特許第6379631号(P6379631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379631
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20180820BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01G11/78
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-90461(P2014-90461)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-210882(P2015-210882A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 英之
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−157285(JP,A)
【文献】 特開2015−084314(JP,A)
【文献】 特開2015−088451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基材層と、該第一基材層の一方の面上に第一接着層を介して形成された第二基材層と、該第二基材層の前記第一基材層とは反対の面上に第二接着層を介して形成された金属箔層と、該金属箔層の前記第二基材層とは反対の面上に配置されたシーラント層とを備え、
前記第一接着層が、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含む、蓄電装置用外装材。
【請求項2】
前記第二接着層が芳香族ポリウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記第一基材層が延伸ポリエステルフィルムであり、前記第二基材層が延伸ポリアミドフィルムである、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記第一基材層の厚さが4μm以上20μm以下であり、前記第二基材層の厚さが5μm以上30μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
基材層と、該基材層の一方の面上に第一接着層を介して形成された金属箔層と、該金属箔層の前記基材層とは反対の面上に配置されたシーラント層とを備え、
前記基材層が延伸ポリアミドフィルムであり、
前記第一接着層が、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含み、
前記脂肪族ポリマーが、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリエステルである、蓄電装置用外装材。
【請求項6】
基材層と、該基材層の一方の面上に第一接着層を介して形成された金属箔層と、該金属箔層の前記基材層とは反対の面上に配置されたシーラント層とを備え、
前記基材層が延伸ポリアミドフィルムであり、
前記第一接着層が、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含み、
前記脂肪族ポリマーが、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、及び主鎖が炭素−炭素結合から構成される脂肪族ポリオールから選ばれる2つ以上の水酸基を有する脂肪族ポリマー、又は、2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーである、蓄電装置用外装材。
【請求項7】
前記基材層の厚さが5μm以上30μm以下である、請求項5又は6に記載に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項8】
前記脂肪族ポリウレタン樹脂は2つ以上の水酸基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項9】
電極を含む電池要素と、前記電極から延在するリードと、前記電池要素を収容する容器とを備え、
前記容器は請求項1〜のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材から、前記シーラント層が内側となるように形成されている、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置用外装材及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置のさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで対応できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、アルミニウム箔層を含む外装材により電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。
【0004】
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている(以下、「片側成型加工電池」ということがある)。また近年では、エネルギー密度を高める目的で、貼り合わせる外装材の両側に凹部を形成し、より多くの電池内容物を収容できるようにしたリチウムイオン電池(以下、「両側成型加工電池」ということがある)も製造されている。両側成型加工電池は、外装材同士を貼り合せる際のアライメントが難しいといった問題がある。しかし、片側成型加工電池にて両側成型加工電池と同等のエネルギー密度を得るためには、より深い凹部の形成が求められる。
【0005】
リチウムイオン電池のエネルギー密度は、冷間成型によって形成する凹部を深くするほど高くなる。しかし、形成する凹部が深いほど、成型時の外装材にピンホール又は破断が起こり易く、成型性が低下してしまう。そこで、成型性向上の例としては、基材層に、0°、45°、90°及び135°の4方向の破断までの引張強さが150N/mmであり、かつ該4方向の伸びが80%以上であるフィルムを用いることが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、成型性向上のためには、外装材の基材層に二軸延伸ポリアミドフィルムを用いて金属箔を保護することが行われている。しかし、二軸延伸ポリアミドフィルムはリチウムイオン電池の内容物である電解液への耐性が低く、リチウムイオン電池の製造工程において、電解液の注入時に二軸延伸ポリアミドフィルムに電解液が付着してしまった際には、二軸延伸ポリアミドフィルムが溶解し、外観不良が発生してしまう。
【0007】
そこで、基材層表面に電解液耐性を持たせた外装材として、二軸延伸ナイロンフィルム(以下、「二軸延伸Nyフィルム」ということがある)と、さらにその外側に積層した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「二軸延伸PETフィルム」ということがある)とを基材層に用いた外装材が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3567230号公報
【特許文献2】特許第4559547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、このような外装材に凹部を形成する深絞り成型を行った場合、成型加工後の外装材が基材層側に大きく反ることがある。このような傾向は、特に片側成型加工電池を製造する場合に顕著である。外装材の反りは、外装材を延伸しながら成型加工した際に、延伸された基材層が元の状態に戻ろうとして発生するものであると考えられ、特許文献1及び2で得られる外装材では上記反りの問題を解決することが困難であった。本発明者はその理由は下記にあると考えている。すなわち、特許文献1及び2の外装材では、金属箔層を挟んで、その一方側にポリエステルフィルム又はポリアミドフィルム等を用いた基材層が、他方側に酸変性ポリオレフィン系樹脂等の熱接着性樹脂層が配置されているが、熱接着性樹脂層と比較して基材層の方が、引張試験における弾性領域(荷重を取り除くと元の長さにまで回復する領域)での引張強度が著しく大きく、成型加工による延伸に対して元に戻ろうとする力は基材層側の方がより大きくなるためであると考えられる。
【0010】
成型加工後の反りは、外装材を次工程等へ吸着搬送する際に、吸着エラーを引き起こす原因になったり、次工程であるヒートシール時にヒートシール不良を引き起こす原因になる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反りを低減することが可能な蓄電装置用外装材、及びそれを用いた蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第一基材層と、該第一基材層の一方の面上に第一接着層を介して形成された第二基材層と、該第二基材層の上記第一基材層とは反対の面上に第二接着層を介して形成された金属箔層と、該金属箔層の上記第二基材層とは反対の面上に配置されたシーラント層とを備え、上記第一接着層が、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含む、蓄電装置用外装材を提供する。
【0013】
このように、第一接着層が上記脂肪族ポリマーと上記脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含むことにより、金属箔層を挟んで基材層側の引張強度を低減させ、金属箔層を挟んでシーラント層側の引張強度に近づけることができ、結果として優れた成型性を維持しつつ成型加工後の反りを抑制できる。脂肪族ポリマーは、主として炭素−炭素間が単結合で構成されているため芳香族ポリマーと比較して可撓性、柔軟性に優れているからである。さらに、脂肪族ポリイソシアネートを用いることにより黄変を抑制し、耐候性を向上できる。
【0014】
上記外装材では、成型性の観点から、上記第二接着層が芳香族ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
上記外装材では、上記第一基材層が延伸ポリエステルフィルムであり、上記第二基材層が延伸ポリアミドフィルムであることが好ましい。第一基材層及び第二基材層が上記構成を備えることにより、優れた成型性と電解液耐性を両立できる。
【0016】
上記外装材では、上記第一基材層の厚さが4μm以上20μm以下であり、上記第二基材層の厚さが5μm以上30μm以下であることが好ましい。第一基材層及び第二基材層が上記構成を備えることにより、優れた成型性と高エネルギー密度を兼ね備えた蓄電装置の製造が可能となる。
【0017】
本発明はまた、基材層と、該基材層の一方の面上に第一接着層を介して形成された金属箔層と、該金属箔層の上記基材層とは反対の面上に配置されたシーラント層とを備え、上記第一接着層が、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含む、蓄電装置用外装材を提供する。
【0018】
このように、第一接着層が上記脂肪族ポリマーと上記脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含むことにより、金属箔層を挟んで基材層側の引張強度を低減させ、金属箔層を挟んでシーラント層側の引張強度に近づけることができ、結果として優れた成型性を維持しつつ成型加工後の反りを抑制できる。脂肪族ポリマーは、主として炭素−炭素間が単結合で構成されているため芳香族ポリマーと比較して可撓性、柔軟性に優れているからである。さらに、脂肪族ポリイソシアネートを用いることにより黄変を抑制し、耐候性を向上できる。
【0019】
上記外装材では、上記基材層が延伸ポリアミドフィルムであることが好ましい。基材層が上記構成を備えることにより、優れた電解液耐性を得ることができる。
【0020】
上記外装材では、上記基材層の厚さが5μm以上30μm以下であることが好ましい。基材層が上記構成を備えることにより、優れた成型性と高エネルギー密度を兼ね備えた蓄電装置の製造が可能となる。
【0021】
上記外装材ではいずれも、上記脂肪族ポリウレタン樹脂は2つ以上の水酸基を有する脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られるものであることが好ましい。また、上記外装材ではいずれも、上記脂肪族ポリウレタン樹脂は2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られるものであることが好ましい。第一接着層において、脂肪族ポリウレタン樹脂が上記構成を備えることにより、成型加工後の反りをさらに低減することができる。
【0022】
また本発明は別の側面として蓄電装置に関する。この蓄電装置は、電極を含む電池要素と、上記電極から延在するリードと、上記電池要素を収容する容器とを備え、上記容器は上記蓄電装置用外装材から、上記シーラント層が内側となるように形成されている。この場合も上記蓄電装置用外装材と同様に、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反りを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反りを低減することが可能な蓄電装置用外装材、及びそれを用いた蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材を用いて得られるエンボスタイプ外装材を示す図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)に示すエンボスタイプ外装材のb−b線に沿った縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材を用いて二次電池を製造する工程を示す斜視図であり、(a)は、蓄電装置用外装材を準備した状態を示し、(b)は、エンボスタイプに加工された蓄電装置用外装材と電池要素を準備した状態を示し、(c)は、蓄電装置用外装材の一部を折り返して端部を溶融した状態を示し、(d)は、折り返された部分の両側を上方に折り返した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[蓄電装置用外装材10]
まず、本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材10(以下、単に「外装材10」とも記す。)について説明する。外装材10は、正極、セパレータ、負極及び電解液等の電池要素を覆って、電池内部への水分の浸入を防止したり、内部で発生した物質(例えば、水分の浸入により発生するフッ酸等)の外部への流出を防止するための包装材である。このような外装材10は、図1に示すように、第一基材層11と、第一基材層11の一方の面上に第一接着層12を介して形成された第二基材層13と、第二基材層13の第一基材層11とは反対の面上に第二接着層14を介して形成された金属箔層15と、金属箔層15の第二基材層13とは反対の面上に配置されたシーラント層18とを基本構成として備える。外装材10では、金属箔層15とシーラント層18との間に、金属箔層15の第二基材層13とは反対の面上に形成された腐食防止処理層16、及び、腐食防止処理層16の金属箔層15とは反対の面に形成されたシーラント接着層17を備えていてもよい。この場合、外装材10は、第一基材層11、第一接着層12、第二基材層13、第二接着層14、金属箔層15、腐食防止処理層16、シーラント接着層17及びシーラント層18が順次積層された積層体である。
【0027】
(第一基材層11)
第一基材層11は、蓄電装置を製造する際の後述する加圧熱融着工程における耐熱性を外装材10に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。第一基材層11は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂及びポリカーボネート樹脂等を含んで構成され、好ましくはポリエステル樹脂を含んで構成される。
【0028】
第一基材層11は、さらに、ポリエステルエラストマー又は非晶質ポリエステルを含んで構成されていてもよい。第一基材層11がポリエステルエラストマー又は非晶質ポリエステルを含むことにより、成型加工時の引張応力に対する弾性領域が少なくなり、成型加工により延伸された部分の収縮率を低減し、成型後の反り量を小さくできる。
【0029】
上記ポリエステルエラストマーはハードセグメントとソフトセグメントからなる。ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルが挙げられ、ハードセグメントは、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、並びに、ポリカプロラクトン及びポリブチレンアジペート等のポリエステルが挙げられ、ソフトセグメントは、ポリテトラメチレングリコールであることが好ましい。また、非晶質ポリエステルは、例えば、ポリエステルを製造する際のエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに変更すること等によって得られる。
【0030】
ポリエステル樹脂を含んで構成される第一基材層11は、延伸ポリエステルフィルムであることがより好ましく、突刺強度又は衝撃強度に優れる点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましい。
【0031】
第一基材層11の厚さは、4μm〜20μmであることが好ましく、10μm〜15μmであることがより好ましい。第一基材層11の厚さが20μm以下であることにより、成型加工により延伸された箇所の第一基材層11の収縮率の増加を抑制でき、成型加工後の反りを低減できる。また、第一基材層11の厚さが4μm以上であることにより、金属箔層の保護効果が向上する。
【0032】
(第一接着層12)
第一接着層12は、第一基材層11と第二基材層13とを接着する層である。第一接着層12に用いられる接着剤は、2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーの主剤と、2つ以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートの硬化剤とからなる2液硬化型の脂肪族ウレタン系接着剤であり、第一接着層12は上記脂肪族ポリマーと上記脂肪族ポリイソシアネートとを反応させることにより得られる脂肪族ポリウレタン樹脂を含む。上記脂肪族ウレタン系接着剤は、主として脂肪族化合物からなり、芳香族化合物を含まない。上記脂肪族ポリマーは2つ以上の水酸基を有することが好ましい。また、上記脂肪族ポリマーは2つ以上の水酸基又は2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリエステルであることが、接着剤同士のネットワーク形成に寄与することによる成型性向上の観点から好ましい。第一接着層において、ポリウレタン樹脂が上記構成を備える脂肪族ポリマーから得られることにより、成型加工後の反りをさらに低減することができる。また、接着層の系全体を脂肪族系化合物に限定すれば、系全体のガラス転移温度(Tg)を低下させることができ、接着層の低温特性を高いレベルで維持することができる。上記脂肪族ウレタン系接着剤は、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基又は酸無水物基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して第一基材層11と第二基材層13との強固な接着が可能となる。
【0033】
上記脂肪族ポリマーとしては、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール若しくは主鎖が炭素−炭素結合から構成される脂肪族ポリオール等の2つ以上の水酸基を有する脂肪族ポリマー、又は、脂肪族ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸等の酸無水物でグラフト変性した酸無水物変性ポリオレフィン樹脂等の2つ以上の酸無水物基を有する脂肪族ポリマーであることが好ましい。
【0034】
脂肪族ポリエステルポリオールは、脂肪酸とポリオールとの反応物であり、該脂肪酸としては、例えば、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸、及びオキシヘキサンデセン酸の水酸基含有長鎖脂肪酸等が挙げられる。上記脂肪酸の炭素数は5〜20であることが好ましい。また、上記脂肪酸は直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよいが、柔軟性に優れる観点から直鎖状であることが好ましい。脂肪酸と反応するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール及びジエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びトリエタノールアミン等の3官能ポリオール、ジグリセリン及びペンタエリスリトール等の4官能ポリオール、ソルビトール等の6官能ポリオール、及びシュガー等の8官能ポリオール等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、ポリオールとアルキレンオキサイドとの付加重合物等が挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、及び1,4−ブタンジオール等の2官能ポリオール、並びに、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びα−オレフィンオキサイド等が挙げられる。
【0036】
主鎖が炭素−炭素結合から構成される脂肪族ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、及び、これらにAN(アクリロニトリル)をグラフト重合したポリオール等が挙げられる。その他の脂肪族ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びPTMG(ポリテトラメチレングリコール)等が挙げられる。
【0037】
酸無水物変性脂肪族ポリオレフィン樹脂に用いられる脂肪族ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン及び4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上20以下、好ましくは2以上6以下のオレフィンの重合体である。
【0038】
上記脂肪族ポリマーの数平均分子量の下限は、好ましくは500であり、より好ましくは1000である。脂肪族ポリマーの数平均分子量が500以上であることにより、接着剤中の未反応物の残留をより低減することができる。また、上記脂肪族ポリマーの数平均分子量の上限は、好ましくは30000であり、より好ましくは10000である。脂肪族ポリマーの数平均分子量が30000以下であることにより、接着剤としての柔軟性を得ることができる。なお、上記数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による測定値であり、溶離液をテトラヒドロフランとし、ポリスチレン基準として測定したものである。
【0039】
上記脂肪族ポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、上記脂肪族ポリイソシアネートの分子量は100〜5000であることが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0040】
脂肪族ポリウレタン樹脂は、上記脂肪族ポリマーと脂肪族ポリイソシアネートを含む脂肪族ウレタン系接着剤を、例えば、40℃以上100℃以下の温度で、4日間以上エージング(養生)することにより得られる。
【0041】
脂肪族ポリウレタン樹脂は、上記脂肪族ポリマー100質量部に対し、上記脂肪族ポリイソシアネートを1〜50質量部反応させて得られることが好ましく、2〜30質量部反応させて得られることがより好ましい。脂肪族ポリイソシアネートを上記下限値以上反応させることにより、強固な接着性を得ることが可能となる。また、脂肪族ポリイソシアネートを上記上限値以下反応させることにより、未反応硬化剤と大気中の水分との副反応を最小限に抑えることが可能となる。
【0042】
上記脂肪族ポリウレタン樹脂の、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)で測定されるガラス転移点(Tg)は、好ましくは0〜45℃、より好ましくは5℃〜40℃である。上記ガラス転移点が0℃以上であることにより、接着剤のタックが低減でき、異物の付着を抑制することができる。一方、ガラス転移点が45℃以下であることにより、より優れた接着力を得ることができる。
【0043】
第一接着層12の厚さは、1〜5μmであることが好ましい。第一接着層の厚さが1μm以上であることにより、第一基材層11と第二基材層13との十分な接着強度が得られやすく、5μm以下であることにより、第一接着層12の割れの発生を抑制することができる。
【0044】
(第二基材層13)
第二基材層13は、電池内部で発生した物質(例えば、水分の浸入により発生するフッ酸等)の外部への流出を防止するための層である。第二基材層13は、薄肉で、シャープな形状の成型を行うために、強度が高く、伸びが大きく、且つ軟質であるポリアミド樹脂(ナイロン)又はポリエステル樹脂を含んで構成されることが好ましい。
【0045】
ポリアミド樹脂を含んで構成される第二基材層13は、延伸ポリアミドフィルムであることが好ましく、突刺強度又は衝撃強度に優れる点から、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。
【0046】
第二基材層13の厚さは、5μm〜30μmであることが好ましく、15μm〜25μmであることがより好ましい。第二基材層13の厚さが5μm以上であることにより、優れた成型性が得られ、30μm以下であることにより、蓄電装置のエネルギー密度を高めることができる。
【0047】
(第二接着層14)
第二接着層14は、第二基材層13と金属箔層15とを接着する層である。第二接着層14を構成する接着剤は、脂肪族ウレタン系接着剤及び芳香族ウレタン系接着剤のいずれであってもよいが、芳香族ウレタン系接着剤であることが好ましい。芳香族ウレタン系接着剤は主剤及び硬化剤の少なくとも一方に芳香族化合物を含み、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びアクリルポリオール等の主剤と、2官能以上の芳香族ポリイソシアネートの硬化剤とを含む。第二接着層14は、成型性の観点から、ポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させて得られる芳香族ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。ウレタン系接着剤を、塗工後、例えば、40℃以上100℃以下で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
【0048】
第二接着層14の厚さは、接着強度、追随性及び加工性等の点から、1〜10μmであることが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。
【0049】
(金属箔層15)
金属箔層15としては、アルミニウム及びステンレス鋼等の各種金属箔が挙げられ、防湿性及び延展性等の加工性、並びにコストの面から、金属箔層15はアルミニウム箔であることが好ましい。アルミニウム箔は一般の軟質アルミニウム箔であってもよく、耐ピンホール性及び成形時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔であることが好ましい。
【0050】
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中に鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0051】
金属箔層15の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。金属箔層15の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。金属箔層15の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電装置の重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0052】
(腐食防止処理層16)
腐食防止処理層16は、電解液、又は、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層15の腐食を抑制する役割を果たす。また、金属箔層15とシーラント接着層17との密着力を高める役割を果たす。
【0053】
腐食防止処理層16は、塗布型又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜であることが好ましい。この塗膜は、金属箔層15の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層15とシーラント接着層17の密着力をより強固にするので、電解液等の蓄電装置要素に対して優れた耐性が得られる。また、腐食防止処理層16は、必要とされる機能に応じて第一接着層12と金属箔層15の間に追加されてもよい。
【0054】
腐食防止処理剤の塗膜は、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理、及び、クロム酸塩とリン酸塩とフッ化物と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるクロメート処理等により形成される。なお、腐食防止処理層16は、金属箔層15の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上記した塗膜には限定されない。腐食防止処理層16は、例えば、リン酸塩処理及びベーマイト処理等によって形成された塗膜であってもよい。
【0055】
腐食防止処理層16は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層16には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。腐食防止処理層16の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm〜5μmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましい。
【0056】
(シーラント接着層17)
シーラント接着層17は、腐食防止処理層16が形成された金属箔層15とシーラント層18を接着する層である。外装材10は、シーラント接着層17を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
【0057】
熱ラミネート構成におけるシーラント接着層17を形成する接着成分は、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で構成された場合のシーラント層18と、極性を有することが多い腐食防止処理層16の両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、外装材10の電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生してもシーラント接着層17の劣化による密着力の低下を防止し易い。
【0058】
酸変性ポリオレフィン系樹脂のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。また、ポリオレフィン樹脂としては、上記したものにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物及び酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸であることが好ましい。シーラント接着層17に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0059】
熱ラミネート構成のシーラント接着層17は、上記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成できる。熱ラミネート構成のシーラント接着層17の厚さは2〜50μmであることが好ましい。
【0060】
ドライラミネート構成のシーラント接着層17を形成する接着成分としては、例えば、第一接着層12又は第二接着層14で挙げたものと同様の2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0061】
ドライラミネート構成のシーラント接着層17は、エステル基及びウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には、シーラント接着層17として熱ラミネート構成の接着成分を用いることが好ましい。
【0062】
シーラント接着層17の厚さは、熱ラミネート構成の場合には、8μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。シーラント接着層17の厚さが8μm以上であることにより、金属箔層15とシーラント層18との十分な接着強度が得られやすく、30μm以下であることにより、外装材端面から内部の電池要素に浸入する水分量を低減しやすくすることができる。また、シーラント接着層17の厚さは、ドライラミネート構成の場合には、1μm以上5μm以下であることが好ましい。シーラント接着層17の厚さが1μm以上であることにより、金属箔層15とシーラント層18との十分な接着強度が得られやすく、5μm以下であることにより、シーラント接着層17の割れの発生を抑制することができる。
【0063】
(シーラント層18)
シーラント層18は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層18としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シーラント接着層17で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0066】
シーラント層18は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体及びポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
【0067】
また、シーラント層18は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加材を含んでいてもよい。
【0068】
シーラント層18の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。シーラント層18の厚さが20μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、90μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。
【0069】
[蓄電装置用外装材20]
次に、本発明の別の実施形態に係る蓄電装置用外装材20(以下、単に「外装材20」とも記す。)について説明する。外装材20は、正極、セパレータ、負極及び電解液等の電池要素を覆って、電池内部への水分の浸入を防止したり、内部で発生した物質(例えば、水分の浸入により発生するフッ酸等)の外部への流出を防止するための包装材である。このような外装材20は、図2に示すように、基材層21と、基材層21の一方の面上に第一接着層22を介して形成された金属箔層23と、金属箔層23の基材層21とは反対の面上に配置されたシーラント層26とを基本構成として備える。外装材20では、金属箔層23とシーラント層26との間に、金属箔層23の基材層21とは反対の面上に形成された腐食防止処理層24、及び、腐食防止処理層24の金属箔層23とは反対の面に形成されたシーラント接着層25を備えていてもよい。この場合、外装材20は、基材層21、第一接着層22、金属箔層23、腐食防止処理層24、シーラント接着層25及びシーラント層26が順次積層された積層体である。
【0070】
基材層21は、蓄電装置を製造する際の後述する加圧熱融着工程における耐熱性を外装材20に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たすための層である。第一接着層22は、基材層21と金属箔層23とを接着する層である。腐食防止処理層24は、電解液、又は、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層23の腐食を抑制する役割を果たす。シーラント接着層25は、腐食防止処理層24が形成された金属箔層23とシーラント層26を接着する層である。
【0071】
外装材20の基材層21、第一接着層22、金属箔層23、腐食防止処理層24、シーラント接着層25及びシーラント層26はそれぞれ、上記外装材10の第二基材層13、第一接着層12、金属箔層15、腐食防止処理層16、シーラント接着層17及びシーラント層18と同様の構成とすることができる。
【0072】
[外装材の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0073】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11〜S14を有する方法が挙げられる。
工程S11:金属箔層15の一方の面上に腐食防止処理層16を形成する工程。
工程S12:第一基材層11と第二基材層13とを第一接着層12を介して貼り合わせ、積層体を得る工程。
工程S13:金属箔層15の他方の面(腐食防止処理層16を形成した側と反対側の面)と、第二接着層14を介して、上記積層体の第二基材層13側の面とを貼り合わせる工程。
工程S14:腐食防止処理層16上に、シーラント接着層17を介してシーラント層18を形成する工程。
【0074】
(工程S11)
工程S11では、腐食防止処理層16は、例えば、金属箔層15の一方の面上に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥することにより、金属箔層15の一方の面上を形成される。腐食防止処理剤としては、例えば、上述のセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、又はバーコート等の各種方法を採用できる。
【0075】
(工程S12)
工程S12では、第一基材層11に第一接着層12を形成する接着剤を用いて、ドライラミネーション等の手法で第二基材層13が貼り合わせられ、第一基材層11、第一接着層12及び第二基材層がこの順に積層された積層体が得られる。工程(2−2)では、接着性の促進のため、40℃〜100℃の範囲でエージング(養生)を行ってもよい。エージング時間は、例えば、3〜10日である。
【0076】
(工程S13)
工程S13では、金属箔層15の他方の面(腐食防止処理層16を形成した側と反対側の面)と、第二接着層14を形成する接着剤を用いて、ドライラミネーション等の手法で上記積層体の第二基材層13側の面とが貼り合わせられる。工程S13では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。エージング時間は、例えば、3〜10日である。
【0077】
(工程S14)
工程S13後、第一基材層11、第一接着層12、第二基材層13、第二接着層14、金属箔層15及び腐食防止処理層16がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層16上に、シーラント接着層17を介してシーラント層18が形成される。シーラント層18は、ドライラミネーション及びサンドイッチラミネーション等によって積層されてもよく、シーラント接着層17とともに共押出し法によって積層されてもよい。シーラント層18は、接着性向上の点から、例えばサンドイッチラミネーションによって積層される、又は、シーラント接着層17とともに共押出し法によって積層されることが好ましく、サンドイッチラミネーションによって積層されることがより好ましい。
【0078】
さらに、外装材20の製造方法について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0079】
外装材20の製造方法として、例えば、下記の工程S11’〜S13’を有する方法が挙げられる。
工程S11’:金属箔層23の一方の面上に腐食防止処理層24を形成する工程。
工程S12’:金属箔層23の他方の面上に第一接着層22を介して基材層21を形成する工程。
工程S13’:腐食防止処理層24上に、シーラント接着層25を介してシーラント層26を形成する工程。
【0080】
工程S11’では工程S11の金属箔層15及び腐食防止処理層16と同様に、金属箔層23の一方の面上に腐食防止処理層24が形成される。工程S12’では工程S13の金属箔層15及び上記積層体と同様に、金属箔層23の他方の面上に第一接着層22を介して基材層21が形成される。工程S13’では工程S14の腐食防止処理層16及びシーラント層18と同様に、腐食防止処理層24上にシーラント層26が形成される。
【0081】
[蓄電装置]
次に、外装材10又は外装材20を容器として備える蓄電装置について説明する。蓄電装置は、電極を含む電池要素1と、上記電極から延在するリード2と、電池要素1を収容する容器とを備え、上記容器は蓄電装置用外装材10又は蓄電装置用外装材20から、シーラント層18又はシーラント層26が内側となるように形成される。上記容器は、2つの外装材をシーラント層18又はシーラント層26同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた外装材10又は外装材20の周縁部を熱融着して得られてもよく、また、1つの外装材を折り返して重ね合わせ、同様に外装材10又は外装材20の周縁部を熱融着して得られてもよい。蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。
【0082】
リード2は、シーラント層18又はシーラント層26を内側として容器を形成する外装材10又は外装材20によって挟持され、密封されている。リード2は、タブシーラントを介して、外装材10又は外装材20によって挟持されていてもよい。
【0083】
[蓄電装置の製造方法]
次に、上述した外装材10又は外装材20を用いて蓄電装置を製造する方法について説明する。なお、ここでは、エンボスタイプ外装材30を用いて二次電池40を製造する場合を例に挙げて説明する。図3は上記エンボスタイプ外装材30を示す図である。図4の(a)〜(d)は、外装材10又は外装材20を用いた片側成型加工電池の製造工程を示す斜視図である。二次電池40としては、エンボスタイプ外装材30のような外装材を2つ設け、このような外装材同士を、アライメントを調整しつつ、貼り合わせて製造される、両側成型加工電池であってもよい。
【0084】
片側成型加工電池である二次電池40は、例えば、以下の工程S21〜S25により製造することができる。
工程S21:外装材10又は外装材20、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する工程。
工程S22:外装材10又は外装材20の片面に電池要素1を配置するための凹部32を形成する工程(図4(a)及び図4(b)参照)。
工程S23:エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)に電池要素1を配置し、凹部32を蓋部34が覆うようにエンボスタイプ外装材30を折り返し重ねて、電池要素1から延在するリード2を挟持するようにエンボスタイプ外装材30の一辺を加圧熱融着する工程(図4(b)及び図4(c)参照)。
工程S24:リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺を加圧熱融着し、その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺を加圧熱融着する工程(図4(c)参照)。
工程S25:リード2を挟持する辺以外の加圧熱融着辺端部をカットし、成型加工エリア(凹部32)側に折り曲げる工程(図4(d)参照)。
【0085】
(工程S21)
工程S21では、外装材10又は外装材20、電極を含む電池要素1、並びに上記電極から延在するリード2を準備する。外装材10又は外装材20は、上述した実施形態に基づき準備する。電池要素1及びリード2としては特に制限はなく、公知の電池要素1及びリード2を用いることができる。
【0086】
(工程S22)
工程S22では、外装材10又は外装材20のシーラント層18又はシーラント層26側に電池要素1を配置するための凹部32が形成される。凹部32を形成する方法としては、金型を用いた成型加工(深絞り成型)が挙げられる。成型方法としては、外装材10又は外装材20の厚さ以上のギャップを有するように配置された雌型と雄型の金型を用い、雄型の金型を外装材10又は外装材20とともに雌型の金型に押し込む方法が挙げられる。雄型の金型の押込み量を調整することで、凹部32の深さ(深絞り量)を所望の量に調整できる。外装材10又は外装材20に凹部32が形成されることにより、エンボスタイプ外装材30が得られる。
【0087】
(工程S23)
工程S23では、エンボスタイプ外装材30の成型加工エリア(凹部32)内に、正極、セパレータ及び負極等から構成される電池要素1が配置され。また、電池要素1から延在し、正極と負極にそれぞれ接合されたリード2が成型加工エリア(凹部32)から外に引き出される。その後、エンボスタイプ外装材30は、長手方向の略中央で折り返され、シーラント層18又はシーラント層26同士が内側となるように重ねられ、エンボスタイプ外装材30のリード2を挟持する一辺が加圧熱融着される。加圧熱融着は、温度、圧力及び時間の3条件で制御され、適宜設定される。加圧熱融着の温度は、シーラント層18又はシーラント層26を融解する温度以上であることが好ましい。
【0088】
なお、シーラント層18又はシーラント層26の熱融着前の厚さは、リード2の厚さに対し40%以上80%以下であることが好ましい。シーラント層18又はシーラント層26の厚さが上記下限値以上であることにより、熱融着樹脂がリード2端部を十分充填できる傾向があり、上記上限値以下であることにより、二次電池40の外装材10又は外装材20端部の厚さを適度に抑えることができ、外装材10又は外装材20端部からの水分の浸入量を低減することができる。
【0089】
(工程S24)
工程S24では、リード2を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺の加圧熱融着が行われる。その後、残った一辺から電解液を注入し、残った一辺が真空状態で加圧熱融着される。加圧熱融着の条件は工程S23と同様である。
【0090】
(工程S25)
リード2を挟持する辺以外の周縁加圧熱融着辺端部がカットされ、端部からははみだしたシーラント層18又はシーラント層26が除去される。その後、周縁加圧熱融着部を成型加工エリア32側に折り返し、折り返し部42を形成することで、二次電池40が得られる。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0092】
[評価方法]
(成型加工後の反り)
実施例及び比較例で得られた外装材を、120mm×260mmの形状に切り取り、シーラント層が上方を向くように成型装置内に配置した。成型装置の成型深さを3mmに設定し、室温23℃露点温度−35℃の環境下で、冷間成型を行った。パンチ金型には、70mm×80mmの長方形の横断面を有し、底面に0.75mmのパンチラジアス(RP)を有し、側面に1.5mmのパンチコーナーラジアス(RCP)を有するものを使用した。また、ダイ金型には、開口部上面に0.75mmのダイラジアス(RD)を有するものを使用した。パンチ金型とダイ金型との間のクリアランス0.20mmとした。成型エリアは切り取った外装材の長手方向の略中央で分けた半面の略中央とした。すなわち、成型エリアの両端が、切り取った外装材の短手方向の両端からそれぞれ25mmの位置となるように、成型エリアを配置した。
【0093】
成型加工後の外装材を、基材層側が上方を向くように、室温23℃露点温度−35℃の環境で60分水平な台上に静置させ、成型されていないエリア側の短手方向の辺の中央の台からの距離の最大値を測定し、測定値を反り量とした。ただし、90度以上の角度で反った場合には、反り量の計測ができないため、測定不可とした。
【0094】
(成型深さ)
実施例及び比較例で得られた外装材を、150mm×190mmの形状に切り取り、シーラント層が上方を向くように成型装置内に配置した。成型装置の成型深さを1mmごとに1〜10mmに設定し、室温23℃露点温度−35℃の環境下で冷間成型し、各成型深さにおける成型性を下記基準に従って評価した。なお、パンチ金型には、100mm×150mmの長方形の横断面を有し、底面に0.75mmのパンチラジアス(RP)を有し、側面に1.5mmのパンチコーナーラジアス(RCP)を有するものを使用した。また、ダイ金型には、開口部上面に0.75mmのダイラジアス(RD)を有するものを使用した。評価基準は、以下に従って行った。
A:破断又はクラックを生じずに、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能である。
B:破断又はクラックを生じずに、成型深さ4mm以上6mm未満の深絞り成型が可能である。
C:成型深さ4mm未満の深絞り成型で破断又はクラックが生じる。
【0095】
[外装材10の使用材料]
実施例及び比較例の、外装材10の、第一基材層11、第一接着層12、第二基材層13、第二接着層14、金属箔層15、腐食防止処理層16、シーラント接着層17、及びシーラント層18を形成するために使用した材料を以下に示す。
【0096】
(第一基材層11)
基材A−1:逐次二軸延伸PETフィルム(厚さ:12μm)
【0097】
(第一接着層12、第二接着層14)
接着剤B−1:脂肪族ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA−505(三井化学製))92質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ製))8質量部
接着剤B−2:無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(主剤、スミフィットCK1D(住化ケムテックス製))90質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ製))10質量部
接着剤B−3:芳香族系ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA−977(三井化学製))87質量部、トリレンジイソシアネート(硬化剤、コロネートL−55E(日本ポリウレタン工業製))13質量部
【0098】
(第二基材層13)
基材C−1:逐次二軸延伸Nyフィルム(厚さ:15μm)
【0099】
(金属箔層15)
金属箔D−1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ:40μm)
【0100】
(腐食防止処理層16)
処理剤E−1:酸化セリウム、リン酸、及びアクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤。
【0101】
(シーラント接着層17)
接着樹脂F−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)
【0102】
(シーラント層18)
フィルムG−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:60μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム。
【0103】
[外装材10の作製]
(実施例1)
金属箔D−1の一方の面に処理剤E−1を塗布及び乾燥して、金属箔層15上に腐食防止処理層16を形成した。次に、基材A−1に接着剤B−1を介して、ドライラミネート法により、基材C−1を貼り合せ、第一基材層11上に第一接着層12を介して第二基材層13が形成された積層体を得た。次に、金属箔層15における腐食防止処理層16の反対面に、接着剤B−3を介して、ドライラミネート法により、上記積層体の基材C−1側を貼り合せ、第一基材層11、第一接着層12、第二基材層13、第二接着層14、金属箔層15及び腐食防止処理層16がこの順に積層された積層体を得た。その後、得られた積層体に対し、60℃、6日間のエージングを行った。次に、エージング後の積層体の腐食防止処理層16側に押出し装置にて接着樹脂F−1を押出し、さらに接着樹脂F−1上にフィルムG−1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることで、エージング後の積層体の腐食防止処理層16上にシーラント接着層17を介してシーラント層18を形成した。その後、得られた積層体を、190℃で加熱圧着することで外装材10を作製した。なお、積層後の第一接着層12の厚さは5μmであり、積層後の第二接着層14の厚さは5μmであり、積層後のシーラント接着層17の厚さは25μmであった。
【0104】
(実施例2〜3及び比較例1)
外装材10の、第一基材層11、第一接着層12、第二基材層13及び第二接着層14を形成するために使用した材料を、表1に示される材料に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜3及び比較例1の外装材10を得た。実施例1〜3及び比較例1で得られた外装材10の成型後の反り及び成型深さの評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
[外装材20の使用材料]
次に、実施例及び比較例の、外装材20の、基材層21、第一接着層22、金属箔層23、腐食防止処理層24、シーラント接着層25、及びシーラント層26を形成するために使用した材料を以下に示す。
【0107】
(基材層21)
基材C−2:逐次二軸延伸Nyフィルム(厚さ:25μm)
【0108】
(第一接着層22)
接着剤B−1:脂肪族ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA505(三井化学製))92質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ製))8質量部
接着剤B−2:無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(主剤、スミフィットCK1D、(住化ケムテックス製))92質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ製))8質量部
接着剤B−3:芳香族系ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA505(三井化学製))87質量部、トリレンジイソシアネート(硬化剤、コロネートL−55E(日本ポリウレタン工業製))13質量部
接着剤B−4:無水マレイン酸変性スチレン−ポリオレフィン系樹脂(主剤、アラスター700S(荒川化学工業製))90質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ製))10質量部
接着剤B−5:脂肪族ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA505(三井化学製))85質量部、トリレンジイソシアネート(硬化剤、コロネートL−55E(日本ポリウレタン工業製))15質量部
接着剤B−6:脂肪族ポリエステルポリオール(主剤、タケラックA505(三井化学製))83質量部、ジフェニルメタンジイソシアネート(硬化剤)17質量部
接着剤B−7:芳香族系ポリエーテルポリオール(主剤、タケラックA950(三井化学製))87質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤、デュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ製))13質量部
【0109】
(金属箔層23)
金属箔D−1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ:40μm)
【0110】
(腐食防止処理層24)
処理剤E−1:酸化セリウム、リン酸、及びアクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤。
【0111】
(シーラント接着層25)
接着樹脂F−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)
【0112】
(シーラント層26)
フィルムG−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:60μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム。
【0113】
[外装材20の作製]
(実施例4)
金属箔D−1の一方の面に処理剤E−1を塗布及び乾燥して、金属箔層23上に腐食防止処理層24を形成した。次に、金属箔層23における腐食防止処理層24の反対面に、接着剤B−1を介して、ドライラミネート法により、基材層21を貼り合せ、基材層21上に第一接着層22を介して金属箔層23が形成され、金属箔層23上に腐食防止処理層24が形成された積層体を得た。その後、得られた積層体に対し、60℃、6日間のエージングを行った。次に、エージング後の積層体の腐食防止処理層24側に押出し装置にて接着樹脂F−1を押出し、さらに接着樹脂F−1上にフィルムG−1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることで、エージング後の積層体の腐食防止処理層24上にシーラント接着層25を介してシーラント層26を形成した。その後、得られた積層体を、190℃で加熱圧着することで外装材20を作製した。なお、積層後の第一接着層22の厚さは5μmであり、積層後のシーラント接着層25の厚さは25μmであった。
【0114】
(実施例5及び比較例2〜6)
外装材20の、基材層21及び第一接着層22を形成するために使用した材料を、表2に示される材料に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5及び比較例2〜6の外装材20を得た。実施例4〜5及び比較例2〜6で得られた外装材10の成型後の反り及び成型深さの評価結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表1及び2に示すように、第一接着剤層に脂肪族ポリウレタン樹脂を用いた実施例1〜5の外装材では、成型後の反り量が20mm以下という小さい値を示し、また、優れた成型深さを示した。また、外装材10において、第二接着層に芳香族ポリウレタン樹脂を用いた実施例1〜2では、成型後の反り量を低減しつつ、さらに優れた成型深さを示した。
【0117】
一方で、第一接着剤層に芳香族ポリウレタン樹脂を用いた比較例1〜6では、成型加工時の弾性変形部分を低減できず、成型加工後の反り量が大きくなり、90度以上の角度で反りが発生したことから反り量を測定することができなかった。
【符号の説明】
【0118】
1…電池要素、2…リード、10,20…外装材(蓄電装置用外装材)、11…第一基材層、12…第一接着層、13…第二基材層、14…第二接着層、15…金属箔層、16…腐食防止処理層、17…シーラント接着層、18…シーラント層、21…基材層、22…第一接着層、23…金属箔層、24…腐食防止処理層、25…シーラント接着層、26…シーラント層、30…エンボスタイプ外装材、32…成型加工エリア(凹部)、34…蓋部、40…二次電池。
図1
図2
図3
図4