(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379737
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-133161(P2014-133161)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-12456(P2016-12456A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
【審査官】
小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−160347(JP,A)
【文献】
特開2014−093146(JP,A)
【文献】
特開2015−138753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルと、
被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられた非固定端とを有するとともに、前記複数の電池セルを並設方向の両側から挟持するエンドプレートと、
前記エンドプレートと前記電池セルとの間に設けられて、前記電池セルの膨張を弾性変形により吸収する弾性部材と、
各エンドプレートに互いに近付く方向に荷重を加えている加圧部材と、を備えた電池モジュールであって、
前記エンドプレートから前記弾性部材への拘束荷重は、前記固定端側からの拘束荷重に比べて前記非固定端側からの拘束荷重のほうが小さく、
前記弾性部材は、低弾性部と、前記低弾性部と並んで設けられ、前記低弾性部よりも弾性率の高い高弾性部とを有し、
前記低弾性部が前記固定端側に位置し、前記高弾性部が前記非固定端側に位置している電池モジュール。
【請求項2】
前記低弾性部と、前記高弾性部とは弾性率の異なる異種材料である請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備える電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の電極は、充放電に伴い膨張と収縮を繰り返す。電極の膨張と収縮が繰り返されると、電極同士の間隔が大きくなったり、電極が歪むことで二次電池の抵抗値が大きくなる。
【0003】
特許文献1では、複数の電池セル(電池素子)が並んで設けられている。複数の電池セルは正極と、負極と、正極と負極との間に設けられたセパレータとを有している。複数の電池セルは、エンドプレート(樹脂)によって挟み込まれており、エンドプレートは、電池セルの膨張を抑制するように正極若しくは負極からセパレータへ加圧力を付与している。これにより、正極と負極との間隔が大きくなったり、正極や負極が歪むことが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−26090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンドプレートからの拘束荷重が電池セルの一部分に集中するなど、電池セルに加わる拘束荷重に偏りが生じていると、電池セルの劣化(リチウムイオン電池であればリチウムの析出など)を招くため、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電池モジュールは、並設された複数の電池セルと、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられた非固定端とを有するとともに、前記複数の電池セルを並設方向の両側から挟持するエンドプレートと、前記エンドプレートと前記電池セルとの間に設けられて、前記電池セルの膨張を弾性変形により吸収する弾性部材と、各エンドプレートに互いに近付く方向に荷重を加えている加圧部材と、を備えた電池モジュールであって、
前記エンドプレートから前記弾性部材への拘束荷重は、前記固定端側からの拘束荷重に比べて前記非固定端側からの拘束荷重のほうが小さく、前記弾性部材は、低弾性部と、前記低弾性部と並んで設けられ、前記低弾性部よりも弾性率の高い高弾性部とを有し、前記低弾性部が前記固定端側に位置し、前記高弾性部が前記非固定端側に位置している。
【0008】
これによれば、電池セルが膨張すると、エンドプレートには弾性部材を介して荷重が加わる。このとき、エンドプレートの固定端は、被固定部材に固定されている一方で、非固定端は被固定部材に固定されていないため、エンドプレートは、非固定端が弾性部材(電池セル)から離間するように変形する。すると、エンドプレートから弾性部材への拘束荷重は、固定端側からの拘束荷重に比べて非固定端側からの拘束荷重のほうが小さくなる。しかしながら、固定端側には低弾性部が位置し、非固定端側には高弾性部が位置しているため、拘束荷重の大きい固定端側からの荷重は低弾性部の弾性変形によって多く吸収され、拘束荷重の小さい非固定端側からの荷重は高弾性部が弾性変形しにくく、電池セルに均等に荷重が加わりやすい。したがって、エンドプレートから電池セルへの拘束荷重の偏りを小さくすることができる。
【0009】
上記電池モジュールについて、前記低弾性部と、前記高弾性部とは弾性率の異なる異種材料であることが好ましい。
これによれば、弾性部材を容易に構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】筐体に収容された電池モジュールを示す斜視図。
【
図2】筐体に収容された電池モジュールを示す一部破断断面図。
【
図3】エンドプレートが変形した状態の電池モジュールを示す一部破断断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電池モジュールの一実施形態について説明する。
図1に示すように、電池モジュール10は、被固定部材としての筐体41に収容されている。電池モジュール10は、並設された複数の電池セル11と、電池セル11を並設方向の両側から挟持するエンドプレート12,13とを有している。各電池セル11は、それぞれ個別の電池ホルダ42に保持されている。電池セル11は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。本実施形態のエンドプレート12,13は、略L字状に形成され、板材を折り曲げ加工したものであり、電池セル11を挟持する板状の挟持部14と、筐体41に電池モジュール10を固定するための板状の固定部15とを有している。本実施形態では、挟持部14は矩形状であり、固定部15は挟持部14の長手方向第1端部16から挟持部14の厚み方向に延びている。挟持部14の短手方向の両端部には、それぞれ、挟持部14の短手方向に向けて突出する挿通部18が設けられている。
【0013】
各エンドプレート12,13のうち、一方を第1のエンドプレート12とし、第1のエンドプレート12とは異なるエンドプレート13を第2のエンドプレート13とすると、第1のエンドプレート12と、第1のエンドプレート12に隣り合う電池セル11との間には弾性部材31が設けられている。弾性部材31は、板状であり、厚み方向が電池セル11の並設方向と一致している。
【0014】
第2のエンドプレート13の挿通部18には、第1のエンドプレート12の挿通部18に向けてボルト19が挿通されている。第2のエンドプレート13の挿通部18を挿通したボルト19には、第1のエンドプレート12の挿通部18を挿通した位置でナット20が螺合されている。これにより、第1のエンドプレート12及び第2のエンドプレート13には、互いに近付く方向に拘束荷重が加わっている。この拘束荷重は、電池セル11及び弾性部材31に付与されている。したがって、ボルト19及びナット20が加圧部材として機能している。
【0015】
図2に示すように、電池セル11は、ケース21の内部に電極組立体22を有している。電極組立体22は、正負の電極の間にセパレータを介在させたものである。
弾性部材31は、低弾性部材32と、低弾性部材32よりも弾性率の高い高弾性部材33とを有している。低弾性部材32と、高弾性部材33とはともに矩形板状である。弾性部材31は、低弾性部材32と高弾性部材33とを並べて一体化したものである。低弾性部材32は、弾性部材31の低弾性部を構成し、高弾性部材33は弾性部材31の高弾性部を構成している。低弾性部材32は、例えば、ゴムスポンジなどであり、高弾性部材33は、例えばゴムなどである。すなわち、低弾性部材32と、高弾性部材33とは、弾性率の異なる異種材料である。異種材料には、材質が同じであり、発泡率が異なるゴムスポンジなども含まれる。弾性部材31は、低弾性部材32が挟持部14の長手方向第1端部16側に位置し、高弾性部材33が長手方向第1端部16とは反対側の挟持部14の長手方向第2端部17側に位置するように配置されている。
【0016】
そして、上記した電池モジュール10の各エンドプレート12,13の固定部15は、固定ボルト43によって筐体41の壁面に固定されている。したがって、各エンドプレート12,13における被固定部材に固定される固定端は、固定部15が設けられた挟持部14の長手方向第1端部16である。また、挟持部14の長手方向第2端部17は、筐体41に固定されておらず非固定端となっている。
【0017】
次に、本実施形態の電池モジュール10の作用について説明する。
電池セル11の電極には、使用に伴って被膜が形成されていき、使用期間が長くなるにつれて電池セル11が膨張していく。電池セル11が膨張すると、隣り合う電池セル11同士は互いに押し合う。すると、各電池セル11には電池セル11の並設方向に向けた力が作用する。第1のエンドプレート12と、第1のエンドプレート12に隣り合う電池セル11との間に弾性部材31を設けることで、電池セル11の膨張を弾性変形によって吸収して、電池セル11の膨張に伴う各エンドプレート12,13への荷重の増加を抑制している。
【0018】
第1のエンドプレート12には、弾性部材31を介して荷重が加わる。第1のエンドプレート12の挟持部14は、長手方向第1端部16が筐体41に固定されており、長手方向第2端部17が筐体41に固定されていないため、長手方向第2端部17側が弾性部材31から離れる方向に移動しやすい。
【0019】
図3に示すように、第1のエンドプレート12は、固定部15と挟持部14との境目を基点として挟持部14の長手方向第2端部17が弾性部材31から離れるように変形する。すると、挟持部14の長手方向第2端部17側から弾性部材31に加わる拘束荷重が、長手方向第1端部16側に比べて小さくなる。挟持部14の長手方向第1端部16側の部位と、電池セル11との間には、低弾性部材32が設けられ、挟持部14の長手方向第2端部17側の部位と、電池セル11との間には、高弾性部材33が設けられている。高弾性部材33は、低弾性部材32に比べて弾性変形しにくいため、高弾性部材33に加わった拘束荷重は高弾性部材33に吸収されにくく、低弾性部材32に加わった拘束荷重は、低弾性部材32が弾性変形することで低弾性部材32に吸収されやすい。
【0020】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)弾性部材31の低弾性部材32は、挟持部14の長手方向第1端部16側に位置し、高弾性部材33は挟持部14の長手方向第2端部17側に位置している。低弾性部材32は弾性変形しやすく、拘束荷重を吸収しやすいが、高弾性部材33は弾性変形しにくく、拘束荷重を吸収しにくいため、挟持部14の長手方向第2端部17が弾性部材31から離間するように変形しても、電池セル11に加わる拘束荷重の偏りが小さい。このため、電池セル11の劣化が抑制される。
【0021】
(2)低弾性部材32と、高弾性部材33とは、弾性率の異なる異種材料であるため、同一の弾性率の材料の配置などを調整することで低弾性部と高弾性部を設ける場合に比べて、弾性部材31を容易に構成することができる。
【0022】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図4に示すように、弾性部材31は、それぞれが分離して設けられた複数の弾性体35であってもよい。各弾性体35は、全て同一の部材であり、挟持部14の長手方向に沿って複数設けられている。弾性体35は、短辺が電池セル11に接し、長辺が第1のエンドプレート12に接するような台形状である。そして、弾性体35は、隣り合う弾性体35同士の間隔が、挟持部14の長手方向第1端部16側に比べて、挟持部14の長手方向第2端部17側が短くなっている。すなわち、弾性体35は、挟持部14の長手方向第1端部16側に比べて、挟持部14の長手方向第2端部17側の方が密に配置されている。そして、弾性体35が疎に配置された部分は、低弾性部を構成し、弾性体35が密に配置された部分は、弾性体35が疎に配置された部分に比べて弾性率が高くなり、高弾性部を構成している。この場合、同一の弾性体35を用いて低弾性部と高弾性部を構成することができ、部品点数が少なくなる。また、弾性体35を台形にすることで、弾性体35の弾性変形時に、弾性体が傾きにくい。なお、弾性体35は、短辺が第1のエンドプレート12に接し、長辺が電池セル11に接するような台形状でもよい。
【0023】
○低弾性部と、高弾性部とは、弾性率の異なるバネなどでもよい。
○低弾性部材32と、高弾性部材33は異なる形状であってもよい。
○弾性部材31は、第1のエンドプレート12と電池セル11との間に加えて、第2のエンドプレート13と電池セル11との間に設けられていてもよい。
【0024】
○エンドプレート12,13は、固定部15に換えて、別体の固定部材によって筐体41に固定されていてもよい。固定部材は、挟持部14の長手方向第1端部16側に固定される。この場合であっても、固定部材が筐体41の壁面に固定されることで、挟持部14の長手方向第1端部16は、弾性部材31から離間しにくく、長手方向第2端部17は弾性部材31から離間しやすい。
【0025】
○被固定部材は、産業車両に搭載されるカウンタウェイトなどであってもよい。
○弾性部材31は、弾性率の異なる弾性部を3種類以上有していてもよい。例えば、挟持部14の長手方向第1端部16と電池セル11との間の部分から、挟持部14の長手方向第2端部17と電池セル11との間の部分に向けて徐々に弾性率が高くなるように弾性部が設けられていてもよい。
【0026】
○各電池セル11間に電池セル11を加圧するための加圧プレートを設けてもよい。
○加圧部材は、第1のエンドプレート12から第2のエンドプレート13まで延びてそれぞれのエンドプレート12,13に固定される金属製のバンドであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10…電池モジュール、11…電池セル、12,13…エンドプレート、16…長手方向第1端部、17…長手方向第2端部、19…ボルト、20…ナット、31…弾性部材、32…低弾性部材、33…高弾性部材、41…筐体。