(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、洗濯物の偏りが有ると前記判定手段が判定した場合には、前記ドラムと前記回転翼とを互いに異なる速度で回転させた後に、前記ブレーキ手段を作動させて前記ドラムの回転にブレーキをかけることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
前記制御手段は、洗濯物の偏りが有ると前記判定手段が判定した場合には、前記ドラムと前記回転翼とが等速回転するように前記駆動手段を制御し、その後も洗濯物の偏りが有ると前記判定手段が判定した場合に、前記ドラムと前記回転翼とが互いに異なる速度で回転するように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1または2記載の洗濯機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。
図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Xと称し、
図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yと称して、まず、洗濯機1の概要について説明する。上下方向Xのうち、上方を上方X1と称し、下方を下方X2と称する。前後方向Yのうち、
図1における左方を前方Y1と称し、
図1における右方を後方Y2と称する。
【0019】
洗濯機1は、いわゆるドラム式洗濯機であり、筐体2と、外槽3と、ドラム4と、回転翼としてのパルセータ5と、駆動手段としてのモータ6と、ギア切替装置7とを含む。
【0020】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2の前側面2Aは、上方X1に向かうに従って後方Y2に延びるように、上下方向Xに対して傾斜して形成される。前側面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口8が形成される。前側面2Aには、開口8を開閉する扉9が設けられる。
【0021】
外槽3は、有底円筒状に形成される。外槽3は、水平方向Hに対して傾斜して配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を後方Y2から塞ぐ底壁3Bと、円周壁3Aの前方Y1側の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に前方Y1から連通する出入口10が形成される。出入口10は、筐体2の開口8に対して後方Y2から対向し、連通した状態にある。底壁3Bは、前側面2Aと略平行に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通する貫通孔3Dが形成される。底壁3Bにおいて貫通孔3Dを縁取る位置には、後方Y2に突出する凸部11が設けられる。
【0022】
外槽3内には、水道水、風呂水および洗剤が溶けた液体などの水が溜められる。外槽3には、水道水の蛇口につながった給水路40が上方X1から接続され、水道水が給水路40から外槽3内に供給される。給水路40の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される給水弁41が設けられる。外槽3には、排水路42が下方X2から接続され、外槽3内の水は、排水路42から機外に排出される。排水路42の途中には、排水を開始したり停止したりするために開閉される排水弁43が設けられる。
【0023】
ドラム4は、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Lを収容することができる。ドラム4は、水平方向Hに対して傾斜して配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を後方Y2から塞ぐ底壁4Bと、円周壁4Aの前方Y1側の端縁を縁取りつつ円周壁4Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁4Cとを有する。
【0024】
円周壁4Aの内周面は、ドラム4の内周面である。環状壁4Cの内側には、円周壁4Aの中空部分に前方Y1から連通する出入口12が形成される。出入口12は、外槽3の出入口10および筐体2の開口8に対して後方Y2から対向し、連通した状態にある。出入口10および12は、開口8とともに、扉9によって一括開閉される。洗濯機1の使用者は、開放された開口8、出入口10および12を介して、ドラム4に対して洗濯物Lを出し入れする。
【0025】
ドラム4は、外槽3内に同軸状で収容される。外槽3内に収容された状態のドラム4は、その中心軸をなして水平方向Hに対する傾斜方向Kに延びる軸線13を中心として回転可能である。また、ドラム4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、図示しない貫通孔が複数形成され、外槽3内の水は、当該貫通孔を介して、外槽3とドラム4との間で行き来できる。そのため、外槽3内の水位とドラム4内の水位とは、一致する。
【0026】
ドラム4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して前方Y1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて軸線13と一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通する貫通孔4Dが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Dを取り囲みつつ傾斜方向Kに沿って後方Y2へ延び出た複数の支持軸14が設けられる。
【0027】
これらの支持軸14は、軸線13を中心とする周方向Sに沿って等間隔で配置される。周方向Sは、ドラム4の周方向と一致する。各支持軸14における後方Y2の端部は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Dを通って底壁3Bから後方Y2へはみ出た状態にある。各支持軸14における後方Y2の端部には、遊星ギア15が1つずつ取り付けられる。遊星ギア15は、外周面に歯が形成された平歯車であり、支持軸14によって回転自在に支持される。そのため、各遊星ギア15は、ドラム4に直結された状態にある。
【0028】
パルセータ5は、軸線13を円中心とする円盤状に形成され、ドラム4内において底壁4Bに沿ってドラム4と同心状に配置される。パルセータ5においてドラム4の出入口12を臨む前面には、放射状に配置される複数の撹拌羽根5Aが設けられる。パルセータ5には、その円中心から傾斜方向Kに沿って後方Y2へ延びる1本の回転軸16が設けられる。パルセータ5は、回転軸16と一体となって、軸線13を中心に回転可能である。回転軸16は、ドラム4の底壁4Bの貫通孔4Dと、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Dとを順に通って、底壁3Bから後方Y2へはみ出した状態にある。
【0029】
回転軸16において底壁3Bから後方Y2へはみ出した部分では、その軸方向をなす傾斜方向Kにおける途中に、太陽ギア17が設けられ、太陽ギア17よりも後方Y2には、回転軸16を中心とする径方向Rにおける外側R1へ環状に張り出したフランジ部18が設けられる。なお、径方向Rにおける外側R1(径方向外側R1)に対して、径方向Rにおける内側を、径方向内側R2と称する。径方向外側R1は、軸線13から遠ざかる方向であり、径方向内側R2は、軸線13に接近する方向である。
【0030】
太陽ギア17は、外周面に歯が形成された平歯車であり、回転軸16に対して一体回転可能に固定される。太陽ギア17は、回転軸16とは別部品でもよいし、回転軸16と一体形成されてもよい。ドラム4の底壁4Bに設けられた複数の遊星ギア15は、太陽ギア17を取り囲み、太陽ギア17と各遊星ギア15とは互いに噛み合った状態にある。
【0031】
フランジ部18は、径方向外側R1の周縁部が各遊星ギア15よりも径方向外側R1に配置されるように形成される。フランジ部18の径方向外側R1の周縁部には、前方Y1へ突出する凸部19が設けられる。
【0032】
モータ6は、たとえば3相ブラシレスモータであり、軸線13を中心として回転するロータ20を出力軸として有する。パルセータ5の回転軸16が、ロータ20に対して同軸状で一体回転可能に直結される。
【0033】
ギア切替装置7に関連して、洗濯機1は、軸線13を中心とする環状の外輪ギア21を有する。外輪ギア21は、内周面に歯が形成された環状体であり、傾斜方向Kにおいて外槽3の底壁3Bとフランジ部18との間に配置され、複数の遊星ギア15を取り囲み、各遊星ギア15と噛み合った状態にある。太陽ギア17、複数の遊星ギア15および外輪ギア21は、伝達機構22を構成する。
【0034】
外輪ギア21における前方Y1の端面には、外槽3の底壁3Bの凸部11を受け入れ可能な凹部23が形成され、外輪ギア21における後方Y2の端面には、フランジ部18の凸部19を受け入れ可能な凹部24が形成される。
【0035】
凹部23および凹部24のそれぞれは、周方向Sに長手ではなく、凸部11および凸部19において対応する方がちょうど嵌まり込める大きさに形成される。なお、凸部11および凸部19のそれぞれは、単数でもよいし、複数でもよい。凸部11が複数設けられる場合、凹部23は凸部11と同数設けられる。凸部19が複数設けられる場合、凹部24は凸部11と同数設けられる。
【0036】
ギア切替装置7は、ソレノイドなどで構成されたアクチュエータ25と、アクチュエータ25から延び出た作動片26とを含む。作動片26の先端部26Aは、外輪ギア21の外周面に係合される。アクチュエータ25が作動すると、作動片26は、外輪ギア21を伴って、太線矢印で示すように傾斜方向Kに沿って往復直線移動する。これにより、外輪ギア21は、各遊星ギア15と噛み合った状態を保ちながら、傾斜方向Kに沿って移動する。
【0037】
後方Y2に目一杯移動したときの外輪ギア21の位置を、「1軸側」と称し、前方Y1に目一杯移動したときの外輪ギア21の位置を、「2軸側」と称する。
図1における外輪ギア21は、1軸側と2軸側との間の中立位置にある。ギア切替装置7は、外輪ギア21を1軸側と2軸側との間で移動させる装置である。
【0038】
外輪ギア21が1軸側にあるとき、外輪ギア21の凹部24には、パルセータ5の回転軸16のフランジ部18における凸部19が後方Y2から嵌まり込み、外輪ギア21は、回転軸16に対して一体回転可能に連結される。この状態でモータ6が作動してロータ20が回転すると、伝達機構22では、太陽ギア17、各遊星ギア15および外輪ギア21が軸線13を中心として同一方向へ等速回転する。これにより、遊星ギア15側のドラム4と、太陽ギア17側のパルセータ5とが、軸線13を中心として周方向Sにおける同一方向へ等速回転する。このとき、各遊星ギア15は、支持軸14を中心に自転しない。
【0039】
外輪ギア21が2軸側にあるとき、外輪ギア21の凹部23には、外槽3の底壁3Bにおける凸部11が前方Y1から嵌まり込み、外輪ギア21は、外槽3に連結され、回転不能になる。この状態でモータ6が作動してロータ20が回転すると、伝達機構22では、太陽ギア17が軸線13を中心として回転し、各遊星ギア15が支持軸14を中心に自転しながら、太陽ギア17の回転方向と同じ方向へ向けて太陽ギア17のまわりを公転する。これにより、太陽ギア17側のパルセータ5が、軸線13を中心として回転し、遊星ギア15側のドラム4が、パルセータ5より減速された速度で、軸線13を中心としてパルセータ5と同じ方向に回転する。伝達機構22の減速比は、たとえば、1:2.75に設定される。
【0040】
以上のように、モータ6は、伝達機構22およびギア切替装置7と協働することによって、ドラム4およびパルセータ5のそれぞれを、等速度または異なる速度で回転させる。回転するドラム4およびパルセータ5の撹拌羽根5Aによって、ドラム4内の洗濯物Lが撹拌されながら洗濯される。
図2は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。
【0041】
図2を参照して、洗濯機1は、判定手段、制御手段および給水手段としての制御部30を含む。制御部30は、たとえば、CPU31と、ROMやRAMなどのメモリ32と、入出力装置であるI/O33とを含むワンチップマイコンとして構成される。
【0042】
以降で述べるように、洗濯機1では、洗濯物Lの脱水に先立ってドラム4内での洗濯物Lの偏りの有無を判定することができ、偏り有りとの判定が繰り返された場合には、その判定のカウント回数が判定回数としてメモリ32に記憶される。
【0043】
洗濯機1は、水位センサ34と、給水弁駆動回路35と、排水弁駆動回路36と、ギア切替駆動回路37と、モータ駆動回路38と、検知手段としての回転数読取装置39とをさらに含む。水位センサ34、給水弁駆動回路35、排水弁駆動回路36、ギア切替駆動回路37、モータ駆動回路38および回転数読取装置39のそれぞれは、制御部30に対してI/O33を介して電気的に接続される。
【0044】
水位センサ34は、外槽3およびドラム4の水位を検知するセンサであり、水位センサ34の検知結果は、リアルタイムで制御部30に入力される。給水弁駆動回路35は、給水弁41に接続され、制御部30は、給水弁駆動回路35を介して給水弁41を開閉する。排水弁駆動回路36は、排水弁43に接続され、制御部30は、排水弁駆動回路36を介して排水弁43を開閉する。
【0045】
ギア切替駆動回路37は、ギア切替装置7に接続され、制御部30は、ギア切替駆動回路37を介してギア切替装置7の動作を制御して外輪ギア21を1軸側と2軸側との間で移動させる。モータ駆動回路38は、モータ6に接続され、制御部30は、モータ駆動回路38を介してモータ6を制御する。
【0046】
回転数読取装置39は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6におけるロータ20の回転数を読み取る装置であり、たとえば、ホールICで構成される。回転数読取装置39が読み取った回転数は、リアルタイムで制御部30に入力される。制御部30は、入力された回転数に基づいてモータ6を制御し、モータ6の回転数を所望の値に調整する。
【0047】
次に、洗濯機1で行われる洗濯運転の一部について説明する。具体的には、洗濯運転の一例として、洗い工程と、1回または複数回のすすぎ工程と、脱水工程とが連続して行われるものとし、
図3では、すすぎ工程の終盤と脱水工程の序盤とに亘る洗濯運転の流れについて説明する。また、
図3の説明の際、
図4のタイムチャートも併せて参照する。
図4のタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸がモータ6の回転数を示す。
【0048】
制御部30は、ドラム4に溜めた水で洗濯物Lをすすぐすすぎ工程の終盤において、まず、排水弁43を開放してドラム4内の水を排出し(ステップS1)、その後、伝達機構22の外輪ギア21を1軸側に切り替える(ステップS2)。
【0049】
ドラム4内の水の水位が、脱水を開始してもよい水位である脱水開始水位まで下がると(ステップS3でYES)、制御部30は、メモリ32に記憶された判定回数を0(零)にクリアする(ステップS4)。
【0050】
次いで、タイムチャートのタイミングT
1において、制御部30は、今まで停止していたモータ6のロータ20を前方Y1から見て右回転させて、その回転速度を徐々に上げる(ステップS5)。このとき、外輪ギア21が1軸側にあることから、ドラム4およびパルセータ5は、ともにロータ20に直結された状態にあり、同一方向へ等速回転しながら、それぞれの回転速度が徐々に上がる。回転速度が徐々に上がることによって、ドラム4内の洗濯物Lを、ドラム4の内周面において周方向Sになるべく万遍なく分散させることができる。
【0051】
タイムチャートのタイミングT
2においてロータ20の回転数が100rpmまで上昇すると、制御部30は、ロータ20の回転数を100rpmに維持し、ロータ20を前方Y1から見て右に1回転させる(ステップS6)。制御部30は、この1回転の間におけるロータ20の回転数のばらつきを回転数読取装置39によって読み取る(ステップS7)。この1回転は、タイムチャートのタイミングT
2〜T
3の期間に相当する。なお、以下で「左」や「右」という場合は、前方Y1から見たときの左や右を意味する。
【0052】
100rpmという回転数は、ドラム4の回転時における遠心力によって洗濯物Lがドラム4の内周面に押し付けられる回転数である。制御部30は、ロータ20の回転数が100rpmに維持されるようにモータ6を制御するが、実際には、ドラム4内における洗濯物Lの偏りによって、ロータ20の回転数が正確に100rpmに維持されることはなく、ばらつく。
【0053】
詳しくは、ドラム4において洗濯物Lが偏って集まることで重くなった部分が最下位に位置する場合に、この部分をドラム4の回転によって持ち上げようとすると、モータ6には大きなトルクが必要となる。しかし、制御部30によるモータ6の制御が直ぐに反応できないために、回転数が一瞬低くなる。逆に、ドラム4において洗濯物Lが偏ってない部分をドラム4の回転によって持ち上げようとする場合には、制御部30によるモータ6の制御の反応が迅速なため、回転数が高くなる。よって、ロータ20の回転数にばらつきが生じる。
【0054】
ばらつきが大きいほど、多くの洗濯物Lがドラム4の周方向Sにおける一部に局所的に固まって配置された状態にあって、洗濯物Lの偏りが大きいことを意味する。そのため、ステップS7でロータ20の回転数のばらつきを読み取る回転数読取装置39は、ドラム4内における洗濯物Lの偏りを検知するための構成である。
【0055】
偏りが大きい状態で脱水運転としてドラム4を高速で脱水回転させると、ドラム4が大きく揺れて洗濯機1に大きな振動を与え、騒音が発生するとともに、ドラム4を回転させるためのエネルギが振動に取られるため、ドラム4が目標の回転数まで到達できないという問題が生じ得る。
【0056】
制御部30は、ステップS7での回転数読取装置39による検知結果に基いて、1回転の間におけるロータ20の回転数のばらつきが所定以上大きいか否か、具体的には回転数の最大値Tmaxと最小値Tminとの差が3rpm以上あるか否かに応じて、ドラム4内の洗濯物Lにおいて修正が必要な大きさの偏りの有無を判定する(ステップS8)。
【0057】
制御部30は、最大値Tmaxと最小値Tminとの差が3rpm未満であれば(ステップS8でNO)、ドラム4内に修正が必要な大きさの偏りは無いと判定し、モータ6の回転数を今までの100rpmから上げて脱水運転を開始する(ステップS9)。これにより、洗濯運転がすすぎ工程から脱水工程に移る。脱水運転では、ドラム4が脱水回転されることによって、遠心力で洗濯物Lから水分が飛ばされる。
【0058】
一方、制御部30は、最大値Tmaxと最小値Tminとの差が3rpm以上であれば(ステップS8でYES)、ドラム4内に修正が必要な大きさの偏りが有ると判定し、判定回数をインクリメント(+1)する(ステップS10)。
【0059】
そして、インクリメント後の判定回数が、所定回数(ここでは7回)に達せず(ステップS11でNO)、奇数であれば(ステップS12でYES)、制御部30は、偏りを低減させるように修正するための第1の修正処理を行なう。そのため、判定回数が1回目であれば、第1の修正処理が行なわれる。
【0060】
第1の修正処理として、具体的には、制御部30は、まず、タイムチャートのタイミングT
3において、洗濯機1に設けられたブレーキ手段(図示せず)を作動させることによってモータ6のロータ20にブレーキをかけて、タイムチャートのタイミングT
4〜T
5の期間において、モータ6を停止させる(ステップS13)。ここでの停止は、ロータ20の回転を遅くするのではなく、ロータ20の回転を完全に停止させることである。これにより、ドラム4の回転に急なブレーキがかかって、その反動によりドラム4内の洗濯物Lに衝撃が与えられるので、ドラム4内で洗濯物Lを分散させて、偏りをある程度解消することができる。なお、ブレーキ手段として、たとえば、直流電圧をモータ6に印加する直流制動の構成を用いることができる。
【0061】
そして、制御部30は、タイムチャートのタイミングT
5〜T
6の期間において、モータ6のロータ20を、45rpmの回転数で左に1回転させ(ステップS14)、その後、タイムチャートのタイミングT
7〜T
8の期間において、45rpmの回転数で右に1回転させる(ステップS15)。つまり、制御部30は、ロータ20を左右へ交互に1回転させるといったタンブリング動作を行うことによって、ドラム4の内周面の洗濯物Lをほぐして、偏りを解消することができる。
【0062】
制御部30は、第1の修正処理を行なった後に、タイムチャートのタイミングT
9〜T
11の期間において、ステップS5〜S7の偏り検知を行ってから、ステップS8の偏り有無判定を行う。第1の修正処理で偏りが解消されたのであれば(ステップS8でNO)、制御部30は、脱水運転を開始する(ステップS9)。
【0063】
第1の修正処理で偏りが解消されなければ(ステップS8でYES)、制御部30は、偏り有りと再判定し、判定回数をインクリメントする(ステップS10)。ドラム4内の洗濯物Lの量が多い場合には、洗濯物Lがドラム4の内周面の全域を覆うようにドラム4に絡み付いた状態にあるので、第1の修正処理におけるタンブリング動作だけで偏りを解消することは難しい。
【0064】
そして、インクリメント後の判定回数が、所定回数に達せず(ステップS11でNO)、偶数であれば(ステップS12でNO)、制御部30は、偏りを修正するための第2の修正処理を行なう。そのため、1回目の偏り有りとの判定に対する第1の修正処理による偏りの修正が不十分であれば、制御部30は、2回目の偏り有りとの判定に応じて、第1の修正処理でなく第2の修正処理を行なう。
【0065】
第2の修正処理として、具体的には、制御部30は、まず、タイムチャートのタイミングT
12〜T
13の期間において、ステップS13と同様にモータ6をブレーキ停止させて(ステップS16)、ドラム4内の洗濯物Lの偏りをある程度修正する。そして、制御部30は、伝達機構22の外輪ギア21を2軸側に切り替える(ステップS17)。そして、制御部30は、タイムチャートのタイミングT
13〜T
15の期間において、モータ6のロータ20を、124rpmの回転数で右に2.75回転させる(ステップS18)。これにより、ロータ20に直結されたパルセータ5がロータ20と同様に124rpmの回転数で回転する一方で、ドラム4は、タイムチャートのタイミングT
13〜T
15の期間で太い破線で示すように、前述した減速比で減速された45rpmの回転数で回転する。
【0066】
このようにドラム4とパルセータ5とが互いに異なる回転数で回転することにより、ドラム4の内周面に掛かった洗濯物Lが、パルセータ5に掛かった洗濯物Lに引っ張られて移動し、ドラム4の内周面から剥がれるので、第1の修正処理よりも効果的に偏りを修正することができる。その後、制御部30は、タイムチャートのタイミングT
15〜T
16の期間において、ステップS16と同様にモータ6をブレーキ停止させて(ステップS19)、洗濯物Lの偏りを完全に解消しようとする。
【0067】
第2の修正処理が終わると、制御部30は、伝達機構22の外輪ギア21を1軸側に切り替える(ステップS20)。
【0068】
制御部30は、第2の修正処理を行なった後に、ステップS5〜S7の偏り検知を行ってから、ステップS8の偏り有無判定を行う。第2の修正処理で偏りが解消されたのであれば(ステップS8でNO)、制御部30は、脱水運転を開始する(ステップS9)。
【0069】
第2の修正処理でも偏りが解消されなければ(ステップS8でYES)、制御部30は、判定回数をインクリメントする(ステップS10)。インクリメント後の判定回数が、所定回数に達せず(ステップS11でNO)、奇数であれば(ステップS12でNO)、制御部30は、第1の修正処理を行なう。そして、インクリメント後の判定回数が所定回数に達するまでに、第1の修正処理と第2の修正処理とが交互に行われる。
【0070】
図3の場合には、第1の修正処理および第2の修正処理を1回ずつ行った後、第1の修正処理と第2の修正処理とがこの順番で交互に行うように制御されるが、第1の修正処理および第2の修正処理を1回ずつ行った後、第1の修正処理および第2の修正処理のどちらかだけを連続して行ってもよい。または、第1の修正処理および第2の修正処理を1回ずつ行った後、第1の修正処理および第2の修正処理のそれぞれを任意の順番および回数で行ってもよい。
【0071】
インクリメント後の判定回数が所定回数に達した場合には(ステップS11でYES)、第1の修正処理および第2の修正処理のいずれによっても偏りを解消することが困難であるので、制御部30は、第3の修正処理としてアンバランス修正処理を開始する(ステップS21)。
【0072】
アンバランス修正処理において、制御部30は、排水弁43を閉じた後に給水弁41を開放して所定水位までドラム4内に給水することで、ドラム4内の洗濯物Lを水に浸してほぐれやすくする。この状態で、制御部30は、ドラム4およびパルセータ5を回転させることでドラム4の内周面に張り付いた洗濯物Lを剥がして撹拌し、これによって偏りを解消する。アンバランス修正処理が完了すると、制御部30は、ステップS1以降の処理を行なう。
【0073】
以上のように、制御部30は、洗濯物Lの脱水開始(ステップS9)に先立って、ドラム4内における洗濯物Lの偏りの有無を判定する(ステップS8)。
【0074】
制御部30は、洗濯物Lの偏りが無いと判定した場合には(ステップS8でNO)、ドラム4が脱水回転するようにモータ6を制御して洗濯物Lの脱水を開始する(ステップS9)。これにより、洗濯物Lの偏りを解消するための処理が無駄に行われることなく、速やかに洗濯物Lの脱水が開始される。
【0075】
一方、制御部30は、洗濯物Lの偏りが有ると判定した場合には(ステップS8でYES)、ドラム4とパルセータ5とが互いに異なる速度で回転するようにモータ6を制御する(ステップS18)。これにより、ドラム4内で偏った洗濯物Lがドラム4およびパルセータ5から別々に衝撃を受けることでほぐれやすくなるので、ドラム4内における洗濯物Lの偏りを効果的に解消できる。
【0076】
よって、ドラム4内における洗濯物Lの偏りを効果的に解消しつつ、洗濯物Lの偏りに関連して洗濯の時間短縮を図ることができる。
【0077】
また、制御部30は、洗濯物Lの偏りが有ると判定した場合には、まず、第1の修正処理としてドラム4とパルセータ5とが等速回転するようにモータ6を制御する(ステップS14およびS15)。そのため、洗濯物Lの偏りが小さいのであれば、ドラム4とパルセータ5とを等速回転させるだけで、洗濯物Lの偏りを速やかに解消できる。
【0078】
制御部30は、第1の修正処理の後も洗濯物Lの偏りが有ると判定した場合に、第2の修正処理としてドラム4とパルセータ5とが互いに異なる速度で回転するようにモータ6を制御する(ステップS18)。つまり、第1の修正処理でも解消できないほど洗濯物Lの偏りが大きい場合には、第2の修正処理でドラム4とパルセータ5とを互いに異なる速度で回転させることによって、大きい偏りであっても解消できる。
【0079】
また、制御部30は、洗濯物Lの偏りが有ると判定した場合には(ステップS8でYES)、第2の修正処理において、ドラム4とパルセータ5とを互いに異なる速度で回転させるのに先立って、ドラム4が停止するまでドラム4の回転に急なブレーキをかける(ステップS16)。また、制御部30は、第2の修正処理では、ドラム4とパルセータ5とを互いに異なる速度で回転させた後に、ドラム4の回転にブレーキをかける(ステップS19)。ここでのブレーキにより、ドラム4内で偏った洗濯物Lがブレーキの衝撃を受けることで一層ほぐれやすくなるので、ドラム4内における洗濯物Lの偏りを一層効果的に解消できる。
【0080】
そして、制御部30は、第1の修正処理および第2の修正処理を行なったにもかかわらず、洗濯物Lの偏りが有ると繰り返し判定した回数が所定回数に達した場合には(ステップS11でYES)、ドラム4内に給水し、ドラム4が回転するようにモータ6を制御することで、最終手段のアンバランス修正処理を行なう(ステップS21)。このようにすれば、アンバランス修正処理を行なう前の早い段階で、ほとんどの偏りを第1の修正処理や第2の修正処理によって解消することができる。
【0081】
また、無用なアンバランス修正処理を回避することで、アンバランス修正処理に要する水の消費量を抑えるとともに、時間短縮を図ることができる。一方、洗濯物Lの偏りが有るとの判定が所定回数繰り返されるほど洗濯物Lの偏りが大きい場合には、アンバランス修正処理によって、洗濯物Lを効果的にほぐし、洗濯物Lの偏りを確実に解消できる。
【0082】
なお、アンバランス修正処理を行なうか否かを判断する際の基準となるステップS11での所定回数は、この実施形態では7回であるが、任意に設定可能である。たとえば、この所定回数を2回として、第1の修正処理および第2の修正処理を順に1回ずつ行って、それでも偏りの修正が十分でない場合に、アンバランス修正処理を行なうようにしてもよい。
【0083】
次に、
図5以降の各図を参照して、すすぎ工程の終盤と脱水工程の序盤とに亘る洗濯運転の流れの変形例について説明する。なお、
図5以降の各図では、
図3の処理ステップと同じ処理ステップには、
図3と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。
【0084】
ステップS16からS19の第2の修正処理では、前述したステップS18でモータ6を124rpmの回転数で右に2.75回転させるのに代えて、
図5に示すように、ステップS18’として、モータ6を同じ回転数で左に2.75回転させてもよい。
【0085】
また、第2の修正処理では、
図6に示すように、ステップS17の処理の後に、制御部30が、前回の第2の修正処理でモータ6が左回転されたかどうかを確認してもよい(ステップS22)。この場合、前回はモータ6が左回転されたのであれば(ステップS22でYES)、制御部30は、モータ6を124rpmの回転数で右に2.75回転させ(ステップS18)、前回はモータ6が右回転されたのであれば(ステップS22でNO)、制御部30は、モータ6を124rpmの回転数で左に2.75回転させる(ステップS18’)。これにより、前回の第2の修正処理と今回の第2の修正処理とで、モータ6を左右に交互に回転させることができ、洗濯物Lをより効果的にほぐせる。
【0086】
図7に示す変形例の場合、第2の修正処理では、制御部30は、
図3の場合と同様に、ステップS1〜S4の後に、ステップS5〜S7の偏り検知を行ってから、ステップS8の偏り有無判定を行う。制御部30は、偏り無しと判定すれば(ステップS8でNO)、脱水運転を開始し(ステップS9)、偏り有りと判定すれば(ステップS8でYES)、判定回数をインクリメントする(ステップS10)。
【0087】
ただし、
図7の変形例では、インクリメント後の判定回数が所定回数に達しない場合(ステップS11でNO)、制御部30は、ステップS12(
図3参照)の判断を行うことなく、ステップS13〜S15の第1の修正処理を行い、その後、ステップS16〜S19の第2の修正処理を引き続き行う。その後、制御部30は、伝達機構22の外輪ギア21を1軸側に切り替えてから(ステップS20)、ステップS5に戻る。この場合、偏りが有れば、第1の修正処理および第2の修正処理を連続して行うことによって、偏りを速やかかつ効果的に解消できる。また、さらなる時間短縮を図ることができる。
【0088】
図8に示す変形例の場合、制御部30は、
図3の場合と同様に、ステップS5〜S7の偏り検知を行ってから、ステップS8の偏り有無判定を行い、偏り無しと判定すれば(ステップS8でNO)、脱水運転を開始し(ステップS9)、偏り有りと判定すれば(ステップS8でYES)、判定回数をインクリメントする(ステップS10)。
【0089】
ただし、
図8の変形例では、インクリメント後の判定回数が所定回数に達しない場合(ステップS11でNO)、制御部30は、先にステップS16〜S19の第2の修正処理を行い、その後、伝達機構22の外輪ギア21を1軸側に切り替えてから(ステップS20)、ステップS14〜S15の第1の修正処理を行う。この場合、第1の修正処理で解消できない大きさの偏りを、第1の修正処理および第2の修正処理を順に経ることなく、最初から第2の修正処理によって速やかに解消できるので、さらなる時間短縮を図ることができる。なお、
図7および
図8のいずれの変形例においても、第2の修正処理として、
図5や
図6で説明した処理を行なってもよい。
【0090】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0091】
たとえば、以上の説明では、すすぎ工程の終盤と脱水工程の序盤とに亘る運転の流れについて説明したが、脱水工程とは別に、すすぎ工程の終盤に脱水運転が行われる場合には、すすぎ工程の終盤の脱水運転においても、以上で説明した
図3や
図5〜
図8の処理が行われてもよい。
【0092】
また、偏り検知の一環としてステップS6においてモータ6のロータ20を回転させる際の100rpmという回転数は、あくまで一例であり、ドラム4の回転時における遠心力によって洗濯物Lがドラム4の内周面に押し付けられるのであれば、200rpmや400rpmというようにさらに高い回転数であってもよい。また、ステップS14やS15での45rpmという回転数も、あくまで一例であるので、必要に応じで任意に変更できる。
【0093】
また、以上の実施形態では、ドラム4とパルセータ5とを等速回転させたり、互いに異なる速度で相対回転させたりするために、伝達機構22およびギア切替装置7を用いた。伝達機構22およびギア切替装置7の代わりに、モータ6を、ドラム4用とパルセータ5用とで別々に設けて、ドラム4およびパルセータ5をそれぞれの専用モータで個別に回転させ、制御部30が各専用モータの回転数を制御することで、ドラム4およびパルセータ5のそれぞれの回転数を自在に調整してもよい。
【0094】
また、以上の実施形態のドラム4は、水平方向Hに対する傾斜方向Kに延びる軸線13を中心として回転可能となるように斜め配置されるが、軸線13が水平方向Hに延びることでドラム4が水平配置されてもよい。
また、洗濯機1は、洗濯物Lの乾燥機能を備えた洗濯乾燥機であってもよい。