(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2固定部は、前記挿入方向に対して直交する平板状に形成され、前記固定孔が前記挿入方向に向かって貫通して形成されることを特徴とする請求項1に記載の出力ノイズ低減装置。
前記加工部は、前記第2固定部を貫通して形成され、前記モールド部を形成する前記樹脂材料が内部に導入される導入孔を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の出力ノイズ低減装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の出力ノイズ低減装置では、導電バーや磁性体コアを保護するために、例えば、フェノール樹脂などの樹脂材料により導電バー等をモールドする必要が生じる。また、出力ノイズ低減装置を、例えば、車両等に用いる場合には、車両に固定する際に、ボルトなどの締結部材による締め付けが必要となってくる。例えば、モールドした部分に形成された貫通孔にボルトを挿通し当該ボルトを回転させると、モールドしている樹脂やその内部の部材(導電バー等)に回転トルクが作用するため、モールドした樹脂と、導電バー等が剥離する虞があり問題となる。
【0005】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、締結部材の締め付けによる固定が適切に実施可能な出力ノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置は、電子機器から出力される出力信号を供給機器に出力するとともに、当該出力信号に混入したノイズを低減する装置であり、磁性体コアと、導電バーと、リードフレームと、モールド部とを備える。磁性体コアには貫通孔が形成されている。導電バーは、磁性体コアに挿入され、その挿入方向の一方の端部を電子機器に接続する接続部とし、他方の端部を供給機器に接続する出力部として、電子機器から供給機器に出力される出力信号等を伝達する線路である。リードフレームは、導電バーの出力部に固着される第1固定部と、電子機器に対して固定される第2固定部と、第1固定部と第2固定部との間を容量素子で接続する接続部と、を有する。モールド部は、磁性体コアに挿入される導電バーの一部とリードフレームと磁性体コアとをモールドする。第2固定部は、締結部材が挿入される固定孔が形成され、当該固定孔に挿入された締結部材を締め付けることによって電子機器に対して固定される。そして、第2固定部には、締め付けの際に締結部材を回転させる回転トルクに対して抵抗を高める加工部が形成される。
【0007】
このため、締結部材を回転させて締め付ける場合に、第2固定部は、加工部により回転トルクに対する抵抗が増大する。従って、締め付けの際に過剰な力が加わることで第2固定部が歪むなどの不具合の発生を防止することが可能となる。また、過剰な回転トルクが加わることで第2固定部を含むリードフレームと、リードフレームをモールドするモールド部の樹脂とが剥離することを防止することが可能となる。このため、当該出力ノイズ低減装置では、締め付け作業によってリードフレームとモールド部とが剥離せず隙間が形成されないため、このような隙間を通じた浸水などを防止することが可能となる。
【0008】
また、本願の出力ノイズ低減装置において、第2固定部は、挿入方向に対して直交する平板状に形成され、固定孔が挿入方向に向かって貫通して形成される構成としてもよい。この構成では、例えば、挿入方向における導電バーの出力部側から接続部側に向かって締結部材を挿入して出力ノイズ低減装置を電子機器に対して固定することが可能となる。
【0009】
また、本願の出力ノイズ低減装置において、加工部は、第2固定部の表面に形成され、モールド部に密着する凹凸部分を含む構成としてもよい。これにより、第2固定部は、凹凸部分が形成されることによって、モールド部の内側部分と接触する接触面積が増大する。従って、第2固定部は、締結部材を回転させる際の回転トルクに対する抵抗(摩擦力)が増大する。
【0010】
また、本願の出力ノイズ低減装置において、加工部は、第2固定部を貫通して形成され、モールド部を形成する樹脂材料が内部に導入される導入孔を含む構成としてもよい。これにより、第2固定部をモールドするモールド部は、導入孔に導入された樹脂材料により、導入孔における貫通方向の両側にある樹脂材料が接続されより強固に第2固定部に対して固定される。従って、第2固定部は、締結部材を回転させる際の回転トルクに対する抵抗が高まることとなる。
【0011】
また、本願の出力ノイズ低減装置において、加工部は、第2固定部の外周に沿って形成された係合部を含む構成としてもよい。これにより、第2固定部は、締結部材を回転させる回転トルクが加わった場合に、外周に設けられた係合部が回転方向においてモールド部と係合することで当該回転方向に対する抵抗を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置によれば、締結部材の締め付けによる固定が適切に実施可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本願に係る出力ノイズ低減装置の一例としてノイズフィルタモジュール1を示しており、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとの間にノイズフィルタモジュール1を接続した場合の回路図を示している。スイッチング電源5は、アルミダイカスト製などの金属製筐体3に収納されている。スイッチング電源5は、例えば、車載用の電源であり、ハイブリッド車あるいは電気自動車等が備えるインバッテリー(不図示)から供給される駆動系の電源電圧VINの電圧値を降圧し、補機バッテリー(不図示)への電力供給を行う降圧型のスイッチング電源である。補機バッテリーは、オーディオ機器、エアコン機器、照明機器などの車内電装機器に電源電圧を供給する。
【0015】
スイッチング電源5は、パワートランジスタ(不図示)を所定のスイッチング周波数fでオンオフ制御させることで所定電圧の出力を得る。スイッチング電源5では、このスイッチング動作にともなうパワートランジスタのオンオフによる電流経路の切り替えにより、スイッチング周波数fで高電圧と低電圧との間で交互に電圧変動が生ずる。また、スイッチング電源5では、負荷電流に応じた電流が電源電圧VIN及び接地電位GNDに交互に断続して流れ電流変動が生ずる。従って、スイッチング電源5は、スイッチング動作による電圧変動と電流変動とが、スイッチング周波数f及びその高調波周波数のスイッチングノイズを発生させるノイズ源となる場合がある。こうしたスイッチングノイズは、例えば、信号経路や接地配線を介して回り込む伝導性ノイズや容量結合など空間を介して伝搬する誘導性ノイズとして出力端子VXに伝搬するおそれがある。
【0016】
本実施形態のスイッチング電源5では、出力端子VXにノイズフィルタモジュール1が接続されている。ノイズフィルタモジュール1は、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとを結ぶ出力電圧の経路にチョークコイルL1が設けられ、出力端子VOと接地電位GNDとの間にコンデンサC1が接続された、いわゆるLCフィルタの構造を有している。なお、スイッチング電源5におけるスイッチング周波数fは、出力される電力定格や各構成素子の仕様などに応じて定められる。例えば、車載用のスイッチング電源では、数100kHzで動作するものがある。このため、スイッチング周波数fやその高調波周波数が、車載AMラジオの周波数帯域に重なる場合があり、ノイズフィルタモジュール1は、これらの帯域で信号経路を伝搬するノイズを抑制することができる。
【0017】
次に、ノイズフィルタモジュール1の形状・構造に関して説明する。
図2はノイズフィルタモジュール1の分解斜視図である。
図3はノイズフィルタモジュール1の1次モールドされた状態の斜視図である。
図4はノイズフィルタモジュール1の2次モールドされた状態の斜視図である。
【0018】
まず、
図2に示すように、ノイズフィルタモジュール1は、導電バー11、ボルト17、磁性体コア19、リードフレーム21等を有している。
図1に示すスイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとを繋ぐ出力電圧の経路は、
図2に示す導電バー11で主に構成されている。導電バー11は、一方向に長い矩形板状に形成されている。以下の説明では、
図2に示すように、導電バー11の長手方向を前後方向、導電バー11の平板部分に対して垂直な方向を上下方向、前後方向及び上下方向に垂直な方向を左右方向と称して説明する。導電バー11は、上方から見た場合に、前後方向に延びる略長方形状に形成されている。
【0019】
導電バー11は、例えば、銅やアルミ等の金属材料で形成されている。導電バー11は、後方側(
図2おける右側)の端部に、上下方向に貫通した接続孔13が形成されている。導電バー11は、この接続孔13が、
図1の金属製筐体3内に設けられたスイッチング電源5の出力端子VXに接続される。
【0020】
また、導電バー11は、前方側(
図2における左側)において、先端部が上方に向かって屈曲した屈曲部15が形成されている。屈曲部15は、第1湾曲部15Aと、ボルト接続部15Bと、第2湾曲部15Cとを有する。第1湾曲部15Aは、導電バー11の先端部から連続して形成され所定の角度を以て上方に向かって湾曲している。ボルト接続部15Bは、第1湾曲部15Aの先端部に連続して形成され、上下及び左右方向に平行な平面を有する。ボルト接続部15Bは、前後方向に向かって貫通した挿通孔15Dが中央部に形成されており、この挿通孔15Dにボルト17が固定される。第2湾曲部15Cは、ボルト接続部15Bの上端部から連続して形成され、所定の角度を以て後方に向かって湾曲して形成されている。
【0021】
ボルト17は、出力端子部17Aと、係止部17Bとを有する。出力端子部17Aは、前後方向に延びる円柱形状をなし、その外周面には補機バッテリーなどの接続端子に対して螺合により固定するための雄ネジ(不図示)が設けられている。また、ボルト17は、出力端子部17Aの後ろ側の端面に係止部17Bが一体形成されている。係止部17Bは、出力端子部17Aの前後方向に沿った中心軸から径方向に向かって広がり、出力端子部17Aに比べて大径となる円板状をなしている。従って、係止部17Bの円の中心は、円柱形状の出力端子部17Aの中心軸上に位置している。
【0022】
また、係止部17Bは、前側(出力端子部17A側)の面に、係止部17Bの軸方向に対して段差を設けた段差部17Cが形成されている。段差部17Cは、前方から見た形状が出力端子部17Aの回りを取り囲み、略星形に広がって形成されている。ボルト17は、ボルト接続部15Bの後方側から前方に向かって挿通孔15Dに圧入され、この段差部17Cが挿通孔15D内に嵌め込まれることで固定される。このボルト17と、後述する2次モールド部41(
図4参照)から露出したボルト接続部15Bの前面が、出力端子VOとして機能し、後段の供給機器に接続される。
【0023】
磁性体コア19は、前後方向に貫通された中空部19Aを有する中空円筒状に形成されている。磁性体コア19は、例えばフェライト等の磁性材料で形成されている。磁性体コア19は、前後方向から見た形状が左右方向に広がる楕円形状をなす。従って、中空部19Aは、前後方向から見た形状が左右方向に広がる楕円形状をなし、左右方向の幅が導電バー11に比べて大きくなっており、導電バー11が挿通可能となっている。
【0024】
一方、導電バー11には、接続孔13が形成された部分に比べて左右方向の幅が狭く形成されたコア取付部11Aが形成されている。コア取付部11Aは、導電バー11の前後方向の略中央部から前端部付近まで、左右方向の幅が同一となるように形成されている。磁性体コア19は、中空部19Aに導電バー11を挿通して、中空部19Aの内側面と導電バー11のコア取付部11Aとを対向させて配置することにより、チョークコイルL1(
図1参照)を構成する。
【0025】
また、磁性体コア19は、上下方向で対向する部分の上部側(
図2における上側)の部分に、上下方向に切り欠かれたスリット19Bが設けられている。スリット19Bは、いわゆるコアギャップであり、磁性体コア19の左右方向の中央部を通り、前後方向に沿って形成されている。スリット19Bは、磁性体コア19の周方向に向かう磁路の一部を不連続としている。磁性体コア19は、スリット19Bの幅等を変更することによって磁気抵抗が調整され磁気飽和の発生を防止することが可能となる。また、ノイズフィルタモジュール1は、磁性体コア19のスリット19Bの幅を調整して磁気飽和を抑制することにより、ノイズ成分の除去に必要なチョークコイルL1のインダクタンスを確保することが可能となる。
【0026】
リードフレーム21は、第1固定部23、接続部25、第2固定部27を有している。リードフレーム21は、導電性の良好な金属材料(例えば黄銅、銅等)で形成されている。第1固定部23は、略正方形板状の部材の一部を切り欠いた切り欠き部23Aと、切り欠かかれた部分を折り曲げ加工した接合部23Bとが形成されている。接合部23Bは、平面が上下方向に対して垂直となる位置まで後方側に向かって折り曲げられている。接合部23Bは、上下方向から見た形状が矩形状となっている。切り欠き部23Aは、下端部の中央が開口するように形成されている。従って、第1固定部23は、前後方向から見た形状が、下方が開口する略逆U字形状となっている。リードフレーム21は、
図3に示すように、第1固定部23の切り欠き部23A内にコア取付部11Aを挿入した状態で、接合部23Bの下面がコア取付部11Aの上面に対して溶接等によって固着され、導電バー11に対して固定される。リードフレーム21は、接合部23Bを介して導電バー11と電気的に接続される。導電バー11は、コア取付部11Aの前方端部にリードフレーム21が取り付けられ、その後方に磁性体コア19が取り付けられることとなる。
【0027】
接続部25は、チップコンデンサ29が実装されることで第1固定部23と第2固定部27とを連結する。本実施例の接続部25では、第1固定部23の左右両側の各々に上下方向で対向する一組が設けられている。各接続部25の左右方向の内側端部と、第1固定部23の左右方向の外側端部とは、互いの間にスリット31を設けて、チップコンデンサ29が実装されている。同様に、各接続部25の左右方向の外側端部と、第2固定部27の内側端部とは、互いの間にスリット35を設けて、チップコンデンサ29が実装されている。
【0028】
従って、左右方向で対向する2つの第2固定部27のうち、1つの第2固定部27と第1固定部23との間には、4個のチップコンデンサ29が実装されている。この4つのチップコンデンサ29は、直列接続される2つを1組として、2組のチップコンデンサ29が並列に実装されている。なお、屈曲部15及びボルト17は、出力端子VO(
図1参照)を構成する。また、第2固定部27には、後述するスイッチング電源5の金属製筐体3に螺合により締結される締結部材(ボルトなど)を介して接地電位GNDが供給されている。従って、チップコンデンサ29はコンデンサC1(
図1)を構成する。
【0029】
第2固定部27は、前後方向に対して直交する平面を有する板状に形成され、左右方向の内側端部には内側に向かって突出する凸部28が形成され、当該凸部28にチップコンデンサ29が実装される。また、第2固定部27は、左右方向の外側端部が円弧状に形成されている。第2固定部27は、モールドされたノイズフィルタモジュール1の2次モールド部41(
図4参照)を金属製筐体3に固定するための不図示のボルト等を前後方向に挿入する固定孔27Aが形成されている。第2固定部27は、固定孔27Aに挿入されたボルト等の締結部材を、金属製筐体3の取付け部に締め付けることによって固定される。
【0030】
リードフレーム21の形成は、例えば以下のような工程で行うことができる。まず、打ち抜き加工等で金属平板を打ち抜き、第1固定部23、接続部25、及び第2固定部27が予定される部材が、互いに金属細線で架橋された状態で形成される。次に、チップコンデンサ29を半田付け等により実装する。次に、第1固定部23及び第2固定部27の一部、チップコンデンサ29、及び接続部25を、樹脂材料等の絶縁材料によりモールドして、1次モールド部33を形成する。1次モールド部33には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなどが使用される。第1固定部23及び第2固定部27の一部、チップコンデンサ29、及び接続部25は、1次モールド部33が形成されることによって、相対位置が固定される。その後、金属細線の架橋部分を分断することで
図3に示すリードフレーム21が形成される。
【0031】
図4は、
図3に示す1次モールド部33が形成されたノイズフィルタモジュール1を熱硬化性樹脂でさらにモールドした2次モールド部41を示している。2次モールド部41は、磁性体コア19の外周面の全体をモールドするコアモールド部43と、1次モールド部33が形成されたリードフレーム21の全体をモールドするフレームモールド部45とが、例えば、インサート成形によって形成される。このため、2次モールド部41を形成する熱硬化性樹脂は、磁性体コア19に過度な圧力を加えない樹脂材料、例えば、フェノール樹脂などが使用される。
【0032】
また、フレームモールド部45は、前方側の端面からボルト17が突出しており、屈曲部15に設けられたボルト接続部15Bの前方側の面が露出する開口部47が形成されている。また、フレームモールド部45は、第2固定部27の固定孔27A(
図2参照)の位置に合わせて、ボルト等の締結部材が挿通される固定孔49が前後方向に貫通して形成されている。固定孔49には、第2固定部27の一部が露出しており、ボルト等が直接接触した状態で締結される。このため、固定孔49の内径は、当該固定孔49の内周面が締結のためのボルト等に接触して干渉しない程度の大きさで開口されている。金属製筐体3(
図1参照)には、例えば、固定孔49の位置に合わせて前方側に突出する凸部が形成されており、この凸部にボルト等が締結される取付け部が形成されている。ノイズフィルタモジュール1は、金属製筐体3の凸部が2次モールド部41の固定孔49の後方側から挿入され、固定孔49から露出した第2固定部27に凸部が密着された状態で、前方側から挿入されたボルトによって締め付けて固定される。
【0033】
図5は、第2固定部27の平面図を示している。上記したように、第2固定部27は、固定孔49に挿入されたボルト等を締め付ける際に、ボルトを回転させる方向(例えば、
図5に示す矢印A1の方向)の回転トルクが作用する。これに対し、本実施例の第2固定部27では、
図5にハッチングで示す部分には、表面に複数の凹凸が形成された凹凸部61が設けられている。凹凸部61は、第2固定部27の前後の両面に形成されている。第2固定部27は、凹凸部61が形成されることによって、当該第2固定部27をモールドするフレームモールド部45の内側部分の樹脂と接触する接触面積が増大する。従って、第2固定部27は、ボルトを回転させる際の回転トルクに対する抵抗(摩擦力)が増大する。
【0034】
この結果、締め付けの際に過剰な力が加わることで第2固定部27等が歪むなどの不具合が発生する可能性が低減される。また、過剰な回転トルクが加わることで第2固定部27を含むリードフレーム21と、リードフレーム21をモールドするフレームモールド部45とが剥離するのを防止することが可能となる。
【0035】
また、回転トルクに対して抵抗を高める加工は、上記した凹凸形状に限らない。例えば、
図6に示すように、加工部として、第2固定部27を貫通した複数の導入孔63を形成してもよい。導入孔63は、円形をなし、第2固定部27を前後方向に貫通している。この導入孔63には、フレームモールド部45(2次モールド部41)をインサート成形等する際に、熱硬化性樹脂が導入される。このため、フレームモールド部45は、第2固定部27の前面をモールドする樹脂と、後面をモールドする樹脂とが複数の導入孔63を通じて接続され第2固定部27に対してより強固に固定されるため、回転トルクに対する抵抗が高まることとなる。従って、このような構成でも、上記した凹凸部61と同様の効果を得ることが可能となる。
【0036】
また、例えば、
図7に示すように、加工部として、第2固定部27の外周に沿って三角波状に形成されたギザギザ部分の係合部65を形成してもよい。第2固定部27は、ボルトを回転させる回転トルクが加わった場合に、外周部分に形成された係合部65が回転方向においてフレームモールド部45と係合することで当該回転方向に対する抵抗を高めることが可能となる。従って、このような構成でも、上記した凹凸部61と同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
次に、チップコンデンサ29の実装方法について説明する。上記したように本実施形態のノイズフィルタモジュール1は、
図1に示すように、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとを結ぶ出力電圧経路にチョークコイルL1が設けられ、出力端子VOと接地電位GNDとの間にコンデンサC1が接続された、いわゆるLCフィルタの構造を有している。このコンデンサC1は、
図2に示すチップコンデンサ29によって構成されている。チップコンデンサ29は、接続部25と、第1固定部23及び第2固定部27の各々との表面に実装されて各部材を連結する。従って、チョークコイルL1及びコンデンサC1で構成されるLCフィルタ回路は、チップコンデンサ29が接続部25等に表面実装されることによって、リードを省略して接続距離が短くなりESL(等価直列インダクタンス)を低減することが可能となる。結果として、チョークコイルL1の小型化が可能となり、ひいては、ノイズフィルタモジュール1全体の小型化が可能となる。これにより、ノイズフィルタモジュール1は、車載AMラジオの周波数帯域等における所望のフィルタ性能を維持しつつ、装置の小型化が可能となる。一例として、チョークコイルL1は、200nH以上である。ESLは、25nH以下である。
【0038】
ここで、ノイズフィルタモジュール1は、出力ノイズ低減装置の一例である。スイッチング電源5は電子機器の一例である。出力電圧は出力信号の一例である。補機バッテリー及び補機バッテリーから電源電圧が供給されるオーディオ機器、エアコン機器、照明機器などの車内電装機器は、供給機器の一例である。導電バー11の接続孔13側の端子は、接続部の一例である。導電バー11の屈曲部15に固定されたボルト17は、出力部の一例である。中空部19Aは、磁性体コア19の貫通孔の一例である。前後方向は、導電バー11が磁性体コア19に挿入される挿入方向の一例である。チップコンデンサ29は、容量素子の一例である。2次モールド部41は、モールド部の一例である。凹凸部61、導入孔63及び係合部65は、加工部の一例である。
【0039】
以上、詳細に説明したように、本願に開示される上記実施形態のノイズフィルタモジュール1では、固定孔49に挿入されたボルトを締め付ける際に、ボルトを回転させる方向の回転トルクが第2固定部27に作用するところ、第2固定部27の表面に複数の凹凸を設けた凹凸部61が加工部として形成されている。これにより、第2固定部27は、当該第2固定部27をモールドするフレームモールド部45の内側部分の樹脂と接触する接触面積が増大する。第2固定部27は、ボルトを回転させる際の回転トルクに対する抵抗(摩擦力)が増大する。
【0040】
従って、締め付けの際に過剰な力が加わることで第2固定部27が歪むなどの不具合の発生を防止することが可能となる。また、過剰な回転トルクが加わることでリードフレーム21と、それをモールドするフレームモールド部45とが剥離することを防止することが可能となる。このため、本実施形態のノイズフィルタモジュール1では、締め付け作業によってリードフレーム21とフレームモールド部45の内側部分の樹脂とが剥離せず隙間が形成されないため、このような隙間を通じた浸水などを防止することが可能となる。
【0041】
また、第2固定部27は、導電バー11を挿入する前後方向(挿入方向)に対して直交する平板状に形成され、固定孔27Aが前後方向に沿って貫通して形成されている。このため、本実施形態のノイズフィルタモジュール1は、
図1における前方側(出力側)からボルト等を固定孔27Aに挿入して金属製筐体3に対して固定することが可能となる。
【0042】
また、回転トルクに対して抵抗を高める加工は、凹凸部61に限らず、
図6に示す導入孔63や
図7に示す係合部65を形成してもよい。また、これらの凹凸部61、係合部65、及び係合部65を、組み合わせて1つの第2固定部27に形成してもよい。
【0043】
なお、本願に開示される技術は前記実施形態に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、1次モールド部33及び2次モールド部41に使用する樹脂材料として、熱硬化性樹脂について説明したが、これに限定されず、例えば、PPS(PolyPhenylene Sulfide)やPBT(PolyButylene Terephthalate)などの熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0044】
また、上記実施形態における加工部の形状等は一例であり、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、凹凸部61を、第2固定部27の一部(
図5にハッチング出示す部分)に設けたが、第2固定部27の全体に設けてもよい。また、凹凸部61を、第2固定部27の両面に設けたが、片面に設けてもよい。また、加工部は、凹凸形状に限らず、例えば、第2固定部27の平面の一部に切り込みを入れて前後方向に折り曲げて引っかかりを形成したものでもよい。また、
図6に示す導入孔63を円形に形成したが、他の形状、楕円や三角形等でもよい。また、
図7に示す係合部65を三角波状に形成したが、矩形波や正弦波等でもよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
また、上記実施形態では、磁気飽和の発生を防止するために磁性体コア19にスリット19Bを設けたが、磁性体コア19の体格等に応じて、スリット19Bを設けない構成にしてもよい。