(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明、及び、実質的に同一の構成に対する重複説明などを省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。例えば、以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0015】
(実施の形態1)
[1.有機EL表示装置]
まず、本実施の形態に係る有機EL表示装置の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の概要構成を示すブロック図である。
図2は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の回路構成を示す回路図である。
【0016】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、表示領域2と制御部3とを備える。表示領域2には、後述する画素4が行列状に配置されている。制御部3は、表示領域2に配置された複数の画素4に対する種々の制御を行う。制御部3は、
図1に示すように、タイミング制御回路5と、走査線駆動回路6と、データ線駆動回路7と、電圧制御回路8とを備える。
【0017】
タイミング制御回路5は、例えば、走査線駆動回路6と、データ線駆動回路7と、電圧制御回路8との同期、及び、1フレーム毎の有機EL表示装置1の動作のタイミング制御等を行う。
【0018】
走査線駆動回路6は、タイミング制御回路5からの制御信号に基づいて、表示領域2のスキャン線60を駆動する。例えば、走査線駆動回路6は、ゲートドライバICである。具体的には、走査線駆動回路6は、垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて、各画素4に、スキャン信号を行毎に出力する。スキャン信号は、スキャン線60に出力され、接続先のスイッチングトランジスタ43(
図2参照)の導通及び非導通を制御するために用いられるパルス信号である。
【0019】
データ線駆動回路7は、タイミング制御回路5からの制御信号に基づいて、表示領域2のデータ線70を駆動する。例えば、データ線駆動回路7は、ソースドライバIC(データドライバIC)である。具体的には、データ線駆動回路7は、水平同期信号に基づいて、各画素4に、当該画素の輝度を示す画素信号を出力する。画素信号は、データ線70に出力され、接続先の画素4の輝度を指示するために用いられる。
【0020】
電圧制御回路8は、表示領域2に各種電源電圧を供給する。各種電源電圧とは、
図2に示す画素例では、Vtft及びVelであり、それぞれ電源線80及び81(
図1には示していない)を介して各画素4に供給される。なお、電圧制御回路8は、例えば、ゲートドライバIC又はデータドライバICに組み込まれていてもよい。
【0021】
なお、有機EL表示装置1は、例えば、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などの作業用メモリ、及び、通信回路を有するとしてもよい。例えば、画素信号は、例えば、CPUが制御プログラムを実行することにより生成されてもよい。
【0022】
[2.画素の回路構成]
次に、画素4の回路構成について、
図2を用いて説明する。
【0023】
画素4は、有機EL素子40と、駆動トランジスタ41と、保持容量42と、スイッチングトランジスタ43とを備える。また、画素4には、スキャン線60と、データ線70と、電源線80と、電源線81とが接続されている。データ線70を介して供給された画素信号に応じた電圧(すなわち、信号電圧)に対応する輝度で有機EL素子40が発光する。
【0024】
有機EL素子40は、供給された電流に応じて発光する発光素子の一例である。具体的には、有機EL素子40は、駆動トランジスタ41から供給される電流量に応じた輝度で発光する。有機EL素子40は、カソードが電源線81に接続され、アノードが駆動トランジスタ41のソースに接続されている。
【0025】
駆動トランジスタ41は、有機EL素子40に電流を供給する。例えば、駆動トランジスタ41は、有機EL素子40への電流の供給量を制御する電圧駆動型の駆動素子であり、有機EL素子40に電流を流すことで有機EL素子40を発光させる。
【0026】
具体的には、駆動トランジスタ41のドレインは、電源線80に接続され、ゲートはスイッチングトランジスタ43を介してデータ線70に接続されている。また、駆動トランジスタ41のゲートは、保持容量42の第1電極に接続され、ソースは保持容量42の第2電極及び有機EL素子40のアノードに接続されている。
【0027】
なお、本実施の形態では、後述する発光期間と容量リセット期間とでは、駆動トランジスタ41のソースとドレインとが入れ替わる。すなわち、発光期間では、駆動トランジスタ41の電源線80側の端子がドレインで、電源線81側の端子がソースであるのに対して、容量リセット期間では、駆動トランジスタ41の電源線81側の端子がドレインで、電源線80側の端子がソースになる。ただし、説明を簡単にするため、以下では、駆動トランジスタ41の電源線80側の端子をドレイン、電源線81側の端子をソースとして説明する。他の実施の形態でも同様である。
【0028】
駆動トランジスタ41は、保持容量42に保持された電圧に応じた電流量で、有機EL素子40に電流を流すことができる。つまり、有機EL表示装置1は、発光動作によって、保持容量42に保持された電圧に応じた輝度で有機EL素子40を発光させることができる。
【0029】
ここで、駆動トランジスタ41の閾値電圧は、駆動トランジスタ41が設けられたTFT基板形成時の初期的な分布及び経時的な閾値電圧シフトなどによって画素4毎にばらつくことがある。このばらつきによる影響は、逆バイアス電圧を印加することによって抑制することができる。具体的には、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に、信号電圧とは極性の異なる逆バイアス電圧を印加する。本実施の形態では、信号電圧は、0〜10Vの範囲の正バイアス電圧であるので、逆バイアス電圧は、負バイアス電圧(例えば、−10V)である。
【0030】
なお、逆バイアス電圧の印加動作の詳細については、後で説明する。
【0031】
保持容量42は、駆動トランジスタ41のゲートとソースとの間に接続されている(保持容量42には閾値電圧だけでなく、逆バイアス電圧や画像信号電圧も保持される)。具体的には、保持容量42の第2電極は、駆動トランジスタ41のソース(電源線81側)と有機EL素子40のアノードとが接続されたノードに接続されている。保持容量42の第1電極は、駆動トランジスタ41のゲートに接続されている。また、保持容量42の第1電極は、スイッチングトランジスタ43を介してデータ線70と接続されている。
【0032】
スイッチングトランジスタ43は、駆動トランジスタ41のゲートとデータ線70との間に接続されたスイッチの一例である。スイッチングトランジスタ43は、画素信号を供給するためのデータ線70と保持容量42の第1電極(すなわち、駆動トランジスタ41のゲート)との導通及び非導通を切り換える。
【0033】
具体的には、スイッチングトランジスタ43は、ドレイン及びソースの一方がデータ線70に接続され、ドレイン及びソースの他方が保持容量42の第1電極に接続され、ゲートがスキャン線60に接続されている。言い換えると、スイッチングトランジスタ43は、データ線70を介して供給された画素信号に応じた電圧(すなわち、信号電圧)を保持容量42に書込むための機能を有する。
【0034】
スキャン線60は、表示領域2において、複数の画素4の行毎に設けられている。スキャン線60は、走査線駆動回路6に接続され、スイッチングトランジスタ43の導通及び非導通を切り替えるためのスキャン信号が伝達される。
【0035】
データ線70は、表示領域2において、複数の画素4の列毎に設けられている。つまり、データ線70は、複数の画素4の列毎に、当該列に配置された画素4に接続されている。例えば、第m列のデータ線70は、第m列の複数の画素4のスイッチングトランジスタ43に接続されている。
【0036】
データ線70は、画素信号に応じた信号電位を含む複数の電位に選択的に設定される。本実施の形態では、データ線70は、信号電位と、リセット電位と、逆バイアス電位とに選択的に設定される。
【0037】
信号電位は、画素4の輝度の応じた電位であり、保持容量42の第1電極(すなわち、駆動トランジスタ41のゲート)に供給される電位である。なお、画素4の輝度は、保持容量42に書込まれる信号電圧に応じて決まる。したがって、信号電位は、画素4の輝度に応じた信号電圧を基準電位に加えた値に設定される。なお、基準電位は、電源線80に設定される第2電位(後述する)である。
【0038】
リセット電位は、駆動トランジスタ41を導通させるための電位である。本実施の形態では、リセット電位は、信号電位とは独立して予め定められた電位である。具体的には、リセット電位は、駆動トランジスタ41の閾値電圧(例えば、2V)より高い電圧を基準電位に加えた値である。
【0039】
逆バイアス電位は、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に逆バイアス電圧を印加するための電位である。具体的には、逆バイアス電位は、基準電位よりも低い電位である。例えば、逆バイアス電位は、信号電位の最低値よりも低い電位であり、負の電位である。
【0040】
電源線80及び81は、例えば、表示領域2において、複数の画素4の行毎に設けられている。つまり、電源線80及び81は、複数の画素4の行毎に、当該行に配置された画素4に接続されている。例えば、第n行の電源線80及び81は、第n行の複数の画素4の駆動トランジスタ41のドレインに接続されている。なお、電源線80は行毎に配置され、電源線81は列毎に配置されてもよい。
【0041】
電源線80は、駆動トランジスタ41のドレインに接続され、有機EL素子40を発光させる電流を供給するための電源線である。電源線80は、第1電位と、第1電位より低い第2電位とに選択的に設定される。
【0042】
第1電位は、有機EL素子40に電流を流すための電位であり、例えば、電源線81に設定される電位より高い。電源線80に第1電位が設定された場合に、有機EL素子40を発光させる電流を供給することができる。例えば、第1電位は、16Vである。
【0043】
第2電位は、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットする際の基準となる電位である。また、第2電位は、保持容量42に信号電圧を書込む際の基準となる電位である。
【0044】
例えば、第2電位は、電源線81に設定される電位に、有機EL素子40の閾値電圧(例えば、2V)より低い電圧を加えた電位である。例えば、第2電位は、1Vである。なお、第2電位は、電源線81に設定される電位より低くてもよい。つまり、電源線80に第2電位が設定された場合に、有機EL素子40を発光させる電流を供給しないように、第2電位の値は決められる。
【0045】
電源線81は、有機EL素子40のカソードに接続された電源線である。例えば、電源線81は、接地されている。言い換えると、電源線81には、0Vの電位が設定される。
【0046】
以上のような画素4の構成により、有機EL表示装置1は、駆動トランジスタ41に精度良く逆バイアス電圧を印加することができ、より高精度にトランジスタの閾値電圧の経時変動を抑制することができる。このメカニズムについては、以下の動作説明において詳しく説明する。
【0047】
なお、画素4を構成する複数のトランジスタ(駆動トランジスタ41及びスイッチングトランジスタ43)はn型TFTとして以下では説明を行うが、これに限らない。複数のトランジスタは、p型TFTでもよい。また、複数のトランジスタにおいて、n型TFTとp型TFTとが混在して用いられてもよい。
【0048】
[3.有機EL表示装置の動作]
次に、有機EL表示装置1の動作について、
図3〜
図6Bを用いて説明する。なお、以下で説明する各動作は、制御部3により実行される。なお、以下では、駆動トランジスタ41の閾値電圧が2Vである場合を例に説明する。
【0049】
[3−1.低階調発光時]
まず、画素4の低階調発光時の動作について、
図3、
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
【0050】
図3は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の低階調発光時の動作を示すタイミングチャートである。
図4A及び
図4Bは、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の低階調発光時の動作を示す状態遷移図である。
【0051】
具体的には、
図3は、上から順に、電源線80に設定される電位“Vtft”、データ線70に設定される電位“Vdata”、スキャン線60に供給されるスキャン信号“Scan”、並びに、駆動トランジスタ41のゲート電位(太実線)及びソース電位(細実線)を示している。
【0052】
図3に示すように、電源線80には、第1電位Vtft_Hと、第2電位Vtft_Lとが選択的に設定される。具体的には、発光期間には、Vtft_Hが設定され、非発光期間には、Vtft_Lが設定される。
【0053】
また、データ線70には、複数の画素4の行毎の信号電位(
図3の“映像”)が、1水平期間(1H)毎に順に設定される。具体的には、1水平期間は、データ線70に信号電位が設定される第1期間101と、データ線70にリセット電位が設定される第2期間102と、データ線に逆バイアス電位が設定される第3期間103とを含んでいる。言い換えると、データ線70は、1水平期間に3つの異なる電位に設定される。すなわち、本実施の形態では、データ線駆動回路7は、1水平周波数(すなわち、1水平期間の逆数:1/1H)の3倍の周波数でデータ線70を駆動する。
【0054】
なお、第1期間101、第2期間102及び第3期間103は、互いに同じ長さの期間、具体的には、1水平期間の3分の1の期間であるが、これに限らない。第1期間101、第2期間102及び第3期間103は、互いに異なる長さの期間でもよい。例えば、信号電位は、各画素4の保持容量42に正確な電圧を設定する必要があるため、第1期間101は長めに設定することが好ましい。一方、リセット電位については、駆動トランジスタ41を導通させることができればよく、信号電位ほど正確に電圧を設定する必要は無いため、第2期間102は第1期間101よりも短くても構わない。逆バイアス電位については、信号電位ほど正確に設定する必要は無いが、(駆動トランジスタの閾値電圧の経時変動を抑制するために適切な値を設定せねばならないため、)リセット電位と同等以上の精度で、電圧を設定することが好ましい。つまり、第1期間101が、第2期間102及び第3期間103よりも長くなるように設定することがより好ましい。
【0055】
ここで、
図3に示す例では、時刻t4で信号電圧の書込みを行う。つまり、
図3に示す信号電位は、時刻t4の信号電位を除いて、他の行の画素に対応する信号電位を示している。
【0056】
スキャン線60には、スイッチングトランジスタ43を導通させるためのスキャン信号111〜113が所定のタイミングで供給される。
図3に示すように、スキャン信号111〜113は、パルス信号であり、それぞれのパルス幅は、第1期間101、第2期間102及び第3期間103の各々より短い期間である。スキャン信号111〜113のパルス幅は、共通でもよいし、第1期間101、第2期間102及び第3期間103に応じて、個別に設定してもよい。スイッチングトランジスタ43は、パルス信号が供給された場合に、パルス信号のパルス幅に応じた期間のみ導通する。
【0057】
<〜時刻t1:発光期間>
図3に示す発光期間(〜時刻t1)では、電源線80にVtft_Hが設定されているので、
図4Aの(a)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば2.5V)に応じた電流が駆動トランジスタ41を介して有機EL素子40に流れる。Vtft_Hは、例えば、16Vである。
【0058】
これにより、有機EL素子40は低輝度で発光する。このとき、有機EL素子40のアノード電位、すなわち、駆動トランジスタ41のソース電位は4Vであり、駆動トランジスタ41のゲート電位は6.5Vである。
【0059】
<時刻t1〜t2:放電期間>
次に、時刻t1で、電源線80にVtft_Lを設定することにより、有機EL素子40の発光を終了する。Vtft_Lは、例えば、1Vである。
【0060】
時刻t1では、駆動トランジスタ41のゲート電位が6.5Vであり、ドレイン電位が1Vになるので、駆動トランジスタ41は導通し、保持容量42に保持された信号電圧が駆動トランジスタ41を介して電源線80に抜けていく。電荷の抜けによって、保持容量42の両端の電位が下がり、
図4Aの(b)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート電位が4V、ソース電位が例えば1.5Vになる。
【0061】
このとき、駆動トランジスタ41の閾値電圧が2Vであるため、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷は、徐々に電源線80に抜けていく。しかしながら、寄生容量が大きく、規定の時間内で保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の両方の電荷を抜くためには、駆動トランジスタ41のオン電圧は不十分である。このため、駆動トランジスタ41のソースに電荷が残り、不定電位となる。当該不定電位は、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に応じて変動する。
【0062】
また、このとき、不定電位は、電源線81の電位にも影響を受ける。電源線81の電位は、配線抵抗による電圧降下により、表示領域2の面内でばらつきが発生する。このため、画素4毎にソース電位が異なり、おおよそ1.5Vになるとしか言えず、厳密には不定電位となる。
【0063】
このように、駆動トランジスタ41のソースが不定電位になるので、逆バイアス電圧の大きさがソース電位に応じて変動してしまい、適切な逆バイアス電圧を印加することができなくなる。そこで、本実施の形態では、逆バイアス電圧を印加する前に、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットすることで、駆動トランジスタ41のソース電位を安定させる。
【0064】
<時刻t2〜t3:容量リセット期間>
時刻t2で、
図4Aの(c)に示すように、スキャン線60にスキャン信号111を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70はリセット電位に設定されている。
【0065】
ここで、リセット電位は、駆動トランジスタ41のゲートとドレイン(電源線80)との間に、閾値電圧以上の電圧を印加するための電位である。リセット電位は、例えば、8Vである。
【0066】
図4Aの(c)に示すように、駆動トランジスタ41のゲートとドレインとの間には7Vの電圧が印加されるので、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間が導通する。よって、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に残っていた電荷は、電源線80に放出される。
【0067】
これにより、
図4Aの(d)に示すように、駆動トランジスタ41のソース電位は、電源線80と同じ1Vになる。このように、リセット期間を設けることで、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の電位と同じにすることができる。
【0068】
なお、
図3に示すように、リセット期間(時刻t2〜t3)を略2水平期間としたが、これに限らない。リセット期間の長さは、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の大きさなどによって、放電に十分な時間が設定されればよい。
【0069】
<時刻t3〜t4:逆バイアス印加期間>
時刻t3で、
図4Bの(e)に示すように、スキャン線60にスキャン信号112を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70は逆バイアス電位に設定されている。
【0070】
ここで、逆バイアス電位は、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に、逆バイアス電圧を印加するための電位である。
【0071】
逆バイアス電圧は、例えば、保持容量42に保持される信号電圧とは極性が異なる電圧である。具体的には、逆バイアス電圧は、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に印加する負電圧である。駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に負電圧を印加することで、発光期間に駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に正電圧(信号電圧)が印加されたことによって発生した閾値電圧の正シフトを抑制することができる。
【0072】
逆バイアス電圧は、駆動トランジスタ41のゲート電位、すなわち、逆バイアス電位と、ソース電位との差に相当する。ソース電位は、リセット期間によって電源線80と同電位のVtft_Lに設定されるので、逆バイアス電圧は、データ線70に設定される逆バイアス電位と、電源線80に設定されるVtft_Lとの差になる。すなわち、有機EL素子40のばらつき及び電源線81の電圧降下の影響を受けずに、適切な値の逆バイアス電圧を駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に印加することができる。
【0073】
本実施の形態では、逆バイアス電位は、電源線80に設定されるVtft_Lよりも低く、例えば、−9Vである。駆動トランジスタ41のソース電位は、1Vに設定されているので、
図4Bの(f)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には−10Vの逆バイアス電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ41の閾値電圧の経時変動を抑制することができる。なお、逆バイアス電位は必ずしも負電圧とは限らない。例えば、0Vであってもよい。なぜなら、駆動トランジスタ41のソース電位は、1Vに設定されているので、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には−1Vの逆バイアス電圧が印加されるので、同様の効果を見込むことができる。このように、逆バイアス電位は、データ線駆動回路7の出力可能な電位と、駆動トランジスタ41の特性とを鑑みて設定すればよく、必ずしも負電圧とは限らない。
【0074】
なお、
図3に示すように、逆バイアス印加期間(時刻t3〜t4)を略5水平期間としたが、これに限らない。逆バイアス印加期間の長さは、駆動トランジスタ41の特性などによって、閾値電圧の経時変動を抑制するのに十分な期間が設定されればよい。
【0075】
<時刻t4:信号電圧の書込み>
時刻t4で、
図4Bの(g)に示すように、スキャン線60にスキャン信号113を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、保持容量42に信号電圧を書込む。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70は信号電位に設定されている。
【0076】
このときの信号電位は、自画素に対応する信号電位である。つまり、信号電位は、自画素が次の発光期間に発光すべき輝度に応じた信号電位である。例えば、
図4Bの(g)に示す例では、信号電位は、基準電位(例えば1V)に低階調(低輝度)の信号電圧(例えば2.5V)を加えた値に相当し、具体的には、3.5Vである。
【0077】
<時刻t5〜:発光期間>
時刻t5で、電源線80をVtft_Hに設定することで、有機EL素子40に電源線80から駆動トランジスタ41を介して電流を供給する。これにより、
図4Bの(h)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば2.5V)に応じた電流が流れて、有機EL素子40が発光する。
【0078】
以上のように、低階調発光時には、逆バイアス電圧を印加する前に駆動トランジスタ41のソース電位が不定電位となる場合がある。このため、逆バイアス電圧を印加する前に容量のリセット期間を設けて、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の第2電位(Vtft_L)に設定することで、適切な値の逆バイアス電圧を印加することができる。
【0079】
[3−2.高階調発光時]
次に、画素4の低階調発光時の動作について、
図5、
図6A及び
図6Bを用いて説明する。
【0080】
図5は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の高階調発光時の動作を示すタイミングチャートである。具体的には、同図は、上から順に、電源線80に供給される電位“Vtft”、データ線70に供給される電位“Vdata”、スキャン線60に供給されるスキャン信号“Scan”、並びに、駆動トランジスタ41のゲート電位(太実線)及びソース電位(細実線)を示している。
【0081】
図6A及び
図6Bは、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の高階調発光時の動作を示す状態遷移図である。
【0082】
なお、上述した低階調発光時と同じ点については、説明を省略する。
【0083】
<〜時刻t1:発光期間>
図5に示す発光期間(〜t1)では、電源線80にVtft_Hが設定されているので、
図6Aの(a)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば5V)に応じた電流が駆動トランジスタ41を介して有機EL素子40に流れる。これにより、有機EL素子40は高輝度で発光する。このとき、有機EL素子40のアノード電位、すなわち、駆動トランジスタ41のソース電位は7Vであり、駆動トランジスタ41のゲート電位は12Vである。
【0084】
<時刻t1〜t2:放電期間>
次に、時刻t1で、電源線80にVtft_Lを設定することにより、有機EL素子40の発光を終了する。
【0085】
時刻t1では、駆動トランジスタ41のゲート電位が12Vであり、ドレイン電位が1Vになるので、駆動トランジスタ41は導通し、保持容量42に保持された信号電圧が駆動トランジスタ41を介して電源線80に抜けていく。電荷の抜けによって、保持容量42の両端の電位が下がり、
図6Aの(b)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート電位が6V、ソース電位が1Vになる。
【0086】
すなわち、低階調発光時とは異なり、高階調発光時では、駆動トランジスタ41が完全に導通した状態で、駆動トランジスタ41のソース電位が、電源線80に設定されたVtft_Lと同じになる。すなわち、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量はリセットされるので、リセット期間を設ける必要はない。
【0087】
しかしながら、各画素4にどのような階調の信号電圧が書込まれるかは不明であるために、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量を確実にリセットするためには、リセット期間は必要となる。
【0088】
<時刻t2〜t3:容量リセット期間>
時刻t2で、
図6Aの(c)に示すように、スキャン線60にスキャン信号111を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70はリセット電位に設定されている。
【0089】
このとき、駆動トランジスタ41のゲートとドレイン(電源線80)との間には7Vの電圧が印加されるので、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間が導通する。ただし、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に保持されていた電荷は、放電期間(時刻t1〜t2)によって電源線80に放出されているので、実際には、リセット期間では電荷の流れはなく、駆動トランジスタ41のソース電位は、Vtft_Lに維持されたままである。これにより、
図6Aの(d)に示すように、駆動トランジスタ41のソース電位は、電源線80と同じ1Vになる。
【0090】
<時刻t3〜t4:逆バイアス印加期間>
時刻t3で、
図6Bの(e)に示すように、スキャン線60にスキャン信号112を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70は逆バイアス電位に設定されている。
【0091】
具体的には、
図6Bの(f)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には−10Vの逆バイアス電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ41の閾値電圧の経時変動を抑制することができる。
【0092】
<時刻t4:信号電圧の書込み>
時刻t4で、
図6Bの(g)に示すように、スキャン線60にスキャン信号113を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、保持容量42に信号電圧を書込む。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70は信号電位に設定されている。例えば、
図6Bの(g)に示す例では、信号電位は、基準電位(例えば1V)に高階調(高輝度)の信号電圧(例えば5V)を加えた値に相当し、具体的には、6Vである。
【0093】
<時刻t5〜:発光期間>
時刻t5で、電源線80をVtft_Hに設定することで、有機EL素子40に電源線80から駆動トランジスタ41を介して電流を供給する。これにより、
図4Bの(h)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば5V)に応じた電流が流れて、有機EL素子40が発光する。
【0094】
以上のように、高階調発光時には、逆バイアス電圧を印加する前に駆動トランジスタ41のソース電位は、電源線80に設定された電位と同じになる。このため、逆バイアス電圧を印加する前に容量のリセット期間を設ける必要はないが、低階調発光時に備えて、リセット期間を設けることで、適切な値の逆バイアス電圧を印加することができる。なお、リセット期間を設けた場合でも、上述したように高階調発光時の動作に影響を与えることはない。
【0095】
[4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の駆動方法は、行列状に配置された複数の画素4を備える有機EL表示装置1の駆動方法であって、複数の画素4のそれぞれは、供給された電流に応じて発光する有機EL素子40と、有機EL素子40に電流を供給する駆動トランジスタ41と、駆動トランジスタ41のゲートとソース又はドレインとの間に接続された保持容量42とを備え、有機EL表示装置1の駆動方法は、有機EL素子40に電流を供給することで、有機EL素子40を発光させる発光ステップと、保持容量42と有機EL素子40の寄生容量との少なくとも一方の電荷をリセットするリセットステップと、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に逆バイアス電圧を印加する逆バイアス印加ステップとを含み、リセットステップは、発光ステップと逆バイアス印加ステップとの間で実行される。
【0096】
これにより、逆バイアス電圧を印加する前に、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の少なくとも一方の電荷をリセットするので、適切な値の逆バイアス電圧を駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に印加することができる。つまり、保持容量42及び寄生容量の電荷をリセットしない場合は、駆動トランジスタ41のソース電位が不定電位になるのに対して、本実施の形態では、ソース電位は、電源線80の電位(具体的には、第2電位)になる。したがって、ソース電位は、電源線81の配線抵抗による電圧降下の影響も受けない。
【0097】
したがって、ソース電位が安定するので、適切な逆バイアス電位をデータ線70に設定することで、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に適切な逆バイアス電圧を印加することができる。よって、より高精度に駆動トランジスタ41の閾値電圧の経時変動を抑制することができる。
【0098】
また、例えば、本実施の形態では、有機EL表示装置1は、さらに、複数の画素4の駆動トランジスタ41のドレイン又はソースに接続される電源線80と、複数の画素4の列毎に設けられたデータ線70とを備え、複数の画素4のそれぞれは、さらに、駆動トランジスタ41のゲートとデータ線70との間に接続されたスイッチングトランジスタ43を備え、リセットステップでは、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、データ線70からリセット電位を駆動トランジスタ41のゲートに供給して、駆動トランジスタ41を導通させ、保持容量42及び寄生容量の少なくとも一方の電荷を電源線80に放出させる。
【0099】
これにより、駆動トランジスタ41を利用して、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の電位と同じにすることができる。すなわち、駆動トランジスタ41のソース電位をリセットするためのリセットトランジスタなどが必要なく、回路構成を簡単にすることができる。例えば、
図2に示すように、2つのトランジスタと1つの容量素子を備えた、いわゆる2Tr1Cの回路構成で実現することができる。
【0100】
また、例えば、本実施の形態では、電源線80は、第1電位と、前記第1電位より低い第2電位とに選択的に設定され、データ線70は、画素信号に応じた信号電位を含む複数の電位に選択的に設定され、発光ステップでは、電源線80を第1電位に設定することで、有機EL素子40に電源線80から駆動トランジスタ41を介して電流を供給し、リセットステップでは、電源線80が第2電位に設定され、かつ、データ線70がリセット電位に設定された状態で、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位を供給し、逆バイアス印加ステップでは、電源線80が第2電位に設定され、かつ、データ線70が逆バイアス電位に設定された状態で、スイッチングトランジスタ43を導通させて、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位を供給して、逆バイアス電圧を印加する。
【0101】
また、例えば、本実施の形態では、リセット電位は、信号電位とは独立して予め定められた電位である。
【0102】
これにより、確実に駆動トランジスタ41を導通させることができるリセット電位を供給することができるので、電荷のリセットを確実に行うことができる。
【0103】
また、例えば、本実施の形態では、データ線70には、複数の画素4の行毎の信号電位が、1水平期間毎に順に設定され、1水平期間は、データ線70に信号電位が設定される第1期間101と、データ線70にリセット電位が設定される第2期間102と、データ線70に逆バイアス電位が設定される第3期間103とを含む。
【0104】
また、例えば、本実施の形態では、データ線70は、1水平周波数(1/1H)の3倍の周波数で駆動される。すなわち、データ線70は、3倍駆動される。
【0105】
このように、データ線駆動回路7は、1水平期間内に信号電位、リセット電位及び逆バイアス電位のそれぞれを供給するように、3倍の周波数で駆動(3倍駆動)を行う必要がある。その一方で、電圧制御回路8は、第1電位と第2電位との2値で電源線80を駆動すればよい。つまり、電源線80を3値駆動する場合に比べて、消費電力を抑制することができ、また、簡易な構成で実現することができるので、コストの増加を抑制することができる。
【0106】
また、例えば、第1電位が16Vで、第2電位は1Vであるので、有機EL素子40の発光に利用する範囲内で容量の電荷のリセットを行うことができる。また、例えば、逆バイアス電位も−9Vでよく、データ線駆動回路7に要求される耐圧が小さくてもよい。このため、従来の電圧制御回路8を利用することができるので、コストの増加を抑制することができる。
【0107】
(実施の形態2)
以下では、実施の形態2に係る有機EL表示装置及びその駆動方法について説明する。
【0108】
なお、本実施の形態では、有機EL表示装置の構成、及び、画素の構成は実施の形態1と同様であり、その駆動動作が異なっている。したがって、以下では、各構成の説明は省略し、駆動動作を中心に説明する。
【0109】
図7は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の動作を示すタイミングチャートである。
図8A及び
図8Bは、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の動作を示す状態遷移図である。
【0110】
具体的には、
図7は、上から順に、電源線80に設定される電位“Vtft”、データ線70に設定される電位“Vdata”、スキャン線60に供給されるスキャン信号“Scan”、並びに、駆動トランジスタ41のゲート電位(太実線)及びソース電位(細実線)を示している。
【0111】
図7に示すように、電源線80には、第1電位Vtft_Hと、第2電位Vtft_L2と、第3電位Vtft_L1とが選択的に設定される。具体的には、発光期間には、Vtft_Hが設定され、非発光期間には、Vtft_L1又はVtft_L2が設定される。なお、Vtft_L1は、Vtft_Hより低く、Vftf_L2より高い電位である。Vtft_L1は、信号電圧の書込みの際の基準となる電位である。Vtft_L2は、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットする際の基準となる電位である。
【0112】
また、データ線70には、複数の画素4の行毎の信号電位(
図7の“映像”)が、1水平期間(1H)毎に順に設定される。1水平期間は、データ線70に信号電位が設定される第1期間201と、データ線70に逆バイアス電位が設定される第3期間203とを含んでいる。言い換えると、データ線70は、1水平期間に2つの異なる電位に設定される。すなわち、本実施の形態では、データ線駆動回路7は、1水平周波数(1/1H)の2倍の周波数でデータ線70を駆動する。
【0113】
具体的には、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットするのに用いるリセット電位として、他の行の信号電位を利用する。つまり、本実施の形態では、リセット電位は、他の行の信号電位である。
【0114】
なお、第1期間201及び第3期間203は、互いに同じ長さの期間、具体的には、1水平期間の半分の期間であるが、これに限らない。第1期間201及び第3期間203は、互いに異なる長さの期間でもよい。例えば、信号電位は各画素4の保持容量42に正確な電圧を設定する必要があるため、第1期間201は長めに設定することが好ましい。一方、逆バイアス電位については、信号電位ほど正確に設定する必要は無いため、第3期間203は第1期間201よりも短くても構わない。
【0115】
ここで、
図7に示す例では、時刻t16で信号電圧の書込みを行う。つまり、
図7に示す信号電位は、時刻t16の信号電位を除いて、他の行の画素に対応する信号電位を示している。なお、本実施の形態では、信号電位は、Vtft_L1を基準電位として設定される。
【0116】
スキャン線60には、スイッチングトランジスタ43を導通させるためのスキャン信号211〜214が所定のタイミングで供給される。
図7に示すように、スキャン信号211〜214は、パルス信号であり、それぞれのパルス幅は、第1期間201及び第3期間203の各々より短い期間である。スキャン信号211〜214のパルス幅は、共通でもよいし、第1期間201及び第3期間203に応じて、個別に設定してもよい。スイッチングトランジスタ43は、パルス信号が供給された場合に、パルス信号のパルス幅に応じた期間のみ導通する。
【0117】
<〜時刻t11:発光期間>
図7に示す発光期間(〜時刻t11)では、電源線80にVtft_Hが設定されているので、
図8Aの(a)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば2.5V)に応じた電流が駆動トランジスタ41を介して有機EL素子40に流れる。
【0118】
これにより、有機EL素子40は低輝度で発光する。このとき、有機EL素子40のアノード電位、すなわち、駆動トランジスタ41のソース電位は4Vであり、駆動トランジスタ41のゲート電位は6.5Vである。
【0119】
<時刻t11〜t12:放電期間>
次に、時刻t11で、電源線80にVtft_L2を設定することにより、有機EL素子40の発光を終了する。Vtft_L2は、例えば、−7Vである。
【0120】
時刻t11では、駆動トランジスタ41のゲート電位が6.5Vであり、ドレイン電位が−7Vになるので、駆動トランジスタ41は導通し、保持容量42に保持された信号電圧が駆動トランジスタ41を介して電源線80に抜けていく。電荷の抜けによって、保持容量42の両端の電位が下がり、
図8Aの(b)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート電位が−4V、ソース電位が−6.5Vになる。
【0121】
このとき、駆動トランジスタ41の閾値電圧が2Vであるため、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷は、徐々に電源線80に抜けていく。しかしながら、寄生容量が大きく、規定の時間内で保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の両方の電荷を抜くためには、駆動トランジスタ41のオン電圧は不十分である。このため、駆動トランジスタ41のソースに電荷が残り、不定電位となる。当該不定電位は、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に応じて変動する。
【0122】
<時刻t12〜t13:容量リセット期間>
時刻t12で、
図8Aの(c)に示すように、スキャン線60にスキャン信号211を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに、他の行の信号電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_L2に設定され、かつ、データ線70は他の行の信号電位に設定されている。
【0123】
本実施の形態では、他の行の信号電位を用いて、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットする。他の行の信号電位は、例えば、0V〜10Vの不定の電位である。このため、電源線80に設定するVtft_L2を−7Vに設定することで、データ線70に印加される信号電位に関わらず、駆動トランジスタ41を導通させることができる。
【0124】
具体的には、
図8Aの(c)に示すように、駆動トランジスタ41のゲートには、他の行の信号電位に応じた0V〜10Vの電位が設定され、ドレインには、−7Vの電位が設定される。このため、駆動トランジスタ41のゲートとドレインとの間には、少なくとも7V以上の電圧が印加され、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間は導通する。よって、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に残っていた電荷は、電源線80に放出される。
【0125】
これにより、駆動トランジスタ41のソース電位は、電源線80と同じ−7Vになる。このように、リセット期間を設けることで、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の電位と同じにすることができる。
【0126】
<時刻t13〜t14:逆バイアス印加期間>
時刻t13で、
図8Aの(d)に示すように、スキャン線60にスキャン信号212を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_L2に設定され、かつ、データ線70は逆バイアス電位に設定されている。
【0127】
ここで、駆動トランジスタ41のソース電位は、リセット期間によって電源線80と同電位のVtft_L2に設定されるので、逆バイアス電圧は、データ線70に設定される逆バイアス電位と、電源線80に設定されるVtft_L2との差になる。すなわち、有機EL素子40のばらつき及び電源線81の電圧降下の影響を受けずに、適切な値の逆バイアス電圧を駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に印加することができる。
【0128】
本実施の形態では、逆バイアス電位は、電源線80に設定されるVtft_L2よりも低く、例えば、−17Vである。駆動トランジスタ41のソース電位は、−7Vに設定されているので、
図8Aの(d)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には−10Vの逆バイアス電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ41の閾値電圧の経時変動を抑制することができる。
【0129】
なお、本実施の形態では、駆動トランジスタ41のソース電位が−7Vとなり、実施の形態1の場合(すなわち、1V)よりも低くなる。このため、逆バイアス電位として必要な電位も−17Vとなり、実施の形態1の場合(すなわち、−9V)よりも低くなる。
【0130】
<時刻t14〜t16:書込み準備期間>
時刻t14で、
図8Bの(e)に示すように、スキャン線60にスキャン信号213を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに他の行の信号電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_L2に設定され、かつ、データ線70は他の行の信号電位に設定されている。
【0131】
これにより、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には、閾値電圧(2V)以上の値(具体的には、7V以上の値)が印加されるので、駆動トランジスタ41のドレイン−ソース間は導通する。
【0132】
時刻t15で、
図8Bの(f)に示すように、電源線80にVtft_L1を設定する。Vtft_L1は、例えば、1Vである。駆動トランジスタ41は導通状態であるので、電源線80から保持容量42に電荷が供給されて、駆動トランジスタ41のソース電位は、電源線80と同じ1Vになる。
【0133】
以上のように、信号電圧を書込む前に、ソース電位をVtft_L1に設定するので、適切な値の信号電圧を保持容量42に書込むことができる。データ線70に供給される信号電位は、Vtft_L1を基準に定められている。このため、書込み準備期間(t14〜t16)を設けることで、ソース電位が基準電位であるVtft_L1に設定されて、保持容量42に適切な信号電圧を書込むことができる。
【0134】
<時刻t16:信号電圧の書込み>
時刻t16で、
図8Bの(g)に示すように、スキャン線60にスキャン信号214を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、保持容量42に信号電圧を書込む。このとき、電源線80はVtft_L1に設定され、かつ、データ線70は信号電位に設定されている。
【0135】
このときの信号電位は、自画素に対応する信号電位である。つまり、信号電位は、自画素が次の発光期間に発光すべき輝度に応じた信号電位である。例えば、
図8Bの(g)に示す例では、信号電位は、基準電位(例えば1V)に低階調(低輝度)の信号電圧(例えば2.5V)を加えた値に相当し、具体的には、3.5Vである。
【0136】
<時刻t17〜:発光期間>
時刻t17で、電源線80をVtft_Hに設定することで、有機EL素子40に電源線80から駆動トランジスタ41を介して電流を供給する。これにより、
図8Bの(h)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば2.5V)に応じた電流が流れて、有機EL素子40が発光する。
【0137】
以上のように、低階調発光時には、逆バイアス電圧を印加する前に駆動トランジスタ41のソース電位が不定電位となる場合がある。このため、逆バイアス電圧を印加する前に容量のリセット期間を設けて、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の第2電位(Vtft_L2)に設定することで、適切な値の逆バイアス電圧を印加することができる。
【0138】
また、書込み準備期間を設けることで、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の第3電位(Vtft_L1)に設定することで、適切な値の信号電圧を保持容量42に書込むことができる。
【0139】
以上のように、本実施の形態では、リセット電位は、他の行の信号電位である。
【0140】
また、例えば、本実施の形態では、データ線70は、1水平周波数(1/1H)の2倍の周波数で駆動される。すなわち、データ線70は、2倍駆動される。
【0141】
これにより、リセット電位として他の行の信号電位を利用するので、1水平期間内に信号電位(リセット電位)と逆バイアス電位とのそれぞれを供給するように、2倍の周波数でデータ線70を駆動(2倍駆動)すればよい。したがって、実施の形態1に比べて、データ線70を低速で駆動することができるため、データ線駆動回路7の消費電力を低減することができる。
【0142】
また、例えば、本実施の形態では、電源線80には、さらに、第1電位より低く、第2電位より高い第3電位が選択的に設定され、有機EL表示装置1の駆動方法は、さらに、電源線80が第2電位に設定され、かつ、データ線70が他の行の信号電位に設定された状態で、スイッチングトランジスタ43を導通させて、駆動トランジスタ41のゲートに他の行の信号電位を供給することで、駆動トランジスタ41を導通させた後、駆動トランジスタ41を導通させた状態で、電源線80を第3電位に設定することで、駆動トランジスタ41のソース及びドレインを第3電位に設定する書込み準備ステップと、電源線80が第3電位に設定され、かつ、データ線70が当該画素に対応する信号電位に設定された状態で、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、保持容量42に信号電圧を書込む書込みステップとを含む。
【0143】
これにより、信号電圧を適切に書込むことができ、所望の輝度で有機EL素子40を発光させることができる。したがって、表示領域2内での表示のばらつきなどを抑制することができる。
【0144】
(実施の形態3)
以下では、実施の形態3に係る有機EL表示装置及びその駆動方法について説明する。
【0145】
なお、本実施の形態では、有機EL表示装置の構成、及び、画素の構成は実施の形態1と同様であり、その駆動動作が異なっている。したがって、以下では、各構成の説明は省略し、駆動動作を中心に説明する。
【0146】
図9は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の動作を示すタイミングチャートである。
【0147】
具体的には、
図9は、上から順に、データ線70に供給される電位“Vdata”、行毎の電源線80に設定される電位“Vtft(n)”〜“Vtft(n+3)”、行毎のスキャン線60に供給されるスキャン信号“Scan(n)”〜“Scan(n+3)”、並びに、駆動トランジスタ41のゲート電位(太実線)及びソース電位(細実線)を示している。例えば、Vtft(n)〜Vtft(n+3)はそれぞれ、n番目〜n+3番目の行の電源線80に設定される電位を示し、Scan(n)〜Scan(n+3)はそれぞれ、n番目〜n+3番目の行のスキャン線60に供給されるスキャン信号を示している。
【0148】
図9に示すように、データ線70には、複数の画素4の行毎の信号電位(
図9の“映像”)が、1水平期間(1H)毎に順に設定される。つまり、1水平期間は、データ線70に信号電位が設定される第1期間301を含む。また、連続する2水平期間の一方は、データ線70にリセット電位が設定される第2期間302を含み、連続する2水平期間の他方は、データ線70に逆バイアス電位が設定される第3期間303を含む。つまり、2水平期間が1つの繰り返し単位である。すなわち、本実施の形態では、データ線駆動回路7は、1水平周波数(1/1H)の2倍の周波数でデータ線70を駆動する。
【0149】
また、電圧制御回路8は、電源線80を2行毎に電位の設定を行う。具体的には、Vtft(n)及びVtft(n+1)に示すように、n番目及びn+1番目の行の電源線80には、同じタイミングで同じ電位が設定される。n+2番目及びn+3番目の電源線80についても同様である。
【0150】
また、走査線駆動回路6は、書込み用のスキャン信号を1行毎に、異なるタイミングで(具体的には、1水平期間ずつずらして)供給する。例えば、Scan(n)及びScan(n+1)に示すように、n番目のスキャン線60にスキャン信号313が供給された後、1水平期間経過した時点で、n+1番目の行のスキャン線60にスキャン信号314が供給される。
【0151】
一方で、走査線駆動回路6は、リセット用のスキャン信号と逆バイアス印加用のスキャン信号とを、2行毎に、異なるタイミングで(具体的には、例えば、リセット用のスキャン信号と逆バイアス印加用のスキャン信号とを1水平期間ずつずらして)供給する。逆バイアス印加用のスキャン信号についても同様である。例えば、Scan(n)及びScan(n+1)に示すように、n番目及びn+1番目の行のスキャン線60には、リセット用のスキャン信号311と逆バイアス印加用のスキャン信号312とがそれぞれ、同じタイミングで供給される。n+2番目及びn+3番目のスキャン信号についても同様である。
【0152】
以下では、n番目及びn+1番目の行に着目して、画素4の動作について説明する。なお、画素4の回路の状態遷移図については、
図4A及び
図4Bと同様であるので、実施の形態1と同じ点については説明を簡略化又は省略する。
【0153】
<〜時刻t21:発光期間>
図9に示す発光期間(〜時刻t21)では、Vtft(n)及びVtft(n+1)に示すように、電源線80にVtft_Hが設定されているので、有機EL素子40は、保持容量42に保持された信号電圧に応じた電流が流れて発光する(
図4Aの(a)参照)。このとき、n番目の行の画素4の有機EL素子40と、n+1番目の行の画素4の有機EL素子40とが発光している。
【0154】
<時刻t21〜t22:放電期間>
時刻t21で、Vtft(n)及びVtft(n+1)に示すように、電源線80にVtft_Lを設定することにより、有機EL素子40の発光を終了する。発光が終了すると同時に、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間を通って電源線80に、保持容量42から電荷が抜ける。電荷の抜けによって、保持容量42の両端の電位が下がり、駆動トランジスタ41のゲート電位が4V、ソース電位が1.5Vになる(
図4Aの(b)参照)。また、n番目及びn+1番目の発光期間の終了時(時刻t21)から2水平期間経過後に、n+2番目及びn+3番目の発光期間が終了する。
【0155】
<時刻t22〜t23:容量リセット期間>
時刻t22で、スキャン線60にスキャン信号311を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位(具体的には、8V)を供給する。これにより、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間を導通させて、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に残っていた電荷を、電源線80に放出させる。これにより、駆動トランジスタ41のソース電位を電源線80の電位(具体的には、1V)と同じにすることができる(
図4Aの(c)及び(d)参照)。なお、リセット期間(時刻t22〜t23)を略1水平期間としたが、これに限らない。リセット期間の長さは、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の大きさなどによって、放電に十分な時間が設定されればよい。
【0156】
<時刻t23〜t24:逆バイアス印加期間>
時刻t23で、スキャン線60にスキャン信号312を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位(具体的には、−9V)を供給する。これにより、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に逆バイアス電圧(具体的には、−10V)を供給する(
図4Bの(e)及び(f)参照)。
【0157】
なお、
図9に示すように、n番目及びn+1番目の行の逆バイアス印加期間中に、n+2番目及びn+3番目の行の発光期間が終了するが、これに限らない。具体的には、リセット期間(時刻t22〜t23)の長さによって、容量リセット期間中に、n+2番目及びn+3番目の行の発光期間が終了する場合も考えられる。
【0158】
<時刻t24及びt25:信号電圧の書込み>
時刻t24で、
図9のScan(n)に示すように、n番目の行のスキャン線60にスキャン信号313を供給して、n番目の行の保持容量42に信号電圧を書込む(
図4Bの(g)参照)。そして、時刻t25で、n+1番目の行のスキャン線60にスキャン信号314を供給して、n+1番目の行の保持容量42に信号電圧を書込む。
【0159】
本実施の形態では、列毎にデータ線70が設けられているので、信号電圧は行毎に書込む必要がある。言い換えると、同時に複数行の信号電圧を保持容量42に書込むことができないので、n番目の行とn+1番目の行とでは、信号電圧の書込むタイミングをずらしている。
【0160】
<時刻t26〜:発光期間>
時刻t26で、
図9のVtft(n)及びVtft(n+1)に示すように、電源線80をVtft_Hに設定することで、有機EL素子40に電源線80から駆動トランジスタ41を介して電流を供給する(
図4Bの(h)参照)。これにより、保持容量42に保持された信号電圧(例えば2.5V)に応じた電流が流れて、有機EL素子40が発光する。このとき、n番目の行の画素4の有機EL素子40と、n+1番目の行の画素4の有機EL素子40とが同時に発光する。
【0161】
以上のように、本実施の形態では、データ線70には、複数の画素4の行毎の信号電位が、1水平期間毎に順に設定され、連続する2水平期間はそれぞれ、データ線70に信号電位が設定される第1期間301を含み、2水平期間の一方は、さらに、データ線70にリセット電位が設定される第2期間302を含み、2水平期間の他方は、さらに、70データ線に逆バイアス電位が設定される第3期間303を含む。
【0162】
また、例えば、本実施の形態では、データ線70は、1水平周波数(1/1H)の2倍の周波数で駆動される。すなわち、データ線70は、2倍駆動される。
【0163】
これにより、電圧制御回路8は、第1電位と第2電位との2値で電源線80を駆動すればよく、データ線駆動回路7は、2倍の周波数でデータ線70を駆動すればよい。したがって、データ線70を3倍の周波数で駆動する場合に比べて消費電力を抑制することができる。また、電源線80を3値駆動する場合に比べて、電圧制御回路8を簡易な構成で実現することができ、コストの増加を抑制することができる。
【0164】
なお、本実施の形態では、電圧制御回路8は、電源線80を2行毎に電位の設定を行ったが、3行毎又は4行毎の様に、m行毎(m≧2の自然数)に電位の設定を行ってもよい。具体的には、Vtft(n)〜Vtft(n+m−1)に示すように、n番目〜n+m−1番目の行の電源線80には、同じタイミングで同じ電位が設定される。この場合、信号電圧の書込み期間を除く、放電期間、容量リセット期間、逆バイアス印加期間及び発光期間について、n番目〜n+m−1番目の行が同時に行われることになる。つまり、本実施の形態では、発光ステップと、リセットステップと、逆バイアス印加ステップとが、複数行において同時に実行されてもよい。
【0165】
これにより、電圧制御回路8は、電源線80の制御を複数行まとめて行うことが可能になるので、回路規模を削減することが可能となり、電源線80を行毎に駆動する場合に比べて、電圧制御回路8を簡易な構成で実現することができ、コストの増加を抑制することができる。
【0166】
(実施の形態4)
以下では、実施の形態4に係る有機EL表示装置及びその駆動方法について説明する。
【0167】
なお、本実施の形態では、有機EL表示装置の構成、及び、画素の構成は実施の形態1と同様であり、その駆動動作が異なっている。したがって、以下では、各構成の説明は省略し、駆動動作を中心に説明する。
【0168】
本実施の形態では、実施の形態1の動作に加えて、駆動トランジスタ41の閾値電圧の検出を行う点が異なっている。
【0169】
図10は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の動作を示すタイミングチャートである。
図11A及び
図11Bは、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の動作を示す状態遷移図である。
【0170】
具体的には、
図10は、上から順に、電源線80に設定される電位“Vtft”、データ線70に設定される電位“Vdata”、スキャン線60に供給されるスキャン信号“Scan”、並びに、駆動トランジスタ41のゲート電位(太実線)及びソース電位(細実線)を示している。
【0171】
電源線80には、第1電位Vtft_Hと、第2電位Vtft_Lとが選択的に設定される。具体的には、発光期間と閾値検出期間とには、Vtft_Hが設定され、閾値検出期間を除く非発光期間には、Vtft_Lが設定される。
【0172】
データ線70の駆動タイミングは、実施の形態1と同様である。
【0173】
<〜時刻t31:発光期間>
図10に示す発光期間(〜時刻t31)では、電源線80にVtft_Hが設定されているので、
図11Aの(a)に示すように、保持容量42に保持された信号電圧(例えば5V)に応じた電流が駆動トランジスタ41を介して有機EL素子40に流れる。これにより、有機EL素子40は高輝度で発光する。このとき、有機EL素子40のアノード電位、すなわち、駆動トランジスタ41のソース電位は7Vであり、駆動トランジスタ41のゲート電位は12Vである。
【0174】
<時刻t31〜t32:放電期間>
次に、時刻t31で、電源線80にVtft_Lを設定することにより、有機EL素子40の発光を終了する。Vtft_Lは、例えば、−5Vである。
【0175】
時刻t31では、駆動トランジスタ41のゲート電位が12Vであり、ドレイン電位が1Vになるので、駆動トランジスタ41は導通し、保持容量42に保持された信号電圧が駆動トランジスタ41を介して電源線80に抜けていく。電荷の抜けによって、保持容量42の両端の電位が下がり、
図11Aの(b)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート電位が0V、ソース電位が−5Vになる。
【0176】
<時刻t32〜t33:容量リセット期間>
時刻t32で、
図11Aの(c)に示すように、スキャン線60にスキャン信号411を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70はリセット電位(具体的には、2V)に設定されている。
【0177】
このとき、駆動トランジスタ41のゲートとドレインとの間には7Vの電圧が印加されるので、駆動トランジスタ41のソース−ドレイン間が導通する。ただし、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量に保持されていた電荷は、放電期間(時刻t1〜t2)によって電源線80に放出されているので、実際には、リセット期間では電荷の流れはなく、駆動トランジスタ41のソース電位は、Vtft_L(−5V)に維持されたままである。
【0178】
すなわち、実施の形態1と同様に、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量はリセットされるので、リセット期間を設ける必要はないが、各画素4にどのような階調の信号電圧が書込まれるかは不明であるために、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量を確実にリセットするためには、リセット期間は必要となる。
【0179】
<時刻t33〜t34:逆バイアス印加期間>
時刻t33で、
図11Aの(d)に示すように、スキャン線60にスキャン信号412を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートに逆バイアス電位を供給する。このとき、電源線80はVtft_Lに設定され、かつ、データ線70は逆バイアス電位(具体的には、−15V)に設定されている。
【0180】
具体的には、
図11Aの(d)に示すように、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には−10Vの逆バイアス電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ41の閾値電圧の経時変動を抑制することができる。
【0181】
<時刻t34:閾値電圧の検出準備>
時刻t34で、
図11Bの(e)に示すように、スキャン線60にスキャン信号413を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、駆動トランジスタ41のゲートにリセット電位(具体的には、2V)を供給する。これにより、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に閾値電圧以上の電圧が印加されて、駆動トランジスタ41が導通する。これにより、駆動トランジスタ41のソース電位が電源線80と同じ−5Vに設定される。
【0182】
<時刻t35〜t37:閾値電圧検出期間>
時刻t35で、
図11Bの(f)に示すように、電源線80がVtft_Hに設定され、かつ、データ線70がリセット電位に設定された状態で、スキャン線60にスキャン信号414を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させる。これにより、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間に閾値電圧以上の電圧が印加されて、駆動トランジスタ41が導通し、電源線80から保持容量42に電荷が供給される。
【0183】
ここでは、
図10に示すように、複数回、具体的には、時刻t35、t36及びt37の3回、スキャン信号414〜416を供給する。これにより、保持容量42に、駆動トランジスタ41の閾値電圧を保持させることができる。なお、スキャン信号を供給する回数はこれに限らず、例えば、1回でもよい。
【0184】
<時刻t38:信号電圧の書込み>
時刻t38で、
図11Bの(g)に示すように、スキャン線60にスキャン信号417を供給して、スイッチングトランジスタ43を導通させることで、保持容量42に信号電圧を書込む。このとき、電源線80がVtft_Hに設定され、かつ、データ線70が信号電位に設定されている。
【0185】
なお、このとき、信号電圧と駆動トランジスタ41の移動度とに応じた電流が、電源線80から保持容量42に流れ込み、保持容量42に書込まれた信号電圧が流れ込んだ電流に応じて変動する。つまり、移動度補正を行うことができる。
【0186】
<時刻t39〜:発光期間>
時刻t39で、スイッチングトランジスタ43が非導通になった後、
図11Bの(h)に示すように、電源線80から駆動トランジスタ41を介して有機EL素子40に電流が供給される。これにより、保持容量42に保持された信号電圧(例えば5V)に応じた電流が流れて、有機EL素子40は発光する。
【0187】
以上のように、本実施の形態では、有機EL表示装置1の駆動方法は、さらに、逆バイアス印加ステップの後に駆動トランジスタ41の閾値電圧を検出する閾値検出ステップを含む。
【0188】
これにより、駆動トランジスタ41の閾値電圧の検出を行うので、適切な信号電圧を保持容量42に書込むことができる。したがって、表示領域2内での表示のばらつきなどを抑制することができる。
【0189】
(実施の形態5)
以下では、実施の形態5に係る有機EL表示装置及びその駆動方法について説明する。
【0190】
なお、本実施の形態では、有機EL表示装置の構成、及び、画素の構成は実施の形態1と同様であり、その駆動動作が異なっている。したがって、以下では、各構成の説明は省略し、駆動動作を中心に説明する。
【0191】
上述した実施の形態1〜4では、逆バイアス電圧が一定値である例について説明した。逆バイアス電圧を印加した場合、閾値電圧が負シフトする。これを利用して、上述した実施の形態1〜4では、発光期間中に正シフトした閾値電圧を負シフトさせることで、閾値電圧の経時変動を抑制することができる。
【0192】
しかしながら、逆バイアス電圧を印加しすぎた場合、場合によっては、閾値電圧が負にシフトしすぎる場合がある。例えば、ほとんど黒表示で正バイアスが0Vに近い画素に対して、常に−10Vの逆バイアス電圧を印加し続けた場合、駆動トランジスタ41の閾値電圧は負にシフトする恐れがある。閾値電圧が負にシフトした場合、周囲の画素よりも明るく発光し、逆焼付きを引き起こす恐れがある。
【0193】
そこで、本実施の形態では、逆バイアス電圧を信号電圧(すなわち、正バイアス電圧)に応じた値に決定する。
【0194】
これにより、正バイアス電圧に応じた負バイアス電圧を印加することで、駆動トランジスタ41の閾値変動を適切に抑制することができる。つまり、負にシフトしすぎないようにすることができる。
【0195】
図12は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の高階調発光時の動作を示すタイミングチャートである。
図13は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1における画素4の低階調発光時の動作を示すタイミングチャートである。
【0196】
図12に示す例では、時刻t1以前は、ゲート電位が12Vで、かつ、ソース電位が7Vであるから、保持容量42に5Vの信号電圧が書込まれた状態で、有機EL素子40が発光している。この場合において、時刻t3〜t4の逆バイアス印加期間では、ゲート電位が−4Vで、かつ、ソース電位が1Vであるから、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には、−5Vの逆バイアス電圧が印加されている。
【0197】
図13に示す例では、時刻t1以前は、ゲート電位が9Vで、かつ、ソース電位が6Vであるから、保持容量42に3Vの信号電圧が書込まれた状態で、有機EL素子40が発光している。この場合において、時刻t3〜t4の逆バイアス印加期間では、ゲート電位が−2Vで、かつ、ソース電位が1Vであるから、駆動トランジスタ41のゲート−ソース間には、−3Vの逆バイアス電圧が印加されている。
【0198】
以上のように、例えば、本実施の形態では、逆バイアス電圧は、対応する画素4に供給される信号電圧に基づいて決定される。
【0199】
具体的には、逆バイアス電圧と、対応する画素に供給される信号電圧とは、正の相関関係を有する。例えば、対応する画素に供給される信号電圧が大きい程、大きい逆バイアス電圧を印加する。
【0200】
ここで、信号電圧は、例えば、
図12及び
図13に示したように、逆バイアス電圧を印加する直前のフレームの信号電圧である。この場合、有機EL表示装置1は、直前のフレームの信号電圧を記憶するためのメモリを備える。
【0201】
あるいは、信号電圧は、逆バイアス電圧を印加する直後のフレームの信号電圧でもよい。この場合、有機EL表示装置1は、信号電圧を記憶するためのメモリを備えなくてもよいので、コストを削減することができる。
【0202】
なお、
図12及び
図13では、逆バイアス電圧の絶対値は、信号電圧の絶対値に等しい例について示したが、これに限らない。例えば、信号電圧の範囲毎に、逆バイアス電圧が段階的に設定されてもよい。つまり、逆バイアス電圧は、離散的な複数の値に設定可能でもよい。
【0203】
例えば、0V〜10Vの信号電圧に対応して、信号電圧が0V〜3Vの場合に逆バイアス電圧は−2V、信号電圧が3V〜7Vの場合に逆バイアス電圧は−5V、信号電圧が7V〜10Vの場合に逆バイアス電圧は−10Vに設定してもよい。これにより、データ線駆動回路7のビット数を削減することができる。
【0204】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0205】
そこで、以下では、他の実施の形態を例示する。
【0206】
例えば、上記実施の形態では、本開示に係る表示装置として、有機EL素子40を発光素子として備える有機EL表示装置1について説明したが、本開示はこれに限らず、電流駆動型の発光素子を備える表示装置であればよい。
【0207】
例えば、本開示に係る表示装置における画素4の回路構成は、上記した回路構成に限らず、他の構成を有する回路構成であってもよい。また、画素4の動作は、上記したタイミングチャートに示した動作に限らず、他の動作であってもよい。また、画素4における各トランジスタは、Pチャネル型のトランジスタであってもよいし、Nチャネル型のトランジスタであってもよい。
【0208】
また、例えば、上記回路構成と同様の機能を実現できる範囲で、ある素子に対して、直列又は並列に、トランジスタ、抵抗素子、又は容量素子等の素子を接続したものも本開示に含まれる。言い換えると、上記実施の形態における「接続される」とは、2つの端子(ノード)が直接接続される場合に限定されるものではなく、同様の機能が実現できる範囲において、当該2つの端子(ノード)が、素子を介して接続される場合も含む。
【0209】
また、上記で用いた数字は、本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
【0210】
また、例えば、上記実施の形態では、画素4がいわゆる2Tr1Cの回路構成を有する例について説明したが、これに限らない。例えば、保持容量42及び有機EL素子40の寄生容量の電荷をリセットするためのリセットトランジスタなどを備えてもよい。
【0211】
また、表示装置に含まれる特徴的な制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラム、又は、駆動方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムを、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0212】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0213】
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0214】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。