【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1:GLP−hyFc融合タンパク質の作製
1−1:GLP−1−hyFc5、GLP−1−hyFc9、GLP−1−hyFc8及びGLP−1−hyFc11の作製
GLP−1(Glucagon like peptide-1)は、糖尿病治療に効果的なタンパク質であるが、生体内のDPP−4酵素により非常に急速に切断(cleavage)され、半減期(half-life)が約3〜5分と非常に短いため、薬物として開発するのは非常に困難であるので、生体内半減期を増加させるための多くの試みが行われてきた。
【0085】
よって、まず前記DPP−4酵素による切断を減らすために、GLP−1(7−37)に基づいて、DPP−4酵素による切断部位(cleavage site)である8位のアミノ酸をアラニン(Alanine)からグリシン(Glycine)に置換することによりGLP−1アナログ(analogue)を作製した(配列番号2)。次に、本発明者らの先行特許である特許文献2で作製したhyFc5(hybrid Fc 5)ポリペプチドを前記GLP−1アナログペプチドに融合させてGLP−1−hyFc5融合ポリペプチドを作製した(
図1)。前記GLP−1−hyFc5融合ポリペプチドの配列全体を
図1に示す。
【0086】
また、GLP−1−hyFc5より半減期がさらに増加すると共に他の活性の面でも優れた融合ポリペプチドの作製を試みた。
【0087】
具体的には、hyFc5においてIgDヒンジ領域(hinge region)を様々に調節することにより、さらに優れた半減期を有し、かつ優れた活性を有する融合ポリペプチドの作製を試み、IgDヒンジ領域のアミノ酸を増加させると、これらの条件を満たす可能性があることを確認した。
【0088】
よって、30個のアミノ酸で構成されたヒンジを有するhyFc5のヒンジ領域のアミノ酸を増加させ、まず40個のアミノ酸で構成されたヒンジ(配列番号27)を有するhyFc9を作製し(
図2)、その後35個のアミノ酸で構成されたヒンジ(配列番号26)を有するhyFc8、及び49個のアミノ酸で構成されたヒンジ(配列番号28)を有するhyFc11を作製した。また、前記hyFc9、hyFc8及びhyFc11にそれぞれGLP−1アナログペプチドを融合することにより、GLP−1−hyFc9(配列番号31)、GLP−1−hyFc8(配列番号30)及びGLP−1−hyFc11(配列番号32)融合ポリペプチドを作製した。
【0089】
1−2:GLP−2−hyFc5、GLP−2−hyFc9、GLP−2−hyFc8及びGLP−2−hyFc11の作製
GLP−2(Glucagon like peptide-2)は、GLP−1と同様に、生体内のDPP−4酵素により非常に急速に切断(cleavage)され、半減期(half-life)が約7分と非常に短いため、薬物として開発するのは非常に困難である。GLP−2の生体内半減期を増加させるために、DPP−4酵素による切断部位(cleavage site)である2位のアミノ酸をアラニン(Alanine)からグリシン(Glycine)に置換した(GLP−2−2Gペプチド,配列番号45)。前述したように置換したGLP−2−2Gペプチドは1日剤形で成人短腸症候群の治療剤として用いられているが、短腸症候群の治療が継続的なものでなければならないことを考慮すると、それよりも長い半減期を有するGLP−2アナログの開発が必要である。そのために、本発明者らの先行特許である特許文献2で作製したhyFc5ポリペプチドを前記GLP−2−2Gアナログペプチドに融合させてGLP−2−hyFc5融合ポリペプチドを作製した(
図3)。また、IgDヒンジ領域の64個のアミノ酸長全体を様々に調節することにより、GLP−2−2Gペプチドの半減期が増加すると共に優れた活性を有する融合ポリペプチドの作製を試みた。具体的には、30個のアミノ酸で構成されたヒンジを有するhyFc5においてヒンジ領域のアミノ酸を増加させることにより、40個のアミノ酸で構成されたヒンジを有するhyFc9を作製し、GLP−2−2Gペプチドを結合させてGLP−2−hyFc9融合ポリペプチドを作製した(
図3,配列番号48)。さらに、35個のアミノ酸で構成されたヒンジを有するhyFc8、及び49個のアミノ酸で構成されたヒンジを有するhyFc11を作製し、それぞれGLP−2−2Gペプチドを結合させてGLP−2−hyFc8(配列番号47)、及びGLP−2−hyFc11(配列番号49)融合ポリペプチドを作製した。
【0090】
実施例2:GLP−hyFc融合タンパク質のPKプロファイルの確認
2−1:GLP−1−hyFc5のPKプロファイルの確認
前述したように作製したGLP−1−hyFc5融合ポリペプチドの薬物動態プロファイル(pharmacokinetic profile, PK profile)を確認するために、合成したGLP−1を対照群として用いて次の実験を行った。
【0091】
1グループ当たり4匹の雄Sprague Dawley Ratsに各タンパク質(GLP−1及びGLP−1−hyFc5)を静脈(IV)経路で投与した。注入前及び注入後0.08、0.16、0.5、1、2、4、6、12、24、48、72及び96時間後に血液を採取した。血液サンプルは凝集のために30分間室温保管した。3000rpmで10分間遠心分離し、その後各サンプルの血清を採取して超低温冷凍庫(deep freezer)に保存した。サンプルは、GLP−1キット(ALPCO, cat#43-GP1HU-E01)を用いて、標準曲線の直線上の位置で分析されるように希釈して定量した。
【0092】
その結果、
図4に示すように、hyFcポリペプチドを融合していないGLP−1単独ペプチドの場合は半減期が4分と短かったのに対して、GLP−1及びhyFc5を融合したGLP−1−hyFc5ポリペプチドの場合は半減期が8時間以上と約116倍増加することが確認された。
【0093】
2−2:GLP−1−hyFc9のPKプロファイルの確認
前記実施例1で作製したGLP−1−hyFc9融合ポリペプチドとGLP−1−hyFc5融合ポリペプチドの半減期を比較することにより、PKプロファイルを確認した。
【0094】
1グループ当たり4匹の雄Sprague Dawley Ratsに各タンパク質を皮下(SC)経路で投与した。注入前及び注入後2、6、12、26、48、72、96、120、144及び168時間後に血液を採取した。血液サンプルは凝集のために30分間室温保管した。3000rpmで10分間遠心分離し、その後各サンプルの血清を採取して超低温冷凍庫(deep freezer)に保存した。サンプルはGLP−1キット(IBL, Cat#27784A)を用いて、標準曲線の直線上の位置で分析されるように希釈して定量した。
【0095】
その結果を各時間における血液中に残存するタンパク質量及び薬物濃度曲線下面積(AUC, Area Under the Curve)値で示す。
図5に示すように、GLP−1−hyFc5と比較して、GLP−1−hyFc9において約12倍のAUC値を示すことが確認された。これらの結果に基づいて、GLP−1−hyFc9はGLP−1−hyFc5に比べて半減期がさらに増加することから、さらに効果的な薬物効果を示すことが分かった。
【0096】
2−3:GLP−1−hyFc8のPKプロファイルの確認
GLP−1−hyFc8融合ポリペプチドの半減期をGLP−1−hyFc9融合ポリペプチドと比較することにより、GLP−1−hyFc8のPKプロファイルを確認した。GLP−1−hyFc5、GLP−1−hyFc9及びGLP−1−hyFc8を対象に、前記実施例2−2と同様の実験を行った。
【0097】
その結果、
図6に示すように、GLP−1−hyFc9及びGLP−1−hyFc8は同レベルのPKプロファイルを示すが、むしろGLP−1−hyFc8のほうがやや優れたレベルである。これは対照群であるGLP−1−hyFc5に比べてはるかに優れたレベルである。これらの結果に基づいて、GLP−1−hyFc8も半減期が増加することから、さらに効果的な薬物効果を示すことが分かった。
【0098】
2−4:GLP−2−hyFc5及びGLP−2−hyFc9のPKプロファイルの確認
前述したように作製したGLP−2−hyFc5及びGLP−2−hyFc9融合ポリペプチドの薬物動態プロファイル(pharmacokinetic profile, PK profile)を確認するために、次の実験を行った。
【0099】
1グループ当たり3匹の雄Sprague Dawley Ratsに各タンパク質(GLP−2−2Gペプチド、GLP−2−hyFc5及びGLP−2−hyFc9)をS.C(皮下)経路で投与した。注入前及び注入後0.08、0.16、0.5、2、4、8、24、48、96、120及び168時間後に血液を採取した。血液サンプルは凝集のために30分間室温保管した。3000rpmで10分間遠心分離し、その後各サンプルの血清を採取して超低温冷凍庫(deep freezer)に保存した。サンプルはGLP−2キット(Millipore, Cat#EZGLP2-37K)を用いて、標準曲線の直線上の位置で分析されるように希釈して定量した。その結果、Fcタンパク質を融合していないGLP−2−2Gペプチド単独の場合はその半減期が1.2時間であったのに対して、GLP−2−hyFc5、GLP−2−hyFc9融合タンパク質は半減期がそれぞれ44時間、65時間とGLP−2−2Gに比べて約36倍、54倍増加することが確認された。特に、GLP−2−hyFc9は、GLP−2−hyFc5に比べて約1.5倍増加した半減期を有することが分かった。
【0100】
実施例3:GLP−hyFc融合タンパク質の生物学的活性試験
3−1:GLP−1−hyFc9の血清中安定性の確認
優れたPKプロファイルを示す融合ポリペプチドのうちGLP−1−hyFc9を対象に、他の様々な効能について確認した。比較群としてGLP−1−hyFc5を用いた。GLP−1−hyFc5及びGLP−1−hyFc9における血清中の分解因子に対する安定性を確認するために、ラット血清中安定性試験を行った。
【0101】
まず、2種類の試験物質をラット血清で希釈し、準備した各サンプルを37℃恒温器に入れて0、6、10、24、48時間反応させ、その後各物質をELISA法で定量した。
【0102】
その結果を各反応時間における残存するタンパク質量及び時間別グラフの曲線下面積(AUC, Area Under the Curve)値で示す。
図7に示すように、GLP−1−hyFc5と比較して、GLP−1−hyFc9において約1.2倍のAUC値を示すことが確認された。これらの結果に基づいて、GLP−1−hyFc9は血清中安定性もGLP−1−hyFc5に比べて優れていることが確認された。
【0103】
3−2:GLP−1−hyFc9のDPP−4抵抗性の確認
GLP−1−hyFc5及びGLP−1−hyFc9における主要代謝酵素であるDPP−4(Sigma, #D4943-1VL)に対する抵抗性及びそれによる安定性を確認するために、DPP−4抵抗性試験を行った。
【0104】
2種類の試験物質とDPP−4を反応させる時間(0,2,8,24,48時間)に合わせて37℃恒温器に入れて反応させ、次いで各物質を定量した。
【0105】
その結果を各反応時間における残存するタンパク質量及び時間別グラフの曲線下面積(AUC, Area Under the Curve)値で示す。
図8に示すように、GLP−1−hyFc5と比較して、GLP−1−hyFc9においてDPP−4抵抗性が約7倍以上向上することが確認された。これらの結果に基づいて、GLP−1を切断するDPP−4酵素に対する安定性の面でもGLP−1−hyFc9がはるかに優れていることが分かった。
【0106】
3−3:GLP−1−hyFc9のPDプロファイルの確認
GLP−1−hyFc5及びGLP−1−hyFc9における薬力学的プロファイル(pharmacodynamic profile, PD profile)を確認するために、次の実験を行った。
【0107】
1グループ当たり10匹のCD−1マウスに各タンパク質を皮下(SC)経路で投与し、その後0、1、2、4及び8日目にグルコース(glucose)を投与して血中グルコースの変化を測定することにより血糖降下能を確認した。
【0108】
結果は、測定日毎にグルコース投与1分後から180分後までの血中グルコースの濃度変化を測定して各実験日毎にAUC値を求め、陰性対照群(vehicle)に対するGLP−1−hyFc5及びGLP−1−hyFc9のAUCの割合で示す。
【0109】
その結果、
図9に示すように、GLP−1−hyFc5においては2日目から血糖降下能が低下して正常化(normalization)されるのに対して、GLP−1−hyFc9においては8日目まで血中グルコース含有量が少ない状態に維持されることが確認された。これらの結果は、GLP−1−hyFc9において8日目まで血糖降下能が維持されることを意味するものである。
【0110】
3−4:GLP−1−hyFc9の体重減少効果の確認
GLP−1−hyFc9のob/ob疾病モデルにおける陰性対照群に対する薬力学的特性(PD, cumulative food intake & weight loss effect)を確認した。
【0111】
1グループ当たり10匹のob/obマウスに各タンパク質をSC(皮下)経路で週1回繰り返し投与し、その後毎週体重及び累積食餌摂取量の変化を測定した。体重については各グループの体重変化値から陰性対照群の体重変化値を引いた差で示し、累積食餌摂取量についても同様に陰性対照群の累積食餌摂取量との差で示した(
図10)。その結果、GLP−1−hyFc9は、体重変化量と累積食餌摂取量において陰性対照群に対する有意な体重減少及び食餌減少効力を示し、その効力は用量依存的な傾向を示す。
【0112】
これらをまとめると、表2に示すように、GLP−1−hyFc9はGLP−1−hyFc5に比べて優れた効能を示すことが確認された。
【0113】
【表2】
【0114】
3−5:GLP−1−linker−IgG4−mutとのADCC阻害能の比較
次に、前記実施例で多方面に優れた効能を示すGLP−1−hyFc9融合ポリペプチドにおいて、従来の公知の融合ポリペプチドとのADCC阻害能の比較により、いかに優れているかを立証する。
【0115】
特許文献1に開示されているGLP−1−linker−IgG4−mutを比較群とした。これはIgG4部位の3箇所を突然変異させることにより抗体依存性細胞毒性(ADCC, Antibody Dependent Cell-mediated Cytotoxicity)を阻害するポリペプチドである。
【0116】
前記GLP−1−linker−IgG4−mutと本発明のGLP−1−hyFc9はどちらも構造的にIgG4のCH2−CH3部位を含んでいるため、CDC(Complement Dependent Cytotoxicity)による安全性の問題はないが、ADCCに関する安全性の問題があるので、それを確認するためにADCCを引き起こす上で重要な役割を果たすFcγ受容体に対する結合能の測定を試み、そのためにSurface Plasmon Resonance(SPR, Bio-rad, #Proteon XPR36)を用いた結合力試験を行った。
【0117】
まず、NHS/EDC反応によりアミンカップリングしたbio−rad chipの各チャネルにアセテートバッファを用いてFcγ受容体を流してリガンドを固定化した。陰性対照群としては、tween 20が添加されたPBS(Phosphate Buffered Saline)を流した。各Fcγ受容体が結合したチップに各試験物質を流して結合力を測定した。
【0118】
その結果、
図11に示すように、GLP−1−linker−IgG4−mutは、免疫グロブリンFcフラグメントの残存エフェクター機能を除去するために複数のアミノ酸部位を改変したにもかかわらず、ADCCを引き起こす主要Fcγ受容体においてGLP−1−hyFc9に比べて高い結合能を示すので、潜在的に細胞毒性を引き起こす可能性があることが確認された。それに対して、GLP−1−hyFc9においては、GLP−1−linker−IgG4−mutに比べて全てのFcγ受容体との結合能が低いことが確認されたので、長期間の薬物投与でもより安全であることが分かった。
【0119】
3−6:GLP−2−hyFc9の炎症関連生物学的活性試験
前記GLP−1−hyFc9と共に、GLP−2−hyFc9においても生物学的活性試験を行った。GLP−2−hyFc9は大幅に増加した半減期を有するが、hyFc9の融合によりGLP−2−2Gペプチド自体の生物学的活性が低下することがあるので、まず生物学的活性が低下するか否かを試験した。
【0120】
GLP−2−hyFc9の生物学的活性を調べるために、GLP−2−hyFc9の刺激により増加する細胞内cAMPを測定した。GLP−2Rを発現する293細胞を6×10
4cellsずつ96wellで培養し、24時間後に0、0.1、1、3、10、100、300nMの各濃度の融合タンパク質で処理し、増加した細胞内cAMPにより誘導される膜脱分極(membrane depolarization)をfluorescent Membrane Potential Dyeにより測定した。その結果、
図12に示すように、GLP−2−2Gペプチドの活性を100%とすると、GLP−2−hyFc5融合タンパク質は27%の活性を示し、生物学的活性が大幅に低下することが確認されたが、GLP−2−hyFc9融合タンパク質は98%の活性を示し、hyFc9の融合にもかかわらず炎症関連生物学的活性が低下しないことが確認された。
【0121】
3−7:GLP−2−hyFc9の炎症性腸疾患治療効果の確認
GLP−2−hyFc9を皮下投与してインドメタシン(Indomethacin)により誘導された炎症性腸疾患モデルにおける改善効果を比較した。1グループ当たり6匹の雄Sprague Dawley Ratsに9mg/kgのインドメタシンで1日目と2日目に処理して炎症性腸疾患を誘導した。比較群として、50nmol/kgのGLP−2−2Gで1日2回ずつ3日目から8日目まで計12回処理し、50nmol/kgのGLP−2−hyFc9で2日に1回ずつ計3回処理し、その後9日目に剖検した。各群の体重の変化、小腸長の変化、小腸組織における炎症性サイトカイン(TNF−a)の発現量を比較することにより、炎症性腸疾患症状の治療効果を比較した。
【0122】
その結果、
図13に示すように、インドメタシン処理により体重と小腸長が大幅に減少し、炎症性サイトカインであるTNF−aの発現量が増加することが確認された。しかし、GLP−2−hyFc9で処理した群においては体重減少量が少なく、TNF−aの発現量も減少し、小腸長も増加したので、GLP−2−hyFc9の炎症性腸疾患治療効果が確認された。特に、GLP−2−2Gの4分の1程度の処理であるにもかかわらず、むしろより優れた効果を示すことが確認された。
【0123】
3−8:GLP−2−hyFcの腸上皮細胞増殖促進効果の確認
GLP−2−hyFc9を対象に腸上皮細胞の増殖誘導効果を確認した。比較群としてGLP−2−2Gペプチドを用いた。GLP−2は線維芽細胞(fibroblast, effector cell)に作用して成長因子(growth factors, IGF−1、VEGF、EGFなど)の生成を増加させ、増加した成長因子は腸上皮細胞の増殖を促進させることが知られている。よって、GLP−2−hyFc9の腸上皮細胞増殖促進能を確認する試験を行った。CCD−18co細胞を無血清培地で24時間培養し、その後50、100、250nMの各濃度のGLP−2−2G及びGLP−2−hyFc9で処理して24時間培養した。細胞を培養した培地(Conditioned media(CM))をCaco−2細胞で処理して3日間培養し、その後Caco−2細胞の増殖の程度をEZ Cytox(Dogen, Cat.No.EZ-1000)で測定した。その結果、
図14に示すように、GLP−2−hyFc9のCaco−2細胞増殖促進能力がGLP−2−2Gペプチドと同程度であることが確認された。要するに、hyFc9を融合しても、GLP−2の生物学的活性は天然のGLP−2と同程度を維持することが分かった。
【0124】
3−9:GLP−2−hyFc9の小腸成長促進効果の確認
GLP−1−hyFc9の薬力学的特性である小腸成長促進効果(intestinotrophic effect)を確認するために、次の実験を行った。1グループ当たり8匹の雄Sprague Dawley RatsをGLP−2−hyFc9で0、1、3、10、30、100、300nmol/kgずつ1日1回5日間処理し、その後剖検して小腸の重量を測定することにより、GLP−1−hyFc9の小腸成長促進効果を確認した。
図15に示すように、GLP−2−hyFc9で処理した群においては濃度依存的に小腸の重量の増加が確認され、ED
50は14.2nmol/kg/dayであることが確認された。
【0125】
3−10:GLP−2−hyFc9の下痢及び致死率減少効果の確認
癌細胞を殺すために用いられる抗癌化学治療剤のうち5−FUやIrinotecanなどは、小腸細胞の絨毛を形成するクリプト細胞(crypt cell)を破壊することにより絨毛萎縮を誘導するが、これは致命的な下痢を誘発することがある。抗癌化学治療剤により誘導される絨毛萎縮と下痢はさらに致死率に影響を及ぼすことがあるので、GLP−2−hyFc9で処理して抗癌化学治療剤による下痢及び致死予防効果を確認する試験を行った。1グループ当たり15匹の雄Sprague Dawley Ratsを5−FUで75mg/kgずつ1日1回計4回処理して下痢を誘導した。GLP−2−hyFc9は80nmol/kg/dayずつ計4回、又は320nmol/kg/dayで1回処理し、その後10日間下痢スコアを確認して致死率を確認した。その結果、
図16に示すように、GLP−2−hyFc9で80nmol/kg/dayずつ計4回処理した群は、処理していない群に比べて下痢スコアが減少し、320nmol/kg/dayで1回処理した群は、低用量で4回処理した群より下痢スコアが大幅に減少した。また、5−FUにより誘導された致死率(27%)も、GLP−2−hyFc9で処理した群において6.7%であり、20%減少することが確認された(
図17)。すなわち、GLP−2−hyFc9は、抗癌化学療法により誘導される下痢を予防する効果があることが確認された。