(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6379346
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】気液混合装置
(51)【国際特許分類】
B01F 3/04 20060101AFI20180820BHJP
B01F 5/00 20060101ALI20180820BHJP
C02F 3/24 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B01F3/04 C
B01F5/00 D
C02F3/24 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-61213(P2018-61213)
(22)【出願日】2018年3月28日
【審査請求日】2018年3月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516267496
【氏名又は名称】NPO法人エコロジカル・ファーストエイド
(72)【発明者】
【氏名】中川 和也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴志
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−157955(JP,A)
【文献】
特開昭52−104464(JP,A)
【文献】
特開平10−085721(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/027671(WO,A1)
【文献】
特開平10−094792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/26
C02F 3/24
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体上部漏斗状集水部(1)と、前記筐体上部漏斗状集水部(1)の下縁に連接された筐体上部筒部(2)と、前記筐体上部筒部(2)の上部に配置固定する複数の開孔部(3a)を有する開孔板(3)と、前記筐体上部筒部(2)の下縁に連接された筐体下部漏斗状部(4)と、前記筐体下部漏斗状部(4)の下縁部に連接された筐体下部筒部(5)と、前記筐体下部筒部(5)の下縁部に連接された配管(6)とを備え、前記開孔板(3)に備える複数の開孔部(3a)のそれぞれに、小型漏斗状集水部(7)を配置してあり、前記小型漏斗状集水部(7)は、流入孔(7a)から流出孔(7b)までの間に1箇所以上の縮径部(7c)を備えるものである気液混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液を混合して気体が液体に効率よく溶解するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動力を使わず自然エネルギーを用いて曝気を行う曝気装置には位置エネルギーとベルヌーイの定理を利用して原水の落下による装置の周辺の空気を引き込むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−85721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来の位置エネルギーを利用した曝気装置では、落下高さが増すと原水の流速が加速されて空気の吸引量がある程度は増加するものの配管内の空気が一定量より多くなるとベンチュリー効果が失われてしまう、自然落下による曝気であるため空気を原水に溶け込ませる圧力が存在しないことにより空気の溶解効率を上げることが困難、であった。
【0005】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、安定した液体流量と空気量を引き込むことができ、位置エネルギーを空気が液体に溶け込ませるための圧力に利用でき、発生させる渦流により気泡を破断して微細気泡にして高効率に曝気を行うことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明は上記目的を達成するために、漏斗状の集水部と、筐体上部の集水部の下縁に連接された筒部と、筐体上部の筒部の上部に配置固定された複数の開孔部有する開孔板と、筐体上部の筒部の下縁に連接された筐体下部漏斗状部と、筐体下部漏斗状部の下縁部に連接された筐体下部の筒部と、筐体下部の筒部の下縁部に連接された配管と、筐体上部の筒部の上部に配置固定された複数の開孔部を有する開孔板に複数配置固定された上部筒から下部筒へ内径が絞った形状の小型漏斗状集水部を備えるレジューサー構造の複合漏斗型の気液混合装置である。
【0007】
上記の課題解決手段による作用は次のとおりである。すなわち、まず筐体上部漏斗状集水部(1)を対象水域の水面下数センチメートルの位置となるように設置して、原水を越流により流入させる。そして、筐体上部筒部(2)の内部に配置固定された開孔板(3)に備える開孔部(3a)のそれぞれに配置固定してある小型漏斗状集水部(7)の流入孔(7a)からさらに原水を越流により流入させる。このときの原水の流入による水平移動は次第に回転運動となり小型漏斗状集水部(7)の内側の縮径部(7c)を角運動保存の法則により回転速度を加速しながら筐体下部漏斗状部(4)へと流入することになるが、この際に回転運動をする原水が空気を一緒に絡め込みながら流入する。この際に原水より比重の軽い空気は回転中心へと引き寄せられて、回転力と水圧により細かく砕かれて微細気泡を作ることができる。
【0008】
さらに、この際に原水は常に鉛直方向への重力により回転エネルギーをさらに増幅させるためこの時の遠心力による水圧は気液混合に好適に利用でき、高効率に気液混合及び原水への気体の溶解をすることができる。さらに、配管(6)を長く延長して出口を重力方向へ距離を取ることにより位置エネルギーを大きくすることができる。この場合、装置の各部品は水密に連接されていることにより、装置に流入した水は配管(6)内部を落下する際に発生する負圧の全てを好適に利用することができるため、大気に開口された複数の小型漏斗状集水部(7)は空気を音を伴って吸引することとなる。
【発明の効果】
【0009】
筐体上部漏斗状集水部(1)により安定的に集水した後、筐体上部筒部(2)の上部に配置固定された開孔板(3)に備える複数の開孔部(3a)のそれぞれに配置固定された流入孔(7a)から流出孔(7b)までの間に1箇所以上の縮径部(7c)を備える小型漏斗状集水部(7)により、気液混合及び曝気効率の高い微細気泡を発生することができる部分を多数配置することができるため、より多くの空気を取り込むことができ、高効率な気液混合ができる。
【0010】
筐体下部筒部の下縁部に連接された配管(6)の出口を筐体上部漏斗状集水部(1)との落差を大きく確保できる場合は集水した水の落下のエネルギーを吸気のエネルギーに利用することができる。これは装置の各部が水密に連接されているため、装置内へ集水された水の落下により発生する負圧の全てが大気に開口された小型漏斗状集水部(7)の流入孔(7a)に集中する。このため小型漏斗状集水部(7)の流入孔(7a)は音を伴い吸引することになる。さらに、配管(6)は位置エネルギーを確保できている場合、気液混合水を任意の場所に自由に送水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態を示す複合漏斗型の気液混合装置の断面図
【
図2】同複合漏斗型の気液混合装置の上方から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜2に基づいて説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係る複合漏斗型の気液混合装置10は、
図1に示すように、筐体上部漏斗状集水部(1)と、筐体上部筒部(2)と、開孔板(3)と、筐体下部漏斗状部(4)と、筐体下部筒部(5)と、配管(6)と、小型漏斗状集水部(7)とを備える。
【0014】
前記筐体上部漏斗状集水部(1)は、水面において越流によって原水を集水するための漏斗状の集水部であり、下縁部に筐体上部筒部(2)が水密に連接されている。筐体上部漏斗状集水部(1)の越流のための水面下の鉛直方向の設置高さは、液体の粘性が高いほど水面より深い位置に設置するが、水の粘性であれば、望ましくは水面下数センチメートルで調整する。
【0015】
前記開孔板(3)は、筐体上部漏斗状集水部1ないし筐体上部筒部(2)の内側において一定の水位を確保するため及び小型漏斗状集水部(7)を固定するためのものであり、小型漏斗状集水部(7)の上部漏斗状部(流入孔7a)に原水が越流により流入できるように筐体上部筒部(2)に水密に設置されている。開孔板(3)は、水の粘性であれば望ましくは筐体上部筒部(2)の下縁部より上部に設置して水位を確保するが、液体の粘性が高くなるにつれて水位を大きく確保できるように設置する。
【0016】
前記筐体下部漏斗状部(4)は複数の小型漏斗状集水部(7)を通過した気液混合水を合流させて、再度水平回転流を発生及び回転速度を加速させる漏斗状の部分である。
【0017】
前記筐体下部筒部(5)は配管(6)を好適に接続するための形状としている。
【0018】
前記配管(6)は位置エネルギーを確保するため及び気液混合された水を任意の位置へ放流させるための配管である。
【0019】
前記小型漏斗状集水部(7)は回転流により気液混合をするためのものである。本実施形態においては、この小型漏斗状集水部(7)を、複数の開口孔(3a)のそれぞれに配置固定する構成としてある。つまり、本実施形態の複合漏斗型の気液混合装置(10)は、小型漏斗状集水部(7)を複数個備えている。更に、小型漏斗状集水部(7)には、流入孔(7a)から流出孔(7b)までの間に、縮径部
(7c)を1箇所(1つ)設けてある。流入孔(7a)の設置する鉛直高さは、好適に越流による流入が発生するよう水位に合わせて設置する。このときの流入孔(7a)の鉛直方向の設置高さは、液体の粘性が高いほど低い位置に設置するが、水の粘性であれば、水面下数センチメートルで調整する。なお、小型漏斗状集水部(7)に設ける縮径部(7c)の数や配置位置は、本実施形態のものに限るものではなく、1箇所以上設けるものであれば、適宜変更可能である。
【0020】
以下、上記構成が起こす自然現象を説明する。筐体上部漏斗状集水部(1)から集水した原水は開孔板(3)へと流れ込んで複数個設置した小型漏斗状集水部(7)を越流して筐体下部漏斗状部(4)へと流入するが、このとき、流入による水平移動は次第に回転運動となり小型漏斗状集水部(7)内側の縮径部を角運動保存の法則により回転速度を加速しながら筐体下部漏斗状部(4)へと流入することになるが、この際に回転運動をする原水が空気を一緒に絡め込みながら流入する。この際に原水より比重の軽い空気は回転中心へと引き寄せられて、回転力と水圧により細かく砕かれて微細気泡を作ることができる。さらに筐体上部漏斗状集水部(1)は設置する鉛直高さにより集水する原水の流量を調節することができる。また、複数の小型漏斗状集水部(7)を通過した気液混合水は筐体下部漏斗状部(4)により再び回転運動及び縮径部を角度運動保存の法則により回転速度を加速させながら筐体下部筒部(5)へと流入することになるが、この際にも回転運動をする気液混合水が一気に空気を絡め込みながら流入する。この際にも気液混合水より比重の低い空気は回転中心へと引き寄せられて、回転力と水圧により細かく砕かれて微細気泡を発生させることができる。配管(6)は筐体下部筒部(5)を通過した気液混合水を任意の場所に送水することができるが、この際に鉛直方向に落差を大きくする程に位置エネルギーを大きくすることができる。この位置エネルギーは次の3つの利点がある。1つめに配管(6)内部を落下する水は負圧を発生させることができ、この負圧を角度運動保存の法則により加速する回転運動を大きくすることができるが、これは気液混合の高効率化となる。2つ目に、装置の各部品は水密に連接されているために、配管(6)内を水が落下する際の負圧の逃げ道は大気に開口されている小型漏斗状集水部(7)の流入孔(7a)に集中するため、流入する水だけでなく空気も音を伴い吸引する。3つ目に配管(6)内を落下する水は落下する距離が大きくなるほど加速するため撹拌することもできる。
【0021】
さらに、配管(6)の設置を配管(6)の出口を取水する水域の水面より低い位置にある別の水域に送水する場合、その水域の底部付近に設置することにより、水域の底部から好適に曝気することができる。また、例えば食品工場においてミルクと空気の気液混合を必要とする場合などにも利用することができる。
【0022】
筐体上部筒部(2)及び筐体下部筒部(5)は、筐体の集水面積に対しての空気の吸引量の効率を追求したものであり、筐体上部漏斗状集水部(1)を延長して配管(6)に接続させてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 筐体上部漏斗状集水部
2 筐体上部筒部
3 開孔板
3a 開孔部
4 筐体下部漏斗状集水部
5 筐体下部筒部
6 配管
7 小型漏斗状集水部
7a 流入孔
7b 流出孔
7c 縮径部
【要約】
【課題】 従来の動力を使わず自然エネルギーを用いて曝気を行う曝気装置には位置エネルギーとベルヌーイの定理を利用して原水の落下による装置の周辺の空気を引き込むものがあるが、単純に液体の落下による気液混合であるため位置エネルギーを無駄なく利用することが困難であった。
【解決の手段】 集水した原水に複数個設置した小型漏斗状集水部により回転流を発生させ、これに位置エネルギーを利用して角度運動保存の法則による液体の遠心力も利用し微細気泡を発生する。さらに、筐体の各部品を水密に連結させて大気との開口部を小型漏斗状集水部のみとし、液体の落下が発生させる負圧の逃げ道をこの小型漏斗状集水部の流入孔(7a)のみとするため、負圧を吸気に利用することができ、より高効率な気液混合をすることができる。
【選択図】
図1