特許第6379411号(P6379411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新コスモス電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6379411-警報器 図000002
  • 特許6379411-警報器 図000003
  • 特許6379411-警報器 図000004
  • 特許6379411-警報器 図000005
  • 特許6379411-警報器 図000006
  • 特許6379411-警報器 図000007
  • 特許6379411-警報器 図000008
  • 特許6379411-警報器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379411
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/16 20060101AFI20180820BHJP
   G08B 17/10 20060101ALI20180820BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G08B21/16
   G08B17/10 K
   G08B17/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-217467(P2013-217467)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-79439(P2015-79439A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】境 裕司
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−295094(JP,A)
【文献】 特開2011−103108(JP,A)
【文献】 特開2013−117895(JP,A)
【文献】 特開2008−269533(JP,A)
【文献】 特開2004−240941(JP,A)
【文献】 特開2011−197800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G08B 17/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部環境の異常を検知するセンサと、前記センサの出力値に基づいて警報を報知する警報部を備えた警報器であって、
前記警報部は、
電源投入後の起動時に前記出力値が所定の警報閾値以上になっても警報を報知しない起動モードと、
前記起動モード中に所定の起動モード解除条件を満たすと前記起動モードから移行する初期監視モードと、
前記初期監視モード中に所定の初期監視モード解除条件を満たすと前記初期監視モードから移行し、前記出力値が前記警報閾値以上になると警報を報知する通常監視モードと、を備え、
前記初期監視モード中に、前記出力値が前記警報閾値を下回るまでの間に、前記出力値が上昇した場合には、前記出力値が前記警報閾値を下回るまで警報を報知することを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記初期監視モード解除条件が、前記初期監視モード中に前記出力値が前記警報閾値を下回ることであることを特徴とする請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記警報部は、前記電源投入から所定の期間が経過しても前記出力値が前記警報閾値を下回っていなければ、警報を報知することを特徴とする請求項1または2に記載の警報器。
【請求項4】
前記警報部は、前記初期監視モード中に前記出力値を所定時間ごとにサンプリングし、直近にサンプリングした出力値と、その直前にサンプリングした出力値との差分を算出することを繰り返し、前記算出された差分が所定回数連続して前記出力値の上昇傾向を示していれば、前記出力値が上昇したと判定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の警報器。
【請求項5】
前記起動モード解除条件が、該警報器の前記電源投入から所定の起動時間の経過であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部環境の異常を検知するセンサと、前記センサの出力値に基づいて警報を報知する警報部を備えた警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
警報器は、外部環境の異常を検知するセンサとして、例えばブリッジ回路に組み込まれた半導体式センサを備え、検知対象のガスに反応して半導体式センサの抵抗値が変化すると、それに伴い電圧が変化するので、それを半導体式センサの出力値として取り出し、所定の警報閾値と比較することで、検知対象のガスの漏洩が発生しているか否かの判定や、警報の報知を行うように構成されている。
【0003】
このような警報器の起動時においては、センサの出力値は、電源投入が投入されると、過渡現象により半導体式センサの出力値は急激に前記警報閾値を超えて大きく立ち上がり、経時的に前記警報閾値を下回って一定値に安定するような挙動を示す。従って、電源投入から所定の安定化期間として数分程度の時間の経過を待って、検知対象のガスの漏洩の監視を始める必要があった。
【0004】
なお、本発明における従来技術となる上述した警報器は、一般的な技術であるため、特許文献等の先行技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように電源投入からセンサの出力値の安定を待つのは時間的な無駄が多く、電源投入からなるべく早期にガスの漏洩を監視したいという要請があった。
【0006】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みて、電源投入後のセンサの出力値が安定していない状態であっても、早期にガスの漏洩の監視が可能な警報器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による警報器の第一の特徴構成は、外部環境の異常を検知するセンサと、前記センサの出力値に基づいて警報を報知する警報部を備えた警報器であって、前記警報部は、電源投入後の起動時に前記出力値が所定の警報閾値以上になっても警報を報知しない起動モードと、前記起動モード中に所定の起動モード解除条件を満たすと前記起動モードから移行する初期監視モードと、前記初期監視モード中に所定の初期監視モード解除条件を満たすと前記初期監視モードから移行し、前記出力値が前記警報閾値以上になると警報を報知する通常監視モードと、を備え、前記初期監視モード中に、前記出力値が前記警報閾値を下回るまでの間に、前記出力値が上昇した場合には、前記出力値が前記警報閾値を下回るまで警報を報知する点にある。
【0008】
警報器は、周囲に検知対象のガスが無い状態で電源投入すると、まずセンサの出力値が急激に所定の警報閾値を超えて大きく立ち上がり、その後徐々に下がり始め、4分(240秒)程度の経過後にほぼ一定値に安定する。
【0009】
従って、従来は警報器の起動から安定化期間としての4分(240秒)経過を待って、ガスの漏洩の判定を行っていたが、本発明者らは鋭意研究によって、電源投入後のセンサの出力値の経時的変化を分析した結果、警報器が備えるマイコンで構成された制御部等の起動時間を考慮しても、電源投入から5秒程度の時間をおけば、その出力値が所定の警報閾値以上、かつ一定値に安定していない状態であっても、ガスの検知が可能となるという知見を得た。
【0010】
すなわち、電源投入直後はセンサの出力値が急激に大きく立ち上がるが、電源投入から5秒程度もすれば、その出力値は所定の警報閾値以上であるものの、前記警報閾値より小さい所定の一定値に向けて徐々に下がるような挙動を示すので、その出力値が徐々に前記一定値に向かって下がり続けている傾向を示せば、ガスを検知していない可能性が高いと考えられる。これに対してセンサの出力値が、徐々に下がり続けず途中で上昇するようなことがあれば、センサが検知対象のガスを検知している可能性が高いと考えられる、つまり、ガスの漏洩があると判定できる。そして、このような場合には、出力値が所定の警報閾値を下回るまで警報を報知する。
【0011】
なお、起動モードとは、警報器の状態が電源投入後の起動時であるときモードであり、電源投入から上述した5秒程度の期間においてガスの漏洩を監視するモードをいう。この起動モード中は出力値が警報閾値以上になっても警報を報知しない。初期監視モードとは、警報器の状態が起動モード中であるときに、所定の起動モード解除条件を満たすと移行するモードであり、起動モードの終了からガスの漏洩を監視するモードをいう。通常監視モードとは、所定の初期監視モード解除条件を満たすと移行するモードであり、初期監視モードの終了からガスの漏洩を監視するモードをいう。
【0012】
初期監視モードでのガスの漏洩の判定は、出力値の実測値を補正したり、予測したりするような複雑な処理を必要とせず、既存の警報器であってもその制御部にプログラムを追加ないし更新するだけで対応できるため、きわめて安価かつ簡単に導入することができ、4分(240秒)程度の安定化期間の経過を待ってガスの漏洩の判定を行っていた従来の警報器に比べて、電源投入から5秒程度経過後という、きわめて早期にガスの漏洩の監視ができるようになった。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記初期監視モード解除条件が、前記初期監視モード中に前記出力値が前記警報閾値を下回ることである点にある。
【0014】
電源投入から、例えば数十秒程度経過後には、前記出力値はいまだ前記一定値に安定していないものの前記警報閾値を下回る。このように電源投入後、一旦所定の警報閾値以上となったセンサの出力値が、前記警報閾値を下回った場合は、センサが検知対象のガスを検知していないことが考えられる。このようなときは初期監視モードから通常監視モードに移行する。一旦、通常監視モードに移行すると、それ以降は、前記出力値が前記警報閾値以上とならない限りは警報を報知しない。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述した第一又は第二の特徴構成に加えて、前記警報部は、前記電源投入から所定の期間が経過しても前記出力値が前記警報閾値を下回っていなければ、警報を報知する点にある。
【0016】
周囲に検知対象のガスが無い状態であれば、電源投入から、例えば2分(120秒)程度経過後には、前記出力値はいまだ前記一定値に安定していないものの前記警報閾値を下回っている。しかし、2分(120秒)経過しても、前記出力値が前記警報閾値を下回っていない場合は、センサが検知対象のガスを検知している可能性が高い。このように電源投入から所定の期間、例えば2分(120秒)の期間を設けてガスの漏洩を監視することで、該期間の終了と同時にガスの漏洩を報知することができる。
【0017】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記警報部は、前記初期監視モード中に前記出力値を所定時間ごとにサンプリングし、直近にサンプリングした出力値と、その直前にサンプリングした出力値との差分を算出することを繰り返し、前記算出された差分が所定回数連続して前記出力値の上昇傾向を示していれば、前記出力値が上昇したと判定する点にある。
【0018】
初期監視モード中に出力値を所定時間、例えば250ミリ秒ごとにサンプリングし、直近にサンプリングした出力値と、その直前にサンプリングした出力値との差分を算出する。直近にサンプリングした出力値が、その直前にサンプリングした出力値より大きければ、センサの出力値の上昇が、ガスの検知に基づく可能性が高い。このような傾向が所定回数連続すれば、センサの出力値が上昇したと判定できる。なお、一方ではノイズによる誤判定を除外するために、他方では前記所定回数を増やしすぎることによる判定までの時間が延びるのを防ぐために、前記所定回数は2回から5回程度の複数回が好ましい。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記起動モード解除条件が、該警報器の前記電源投入から所定の起動時間の経過である点にある。
【0020】
本発明者らの、電源投入直後はセンサの出力値が急激に大きく立ち上がるが、所定の起動時間、例えば数秒程度も経過すれば、前記出力値はそのピークを過ぎるという知見に基づくと、所定の起動モード解除条件は、電源投入から5秒程度の時間が好ましく例示できる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成された本発明の警報器によれば、電源投入後のセンサの出力値が安定していない状態であっても、早期にガスの漏洩の監視が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による警報器の各機能ブロックの説明図
図2】時間とセンサ出力の関係の説明図
図3】警報器の作動を説明するフローチャート
図4】起動モードを説明するフローチャート
図5】初期監視モードを説明するフローチャート
図6】通常監視モードを説明するフローチャート
図7】(a)、(b)は初期監視モードの説明図、(c)は通常監視モードの説明図
図8】出力値の上昇判定の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、警報器1は家庭の台所に設置されLPガスの漏洩を監視するものであり、図1に示すように、外部環境の異常を検知するセンサとしてLPガスの漏洩を検知するガスセンサ11を備えた検知部10と、検知部10がガスの漏洩を検知するとガスの漏洩を報知する警報部20を備えて構成されている。検知部10や警報部20は、外部電源または内蔵した電池から供給される所定の制御電圧によって作動し、前記制御電圧の供給の停止によって、ガスの漏洩の監視を停止する。
【0024】
ガスセンサ11は、LPガスを検知する半導体式センサで構成されている。なお、ガスセンサ11による検知対象のガスはLPガスに限らず、都市ガスであってもよく、ガスセンサ11は半導体式センサに限らない。ガスセンサ11は、接触燃焼式、電気化学式、固体電解質式、赤外線式等のその他のセンサであってもよく、検知対象のガスとの組み合わせにより好ましいものが採用される。
【0025】
検知部10は、ガスセンサ11と、LPガスに反応に伴って変化する電気的特性、例えば抵抗値に伴って変化するガスセンサ11の電圧の変化を、ガスセンサ11の出力値Vの変化として取り出すブリッジ回路12を備えている。
【0026】
警報部20は、マイクロコンピュータやマイクロコンピュータで実行されるプログラム等を記憶したメモリ等によって実現され、検知部10から出力されるガスセンサ11の出力値Vを所定の警報閾値Thと比較してLPガスの漏洩の判定を行う判定部21と、判定部21の判定結果に基づいて、警報を報知する報知部22等の各機能ブロックを備えている。
【0027】
判定部21は、起動モードKM、初期監視モードSM、通常監視モードTMを備えている。以下、図2に基づいて説明する。
起動モードKMは、警報器1の状態が電源投入後の起動時であるときモードであり、電源投入から5秒までの間、ガスの漏洩を監視するモードである。この起動モードKM中は出力値Vが警報閾値Th以上になっても警報を報知しない。
初期監視モードSMは、警報器1の状態が起動モードKM中であるときに、所定の起動モード解除条件を満たすと移行するモードであり、起動モードKMの終了からガスの漏洩を監視するモードをいう。
通常監視モードTMは、所定の初期監視モード解除条件を満たすと移行するモードであり、初期監視モードSMの終了からガスの漏洩を監視するモードをいう。
【0028】
本発明による警報器1の特徴は、起動モードKM、初期監視モードSM、通常監視モードTMの処理にあり警報部20のメモリに格納されたプログラムの形態をとる。従って、起動モードKM、初期監視モードSM、通常監視モードTM等の各処理を、図3から図6に示す各フローチャートに基づいて説明する。
【0029】
図3に示すように、判定部21は、警報器1の電源を投入すると(ステップS11)、起動モードKM(ステップS12)と、初期監視モードSM(ステップS13)、通常監視モードTM(ステップS14)の順に所定の条件に従って移行するように構成されている。
【0030】
図4に示すように、起動モードKMは、警報器1の電源投入(図3のステップS11)によって最初に実行されるモードであり、所定の解除条件として電源投入から計時を開始したタイマーが5秒をカウントすると(ステップS21でYES)、終了する。
判定部21は、所定の起動モード解除条件を満たすと起動モードKMを終了し(図3でステップS12)、初期監視モードSMに移行する(図3でステップS13)。
【0031】
図5に示すように、判定部21は、初期監視モードSM中に出力値Vが警報閾値Thを下回ると(ステップS31でNO)、終了する。
判定部21は、初期監視モードSM中に出力値Vが警報閾値Th以上のまま、電源投入から計時を開始したタイマーが120秒をカウントすると(ステップS32でYES)、報知部22に警報の報知信号を出力する(ステップS33)。判定部21は、前記警報の報知信号を、出力値Vが警報閾値Th以上である限り継続して出力し(ステップS34でYES)、出力値Vが警報閾値Thを下回ると(ステップS34でNO)、警報の報知信号の出力を停止する(ステップS35)。このような状況のときの出力値Vの推移の様子が図7(a)に示される。
【0032】
また、判定部21は、初期監視モードSM中に出力値Vが警報閾値Th以上のまま(ステップS31でYES)、前記120秒未満であっても(ステップS32でNO)、出力値Vが上昇していると判定した場合は(ステップS36でYES)、報知部22に警報の報知信号を出力する(ステップS33)。判定部21は、前記警報の報知信号を、出力値Vが警報閾値Th以上である限り継続して出力し(ステップS34でYES)、出力値Vが警報閾値Thを下回ると(ステップS34でNO)、警報の報知信号の出力を停止する(ステップS35)。このような状況のときの出力値Vの推移の様子が図7(b)に示される。
【0033】
また、判定部21は、初期監視モードSM中に出力値Vが警報閾値Th以上のまま(ステップS31でYES)、前記120秒をカウントするまで(ステップS32でNO)、出力値Vが上昇しているか否かの判定を繰り返す(ステップS36でNO)。
【0034】
判定部21は、初期監視モードSMの終了条件を満たすと(ステップS31でNO、S35)、初期監視モードSMを終了し(図3でステップS13)、通常監視モードYMに移行する(図3でステップS14)。
【0035】
図6に示すように、判定部21は、通常監視モードTM中は、ガスセンサ11の出力値Vが所定の警報閾値Th以上であるか否かを判定し(ステップS41)、出力値Vが警報閾値Th以上になると(ステップS41でYES)、報知部22に警報の報知信号を出力する(ステップS42)。このような状況のときの出力値Vの推移の様子が図7(c)に示される。
なお、判定部21は、警報の報知を、ガスセンサ11の出力値Vが警報閾値Thを下回ると(ステップS43でYES)、終了する(ステップS44)、という処理を、警報器1の電源が切れるまで(ステップS45でYES)繰り返す。
【0036】
次に、判定部21による初期監視モードSM中の出力値Vの上昇の判定について説明する。
判定部21は、少なくとも初期監視モードSM中は、ガスセンサ11の出力値Vを所定時間、例えば250ミリ秒ごとにサンプリングを行っている。
【0037】
図8に示すように、第1の測定時t1におけるガスセンサ11の出力値V1と、第2の測定時t2におけるガスセンサ11の出力値V2との間の経時的な変化の傾向として、差分ΔV21=V2−V1を算出する。
初期監視モードSMにおいて、差分ΔV21が負の値であれば、ガスセンサ11の出力値Vが下降していることを示す。一方、差分ΔV21が正の値であればガスセンサ11の出力値Vは上昇していることを示す。このような出力値Vの上昇は、漏洩したガスの検知に起因している可能性が高い。
【0038】
なお、判定部21は、出力値Vの上昇の判定の精度を高めるために、さらに時間的に後にサンプリングされる出力値Vから差分を算出する。
第2の測定時t2におけるガスセンサ11の出力値V2と、第3の測定時t3におけるガスセンサ11の出力値V3との間の経時的な変化の傾向として、差分ΔV32=V3−V2を算出する。
時間的に前後する2つの差分ΔV21と差分ΔV32がともに正の値であれば、つまり、直近にサンプリングした出力値と、その直前にサンプリングした出力値との差分を算出することを繰り返し、前記算出された差分が所定回数連続して前記出力値の上昇傾向を示していれば、出力値Vが上昇したと判定する。出力値Vの上昇を示す傾向が所定回数連続すれば、ガスセンサ11の出力値が上昇したことを精度よく判定できる。なお、一方ではノイズによる誤判定を除外するために、他方では前記所定回数を増やしすぎることによる判定までの時間が延びるのを防ぐために、前記所定回数は2回から5回程度の複数回が好ましい。
【0039】
なお、上述の構成に限らず、時間的に前後する2回のサンプリングの差分ΔV21の上昇の程度と、所定のノイズ判定閾値以上であるか否かを比較し、ΔV21のみからガスの漏洩の検知に起因する出力値Vの上昇を判定してもよい。
【0040】
また、判定部21は、時間的に前後するサンプリングされた出力値Vの差分から、傾きを算出して、該傾きから出力値Vの上昇を判定してもよい。
例えば、第1の測定時t1におけるガスセンサ11の出力値V1と、第2の測定時t2におけるガスセンサ11の出力値V2との間の経時的な変化の傾向として、傾きΔA21=(V2−V1)/(t2−t1)を算出する。該傾きΔA21が所定の傾き閾値を超えるようであれば、出力値Vは急激に上昇しているため、ガスの漏洩の検知に起因する出力値Vの上昇と判定することができる。
【0041】
また、さらに、第2の測定時t2におけるガスセンサ11の出力値V2と、第3の測定時t3におけるガスセンサ11の出力値V3との間の経時的な変化の傾向として、傾きΔA32=(V3−V2)/(t3−t2)を算出する。
時間的に前後して算出された傾きΔA21と傾きΔA32とが続けて正の値であれば、ガスの漏洩の検知に起因する出力値Vの上昇と判定してもよい。
また、時間的に前後して算出された傾きΔA21と傾きΔA32とが続けて所定の傾き閾値を超えるようであれば、ガスの漏洩の検知に起因する出力値Vの上昇と判定してもよい。
以上のように、所定時間毎にサンプリングしたガスセンサ11の出力値Vの経時的な変化の傾向に基づいて、電源投入後に、ガスセンサ11の出力値Vの安定を待つことなく早期にガスの漏洩の検知を開始できる。
【0042】
報知部22は、スピーカで構成され、外部環境の異常としてのLPガスの漏洩に起因する可能性の高い判定部21の出力値Vの上昇の判定結果に基づいて、警報音(合成音信号、例えば「ガスが漏れていませんか」などの合成音声、又は、電子音信号、例えば「ピッピッピッピッ」などの電子音)による音、又はそれらの組み合わせによって、LPガスの漏洩を報知するように構成されている。なお、報知部22は、スピーカによる警報音に替えて、又は加えて、警報ブザーの鳴動や、警報ランプの緑色や赤色のLEDの点灯、点滅、消灯等によってLPガスの漏洩を報知する構成であってもよい。
【0043】
以上説明したように、本願発明による警報器1によれば、電源投入後のガスセンサ11の出力値Vが安定していない状態であっても、ガスの漏洩の判定が可能となる。
【0044】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1:警報器
10:検知部
11:ガスセンサ
20:警報部
21:判定部
22:報知部
KM:起動モード
SM:初期監視モード
TM:通常監視モード
V:出力値
Th:警報閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8