特許第6379416号(P6379416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379416
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】接触部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/52 20110101AFI20180820BHJP
   H01R 13/05 20060101ALI20180820BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01R12/52
   H01R13/05 A
   H01R13/03 D
   H01R13/03 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-222986(P2014-222986)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-91702(P2016-91702A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 智久
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−094530(JP,A)
【文献】 特開2010−257843(JP,A)
【文献】 特開2012−057212(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052517(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/52
H01R 13/03
H01R 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体を有する電子回路基板に対して表面実装可能で、前記第一導体とは別の第二導体に接触することによって前記第一導体と前記第二導体とを電気的に接続可能に構成された接触部材であって、
前記第一導体に対してはんだ付け可能な接合箇所を有する基部と、
前記基部に連設されており、前記第二導体に接触可能な接触箇所を有し、前記第二導体との接触に伴って弾性変形して、前記接触箇所を前記第二導体側へ付勢可能な弾性接触部と
を有し、
前記基部及び前記弾性接触部は、導電性及びばね性を有する金属製の薄板を所定形状に加工することによって一体成形されており、
前記金属製の薄板は、板厚方向に積層された二つの金属層を加圧接合することによって構成されたクラッド材であって、一方側の表層である第一層がりん青銅によって形成され、他方側の表層である第二層がアルミニウムによって形成され、
前記接合箇所は前記第一層によって形成されるか、当該第一層にめっきを施すことによって形成され、前記接触箇所は前記第二層によって形成され
前記第一層の前記板厚方向の厚さT1と、前記第二層の前記板厚方向の厚さT2との比T1:T2が、1.5:1から20:1の範囲内とされている
接触部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板に表面実装されて、電子回路基板とは別の導電性部材(例えば、金属製筐体等。)に対して弾性変形しつつ接触することにより、電子回路基板と導電性部材とを電気的に接続する接触部材が利用されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような接触部材としては、ばね性の高い銅合金製(例えばりん青銅製。)の部品や、そのような銅合金製部品に対して金めっきを施した部品などが市販されている。
【0005】
しかし、このような接触部材の接触対象が、アルミニウム製筐体であるような場合には、異種金属の接触に起因してアルミニウム側に腐食(ガルバニック腐食等。)を招く可能性があった。
【0006】
以上のような事情から、接触対象がアルミニウム製の部品であっても、接触対象における腐食の発生を抑制可能な接触部材を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に説明する接触部材は、第一導体を有する電子回路基板に対して表面実装可能で、第一導体とは別の第二導体に接触することによって第一導体と第二導体とを電気的に接続可能に構成された接触部材であって、第一導体に対してはんだ付け可能な接合箇所を有する基部と、基部に連設されており、第二導体に接触可能な接触箇所を有し、第二導体との接触に伴って弾性変形して、接触箇所を第二導体側へ付勢可能な弾性接触部とを有し、基部及び弾性接触部は、導電性及びばね性を有する金属製の薄板を所定形状に加工することによって一体成形されており、金属製の薄板は、板厚方向に積層された二以上の金属層を加圧接合することによって構成されたクラッド材であって、一方側の表層である第一層がばね性を有する金属によって形成され、他方側の表層である第二層がアルミニウムによって形成され、接合箇所は第一層によって形成されるか、当該第一層にめっきを施すことによって形成され、接触箇所は第二層によって形成されている。
【0008】
このように構成された接触部材によれば、第一導体を有する電子回路基板に対して表面実装することができ、表面実装された状態において第二導体に接触することにより、第一導体と第二導体とを電気的に接続することができる。
【0009】
弾性接触部の有する接触箇所は、アルミニウム製の第二層によって形成されている。そのため、弾性接触部の接触対象がアルミニウム製の部材(例えばアルミニウム製筐体。)であっても、アルミニウム製の部分同士が接触することになる。したがって、異種金属の接触に起因する腐食(ガルバニック腐食等。)が発生するのを抑制することができる。
【0010】
また、異種金属接続では素材固有のインピーダンスが異なるので、接触部材−第二導体間が異種金属を接触させた構造になる場合、接触部材−第二導体間における伝送特性が低下してしまう傾向がある。これに対し、上述の接触部材の場合は、接触部材−第二導体間が同一金属を接触させた構造になるので、このように同一金属で形成された部分同士を電気的に接続すれば、接触部材−第二導体間における伝送特性の低下を抑制することができる。
【0011】
一方、第一層と第二層との接合界面においては異種金属が接合されることになる。ただし、第一層と第二層との接合界面は、単に異種金属を接触させた箇所とは異なり、接合時に各層を構成する金属原子の拡散が僅かに生じ、第一層と第二層との接合界面に異種金属の金属間化合物が形成されている。しかも、第一層と第二層との接合界面の場合、単に異種金属を接触させた箇所とは異なり、雰囲気中の酸素や水が入り込む余地はなく、金属酸化物等が生成されにくい。そのため、このような第一層と第二層との接合界面における伝送特性は、接触部材−第二導体間において単に異種金属を接触させた場合に比べると良好である。
【0012】
さらに、基部の有する接合箇所は、第一層によって形成されるか、当該第一層にめっきを施すことによって形成される。第一層がはんだ付け可能な金属である場合は、めっきを施さなくてもよいしめっきを施してもよい。第一層がはんだ付けしにくい金属である場合は、はんだ付け可能とするためにめっきを施すことが好ましい。このように構成されていれば、アルミニウム単独で基部が形成されている場合とは異なり、第一導体に対して適切にはんだ付けを行うことができる。また、第一層は、ばね性を有する金属によって形成されているので、アルミニウム単独で弾性接触部が形成されている場合とは異なり、弾性接触部に所期のばね性を付与することができる。
【0013】
加えて、接触部材を形成するために利用している金属製の薄板は、板厚方向に積層された二以上の金属層を加圧接合することによって構成されたクラッド材である。そのため、例えば最大寸法が数mm程度の小さな接触部材を形成した場合であっても、弾性接触部の先端側だけにアルミニウム製の部分を取り付けてあるような構造とは異なり、隣り合う金属層間の接合面積を最大限確保することができる。したがって、隣り合う金属層間の接合強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は第一実施形態の接続部材を示す斜視図である。
図2図2は第一実施形態の接続部材の使用状態を示す断面図である。
図3図3は第二実施形態の接続部材を示す斜視図である。
図4図4は第二実施形態の接続部材の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上述の接触部材について、例示的な実施形態を挙げて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、図中に併記した前後左右上下の各方向を利用して説明を行う。ただし、これらの各方向は、接触部材を構成する各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するために規定した方向に過ぎない。したがって、例えば接触部材の使用時等に、接触部材をどのような方向に向けて配設するかは任意である。
【0016】
(1)第一実施形態
まず、第一実施形態について説明する。第一実施形態として例示する接触部材1は、図1に示すように、基部3と、基部3に連設された弾性接触部5とを有する。これら基部3及び弾性接触部5は、導電性及びばね性を有する金属製の薄板7をプレス成形することにより、一体成形されている。
【0017】
本実施形態の場合、基部3は、図1中でいう上下方向を板厚方向とする平板状に形成され、平面視(すなわち、上方から見た状態。)で四角形に形成されている。また、弾性接触部5は、上述のように四角形とされた基部3の一辺から折り返して斜め上方へと延出する第一部分51と、その第一部分51の上端から折り返して基部3と平行になる方向へ延出する第二部分52とを有する。第二部分52は、平面視では四角形に形成され、平面視で基部3とぴったり重なる位置にある。
【0018】
なお、接触部材1は、自動実装機を利用して電子回路基板上に配置可能な表面実装部品として構成されている。自動実装機による実装を行う際には、図1中でいう第二部分52の上面が、自動実装機が備える吸引ノズルで吸着可能な吸着面として利用される。
【0019】
金属製の薄板7は、板厚方向に積層された二つの金属層7A,7Bを加圧接合することによって構成されたクラッド材である。これら二つの金属層7A,7Bのうち、一方側の表層である第一層7Aは、ばね性を有するはんだ付け可能な金属(本実施形態の場合はりん青銅。)によって形成されている。また、他方側の表層である第二層7Bは、アルミニウムによって形成されている。
【0020】
第二層7Bは、板厚方向の厚さが、第一層7Aよりも薄く形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態の場合、薄板7は厚さ0.102mmに形成されている。そのうち、第一層7Aは厚さ0.096mmに形成され、第二層7Bは厚さ0.006mmに形成されている。したがって、第一層7Aの厚さT1と第二層7Bの厚さT2との比T1:T2は、16:1となっている。
【0021】
このように第二層7Bを第一層7Aよりも薄く形成すると、第二層7Bを第一層7Aよりも厚く形成した場合に比べ、第二層7Bよりもばね性の高い第一層7Aの特性が支配的になり、薄板7全体としてのばね性が高くなる。そのため、弾性接触部5のばね性が高くなるので、弾性接触部5を良好に弾性変形させることができるようになる。
【0022】
基部3は、図1中でいう下方に向けられた接合箇所3Aを有し、接触部材1を使用する際には、図2に示すように、電子回路基板11が有する導体パターン13(本明細書でいう第一導体の一例に相当。)に対し、接合箇所3Aがはんだ付けされる。接合箇所3Aを形成する第一層7Aは、はんだ付け可能な金属によって形成されているので、導体パターン13に対して良好にはんだ付けすることができる。
【0023】
弾性接触部5は、図1中でいう上方に向けられた接触箇所5Aを有し、接触部材1を使用する際には、図2に示すように、アルミニウム製筐体15(本明細書でいう第二導体の一例に相当。)に対し、接触箇所5Aで接触する。弾性接触部5が接触箇所5Aでアルミニウム製筐体15に接触した際には、弾性接触部5が弾性変形し、接触箇所5Aは基部3側へ接近する方向へ変位する。そのため、弾性接触部5は、接触箇所5Aをアルミニウム製筐体15側へ付勢する状態となり、これにより、接触箇所5Aとアルミニウム製筐体15との接触が良好に維持される。
【0024】
接触箇所5Aを形成する第二層7Bは、アルミニウムによって形成されているので、アルミニウム製筐体15に接触させても同種金属同士の接触となり、異種金属の接触に起因する腐食(ガルバニック腐食等。)が発生するのを抑制することができる。また、接触箇所5Aとアルミニウム製筐体15は、同一金属で形成された部分同士で電気的に接続される。そのため、異種金属を電気的に接続する場合のように、素材固有のインピーダンスが異なることが原因で伝送特性が低下してしまうことがない。
【0025】
一方、第一層7Aと第二層7Bとの接合界面においては異種金属が接合されることになる。ただし、第一層7Aと第二層7Bとの接合界面は、単に異種金属を接触させた箇所とは異なり、接合時に各層を構成する金属原子の拡散が僅かに生じ、第一層7Aと第二層7Bとの接合界面に異種金属の金属間化合物が形成されている。しかも、第一層7Aと第二層7Bとの接合界面の場合、単に異種金属を接触させた箇所とは異なり、雰囲気中の酸素や水が入り込む余地はなく、金属酸化物等が生成されにくい。そのため、このような第一層7Aと第二層7Bとの接合界面における伝送特性は、接触部材−筐体間において単に異種金属を接触させた場合に比べると良好である。
【0026】
ちなみに、弾性接触部5のばね性を確保しつつ、接触箇所5Aをアルミニウムによって形成する手法としては、例えば、第一部分51をばね性のある金属で形成し、第二部分52をアルミニウムによって形成する、といった手法も考え得る。しかし、このような構造を採用すると、第一部分51と第二部分52との境界となる狭い範囲に異種金属の境界(異種金属の接合箇所)が形成されることになる。したがって、上記実施形態のように、金属製の薄板7を製造する段階で、板厚方向に積層された二つの金属層7A,7Bを加圧接合する方が、接合面積を十分に大きくすることができ、金属層7A,7B間の接合強度を高めることができる。
【0027】
(2)第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態以降の実施形態は、第一実施形態と共通部分が多いので、第一実施形態との相違点を中心に詳述する。第二実施形態として例示する接触部材21は、図3に示すように、基部23と、基部23に連設された弾性接触部25とを有する。これら基部23及び弾性接触部25は、導電性及びばね性を有する金属製の薄板27を、プレス成形で所定形状に加工することによって一体成形されている。
【0028】
本実施形態の場合、基部23は、図3中でいう上下方向を板厚方向とする平板状に形成され、平面視(すなわち、上方から見た状態。)では四角形の枠状に形成されている。また、弾性接触部25は、枠状に形成された基部23の内周側の一辺から斜め上方へと延出する第一部分251と、その第一部分251の上端から基部23と平行になる方向へ延出する第二部分252とを有する。図3中でいう第二部分252の上面は、自動実装機が備える吸引ノズルで吸着可能な吸着面として利用される。
【0029】
金属製の薄板27は、第一実施形態と同様のものであり、りん青銅製の第一層27Aとアルミニウム製の第二層27Bとを加圧接合することによって構成されたクラッド材である。第二層27Bは、板厚方向の厚さが、第一層27Aよりも薄く形成されている点も第一実施形態と同様である。
【0030】
基部23は、図3中でいう下方に向けられた接合箇所23Aを有し、接触部材21を使用する際には、図4に示すように、電子回路基板31が有する導体パターン33(本明細書でいう第一導体の一例に相当。)に対し、接合箇所23Aがはんだ付けされる。
【0031】
弾性接触部25は、図3中でいう上方に向けられた接触箇所25Aを有し、接触部材21を使用する際には、図4に示すように、アルミニウム製筐体35(本明細書でいう第二導体の一例に相当。)に対し、接触箇所25Aで接触する。弾性接触部25が接触箇所25Aでアルミニウム製筐体35に接触した際には、弾性接触部25が弾性変形し、接触箇所25Aは基部23側へ接近する方向へ変位する。そのため、弾性接触部25は、接触箇所25Aをアルミニウム製筐体35側へ付勢する状態となる。
【0032】
以上のように構成された接触部材21は、具体的な形状が第一実施形態とは異なる。ただし、アルミニウム製の接触箇所25Aでアルミニウム製筐体35に接触する点、りん青銅製の接合箇所23Aで導体パターン33にはんだ付けされる点などは、第一実施形態と同様である。また、弾性接触部25がりん青銅製の第一層27Aを含むクラッド材で形成されることで、十分なばね性を確保している点も第一実施形態と同様である。したがって、これらの点において、第一実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0033】
(3)他の実施形態
以上、接触部材について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本発明の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、ばね性を有するはんだ付け可能な金属の例として、りん青銅を例示したが、ばね性を有する金属であれば、りん青銅以外の金属を利用してもよい。そのような金属としては、例えば、ベリリウム銅、洋白、ステンレス鋼、チタン銅、及びニッケル−すず銅などを挙げることができる。すなわち、上述の第一層7A,27Aは、これらの金属のいずれかによって形成されていてもよい。これらの金属の中でも、りん青銅、洋白、ベリリウム銅などは、ばね性が高くて、耐疲労性にも優れているので、上述の第一層7A,27Aを形成する金属材料として好適である。
【0035】
また、上述のような、ばね性を有する金属の中には、例えばステンレス鋼のように、必ずしもはんだ付けが容易ではない金属が含まれるが、そのような金属を採用する場合、接合箇所は、第一層にめっきを施すことによって形成されていればよい。めっきは、接合箇所がはんだ付け可能となるような金属種で形成されていればよく、例えば、金めっき、すずめっき、ニッケルめっきなどが好適である。なお、はんだ付けが容易な金属で第一層を形成した場合であっても、接合箇所において、上述のようなめっきを第一層に施してもよい。
【0036】
また、上記第一実施形態では、第一層7Aや第二層7Bについて、板厚方向の厚さを具体的に例示したが、これら各層の厚さは一例に過ぎず、具体的数値は任意に変更し得る。ただし、上述の通り、第二層7Bを第一層7Aよりも薄く形成すると好ましく、例えば、第一層7Aの厚さT1と第二層7Bの厚さT2との比T1:T2は、1.5:1から20:1の範囲内で設定されると好適である。第一層7Aの厚さT1が、第二層7Bの厚さT2の1.5倍を下回ると、相対的にアルミニウム層が厚くなるため、弾性接触部25のばね性を確保するための工夫が必要になる。第一層7Aの厚さT1が、第二層7Bの厚さT2の20倍を上回ると、相対的にアルミニウム層が薄くなるため、アルミニウム層が摩耗したり欠損したりした場合に、それらの摩耗箇所や欠損箇所で第一層7Aが露出しやすくなる。よって、これらの点も考慮する必要がある場合には、上述の比T1:T2が1.5:1から20:1の範囲内となるように調節すると好ましい。
【0037】
また、上記実施形態において、薄板7は、りん青銅製の第一層7Aとアルミニウム製の第二層7Bとを積層したクラッド材で構成されていたが、クラッド材としては、三層以上を積層したものを利用してもよい。一例を挙げれば、例えば、りん青銅製の第一層とアルミニウム製の第二層との間に、更に別金属製の第三層を挟み込んで三層構造のクラッド材とされていてもよい。このような構造にしても、一方の表層にアルミニウム層、他方の表層にりん青銅層が形成されるので、上述の各実施形態と同様の作用、効果を奏する接触部材となる。このような三層以上の層は、例えば、接触部材の機械的強度の改善や、ばね性の改善、導電性の改善などを目的として、それに応じた金属層を任意に追加することができる。なお、このような三層以上の層を設けた場合は、それら複数層から第二層を除いた部分の板厚方向の厚さT1と、第二層の板厚方向の厚さT2との比T1:T2が、1.5:1から20:1の範囲内とされていればよい。
【0038】
さらに、上記各実施形態では、接触部材の具体的な形状を例示したが、上述のようなクラッド材からなる薄板7,27を利用して所定形状にプレス成形したものであれば、細部の形状が異なっていても、上記実施形態と同様の作用、効果が期待できる。したがって、細部の形状をどのような形状にするかは任意であり、金属の薄板から成形される種々の接触部材において、本明細書で開示したようなクラッド材を利用でき、そのような接触部材も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1,21…接触部材、3,23…基部、3A,23A…接合箇所、5,25…弾性接触部、5A,25A…接触箇所、7,27…薄板、7A,27A…第一層、7B,27B…第二層、11,31…電子回路基板、13,33…導体パターン、15,35…アルミニウム製筐体。
図1
図2
図3
図4