(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置の一例を
図1〜
図10に従って説明する。なお図中に示す矢印Vは、鉛直方向であって装置上下方向を示し、矢印Hは水平方向であって装置幅(装置左右)方向を示し、矢印Dは水平方向であって装置奥行方向を示す。
【0011】
(全体構成)
本実施形態に係る画像形成装置10では、
図10に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)による画像形成を行う画像形成部の一例としての画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kが、画像形成装置10の筐体11内の中央側で装置幅方向に対して斜め左下方向へ向けて配列されている。なお、画像形成ユニット12の配置順は、右上から左下へ向けて、Y、M、C、Kとなっている。
【0012】
また、各画像形成ユニット12Y〜12Kは、収容される各色のトナーを除いて同様の構成となっている。したがって、以後の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を区別するときには、数字の後にY、M、C、Kの英字を付加した符号で説明するが、各色を区別する必要がない場合は、数字の後のY、M、C、Kの英字は省略する。
【0013】
各画像形成ユニット12Y〜12Kの上方には、各画像形成ユニット12Y〜12Kで形成されたトナー像(画像)を記録媒体の一例としてのシート部材Pに転写させる転写ユニット14が設けられている。転写ユニット14は、無端状の中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16の内側に配置され、各画像形成ユニット12Y〜12Kの各トナー像を中間転写ベルト16に転写させるための4つの一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kと、中間転写ベルト16上で重ねられたトナー像をシート部材Pに転写させるための二次転写ロール20とを含んで構成されている。
【0014】
中間転写ベルト16は、二次転写ロール20と対向して配置され、図示しないモータで駆動される駆動ロール26と、回転可能に支持された支持ロール22とに巻き掛けられており、駆動ロール26が、図示しないモータで駆動されて回転することにより、中間転写ベルト16が矢印A方向(図示の時計回り方向)に循環移動されるようになっている。
【0015】
各一次転写ロール18Y〜18Kは、中間転写ベルト16を挟んで、それぞれの画像形成ユニット12Y〜12Kの後述する像保持体28と対向して配置されている。そして、各一次転写ロール18Y〜18Kには、トナー極性とは逆極性(本実施形態では一例として正極性)の転写電圧が印加されるようになっている。
【0016】
また、二次転写ロール20にも、トナー極性とは逆極性の転写電圧が付与されるようになっている。なお、中間転写ベルト16の支持ロール22が設けられている位置の外周面には、図示しないクリーニング装置が設けられており、このクリーニング装置によって、中間転写ベルト16上の残留トナーや紙粉等が除去されるようになっている。
【0017】
一方、画像形成ユニット12の下方には、シート部材Pが収納された給紙部46が設けられている。また、給紙部46の左端から鉛直上方向には、シート部材Pが搬送される用紙搬送路50が設けられている。
【0018】
用紙搬送路50には、シート部材Pを給紙部46から送り出す送出ロール48と、シート部材Pを搬送する一対のロールで構成された搬送ロール52と、中間転写ベルト16上の画像の移動タイミングとシート部材Pの搬送タイミングとを合わせる一対のロールで構成された位置合わせロール54とが設けられている。
【0019】
そして、給紙部46から送出ロール48によって順次送り出されたシート部材Pは、用紙搬送路50を経由し、位置合わせロール54によって中間転写ベルト16の二次転写位置まで搬送されるようになっている。
【0020】
用紙搬送路50上における二次転写ロール20の下流側(上方)には、定着装置100が設けられている。定着装置100は、定着ベルト102と加圧ロール104(押付部材の一例)を有しており、シート部材Pを加熱・加圧してシート部材Pに転写されたトナー画像をシート部材Pに定着させるようになっている。なお、定着装置100については、詳細を後述する。
【0021】
また、用紙搬送路50上で定着装置100の下流側には、定着後のシート部材Pを筐体11の外側へ排出する一対のロールで構成された排出ロール66が設けられており、排出ロール66で排出されたシート部材Pは、筐体11の上面に形成された排出部67に排出されるようになっている。なお、筐体11内で、転写ユニット14の上方には、画像形成装置10の各部の駆動制御を行う制御部36が設けられている。
【0022】
次に、画像形成ユニット12について説明する。
【0023】
図9で示されるように、画像形成ユニット12は、矢印B方向(図示の反時計回り方向)に回転駆動される像保持体28と、像保持体28の外周面に接触して像保持体28を帯電させる帯電ロール72と、像保持体28の外周面に露光光を照射して静電潜像を形成する露光手段の一例としての露光ユニット70と、像保持体28の外周面の静電潜像をトナーで現像する現像ロール78と、転写後の像保持体28の外周面に光を照射して除電を行う除電ランプ74と、除電後の像保持体28の外周面を清掃するクリーニングブレード76とを有している。
【0024】
また、帯電ロール72、露光ユニット70、現像ロール78、除電ランプ74、クリーニングブレード76は、それぞれ像保持体28の外周面と対向して、像保持体28の回転方向上流側から下流側へ向けて、この順番で配置されている。
【0025】
さらに、帯電ロール72に対して像保持体28と反対側には、帯電ロール72の外周面に付着したトナーの外添剤などを取り除くためのクリーニングロール68が回転可能に設けられている。帯電ロール72は、図示しない通電手段に接続されており、従動回転しながら画像形成時に通電され、像保持体28の外周面を帯電させるようになっている。
【0026】
現像ロール78の下側には、図示しないトナー供給部から供給された現像剤(一例として、樹脂製のトナーと金属製のキャリアの混合物)を撹拌(混合)して現像ロール78に供給する螺旋状の2本の搬送部材38が設けられている。また、現像ロール78の外周面と対向して薄層形成ロール24が設けられている。
【0027】
薄層形成ロール24は、像保持体28よりも現像ロール78の回転方向の上流側で、現像ロール78の外周面と間隔を空けて配置されており、現像ロール78の外周面上における現像剤の通過量を規制して、現像ロール78上に予め決められた厚さの現像剤層(薄層)を形成するようになっている。
【0028】
現像ロール78は、固定されたマグネットロール(図示省略)と、マグネットロールの外側で回転可能に設けられた筒状の現像スリーブ(図示省略)とで構成されている。なお、現像ロール78と像保持体28との間には、現像時に電圧が付与されて電界が形成され、現像ロール78は、回転しながら現像剤中のトナーを像保持体28の静電潜像に向けて移動させるようになっている。
【0029】
また、画像形成ユニット12は、下ハウジング13と上ハウジング15とで構成される本体部を有している。下ハウジング13には、現像ロール78、搬送部材38、薄層形成ロール24が設けられており、上ハウジング15には、像保持体28、露光ユニット70、帯電ロール72、クリーニングロール68、クリーニングブレード76、除電ランプ74が設けられている。
【0030】
(全体構成の作用)
次に、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
【0031】
図10で示されるように、画像形成装置10の各ユニットが作動状態になると、制御部36で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、露光ユニット70に順次出力される。
【0032】
各色の色材階調データに応じて露光ユニット70が各露光光を出射し、帯電ロール72によって帯電した各像保持体28の外周面を露光する。これにより、各像保持体28の外周面に静電潜像が形成される。
【0033】
各像保持体28の外周面に形成された静電潜像は、現像ロール78によってそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像(現像剤像)として現像(顕在化)される。そして、各画像形成ユニット12Y〜12Kの像保持体28上に順次形成された各色のトナー像は、4つの一次転写ロール18Y〜18Kによって中間転写ベルト16上に順次多重転写される。
【0034】
中間転写ベルト16上に多重転写された各色のトナー像は、給紙部46から搬送されてきたシート部材P上に二次転写ロール20によって二次転写される。そして、シート部材P上の各色のトナー像が定着装置100で定着され、定着後のシート部材Pは、排出ロール66によって排出部67に排出される。
【0035】
なお、トナー像の一次転写が終了した後の像保持体28の外周面は、クリーニングブレード76によって残留トナーや紙粉等が除去される。
【0036】
(定着装置の構成)
次に、定着装置100について説明する。
【0037】
図6に示されるように、定着装置100は、シート部材Pの進入又は排出のための開口120A、120Bが形成された筐体120を備えている。筐体120の内部には、無端状の定着ベルト102(無端部材の一例)が備えられている。定着ベルト102の両端には、円筒状で回転軸を備えたキャップ部材(図示省略)が嵌合して固定されており、定着ベルト102が、回転軸を中心として、回転可能に支持されている。また、一方のキャップ部材には、定着ベルト102を回転駆動するモータ(図示省略)の回転力が伝達されるギヤが形成されている。そして、モータを稼働させることで、定着ベルト102は矢印E方向へ回転するようになっている。
【0038】
また、定着ベルト102の外周面の一部と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。
【0039】
〔ボビン〕
ボビン108は、 定着ベルト102の回転軸方向(本実施形態では、装置奥行方向と同一方向)から見て、定着ベルト102の外周面に倣った円弧状とされている。さらに、ボビン108において、定着ベルト102とは反対側の面の周方向の中央側に凸部108Aが形成されている。なお、ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。
【0040】
ボビン108には、通電によって磁界Hを発生する励磁コイル110(磁界発生部材の一例)が、凸部108Aを中心として複数回巻き回されている。励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って円弧状に形成された磁性体コア112が配置され、磁性体コア112はボビン108又は励磁コイル110に支持されている。
【0041】
〔定着ベルト〕
図8に示されるように、定着ベルト102は、内側から外側に向けて配置される基層124、発熱層126、弾性層128、及び離型層130を含んで構成されており、これらが積層され一体となっている。また、定着ベルト102は、一例として、直径が30mm、幅方向長さが370mmとなっている。
【0042】
基層124は、発熱層126を支持する強度を有し、耐熱性があり、磁界(磁束)を貫通しつつ、磁界の作用により発熱しないか、又は発熱しにくい材料を適宜選ぶことができる。本実施形態では、基層124として、厚さ35μmの非磁性ステンレスが用いられている。
【0043】
発熱層126は、電磁誘導により発熱する金属材料で構成される。また、発熱層126は、磁界Hの磁束を貫通させるために、磁界Hが侵入可能な厚さである表皮深さよりも薄く構成されている。本実施形態では、発熱層126として、厚さ10μmの銅が用いられている。
【0044】
弾性層128は、弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられる。本実施形態では、弾性層128として、厚さ200μmのシリコンゴムが用いられている。
【0045】
離型層130は、シート部材Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。本実施形態では、離型層130として、厚さ30μmの四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)が用いられている。
【0046】
さらに、
図6に示されるように、定着ベルト102に対して内側で、励磁コイル110と径方向で対向しない領域で、かつ、シート部材Pの排出側の領域(図中上側の領域)に、定着ベルト102の内周面の温度を検知する温度検知センサ134が配置されている。
【0047】
また、定着ベルト102に対して内側には、ボビン108と定着ベルト102を挟んで対向すると共に、円弧板状とされ、定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルト102を支持する接触部材152(移動部材の一例)が備えられている。
【0048】
〔接触部材〕
接触部材152は、層状に配置される感温磁性部材である感温磁性板114と、感温磁性板114に対して内側に層状に配置される基板154とを有している。感温磁性板114は、装置幅方向において、定着ベルト102を挟んで励磁コイル110と対向して配置されている。
【0049】
図7(A)に示されるように、感温磁性板114は、後述する感温特性を有する。定着ベルト102の定着(加熱)設定温度以上で、定着ベルト102の耐熱温度以下の温度領域にある透磁率変化開始温度から、透磁率が連続的に低下し始める感温特性を有する材料で構成されている。本実施形態では、感温磁性板114として、厚さ300μmの鉄‐ニッケル合金(Fe−Ni)が用いられている。
【0050】
なお、
図7(B)に示されるように、透磁率変化開始温度とは、透磁率(JIS C2531で測定)が連続的に低下し始める温度であり、磁界の磁束の貫通量が変化し始める点をいう。
【0051】
基板154は、感温磁性板114で生じた熱を保持すると共に、保持した熱を装置奥行方向に伝達するようになっている。これにより、感温磁性板114の装置奥行方向の温度分布が均一化し、局部的な昇温が抑制されるようになっている。また、感温磁性板114の温度が上昇して透磁率変化開始温度以上で透磁率が低下した場合には、定着ベルト102を貫通する磁束が減少し定着ベルト102の発熱量が抑制されるようになっている。本実施形態では、基板154として、厚さ400μmのアルミニウムが用いられている。
【0052】
また、
図6に示されるように、接触部材152に対して下側には、接触部材152(感温磁性板114)の温度を検知する温度検知センサ135が配置されている。
【0053】
一方、接触部材152に対して内側には、アルミニウム板を折り曲げて形成された基礎部材118が備えられている。
【0054】
〔基礎部材〕
基礎部材118は、装置奥行方向に延び、前述した表皮深さ以上の厚さを有しており、磁界Hの磁束が貫通しないようになっている。そして、基礎部材118の上端が、接触部材152の上端を支持し、基礎部材118の下端が、接触部材152の下端を支持するようになっている。また、基礎部材118において上端と下端との間の部分には、後述するロッド184(
図3参照)が挿入される貫通孔118Aが形成されている。
【0055】
さらに、基礎部材118が装置幅方向に移動するように、基礎部材118を支持するフレーム158が備えられている。
【0056】
〔フレーム〕
フレーム158は、
図1に示されるように、基礎部材118を挟んで接触部材152に対して反対側に配置されている。さらに、フレーム158は、装置奥行方向に延びる本体部材160と、基礎部材118の上側を支持する上側支持部材162(第一付勢部材の一例)と、基礎部材118の下側を支持する下側支持部材164と、を含んで構成されている。
【0057】
本体部材160は、金属材料(例えば、鉄鋼材)を用いて装置奥行方向に延びるように形成されている。また、本体部材160は、装置奥行方向から見て外形五角形とされ、内部に空間160Aが形成されている。そして、本体部材160の装置奥行方向の両端は、筐体120に固定されている。
【0058】
また、本体部材160の上面160Bに、上側支持部材162が取り付けられ、本体部材160の下面160Cに、下側支持部材164が取り付けられている。
【0059】
下側支持部材164は、円柱状の棒材を折り曲げることでL字状に形成され、装置奥行方向に間隔を空けて6個配置されている。下側支持部材164において、基礎部材118に向けて装置幅方向に延びる延設部164Bには、径寸法が広げられた拡径部164Aが形成されている。また、延設部164Bの先端側は、基礎部材118の下側に形成された図示せぬ貫通孔を貫通している。そして、基礎部材118の下側は、延設部164Bに案内されて装置幅方向に移動するようになっている。
【0060】
さらに、拡径部164Aと基礎部材118との間には、基礎部材118を介して接触部材152の下側(他側の一例)を定着ベルト102の内周面に向けて付勢するコイルバネ170(第二付勢部材の一例)が配置されている。
【0061】
上側支持部材162は、装置奥行方向に間隔を空けて6個配置されている。そして、上側支持部材162は、
図2(A)に示されるように、板部材を折り曲げることで形成された板ばねであり、上面160Bに取り付けられる取付部162Aと、取付部162Aの一端から上方に向けて立ち上がる立上部162Bとを有している。さらに、上側支持部材162は、立上部162Bの上端から基礎部材118側に向けて装置幅方向に延びる延設部162Cを有している。そして、この延設部162Cの先端側は、基礎部材118の上側に形成された図示せぬ貫通孔を貫通し、基礎部材118に固定されている。
【0062】
この上側支持部材162に荷重が作用していない状態(自由状態)では、
図2(A)の二点鎖線に示すように、立上部162Bが基礎部材118側に傾斜している。接触部材152と定着ベルト102の内周面とが接触している状態では、
図2(A)の実線で示すように、立上部162Bが上方に向けて立ち上がっている。この構成により、上側支持部材162は基礎部材118を介して接触部材152の上側(一側の一例)を定着ベルト102の内周面に向けて付勢するようになっている。
【0063】
このように、接触部材152を定着ベルト102の内周面に向けて付勢する付勢機構150は、上側支持部材162及びコイルバネ170を含んで構成されている。
【0064】
一方、
図1に示されるように、本体部材160の内部に形成された空間160Aには、基礎部材118を本体部材160側に引き込み、接触部材152と定着ベルト102の内周面とを離間させる引込機構180(対抗部材の一例)が備えられている。
【0065】
〔引込機構〕
引込機構180は、
図3に示されるように、装置奥行方向を軸方向とする偏心カム182と、偏心カム182の周面に基端が接し、基礎部材118に先端が接するロッド184とを備えている。偏心カム182及びロッド184は、装置奥行方向に間隔を空けて6個配置されている。
【0066】
また、偏心カム182の軸部182Aの両端は、筐体120に図示せぬ軸受を介して回転可能に支持され、この軸部182Aには、図示せぬ駆動部材(例えば、ステッピングモータ)から回転力が伝達されるようになっている。
【0067】
ロッド184は、本体部材160に形成された貫通孔160D及び前述した貫通孔118Aを貫通している。そして、ロッド184の先端が基端に対して下方に位置するように、ロッド184は、装置幅方向に対して傾斜している。さらに、ロッド184の基端には、径寸法が広げられた拡径部184Aが形成され、ロッド184の先端には、径寸法が広げられた拡径部184Bが形成されている。
【0068】
また、拡径部184Aと貫通孔160Dの周縁との間には、コイルバネ186が配置されている。このコイルバネ186は、拡径部184Aを偏心カム182の外周面に押し付けるように、ロッド184を偏心カム182側に向けて付勢している。そして、このコイルバネ186の付勢力は、全ての状態で、全てのコイルバネ170の付勢力と全ての上側支持部材162の付勢力とを合計した付勢力に対して強くされている。
【0069】
この構成により、偏心カム182を回転させることで、ロッド184をロッド184の長手方向に移動させ、コイルバネ170及び上側支持部材162を伸縮(変形)させることで、基礎部材118が装置幅方向に移動するようになっている。また、この基礎部材118の移動によって、接触部材152が定着ベルト102の内周面と接触する接触位置(
図1参照)と、接触部材152が定着ベルト102の内周面と離間する離間位置(
図4参照)と、に移動するようになっている。
【0070】
また、本体部材160において基礎部材118が配置される側と反対側には、
図6に示されるように、加圧ロール104との間で定着ベルト102を挟む押圧パット132が固定されている。本実施形態では、押圧パット132を構成する材料として、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)が用いられている。 〔加圧ロール〕
加圧ロール104は、アルミニウム等の金属からなる芯金104Aと、この芯金104Aに被覆される厚さ5mmの発泡シリコンゴムのスポンジ弾性層104Bと、備えている。さらに、加圧ロール104は、このスポンジ弾性層104Bに対して外側に、厚さ50μmのカーボン入りの四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)からなる離型層(図示省略)を備えている(
図6参照)。
【0071】
加圧ロール104の芯金104Aは、図示せぬリトラクト機構によって移動し、装置幅方向に移動するようになっている。そして、このリトラクト機構によって、加圧ロール104は、定着ベルト102と接して定着ベルト102を加圧する加圧位置(
図5、
図6参照)と、定着ベルト102と離間する非加圧位置(
図4参照)とに移動するようになっている。
【0072】
さらに、加圧ロール104の芯金104Aには、図示せぬモータからの回転力が伝達され、加圧ロール104は、
図6に示す矢印F方向(矢印E方向と反対方向)に回転するようになっている。
【0073】
(定着装置の作用)
次に、定着装置100の作用について説明する。
【0074】
定着装置100の非稼働状態では、
図4に示されるように、加圧ロール104は、定着ベルト102と離間する非加圧位置に移動しており、接触部材152は、定着ベルト102の内周面と離間する離間位置に移動している。
【0075】
画像形成装置10が稼働してトナー画像が転写されたシート部材Pが定着装置100へ向けて搬送されると、定着装置100では、先ず定着ベルト102が、図示せぬモータからの回転力を受けて矢印E方向に回転する。
【0076】
さらに、励磁コイル110に交流電流が供給され、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層126(
図8参照)を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層126に渦電流が発生する。これにより、発熱層126が発熱し、定着ベルト102が加熱される。ここで、接触部材152が離間位置に移動しているため、接触部材152が接触位置に移動している場合に比して、定着ベルト102は短時間で発熱する(昇温する)。
【0077】
このとき、磁界Hが感温磁性板114まで侵入しているため、感温磁性板114が発熱する。
【0078】
さらに、昇温された定着ベルト102の温度が、温度検知センサ134によって検知され、定着設定温度(本実施形態では、170〔℃〕)に達した場合に、励磁コイル110への交流電流の供給が停止される。
【0079】
また、定着ベルト102が定着設定温度に達した後、加圧ロール104は、図示せぬモータからの回転力を受けて矢印F方向に回転する。さらに、リトラクト機構が作動し、加圧ロール104が、
図5に示されるように、非加圧位置から加圧位置に移動する。加圧ロール104が、加圧位置に移動すると、定着ベルト102へ伝達されている回転力が解除され、定着ベルト102は、回転する加圧ロール104に従動して回転する。
【0080】
この状態で、定着装置100に向けて搬送られたシート部材Pは、定着設定温度(170℃)となっている定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像がシート部材Pの表面に定着する。そして、トナー画像が定着したシート部材Pは、排出ロール66によって排出部67に排出される(
図10参照)。
【0081】
なお、定着ベルト102の温度は、シート部材Pと接することで低下する。温度が低下した定着ベルト102の温度は、温度検知センサ134によって検知され、定着ベルト102の温度が定着設定温度に達していない場合は、再度、励磁コイル110に交流電流が供給され、定着ベルト102は短時間で加熱される(昇温する)。このように、励磁コイル110への交流電流の供給と供給停止を繰り返すことで、定着ベルト102の温度が定着設定温度に維持される。
【0082】
一方、離間位置に移動している接触部材152の感温磁性板114は、励磁コイル110によって生じる磁界Hによって発熱する。そして、この感温磁性板114の温度が、温度検知センサ135によって検知される。
【0083】
感温磁性板114の温度が定着設定温度に達した後、図示せぬ駆動部材からの回転力を受けて偏心カム182が回転し(対抗力を解除し)、接触部材152が、
図6に示されるように、上側支持部材162、コイルバネ170の付勢力により、離間位置から接触位置に移動する。これにより、接触部材152と定着ベルト102の内周面とが接触するため、接触部材152が離間位置に移動している場合と比して、定着ベルト102の温度低下が抑制される。
【0084】
ここで、
図1に示されるように、接触部材152が接触位置に移動した状態で、コイルバネ170は、基礎部材118を介して接触部材152の下側を定着ベルト102の内周面に向けて付勢している。さらに、板ばねである上側支持部材162は、基礎部材118を介して接触部材152の上側を定着ベルト102の内周面に向けて付勢している。
【0085】
一方、接触部材152が離間位置に移動した状態で、コイルバネ170については、圧縮され、上側支持部材162については、
図2(B)に示されるように、接触部材152の上側が定着ベルト102の内周面から離れるように、立上部162Bが傾斜する。
【0086】
コイルバネ170を配置する位置については、接触部材152が接触位置から離間位置に移動した際のコイルバネ170の圧縮代、及び圧縮された状態のコイルバネ170の装置幅方向の寸法を考慮して、決めなければならない。
【0087】
これに対して、板ばねである上側支持部材162を配置する位置については、立上部162Bが傾斜する構成となっているため、162Bの先端(
図2(A)(B)のG部)の移動量(
図2(B)の寸法J)を考慮して、決めなければならない。そして、寸法Jと、コイルバネ170の圧縮代とは同等の長さであり、上側支持部材162を配置する位置については、圧縮された状態のコイルバネ170の寸法に相当する長さを考慮しなくてもよい。
【0088】
このため、板ばねである上側支持部材162を用いることで、コイルバネ170を用いる場合と比して、電磁誘導を用いる定着装置100において、定着装置100を構成する付勢部材の専有空間が小さくなる。
【0089】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、接触部材152の下側を定着ベルト102の内周面に向けて付勢するのにコイルばね170を用いたが、板ばねを用いてもよい。
【0090】
上記実施形態では、上側支持部材162の全てを板ばねとしたが、一部を板ばねとして、他をコイルバネとしてもよい。