(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変換装置の筐体の本体部とは別に、前記電解コンデンサを収容する電解コンデンサボックスを独立して設け、前記本体部に前記電解コンデンサボックスをコネクタ又は端子接続により着脱可能とした請求項1記載の変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0014】
(1)これは、入力側から見て順に、昇圧回路と、DCバスと、インバータ回路とを備える、直流から交流への変換装置であって、出力すべき交流の電圧目標値の絶対値が、入力される直流電圧を上回るときは前記昇圧回路を昇圧動作させて前記電圧目標値の絶対値を生成するとともに前記インバータ回路は必要な極性反転のみを行う状態とし、また、前記電圧目標値の絶対値が、入力される直流電圧を下回るときは前記昇圧回路の昇圧動作を停止させるとともに前記インバータ回路を動作させて前記電圧目標値を生成する制御部と、前記DCバスに接続された平滑用の小容量コンデンサと、前記昇圧回路の入力側にあって、独立した基板に単独で設けられ、前記小容量コンデンサより大容量な電解コンデンサとを備えたものである。
【0015】
上記(1)のように構成された変換装置では、昇圧回路及びインバータ回路が交互に高周波スイッチングを行い、全体として高周波スイッチングのための変調を最小限に抑える。そのため、DCバスを一定の電圧にする必要が無い。従って、DCバスに接続するコンデンサは、高周波スイッチングを平滑化する程度の小容量コンデンサで足りる。その結果、大容量の電解コンデンサは、DCバスではなく、昇圧回路の入力側に設けることができ、しかも、独立した基板に単独で設けることができる。これにより、比較的寿命の短い電解コンデンサのみを、容易に取り替え得る構成を実現することができる。
【0016】
(2)また、(1)において、前記変換装置の筐体の一部を開いて、前記電解コンデンサを前記基板ごと着脱可能としてもよい。
この場合、着脱により、電解コンデンサのみを、基板ごと取り替えることができるので、取替作業が容易で、取替に要するコストも低減される。他の基板に実装された昇圧回路やインバータ回路は、引き続き使用することができるので、合理的である。
【0017】
(3)また、(1)において、前記変換装置の筐体の本体部とは別に、前記電解コンデンサを収容する電解コンデンサボックスを独立して設け、前記本体部に前記電解コンデンサボックスをコネクタ又は端子接続により着脱可能としてもよい。
この場合、コネクタ接続を介した着脱により、電解コンデンサボックスを取り替えることができるので、取替作業が極めて容易で、取替に要するコストも低減される。他の基板に実装された昇圧回路やインバータ回路は、引き続き使用することができるので、合理的である。また、ボックス単位で取り替えることにより、取替作業時に他の基板に例えば異物を落とすなどの可能性がほぼ無くなり、信頼性の高い取替作業を実現することができる。
【0018】
[実施形態の詳細]
以下、発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
《変換装置の構成》
図1は、直流から交流への変換装置を備えたシステムの一例を示すブロック図である。図中、変換装置1の入力端には、直流電源としての太陽光発電パネル2が接続され、出力端には、交流の商用電力系統3が接続されている。このシステムは、太陽光発電パネル2が発電する直流電力を交流電力に変換し、商用電力系統3に出力する連系運転を行う。
変換装置1は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力が与えられる昇圧回路10と、昇圧回路10からDCバスL
Bに与えられる電力を交流電力に変換して商用電力系統3に出力するインバータ回路11と、これら両回路10,11の動作を制御する制御部12とを備えている。
【0020】
図2は、変換装置1の回路図の一例である。
昇圧回路10は、DCリアクトル15と、ダイオード16と、例えばFET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子Qbとを備えており、昇圧チョッパ回路を構成している。
昇圧回路10の入力側には、第1電圧センサ17、第1電流センサ18、及び平滑化のための大容量(mFレベル)の電解コンデンサ26が設けられている。
【0021】
第1電圧センサ17は、太陽光発電パネル2が出力し、昇圧回路10に入力される直流電力の直流入力電圧検出値Vg(直流入力電圧値)を検出し、制御部12に出力する。第1電流センサ18は、DCリアクトル15に流れる電流である昇圧回路電流検出値Iin(直流入力電流値)を検出し、制御部12に出力する。なお、直流入力電流検出値Igを検出するために、電解コンデンサ26の前段に、さらに電流センサを設けてもよい。
制御部12は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pinを演算し、太陽光発電パネル2に対するMPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御を行う機能を有している。
【0022】
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbは、後述するように、インバータ回路11との間でスイッチング動作を行う期間が交互に切り替わるように制御される。よって、昇圧回路10は、スイッチング動作を行っている期間は、昇圧された電力をインバータ回路11に出力し、スイッチング動作を停止している期間は、太陽光発電パネル2が出力して昇圧回路10に入力される直流電力を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0023】
昇圧回路10と、インバータ回路11との間には、平滑用の小容量(μFレベル)のコンデンサ19(平滑コンデンサ)が接続されている。このコンデンサ19としては、例えばフィルムコンデンサを使用することができる。
インバータ回路11は、FET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子Q1〜Q4を備えている。これらスイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路を構成している。
各スイッチング素子Q1〜Q4は、制御部12に接続されており、制御部12により制御可能とされている。制御部12は、各スイッチング素子Q1〜Q4の動作をPWM制御する。これにより、インバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を交流電力に変換する。
【0024】
変換装置1は、インバータ回路11と、商用電力系統3との間にフィルタ回路21を備えている。
フィルタ回路21は、2つのACリアクトル22と、ACリアクトル22の後段に設けられたコンデンサ23(出力平滑コンデンサ)とを備えて構成されている。フィルタ回路21は、インバータ回路11から出力される交流電力に含まれる高周波成分を除去する機能を有している。フィルタ回路21により高周波成分が除去された交流電力は、商用電力系統3に与えられる。
【0025】
このように、昇圧回路10及びインバータ回路11は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を、フィルタ回路21を介して商用電力系統3へ出力する。
【0026】
また、フィルタ回路21には、インバータ回路11による出力の電流値であるインバータ電流検出値Iinv(ACリアクトル22に流れる電流)を検出するための第2電流センサ24が接続されている。さらに、フィルタ回路21と、商用電力系統3との間には、商用電力系統3側の電圧値(系統電圧検出値Va)を検出するための第2電圧センサ25が接続されている。
【0027】
第2電流センサ24及び第2電圧センサ25は、検出した系統電圧検出値Va(交流系統の電圧値)及びインバータ電流検出値Iinvを制御部12に出力する。なお、第2電流センサ24は、図のように、コンデンサ23の前段でもよいが、コンデンサ23の後段に設けてもよい。
制御部12は、これら系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvと、上述の直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iinに基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0028】
《電力変換装置における最小変調方式》
次に、
図14及び
図15は、変換装置1の動作の特徴を簡略に示す波形図である。両図は同じ内容を示しているが、
図14は特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように表示し、
図15は特に、制御のタイミングが見やすいように表示している。
図14の上段及び
図15の左欄はそれぞれ、比較のために、最小変調方式ではない従来の変換装置の動作を表す波形図である。また、
図14の下段及び
図15の右欄はそれぞれ、最小変調方式の変換装置1(
図2)の動作を示す波形図である。
【0029】
まず、
図14の上段(又は
図15の左欄)において、従来の変換装置では、直流入力すなわち直流電圧V
DCに対する昇圧回路の出力(
図2で言えば、スイッチング素子Qb及びDCリアクトル15の相互接続点に現れる電圧)は、V
DCよりも高い値の等間隔のパルス列状である。この出力は平滑化され、DCバスL
Bに、電圧V
Bとして現れる。これに対してインバータ回路は、PWM制御されたスイッチングを半周期で極性反転しながら行う。この結果、フィルタ回路による平滑を経て、交流出力としての正弦波の交流電圧V
ACが得られる。
【0030】
次に、
図14の下段の最小変調方式では、交流波形の電圧目標値V
ACの絶対値と、入力である直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、
図2の昇圧回路10とインバータ回路11とが動作する。すなわち、電圧目標値の絶対値においてV
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、昇圧回路10は停止し(図中の「ST」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、昇圧回路10が昇圧動作を行う(図中の「OP」)。昇圧回路10の出力はコンデンサ19(
図2)により平滑化され、DCバスL
Bに、図示の電圧V
Bとして現れる。
【0031】
これに対してインバータ回路11は、電圧目標値V
ACの絶対値と、直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、V
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、高周波スイッチングを行い(図中の「OP」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、高周波スイッチングを停止する(図中の「ST」)。高周波スイッチングを停止しているときのインバータ回路11は、スイッチング素子Q1,Q4がオン、Q2,Q3がオフの状態と、スイッチング素子Q1,Q4がオフ、Q2,Q3がオンの状態のいずれかを選択することにより、必要な極性反転のみを行う。インバータ回路11の出力はフィルタ回路21により平滑化され、所望の交流出力が得られる。
【0032】
ここで、
図15の右欄に示すように、昇圧回路10とインバータ回路11とは、交互に高周波スイッチングの動作をしており、昇圧回路10が昇圧の動作をしているときは、インバータ回路11は高周波スイッチングを停止し、DCバスL
Bの電圧に対して必要な極性反転のみを行っている。逆に、インバータ回路11が高周波スイッチング動作するときは、昇圧回路10は停止して、電路L
in(
図2)の電圧を素通りさせている。
【0033】
上記のような、昇圧回路10とインバータ回路11との交互の高周波スイッチング動作を行うことにより、全体としてスイッチング素子Q1〜Q4,Qbのスイッチングの回数が低減され、その分、スイッチング損失が大幅に低減される。なお、高周波スイッチングの周波数は例えば20kHzであるのに対して、インバータ回路11における極性反転のスイッチングは商用周波数の2倍の、100Hz又は120Hzである。すなわち、極性反転の周波数は高周波スイッチングの周波数に比べると非常に小さく、従って、スイッチング損失も少ない。
【0034】
また、昇圧回路10とインバータ回路11との交互の高周波スイッチング動作を行うことにより、リアクトル(DCリアクトル15、ACリアクトル22)の鉄損が小さくなる。
さらに、コンデンサ19は、スイッチングの高周波を平滑化する程度で足りるため、系統周波数の3倍の低周波交流成分の平滑作用を必要としなくなる。従って、小容量(例えば10μFや22μF)のコンデンサを使用することができる。
【0035】
《変換装置の系統連系》
以下、変換装置1による系統連系について詳細に説明する。
【0036】
〔1.1 制御部について〕
図3は、制御部12のブロック図である。制御部12は、
図3に示すように、制御処理部30と、昇圧回路制御部32と、インバータ回路制御部33と、平均化処理部34とを機能的に有している。
制御部12の各機能は、その一部又は全部がハードウェア回路によって構成されてもよいし、その一部又は全部が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータによって実行させることで実現されていてもよい。制御部12の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータの記憶装置(図示省略)に格納される。
【0037】
昇圧回路制御部32は、制御処理部30から与えられる指令値及び検出値に基づいて、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御し、前記指令値に応じた電流の電力を昇圧回路10に出力させる。
また、インバータ回路制御部33は、制御処理部30から与えられる指令値及び検出値に基づいて、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御し、前記指令値に応じた電流の電力をインバータ回路11に出力させる。
【0038】
制御処理部30には、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pin及びその平均値〈Pin〉を演算する。
制御処理部30は、入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流指令値Ig*(後に説明する)を設定して太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行うとともに、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0039】
直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinは、平均化処理部34、及び制御処理部30に与えられる。
平均化処理部34は、第1電圧センサ17及び第1電流センサ18から与えられる直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを、予め設定された所定の時間間隔ごとにサンプリングし、それぞれの平均値を求め、平均化された直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを制御処理部30に与える機能を有している。
【0040】
図4は、直流入力電圧検出値Vg、及び昇圧回路電流検出値Iinの経時変化をシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
また、直流入力電流検出値Igは、電解コンデンサ26よりも入力側で検出される電流値である。
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電流検出値Igは、系統電圧の1/2の周期で変動していることが判る。
【0041】
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、及び直流入力電流検出値Igが周期的に変動する理由は、次の通りである。すなわち、昇圧回路電流検出値Iinは、昇圧回路10、及びインバータ回路11の動作に応じて、交流周期の1/2周期でほぼ0Aからピーク値まで大きく変動する。そのため、電解コンデンサ26で変動成分を完全に取り除くことができず、直流入力電流検出値Igは、交流周期の1/2周期で変動する成分を含む脈流となる。一方、太陽光発電パネルは出力電流によって出力電圧が変化する。
このため、直流入力電圧検出値Vgに生じる周期的な変動は、変換装置1が出力する交流電力の1/2周期となっている。
平均化処理部34は、上述の周期的変動による影響を抑制するために、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを平均化する。
【0042】
図5は、平均化処理部34が行う、直流入力電圧検出値Vgを平均化する際の態様を示す図である。
平均化処理部34は、あるタイミングt1から、タイミングt2までの間の期間Lにおいて、予め設定された所定の時間間隔Δtごとに、与えられる直流入力電圧検出値Vgについて複数回サンプリング(図中、黒点のタイミング)を行い、得られた複数の直流入力電圧検出値Vgの平均値を求める。
【0043】
ここで、平均化処理部34は、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定する。また、平均化処理部34は、時間間隔Δtを、商用電力系統3の1/2周期の長さよりも十分短い期間に設定する。
これにより、平均化処理部34は、商用電力系統3の周期と同期して周期的に変動する、直流入力電圧検出値Vgの平均値を、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、精度よく求めることができる。
なお、サンプリングの時間間隔Δtは、例えば、商用電力系統3の周期の1/100〜1/1000、或いは、20マイクロ秒〜200マイクロ秒等に設定することができる。
【0044】
なお、平均化処理部34は、期間Lを予め記憶しておくこともできるし、第2電圧センサ25から系統電圧検出値Vaを取得して商用電力系統3の周期に基づいて期間Lを設定することもできる。
また、ここでは、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定したが、期間Lは、少なくとも、商用電力系統3の1/2周期に設定すれば、直流入力電圧検出値Vgの平均値を精度よく求めることができる。直流入力電圧検出値Vgは、上述のように、昇圧回路10、およびインバータ回路11の動作によって、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さで周期的に変動するからである。
よって、期間Lをより長く設定する必要がある場合、商用電力系統3の1/2周期の3倍や4倍といったように、期間Lを商用電力系統3の1/2周期の整数倍に設定すればよい。これによって、周期単位で電圧変動を把握できる。
【0045】
上述したように、昇圧回路電流検出値Iinも、直流入力電圧検出値Vgと同様、商用電力系統3の1/2周期で周期的に変動する。
よって、平均化処理部34は、
図5に示した直流入力電圧検出値Vgと同様の方法によって、昇圧回路電流検出値Iinの平均値も求める。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値をそれぞれ、期間Lごとに逐次求める。
平均化処理部34は、求めた直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値を制御処理部30に与える。
【0046】
本例では、上述のように、平均化処理部34が、直流入力電圧検出値Vgの平均値(直流入力電圧平均値〈Vg〉)及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値(昇圧回路電流平均値〈Iin〉)を求め、制御処理部30は、これら値を用いて、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御するので、太陽光発電パネル2による直流電流が変動し不安定な場合にも、制御部12は、太陽光発電パネル2からの出力を、変換装置1の動作による変動成分を取り除いた直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉として精度よく得ることができる。この結果、MPPT制御を好適に行うことができ、太陽光発電パネル2の発電効率が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0047】
また、上述したように、変換装置1の動作によって、太陽光発電パネル2が出力する直流電力の電圧(直流入力電圧検出値Vg)や電流(昇圧回路電流検出値Iin)に変動が生じる場合、その変動周期は、インバータ回路11が出力する交流電力の1/2周期(商用電力系統3の1/2周期)とほぼ一致する。
この点、本例では、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定された期間Lの間に、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinのそれぞれについて、交流系統の1/2周期よりも短い時間間隔Δtで複数回サンプリングし、その結果から直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を求めたので、直流電流の電圧及び電流が周期的に変動したとしても、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を精度よく求めることができる。
【0048】
制御処理部30は、上述の入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流指令値Ig*を設定し、この設定した直流入力電流指令値Ig*や、上記値に基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれに対する指令値を求める。
制御処理部30は、求めた指令値を昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33に与え、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0049】
図6は、制御処理部30による昇圧回路10、及びインバータ回路11のフィードバック制御を説明するための制御ブロック図である。
制御処理部30は、インバータ回路11の制御を行うための機能部として、第1演算部41、第1加算器42、補償器43、及び第2加算器44を有している。
また、制御処理部30は、昇圧回路10の制御を行うための機能部として、第2演算部51、第3加算器52、補償器53、及び第4加算器54を有している。
【0050】
図7は、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を示すフローチャートである。
図6に示す各機能部は、
図7に示すフローチャートに示す処理を実行することで、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
以下、
図7に従って、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を説明する。
【0051】
まず、制御処理部30は、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求め(ステップS9)、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、直流入力電流指令値Ig*を設定する(ステップS1)。なお、入力電力平均値〈Pin〉は、下記式(1)に基づいて求められる。
入力電力平均値〈Pin〉=〈Iin×Vg〉 ・・・(1)
【0052】
なお、式(1)中、Iinは昇圧回路電流検出値、Vgは直流入力電圧検出値(直流入力電圧値)であり、平均化処理部34によって平均化された値である直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉が用いられる。
また、式(1)以外の以下に示す制御に関する各式においては、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電圧検出値Vgは、平均化されていない瞬時値が用いられる。
また、「〈 〉」は、括弧内の値の平均値を示している。以下同じである。
【0053】
制御処理部30は、設定した直流入力電流指令値Ig*を、第1演算部41に与える。
第1演算部41には、直流入力電流指令値Ig*の他、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaも与えられる。
第1演算部41は、下記式(2)に基づいて、変換装置1としての出力電流指令値の平均値〈Ia*〉を演算する。
出力電流指令値の平均値〈Ia*〉=〈Ig*×Vg〉/〈Va〉 ・・・(2)
【0054】
さらに、第1演算部41は、下記式(3)に基づいて、出力電流指令値Ia*(出力電流目標値)を求める(ステップS2)。
ここで、第1演算部41は、出力電流指令値Ia*を系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求める。
出力電流指令値Ia*=(√2)×〈Ia*〉×sinωt ・・・(3)
【0055】
以上のように、第1演算部41は、入力電力平均値〈Pin〉(直流電力の入力電力値)及び系統電圧検出値Vaに基づいて出力電流指令値Ia*を求める。
次いで、第1演算部41は、下記式(4)に示すように、インバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流指令値Iinv*(インバータ回路の電流目標値)を演算する(ステップS3)。
インバータ電流指令値Iinv*=Ia*+s CaVa ・・・(4)
【0056】
ただし、式(4)中、Caは、コンデンサ23の静電容量、sはラプラス演算子である。
式(4)中、右辺第2項は、フィルタ回路21のコンデンサ23に流れる電流を考慮して加算した値である。
なお、出力電流指令値Ia*は、上記式(3)に示すように、系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求められる。つまり、制御処理部30は、変換装置1が出力する交流電力の電流Ia(出力電流)が系統電圧(系統電圧検出値Va)と同位相となるようにインバータ回路11を制御する。
【0057】
第1演算部41は、インバータ電流指令値Iinv*を求めると、このインバータ電流指令値Iinv*を第1加算器42に与える。
インバータ回路11は、このインバータ電流指令値Iinv*によって、フィードバック制御される。
【0058】
第1加算器42には、インバータ電流指令値Iinv*の他、現状のインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
第1加算器42は、インバータ電流指令値Iinv*と、現状のインバータ電流検出値Iinvとの差分を演算し、その演算結果を補償器43に与える。
【0059】
補償器43は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて、この差分を収束させインバータ電流検出値Iinvをインバータ電流指令値Iinv*とし得るインバータ電圧参照値Vinv#を求める。補償器43は、このインバータ電圧参照値Vinv#をインバータ回路制御部33に与えることで、インバータ回路11に、インバータ電圧参照値Vinv#に従った電圧Vinvで電力を出力させる。
インバータ回路11が出力した電力は、第2加算器44によって系統電圧検出値Vaで減算された上でACリアクトル22に与えられ、新たなインバータ電流検出値Iinvとしてフィードバックされる。そして、第1加算器42によってインバータ電流指令値Iinv*とインバータ電流検出値Iinvとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいてインバータ回路11が制御される。
【0060】
以上のようにして、インバータ回路11は、インバータ電流指令値Iinv*と、インバータ電流検出値Iinvとによって、フィードバック制御される(ステップS4)。
【0061】
一方、第2演算部51には、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaの他、第1演算部41が演算したインバータ電流指令値Iinv*が与えられる。
第2演算部51は、下記式(5)に基づいて、インバータ出力電圧指令値Vinv*(インバータ回路の電圧目標値)を演算する(ステップS5)。
インバータ出力電圧指令値Vinv*=Va+s LaIinv* ・・・(5)
【0062】
ただし、式(5)中、Laは、ACリアクトルのインダクタンス、sはラプラス演算子である。
式(5)中、右辺第2項は、ACリアクトル22の両端に発生する電圧を考慮して加算した値である。
このように、本例では、インバータ回路11が出力する交流電力の電流位相が系統電圧検出値Vaと同位相となるようにインバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流指令値Iinv*に基づいてインバータ出力電圧指令値Vinv*(電圧目標値)を設定する。
【0063】
インバータ出力電圧指令値Vinv*を求めると、下記式(6)に示すように、第2演算部51は、直流入力電圧検出値Vgと、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値とを比較して、大きい方を昇圧回路電圧目標値Vo*に決定する(ステップS6)。
昇圧回路電圧目標値Vo*=Max(Vg,Vinv*の絶対値) ・・・(6)
【0064】
さらに、第2演算部51は、下記式(7)に基づいて、昇圧回路電流指令値Iin*を演算する(ステップS7)。
昇圧回路電流指令値Iin*=
{|(Iinv*×Vinv*)|+(s C Vo*)×Vo*}/Vg ・・・(7)
【0065】
ただし、式(7)中、Cは、コンデンサ19の静電容量、sはラプラス演算子である。
式(7)中、インバータ電流指令値Iinv*と、インバータ出力電圧指令値Vinv*との積の絶対値に加算されている項は、コンデンサ19を通過する無効電力を考慮した値である。
なお、コンデンサ19の静電容量Cが十分小さい場合、下記式(8)が成立する。
昇圧回路電流指令値Iin*={|(Iinv*×Vinv*)|}/Vg・・・(8)
【0066】
第2演算部51は、昇圧回路電流指令値Iin*を求めると、この昇圧回路電流指令値Iin*を第3加算器52に与える。
昇圧回路10は、この昇圧回路電流指令値Iin*によって、フィードバック制御される。
第3加算器52には、昇圧回路電流指令値Iin*の他、現状の昇圧回路電流検出値Iinが与えられる。
第3加算器52は、昇圧回路電流指令値Iin*と、現状の昇圧回路電流検出値Iinとの差分を演算し、その演算結果を補償器53に与える。
【0067】
補償器53は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて、この差分を収束させ昇圧回路電流検出値Iinを昇圧回路電流指令値Iin*とし得る昇圧回路電圧参照値Vbc#を求める。補償器53は、この昇圧回路電圧参照値Vbc#を昇圧回路制御部32に与えることで、昇圧回路10に、昇圧回路電圧参照値Vbc#に従った電圧Voで電力を出力させる。
昇圧回路10が出力した電力は、第4加算器54によって直流入力電圧検出値Vgで減算された上でDCリアクトル15に与えられ、新たな昇圧回路電流検出値Iinとしてフィードバックされる。そして、第3加算器52によって昇圧回路電流指令値Iin*と昇圧回路電流検出値Iinとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいて昇圧回路10が制御される。
【0068】
以上のようにして、昇圧回路10は、昇圧回路電流指令値Iin*と、昇圧回路電流検出値Iinとによって、フィードバック制御される(ステップS8)。
上記ステップS8の後、制御処理部30は、上記式(1)に基づいて、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求める(ステップS9)。
【0069】
制御処理部30は、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、入力電力平均値〈Pin〉が最大値となるように(最大電力点に追従するように)、直流入力電流指令値Ig*を設定する。
【0070】
以上によって、制御処理部30は、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0071】
制御処理部30は、上述したように、インバータ回路11及び昇圧回路10を電流指令値によってフィードバック制御する。
図8(a)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電流指令値Iin*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電流検出値Iinをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフであり、(b)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電圧目標値Vo*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電圧検出値Voをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
【0072】
図8(a)に示すように、昇圧回路電流検出値Iinは、制御処理部30によって、昇圧回路電流指令値Iin*に沿って制御されていることが判る。
また、
図8(b)に示すように、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上記式(6)によって求められるため、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。
昇圧回路電圧検出値Voは、制御処理部30によって、昇圧回路電圧目標値Vo*に沿って制御されていることが判る。
【0073】
図9は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の一例を示す図である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。破線は、商用電力系統3の電圧波形を示しており、実線は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の波形を示している。
変換装置1は、
図7のフローチャートに従った制御によって、
図9に示すインバータ出力電圧指令値Vinv*を電圧目標値として電力を出力する。
よって、変換装置1は、
図9に示すインバータ出力電圧指令値Vinv*の波形に従った電圧の電力を出力する。
【0074】
図に示すように、両波は、電圧値及び周波数は互いにほぼ同じであるが、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相の方が、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相している。
【0075】
本例の制御処理部30は、上述のように、昇圧回路10及びインバータ回路11のフィードバック制御を実行する中で、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相を、商用電力系統3の電圧位相に対して約3度進相させている。
インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相を商用電力系統3の電圧位相に対して進相させる角度は、数度であればよく、後述するように、商用電力系統3の電圧波形との間で差分を求めたときに得られる電圧波形が、商用電力系統3の電圧波形に対してほぼ90度進んだ位相となる範囲で設定される。例えば、0度より大きくかつ10度より小さい値の範囲で設定される。
【0076】
上記進相させる角度は、上記式(5)に示すように、系統電圧検出値Va、ACリアクトル22のインダクタンスLa、及びインバータ電流指令値Iinv*によって定まる。この内、系統電圧検出値Va、ACリアクトル22のインダクタンスLaは、制御対象外の固定値なので、進相させる角度は、インバータ電流指令値Iinv*によって定まる。
インバータ電流指令値Iinv*は、上記式(4)に示すように、出力電流指令値Ia*によって定まる。この出力電流指令値Ia*が大きくなるほど、インバータ電流指令値Iinv*における進相した成分が増加し、インバータ出力電圧指令値Vinv*の進み角(進相させる角度)が大きくなる。
【0077】
出力電流指令値Ia*は、上記式(2)から求められるため、上記進相させる角度は、直流入力電流指令値Ig*によって調整される。
本例の制御処理部30は、上述のように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相が、商用電力系統3の電圧位相に対して約3度進相するように、直流入力電流指令値Ig*を設定している。
【0078】
〔1.2 昇圧回路及びインバータ回路の制御について〕
昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御する。また、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御する。
【0079】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、それぞれ昇圧回路用搬送波及びインバータ回路用搬送波を生成し、これら搬送波を制御処理部30から与えられる指令値である昇圧回路電圧参照値Vbc#、及びインバータ電圧参照値Vinv#で変調し、各スイッチング素子を駆動するための駆動波形を生成する。
【0080】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、上記駆動波形に基づいて各スイッチング素子を制御することで、昇圧回路電流指令値Iin*、及びインバータ電流指令値Iinv*に近似した電流波形の交流電力を昇圧回路10及びインバータ回路11に出力させる。
【0081】
図10(a)は、昇圧回路用搬送波と、昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図10(a)では、理解容易とするために、昇圧回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
昇圧回路制御部32が生成する昇圧回路用搬送波は、極小値が「0」である三角波であり、振幅A1が制御処理部30から与えられる昇圧回路電圧目標値Vo*とされている。
また、昇圧回路用搬送波の周波数は、制御処理部30による制御命令によって、所定のディーティ比となるように、昇圧回路制御部32によって設定される。
【0082】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、昇圧回路用搬送波の振幅A1も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0083】
なお、本例では、直流入力電圧検出値Vgが、250ボルトであり、商用電力系統3の電圧振幅が288ボルトであるとする。
【0084】
昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形(以下、昇圧回路用参照波Vbc#ともいう)は、制御処理部30が昇圧回路電流指令値Iin*に基づいて求める値であり、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vgよりも大きな期間W1において、正の値となっている。昇圧回路用参照波Vbc#は、期間Wでは、昇圧回路電圧目標値Vo*が成す波形状と近似するような波形となっており、昇圧回路用搬送波に対して交差している。
【0085】
昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波と昇圧回路用参照波Vbc#とを比較し、DCリアクトル15の両端電圧の目標値である昇圧回路用参照波Vbc#が昇圧回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形を生成する。
【0086】
図10(b)は、昇圧回路制御部32が生成したスイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図10(a)の横軸と一致するように示している。
この駆動波形は、スイッチング素子Qbのスイッチング動作を示しており、スイッチング素子Qbに与えることで、当該駆動波形に従ったスイッチング動作を実行させることができる。駆動波形は、電圧が0ボルトでスイッチング素子のスイッチをオフ、電圧がプラス電圧でスイッチング素子のスイッチをオンとする制御命令を構成している。
【0087】
昇圧回路制御部32は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Qbを制御する。
また、各パルス幅は、三角波である昇圧回路用搬送波の切片によって定まる。よって、電圧が高い部分ほどパルス幅が大きくなっている。
【0088】
以上のように、昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波を昇圧回路用参照波Vbc#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。昇圧回路制御部32は、生成した駆動波形に基づいて昇圧回路10のスイッチング素子QbをPWM制御する。
【0089】
ダイオード16に並列にダイオードの順方向に導通するスイッチング素子Qbu(図示せず。)を設置する場合、スイッチング素子Qbuは、スイッチング素子Qbの駆動波形と反転した駆動波形を用いる。ただし、スイッチング素子Qbとスイッチング素子Qbuが同時に導通することを防ぐため、スイッチング素子Qbuの駆動パルスがオフからオンに移行するときに1マイクロ秒程度のデッドタイムを設ける。
【0090】
図11(a)は、インバータ回路用搬送波と、インバータ電圧参照値Vinv#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図11(a)においても、理解容易とするために、インバータ回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
【0091】
インバータ回路制御部33が生成するインバータ回路用搬送波は、振幅中央が0ボルトの三角波であり、その片側振幅が、昇圧回路電圧目標値Vo*(コンデンサ23の電圧目標値)に設定されている。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2は、直流入力電圧検出値Vgの2倍(500ボルト)の期間と、商用電力系統3の電圧の2倍(最大576ボルト)の期間とを有している。
また、周波数は、制御処理部30による制御命令等によって、所定のデューティ比となるように、インバータ回路制御部33によって設定される。
【0092】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間である期間W2では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0093】
インバータ電圧参照値Vinv#の波形(以下、インバータ回路用参照波Vinv#ともいう)は、制御処理部30がインバータ電流指令値Iinv*に基づいて求める値であり、概ね商用電力系統3の電圧振幅(288ボルト)と同じに設定されている。よって、インバータ回路用参照波Vinv#は、電圧値が−Vg〜+Vgの範囲の部分で、昇圧回路用搬送波に対して交差している。
【0094】
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波とインバータ回路用参照波Vinv#とを比較し、電圧目標値であるインバータ回路用参照波Vinv#がインバータ回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Q1〜4を駆動するための駆動波形を生成する。
【0095】
図11(b)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q1を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図11(a)の横軸と一致するように示している。
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#の電圧が−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q1を制御する。
【0096】
図11(c)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q3を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。
インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q3については、図中破線で示しているインバータ回路用参照波Vinv#の反転波と、搬送波とを比較して駆動波形を生成する。
この場合も、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#(の反転波)の電圧が、−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q3を制御する。
【0097】
なお、インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q2の駆動波形については、スイッチング素子Q1の駆動波形を反転させたものを生成し、スイッチング素子Q4の駆動波形については、スイッチング素子Q3の駆動波形を反転させたものを生成する。
【0098】
以上のように、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波をインバータ回路用参照波Vinv#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。インバータ回路制御部33は、生成した駆動波形に基づいてインバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4をPWM制御する。
【0099】
本例の昇圧回路制御部32は、DCリアクトル15に流れる電流が昇圧回路電流指令値Iin*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1(
図10)で昇圧回路10にスイッチング動作を行わせる。昇圧回路10は、期間W1で直流入力電圧検出値Vg以上の電圧をインバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に近似するように電力を出力する。一方、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が概ね直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング動作を停止させる。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路10は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0100】
また、本例のインバータ回路制御部33は、ACリアクトル22に流れる電流が、インバータ電流指令値Iinv*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧指令値Vinv*が概ね−Vg〜+Vgの期間W2(
図11)でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。つまり、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以下の期間でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。
よって、インバータ回路11は、昇圧回路10がスイッチング動作を停止している間、スイッチング動作を行い、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似する交流電力を出力する。
なお、インバータ回路用参照波Vinv#と、インバータ出力電圧指令値Vinv*とは近似するので、
図11(a)においては重複している。
【0101】
一方、インバータ出力電圧指令値Vinv*の電圧が概ね−Vg〜+Vgの期間W2以外の期間では、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング動作を停止させる。この間、インバータ回路11には、昇圧回路10により昇圧された電力が与えられる。よって、スイッチング動作を停止しているインバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を降圧することなく出力する。
【0102】
つまり、本例の変換装置1は、昇圧回路10とインバータ回路11とを交互に切り替わるようにスイッチング動作させ、それぞれが出力する電力を重ね合わせることで、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を出力する。
【0103】
このように、本例では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも高い部分の電圧を出力する際には昇圧回路10を動作させ、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも低い部分の電圧を出力する際にはインバータ回路11を動作させるように制御される。よって、インバータ回路11が、昇圧回路10によって昇圧された電力を降圧することがないので、電圧を降圧する際の電位差を低く抑えることができるため、昇圧回路のスイッチングによる損失を低減し、より高効率で交流電力を出力することができる。
さらに、昇圧回路10及びインバータ回路11は、共に制御部12が設定したインバータ出力電圧指令値Vinv*(電圧目標値)に基づいて動作するため、交互に切り替わるように出力される昇圧回路の電力と、インバータ回路の電力との間で、ずれや歪が生じるのを抑制することができる。
【0104】
図12は、参照波、及びスイッチング素子の駆動波形の一例とともに、変換装置1が出力する交流電力の電流波形の一例を示した図である。
図12において、最上段から順に、インバータ回路の参照波Vinv#及び搬送波、スイッチング素子Q1の駆動波形、昇圧回路の参照波Vbc#及び搬送波、スイッチング素子Qbの駆動波形、及び変換装置1が出力する交流電力の電流波形の指令値及び実測値を示すグラフを表している。これら各グラフの横軸は、時間を示しており、互いに一致するように示している。
【0105】
図に示すように、出力電流の実測値Iaは指令値Ia*と一致するように制御されていることが判る。
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbのスイッチング動作の期間と、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作の期間とは、概ね互いに交互に切り替わるように制御されていることが判る。
【0106】
また、本例では、
図8(a)に示すように、上記式(7)に基づいて求められる昇圧回路はDCリアクトル15を流れる電流が電流指令値Iin*に一致するように制御される。この結果、昇圧回路とインバータ回路の電圧が、
図8(b)に示す波形となり、昇圧回路10、およびインバータ回路11の高周波スイッチング動作にそれぞれ停止期間があり、概ね交互にスイッチング動作を行う運転が可能になる。
【0107】
〔1.3 出力される交流電力の電流位相について〕
本例の昇圧回路10及びインバータ回路11は、制御部12による制御によって、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を、その後段に接続されたフィルタ回路21に出力する。変換装置1は、フィルタ回路21を介して商用電力系統3に交流電力を出力する。
【0108】
ここで、インバータ出力電圧指令値Vinv*は、上述したように、制御処理部30によって商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相として生成される。
従って、昇圧回路10及びインバータ回路11が出力する交流電圧も、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相とされる。
【0109】
すると、フィルタ回路21のACリアクトル22(
図2)の両端には、一方が昇圧回路10及びインバータ回路11の交流電圧、他方が商用電力系統3と、互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかることなる。
【0110】
図13(a)は、インバータ回路11から出力された交流電圧、商用電力系統3、及びACリアクトル22の両端電圧、それぞれの電圧波形を示したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。
図に示すように、ACリアクトル22の両端が互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかると、ACリアクトル22の両端電圧は、ACリアクトル22の両端にかかる互いに数度電圧位相がずれた電圧同士の差分となる。
【0111】
よって、図に示すように、ACリアクトル22の両端電圧の位相は、商用電力系統3の電圧位相に対してほぼ90度進んだ位相となる。
【0112】
図13(b)は、ACリアクトル22に流れる電流波形を示したグラフである。図中、縦軸は電流、横軸は時間を示している。横軸は、
図13(a)の横軸と一致するように示している。
ACリアクトル22の電流位相は、その電圧位相に対して90度遅延する。よって、図に示すように、ACリアクトル22を通して出力される交流電力の電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対してほぼ同期することとなる。
【0113】
従って、インバータ回路11が出力する電圧位相は、商用電力系統3に対して数度進相しているが、電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対してほぼ一致する。
よって、
図12の最下段に示すグラフのように、変換装置1が出力する電流波形は、商用電力系統3の電圧位相とほぼ一致したものとなる。
【0114】
この結果、商用電力系統3の電圧とほぼ同位相の交流電流を出力することができるので、当該交流電力の力率が低下するのを抑制することができる。
【0115】
《電解コンデンサに流れる電流》
次に、上記のように構成され、動作する変換装置1において、電解コンデンサ26に流れる電流について説明する。
図2の回路に示すように、電解コンデンサ26は、インバータ回路11から離れ、昇圧回路10の入力側に設けられている。また、DCリアクトル15の存在により、インバータ回路11や昇圧回路10から受ける高周波成分の影響は低減される。
【0116】
図16は、電解コンデンサ26に流れる電流の一例を示すグラフであり、横軸は時間[秒]、縦軸は電流[A]を表している。この波形は、
図4の昇圧回路電流検出値Iinと同様に、商用電力系統3の周波数の2倍の周波数(1/2の周期)である。但し、昇圧回路電流検出値Iinのような脈流波形ではなく、電解コンデンサ26の電荷の流入・流出が繰り返されるため、0を中心とした概ね正弦波状の波形となる。また、マイナス側の波形の底近傍に、昇圧回路10が動作するときの高周波成分が少し含まれている。実線で描いた部分も詳細には微小なリプルが含まれるが、省略している。
【0117】
比較のために、
図20に示す従来の変換装置100の場合、昇圧回路10と電解コンデンサ29との間で流れる電流は、昇圧回路10のスイッチング周期で所定の電流値と0の間で変動する。また、電解コンデンサ29とインバータ回路11との間で流れる電流は、インバータ回路11のスイッチング周期で電流の正負が反転する。このように、従来の変換装置100の場合、電解コンデンサ29周辺の配線パターンに流れる電流の変化が激しいため、配線パターンの長さに伴う寄生インダクタンスがリンギングの悪化に顕著に影響する。一方、
図2の変換装置1の場合、電解コンデンサ26と昇圧回路10のスイッチング素子Qbとの間にDCリアクトル15が存在するため、電解コンデンサ26と昇圧回路10のスイッチング素子Qbとの間では、スイッチング周期で変動する電流の高調波成分が抑制される。
図16の波形を
図21の波形と比べると、電解コンデンサ26へ流出入する電流の高周波成分が劇的に少なくなっていることがわかる。
【0118】
従って、
図2の電解コンデンサ26を、インバータ回路11や昇圧回路10からケーブル(被覆電線)を介して離隔して設けても、当該ケーブルは、ノイズ放射源として問題になるレベルではなくなる。このことが、以下のような電解コンデンサ26の単独設置を可能とする。
【0119】
《電解コンデンサ用の基板》
図17は、
図2の変換装置1の主要部を「基板」の観点からみた回路図である(但し、細部は省略している。)。図において、例えば、変換装置1における、電解コンデンサ26以外の回路は、主たる基板SB1に実装されている。一方、電解コンデンサ26は主たる基板SB1から独立した基板SB2に単独で設けられている。基板SB1から基板SB2への接続には例えばケーブル61が用いられ、基板SB2に設けられたコネクタ62を介して、電解コンデンサ26が接続されている。このような構成により、電解コンデンサ26の寿命に伴う取替作業時に、電解コンデンサ26のみを基板SB2ごと着脱することが容易になる。また、基板SB1上に実装されている回路部品には手を付ける必要はなく、引き続き使用することができる。
【0120】
《まとめ》
以上の説明を総括すると、上記の変換装置1では、昇圧回路10及びインバータ回路11が交互に高周波スイッチングを行い、全体として高周波スイッチングのための変調を最小限に抑える。そのため、DCバスL
Bを一定の電圧にする必要が無い。従って、DCバスL
Bに接続するコンデンサ19は、高周波スイッチングを平滑化する程度の小容量コンデンサで足りる。その結果、大容量の電解コンデンサ26は、DCバスL
Bではなく、昇圧回路10の入力側に設けることができ、しかも、独立した基板SB2に単独で設けることができる。これにより、比較的寿命の短い電解コンデンサ26のみを、容易に取り替え得る構成を実現することができる。
【0121】
《筐体の構造例1》
図18は、パワーコンディショナとしての変換装置1の筐体1Aを示す斜視図である。筐体1Aは、通常、直方体である。例えば、その表面側の一部に着脱可能な蓋1A1が設けられている。蓋1A1を開けると、その中に、電解コンデンサ26(図示の本数は一例である。)を実装した基板SB2が装着されている。基板SB2は、例えば所定の位置に装着することで、他の基板SB1(
図17)とコネクタ又は端子で接続されるようになっており、取り外しも容易である。
【0122】
そこで、電解コンデンサ26の取替作業時は、蓋1A1を開けて古い電解コンデンサ26を基板SB2ごと取り外し、新しい電解コンデンサ26を基板SB2と共に所定位置に装着する。この場合、着脱により、電解コンデンサ26のみを、基板SB2ごと取り替えることができるので、取替作業が容易で、取替に要するコストも低減される。また、取替作業において他の基板SB1(
図17)には干渉しなくてよいので、他の基板に例えば異物を落とすなどの可能性が少なくなり、信頼性の高い取替作業を実現することができる。しかも、他の基板SB1(
図17)に実装された昇圧回路10やインバータ回路11は、引き続き使用することができるので、合理的である。
【0123】
《筐体の構造例2》
図19は、パワーコンディショナとしての変換装置1の筐体1Aについての、他の例を示す斜視図である。図において、この筐体1Aは、電解コンデンサ26以外を収容する本体部1Bと、この本体部1Bから独立した、電解コンデンサ26を収容する電解コンデンサボックス1Cとを備えている。また、本体部1B及び電解コンデンサボックス1Cにはそれぞれ、相互に挿脱して接続/取り外しが可能なコネクタ63が設けられている。
【0124】
この場合、コネクタ接続を介した着脱により、電解コンデンサボックス1Cを取り替えることができるので、取替作業が極めて容易で、取替に要するコストも低減される。本体部1B内の他の基板SB1(
図17)に実装された昇圧回路10やインバータ回路11は、引き続き使用することができるので、合理的である。また、本体部1Bを開けることなく、電解コンデンサボックス単位で取り替えることにより、取替作業時に本体部1B内の他の基板に例えば異物を落とすなどの可能性がほぼ無くなり、信頼性の高い取替作業を実現することができる。なお、本体部1Bに装着された電解コンデンサボックス1Cは、例えば、ねじ止め等の手段により、本体部1Bに、確実に固定される。また、電解コンデンサボックス1Cをカセット状にして、本体部1Bに装着するだけで電気的に接続され、かつ、機械的に固定されるようにしてもよい。なお、コネクタ接続に代えて着脱容易な端子接続であってもよい。
【0125】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。