特許第6379627号(P6379627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379627
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】周波数カウンタ
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/10 20060101AFI20180820BHJP
   H03K 23/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G01R23/10 A
   H03K23/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-88238(P2014-88238)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-206718(P2015-206718A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸本 勇作
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080836(JP,A)
【文献】 特表2012−511280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0166131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/10
H03K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート時間内を複数の区間に分け、区間毎にカウントされる被測定信号の信号検出時刻から周波数を算出する周波数カウンタであって、
前記被測定信号の出現時に生成されるパルスをカウントするパルスカウンタと、
前記ゲート時間内を、前記区間とは別に、前記信号検出時刻を減算していき累積した減算値を得る減算区間と、前記信号検出時刻を加算していき累積した加算値を得る加算区間と、前記減算区間と前記加算区間の間にあって、前記信号検出時刻の累積を停止する無効検出区間としたときに、前記減算値と前記加算値とを累積する信号検出時刻累積レジスタと、
所定期間のパルスカウントをマスクするパルスカウントマスク生成回路と、
制御回路と、を備え
記制御回路は、
前記減算の回数と前記加算の回数が等しくなった時点で、前記パルスカウンタの値と前記信号検出時刻累積レジスタの値とを取得する処理と、
前記無効検出区間と前記減算区間との第1の境界値、および前記無効検出区間と前記加算区間との第2の境界値を互いに逆方向に同じ時間だけ順次変化させて検出区間境界を変更する処理と、
前記検出区間境界を変更する毎に、変化した減算区間と加算区間とに基づき前記周波数を算出し、前記検出区間境界を変更する毎に累積される前記パルスカウンタの値に基づき統計により周波数搖動値を算出する処理を繰り返し実行する処理と、
前記検出区間境界を変更する毎に得られる複数の周波数搖動値の中から最小搖動値を特定する処理と、
前記最小搖動値を特定したときの前記第1と第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力する処理と、を実行し、
前記周波数を算出する処理では、
変化した減算区間における累積値と変化した加算区間における累積値を加算し、最終的に得られる累積値を前記複数の区間の総数で除算し、更に、1区間での前記パルスカウンタの値で除算して移動平均を求め、求めた移動平均値の逆数をとって前記周波数を算出することを特徴とする周波数カウンタ。
【請求項2】
ゲート時間内を複数の区間に分け、区間毎にカウントされる被測定信号の信号検出時刻から周波数を算出する周波数カウンタであって、
前記被測定信号の出現時に生成されるパルスをカウントするパルスカウンタと、
前記ゲート時間内を、前記区間とは別に、前記信号検出時刻を減算していき累積した減算値を得る減算区間と、前記信号検出時刻を加算していき累積した加算値を得る加算区間と、前記減算区間と前記加算区間の間にあって、前記信号検出時刻の累積を停止する無効検出区間としたときに、前記減算値と前記加算値とを累積する信号検出時刻累積レジスタと、
所定期間のパルスカウントをマスクするパルスカウントマスク生成回路と、
操作回路と、
制御回路と、を備え
記操作回路は、
前記無効検出区間と前記減算区間との第1の境界値、および前記無効検出区間と前記加算区間との第2の境界値を互いに逆方向に同じ時間だけ、順次、変化させて検出区間境界を変更し、前記第1、第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力し、
前記制御回路は、
前記減算の回数と前記加算の回数が等しくなった時点で、前記パルスカウンタの値と前記信号検出時刻累積レジスタの値とを取得する処理と、
前記操作回路が前記検出区間境界を変更する毎に、変化した減算区間と加算区間とに基づき前記周波数を算出し、前記検出区間境界を変更する毎に累積される前記パルスカウンタの値に基づき統計により周波数搖動値を算出する処理を繰り返し実行する処理と、
前記検出区間境界を変更する毎に得られる複数の周波数搖動値の中から最小搖動値を特定する処理と、
前記最小搖動値を特定したときの前記第1と第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力する処理と、を実行し、
前記周波数を算出する処理では、変化した減算区間における累積値と変化した加算区間における累積値を加算し、最終的に得られる累積値を前記複数の区間の総数で除算し、更に、1区間での前記パルスカウンタの値で除算して移動平均を求め、求めた移動平均値の逆数をとって前記周波数を算出することを特徴とする周波数カウンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数カウンタに関する。
【背景技術】
【0002】
決められたサンプリング時間毎に被測定信号の周波数を算出するカウンタのアルゴリズムの一つとして、ゲート時間(τg)内にカウントされる被測定信号のイベント数(Ng)と、ゲート内における最初の被測定信号検出時刻(t1)と最後の検出時刻(t2)とから、周波数を検出する方法が知られている。
【0003】
図6にそのアルゴリズムが示されている。図6において、測定時間τは被測定信号検出時刻t2−t1により求まる。この値を、被測定信号のイベント数Ng−1で除算したものが被測定信号の周期Tである。時刻t1、および時刻t2は、基本クロック(mclk)のカウント数により得られるため、周期Tを時間の次元(S)に変換するために基本クロック(mc1k)を乗算する必要がある。したがって、周期T(s)=(t2−t1)*Tclk/(Ng−1)となり、被測定信号の周波数Fはこの逆数であるため、周波数F=(Ng−1)/((t2−t1)*Tclk)から求められる。
【0004】
この方式はreciprocal(逆数)型周波数カウンタと呼ばれ、よく知られたアルゴリズムである。この方式によれば、ゲート内に現れる被測定信号が通過する時間を、全サイクル数で単純に除算して計算されるため、全ての信号サイクルに対して、計算上、等しく重み付けがなされる。この重み付けを行う窓関数の形状から、Π型窓関数を用いた周波数カウンタと呼ばれる。
【0005】
一般的に被測定信号の周波数は、厳密に一定であることは少なく、周波数軸に対して広がりをもって分布している(搖動を持つ)ことが多い。換言すると、信号ゼロクロス点が理想的な時刻に対して前後に搖動している(ジッタを持っている)。周波数カウンタの役割の1つとして、被測定信号のジッタを吸収し、広がりを持つ周波数分布のなるべく中心の周波数を抽出することが挙げられる。
【0006】
この中心周波数をどれだけ精度よく抽出できるかが、周波数カウンタの最終的な性能に繋がる。被測定信号がジッタを持っている場合、当然、被測定信号の検出時間間隔は一定にはならない。ジッタの情報は、全て被測定信号の検出時間の中に含まれている。この情報を如何に活用するかが中心周波数を精度よく抽出するための鍵になる。
【0007】
ところで、従来の周波数カウンタは、図6から明らかなように、被測定信号の検出時刻としてt1とt2しか使用していない。換言すると、t1〜t2の間に含まれる被測定信号のジッタの情報を全て捨てていることになる。
【0008】
図7にゲート内における複数の信号検出時間を演算に使用した高精度周波数カウンタの一例を示す。これは、ゲート内に複数回算出される測定時間τの平均値を利用する計算方法で移動平均に相当する。ここでは、ゲート時間の半分を測定時間τとしており、ゲート内に現れる全ての信号検出時間を利用した移動平均である。τ1〜τnの統計処理により、出力周波数の分散は、被測定信号に加わる位相ノイズ(周波数ノイズ)が完全なホワイトノイズであることを前提とすれば、ゲート時間が等しければ、Π型窓関数を使用したカウンタの8/nとなる。統計処理により、周波数移動を極めて小さい値に抑えることができることが特徴である。
【0009】
実装の際は、ゲート内を前半と後半に分け、前半は信号検出時間を減算した値を信号検出時間累積用のレジスタに累積し、後半は、加算した値を累積していくことで実現する。これは、Λ型窓関数を使用した周波数カウンタとして知られており、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTION ON ULTRASONICS,AND FREQUENCY CONTROL,Vol.64,May 2007,pp.918−925「Consideration on the Measurement of the Stability of Oscillators eith Frequency Counters」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、被測定信号に重畳しているノイズの影響を極力抑制して高精度な測定を可能にする、周波数カウンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために本発明は、ゲート時間内を複数の区間に分け、区間毎にカウントされる被測定信号の信号検出時刻から周波数を算出する周波数カウンタであって、前記被測定信号の出現時に生成されるパルスをカウントするパルスカウンタと、前記ゲート時間内を、前記区間とは別に、前記信号検出時刻を減算していき累積した減算値を得る減算区間と、前記信号検出時刻を加算していき累積した加算値を得る加算区間と、前記減算区間と前記加算区間の間にあって、前記信号検出時刻の累積を停止する無効検出区間としたときに、前記減算値と前記加算値とを累積する信号検出時刻累積レジスタと、所定期間のパルスカウントをマスクするパルスカウントマスク生成回路と、制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記減算の回数と前記加算の回数が等しくなった時点で、前記パルスカウンタの値と前記信号検出時刻累積レジスタの値とを取得する処理と、前記無効検出区間と前記減算区間との第1の境界値、および前記無効検出区間と前記加算区間との第2の境界値を互いに逆方向に同じ時間だけ順次変化させて検出区間境界を変更する処理と、前記検出区間境界を変更する毎に、変化した減算区間と加算区間とに基づき前記周波数を算出し、前記検出区間境界を変更する毎に累積される前記パルスカウンタの値に基づき統計により周波数搖動値を算出する処理を繰り返し実行する処理と、前記検出区間境界を変更する毎に得られる複数の周波数搖動値の中から最小搖動値を特定する処理と、
前記最小搖動値を特定したときの前記第1と第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力する処理と、を実行し、前記周波数を算出する処理では、変化した減算区間における累積値と変化した加算区間における累積値を加算し、最終的に得られる累積値を前記複数の区間の総数で除算し、更に、1区間での前記パルスカウンタの値で除算して移動平均を求め、求めた移動平均値の逆数をとって前記周波数を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ゲート時間内を複数の区間に分け、区間毎にカウントされる被測定信号の信号検出時刻から周波数を算出する周波数カウンタであって、
前記被測定信号の出現時に生成されるパルスをカウントするパルスカウンタと、前記ゲート時間内を、前記区間とは別に、前記信号検出時刻を減算していき累積した減算値を得る減算区間と、前記信号検出時刻を加算していき累積した加算値を得る加算区間と、前記減算区間と前記加算区間の間にあって、前記信号検出時刻の累積を停止する無効検出区間としたときに、前記減算値と前記加算値とを累積する信号検出時刻累積レジスタと、所定期間のパルスカウントをマスクするパルスカウントマスク生成回路と、操作回路と、制御回路と、を備え、前記操作回路は、前記無効検出区間と前記減算区間との第1の境界値、および前記無効検出区間と前記加算区間との第2の境界値を互いに逆方向に同じ時間だけ、順次、変化させて検出区間境界を変更し、前記第1、第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力し、前記制御回路は、前記減算の回数と前記加算の回数が等しくなった時点で、前記パルスカウンタの値と前記信号検出時刻累積レジスタの値とを取得する処理と、前記操作回路が前記検出区間境界を変更する毎に、変化した減算区間と加算区間とに基づき前記周波数を算出し、前記検出区間境界を変更する毎に累積される前記パルスカウンタの値に基づき統計により周波数搖動値を算出する処理を繰り返し実行する処理と、前記検出区間境界を変更する毎に得られる複数の周波数搖動値の中から最小搖動値を特定する処理と、前記最小搖動値を特定したときの前記第1と第2の境界値を前記パルスカウントマスク生成回路へ出力する処理と、を実行し、前記周波数を算出する処理では、変化した減算区間における累積値と変化した加算区間における累積値を加算し、最終的に得られる累積値を前記複数の区間の総数で除算し、更に、1区間での前記パルスカウンタの値で除算して移動平均を求め、求めた移動平均値の逆数をとって前記周波数を算出することを特徴とする。


【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被測定信号に重畳しているノイズの影響を極力抑制して高精度な測定を可能にする、周波数カウンタを提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る周波数カウンタの周波数算出アルゴリズムを説明するために引用した図である。
図2】本発明の実施の形態に係る周波数カウンタにおいて、検出区間の境界を変更した場合の周波数カウンタが持つ周波数減衰特性を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る周波数カウンタの回路構成図である。
図4】本発明の実施の形態に係る周波数カウンタの動作タイミング図である。
図5】制御回路の制御手順を示すフローチャートである。
図6】従来例1の周波数カウンタの周波数算出アルゴリズムを説明するために引用した図である。
図7】従来例2の周波数カウンタの周波数算出アルゴリズムを説明するために引用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態の構成)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0019】
図1に、本実施形態に係る周波数カウンタの周波数算出アルゴリズムが示されている。図7に示した従来のΛ型窓関数を使用した周波数カウンタとの差異は、測定時間τをゲート時間の2/3を測定時間としていることにある。すなわち、本実施形態に係る周波数カウンタは、ゲート内に現れる信号検出時間の2/3を使用することになる。出力周波数の分散は、被測定信号に加わる位相ノイズ(周波数ノイズ)が完全なホワイトノイズであることを前提とすれば、ゲート時間が等しい場合、Λ型窓関数を使用した周波数カウンタの27/32になり、対ホワイトノイズの効果はΛ型を凌ぐ。
【0020】
実装は、ゲート内を3等分し、最初の1/3の間は信号検出時間を減算した値を信号検出時間累積レジスタに累積し、途中1/3の間は信号検出時刻累積レジスタの更新はなく、最後の1/3の間は加算した値を信号検出時刻累積レジスタに累積していくこととする。この場合の窓関数の形状は台形状になる。
【0021】
上記した従来のΛ型周波数カウンタと本実施形態に係る周波数カウンタに共通する点は、ゲート内に、信号検出時間を減算していく信号検出区間と、加算していく信号検出区間とを持つことである。平均回数分のカウンタを持たなくても移動平均の計算を簡単に行うことができるため、電力消費も低く抑えることができる。このため、プロセス制御の分野でリアルタイム応答が求められるフィールド機器等、電流制約が厳しいデバイスにも使用が可能である。
【0022】
本実施形態に係る周波数カウンタは、図1に窓関数として示すように、ゲート内に、信号検出時間を減算していく信号検出区間(第1の信号検出区間)と、加算していく信号検出区間(第2の信号検出区間)の他に、信号無検出期間(第3の信号検出区間)を有し、信号検出区間の境界を可変にすることができる。信号検出区間の境界を如何に設定するかは、以下に説明する本実施形態の周波数カウンタの特性を決める要素の1つである。なお、信号検出区間の境界を変化させることは窓関数の形状を変えることと等価である。
【0023】
図1に示すとおり、信号検出区間の境界はA(第1の境界)とB(第2の境界)の2つあるが、この2つの境界A,Bは、逆方向に同じ時間だけずらすことができる。例えば、2つの境界A,Bを近づけていけば、信号検出区間が長くなり、2つの境界A,Bが重なったとき、Λ型窓関数となる。逆に2つの境界A,Bを遠ざけていけば、信号検出区間が短くなり、最終的にはΠ型窓関数を持つ周波数カウンタになる。このように、信号検出区間の境界A,Bを動かして窓関数の形状を変えれば、本実施形態に係る周波数カウンタの周波数特性を意図的に変えることができる。
【0024】
図2に、信号検出区間の境界を変えた場合の、すなわち、窓関数の形状を変えた場合の周波数減衰特性を4例示している。図中、右側に示したグラフは、横軸に周波数を、縦軸に周波数の分散の程度を対数軸で示した。図2に示すように、窓関数の形状が変わると周波数減衰特性も変わるため、最終的な周波数出力値が変わり、周波数揺動の幅も変化する。被測定信号の周波数軸に対して広がりを持つのが一般的であるが、その特性は、周波数揺動の発生要因により様々である。例えば50[Hz]のハムノイズによる影響を受けているとすれば、50[Hz]付近にピークを持つはずであり、ホワイトノイズによる影響を受けていれば、全周波数帯にわたり均一にスペクトラムが広がるはずである。
【0025】
周波数カウンタの役割は、これらの望ましくないノイズの影響を抑制し、信号を抽出することである。つまり、カウンタ通過後の周波数揺動を抑えるために、被測定信号に重畳している位相ノイズ成分を多く除去できる窓関数を選択することが重要である。以下に、本実施形態に係る周波数カウンタの詳細な回路構成、ならびに動作について説明する。
【0026】
図3に本実施形態に係る周波数カウンタ10の回路構成が示されている。図3によれば、本実施形態に係る周波数カウンタ10は、基準クロックカウンタ11と、信号検出タイミングパルス生成回路12と、加算・減算ステータス生成回路13と、パルスカウントマスク生成回路14と、演算周期パルス生成回路15と、信号検出時刻累積レジスタ16と、パルスカウンタ17,18と、加減算回路19と、一致回路20と、ゲート回路21,22,23と、ラッチレジスタ24と、MPUインタフェース回路25とを含み構成される。
【0027】
上記構成において、被測定信号の周波数をカウントするためには、被測定信号の検出時刻を測定する必要があるため、基準クロックカウンタ11で基準クロックをカウントして演算に用いる。被測定信号検出のタイミングは、被測定信号の出現時に、信号検出タイミングパルス生成回路12により生成されるパルによって作る。信号検出タイミングパルス生成回路12により生成されたパルスは、ゲート回路21の一入力端子へ出力される。
【0028】
また、移動平均の計算を行うために、被測定信号の検出時刻をゲート時間(演算周期)内の前半は減算していき、後半は加算する必要があるため、加算・減算ステータス生成回路13で減算と加算を切り替えるステータスを生成してゲート回路22の一入力端子へ出力する。信号検出時刻累積レジスタ16は、加減算回路19で加減算された信号検出時刻の減算値と加算値とを累積する。加算回数と減算回数はそれぞれパルスカウンタ17,18によりカウントされ、一致回路20で、加算回数と減算回数が等しくなった時点で、演算を停止する。
【0029】
演算周期パルス生成回路15で後述するMPU(Micro Processor)内蔵の制御回路から出力される演算周期設定入力値により演算周期のタイミングパルスを生成し、ラッチレジスタ24が、信号検出時刻累計値とパルスカウント値からなる測定値のデータラッチタイミングとして使用する。測定値は、制御回路MPUに送信される。検出区間境界時間の変更は、制御回路MPUによる制御の下、パルスカウントマスク生成回路14が、パルスカウントを一部マスクすることによって行う。このため、パルスカウントマスク生成回路14の出力は、ゲート回路21〜23の入力端子に共通に供給される。
【0030】
なお、ゲート回路21の出力は、信号検出時刻累積レジスタ16のCE(チップ・エネーブル)端子に供給され、ゲート回路22出力は、パルスカウンタ17の入力端子へ、ゲート回路23出力は、パルスカウンタ18のカウンタ入力端子へそれぞれ供給される。
【0031】
(実施形態の動作)
図4に本実施形態に係る周波数カウンタ10の動作タイミング図が示されている。以下、図4の動作タイミング図を参照して図3に示す本実施形態に係る周波数カウンタ10の動作説明を行う。
【0032】
図4によれば、周波数カウンタ10は、基準クロックカウンタ11が、基準クロックが入力される毎に+1カウントアップして時間を計測している。信号検出時刻累積レジスタ16は、周波数算出の基になる被測定信号が入力される毎に、信号検出タイミングパルス生成回路12により生成される信号検出パルスの立ち上がりでその時間を抽出し、そのとき、加算・減算ステータス生成回路13によって生成され加減算のステータスが“LOW”であれば減算、“HIGH”であれば加算を繰り返す。
【0033】
図4のタイミング図によれば、最初に被測定信号が入力されると、信号検出タイミングパルスの立ち上がりで基準クロックカウンタ11が計測した値“2”を取り込み、そのときの加算・減算ステータスが“LOW”になっているため、加減算回路19は、“−2”の演算を行ない、信号検出時刻累積レジスタ16に出力する。次の信号検出タイミングパルスの立ち上がりで基準クロックカウンタ11が計測した値“7”を取り込み、そのときの加算・減算ステータスが“LOW”になっているため、加減算回路19は、“−2−7”の演算を行ない、信号検出時刻累積レジスタ16に出力する。
【0034】
検出無効期間を挟んで次の信号検出タイミングパルスの立ち上がりで基準クロックカウンタ11が計測した値“22”を取り込み、そのときの加算・減算ステータスが“HIGH”に切り替わっているため、加減算回路19は、“−2+7+22”の演算を行ない、信号検出時刻累積レジスタ16に出力する。更に続く信号検出タイミングパルスの立ち上がりで基準クロックカウンタ11が計測した値“27”を取り込み、そのときの加算・減算ステータスが“HIGH”になっているため、加減算回路19は、“−2−7+22+27”の演算を行ない、信号検出時刻累積レジスタ16に出力する。
【0035】
なお、パルスカウンタ17は減算回数を、パルスカウンタ18は加算回数をカウントしている。ここでは、信号検出時刻累積レジスタ16に、“−2−7+22+27”が保持されたタイミングで、一致回路20で加算回数と減算回数が等しくなったことが検出されるため、演算は停止され、以降、演算周期パルス生成回路15による演算周期パルス出力の到来を待ってラッチレジスタ24に、周波数測定データである、信号検出時刻累積レジスタ16が保持する信号検出時刻累積値と、パルスカウンタ17,18によるパルスカウント値とをラッチする。ラッチレジスタ24にラッチされた周波数測定データは、MPUインタフェース回路25経由で制御回路(MPU)に出力される。
【0036】
上記構成において、被測定信号の検出を減算と加算の境界で切れ目なく行うとΛ型周波数カウンタになるが、減算と加算の境界でマスク処理し、検出無効区間を設け、使用するパルス数をΛ型に対して少なくすることで窓関数の形状を変更することができる。演算周期と、検出区間の境界時間は、制御回路MPU、あるいは、後述するように、ダイヤル等を手動操作することにより外部から設定値を変更できるものとする。図5に、制御回路MPUの処理の流れがフローチャートで示されている。
【0037】
上記したように、周波数カウンタ10は、被測定信号の周波数測定の元になるデータを基準クロックにより求め、パルスカウンタ17,18の値と信号検出時刻累積レジスタ16の値とを周波数測定データとして制御回路MPUに送信する。制御回路(MPU)は、取得した周波数測定データを蓄積する(ステップS101)。続いて、制御回路(MPU)は、周波数測定データから被測定信号の周波数を計算する。制御回路MPUは、いくつかの演算周期に渡って周波数の計算を繰り返し、累計した統計データから周波数揺動値を算出し累積する(ステップS102)。周波数揺動値の計算は、平均値、ピーク値の算出等、あらゆる統計手法を用いて実現が可能である。
【0038】
次に、制御回路(MPU)は、信号検出区間の境界を変化(窓関数を変化)させる。これは検出無効区間を広げるか狭めることによって行う。制御回路(MPU)は、新たな窓関数にしたがい再度同じ手順で周波数の計算を行い、統計データから揺動値を算出し、繰り返し実行することにより得られる複数の周波数揺動値を内蔵のメモリに蓄える。制御回路(MPU)は、検出区間の変更が終了したら(ステップS103“YES”)、それまでに蓄えられた周波数揺動値の中から最小値を特定し(ステップS104)、そのときの検出区間境界を決定値として、周波数カウンタ10へ出力する(ステップS105)。すなわち、周波数カウンタ10のパルスカウントマスク生成回路14へ、検出期間境界時間入力として決定値を供給する。
【0039】
なお、信号検出区間の境界の変更は、検出区間時間を一定の速度で周波数を変更するときに用いるSWEEP等の操作により変動させる等、複数の窓関数から最適な窓関数を検索できる方法を用いることとする。また、圧力測定器等、物理量を周波数情報に変換するデバイスに適用する場合は、基準となる物理量を発生させながら、揺動計算を行う等の応用が可能である。
【0040】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る周波数カウンタ10によれば、被測定信号のジッタの情報を効率よく使用することで、中心周波数を精度よく抽出し、性能を向上させた周波数カウンタを提供することができる。また、被測定信号に重畳している位相ノイズ成分を多く除去できる窓関数を選択することで、被測定信号に重畳しているノイズの影響を抑え、高精度な測定を可能にする周波数カウンタを提供することができる。
【0041】
信号検出区間の境界を可変とする複区間平均型の周波数カウンタとすることで、あらゆる種類の位相ノイズに対応し、最も出力周波数の動揺を抑えることができる窓関数を選択することができる。例えば、被測定信号が100[Hz]の位相ノイズの影響を受け、周波数スペクトラムとして観測した場合に、100[Hz]にピークをもっていたとすれば、100[Hz]付近の信号が大きく減衰できるような周波数特性を持つ窓関数を選択することにより、信号を精度よく抽出することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る周波数カウンタ10によれば、信号周波数減衰特性に影響するパラメータとして、信号検出区間の境界を用いたが、他にゲート時間を用いてもよく、この場合、ゲート時間の値を可変にしてフィードバックすることで窓関数検索に用いてもよい。本実施形態に係る周波数カウンタ10は、全てのデバイスに用いて良く、例えば、圧力のレンジが小さく、取り扱う信号に搖動性を持つフィールド機器に用いて顕著な効果が得られる。
【0043】
なお、本実施形態に係る周波数カウンタ10によれば、制御回路(MPU)を用い、窓関数を自動調整する例についてのみ説明したが、これを調節ネジやボタン等により手動で行ない、これを取り込むインタフェース(操作回路)で代替してもよい。
【0044】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0045】
10…周波数カウンタ、11…基準クロックカウンタ、12…信号検出タイミングパルス生成回路、13…加算・減算ステータス生成回路、14…パルスカウントマスク生成回路、15…演算周期パルス生成回路、16…信号検出時刻累積レジスタ、17,18…パルスカウンタ、19…加減算回路、20…一致回路、21〜23…ゲート回路、24…ラッチレジスタ、25…MPUインタフェース回路、MPU…制御回路
図1
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図7