特許第6379440号(P6379440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379440
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】車椅子収容装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/06 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61G3/06 704
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-117160(P2015-117160)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-406(P2017-406A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100184262
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 義則
(72)【発明者】
【氏名】西原 浩次
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−018689(JP,A)
【文献】 特開2002−079871(JP,A)
【文献】 特開平07−236657(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3170471(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0069675(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/006145(WO,A1)
【文献】 米国特許第5096361(US,A)
【文献】 米国特許第5242257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に装着される室内装着部と、前記室内装着部に基端側で支持された固定アームと、前記固定アームに長手方向に進退可能に支持された可動アームと、前記可動アームに設けられて車椅子を保持する車椅子保持部と、前記固定アームに対して前記可動アームを進退駆動する進退駆動部と、を備え、
前記固定アームが、先端側を前記車両の開口部へ臨ませる突出位置と、前記突出位置とは異なる収容位置と、の間で横方向に回動するように前記室内装着部に支持され、
前記可動アームが、前記固定アームの先端側へ移動して伸長することで下降するように前記固定アームに支持される、車椅子収容装置。
【請求項2】
前記室内装着部が、開口部付近のフロアに載置され前記固定アームの基端側を支持するベース部と、前記ベース部を前記車両の周辺部材に着脱可能に固定する固定部と、を備える、請求項1に記載の車椅子収容装置。
【請求項3】
前記可動アームは、進退昇降機構を介して前記固定アームに支持され、
前記進退昇降機構が、前記固定アームにスライド自在に配置されたスライドシューと、前記スライドシューと前記可動アームの基端側とを連結する回動リンクと、前記固定アームの先端側に配置されて前記可動アームを支持する回転自在なアームローラと、を備える、請求項1又は2に記載の車椅子収容装置。
【請求項4】
前記進退駆動部は、回転駆動される駆動プーリと、前記駆動プーリに巻回可能に連結された駆動ベルトと、前記スライドシューを前記固定アームの先端側へ付勢するダンパーステーと、を備え、
前記駆動ベルトが、前記固定アームの基端側及び先端側を経由して前記可動アームの先端側に係止される、請求項3に記載の車椅子収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開口部付近に設置されて車椅子を室内に収容する車椅子収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を車両の車室や荷室等の室内に収容するための装置として、折り畳んだ車椅子を載せて保持する枠体等をリンク機構を用いて収容する装置(特許文献1乃至3)、折り畳んだ車椅子をクレーン等により吊り下げて収容する装置(特許文献4及び5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−142769号公報
【特許文献2】特開2000−042035号公報
【特許文献3】特開2001−080744号公報
【特許文献4】特開平11−79668号公報
【特許文献5】特開2003−180753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至3に開示されたリンク機構を用いて収容する装置は大型であり、車椅子を収容しないときにも車室や荷室内の大きな占有スペースが必要であった。特許文献4及び5に開示された車椅子を吊り下げる装置では、吊下げ可能な高さが必要であり、収容作業中に吊り下げた車椅子が不安定になると、操作性が低下し車両に接触することも考えられる。また、特許文献1乃至5では、専用の装置を装着しなければならず、車両のボディに専用の改造が必要となり、汎用性が低かった。
【0005】
そこで、本発明は、省スペースに設置することができ、複数種類の車両に適用して汎用性が高い車椅子収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンセプトは以下の通りである。
[1]車両の室内に装着される室内装着部と、前記室内装着部に基端側で支持された固定アームと、前記固定アームに長手方向に進退可能に支持された可動アームと、前記可動アームに設けられて車椅子を保持する車椅子保持部と、前記固定アームに対して前記可動アームを進退駆動する進退駆動部と、を備え、
前記固定アームが、先端側を前記車両の開口部へ臨ませる突出位置と前記突出位置とは異なる収容位置との間で横方向に回動するように、前記室内装着部に支持され、
前記可動アームが、前記固定アームの先端側へ移動して伸長することで下降するように前記固定アームに支持される、車椅子収容装置。
[2]前記室内装着部が、開口部付近のフロアに載置され前記固定アームの基端側を支持するベース部と、前記ベース部を前記車両の周辺部材に着脱可能に固定する固定部と、を備える、前記[1]に記載の車椅子収容装置。
[3]前記可動アームは、進退昇降機構を介して前記固定アームに支持され、
前記進退昇降機構が、前記固定アームにスライド自在に配置されたスライドシューと、前記スライドシューと前記可動アームの基端側とを連結する回動リンクと、前記固定アームの先端側に配置されて前記可動アームを支持する回転自在なアームローラと、を備える、前記[1]又は[2]に記載の車椅子収容装置。
[4]前記進退駆動部は、回転駆動される駆動プーリと、前記駆動プーリに巻回可能に連結された駆動ベルトと、前記スライドシューを前記固定アームの先端側へ付勢するダンパーステーと、を備え、
前記駆動ベルトが、前記固定アームの基端側及び先端側を経由して前記可動アームの先端側に係止される、前記[3]に記載の車椅子収容装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車椅子保持部を有する可動アームが固定アームに進退可能に支持され、固定アームが室内装着部に回動可能に支持されることで、開口部へ臨ませる突出位置と収容位置との間を回動可能である。これにより、可動アームを固定アームの基端側へ移動させて収縮状態で収容位置に配置することができ、可動アームを固定アームの先端側へ移動させて伸長状態で突出位置に配置することができる。従って、車両収容装置が小さなスペースに設置されて十分な稼働範囲が確保される。
【0008】
また本発明によれば、室内装着部に支持された固定アームに、車椅子保持部を有する可動アームが支持され、室内装着部が車両の室内に装着されることで、車椅子収容装置が車両に設置される。従って、車両に車椅子収容装置のための専用の構造を種々配設する必要がない。よって、車椅子収納装置が省スペースに設置され、複数種類の車両に適用できるため、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置を装着した車両の後部開口の内側を示す概略分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の主要部を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の主要部を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置を収容位置で跳ね上げた状態を示す部分側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置を突出位置で伸長させた状態を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置により車椅子を収容する手順を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置のキャスター固定部を示す分解斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の車椅子保持部に車椅子を保持させる方法を説明する斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の車椅子保持部に車椅子を保持させた状態を示す側面図である。
図10】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の車椅子保持部に車椅子を保持させる方法であって、図8とは異なる方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。ここでは、車両の後部開口近傍に本実施形態に係る車椅子収容装置を装着した場合を例に挙げる。
【0011】
車椅子収容装置20は、図1乃至図3に示すように、車両10の後部に設けられた荷室11のフロア12における開口部13の近傍に装着されている。車椅子収容装置20は、車両10の室内に装着される室内装着部21と、室内装着部21に基端側で支持された固定アーム22と、固定アーム22に長手方向に進退可能に支持された可動アーム23と、可動アーム23に設けられて車椅子15を保持する車椅子保持部24と、固定アーム22に対して可動アーム23を進退駆動する進退駆動部25と、を備えている。図示した形態では、車椅子保持部24は車椅子15の車輪15aが載置される。
【0012】
車両10の車種は適宜選択され得る。本実施形態では完成車両を対象としており、リヤシート16のシートバック16a後方に荷室11が設けられ、車両後端に開口部13が後方に向けて開設されたワゴン車に適用する例を示す。開口部13は車椅子15が通過可能な大きさを有していればよい。車椅子収容装置20は開口部13付近のフロア12に装着される。例えば車椅子収容装置20は、フロアボード上に載置されて固定される。
【0013】
車椅子収容装置20の装着位置と開口部13との間の距離は、車椅子保持部24を開口部13の外側に下降可能な距離であればよい。車椅子収容装置20は開口部13に隣接した位置に装着される。開口部13と車椅子収容装置20が装着される位置との間にスペースが確保され、そのスペースが、荷物を収容するスペースであったり、フロアボード下に収容されたスペアタイアを取り出すためのスペースであったりしてもよい。
【0014】
車椅子収容装置20の室内装着部21は、開口部13付近のフロア12に載置されて固定アーム22の基端側を支持するベース部26と、ベース部26を車両10の周辺部材17に着脱可能に固定する固定部27と、を備える。周辺部材17は、車椅子収容装置20の有無に拘わらず、その車両10を構成して荷室11周辺に配置されている既存の部材であって、車椅子15の荷重を保持可能な強度を有する。
【0015】
上記周辺部材17として、リヤシート16にチャイルドシートを固定する際に使用されるようにリヤシート16のシートバックの背面側下部に配設されたアンカーブラケットが利用される。アンカーブラケットは、リヤシート16の後方のフロア12近傍に車幅に延びるパイプ17aを有しており、パイプ17aに固定部27が固定される。
【0016】
室内装着部21のベース部26は、フロア12に載置されるベースプレート26aと、ベースプレート26aに立設されて固定アーム22を横方向に回動可能且つ縦方向に揺動可能に支持するベース機構28と、を備える。
【0017】
ベース機構28は、ベースプレート26aに固定されるブラケット28aと、横方向に回動する横方向ヒンジ28bを介してブラケット28aに連結された連結体28cと、縦方向に揺動する縦方向ヒンジ28dを介して連結体28cに連結された支持体28eと、を備える。
【0018】
固定部27は、ベースプレート26aと跳ね上げ用ヒンジ27bを介して連結された脚ブラケット27aと、図示するようにアンカーブラケットのパイプに係合するかの如く、脚ブラケット27aとの間で周辺部材17を挟んで固定する固定具27cと、を備える。
【0019】
固定具27cは、車両内で周辺部材17に固定可能となっており、固定具27cの締結又は解除により、車椅子収容装置20全体を車両10に着脱する。脚ブラケット27aは固定具27cにより周辺部材17に固定された状態であっても、図4に示すように、跳ね上げ用ヒンジ27bによりベースプレート26aが縦方向に跳ね上げ可能となっている。
【0020】
固定アーム22は中空角柱状に形成され、上面が可動アーム23を進退可能に支持するスライド面を構成している。外周には可動アーム23を支持するスライドシュー31がスライド自在に配置され、先端部22bには、可動アーム23を下側から支持する回転自在なアームローラ32が配置されている。
【0021】
基端部22aにはストッパ33が固設され、ストッパ33とスライドシュー31との間にはダンパーステー34が配設され、スライドシュー31を先端側へ付勢している。中間位置における基端側の下面には、ベース機構28の支持体28eに支持されて固定される固定突起35が設けられ、支持体28eに固定されている。
【0022】
基端部22aには、駆動ベルト36をガイドするベルトローラ37aが設けられ、先端部22bには、駆動ベルト36をガイドするベルトローラ37b,37dが設けられ、駆動ベルト36が固定アーム22の中空部分を貫通して配置されている。
【0023】
固定アーム22は、ベース機構28の横方向ヒンジ28bにより横方向に回動可能に構成されており、先端側を車両10の開口部13へ臨ませる突出位置P1と、突出位置P1とは異なる収容位置P2と、の間で横方向に回動するようにベース部26に支持されている(図6(a)参照)。使用者は手動により横方向へ回動することができる。
【0024】
本実施形態において、固定アーム22の先端側が突出位置P1に配置した状態では、図3に示すように、固定アーム22が車両前後方向に沿って配置され、アームローラ32が開口部13よりも外側に配置される。一方、固定アーム22の先端側を収容位置P2に配置した状態では、固定アーム22は開口部13及びリヤシート16に沿って車幅方向に配置される。
【0025】
固定アーム22は、ベース部26に支持され、ベース機構28の縦方向ヒンジ28dにより縦方向に揺動可能となっている。突出位置P1で固定アーム22の先端側を下降させると、固定アーム22の先端側が車両10の開口部13の下縁に配設されたフィニッシュプレート38に当接して揺動を停止する。収容位置P2で固定アーム22の先端側を下降させると、固定アームの先端側がフロア12に当接して支持される。
【0026】
可動アーム23は、中空角柱状に形成され、固定アーム22上に長手方向に沿って載置され、その長手方向に沿って決まった軌道で進退可能に配設されている。可動アーム23の下面は転動面を構成しており、転動面が固定アーム22の先端側に取り付けたアームローラ32に支持される。可動アーム23の基端側の底面にはスライドブロック39が装着され、このスライドブロック39は固定アーム22の上面に当接してスライドする。
【0027】
可動アーム23の上面側には、車椅子保持部24の大車輪載置部24aとキャスター載置部24bが位置合わせ可能に装着される。可動アーム23の先端側には、駆動ベルト36を係止するための係止用ベルトローラ37cが設けられている。可動アーム23を固定アーム22の基端側へ移動させることで、固定アーム22と可動アーム23とを収縮させ、可動アーム23を固定アーム22の先端側へ移動させることで、固定アーム22と可動アーム23とを伸長させる。その状態では、可動アーム23及び車椅子保持部24が開口部13の外側に配置される。
【0028】
可動アーム23と固定アーム22とは進退昇降機構41を介して連結されている。進退昇降機構41は、固定アーム22にスライド自在に配置されたスライドシュー31と、スライドシュー31と可動アーム23の基端側とを連結するように固定アーム22及び可動アーム23の両側方に配置された回動リンク42と、固定アーム22の先端側に配置された回転自在なアームローラ32と、を備える。進退昇降機構41により、可動アーム23を固定アーム22の先端側へ移動させることで伸長させ、さらに固定アーム22の先端側から下方へ下降させることができる。
【0029】
進退昇降機構41を用いて可動アーム23を固定アーム22に対して進退させることで、図3及び図5に示すように、可動アーム23の配置を変化させることができる。
【0030】
進退昇降機構41をさらに具体的に説明する。スライドシュー31が固定アーム22上でスライドすると、回動リンク42を介して連結された可動アーム23がアームローラ32に支持された状態で先端側へ移動し、固定アーム22の先端から突出して伸長する。可動アーム23の固定アーム22からの突出量が増加して可動アーム23の重心がアームローラ32より外側に配置されると、可動アーム23の基端側の一部がアームローラ32に支持された状態で先端側が自重により下降する。可動アーム23はアームローラ32を支点に回動し、回動リンク42をスライドシュー31との連結位置を中心に回動させながら可動アーム23の基端側が上昇するとともに、可動アーム23の先端側が下降し、先端側に設けられた車椅子保持部24が下降する。可動アーム23及び車椅子保持部24は、車両10の開口部13の外側であって開口部13に近接する路面近傍に配置される。なお、これらの動作を逆にすることで、可動アーム23の先端側を上昇させ、固定アーム22に対して収縮させることができ、可動アーム23及び車椅子保持部24は固定アーム22上に配置され、収容位置に配置される。
【0031】
進退駆動部25は、固定アーム22に対して可動アーム23を進退駆動可能に構成されている。進退駆動部25は、図2に示すように、連結体28cに設けられた駆動プーリ43と、駆動プーリ43に巻回可能に連結された駆動ベルト36と、スライドシュー31を固定アーム22の先端側へ付勢するダンパーステー34と、を備える。
【0032】
駆動プーリ43は、正転及び逆転可能な駆動モータ44により回転する。駆動モータ44の電源はシガーソケットから供給してもよい。駆動ベルト36は、一端側が駆動プーリ43に固定されており、固定アーム22の基端側及び先端側に設けられたベルトローラ37a,37bをそれぞれ経由して案内され、可動アーム23の先端側の係止用ベルトローラ37cで折り返されて係止し、他端側が固定アーム22の先端側のベルトローラ37dに固定されている。
【0033】
進退昇降機構41を用いて可動アーム23を固定アーム22に対して進退させることで、図3及び図5に示すように、可動アーム23の配置を変化させることができる。
【0034】
進退昇降機構41による可動アーム23の進退動作についてさらに具体的に説明する。まず、ダンパーステー34よりスライドシュー31が固定アーム22の先端側へ付勢されているため、スライドシュー31と回動リンク42を介して連結された可動アーム23の基端部も固定アーム22の先端側へ付勢されている。この状態で駆動プーリ43が回転駆動されて、駆動ベルト36の一端側が駆動プーリ43に巻取り又は引き出されると、固定アーム22に対して可動アーム23が進退駆動される。可動アーム23を最も伸長させることで可動アーム23及び車椅子保持部24を最も下降させるには、駆動ベルト36を駆動プーリ43から引き出し、その引出量を最大にすればよい。一方、可動アーム23を収縮させるには、駆動ベルト36を駆動プーリ43に巻き取ればよい。
【0035】
駆動ベルト36は固定アーム22のベルトローラ37a,37bを経由して可動アーム23の先端側の係止用ベルトローラ37cに係止される。そのため、可動アーム23の先端側を引上げて車椅子保持部24を上昇させ、さらに可動アーム23を固定アーム22の後端側へ引き戻して移動させることができる。駆動ベルト36が、可動アーム23の先端側の係止用ベルトローラ37cで折り返して反転され、固定アーム22の先端側のベルトローラ37dに固定されている。それため、可動アーム23の車椅子保持部24に車椅子15が装着されていても、容易に上昇させて引戻すことができる。
【0036】
車椅子保持部24は、車椅子15の大車輪及びキャスターからなる車輪15aを載置するための車輪載置部としての大車輪載置部24aとキャスター載置部24bとを備える。大車輪載置部24aとキャスター載置部24bは可動アーム23に沿って離間して配置され、可動アーム23に沿う方向に位置合わせ可能となっている。キャスター載置部24bの上方には、キャスター固定部27が設けられている。
【0037】
キャスター載置部24bの上方には、キャスター固定部24cが装着されている。キャスター固定部24cの形状及び構造は任意であるが、本実施形態では、図7に示すように、キャスター固定部24cは、可動アーム23に沿う折畳み位置と可動アーム23から立ち上った立ち上り位置との間で回動して固定可能な支柱24dと、可動アーム23及び支柱24dと交差する方向に配置されて支柱24dの両側に延びる支持枠24eと、支持枠24eの両端側に設けられた複数の固定片24fと、を備えている。
【0038】
支柱24dは、キャスター載置部24bとともに可動アーム23に沿う方向に移動及び固定可能で、車椅子15のホイールベースに応じて位置合わせ可能となっている。支持枠24eは支柱24dに沿う方向に移動及び固定可能で、キャスター高さに応じて位置合わせ可能となっている。各固定片24fは支持枠24eに沿う方向に移動及び固定可能で、キャスター幅に応じて位置合わせ可能となっている。
【0039】
これらを適切に位置合わせしてキャスターをガタつきなく支持することで、車椅子15をより安全に安定して固定することができ、種々の形状及び大きさの車椅子15に対応させることができる。
【0040】
車椅子保持部24に車椅子15を保持させるには次のように行えばよい。図5に示すように、可動アーム23が下降した状態で車椅子保持部24を路面近傍に縦方向に配置している。図8に示すように、折り畳んだ状態の車椅子15を倒立させて大車輪15aを大車輪載置部24aに当接させるとともに、キャスターをキャスター載置部24bとキャスター固定部24cとの間で挟持させ、或いはキャスター固定部24cに係止する。これにより、図9に示すように、車椅子保持部24に車椅子15を保持させることができる。
【0041】
本発明の実施形態に係る車椅子収容装置20を用いて、車椅子を収容する手順について図6を参照して説明する。不使用時には、固定アーム22及び可動アーム23が収縮した状態で収容位置P2に開口部13に沿って配置され、さらにベース部26のベースプレート26aが跳ね上げられた状態でコンパクトに収容されている。
【0042】
先ず、図6(a)のように、車両10のバックドアを開いて開口部13を開放し、ベース部26のベースプレート26aを倒してフロア12に載置する。進退駆動部25により駆動ベルト36を巻くことで固定アーム22及び可動アーム23の先端を上昇させ、固定アーム22及び可動アーム23を収容位置P2から手動で横方向に回動させて収容位置P1の状態から突出位置P1の状態にする。
【0043】
次に、図6(b)のように、進退駆動部25により駆動ベルト36を緩めて固定アーム22から可動アーム23を突出させ、さらに下降させることで、車椅子保持部24を路面近傍に配置する。図6(c)のように、車椅子15を折り畳んだ状態で倒立させて車椅子保持部24に保持させる。このとき図2に示すようなキャスター固定部24cによりキャスターを固定して、車椅子15を持ち上げ可能に保持する。
【0044】
その後、図6(d)のように、進退駆動部25により駆動ベルト36を巻き取ることで固定アーム22及び可動アーム23を収縮させ、可動アーム23及び車椅子保持部24を上昇させて固定アーム22上に配置する。図6(e)のように、巻取りを継続して固定アーム22及び可動アーム23を完全に収縮させ、さらに固定アーム22及び可動アーム23の先端側を上昇させた状態にする。
【0045】
その後、図6(f)のように、固定アーム22及び可動アーム23を手動で横方向に回動させて収容位置P2に配置する。さらに進退駆動部25により駆動ベルト36を緩めて、固定アーム22及び可動アーム23の先端を下降させてフロア12に支持させる。
【0046】
以上のような手順で車椅子15を収容したら、リヤシート16のシートバック16aの背面に配置されている固縛ベルト(図示せず)を用いて車椅子15を固定してもよい。なお、車椅子15を車両10から取り出す際は、逆の操作をすればよい。進退駆動部25の操作はリモコン操作で行える。
【0047】
次に、本発明の実施形態に係る車椅子収容装置20の作用効果について説明する。
車椅子保持部24を有する可動アーム23が、固定アーム22に進退可能に支持され、固定アーム22が室内装着部21に回動可能に支持され、開口部13へ臨む突出位置P1と収容位置P2との間を回動可能である。よって、可動アーム23を固定アーム22の基端側へ移動させて収縮状態で収容位置P2に配置することができ、かつ、可動アーム23を固定アーム22の先端側へ移動させて伸長状態で突出位置P1に配置することができる。このようにして、車椅子収容装置20を狭いスペースに設置し、十分な稼働範囲を確保することができる。
【0048】
室内装着部21に支持された固定アーム22に、車椅子保持部24を有する可動アーム23が支持される。室内装着部21を車両10の室内に装着することで、車椅子収容装置20を車両10に設置することができる。よって、車両10に車椅子収容装置20のための専用の構造を種々配設する必要がない。
これらのことから、省スペースに設置でき、複数種類の車両10に適用し得て汎用性がある。
【0049】
室内装着部21を装着対象の車両10や位置に合わせて調整することで、車椅子収容装置20を各種の車両10に装着できる。例えば、ベース部26の下部を車両10の配置場所のフロア12に対応した形状とするとともに、固定部27を固定する周辺部材17に対応した形状とすることで、他の構成を全く同一にして各種の車両10に装着することができ、汎用性をより向上できる。また車両の種類、車椅子の種類、使用者などの各種の条件にも依存しないで、使用することができる。
【0050】
さらに車椅子収容装置20を装着するための車両に対する改造を殆ど加える必要がなく、対象車両に付加的に後付けで装着できるため、より多くの種類の車両に対して車椅子収容装置20を装着可能である。
不使用時には、折り畳んでリヤシート16のシートバック16aに固定しておくことで、荷室11を有効に活用することができる。また取外しも可能であり、普通車に戻して荷室11を一層有効に活用することができる。
【0051】
室内装着部21が、開口部13付近のフロア12に載置され固定アーム22の基端側を支持するベース部26と、ベース部26を車両10の周辺部材17に着脱可能に固定する固定部27と、を備えている形態にあっては、固定アーム22の基端側を支持するベース部26がフロア12に載置されている。そのため、車椅子15を保持した際の荷重をフロア12で支持することができ、固定部27だけで支持する必要がない。よって、固定部27を固定させる周辺部材17の選択の自由度を向上でき、汎用性を向上できる。
【0052】
可動アーム23が、進退昇降機構41を介して固定アーム22に支持されており、進退昇降機構41が、固定アーム22にスライド自在に配置されたスライドシュー31と、スライドシュー31と可動アーム23の基端側とを連結する回動リンク42と、固定アーム22の先端側に配置されて可動アーム23を支持する回転自在なアームローラ32と、を備えている形態では、次の作用効果を有する。即ち、簡素な構造で可動アーム23を固定アームから突出させ、さらにアームローラ32を支点に回動させて、車椅子保持部24を車両10の開口部13の外側における開口部13に近接する位置の路面近傍に配置することができる。よって、車椅子15を収容する際に必要な開口部13付近の領域をより小さく抑えることができ、使い勝手がよい。
【0053】
進退駆動部25が、回転駆動される駆動プーリ43と、駆動プーリ43に巻回可能に連結された駆動ベルト36と、スライドシュー31を固定アーム22の先端側へ付勢するダンパーステー34と、を備え、駆動ベルト36が固定アーム22の基端側及び先端側を経由して可動アーム23の先端側に係止されている形態では、次の作用効果を有する。即ち、軽量で簡素な構造で、固定アームに対して可動アームを進退駆動することができる。可動アーム23を伸長させて可動アーム23及び車椅子保持部24を下降させるには、駆動ベルト36を駆動プーリ43から引き出せばよい。一方、可動アーム23を収縮させるには、駆動ベルト36を駆動プーリ43に巻回させることで、固定アーム22の基端側及び先端側のベルトローラ37a,37bを経由して可動アーム23の先端側の係止用ベルトローラ37cを引き戻せばよい。
【0054】
本実施形態の車椅子収容装置20では、さらに固定アーム22を突出位置P1に配置した際、アームローラ32が開口部13より外側に配置されるので、車椅子15や車椅子保持部24を車両10に接触させることなく昇降させることができる。また可動アーム23を固定アーム22に対して大きな角度で配置できるため、開口部13の外側周囲の少ないスペースで十分に下降することができ、車椅子15の保持及び開放の操作が容易である。
【0055】
車椅子保持部24に車椅子の車輪15aを載置して車椅子15を保持するものであって、車椅子保持部24を備えた可動アーム23が固定アーム22に進退可能に支持されているので、車椅子収容装置20を小型化できるとともに十分な稼働範囲を確保できる。
車椅子保持部24を有する可動アーム23を固定アーム22の先端側へ移動させて伸長することで、車椅子保持部24を下降できるので、可動アーム23を進退駆動部25により進退駆動するだけで車椅子保持部24を容易に昇降でき、構造を簡素化し易い。
【0056】
可動アーム23及び車椅子保持部24の昇降を駆動モータ44により行うので、使用者の労力を軽減でき、迅速且つ安全に車椅子を収容し、且つ取り出すことができる。その際、同じ軌道で動作するため、使用者が車椅子を動かして軌道修正する必要がなく、車椅子15と車両10とが干渉して傷付けるようなこともない。
【0057】
本発明の実施形態は、上述した事項に限らず、例えば次のように変更してもよい。上記では、車両後部に設けられた荷室11のフロア12の後部開口近傍に車椅子収容装置を装着したが、例えば車室のフロアなどに装着してもよい。
【0058】
上記では、車椅子保持部24の大車輪載置部24a及びキャスター載置部24bに大車輪の外周囲及びキャスターの外周囲を載置したが、例えば図10に示すように、車椅子15を横向きにして、大車輪及びキャスター付近のフレームや軸受等を車椅子保持部24の大車輪載置部24a及びキャスター固定部24cに支持させてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10:車両
11:荷室
12:フロア
13:開口部
15:車椅子
15a:車輪
16:リヤシート
16a:シートバック
17:周辺部材
17a:パイプ
20:車椅子収容装置
21:室内装着部
22:固定アーム
22a:基端部
22b:先端部
23:可動アーム
24:車椅子保持部
24a:大車輪載置部
24b:キャスター載置部
24c:キャスター固定部
24d:支柱
24e:支持枠
24f:固定片
25:進退駆動部
26:ベース部
26a:ベースプレート
27:固定部
27a:脚ブラケット
27b:跳上げ用ヒンジ
27c:固定具
28:ベース機構
28a:ブラケット
28b:横方向ヒンジ
28c:連結体
28d:縦方向ヒンジ
28e:支持体
31:スライドシュー
32:アームローラ
33:ストッパ
34:ダンパーステー
35:固定突起
36:駆動ベルト
37a,37b,37c,37d:ベルトローラ
38:フィニッシュプレート
39:スライドブロック
41:進退昇降機構
42:回動リンク
43:駆動プーリ
44:駆動モータ
P1:突出位置
P2:収容位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10