特許第6379710号(P6379710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

特許6379710チューブ式タイヤ及びそれを用いたタイヤ・リム組立体
<>
  • 特許6379710-チューブ式タイヤ及びそれを用いたタイヤ・リム組立体 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379710
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】チューブ式タイヤ及びそれを用いたタイヤ・リム組立体
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/22 20060101AFI20180820BHJP
   B60C 5/04 20060101ALI20180820BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   B60C 29/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B60C5/22
   B60C5/04 A
   B60C7/00 C
   B60C29/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-125200(P2014-125200)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-2920(P2016-2920A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】鴇崎 浩
(72)【発明者】
【氏名】蔵持 泉
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭35−005501(JP,Y1)
【文献】 特開平03−231008(JP,A)
【文献】 米国特許第03100518(US,A)
【文献】 特開平11−059147(JP,A)
【文献】 特開平10−324110(JP,A)
【文献】 実開昭50−156904(JP,U)
【文献】 特開2003−118311(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0206449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ本体と、前記タイヤ本体の内周面に取り付けられたチューブとを備えるチューブ式タイヤにおいて、
タイヤ子午断面視で、前記チューブ内に、タイヤ本体の内表面の少なくとも一部に対して平行に延在する隔壁が形成され、前記チューブの内腔は、前記隔壁によって前記タイヤ本体に近い第1室と、前記タイヤ本体から遠い第2室と、に区画形成され、
前記第1室には第1の逆止弁を介して弾性体が充填され、前記第2室には第2の逆止弁を介して気体が充填され
前記チューブは、タイヤ全周にわたり、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向の少なくとも一方向において2重構造となっている、ことを特徴とするチューブ式タイヤ。
【請求項2】
前記第1室の最大厚みは、前記タイヤ本体のトレッド最大厚みの30%以上300%以下である、請求項1に記載のチューブ式タイヤ。
【請求項3】
前記第1室についての、トレッド対応領域の平均厚みt1と、ショルダー対応領域の平均厚みt2と、サイドウォール対応領域の平均厚みt3と、ビード対応領域の平均厚みt4とが、
t1≧t2≧t3≧t4
の関係を満たす、請求項1又は2に記載のチューブ式タイヤ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のチューブ式タイヤと、前記チューブ式タイヤが取り付けられたリムとを含む、タイヤ・リム組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏面部の耐パンク性能を改善したチューブ式タイヤ、及びそれを用いたタイヤ・リム組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンクを想定したタイヤに関する技術が多数提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画されたタイヤの内部に、中空リング状の隔壁を介してリムに沿って周方向に延びる室を区画し、該室内に発泡性組成物を配置した安全タイヤが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、タイヤ及びリムの内壁面に、弾性体から構成された1つのチューブがその周囲を密着させて内蔵されており、かつ、当該チューブの内部にその上面と下面とを結ぶ隔壁が設けられ、隔壁で仕切られた各気室に独立して気体を充填可能となされている安全空気入りタイヤ・リム組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4508535号公報
【特許文献2】特開2002−67610号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本自動車タイヤ協会著「タイヤの知識」p.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された安全タイヤは、外傷を受けた後も通常の走行を可能とすることを目的としたタイヤであり、トレッド表面に釘等の異物が突き刺さった場合にはパンク状態となるため、踏面部の耐パンク性能が優れているとはいえない。
【0008】
また、特許文献2に開示された安全空気入りタイヤ・リム組立体についても、トレッド表面から異物が突き刺さった気室はパンク状態となる。このため、この安全空気入りタイヤ・リム組立体についても、踏面部の耐パンク性能が優れているとはいえない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特に、踏面部の耐パンク性能を改善したタイヤ、及びこのタイヤを用いたタイヤ・リム組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤは、タイヤ本体と、上記タイヤ本体の内周面に取り付けられたチューブとを備えるチューブ式タイヤである。タイヤ子午断面視で、上記チューブ内に、タイヤ本体の内表面に平行に延在する隔壁が形成されている。上記チューブの内腔は、上記隔壁によって上記タイヤ本体に近い第1室と、上記タイヤ本体から遠い第2室と、に区画形成されている。上記第1室には弾性体が充填され、上記第2室には気体が充填されている。
【0011】
また、本発明に係るタイヤ・リム組立体は、上記チューブ式タイヤと、上記チューブ式タイヤが取り付けられたリムとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るチューブ式タイヤ(タイヤ・リム組立体)では、2層構造のチューブの特定領域へ充填する材料について限定を加えている。その結果、本発明に係るチューブ式タイヤ(タイヤ・リム組立体)によれば、特に、踏面部の耐パンク性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るチューブ式タイヤの一例を示すタイヤ子午断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るチューブ式タイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態1及び付加的形態1及び2)並びに本発明に係るタイヤ・リム組立体の実施の形態(以下に示す基本形態2)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0015】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、チューブ式タイヤ(又はタイヤ・リム組立体)の回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)から離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)とは、チューブ式タイヤ等の回転軸に直交するとともに、チューブ式タイヤ等のタイヤ幅の中心を通る平面(線)である。
【0016】
また、本実施の形態において言及される諸規定(例えば、正規リム、正規内圧、正規荷重)は、以下に示す定義に従う。即ち、正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAで規定される「最高空気圧」、TRAで規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。さらに、正規荷重とは、JATMAで規定される「最大負荷能力」、TRAで規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0017】
<チューブ式タイヤ>
[基本形態1]
図1は、本発明の実施の形態に係るチューブ式タイヤの一例を示すタイヤ子午断面図(タイヤ赤道面CLを中心にタイヤ幅方向内側から両外側までの図)である。即ち、同図に示すチューブ式タイヤ10は、タイヤ本体12と、タイヤ本体12の内周面に取り付けられたチューブ14とを備える。
【0018】
タイヤ本体12は、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部A、A、サイドウォール部B、B、ショルダー部C、C及びトレッド部Dを有する。そして、図示しないが、タイヤ本体12には、例えば、トレッド部Dから両側のビード部A、Aまで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とが配設されている。ここで、タイヤ子午断面とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れるタイヤ本体の断面をいう。なお、タイヤ本体12の外周面には、ウェット路面における走行性能の向上等のために、所定の模様のトレッドパターンが形成されている。
【0019】
ここで、ビード部Aとはタイヤをリムに固定する部分をいう。サイドウォール部Bとはタイヤ転動時に最も屈曲する部分をいう。ショルダー部Cとはタイヤの肩の部分をいう。トレッド部Dとは、路面と接する部分をいう。なお、本実施の形態における、これらの部間の境界位置は、非特許文献1に図示されている位置に準ずるものとする。
【0020】
また、チューブ14は、天然ゴム、ブチルゴムのような合成ゴム等から構成される、中空の弾性体である。チューブ14は、タイヤ周方向の全周に亘って延在し、全体としてリング形状をなす。チューブ14の内腔には、空気、窒素等の気体や、熱可塑性ウレタン等の弾性体が充填される。
【0021】
このような前提の下、図1に示す基本形態1のチューブ式タイヤ10は、タイヤ子午断面視で、チューブ14内に、タイヤ本体12の内表面に平行に延在する隔壁14aが形成されている。隔壁14aとしては、チューブ14に用いる通常のゴム部材の他、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、及び熱可塑性ポリウレタン等を用いることができる。
【0022】
これにより、チューブ14の内腔は、隔壁14aによってタイヤ本体12に近い第1室141と、タイヤ本体12から遠い第2室142と、に区画形成されている。そして、第1室141には弾性体が充填され、第2室142には気体が充填されている。
【0023】
ここで、弾性体としては、例えば、天然ゴム、イソプレン・イソブチレン共重合体のハロゲン化物及びイソブチレン・パラメチルステレン共重合体のハロゲン化物からなる、加硫物並びにこれらの混合物が含まれる。また、弾性体としては、その他、熱可塑性ウレタンなどのゴム以外の弾性体も含まれる。
【0024】
また、気体としては、空気が一般的であるが、その他窒素ガスや、空気と窒素との混合物等が挙げられる。
【0025】
なお、第1室141への弾性体の注入は、図1に示す逆止弁V1を介して行い、第2室142への気体の注入は、同図に示す逆止弁V2を介して行う。これらの逆止弁V1、V2は、例えば、タイヤのユニフォミティを考慮して、タイヤ周方向の逆側(対向位置)に位置させることができる。特に、第1室への熱可塑性ウレタンの充填は、発泡ウレタンを、逆止弁V1を介して注入し、次いで第1室内で発泡ウレタンを硬化させることによって、行うことができる。
【0026】
(作用等)
本実施の形態においては、図1に示すように、タイヤ本体12に近い第1室141に、弾性体を充填している。これにより、トレッド表面に、釘等の異物が突き刺さったような場合であっても、タイヤ本体12のトレッド部Dのタイヤ径方向内側に位置する第1室141に弾性体が充填されているのでパンクが回避され、優れた踏面部の耐パンク性能を発揮することができる。
【0027】
なお、本実施の形態においては、チューブを使用せずに内腔がインナーライナ―によって区画形成されている通常の空気入りタイヤと同様に、第2室142に気体が充填されている。このため、タイヤ転動時にタイヤ本体12の回転中心が接地面側に偏るいわゆる偏芯変形が生ずることで、トレッド部Dの変形が抑制され、エネルギー損失が抑制されることから、内腔全体が弾性体で満たされた場合に比べて、転がり抵抗を抑制し、ひいては優れた燃費性能を発揮することもできる。
【0028】
以上に示すように、本実施の形態に係るチューブ式タイヤによれば、2層構造のチューブの特定領域へ充填する材料について限定を加えることで、特に、踏面部の耐パンク性能を改善することができる。
【0029】
なお、以上に示す、本実施の形態のチューブ式タイヤは、まず、タイヤ本体とチューブとを別体として製造する。タイヤ本体については、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成形工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得る。また、チューブについては、例えば、チューブの外輪郭部分と、隔壁とを、別々に押し出し成形により用意する。次いでこの外輪郭部分と隔壁とを連結するとともに、この連結体の延在方向の両端部同士を接合して環状とした状態で、加硫を行い、チューブを得る。或いは、外輪郭部分と隔壁とを一体で押し出し成形した後、延在方向の両端部同士を接合して環状とした状態で、加硫を行い、チューブを得てもよい。そして、最後に、タイヤ本体とチューブとを組み合わせて、チューブ式タイヤを得る。
【0030】
[付加的形態]
次に、本発明に係るチューブ式タイヤの基本形態1に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1及び2を説明する。
【0031】
(付加的形態1)
基本形態1においては、図1に示す第1室141の最大厚みT1は、タイヤ本体12のトレッド最大厚みT2の30%以上300%以下であること(付加的形態1)が好ましい。ここで、第1室141の最大厚みとは、図1に示す隔壁14aの延在方向に垂直に測定した場合の、第1室141の最大寸法をいう。また、トレッド最大厚みT2とは、図1に示すタイヤ本体12の内周面の延在方向に垂直に測定した場合の、タイヤ本体12のトレッド部Dの最大寸法をいう。
【0032】
最大厚みT1をトレッド最大厚みT2の30%以上とすることで、第1室141の厚みを十分に確保することができる。これにより、トレッド表面に、釘等の異物が突き刺さった場合でも、タイヤ本体12のトレッド部Dのタイヤ径方向内側に位置する第1室141に充填された弾性体の存在により、パンクがさらに高いレベルで回避され、踏面部の耐パンク性能をさらに高めることができる。
【0033】
また、最大厚みT1をトレッド最大厚みT2の300%以下とすることで、第1室141の厚みを過度に大きくすることなく、第2室142の容積を十分に確保することができる。これにより、第2室142に充填された気体の存在によって、内腔全体が弾性体で満たされた場合に比べて、燃費性能をさらに高めることができる。
【0034】
なお、最大厚みT1をトレッド最大厚みT2の50%以上250%以下とすることで、上記効果をそれぞれより高いレベルで奏することができる。また、トレッド最大厚みT2に対する最大厚みT1の下限値については、100%以上とすることで、上記効果をさらに高いレベルで奏することができる。
【0035】
(付加的形態2)
基本形態1又は基本形態1に付加的形態1を加えた形態においては、図1に示す第1室141についての、トレッド対応領域の平均厚みt1と、ショルダー対応領域の平均厚みt2と、サイドウォール対応領域の平均厚みt3と、ビード対応領域の平均厚みt4とが、t1≧t2≧t3≧t4の関係を満たすこと(付加的形態2)が好ましい。
【0036】
ここで、図1に示すタイヤ本体12に、(図示しないが)各部A、B、C、Dの境界線を非特許文献1に準じて引いた場合に、それらの各境界線の延長線によって第1室141を区画することを考える。このような第1室141の区画方法に従い、上記延長線によって区画された各領域を、トレッド対応領域、ショルダー対応領域、サイドウォール対応領域、及びビード対応領域というものとする。なお、これらの各領域は、それぞれ、タイヤ本体12のトレッド部D、ショルダー部C、サイドウォール部B、及びビード部Aに隣接する領域とである。
【0037】
そして、図1に示す第1室141のトレッド対応領域の平均厚みt1とは、隔壁14aの延在方向に垂直に測定した場合の、第1室141の最大寸法と最小寸法との和の1/2の寸法をいう。なお、図1に示す、ショルダー対応領域の平均厚みt2、サイドウォール対応領域の平均厚みt3、及びビード対応領域の平均厚みt4についても、トレッド対応領域の平均厚みt1に準じて定義するものとする。
【0038】
各部の平均厚みt1からt4が、t1≧t2≧t3≧t4の関係を満たすことで、第1室141のうち、特に踏面部の耐パンク性能に影響を及ぼし易いトレッド対応領域の厚みを大きくして、踏面部の耐パンク性能をさらに高めることができる。
【0039】
また、上記関係を満たすことで、第1室141のトレッド対応領域からビード対応領域までの平均厚みを順次小さくして、第1室141全体としてタイヤ径方向外側から内側にかけての剛性の急激な変化を抑制し、耐久性能を高めることができる。
【0040】
さらに、上記関係を満たすことで、踏面部の耐パンク性能に貢献する可能性の低いサイドウォール対応領域及びビード対応領域の平均厚みを特に小さくして、第1室141の厚みを全体として過度に大きくすることなく、第2室142の容積を十分に確保することができる。これにより、第2室142にさらに多くの気体を充填して、タイヤ転動時にタイヤ本体12の偏芯変形をさらに高いレベルで実現できることから、燃費性能をさらに高めることができる。
【0041】
<タイヤ・リム組立体>
[基本形態2]
本実施の形態のタイヤ・リム組立体は、上述した図1に示すチューブ式タイヤ10と、チューブ式タイヤ10が取り付けられたリムとを含む。ここで、リムとは、上述した正規リムをいう。
【0042】
本実施の形態のタイヤ・リム組立体によれば、チューブのタイヤ本体側の第1室に弾性体を充填したことにより、優れた踏面部の耐パンク性能を発揮することができる。なお、本実施の形態のタイヤ・リム組立体によれば、チューブのリム側の第2室に気体を充填したことにより、内腔全体が弾性体で満たされた場合に比べて、タイヤ本体の偏芯変形が高いレベルで実現されることから、優れた燃費性能を発揮することもできる。
【0043】
なお、以上に示す、本実施の形態のタイヤ・リム組立体を製造する際には、まず、チューブをリムの外周面に組み付け、次いでタイヤ本体を、チューブの外周面を覆うように配設する。そして、図1に示す第1室141には逆止弁V1を介して弾性体を充填するとともに、第2室142には逆止弁V2を介して気体を充填することで、所望のタイヤ・リム組立体を得ることができる。
【実施例】
【0044】
タイヤサイズを195/65R15とし、図1に示す各構成要素を有し、表1に示す諸条件を満たす実施例1から実施例6のチューブ式タイヤを作製した。
【0045】
これに対し、タイヤサイズを195/65R15とし、チューブ14を有さないこと以外は実施例1のチューブ式タイヤと同じ構造の、従来例の空気入りタイヤを作製した。
【0046】
このように作製した、実施例1から実施例6及び従来例の各試験タイヤについて、踏面部の耐パンク性能と、燃費性能とについての評価を行った。それらの結果を表1に併記する。
【0047】
(踏面部の耐パンク性能)
各試験タイヤを正規リムにリム組みするとともに、空気圧230kPaを充填して、1800CCクラスの車両の前後輪に装着した状態で、非舗装路面を速度80〜120km/hにて走行させ、パンクに至るまでの走行距離を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど踏面部の耐パンク性能が高いことを示す。
【0048】
(燃費性能)
各試験タイヤを正規リムにリム組みするとともに、空気圧230kPaを充填して、排気量1800CCのセダン型車両に装着した。次いで、正規荷重が負荷された状態で、全長2kmのテストコースにて、この車両を速度100km/hで走行させ、ガソリン1リットル当たりの走行距離を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど燃費性能が高いことを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(2層構造のチューブの特定領域へ充填する材料について限定を加えている)実施例1から実施例6のチューブ式タイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属さない、従来例の空気入りタイヤよりも、少なくとも踏面部の耐パンク性能に優れていることが判る。
【符号の説明】
【0051】
10 チューブ式タイヤ
12 タイヤ本体
14 チューブ
141 第1室
142 第2室
14a 隔壁
A ビード部
B サイドウォール部
C ショルダー部
CL タイヤ赤道面
D トレッド部
T1 第1室141の最大厚み
T2 タイヤ本体12のトレッド最大厚み
t1 トレッド対応領域の平均厚み
t2 ショルダー対応領域の平均厚み
t3 サイドウォール対応領域の平均厚み
t4 ビード対応領域の平均厚み
V1、V2 逆止弁
図1