(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで提案される制震ユニットおよび建物を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。
【0010】
図1は、建物100に取り付けられた制震ユニット10の正面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った矢視図であり、建物100に取付けられた制震ユニットの側面図である。
【0011】
建物100は、
図1および
図2に示されているように、床躯体102と、上階の床躯体101と、下ランナー22と、上ランナー21と、複数のパネル11と、上部調整ユニット23Aと、下部調整ユニット23Bと、制震装置12とを備えている。
【0012】
ここで、床躯体102と上階の床躯体101とは、上下に対向するように水平方向に沿って配置された建物100の構造材である。上階の床躯体101は、床躯体102の上方に配置されており、複数の柱103,104によって支持されている。
【0013】
この実施形態では、建物100は、例えば、鉄筋コンクリート製である。床躯体102、上階の床躯体101は、それぞれ「床スラブ」などとも称される。また、この実施形態では、上階の床躯体101が開示されているが、建物の最上階などでは、上階の床躯体101は、天井を構成する構造材が含まれる。鉄筋コンクリート製の建物では天井を構成する構造材は「天井スラブ」などとも称されうる。なお、建物100は、鉄筋コンクリート製に限定されない。建物100には、鉄骨構造、鉄骨鉄筋コンクリート構造、木造軸組構造など、種々の工法が採用されうる。木造の建物では、床躯体102は、「床組み」などと称されうる。床組みには、梁などの床を構成する構造材が含まれうる。また、上階の床躯体101は、上階の床組みなどと称される。
【0014】
下ランナー22は、
図1および
図2に示されているように、床躯体102の上面に予め定められた直線に沿って配置されている。
この実施形態では、下ランナー22は、断面がL字型のいわゆるL形鋼材である。下ランナー22は、複数枚(この実施形態では、4枚)のパネル11が取り付けられるべく、所要の長さを有している。
下ランナー22の一片22aは、床躯体102の上面に固定されている。下ランナー22の他の一片22bは、床躯体102の上面から予め定められた直線に沿って立ち上がっている。また、
図2に示されているように、一直線に沿って並べられたパネル11の前面または背面に沿って2本の下ランナー22が配置されている。そして、下ランナー22の一片22bが、パネル11の前面と背面とに沿って、床躯体102の上面から立ち上がっている。
【0015】
上ランナー21は、下ランナー22の上方において上階の床躯体101の下面に沿って配置されている。
この実施形態では、上ランナー21は、断面がL字型のいわゆるL形鋼材である。上ランナー21は、複数枚(この実施形態では、4枚)のパネル11が取り付けられるべく、所要の長さを有している。
上ランナー21の一片21aは、上階の床躯体101の下面に固定されている。上ランナー21の他の一片21bは、上階の床躯体101の下面から予め定められた直線に沿って下方に延びている。また、
図2に示されているように、一直線に沿って並べられたパネル11の前面または背面に沿って2本の上ランナー21が配置されている。そして、上ランナー21の一片21bが、パネル11の前面と背面とに沿って上階の床躯体101の下面から下方に延びている。
【0016】
この実施形態では、下ランナー22と上ランナー21は、それぞれ複数枚のパネル11が取り付けられるべく、所要の長さを有する部材である。下ランナー22と上ランナー21は、かかる形態に限定されず、例えば、適当な長さの部材として、長さ方向に複数本の部材で構成されていてもよい。
【0017】
複数のパネル11は、法線を同じ方向に向け、かつ、縁11aを対向させて一列に並べられている。複数のパネル11は、上ランナー21と下ランナー22とに取付けられている。この実施形態では、
図1に示されているように、床躯体102の上面に取り付けられた下ランナー22と、上階の床躯体101の下面に取り付けられた上ランナー21とに、4枚のパネル11が取り付けられている。4枚のパネル11は、パネル11の縁11aを対向させて一列に並べられている。
図1に示された形態では、全てのパネル11の間隔が同じである。ただし、全てのパネル11の間隔が同じである必要はなく、パネル11の間隔は、パネル11間毎に同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
かかるパネル11は、例えば、鉄筋コンクリート製の建物100で間仕切りに使われるような、PCパネルが用いられうる。ここでPCは、"precast concrete"を意味しており、PCパネルは、工場などで予め製造されたコンクリートパネルを意味する。PCパネルは、例えば、鉄筋コンクリートパネルでありうる。なお、複数のパネル11は、それぞれ所要の剛性および耐力を備えたパネルであるとよく、特に言及されない限りにおいてPCパネルに限定されない。
パネル11は、建物のフロアの仕切りを兼ねていると良く、必要に応じて所要の耐火性能や遮音性能が求められる。
【0019】
上部調整ユニット23Aは、上ランナー21に対して複数のパネル11の上部を位置決めしている。下部調整ユニット23Bは、下ランナー22に対して複数のパネル11の下部を位置決めしている。この実施形態では、上部調整ユニット23Aと下部調整ユニット23Bは、それぞれピン23を備えている。
【0020】
ピン23は、複数のパネル11の上部にそれぞれ装着され、かつ、上ランナー21に保持されている。また、ピン23は、複数のパネル11の下部にそれぞれ装着され、かつ、下ランナー22に保持されている。
この実施形態では、パネル11の上部に装着されたピン23は、パネル11の上部に形成された取付孔を貫通し、パネル11の前面と背面とを挟む上ランナー21の一片21bとに支持されている。また、パネル11の下部に装着されたピン23は、パネル11の下部に形成された取付孔を貫通し、パネル11の前面と背面とを挟む下ランナー22の一片22bとに支持されている。
【0021】
これによって、各パネル11の上部は、上ランナー21に対してピン23によって位置決めされるとともに、回転自在に支持されている。各パネル11の下部は、下ランナー22に対してピン23によって位置決めされるとともに、回転自在に支持されている。また、パネル11は、回転可能なように、パネル11の上部と上階の床躯体101との間、パネル11の下部と床躯体102との間に、それぞれ隙間S2(
図1参照)が設けられた状態で、ピン23によって支持されているとよい。下ランナー22に対してパネル11を取り付ける際は、例えば、パネル11の下部と床躯体102との間に、それぞれ隙間S2(
図1参照)が設けられるように、パネル11の下部を仮支えした状態で、下ランナー22とパネル11とにピン23を通すとよい。
【0022】
制震装置12は、
図1に示されているように、複数のパネル11のうち、縁11aが対向した一対のパネル11間に取付けられている。この実施形態では、制震装置12は、パネル11の間隙S1に配置されている。
図3は、一対のパネル11間に取付けられた制震装置12を示す正面図である。制震装置12は、
図3に示されているように、一対のプレート12a,12bと、粘弾性体12cとを備えている。一対のプレート12a,12bは、一対のパネル11の対向する縁11aの端面に取付けられた長尺のプレートである。粘弾性体12cは、一対のプレート12a,12bの間に配置され、一対のプレート12a,12bにそれぞれ接着されている。
【0023】
この実施形態では、一対のプレート12a,12bの端部12a1,12b1は、それぞれ粘弾性体12cが接着された側とは反対側に折り曲げられている。一対のパネル11の対向する縁11aの端面は、プレート12a,12bの端部12a1,12b1が装着される取付穴11a1を有している。一対のプレート12a,12bの端部12a1,12b1は、それぞれ取付穴11a1に装着された状態で固定されている。この実施形態では、一対のプレート12a,12bの端部12a1,12b1は、それぞれ取付穴11a1に装着された状態で、取付穴11a1にグラウト材13(無収縮モルタル)が注入されて固定されている。なお、この実施形態では、パネル11は、PC板であり、取付穴11a1は、パネル11が工場で製造される際に、予め形成されているとよい。
【0024】
この制震装置12は、パネル11の縁11aの間に収められる。このため、パネル11の前面または背面においてパネル11から制震装置12が出っ張らないようにも施工できる。また、制震装置12は、パネル11の前面または背面において収まりがよく、化粧板や防音パネルなどの設置が容易である。この実施形態では、建物100は、鉄筋コンクリート製である。
【0025】
図4は、建物100に取り付けられた制震ユニット10の正面図である。
図4では、地震時において上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位が生じた際の制震ユニット10の状態が示されている。
図5は、
図4の状態での制震装置12を示す正面図である。なお、
図4,
図5では、上階の床躯体101と床躯体102の変位や、パネル11の傾きなどは、図面上で粘弾性体12cの変形が分かる程度に誇張されている。
【0026】
この制震ユニット10は、
図4に示されているように、地震時に建物100が揺れて、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位が生じた場合には、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位に応じて、上ランナー21と下ランナー22とにピン23によって取り付けられたパネル11が傾く。この実施形態では、上階の床躯体101と床躯体102との間に4枚のパネル11が取り付けられている。各パネル11の上部と下部は、それぞれ上階の床躯体101と床躯体102とに取り付けられた上ランナー21と下ランナー22とにピン23によって回転自在に取り付けられている。このため、各パネル11は、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位に応じて、一様に同じ方向に傾く。
【0027】
図5に示されているように、パネル11が傾くと、一対のパネル11間に取り付けられた制震装置12の一対のプレート12a,12bが相対的にずれる。一対のプレート12a,12bが相対的にずれると、これに追従して粘弾性体12cにせん断変形が生じる。このとき、粘弾性体12cに生じるせん断変形に応じて反力が生じ、建物100を揺らすエネルギーを吸収する。このように、この制震ユニット10によれば、建物100の揺れを小さく抑えるとともに、早期に減衰させることができる。
【0028】
ここでは、提案される制震ユニットおよび制震装置の一例を例示したが、ここで提案される制震ユニットは、かかる形態に限定されない。
例えば、制震装置12の一対のプレート12a,12bは、パネル11の縁11aの間において上下方向に沿ってより長くしてもよい。これにより、粘弾性体12cを上下方向に沿って縦断した際の面積を広くでき、せん断変形が生じた際に得られる反力が大きくなる。これによって、建物100を揺らすエネルギーを吸収する作用が大きくなる。
【0029】
また、制震装置12の一対のプレート12a,12bを短くし、パネル11の縁11aの間において上下方向に沿って複数の制震装置12を配置してもよい。この場合、パネル11の縁11aの間に配置された粘弾性体12cを上下方向に沿って縦断した際の合計の面積が広くなればなるほど、せん断変形が生じた際に得られる反力が大きくなる。
【0030】
制震ユニット10は、建物100に対して複数の壁に取り付けられているとよい。特に平面図において、直交する2方向に沿った壁にそれぞれ取り付けられているとよい。これによって、直交する2方向に沿った建物の揺れをそれぞれ小さくでき、また、早期に減衰させることができる。
【0031】
次に、制震装置12の他の形態を説明する。
【0032】
図6は、他の形態に係る制震装置12Aを示す横断平面図である。
図6に示す形態では、建物100に取り付けられた一対の隣り合うパネル11を横断した平面図である。
【0033】
制震装置12Aは、
図6に示されているように、一対のプレート12Aa,12Abと、第1粘弾性体12Acと、第2粘弾性体12Adと、対向プレート12Aeとを備えている。
一対のプレート12Aa,12Abは、一対のパネル11の一方の面にそれぞれ配置され、かつ、一対のパネル11にそれぞれ固定されている。
第1粘弾性体12Acは、一対のプレート12Aa,12Abのうち、一方のプレート12Aa上に配置され、かつ、当該一方のプレート12Aaに接着されている。
第2粘弾性体12Adは、一対のプレート12Aa,12Abのうち、他方のプレート12Ab上に配置され、かつ、当該他方のプレート12Abに接着されている。
対向プレート12Aeは、第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adを挟んで一対のプレート12a,12bに対向し、かつ、第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adとにそれぞれ接着されている。
【0034】
この実施形態では、制震装置12Aは、パネル11の両面に取り付けられている。具体的には、パネル11の両面において、それぞれ同じ位置に制震装置12Aが配置されている。そして、パネル11を挟んで同じ位置に取り付けられたプレート12Aa,12Ab、および、パネル11を貫通するように、両ねじボルト28が取り付けられている。そして、両ねじボルト28の両端にナット29が取り付けられることによって、プレート12Aa,12Abがパネル11に取り付けられている。
【0035】
この制震装置12は、地震時に建物100が揺れると、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位に応じてパネル11が傾く(
図4参照)。この際、パネル11の傾きに応じて、一対のプレート12Aa,12Abの位置が相対的にずれる。第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adは、対向プレート12Aeが接着されている。このため、一対のプレート12Aa,12Abと、対向プレート12Aeとに接着された第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adとにそれぞれせん断変形が生じる。このとき、第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adに生じるせん断変形に応じて反力が生じ、建物100(
図4参照)を揺らすエネルギーを吸収する。このように、この制震装置12Aによれば、建物100の揺れを小さく抑えるとともに、早期に減衰させることができる。
【0036】
ここで提案される制震装置12Aでは、パネル11の広い面に沿って第1粘弾性体12Acと第2粘弾性体12Adが取り付けられるので、粘弾性体の面積が広く確保されやすい。粘弾性体の面積が広く確保されることによって、同じ変位のせん断変形でも、より大きな反力が得られうる。また、粘弾性体の面積を広く確保するため、パネル11の間隙S1に対して、制震装置12Aを複数配置してもよい。
【0037】
なお、この実施形態では、制震装置12Aは、一対のパネル11の両面に配置されている。この場合、一対のパネル11の両面に制震装置12Aが取り付けられているので、より多くの粘弾性体12Ac,12Adをパネル11に取り付けることができる。
この形態の制震装置12Aは、パネル11から出っ張るので、一対のパネル11の片面のみに設けられていてもよい。この場合、制震装置12Aが設けられていない側では、パネル11に出っ張らないので、片側において制震装置12Aの設置を目立たなくできる。パネル11に制震装置12Aが出っ張ることに制約があるような場合には、パネル11の片面のみに制震装置12Aを取り付けるとよい。
【0038】
以上のとおり、ここで提案される建物100は、下ランナー22と、上ランナー21と、複数のパネル11と、上部調整ユニット23Aと、下部調整ユニット23Bと、制震装置12とを備えている。下ランナー22は、床躯体102の上面に予め定められた直線に沿って配置されている。上ランナー21は、下ランナー22の上方において上階の床躯体101の下面に沿って配置されている。複数のパネル11は、上ランナー21と下ランナー22とに取付けられ、縁11aを対向させて一列に並べられている。上部調整ユニット23Aは、上ランナー21に対して複数のパネル11の上部を位置決めしている。下部調整ユニット23Bは、下ランナー22に対して複数のパネル11の下部を位置決めしている。制震装置12は、複数のパネル11のうち、縁11aが対向した一対のパネル11間に取付けられている。
【0039】
かかる建物100によれば、上部調整ユニット23Aと下部調整ユニット23Bとによって、地震時に建物100が揺れると、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位に応じてパネル11が傾く(
図4参照)。この際、パネル11の傾きに応じて、一対のプレート12Aa,12Abの位置が相対的にずれる。そして、制震装置12によって適当な反力が得られて、揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰される。
【0040】
また、この実施形態では、各パネル11が、上部調整ユニット23Aまたは下部調整ユニット23Bとしてのピン23によって、上ランナー21と下ランナー22に取り付けられている。各パネル11は、上ランナー21と下ランナー22とに対して予め定められた位置に配置されて回転する。また、制震装置12によって得られる反力が、ピン23および上ランナー21および下ランナー22を通じて、建物100の構造材、ここでは、上階の床躯体101と床躯体102に伝達される。かかる反力によって建物100に生じる揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰される効果が確実に得られる。
【0041】
ここで、上部調整ユニット23Aおよび下部調整ユニット23Bは、上記のように上ランナー21と下ランナー22に、パネル11の上部と下部をピン23で支持する構造に限定されない。上部調整ユニット23Aと下部調整ユニット23Bは、種々の形態が採用されうる。上部調整ユニット23Aと下部調整ユニット23Bは、上下で異なる構造を採用してもよい。以下に、上部調整ユニット23Aと下部調整ユニット23Bの他の形態を説明する。
【0042】
図7は、上部調整ユニット23Aおよび下部調整ユニット23Bの他の形態を示す正面図である。
上部調整ユニット23Aは、上部位置決め部材24と、第1上スペース調整部材31とを備えている。下部調整ユニット23Bは、下部位置決め部材26と、第1下スペース調整部材41とを備えている。上部位置決め部材24は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの上部を上ランナー21に対して位置決めするための部材である。この実施形態では、上部位置決め部材24は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの上部に装着され、かつ、上ランナー21に保持されたピンである。
下部位置決め部材26は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの下部を前記下ランナー22に対して位置決めするための部材である。この実施形態では、下部位置決め部材26は、端部に配置されたパネル11Aの下部に装着され、かつ、下ランナー22に保持されたピンである。
この実施形態では、複数のパネル11のうち両端部に配置されたパネル11Aの上部と下部は、上部位置決め部材24としてのピンおよび下部位置決め部材26としてのピンによって、上ランナー21と下ランナー22に対して回転自在に取り付けられている。複数のパネル11のうち両端部に配置されたパネル11Aの間には、パネル11の上部の間に介在した第1上スペース調整部材31と、パネル11の下部の間に介在した第1下スペース調整部材41とを備えている。
【0043】
ここで、
図7では、第1上スペース調整部材31と第1下スペース調整部材41が設けられた位置が、破線31,41の円によって囲まれている。
図7では、第1上スペース調整部材31と第1下スペース調整部材41の図示は省略されている。
図8、
図9は、第1上スペース調整部材31を模式的に図示した正面図である。ここでは、
図8に沿って、第1上スペース調整部材31を説明する。
【0044】
第1上スペース調整部材31は、
図8に示されているように、隣り合うパネル11間に取り付けられている。ここで、第1上スペース調整部材31は、調整ボルト31aと、位置決めナット31b、および摺動材31cとを備えている。
【0045】
調整ボルト31aは、隣り合うパネル11のうち、一方のパネル11の縁11aに、他方のパネル11に向けて突出するように取り付けられている。ここで、パネル11の縁11aには、調整ボルト31aを取り付けるためのねじ穴が形成されている。調整ボルト31aには、位置決めナット31bが取り付けられており、パネル11の縁11aに形成されたねじ穴に装着されている。ここで、調整ボルト31aに位置決めナット31bを取り付ける位置によって、パネル11の縁11aから調整ボルト31aの突出量が調整される。摺動材31cは、他方のパネル11の縁11aに取り付けられている。調整ボルト31aは、他方のパネル11の摺動材31cに当たるように、その突出量が調整される。調整ボルト31aの突出量は、調整ボルト31a毎に調整されている。第1下スペース調整部材41は、図示を省略するが、第1上スペース調整部材31と同様の構造が採用されている。
【0046】
図7に示された形態では、地震時に建物100が揺れると、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位に応じて、上ランナー21と下ランナー22にピン24,26で支持された両端のパネル11が傾く(
図4参照)。第1上スペース調整部材31と第1下スペース調整部材41とによって、パネル11の間隔が維持される。このため、両端のパネル11が傾くと、両端のパネル11の間に配置されたパネル11もそれぞれ傾く。
図9は、パネル11が傾いた際の、第1上スペース調整部材31の状態を示している。パネル11が傾いた際、
図9に示されているように、第1上スペース調整部材31の調整ボルト31aは、摺動材31cに当たりつつ滑る。このため、パネル11の間隔がスムーズに維持される。従って、
図1に示された建物100と同様に機能する。
図7に示された建物100は、パネル11の傾きに応じて、制震装置12によって適当な反力が得られる。かかる反力によって、建物100の揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰される。ここでは、第1上スペース調整部材31と第1下スペース調整部材41の構造を例示しているが、第1上スペース調整部材31と第1下スペース調整部材41は、かかる形態に限定されない。ここで、摺動材31cは、調整ボルト31aが当たりつつ滑るため、所要の剛性を有し、かつ、低摩擦である材料が用いられることが好ましい。かかる観点において、摺動材31cには、例えば、ステンレスが用いられうる。
【0047】
図10は、上部調整ユニット23Aおよび下部調整ユニット23Bの他の形態を示す正面図である。
【0048】
図10では、上部位置決め部材24は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの上部を上ランナー21に対して位置決めする、上部位置決め部材24として、反力部材51と、第2上スペース調整部材32とを備えている。
ここで、反力部材51は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの縁に対向するように、上ランナー21と下ランナー22との間に取付けられている。そして、上ランナー21と下ランナー22とにピン51aによってピン支持されている。
第2上スペース調整部材32は、端部に配置されたパネル11Aの上部と反力部材51との間に介在している。
【0049】
また、下部位置決め部材26は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの上部を上ランナー21に対して位置決めする、下部位置決め部材26として、反力部材51と、第2上スペース調整部材32とを備えている。
ここで、反力部材51は、複数のパネル11のうち端部に配置されたパネル11Aの縁に対向するように、上ランナー21と下ランナー22との間に取付けられている。そして、上ランナー21と下ランナー22とにピン51aによってピン支持されている。
第2上スペース調整部材32は、端部に配置されたパネル11Aの上部と反力部材51との間に介在している。
【0050】
図10に示された形態では、反力部材51と端部のパネル11Aとの間に設けられた第2上スペース調整部材32および第2下スペース調整部材42と、パネル11間に設けられた第1上スペース調整部材31および第1下スペース調整部材41とによって、反力部材51と複数のパネル11の間隔が維持されている。
図10において、第2上スペース調整部材32および第2下スペース調整部材42が設けられた位置は、破線32,42の円によって囲まれている。
【0051】
ここで図示は省略されるが、地震時に建物100が揺れると、上階の床躯体101と床躯体102とに水平方向の相対的な変位が生じる。床躯体102と上階の床躯体101とに水平方向の相対的な変位が生じると、上ランナー21と下ランナー22とに水平方向の相対的な変位が生じる。そして、上ランナー21と下ランナー22とに取り付けられた反力部材51が傾く。反力部材51が傾くと、反力部材51の間に配置された複数のパネル11が反力部材51の傾きに応じて傾く。そして、パネル11の傾きに応じて、パネル11間に取り付けられた制震装置12によって適当な反力が得られる。かかる反力によって、建物100の揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰される。
【0052】
図11は、上部調整ユニット23Aおよび下部調整ユニット23Bの他の形態を示す正面図である。
図11に示された形態では、下部調整ユニット23Bは、支持部材61を備えている。
支持部材61は、下ランナー22に沿ったパネル11の幅方向の中間部位を、下ランナー22に対して位置決めするとともに、パネル11が幅方向に揺動できるように、パネル11の幅方向の中間部位の下面を支持する部材である。なお、
図11では、下ランナー22は、仮想線として2点鎖線で示されている。
【0053】
この実施形態では、
図11に示されているように、支持部材61は、台座61aと、半円筒状の側面を有する支持部61bとを備えている。台座61aは、床躯体102の上面に取り付けられる部材である。支持部61bは、半円筒状の側面を上に向け、かつ、半円筒状の軸をパネル11の法線方向に向けて台座61aの上に取り付けられている。この実施形態では、パネル11の下端部には、円弧状の凹部62を備えている。円弧状の凹部62は、支持部材61の支持部61bの半円筒状の側面に嵌められている。パネル11の上部調整ユニット23Aは、パネル11の上部を貫通し、パネル11の前面と背面とを挟む上ランナー21の一片21bとに支持されたピン23を備えている。
【0054】
地震時に建物100が揺れると、上階の床躯体101と床躯体102に水平方向の相対的な変位が生じる。
図11に示された形態では、パネル11は、床躯体102に対して支持部材61によって位置決めされた状態で、上階の床躯体101の水平方向の相対的な変位に応じて揺動する。パネル11が傾く際に、パネル11の間隔が維持される。そして、パネル11の傾きに応じて、制震装置12によって適当な反力が得られる。かかる反力によって、建物100の揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰される。
図11に示されているように、パネル11の上部を位置決めする上部調整ユニット23Aと、パネル11の下部を位置決めする下部調整ユニット23Bとは、それぞれ異なる構成が採用されてもよい。
【0055】
以上のとおり、ここで提案される制震ユニットの一実施形態は、例えば、
図1に示されているように、法線を同じ方向に向け、かつ、予め定められた間隔で縁を対向させて一列に並べられた複数のパネル11と、複数のパネル11のうち、縁11aが対向した一対のパネル11間に取付けられた制震装置12とを備えている。そして、制震ユニット10および制震装置12について、種々の形態を例示した。ここで提案される制震ユニット10は、建物100の揺れを小さく抑えること、および、揺れを早期に減衰させることに寄与しうる。また、ここで提案される建物100は、上述のように複数のパネル11と制震装置12とを備えた制震ユニット10が、建物100の床躯体102と上階の床躯体101との間に取り付けられている。地震時には、床躯体102と上階の床躯体101との相対的な変位に応じて、制震装置12が作用することによって、揺れが小さく抑えられ、かつ、早期に減衰されうる。
【0056】
ここで提案される制震装置、制震ユニット、建物について、種々説明したが、ここで提案される制震装置、制震ユニット、建物は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
下ランナー22は、床躯体の上面に予め定められた直線に沿って配置されている。上ランナー21は、下ランナー22の上方において上階の床躯体102の下面に沿って配置されている。複数のパネル11は、上ランナー21と下ランナー22とに取付けられ、縁11aを対向させて一列に並べられている。上部調整ユニット23Aは、上ランナー21に対して複数のパネル11の上部を位置決めする。下部調整ユニット23Bは、下ランナー22に対して複数のパネル11の下部を位置決めする。制震装置12は、複数のパネル11のうち、縁11aが対向した一対のパネル11間に取付けられている。