【実施例】
【0044】
実施例1
(光沢被覆材の作製)
75重量部の水にポリビニルアルコール25重量部を懸濁させ、95℃に加熱して溶解させ、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を得た。
また、1Lのビーカーに水26.4重量部を入れ、撹拌しながら非イオン系界面活性剤1.3重量部、陰イオン系界面活性剤0.3重量部を添加した。次いで、タルク(平均粒子径10μm)10重量部、酸化チタンで表面修飾された雲母(以下、「表面修飾雲母」と記すことがある。)(平均粒子径25μm)20重量部をさらに添加して10分間撹拌した。次に、前記作製した濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を20重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを4.0重量部、顔料としての水系分散体(フタロシアン系青色)18重量部を添加し、約30分間撹拌した。なお、すべての混合は室温で実施した。得られた光沢被覆材の沈殿性、再分散性及び60°鏡面光沢度を後述の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0045】
(被覆種子の作製)
得られた光沢被覆材15mLに水10mLを加えて希釈液を作製した。そして、roto−stat式種子処理装置を用いてキャベツ種子200gを希釈液8mLで被覆した。
処理装置の内壁等への光沢被覆材の付着状態(加工性)を後述の方法で評価した。また、得られた被覆種子の外観(着色状態)、被覆層の種子からの剥離性、光沢感について後述の方法で評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
(発芽試験)
ろ紙2枚を敷いた直径9cmのシャーレを用意し、そこに水4.5mLを滴下した後、被覆種子50粒をそれぞれ置床し、温度20℃で約2000ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。被覆種子の発芽率は、被覆していない種子の被覆率を同等であった。
【0046】
実施例2
水を27.1重量部、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を20重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを3.3重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0047】
実施例3
水を28.9重量部、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を16重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを5.5重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0048】
実施例4
水を26.9重量部、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を16重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを7.5重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0049】
実施例5
水を28.4重量部、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を12重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを10重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0050】
実施例6
水を26.4重量部、タルク(平均粒子径10μm)を6.7重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を23.3重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0051】
実施例7
水を26.4重量部、タルク(平均粒子径10μm)を7.5重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を22.5重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0052】
実施例8
水を26.4重量部、タルク(平均粒子径10μm)を15重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を15重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0053】
実施例9
水を23.1重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を22.3重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0054】
実施例10
水を33.1重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を13.3重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0055】
比較例1
水を27.9重量部、濃度25%のポリビニルアルコール水溶液を20重量部、エチレン酢酸ビニル共重合体の50%エマルジョンを2.5重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0056】
比較例2
タルク(平均粒子径10μm)を5重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を25重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0057】
比較例3
タルク(平均粒子径10μm)を20重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を10重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0058】
比較例4
水を39.8重量部、表面修飾雲母(平均粒子径25μm)を6.6重量部とした以外は実施例1と同様にして光沢被覆材を作製し、そして作製した光沢被覆材で種子を被覆した。光沢被覆材の沈殿性、再分散性、60°鏡面光沢度、加工性、被覆種子の外観、被覆層の剥離性及び光沢感を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0059】
実施例11
実施例1で作製した光沢被覆材20mLに水20mLを加えて希釈液を作製した。roto−stat式種子処理装置を用いて、トマト種子200gを希釈液32mLで被覆した。得られた被覆種子の外観、剥離性及び光沢感について下記の方法で評価した。評価結果を表3に示す。また、得られた被覆種子の発芽率を下記の方法で測定した。測定結果を表3に合わせて示す。
(発芽試験)
ろ紙2枚を敷いた直径9cmのシャーレを用意し、そこに水4.5mLを滴下した後、被覆種子50粒をそれぞれ置床し、温度20℃で約2000ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。
【0060】
実施例12
実施例11と同様にしてホウレンソウ種子200gを希釈液16mLで被覆した。
得られた被覆種子の外観、剥離性及び光沢感について下記の方法で測定した。評価結果を表3に示す。また、得られた被覆種子の発芽率を下記の方法で測定した。測定結果を表3に合わせて示す。
(発芽試験)
長さ60cm、2.5cm幅で蛇腹状に折ったろ紙に5粒×10列になるように被覆種子を挟み込み、そこに水15mLを滴下した後、温度25℃で約2000ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。
【0061】
実施例13
実施例11と同様にしてカボチャ種子200gを、希釈液16mLで被覆した。
得られた被覆種子の外観、剥離性及び光沢感について下記の方法で測定した。評価結果を表3に示す。また、得られた被覆種子の発芽率を下記の方法で測定した。測定結果を表3に合わせて示す。
(発芽試験)
長さ60cm、2.5cm幅で蛇腹状に折ったろ紙に1粒×5列、2粒×5列を交互となるように種子を挟み込み、そこに水15mLを滴下した後、温度25℃で約900ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。
【0062】
実施例14
実施例11と同様にしてメロン種子200gを、希釈液16mLで被覆した。
得られた被覆種子の外観、剥離性及び光沢感について下記の方法で測定した。
評価結果を表3に示す。また、得られた被覆種子の発芽率を下記の方法で測定した。測定結果を表3に合わせて示す。
(発芽試験)
長さ60cm、2.5cm幅で蛇腹状に折ったろ紙に2粒×5列、3粒×5列を交互となるように種子を挟み込み、そこに水15mLを滴下した後、温度25℃で約900ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。
【0063】
実施例15
実施例11と同様にしてエダマメ種子200gを、希釈液16mLで被覆した。
得られた被覆種子の外観、剥離性及び光沢感について下記の方法で測定した。
評価結果を表3に示す。また、得られた被覆種子の発芽率を下記の方法で測定した。測定結果を表3に合わせて示す。
(発芽試験)
長さ60cm、2.5cm幅で蛇腹状に折ったろ紙に2粒×10列になるように種子を挟み込み、そこに水15mLを滴下した後、温度25℃で約2000ルクスの光条件下で保存して7日目の発芽率(%)を測定した。
【0064】
(光沢被覆材の沈殿性の評価)
光沢被覆材10mLを15mLの試験管に入れ、14日間静置後に目視によって下記基準で評価した。
「○」:沈殿分離なし。
「△」:不明瞭ながら沈殿層あり。
「×」:沈殿層あり。
【0065】
(光沢被覆材の再分散性)
沈殿層の有無の評価試験において沈殿層が形成された光沢被覆材について、試験管を上下に5回撹拌し目視によって再分散性を下記基準で評価した。
「○」:容易に再分散できる。
「△」:撹拌によって概ね再分散できる。
「×」:撹拌しても再分散できない。
【0066】
(光沢被覆材の60°鏡面光沢度の測定)
光沢被覆材を水で2倍に希釈し、アプリケーターを用いて厚さ50μmとなるように黒色のケント紙(厚み0.5mm、60°鏡面光沢度:4.6)に塗布し一晩乾燥させる。そしてさらに恒温恒湿室に1日静置する。その後、光源:ハロゲン電球、受光絞り:60°、測定角度:60°として、測定装置(デジタル光沢計GM-3D型(村上色彩技術研究所製))を用いて60°鏡面光沢度を測定する。
【0067】
(光沢被覆材の加工性)
処理装置の内壁等への光沢被覆材の付着状態を目視により下記基準で評価した。
「○」:全く付着なし。
「△」:わずかに付着あり。
「×」:大量に付着あり。
【0068】
(被覆種子の外観)
被覆種子の外観(着色状態)を目視により下記基準で評価した。
「○」:着色良好。
「△」:着色にややくすみ有り。
「×」:着色が不十分。
【0069】
(被覆層の剥離)
被覆種子5gを50mLスチロール棒瓶に封入し、30分振盪した後、剥離状態を目視によって下記基準で評価した。
「○」:まったく剥離なし。
「△」:わずかに剥離あり。
「×」:大量の剥離あり。
【0070】
(被覆種子の光沢感)
被覆種子の光沢感を目視により下記基準で評価した。
「○」:光沢感が良好。
「△」:光沢感やや良好
「×」:光沢感が不十分。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1に示すように、実施例2〜5の光沢被覆材は、実施例1の光沢被覆材を基準としてPVAとEVAとの質量比率を3:1〜0.6:1の範囲で変えたものであり、実施例6〜10の光沢被覆材は、実施例1の光沢被覆材を基準として、表面修飾雲母(光輝材)とタルクとの質量比率を3.5:1〜1:1の範囲で変えたものであって、実施例1〜10のいずれの光沢被覆材も加工性、沈殿層の有無、再分散性、外観、剥離、光沢感の各評価項目において実使用上問題はなかった。
【0074】
これに対して、PVAとEVAとの質量比率が3.8:1と本発明の規定範囲を超えた比較例1の光沢被覆材では、加工性が悪く処理装置の内壁等への被覆材の大量の付着が見られた。また、被覆層の種子からの大量の剥離が見られた。
【0075】
また、表面修飾雲母とタルクとの質量比率が5:1と本発明の規定範囲を超えた比較例2の光沢被覆材では、被覆層の種子からの大量の剥離が見られた。反対に、表面修飾雲母とタルクとの質量比率が0.5:1と本発明の規定範囲よりも小さい比較例3の光沢被覆材では光沢感が不十分であった。また、表面修飾雲母とタルクとの質量比率が0.66:1と本発明の規定範囲よりも小さく、しかも表面修飾雲母の含有量が6.6質量%と少ない比較例4の光沢被覆材では、沈殿層が形成され撹拌しても再分散せず、また光沢感が不十分であった。
【0076】
また表2に示すように、実施例11〜15は、実施例1で作製した光沢被覆材を用いて種子形状の異なるトマト、ホウレンソウ、カボチャ、メロン、エダマメの各種子を被覆したものであって、いずれの実施例においても実施例1のキャベツ種子の場合と同様に、外観、剥離、光沢感の各評価項目について問題はなかった。また、発芽性能は非被覆種子と同等であった。