(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379734
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】テープ張力制御方法およびテープ巻き線材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/182 20060101AFI20180820BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20180820BHJP
B65H 26/00 20060101ALI20180820BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20180820BHJP
B65H 81/08 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B65H23/182
H01B13/00 F
H01B13/00 501G
B65H26/00
B65H75/14
B65H81/08
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-132442(P2014-132442)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11173(P2016-11173A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100131037
【弁理士】
【氏名又は名称】坪井 健児
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 武泰
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−111758(JP,U)
【文献】
特開平07−172683(JP,A)
【文献】
特開2000−185879(JP,A)
【文献】
実開昭52−094185(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/18−23/198
B65H 26/00−26/08
B65H 75/00−75/32
B65H 81/00−81/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープが巻回されたテープリールを回転させて前記テープを前記テープリールから繰り出し、前記テープリールの回転軸のトルクを制御して前記テープリールから繰り出される前記テープの張力を制御するテープ張力制御方法であって、前記テープリールとは同方向に個別に回転駆動されるテープ巻きフライヤ基板に設けたフライヤによって前記テープリールを繰り出し、前記テープリ−ルの鍔部に、前記鍔部の周方向に部分的に光反射部を設け、前記鍔部が回転するときに、前記光反射部に光を照射して、反射光を前記フライヤ基板側に設けた光センサで検出し、検出された反射光の周期に基づいて前記テープリールの回転数を計算し、該計算したテープリールの回転数に基づいてテープリールのテープの巻径を計算し、該計算したテープの巻き径に応じて予め定めたトルクを前記テープリールの回転軸に付与する、テープ張力制御方法。
【請求項2】
前記テープリールの回転軸に付与するトルクは、前記回転軸を駆動する駆動トルクに対して、ブレーキトルクとして作用するトルクである、請求項1に記載のテープ張力制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテープ張力制御方法により張力を制御して電線またはケーブルに前記テープを巻き付けるテープ巻き線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ張力制御方法にし、より具体的には、テープリールから繰り出したテープを導体の外周に巻回するときのテープの張力制御方法、およびテープ張力制御方法により張力制御したテープを線材に巻き付けるテープ巻き線材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導体による心線等の線材の周囲に、絶縁テープ等のテープを巻回するテープ巻付装置が知られている。このテープ巻付装置では、予めテープを巻回したテープリールからテープを繰り出して、走行する線材の周囲に連続的に巻回する。このときに、テープの張力が一定になっていないと、テープの巻き付け形状にばらつきが生じ、テープ部分の誘電率に影響が生じる。
【0003】
線材にテープを巻回するときのテープの張力制御に関し、例えば特許文献1には、テープが巻回されているテープパッド(テープリール)からテープが繰り出されるに従って、テープパッドの回転軸トルクを斬減させる制御を行うことで、テープの繰出し張力を一定にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−202495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、駆動モータの回転に応じて発生したパルスを基準にして所要の軸トルクを算出することで、テープが減る量に合わせてテープリールにかかる軸トルクを自動的に漸減させる制御を行っている。
しかしながら、正確なテープの張力制御を行うためには、テープが繰り出されて変化するテープの巻径をより正確に検知し、これに基づいて張力制御を行うことが重要となる。
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、線材の周囲に連続的にテープを巻回する際に、テープに付与する張力を調整することが可能なテープ張力制御方法と、そのテープ張力制御方法により張力制御したテープを線材に巻き付けるテープ巻き線材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるテープ張力制御方法は、テープが巻回されたテープリールを回転させて前記テープを前記テープリールから繰り出し、前記テープリールの回転軸のトルクを制御して前記テープリールから繰り出される前記テープの張力を制御するテープ張力制御方法であって、
前記テープリールとは同方向に個別に回転駆動されるテープ巻きフライヤ基板に設けたフライヤによって前記テープリールを繰り出し、前記テープリ−ルの鍔部に、前記鍔部の周方向に部分的に光反射部を設け、前記鍔部が回転するときに、前記光反射部に光を照射して、反射光を
前記フライヤ基板側に設けた光センサで検出し、検出された反射光の周期に基づいて前記テープリールの回転数を計算し、該計算したテープリールの回転数に基づいてテープリールのテープの巻径を計算し、該計算したテープの巻き径に応じて予め定めたトルクを前記テープリールの回転軸に付与する、テープ張力制御方法である。
【0008】
本発明によるテープ巻き線材の製造方法は、上記のテープ張力制御方法により張力を制御して電線またはケーブルに前記テープを巻き付けるテープ巻き線材の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、線材の周囲に連続的にテープを巻回する際に、テープに付与する張力を調整することが可能なテープ張力制御方法と、そのテープ張力制御方法により張力制御したテープを線材に巻き付けるテープ巻き線材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明を適用するテープ巻き付け装置の要部の構成を概略的に示す図である。
【
図1B】本発明を適用するテープ巻き付け装置の要部の構成を概略的に示す他の図である。
【
図2】光電センサの出力信号に基づきテープの張力制御を行うための構成を示すブロック図である。
【
図3】シーケンサによる回転検出原理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】ヒステリシスブレーキのブレーキトルクを制御するブレーキ電圧の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本願のテープ張力制御方法は、テープが巻回されたテープリールを回転させて前記テープを前記テープリールから繰り出し、前記テープリールの回転軸のトルクを制御して前記テープリールから繰り出される前記テープの張力を制御するテープ張力制御方法であって、
前記テープリールとは同方向に個別に回転駆動されるテープ巻きフライヤ基板に設けたフライヤによって前記テープリールを繰り出し、前記テープリ−ルの鍔部に、前記鍔部の周方向に部分的に光反射部を設け、前記鍔部が回転するときに、前記光反射部に光を照射して、反射光を
前記フライヤ基板側に設けた光センサで検出し、検出された反射光の周期に基づいて前記テープリールの回転数を計算し、該計算したテープリールの回転数に基づいてテープリールのテープの巻径を計算し、該計算したテープの巻き径に応じて予め定めたトルクを前記テープリールの回転軸に付与する、テープ張力制御方法である。これにより、線材の周囲に連続的にテープを巻回する際に、テープに付与する張力を調整することが可能となる。
【0012】
(2)前記テープリールの回転軸に付与するトルクは、前記回転軸を駆動する駆動トルクに対して、ブレーキトルクとして作用するトルクであることが好ましい。これによりトルク制御に好適な具体的構成が得られる。
【0013】
(3)本願のテープ巻き線材の製造方法は、上記のテープ張力制御方法により張力を制御して電線またはケーブルに前記テープを巻き付けるテープ巻き線材の製造方法である。これにより、電線またはケーブルの周囲に連続的にテープを巻回してテープ巻き線材を製造する際に、テープに付与する張力を調整することが可能となる。
【0014】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明に係るテープ張力制御方法およびテープ巻き線材の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0015】
図1Aおよび
図1Bは、本発明のテープ張力制御方法と、このテープ張力制御方法により線材にテープを巻き付けるテープ巻き線材の製造方法とを適用するテープ巻き付け装置の要部の構成を概略的に示す図で、
図1Aはテープ巻き付け装置の側面概略図、
図1Bは
図1Aの鍔部15を斜めから見た斜視概略図である。
図1A及び
図1Bにおいて、1はテープ巻き付け装置、10は線材、11はテープ、12はテープ巻き線材、13はテープリール、14はテープリール軸、15は鍔部、16はテープ巻きフライヤ基板、17はフライヤ、18はヒステリシスブレーキ、19は反射テープ、20は光電センサ、21は窓である。
【0016】
テープ巻き付け装置1は、所定の速度で走行する線材10に一定のピッチでテープ11を巻付けて、線材10をテープ11で被覆したテープ巻き線材12を製造する装置である。線材10としては例えば細径の裸の導電線、絶縁被覆が施された導電線または最外層がシールド層になっているシールド電線等が適用される。また、テープ11としては、紙または樹脂等の絶縁テープ、樹脂基材に金属箔を貼り付けまたは蒸着してなる金属箔テープなどが用いられ、例えば厚さ数十μmの細幅のテープ等、種々のものが用いられる。
【0017】
テープ巻付け装置1は、テープリール軸14がその軸心を回転中心として回転可能に支持される。テープリール軸14には、テープ11が巻回されたテープリール13を支持するための鍔部15が取り付けられている。そしてテープリール13が、テープリール軸14に装着されて固定される。従って、鍔部15は、テープリール13とともにテープリール軸14を軸心として回転する。
テープリール軸14の中心には、その軸心の長手方向に貫通する挿通孔が形成されていて、この挿通孔に対して線材10を挿通させて、走行させる。
【0018】
テープ巻きフライヤ基板16は、テープリール軸14の軸心方向上流側(線材10の供給側)で、線材10の走行路を回転中心にして回転可能に支持されている。テープ巻きフライヤ基板16の外側端部には、自由回転可能なフライヤ17が設けられる。
テープリール軸14に装着されたテープリール13から繰り出されたテープ11は、フライヤ17の外側でターンして、線材10に対して一定の角度で巻き付けられる。
【0019】
テープリール軸14と、テープ巻きフライヤ基板16は、それぞれ個別に回転できるように図示しない駆動モータにより駆動される。テープリール軸14は、線材10の走行路を軸心として回転しながらテープリール軸14に装着されたテープリール13からテープを繰り出す。フライヤ17は、テープリール軸14の周りを旋回するように回転し、軸方向に走行する線材10の周りにテープ11を螺旋状に巻付ける。テープリール軸14とテープ巻きフライヤ基板16とは、それぞれ個別に回転駆動され、異なる速度で同方向に回転する。回転速度の違いは、テープリール13の径とフライヤ17の回転軌跡の径とが異なることによる。テープリール軸14は、一定の駆動トルクで回転駆動される。
線材10にテープ11が巻き付けられたテープ巻き線材12は、その後図示しない引取り装置によって一定の走行速度で引き取られ、巻取りリールに巻き取られる。
【0020】
上記の構成で、テープリール13に巻かれているテープ11のテープ巻径は、線材10への巻付けが進むにしたがって次第に減少していくため、テープリール13から繰り出されるテープの張力が変化する。すなわち、テープリール軸14は一定トルクで駆動されているため、テープ巻き径が小さくなるほどテープ張力が大きくなる。テープ張力が大き過ぎるとテープが破断し、弱過ぎると線材への巻付けに弛みが生じる。このため、テープ張力は、予め設定した所定の張力で一定に制御される必要がある。
【0021】
本発明に係る実施形態では、テープリール軸14に対してブレーキトルクを付与するヒステリシスブレーキ18と、テープリール13の回転を検出するための光電センサ20とを備える。また、光電センサ20によりテープリール13の回転数を検出するために、テープリール13を支持する鍔部15に対して、その周方向に部分的に反射テープ19を貼り付ける。
【0022】
光電センサ20は、本発明の光センサに相当するもので、LED等の投光素子とフォトダイオードによる受光素子とを有し、投光素子から出射させた光の反射光を受光素子で受けて、その受光量に応じて変化する電気信号を出力する。発光部と受光部を分けてもよい。フライヤ基板16に穴を明けてフライヤ基板16の外(
図1Aでは、フライヤー基板16の左側)に光電センサ20を設置してもよい。
ここでは
図1Aに示すように、フライヤ基板16に貫通孔である窓21を設ける。窓21の位置は、光電センサ20からの出射光が照射される位置
とする。
反射テープ19は、本発明の光反射部に相当するものであり、鍔部15の周方向のうちの一部分に貼付され、鍔部15が回転するとき、光電センサ20は、反射テープ19が貼付されている部分の反射光と、貼付されていない部分の反射光とをその回転に同期して交互に検出し、周期的なパルス信号を出力する。これに基づきテープリール13の回転数を演算することができる。
【0023】
ヒステリシスブレーキ18は、テープリール軸14に対して透磁率の高い磁性体による回転リングを配設し、回転リングを非接触で挟むヨークに流れる磁束がその回転リングを貫くことにより、回転リングとヨークとの間に磁気摩擦を生じさせ、ブレーキとして差動させるものである。ヒステリシスブレーキ18は、機械的接触がなく励磁電流に対応したトルクが得られるためトルク制御に好適な構成となる。
ここでは光電センサ20の出力信号に基づいて演算されたテープリール13の回転数と、テープ厚みとからテープリールの径を計算し、その径に従ってヒステリシスブレーキ18によるブレーキトルクを制御することにより、テープ張力を所定の一定値に維持させることができる。
【0024】
図2は、
図1のテープ巻き付け装置において、光電センサの出力信号に基づきテープの張力制御を行うための構成を示すブロック図である。
光電センサ20からの出力信号は、制御部30を構成するシーケンサ31に入力する。ここではシーケンサ31は、光電センサ20からの出力信号に基づき、テープリール13の回転を検出し、演算する。
【0025】
図3のタイミングチャートによりシーケンサ31による回転検出原理を説明する。ここでは光電センサはパルス変調光を採用し、一定周期で投光素子からの投光を繰り返す(図示(A))。
反射テープ19の反射光と、反射テープ19がない部分の反射光との光量の差異により、反射テープ19により反射された期間を検出する(図示(B))。そして反射テープの検出期間の1周期が、鍔部15と一体的に回転するテープリール13の1回転期間に相当する。シーケンサ31は、この1回転期間を計測しテープリール13の巻径を演算する。(図示(C))。
【0026】
図2の制御部30では、シーケンサ31から出力された張力指令信号が張力コントローラ32に入力される。張力コントローラ32は、入力された張力指令信号に基づいて、ヒステリシスブレーキ18のブレーキトルクを制御する。
ここでは、シーケンサ31には、テープリール13の初期状態における外径(テープ巻径)と、テープの厚さとが予め設定される。シーケンサ31が初期状態のテープ巻径およびテープ厚とを使用して、現在のテープ巻径を演算し、これに基づきヒステリシスブレーキのブレーキトルクを制御する張力指令を張力コントローラ32に与え、張力コントローラ32がブレーキ電圧を出力し、テープリール13から繰り出されるテープの張力を一定にする。
【0027】
ヒステリシスブレーキ18のブレーキトルクを制御するブレーキ電圧は、例えば
図4のように制御される。テープリール軸14が一定の駆動トルクで回転しているとき、テープリール13のテープ巻径が小さくなるほど、テープリール13から繰り出されるテープの張力が大きくなる。
従って、テープ巻径が大きいほど、ブレーキ電圧を大きくしてテープリール軸14へのブレーキトルクを大きくし、相対的にテープの張力を大きくしておく。
図4の巻径fの位置は、テープリール13が初期状態のときのブレーキ電圧を示している。図示されるbは、巻き径に応じてブレーキ電圧を変化させる範囲であり、aはテープリール13の芯径に相当する範囲で、巻径にかかわらずブレーキ電圧が一定となる範囲である。
【0028】
そしてテープが巻き出されてテープ巻径が小さくなるに従って、ブレーキ電圧を漸減させていくことで、テープリール軸へのブレーキトルクを小さくし、本来テープ巻径が小さくなるに従って増大するテープの張力をブレーキトルクを小さくすることによって補償し、テープ巻径にかかわらず常に一定のテープ張力でテープを繰り出すことができるようにする。
【0029】
また、張力コントローラ32では、ヒステリシスブレーキ18のブレーキ電圧を出力するときに、所定の加減速パラメータに基づき加減速補正を行ってもよい。加減速補正を行うことにより、ブレーキトルクの急激な変動を抑えて、テープ張力の安定化を図るようにする。
【0030】
また、上記の光電センサ20による巻径を用いて、テープリール13に巻かれているテープ残量を精度良く監視することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…テープ巻き付け装置、10…線材、11…テープ、12…テープ巻き線材、13…テープリール、14…テープリール軸、15…鍔部、16…フライヤ基板、17…フライヤ、18…ヒステリシスブレーキ、19…反射テープ、20…光電センサ、21…窓、30…制御部、31…シーケンサ、32…張力コントローラ。