(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘッドプーリーとテールプーリーとの間に張設される無端のコンベヤベルトと、該コンベヤベルトにおけるヘッドプーリーからテールプーリーに向かうリターン部分に設置され、前記コンベヤベルトの余長分を収納するベルトストレージカセットとを備え、前記テールプーリーの移動により搬送部分の延伸が可能なベルトコンベヤ装置であって、
前記ベルトストレージカセットから前記コンベヤベルトを引き出す引出装置と、引き出した前記コンベヤベルトを一時的に貯留する貯留空間とを有するコンベヤベルト引出機構、及び前記テールプーリーを支持するテールピース台車を有し、
前記コンベヤベルト引出機構が、前記ベルトストレージカセットと前記テールプーリーとの間に設置され、
該コンベヤベルト引出機構の貯留空間に貯留された前記コンベヤベルトが、前記テールピース台車による前記テールプーリーの移動により引き出されることを特徴とするベルトコンベヤ装置。
前記引出装置が、前記ベルトストレージカセットから前記コンベヤベルトを引き出す方向と、引き出したコンベヤベルトを前記テールプーリーに向かうリターン部分に戻す方向とに移動可能な移動台車を有し、該移動台車に前記コンベヤベルトを方向転換させるための第1の固定プーリーを備えるとともに、
前記ベルトストレージカセットと前記貯留空間との間に、前記コンベヤベルトをクランプする第1のクランプ機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤ装置。
前記貯留空間と前記テールプーリーとの間に位置する前記コンベヤベルトをクランプする第2のクランプ機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のベルトコンベヤ装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤を掘削した際に発生する掘削ズリを搬出する手段として、ベルトコンベヤ装置を用いる方法が知られている。特に、施工延長の長いトンネルの現場では、トンネル掘削機の掘進に伴って、搬送部分を延伸することが可能なベルトコンベヤ装置を採用し、掘削ズリをトンネル坑外に排出する。
このようなベルトコンベヤ装置は、ベルトコンベヤ本体と、トンネル内の切羽F付近に設置され、コンベヤベルトを折り返すためのテールピース部と、トンネルの坑口側に配置され、コンベヤベルトの余長部を収納するベルトストレージカセットとを備えており、トンネル掘削機の掘進に合わせてテールピース部を切羽F側へ前進させることにより、ベルトストレージカセットからコンベヤベルトを引き出して前記ベルトコンベヤ本体の搬送部分を延伸するものである。
【0003】
そして、引用文献1には、テールピース部を切羽F側へ前進させるための装置であって、テールピース部が載置されるとともにアウトリガを備えた架台と、該架台を切羽F側へ相対移動可能に支持する支持台と、該支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、切羽F側へ架台と支持台とを相対的に移動させるための駆動装置とを備えるテールピース台車が開示されている。
該テールピース台車は、前記支持台に対して架台を切羽F側へ相対移動させた後、該架台をアウトリガにて地盤に支持させ、次に前記架台に対して支持台を切羽F側へ相対移動させる動作を繰り返すことで切羽F側へ前進し、これに伴いベルトストレージカセットからコンベヤベルトを引き出すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、施工しようとするトンネルの全長が長い場合、掘進に伴って切羽Fと坑口との距離が長くなり、ベルトコンベヤ装置の必要長も長くなるため、コンベヤベルトに作用する張力も増大する。これにより、前記テールピース台車を前進させることのみでは、トンネルの坑口側に配置されるベルトストレージカセットからベルトを引出すために必要な牽引力を確保できない場合が生じ、テールピース台車に重機等を連結して牽引力を付加する必要があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、テールピース台車の牽引力に左右されることなく、ベルトコンベヤ装置の搬送部分を延伸することが可能なベルトコンベヤ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため本発明のベルトコンベヤ装置は、ヘッドプーリーとテールプーリーとの間に張設される無端のコンベヤベルトと、該コンベヤベルトにおけるヘッドプーリーからテールプーリーに向かうリターン部分に設置され、前記コンベヤベルトの余長分を収納するベルトストレージカセットとを備え、前記テールプーリーの移動により搬送部分の延伸が可能なベルトコンベヤ装置であって、前記ベルトストレージカセットから前記コンベヤベルトを引き出す引出装置と、引き出した前記コンベヤベルトを一時的に貯留する貯留空間とを有するコンベヤベルト引出機構、
及び前記テールプーリーを支持するテールピース台車を有し、前記コンベヤベルト引出機構が、前記ベルトストレージカセットと前記テールプーリーとの間に設置され、
該コンベヤベルト引出機構の貯留空間に貯留された前記コンベヤベルトが、前記テールピース台車による前記テールプーリーの移動により引き出されることを特徴とする。
【0008】
上記のベルトコンベヤ装置によれば、コンベヤベルト引出機構の引出装置にてベルトストレージカセットから一定量のコンベヤベルトを引出し、引出した分のコンベヤベルトをコンベヤベルト引出機構の貯留空間に一時的に貯留する。このため、テールプーリーを支持するテールピース台車を前進させることにより引き出すコンベヤベルトは、前記コンベヤベルト引出機構の貯留空間に一時貯留されているコンベヤベルトとなる。これにより、掘進するに従いベルトコンベヤ装置の必要長が長くなる場合であっても、テールピース台車にて確保できる牽引力に応じて、コンベヤベルト引出機構とテールピース台車との距離を調整することで、テールピース台車のみの牽引力にて、ベルトコンベヤ装置の搬送部分を延長することが可能となる。
【0009】
本発明のベルトコンベヤ装置は、前記引出装置が、ベルトストレージカセットから前記コンベヤベルトを引き出す方向と、引き出したコンベヤベルトをテールプーリーに向かうリターン部分に戻す方向とに移動可能な移動台車を有し、該移動台車に前記コンベヤベルトを方向転換させるための第1の固定プーリーを備えるとともに、前記ベルトストレージカセットと前記貯留空間との間に位置する前記コンベヤベルトをクランプする第1のクランプ機構を備えることを特徴とする。
【0010】
上記のベルトコンベヤ装置によれば、前記ベルトストレージカセットと前記貯留空間との間に位置する前記コンベヤベルトを第1のクランプ機構にてクランプすることができる。これにより、前記貯留空間に一時貯留したコンベヤベルトをテールプーリー側に送り出す際に、該テールプーリー側に位置するコンベヤベルトの張力を受けて移動台車が移動しても、ベルトストレージ側のコンベヤベルトにその張力が作用することを抑止することが可能となる。
【0011】
本発明のベルトコンベヤ装置は、前記コンベヤベルト引出機構が、前記第1の固定プーリーにて方向転換されるコンベヤベルトの張力を検出する張力検出装置と、該張力検出装置により検出される張力値とあらかじめ設定した張力基準値とを比較する検出値比較装置と、該検出値比較装置に接続されるとともに、前記検出される張力値を調整する張力調整装置とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記のベルトコンベヤ装置によれば、貯留空間に貯留しているコンベヤベルトの張力をコンベヤ引出機構にて管理できるため、移動台車の移動時においてもコンベヤベルトの張力を常に適正に維持することが可能となる。
【0013】
本発明のベルトコンベヤ装置は、前記貯留空間に、第2の固定プーリーを複数備えた固定架台を配置するとともに、前記移動台車に前記第1の固定プーリーを複数設置し、前記第1の固定プーリーと第2の固定プーリーとを架け渡すように前記コンベヤベルトを交互に方向転換することで、複数回折り返して貯留することを特徴とする。
【0014】
上記のベルトコンベヤ装置によれば、第1の固定プーリーと第2の固定プーリーの数量を適宜調整することで、狭小な貯留空間であっても所望量のコンベヤベルトを貯留することが可能となる。
【0015】
本発明のベルトコンベヤ装置は、前記貯留空間と前記テールプーリーとの間に位置する前記コンベヤベルトをクランプする第2のクランプ機構を備えることを特徴とする。
【0016】
上記のベルトコンベヤ装置によれば、前記テールプーリーと前記貯留空間との間に位置する前記コンベヤベルトを第2のクランプ機構にてクランプすることができる。これにより、ベルトストレージカセットからコンベヤベルトを引出す際に、前記テールプーリーと前記貯留空間との間に位置する前記コンベヤベルトに作用している張力が、移動台車に影響を及ぼさない。このため、ベルトストレージカセット側のコンベヤベルトに作用する張力より大きい引張力を駆動装置から移動台車に作用させるのみで、移動台車によりベルトストレージカセットからコンベヤベルトを容易に引き出すことができ、駆動装置の管理を容易にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベルトコンベヤ装置におけるベルトストレージカセットとテールプーリーとの中間にコンベヤベルト引出機構を配置し、コンベヤベルト引出機構にてベルトストレージカセットからコンベヤベルトを引出すため、テールプーリーを支持するテールピース台車の牽引力に左右されることなく、ベルトコンベヤ装置の搬送部分を延伸することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のベルトコンベヤ装置を、トンネル掘削機の掘進により発生した掘削ズリを搬送する場合を事例として
図1〜
図4を用いて説明する。
【0020】
ベルトコンベヤ装置1は、
図1の全体構成図で示すように、トンネルの切羽Fから坑口に向かって連続するベルトコンベヤ本体2と、ベルトコンベヤ本体2の切羽F側端部に配置されるテールピース台車3と、ベルトコンベヤ本体2のリターン部分における中間部に設置されるベルトストレージカセット4と、ベルトコンベヤ本体2のリターン部分における中間部であってベルトストレージカセット4より切羽F側に設置されるコンベヤベルト引出機構5とを備えている。
【0021】
ベルトコンベヤ本体2は、切羽F側に位置するテールプーリー3aと、坑口側に位置するヘッドプーリー2aにより張設される無端のコンベヤベルト12を備えるとともに、詳述はしないが、該コンベヤベルト12の上側を支持する複数のキャリアローラ、コンベヤベルト12の下側を支持する複数のリターンローラ、コンベヤベルト12の適宜位置に配置されたメインドライブ2bおよびブースタードライブ等、既知のベルトコンベヤが備えている装備を有している。
【0022】
このような構成のベルトコンベヤ本体2は、主にメインドライブ2bが駆動源となって前記コンベヤベルト12を移動させるものであり、該コンベヤベルト12の上側表面を掘削ズリの搬送部分として利用する。したがって、トンネル掘削機の掘進により切羽F側から発生した掘削ズリは、テールピース台車3を介してコンベヤベルトの搬送部分に投下され、坑口側に搬送される。
【0023】
なお、上述したヘッドプーリー2aやキャリアローラ、リターンローラ、メインドライブ2bおよびブースタードライブ等はいずれも、図示しないフレームに回転自在に軸支されている。また、テールプーリー3aは、テールピース台車3のテールピース部に回転自在に軸支されている。
【0024】
テールピース台車3は、本実施の形態において従来技術の特許文献1にて説明したテールピース台車を用いているが、必ずしもこれに限定されるものではない。掘削ズリの搬送等に使用されている既知の連続ベルトコンベヤに用いられており、切羽F側に向けて前進することが可能な装備を有するものであれば、いずれのテールピース台車3を用いてもよい。
【0025】
上述する構成のベルトコンベヤ本体2のリターン部分には、
図1の全体構成図で示すように、ベルトストレージカセット4と、コンベヤベルト引出機構5が配置されている。
【0026】
ベルトストレージカセット4は、ベルトコンベヤ本体2の搬送部分を延伸する際に引き出されるコンベヤベルト12の余長分が収納されており、本実施の形態では、省スペース化を図るため、コンベヤベルト12の余長分を縦方向に折り返す構造を有している。なお、ベルトストレージカセット4は、必ずしも上記の構成に限定されるものではなく、例えば、従来より採用されているベルトストレージカセットのように、コンベヤベルトの余長分を横方向に折り返す構造としてもよい。
また、ベルトストレージカセット4の配置位置は、ベルトコンベヤ本体2のリターン部分であって、ヘッドプーリー2aとテールプーリー3aとの中間に位置していれば、トンネルの施工延長やトンネル坑外の作業スペース等に応じて、トンネルの坑内もしくは坑外のいずれに配置してもよい。
【0027】
コンベヤベルト引出機構5は、ベルトストレージカセット4に格納されているコンベヤベルト12の余長分を引出すための装置であり、
図1の全体構成図で示すように、ベルトストレージカセット4とテールプーリー3aとの間に配置されている。そして、
図2の詳細図に示すように、ベルトストレージカセット4側に設置されるガイド架台6と、テールプーリー3a側に設置される引出装置7と、引出装置7とガイド架台6との間に配置されるクランプ装置11とを備えている。
【0028】
ガイド架台6は、コンベヤベルト本体2のリターン部分に位置するコンベヤベルト12をコンベヤベルト引出機構5に案内するための装置であり、リターン部分のコンベヤベルト12を方向転換させて、コンベヤベルト引出機構5に案内するための引入ガイドプーリー6a、6bと、コンベヤベルト引出機構5内のコンベヤベルト12を方向転換させて、テールプーリー3a側のリターン部分に戻すための引出ガイドプーリー6c、6dとを備えている。
【0029】
引出装置7は、コンベヤベルト12に引張力を付与するための装置であり、テールプーリー3a側に配置される駆動装置8と、駆動装置8とガイド架台6との間に配置される移動台車9と、移動台車9の移動方向を案内するレール10とを備えている。
【0030】
駆動装置8は、移動台車9を駆動装置8とガイド架台6との間で往復移動させるための駆動源であり、本実施の形態では油圧ジャッキを設置している。しかし、駆動源は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、
図4に示すような、ワイヤとプーリーによる牽引装置等、移動台車9を駆動装置8とガイド架台6との間で往復移動可能とするものであれば、既知のいずれの動力を用いてもよい。
移動台車9は、
図2の詳細図に示すように、駆動装置8を駆動源にして駆動装置8とガイド架台6との間を往復移動可能とする車輪9aを有しているとともに、引入ガイドプーリー6a、6bに案内されたコンベヤベルト12を引出ガイドプーリー6c、6dに向けて方向転換する第1の固定プーリー9bを備えている。
レール10は、駆動装置8とガイド架台6を連結するように配置されており、該レール10上を移動台車9が車輪9aにより往復移動する。そして、レール10上のガイド架台6側には、移動台車9のストッパ10aが設置されている。なお、レール10は移動台車9の走行性の向上と移動方向の制御を容易にするために採用したものであり、必ずしも設ける必要はない。
【0031】
クランプ装置11は、コンベヤベルト引出機構5が作動している際に、コンベヤベルト12の移動を規制するための装置であり、引入ガイドプーリー6a、6bにて案内されたコンベヤベルト12をクランプする第1のクランプ機構11aを備えている。第1のクランプ機構11aは、移動台車9がガイド架台6側から駆動装置8側に向けて移動するとき、開状態にしてコンベヤベルト12の移動を自由とするが、移動台車9が駆動装置8側からガイド架台6側に向けて移動するとき、引入ガイドプーリー6a、6bにて案内されたベルトコンベヤ本体12をクランプする。
【0032】
そして、
図3に示すように、移動台車9が駆動装置8側に停止しているとき、ストッパ10aと移動台車9との間に、コンベヤベルト12を一時的に貯留する貯留空間13が形成される。この貯留空間13には、クランプ装置11と移動台車9との最大離間距離Lの2倍の長さのコンベヤベルト12が貯留されることとなる。
【0033】
上記のとおり構成されるコンベヤベルト引出機構5の動作を、以下に説明する。
なお、ベルトコンベヤ本体2は、掘削ズリの搬送部分がテールプーリ3aからヘッドプーリー2aに向けて移動するように、コンベヤベルト12の搬送部にメインドライブ2bを設置して引張力を作用させる。これにより、リターン部分においてテールプーリ3a側に近い部分ほどコンベヤベルト12に大きな引張力が作用する。すなわち、コンベヤベルト引出機構5内では、ヘッドプーリー2aに近いベルトストレージカセット4側のコンベヤベルト12の張力と比較して、テールプーリー3a側のコンベヤベルト12の方に、大きな張力が生じている。
【0034】
コンベヤベルト引出機構5は、第1のクランプ機構11aを解放した状態で、テールプーリー3a側のコンベヤベルト12に作用している張力より小さく、かつベルトストレージ4側のコンベヤベルト12に作用している張力より大きい引張力を駆動装置8から移動台車9に作用させる。すると、
図3に示すように、駆動装置8の引張力が、テールプーリー3a側のコンベヤベルト12に作用する張力より小さく、かつベルトストレージ側の張力よりも大きいことで、移動台車9はガイド架台6側から駆動装置8側に向けて移動し、これに伴って、ベルトストレージカセット4からコンベヤベルトを引出しながら、この引出された分のコンベヤベルト12が引入ガイドプーリー6a、6bを介して貯留空間13に貯留される。
【0035】
次に、引入ガイドプーリー6a、6bに案内されたコンベヤベルト12を第1のクランプ機構11aにてクランプし、駆動装置8によるコンベヤベルト12の引出時の引張力を解除すると、貯留空間13に貯留しているコンベヤベルト12は、引出ガイドプーリー6c、6dを介してテールプーリー3a側に送り出されるようになるが、単に駆動装置8の引張力を解除するのみでは、貯留空間13に貯留しているコンベヤベルト12に緩みが生じることがある。このため、コンベヤベルト12に緩みが生じない程度の張力を保持させるよう駆動装置8による引張力を調整制御する必要がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、移動台車9の移動時においても貯留空間13に貯留しているコンベヤベルト12に弛みが生じることのないよう、コンベヤベルト引出機構5に
図3に示すような、張力検出装置15a、検出値比較装置15bおよび張力調整装置15cを装備している。
【0037】
張力検出装置15aは、移動台車9の第1の固定プーリー9bに装備され、前記貯留空間13に貯留されているコンベヤベルト12の張力を測定するものであり、ロードセルを内蔵してベルト反力から張力電圧を検出する。
検出値比較装置15bは、張力検出装置15aにて検出した張力電圧とあらかじめ設定した張力基準電圧とを比較するものであり、張力基準電圧は、ベルトコンベヤ装置1の稼働中にコンベヤベルト12が弛まないために必要な張力に基づいて設定する。
張力調整装置15cは、検出値比較装置15bと接続されており、張力検出装置15aにて検出した張力電圧が張力基準電圧を満足するよう、移動台車9に設けた第1の固定プーリー9bにて方向転換されるコンベヤベルト12に付与する張力を調整するものである。
【0038】
張力調整装置15cとしては、移動台車9に設けた第1の固定プーリー9bにて方向転換されるコンベヤベルト12に張力を付与できるものであればいずれの装置でもよい。例えば、駆動装置8にテークアップ機構を設置し、検出値比較装置15bをモニタリングしながら、テークアップ機構にて移動台車9の配置位置を微調整し、検出した張力電圧があらかじめ設定した張力基準電圧を満足するよう、自動制御する。
【0039】
なお、張力検出装置15a、検出値比較装置15bおよび張力調整装置15cは、上記の構成に特に限定されるものではなく、ベルトコンベヤやエンジンのタイミングベルト等の張力を調整する装置に使用されている既知の装置を使用すればよい。
【0040】
これらベルトコンベヤ装置1にて、前記ベルトコンベヤ本体2の搬送部分を延伸する手順を以下に説明する。
通常時は、
図2に示すように、コンベヤベルト引出機構5の移動台車9をガイド架台6側に位置させた状態で駆動装置8を停止し、また、第1のクランプ装置11aを解放状態にしておく。
【0041】
そして、トンネル掘削機による掘進が進行し、掘削ズリの搬送部分を延伸するときには、まず、テールピース台車3を停止させた状態で、移動台車9に対して駆動装置8からテールプーリー3a側のコンベヤベルト12に作用している張力より小さく、かつベルトストレージ4側のコンベヤベルト12に作用している張力より大きい引張力を作用させる。これにより、
図3に示すように、移動台車9がガイド架台6側から駆動装置8側に向けて移動するとともに、ベルトストレージカセット4からコンベヤベルトが引き出され、この引き出された分のコンベヤベルト12が貯留空間13に貯留される。
【0042】
次に、第1のクランプ機構11aにてコンベヤベルト12をクランプし、テールピース台車3を切羽F側に移動させるとともに、検出値比較装置15bにて貯留空間13に貯留されているコンベヤベルト12の張力をモニタリングし、該コンベヤベルト12に緩みが生じることのない程度の張力を保持させるよう、張力調整装置15cにてコンベヤベルト12の張力を調整しつつ、駆動装置8によるコンベヤベルト引出時の引張力を解除する。これにより、
図2に示すように、移動台車9は駆動装置8側からガイド架台6側に向けて移動するとともに、貯留空間13に貯留しているコンベヤベルト12が引出ガイドプーリー6c、6dを介してテールプーリー3a側に送り出され、掘削ズリの搬送部分が、クランプ装置11と移動台車9との最大離間距離Lと同じ長さだけ延伸する。
【0043】
なお、テールピース台車3の牽引力にて搬送部分の延伸が可能な場合には、コンベヤベルト引出機構5は作動させることなく、テールピース台車3の前進により、ベルトストレージカセット4よりコンベヤベルト12を引出してもよい。
【0044】
また、本発明のベルトコンベヤ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、本実施の形態では、クランプ装置11に第1のクランプ機構11aのみを搭載し、引入ガイドプーリー6a、6bに案内されたコンベヤベルト12をクランプする構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、
図4に示すように、クランプ装置11に第2のクランプ機構11bを追加して搭載し、引出ガイドプーリー6c、6dと貯留空間13との間に位置するコンベヤベルト12をクランプしてもよい。
【0046】
ベルトストレージカセット4からコンベヤベルト12を引出す際に、第2のクランプ機構11bにて、引出ガイドプーリー6c、6dの手前に位置するコンベヤベルト12をクランプすると、テールプーリー3a側のコンベヤベルト12に作用する張力が移動台車9に作用しない。このため、ベルトストレージ4側のコンベヤベルト12に作用する張力より大きい引張力を駆動装置8から移動台車9に作用させれば、移動台車9がガイド架台6側から駆動装置8側に向けて移動し、ベルトストレージカセット4からコンベヤベルト12を引き出すことができるため、駆動装置8の管理を容易にすることが可能となる。
【0047】
なお、上述の作業の際に、第1のクランプ機構11aを解放しておくことは当然である。また、貯留空間13に貯留したコンベヤベルト12をテールプーリー3a側に引き出す際には、引入ガイドプーリー6a、6bにて案内されたコンベヤベルト12を第1のクランプ機構11aでクランプし、第2のクランプ機構11bは開放しておく。
【0048】
また、本願実施の形態では、貯留空間13にストッパ10aと移動架台9との最大離間距離Lの2倍の長さのコンベヤベルト12が貯留できる構成としているが、これに限定されるものではない。
【0049】
例えば、
図4に示すように、クランプ装置11と移動台車9との間に固定架台14を設置し、固定架台14に複数の第2の固定プーリー14aを高さ方向に位置をずらして設置するともに、移動台車9にも複数の第1の固定プーリー9bを高さ方向に位置をずらして設置する。
そして、引入ガイドプーリー6a、6bを介して案内したコンベヤベルト12を、固定架台14の第2の固定プーリー14aと、移動台車9の第1の固定プーリー9bとに対して最下段から最上段に向けて順に方向転換させて折り返し、引出プーリー6c、6dにて再度方向転換して、テールプーリー3a側のリターン部分に戻す。
【0050】
これにより、貯留空間13に貯留できるコンベヤベルト12の長さは、固定架台14と移動台車9に取り付ける固定プーリーの数量によって調整できる。例えば、
図4に示すように、移動台車9に5つの第1の固定プーリー9bを設置し、これに対応してコンベヤベルト12を折り返すに足りる第2の固定プーリー14aを固定架台14に設置すると、固定架台14と移動台車9との最大離間距離L’の10倍に相当する長さのコンベヤベルト12を一時的に貯留することができる。
【0051】
上述したように本実施の形態のベルトコンベヤ装置は、コンベヤベルト引出機構5をベルトストレージカセット4とテールプーリー3との間に配置する。これにより、搬送部分を延伸する際に、テールプーリー3aを支持するテールピース台車3は、ベルトストレージカセット4よりも近くに配置されたコンベヤ引出機構5に一時貯留したコンベヤベルト12を引出せばよいため、ベルトストレージカセット4から直接コンベヤベルト12を引き出す場合と比較して、小さい牽引力でコンベヤベルト12を引出すことが可能となる。
【0052】
また、トンネル掘削機による掘進が進行してコンベヤベルト引出機構5とテールプーリー3aとの間に大きな距離が生じた場合には、コンベヤベルト引出機構5をテールプーリー3a側に移動させることで、テールピース台車3の牽引力を小さく抑えることが可能となる。