRapid II回折計で、予備検査及びデータ収集を実施した。精製はSHELX97を使用して実施し
た。
【実施例10】
【0144】
脱水D型の調製
C型及びD型を含むグリコピロレートトシル酸塩固体及び微量のトシル酸銀の混合物を、P
2O
5上に周囲温度で18日間保った。生ずる固体は、XRPD分析により示されるように、脱水D型と微量のトシル酸銀の混合物で構成されていた。
【実施例11】
【0145】
C型グリコピロレートトシル酸塩の調製
微量のC型及びトシル酸銀を含有するD型グリコピロレートトシル酸塩を、Anton Paar社のTTK450ステージ上で加熱して、その場でXRPDパターンを3.5〜26°(2θ)の範囲内で収集した。全ての加熱ステップは約10℃/分であった。該ステージを20℃の上昇するステップで25℃から125℃まで加熱した。各ステップで、XRPDパターンを約4分かけて収集した。次にステージを135℃に加熱してXRPDパターンを約16分かけて収集し、さらに145℃に加熱した後、パターンを約31分で収集した。続いて試料を25℃に約24℃/分で冷却して、そこで最終のXRPDパターンを約16分かけて収集した。この最終のパターンのXRPDパターンをC型として指数付けした。
【実施例12】
【0146】
C型グリコピロレートトシル酸塩の調製
実施例6からのD型グリコピロレートトシル酸塩を、約143〜149℃の範囲の温度で、連続して窒素でパージしながら約3.3時間加熱した。固体を含有するバイアルに蓋
をして、実験台に置いて室温に放冷した。室温で、該バイアルを、P
2O
5を含有するジャー中に入れた。窒素下でXRPD分析のために試料を調製し、該分析によりC型の生成が確認された。
【実施例13】
【0147】
C型グリコピロレートトシル酸塩の調製
実施例6からのグリコピロレートトシル酸塩(59.5mg)を約50℃でアセトンに溶解して27mg/mlにした。該溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して予め温めたバイアル中に熱濾過した。該バイアルに蓋をしてホットプレート上に置き、その後電源を切って、試料をゆっくり放冷して周囲温度にした。周囲温度で該溶液を撹拌して白色固体を沈殿させた。固体を真空濾過により単離して湿っているケークを約2mlのアセトンで洗浄した。XRPD分析の結果C型であった。
【実施例14】
【0148】
非晶質グリコピロレートトシル酸塩
実施例6からのグリコピロレートトシル酸塩を溶融して冷却し、それを、固体の大部分が顕微鏡によりガラスの外見を有するまで繰り返した。XRPD分析は、「ガラス状」試料が非晶質であることが観察されることを示した。2.2%の重量減少が、非晶質グリコピロレートトシル酸塩の25〜250℃までのTGAにより観察された。ガラス転移温度の開始は11.6℃で測定された。
【実施例15】
【0149】
粗トレオグリコピロレートトシル酸塩の調製
シクロペンチルマンデル酸を1,1’−カルボニルジイミダゾールとトルエン中で合わせ、加熱して撹拌する。N−メチル−3−ピロリジノールを撹拌しながら加えてトルエン中で加熱する。該反応混合物を、次に冷却して純水で洗浄する。分離されたトルエン層を、次にグリコピロレート塩基の濃縮物にする。
【0150】
5−ニトロイソフタル酸(1当量)を、メタノール(20vol)に室温で中程度のかき混ぜで溶解する。上で得られたグリコピロレート塩基(1当量)を次に加える。結晶化が開始されたら、混合物を室温で撹拌する。固体を次に遠心濾過機で回収してメタノールで洗浄する。粗生成物を次にメタノール中に懸濁させて、約65℃で1時間撹拌し、次に20℃に冷却してさらに4時間撹拌する。生成物を再び回収し、メタノールで洗浄し、部分的に乾燥して湿っているグリコピロレート5−ニトロイソフタレートとして取り出す。トレオ:エリスロジアステレオマー対の比は、典型的には96:4である。湿っている5−ニトロイソフタレート塩を、水酸化ナトリウム水溶液及びトルエンを用いて処理することにより、トレオグリコピロレート塩基が得られる。
【0151】
トレオグリコピロレート塩基をアセトンに溶解して僅かに過剰のメチル−p−トルエンスルホネートで処理する。反応の完結は、TLCにより、残存する塩基がNMT2%になるまでモニターする。粗グリコピロニウムトシル酸塩を回収してアセトンで2回洗浄する。得られた湿っているケークを真空下で温度を上げて乾燥する。
【実施例16】
【0152】
純トレオグリコピロレートトシル酸塩
実施例15の生成物を純水中で粉砕して回収し、冷純水で洗浄する。湿っているケークを次にかき混ぜながら水に溶解する。得られた溶液を冷却して結晶化が始まるまで保つ。次に該混合物をさらに冷却して撹拌し、生成物を回収して冷純水で洗浄する。次に生成物を同様な条件下で2度目の再結晶をする。生成物を、トレーで真空にせずに40℃以下で含水率が約2.5%〜4.0%の間になるまで最小の時間乾燥する。
【実施例17】
【0153】
[実施例17a]
グリコピロレートトシル酸塩の水溶液の調製
適当なサイズの容器に、純水、クエン酸及びクエン酸ナトリウム二水和物を加えて混合することにより溶解する。脱水アルコールを加え、混合を開始して均一で透明な溶液が得られるまで撹拌し続ける。混合を継続して、固体のグリコピロレートトシル酸塩を加え、グリコピロレートトシル酸塩が溶解されて溶液が均一になるまで撹拌する。溶液は、透明及び無色又は淡黄色で、pHは約25℃で約4.0〜約5.0であるべきである。
【0154】
[実施例17b]
D型を使用するトレオグリコピロレートトシル酸塩の水溶液の調製
適当なサイズの容器に、純水、クエン酸及びクエン酸ナトリウム二水和物を加えて混合により溶解する。脱水アルコールを加え、混合を開始して均一で透明な溶液が得られるまで混合し続ける。混合を継続してD型グリコピロレートトシル酸塩を加え、グリコピロレートトシル酸塩が溶解されて溶液が均一になるまで撹拌する。溶液は、透明及び無色又は淡黄色で、pHは約25℃で約4.0〜約5.0であるべきである。
【実施例18】
【0155】
小袋及びパッドの充填
各小袋を形成し、底及び外側の端の3側方でヒートシールする。パッドを畳んで、最終の折り畳みで半分のサイズに切り、1枚のパッドを予め形成された各小袋中に開いた上部から挿入する。実施例15の約2.8gのグリコピロレートトシル酸塩生成物を、各小袋の開いた上部から加え、封入されたパッドを加湿する。小袋の上側をヒートシールする。
【0156】
固体分散体の一般的調製
賦形剤及びD型グリコピロレートトシル酸塩の溶液を、水、エタノール/水又はジオキサン/水に溶かして、0.2μmのナイロン繊維の膜を通して濾過しながら、液体窒素浴に沈めたバイアル中に滴下した。溶液の添加速度を、試料の各液滴が凍結してから次の液滴が添加されるようにモニターした。試料を、ドライアイス上に置き、直ちにLABCONCO社のTriadシリーズの凍結乾燥器に移して乾燥させた。乾燥後、固体を単離して、冷凍庫中
で乾燥剤上に貯蔵した。全ての試料を冷凍庫から取り出して、デシケーター中で周囲温度に温めてから分析した。分析前に試料が周囲湿度に置かれる時間の長さを限定することを試みた。PVPK-29/32:ISP Technologies社(ニュージャージー州、Wayne);Kollicoat IR、Kollidon VA64:BASF SE社(ドイツ、Ludwigshafen);HPMCAS:Shin-Etsu Chemical Company Ltd.社(日本、東京);PVPK−90:Sigma-Aldrich, Inc.社(米国、ミズーリ州、St.Louis)を含む賦形剤は、市場の供給業者から購入して受け入れたままで使用した。下の表8に示した実施例もこの一般的手順に従い、示した賦形剤、グリコピロレートトシル酸塩の重量及び溶媒選択を使用した。
【0157】
【表8】
【0158】
提示した全ての実施例は代表的なもので、限定するものではない。上記の実施形態は、当業者により認識されるように、上の教示に照らして、本発明から逸脱せずに改変又は変更することができる。それ故、請求項及びそれらの等価の事物の範囲内で、本発明が、特定して記載された以外の他の方法で実行され得ることは理解されるべきである。