特許第6379769号(P6379769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6379769-空気調和装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379769
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 6/02 20060101AFI20180820BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20180820BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180820BHJP
   F25B 40/00 20060101ALI20180820BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20180820BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20180820BHJP
【FI】
   F25B6/02 J
   F25B13/00 331A
   F25B1/00 101E
   F25B1/00 331E
   F25B1/00 304L
   F25B40/00 V
   F25B1/00 396A
   F24F11/46
   F24F11/84
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-143933(P2014-143933)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-20760(P2016-20760A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 賢一
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052884(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/150761(WO,A1)
【文献】 特開平03−134445(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0019613(US,A1)
【文献】 特開2008−180422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 5/02
F25B 6/02
F25B 13/00
F25B 40/00 〜 40/02
F24F 11/00 〜 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、流路切替手段と、室外熱交換器と、室外膨張弁と過冷却熱交換器とが冷媒配管で接続されてなる複数の過冷却熱交換器ユニットと、同複数の過冷却熱交換器ユニットと同数の室内熱交換器とを連結して形成した主冷媒回路と、
前記各過冷却熱交換器ユニットの前記室外膨張弁と前記過冷却熱交換器との間から分岐して、単一の過冷却膨張弁と前記複数の過冷却熱交換器を介して前記圧縮機の吸入側に接続したバイパス回路と、
前記圧縮機、前記流路切替手段、前記複数の室外膨張弁、および、前記過冷却膨張弁を制御する制御手段と、
前記室外熱交換器、前記過冷却熱交換器ユニット、および、前記過冷却膨張弁を少なくとも備えた室外機と、前記室内熱交換器を少なくとも備えた室内機と、
を有する空気調和装置であって、
前記主冷媒回路が暖房サイクルであるときに、前記複数の過冷却熱交換器の冷媒出口側における冷媒の過冷却度を検出する過冷却度検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記主冷媒回路が暖房サイクルであるとき、
前記複数の過冷却熱交換器ユニットと前記複数の室内熱交換器とを接続する冷媒配管を流れる冷媒が気液二相状態となるように、前記複数の室外膨張弁の開度を調節し、
前記過冷却度検出手段で検出した前記複数の過冷却度のうち、予め定められた目標過冷却度未満の過冷却度が存在する場合は、前記過冷却膨張弁の開度を大きくする、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記主冷媒回路が暖房サイクルとなっているときに、前記複数の過冷却熱交換器の冷媒出口側における冷媒温度である過冷却熱交出口温度を検出する複数の過冷却熱交出口温度検出手段を有し、
前記複数の過冷却度は、前記複数の過冷却熱交出口温度検出手段で検出した前記過冷却熱交出口温度を用いて算出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記複数の過冷却熱交換器は、マイクロ流路熱交換器で構成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記主冷媒回路や前記バイパス回路を流れる冷媒としてR32を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1台の室外機に複数台の室内機が冷媒配管で接続された空気調和装置に係わり、より詳細には、冷媒回路への冷媒充填量を低減できる空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機と四方弁と室外熱交換器と膨張弁とを有する室外機と、室内熱交換器を有する室内機とを液管とガス管とで接続してなる冷媒回路を有する空気調和装置では、圧縮機から吐出されて凝縮器として機能している熱交換器に流入して凝縮した冷媒は、膨張弁を介して蒸発器として機能している熱交換器に流入して蒸発し、再び圧縮機に吸入されることで冷凍サイクルを形成している。この冷凍サイクルにおいて、膨張弁を通過する際の冷媒の状態としては液相状態であることが好ましい。気液二相状態の冷媒が膨張弁を通過すると、冷媒の流動音が発生して使用者に不快感を与える虞があるためであり、また、液相と気相との割合が不均一な状態の冷媒が膨張弁を通過すれば、膨張弁の冷媒流入側における冷媒圧力と冷媒流出側における冷媒圧力との圧力差が不安定となって、冷凍サイクルが安定しない虞があるためである。
【0003】
冷媒を液相状態にして膨張弁を通過させるためには、膨張弁の上流側に配置される凝縮器として機能している熱交換器の冷媒出口における過冷却度を十分に大きくする必要がある。しかし、空気調和装置が暖房運転を行うとき、すなわち、四方弁を切り替えて室内熱交換器を凝縮器として機能させる場合に、室内熱交換器の冷媒出口における過冷却度を大きくし冷媒を液相状態として室内機から流出させると、液管における液冷媒量が多くなり、液管の長さ(配管長)が長くなる程液管おける液冷媒量が多くなる。
【0004】
通常、空気調和装置では必要とされる空調能力を発揮するために必要な冷媒量に、上述した液管での液冷媒量を加味して冷媒回路に充填する冷媒量を決定する。このため、液管での液冷媒量が多くなる程冷媒充填量も多くなってコストアップとなる問題がある。特に、充填する冷媒が可燃性冷媒(例えば、R32)である場合は、冷媒充填量が多くなるとコストアップという問題に加えて、万が一室内機が設置された空間に冷媒が漏洩した場合に、その漏洩量が多くなる。そのため、室内機が設置された空間における冷媒濃度が、冷媒が発火する虞がある濃度に達する可能性が高くなる。
【0005】
上述した問題を解決する方法として、例えば特許文献1に記載のような冷凍サイクル装置が提案されている。この冷凍サイクル装置は、圧縮機と、圧縮機において圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器から流出した冷媒を過冷却する熱交換器(以降、過冷却熱交換器と記載)と、過冷却熱交換器により過冷却された冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁において膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えている。そして、冷凍サイクル装置は、上記各構成を冷媒配管で接続してなる主回路と、膨張弁および蒸発器をバイパスしバイパス膨張弁を備えたバイパス管とを有し、過冷却熱交換器は、凝縮器から流出して主回路を流れる冷媒とバイパス回路を流れる冷媒とを熱交換させて、凝縮器から流出した冷媒を過冷却するものである。
【0006】
以上説明したような冷凍サイクル装置であれば、仮に凝縮器と膨張弁とを接続する冷媒配管(液管)が長くても、過冷却熱交換器を膨張弁の近傍に配置すれば、凝縮器から流出する冷媒は気液二相状態とし、過冷却熱交換器で過冷却することで冷媒を液相状態として膨張弁を通過させることができる。このため、液管での液冷媒量を減少させることができて冷凍サイクル装置への冷媒充填量を削減できるとともに、冷媒が気液二相状態で膨張弁を通過することによる冷媒の流動音の発生や、液相と気相との割合が不均一な状態の冷媒が膨張弁を通過して膨張弁の冷媒流入側における冷媒圧力と冷媒流出側における冷媒圧力との圧力差が不安定となることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2009/150761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、過冷却熱交換器を利用して冷媒充填量を削減する方法は、1台の室外機に複数台の室内機が接続される、所謂マルチ型空気調和装置において特に有効である。マルチ型空気調和装置の場合、各室内機と室外機とを接続する液管が存在し、各室内機に対応する膨張弁が室外機に配置される。暖房運転時に各膨張弁を通過させる冷媒を液相状態とするために、各室内機の室内熱交換器で冷媒を液相状態として冷媒を液管に流した場合、各液管での液冷媒量が多大な量となる。従って、室外機に各室内機に対応する過冷却熱交換器を設け、これらを各膨張弁の上流側に配置すれば、各室内機から流出させる冷媒を気液二相状態とし、室外機に流入してから各過冷却熱交換器で冷媒を液相状態とすればよく、各液管での液冷媒量を減少できるので、マルチ型空気調和装置への冷媒充填量を大きく削減できる。
【0009】
しかし、前述したように、過冷却熱交換器には、膨張弁と室外熱交換器(暖房運転時に蒸発器として機能している)とをバイパスするバイパス管とこのバイパス管に備えられるバイパス膨張弁とが必要となる。従って、マルチ型空気調和装置に室内機の台数分過冷却熱交換器を設ける場合は、室内機の台数分のバイパス膨張弁を室外機に設ける必要があるため、室外機が大型化するという問題があった。
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、室外機を大型化させることなく冷媒充填量を削減できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、圧縮機と流路切替手段と室外熱交換器と室外膨張弁と過冷却熱交換器とが冷媒配管で接続されてなる複数の過冷却熱交換器ユニットと複数の過冷却熱交換器ユニットと同数の室内熱交換器とを連結して形成した主冷媒回路と、各過冷却熱交換器ユニットの室外膨張弁と過冷却熱交換器との間から分岐して、単一の過冷却膨張弁と複数の過冷却熱交換器を介して圧縮機の吸入側に接続したバイパス回路と、圧縮機、流路切替手段、複数の室外膨張弁、および、過冷却膨張弁を制御する制御手段と、室外熱交換器、前記過冷却熱交換器ユニット、および、前記過冷却膨張弁を少なくとも備えた室外機と、を有するものであって、主冷媒回路が暖房サイクルであるときに、複数の過冷却熱交換器の冷媒出口側における冷媒の過冷却度を検出する過冷却度検出手段を有する。そして、制御手段は、主冷媒回路が暖房サイクルであるとき、複数の過冷却熱交換器ユニットと複数の室内熱交換器とを接続する冷媒配管を流れる冷媒が気液二相状態となるように、複数の室外膨張弁の開度を調節し、過冷却度検出手段で検出した複数の過冷却度のうち、予め定められた目標過冷却度未満の過冷却度が存在する場合は、過冷却膨張弁の開度を大きくするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明の空気調和装置によれば、複数の室外膨張弁の開度を調節することで、各室内熱交換器から流出する冷媒を気液二相状態とし、かつ、検出した各室内熱交換器から流出する冷媒の過冷却度のうち、予め定められた目標過冷却度未満の過冷却度が存在する場合は、過冷却膨張弁の開度を大きくすることで、各室外膨張弁を通過する冷媒を液相状態とすることができる。従って、室外機を大型化させることなく、空気調和装置への冷媒充填量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態である空気調和装置の説明図であり、(A)が冷媒回路図、(B)が室外機制御手段および室内機制御手段のブロック図である。
図2】本発明の実施形態における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行えるマルチ型の空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例】
【0015】
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および、ガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cとを備えている。
【0016】
上記各構成要素は次のように接続されている。第1液管8aの一端が室外機2の第1液側閉鎖弁28aに、他端が室内機5aの閉鎖弁53aにそれぞれ接続され、第2液管8bの一端が室外機2の第2液側閉鎖弁28bに、他端が室内機5bの閉鎖弁53bにそれぞれ接続され、第3液管8cの一端が室外機2の第3液側閉鎖弁28cに、他端が室内機5cの閉鎖弁53cにそれぞれ接続されている。また、ガス管9は一端が室外機2のガス側閉鎖弁29に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各閉鎖弁54a〜54cにそれぞれ接続されている。このように、室外機2と室内機5a〜5cとが第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および、ガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。尚、冷媒回路10のうち、後述するバイパス回路を除いた部分が、本発明における主冷媒回路である。
【0017】
まず、図1(A)を用いて、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、第1過冷却熱交換器ユニット30aと、第2過冷却熱交換器ユニット30bと、第3過冷却熱交換器ユニット30cと、過冷却膨張弁26と、室外ファン27と、一端に第1液管8aが接続された第1閉鎖弁28aと、一端に第2液管8bが接続された第2閉鎖弁28bと、一端に第3液管8cが接続された第3閉鎖弁28cと、一端にガス管が接続されたガス側閉鎖弁29と、室外機制御手段200とを備えている。そして、室外ファン27および室外機制御手段200を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
【0018】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、後述する四方弁22のポートcと吸入管42で接続されている。
【0019】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。そして、ポートdは、ガス側閉鎖弁29と室外機ガス管44で接続されている。
【0020】
室外熱交換器23は、後述する室外ファン27の回転により図示しない吸込口から室外機2内部に取り込まれた外気と冷媒とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は上述したように冷媒配管43で四方弁22のポートbに接続され、他方の冷媒出入口には室外機液管45の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
【0021】
室外機液管45の他端には、第1液分管46aの一端と第2液分管46bの一端と第3液分管46cの一端とが各々接続されている。また、第1液分管46aの他端は第1液側閉鎖弁28aと接続され、第2液分管46bの他端は第2液側閉鎖弁28bと接続され、第3液分管46cの他端は第3液側閉鎖弁28cと接続されている。
【0022】
第1液分管46aには、室外熱交換器23から第1液側閉鎖弁28aに向かって、第1室外膨張弁24a、第1過冷却熱交換器25aが順に設けられている。これら第1液分管46aと第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとで、第1過冷却熱交換器ユニット30aが構成される。また、第2液分管46bには、室外熱交換器23から第2液側閉鎖弁28bに向かって、第2室外膨張弁24b、第2過冷却熱交換器25bが順に設けられている。これら第2液分管46bと第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとで、第2過冷却熱交換器ユニット30bが構成される。さらには、第3液分管46cには、室外熱交換器23から第3液側閉鎖弁28cに向かって、第3室外膨張弁24c、第3過冷却熱交換器25cが順に設けられている。これら第3液分管46cと第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとで、第3過冷却熱交換器ユニット30cが構成される。
【0023】
第1液分管46aにおける第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとの間には、第1バイパス管47aの一端が接続されている。第2液分管46bにおける第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとの間には、第2バイパス管47bの一端が接続されている。第3液分管46cにおける第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとの間には、第3バイパス管47cの一端が接続されている。そして、第1バイパス管47aの他端と、第2バイパス管47bの他端と、第3バイパス管47cの他端とは、過冷却膨張弁26を備えた流入管48の一端に接続されている。
【0024】
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cの各々は、エッチング加工で形成した流路を有する金属箔を積層して形成されるマイクロ流路熱交換器である。一般的に、マイクロ流路熱交換器は、プレート型熱交換器や二重管熱交換器と比べて伝熱性能が高いため小型化が可能であり、本実施形態のように複数の過冷却熱交換器を設ける必要がある室外機2に採用すれば、室外機2の大型化を防ぐことができる。
【0025】
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cは、2つの冷媒流路が直交するように設けられており、これら2つの冷媒流路を流れる冷媒同士が熱交換を行う。一方の流路はそれぞれ第1液分管46a、第2液分管46b、第3液分管46cの一部を構成している。また、他方の流路は直列に接続されており、第1過冷却熱交換器25aにおいて一端が流入管48に、他端が流出管49の一端に接続されている。尚、流出管49の他端は、吸入管42における四方弁22のポートcと圧縮機21の冷媒吸入側との間に接続されている。
【0026】
第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26は、各々電子膨張弁である。第1室外膨張弁24aの開度を調節することで、後述する室内機5aの室内熱交換器51aを流れる冷媒量および第1過冷却熱交換器25aを流れる冷媒量を調節する。第2室外膨張弁24bの開度を調節することで、後述する室内機5bの室内熱交換器51bを流れる冷媒量および第2過冷却熱交換器25bを流れる冷媒量を調節する。第3室外膨張弁24cの開度を調節することで、後述する室内機5cの室内熱交換器51cを流れる冷媒量および第3過冷却熱交換器25cを流れる冷媒量を調節する。
【0027】
過冷却膨張弁26の開度を調節することで、第1液分管46a、第2液分管46bおよび第3液分管46cのそれぞれから分流して第1バイパス管47a、第2バイパス管47bおよび第3バイパス管47cを介して流入管48を流れて第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25bおよび第3過冷却熱交換器25cへ流入し、各過冷却熱交換器で各液分管を流れる冷媒と熱交換を行った後、流出管49へ流出する冷媒量を調節する。尚、上述した第1バイパス管47aと、第2バイパス管47bと、第3バイパス管47cと、流入管48と、流出管49と、過冷却膨張弁26と、流入管48と流出管49とに接続される各過冷却熱交換器の冷媒流路とで、本発明のバイパス回路が構成される。
【0028】
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0029】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力検出手段である高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ33とが設けられている。吸入管42には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
【0030】
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交温度センサ35が設けられている。室外機液管45には、室外熱交換器23に流入あるいは室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出する熱交液側センサ36が設けられている。
【0031】
第1液分管46aにおける、第1過冷却熱交換器25aと第1液側閉鎖弁28aとの間には、この間の第1液分管46aを流れる冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ37aが設けられている。第2液分管46bにおける、第2過冷却熱交換器25bと第2液側閉鎖弁28bとの間には、この間の第2液分管46bを流れる冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ37bが設けられている。第3液分管46cにおける、第3過冷却熱交換器25cと第3液側閉鎖弁28cとの間には、この間の第3液分管46cを流れる冷媒の温度を検出する第3冷媒温度センサ37cが設けられている。以上説明した第1冷媒温度センサ37a、第2冷媒温度センサ37b、および第3冷媒温度センサ37cが、本発明の過冷却熱交入口温度検出手段である。
【0032】
第1液分管46aにおける、第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとの間には、この間の第1液分管46aを流れる冷媒の温度を検出する第1液温度センサ38aが設けられている。第2液分管46bにおける、第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとの間には、この間の第2液分管46bを流れる冷媒の温度を検出する第2液温度センサ38bが設けられている。第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとの間には、この間の第3液分管46cを流れる冷媒の温度を検出する第3液温度センサ38cが設けられている。以上説明した第1液温度センサ38a、第2液温度センサ38b、および第3液温度センサ38cが、本発明の本発明の過冷却熱交出口温度検出手段である。
【0033】
流入管48には、第1過冷却熱交換器25aに流入する冷媒の温度を検出する流入温度センサ39が設けられている。また、流出管49には、第1過冷却熱交換器25aから流出する冷媒の温度を検出する流出温度センサ40が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度検出手段である外気温度センサ100が備えられている。
【0034】
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230とを備えている。
【0035】
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態、後述する各種テーブル等を記憶する。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うインターフェイスである。
【0036】
CPU210は、各種センサでの検出値を取り込むとともに、室内機5a〜5cから送信される運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26の開度制御や、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御、四方弁22の切り換え制御を行う。
【0037】
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、第1液管8aと第2液管8bと第3液管8cがそれぞれ接続された液側閉鎖弁53a〜53cおよび分岐したガス管9の他端がそれぞれ接続されたガス側閉鎖弁54a〜54cと、室内ファン55a〜55cと、室内機制御手段500a〜500cとを備えている。そして、室内ファン55a〜55cおよび室内機制御手段500a〜500cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。
【0038】
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、図1(A)では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
【0039】
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aの回転により室内機5aに備えられた図示しない吸込口から室内機5a内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液側閉鎖弁53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス側閉鎖弁54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
【0040】
室内ファン55aは、室内熱交換器51aの近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5a内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を室内機5aに備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
【0041】
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内熱交換器51aには、室内熱交換器51aの温度を検出する室内熱交温度センサ61aが設けられている。また、室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ62aが備えられている。
【0042】
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aとを備えている。
【0043】
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。
【0044】
CPU510aは、各種センサでの検出値を取り込むとともに、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転条件やタイマー運転設定等を含んだ信号が図示しないリモコン受光部を介して入力される。CPU510aは、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
【0045】
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合について説明し、冷房運転/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0046】
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する。
【0047】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41から四方弁22を介して室外機ガス管44に流入し、室外機ガス管44からガス側閉鎖弁29を介してガス管9に流入する。ガス管9に流入した冷媒は分岐して、ガス側閉鎖弁54a〜54cを介して室内機5a〜5cに流入する。
【0048】
室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機ガス管72a〜72cを流れて室内熱交換器51a〜51cに流入する。室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により図示しない吸込口から室内機5a〜5c内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内機5a〜5cが設置されている部屋に吹き出されることによって、各部屋の暖房が行われる。
【0049】
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機液管71a〜71cを流れ、液側閉鎖弁53a〜53cを介して第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cに流入する。第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cから第1液側閉鎖弁28a、第2液側閉鎖弁28b、および第3液側閉鎖弁28cを介して室外機2に流入した冷媒は、第1液分管46a、第2液分管46b、および第3液分管46cを流れて第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入した冷媒は、過冷却膨張弁26を介して流入管48から流入する冷媒と熱交換を行って冷却される。尚、各過冷却熱交換器で熱交換を行って流出管49に流出した冷媒は、流出管49を流れて吸入管42に流入する。
【0050】
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cで冷却された冷媒は、一部が第1バイパス管47a、第2バイパス管47b、および第3バイパス管47cに分流し、残りが第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過して減圧された後、室外機液管45に流入する。尚、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26の開度制御については後述する。
【0051】
室外機液管45から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて四方弁22に流入し四方弁22から吸入管42へと流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0052】
尚、室内機5a〜5cが冷房運転あるいは除霜運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する。
【0053】
次に、図1および図2を用いて、本実施形態の空気調和装置1が暖房運転を行っているときの、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却度膨張弁26の開度制御について詳細に説明する。
【0054】
尚、以下の説明では、高圧センサ31で検出する圧縮機21の吐出圧力をPd、吐出圧力Pdを用いて算出する室内熱交換器51a〜51cでの凝縮温度をTc、室外熱交温度センサ35で検出する室外熱交換器23での蒸発温度をTe、吐出温度センサ33で検出する圧縮機21の吐出温度をTd、吸入温度センサ34で検出する圧縮機21の吸入温度をTs、目標吐出温度をTdtg、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdtgとの差(Td−Tdtg)である吐出温度差をΔTdとする。尚、目標吐出温度Tdtgは、圧縮機21への液バックを防止でき、かつ、吐出温度Tdの過昇を押さえることができる温度であり、本実施形態では、凝縮温度Tcと蒸発温度Teとを用いて算出する。
【0055】
また、第1冷媒温度センサ37a/第2冷媒温度センサ37b/第3冷媒温度センサ37cで検出する冷媒温度である過冷却熱交入口温度をそれぞれTv1/Tv2/Tv3、凝縮温度Tcと各過冷却熱交入口温度Tv1/Tv2/Tv3との差(Tc−Tv1、Tc−Tv2、Tc−Tv3)をそれぞれ第1過冷却度SCf1/SCf2/SCf3とする。
【0056】
また、第1液温度センサ38a/第2液温度センサ38b/第3液温度センサ38cで検出する冷媒温度である過冷却熱交出口温度をそれぞれTl1/Tl2/Tl3、凝縮温度Tcと各過冷却熱交出口温度Tl1/Tl2/Tl3との差(Tc−Tl1、Tc−Tl2、Tc−Tl3)をそれぞれ第2過冷却度SCs1/SCs2/SCs3とする。さらには、吸入温度Tsと蒸発温度Teとの差(Ts−Te)である圧縮機21の吸入過熱度をSHsとする。
【0057】
空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過する冷媒の状態が気液二相状態であれば、これら各室外膨張弁を冷媒が通過する際に冷媒の流動音が発生する虞があり、また、液相と気相との割合が不均一な状態の冷媒が各室外膨張弁を通過すれば、各室外膨張弁の冷媒流入側(各過冷却熱交換器側)における冷媒圧力と冷媒流出側(室外熱交換器23側)における冷媒圧力との圧力差が不安定となって暖房サイクルが安定しない虞がある。
【0058】
従って、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過する冷媒の状態は、上述した冷媒の流動音や圧力差が発生しづらい液相状態とすることが好ましい。しかし、各室外膨張弁を通過する冷媒を液相状態とするために、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側で過冷却度が大きくなるように制御した場合、冷媒回路10における各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cまでの間、つまり、各室内機液管71a〜71cと、第1液管8aおよび第2液管8bおよび第3液管8cと、第1液分管46aにおける第1閉鎖弁28aから第1室外膨張弁24aの間と、第2液分管46bにおける第2閉鎖弁28bから第2室外膨張弁24bの間と、第3液分管46cにおける第3閉鎖弁28cから第3室外膨張弁24cの間での液冷媒量が多くなる虞がある。
【0059】
そして、空気調和装置1で必要とされる空調能力(冷房能力や暖房能力)を発揮するために必要な冷媒量に、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から各室外膨張弁までの間の液冷媒量を加味して冷媒回路10に冷媒を充填すれば、充填する冷媒量が多くなってコストアップとなるとともに、充填する冷媒が可燃性冷媒であった場合に万が一各室内機5a〜5cが設置された空間に冷媒漏れが発生すれば、その漏洩量が冷媒が発火する虞がある濃度に相当する量となる虞がある。
【0060】
そこで、本発明では、空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cまでの間における冷媒の状態を気液二相状態とするために、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側での過冷却度である第1過冷却度SCfが所定値(本実施形態では、0℃)となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度調節を行う第1過冷却度調節ステップと、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入した気液二相状態の冷媒を冷却して液相状態とするために、各過冷却熱交換器の冷媒出口側での過冷却度である第2過冷却度Scsが所定の目標過冷却度SCtg以上となるように、過冷却膨張弁26の開度を調節する第2過冷却度調節ステップとを実行する。
【0061】
次に、図2を用いて、空気調和装置1が暖房運転を行うときに、室外機制御手段200のCPU210が行う処理について説明する。暖房運転時、CPU210は、(1)暖房運転準備ステップ、(2)吐出温度調節ステップ、(3)第1過冷却度調節ステップ、(4)第2過冷却度調節ステップ、(5)吸入過熱度調節ステップ、の5つの処理を実行する。
【0062】
以下、図2を用いて上記(1)〜(5)の各ステップに関わる処理について詳細に説明する。尚、図2に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。また、図2では、上記(1)〜(5)の各ステップに関わる処理を中心に説明しており、空気調和装置1が冷房運転や除霜運転を行うときの処理や、使用者の指示した設定温度や風量などの運転条件に対応した冷媒回路10の制御、等といった一般的な処理については説明を省略する。
【0063】
(1)暖房運転準備ステップ
空気調和装置1が暖房運転を開始するとき、CPU210は、四方弁22を、ポートaとdとが、また、ポートbとcとが各々連通するように切り替えるとともに、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26を、それぞれ予め定められた初期開度とする(ST1)。ここで、各膨張弁の初期開度は、予め試験等で求められて記憶部22に記憶されているものであり、圧縮機21への液バックを防止できる開度である。そして、CPU210は、圧縮機21と室外ファン27とを起動するとともに、室内機5a〜5cに対し通信部230を介して運転開始信号を送信する。この信号を通信部530a〜530cを介して受信した各室外機制御手段500a〜500cのCPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを起動する。
以上のように室外機2や室内機5a〜5cが運転を開始し、冷媒回路1に冷媒が循環して暖房運転が開始される。
【0064】
(2)吐出温度調節ステップ
次に、CPU210は、高圧センサ31で検出した吐出圧力Pdと、室外熱交温度センサ35で検出した蒸発温度Teとを取り込み、取り込んだ吐出圧力Pdを用いて凝縮温度Tcを算出する(ST2)。尚、CPU210は、吐出圧力Pdや蒸発温度Teを定期的に(例えば、30秒に1回)取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出した凝縮温度Tcも記憶部220に記憶している。
【0065】
次に、CPU210は、算出した凝縮温度Tcと取り込んだ蒸発温度Teとを用いて、目標吐出温度Tdtgを算出し(ST3)、吐出温度センサ33で検出した吐出温度Tdを取り込んで吐出温度差ΔTd=Td−Tdtgを算出する(ST4)。尚、CPU210は、吐出温度Tdを定期的に取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出した吐出温度差もΔTdも記憶部220に記憶している。
【0066】
次に、CPU210は、算出した吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下であるか否かを判断する(ST5)。吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下であれば(ST5−Yes)、CPU210は、ST9に処理を進める。吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下でなければ(ST5−No)、CPU210は、吐出温度差ΔTdが−1℃未満であるか否かを判断する(ST6)。
【0067】
吐出温度差ΔTdが−1℃未満であれば(ST6−Yes)、CPU210は、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度減じる(ST7)。吐出温度差ΔTdが−1℃未満でなければ(ST6−No)、CPU210は、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度増す。ここで、所定開度減じるあるいは増すとは、各室外膨張弁に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を減じるあるいは加えることを指し、例えば、ST6の判断を1回行う毎にパルス数を1減じるあるいは加える。
ST7あるいはST8の処理を終えたCPU210は、ST9に処理を進める。
【0068】
(3)第1過冷却度調節ステップ
ST9において、CPU210は、第1冷媒温度センサ37aで検出した過冷却熱交入口温度Tv1を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv1を減じて第1過冷却熱交換器25aの冷媒入口側における第1過冷却度SCf1を算出する。また、CPU210は、第2冷媒温度センサ37bで検出した過冷却熱交入口温度Tv2を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv2を減じて第2過冷却熱交換器25bの冷媒入口側における第1過冷却度SCf2を算出する。さらには、CPU210は、第3冷媒温度センサ37cで検出した過冷却熱交入口温度Tv3を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv3を減じて第3過冷却熱交換器25cの冷媒入口側における第1過冷却度SCf3を算出する。尚、CPU210は、算出した各第1過冷却度SCf1〜SCf3を記憶部220に記憶している。
【0069】
次に、CPU210は、算出した第1過冷却度SCf1〜SCf3の全てが0℃であるか否かを判断する(ST10)。全ての第1過冷却度SCfが0℃であれば(ST10−Yes)、CPU210は、ST12に処理を進める。いずれか1つまたは2つの第1過冷却度SCfが0℃でなければ(ST10−No)、CPU210は、第1過冷却度SCfが0℃となっていない第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、第3過冷却熱交換器25cに夫々対応する第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度増す。ここでも、ST8同様、所定開度増すとは、各室外膨張弁に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を加えることを指し、例えば、ST10の判断を1回行う毎にパルス数を1加える。
ST11の処理を終えたCPU210は、ST12に処理を進める。
【0070】
(4)第2過冷却度調節ステップ
ST12において、CPU210は、第1液温度センサ38aで検出した過冷却熱交出口温度Tl1を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交出口温度Tl1を減じて第1過冷却熱交換器25aの冷媒出口側における第2過冷却度SCs1を算出する。また、CPU210は、第2液温度センサ38bで検出した過冷却熱交出口温度Tl2を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交出口温度Tl2を減じて第2過冷却熱交換器25bの冷媒出口側における第2過冷却度SCs2を算出する。さらには、CPU210は、第3液温度センサ38cで検出した過冷却熱交出口温度Tl3を取り込み、ST2で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交出口温度Tl3を減じて第3過冷却熱交換器25cの冷媒出口側における第2過冷却度SCs3を算出する。尚、CPU210は、算出した各第2過冷却度SCs1〜SCs3を記憶部220に記憶している。
【0071】
次に、CPU210は、算出した第2過冷却度SCs1〜SCs3の全てが目標過冷却度SCtg以上であるか否かを判断する(ST13)。ここで、目標過冷却度SCtgは、各室外膨張弁24a〜24cを通過する冷媒の状態が確実に液相状態となる、各過冷却熱交換器の冷媒出口側における過冷却度(例えば、2℃)であり、予め試験等によって求められて記憶部220に記憶されているものである。
【0072】
第2過冷却度SCs1〜SCs3が全て目標過冷却度SCtg以上であれば(ST13−Yes)、CPU210は、ST15に処理を進める。いずれか1つまた2つの第2過冷却度SCs1〜SCs3が目標過冷却度SCtg未満であれば(ST13−No)、CPU210は、過冷却膨張弁26の開度を所定開度増す(ST14)。ここで、所定開度増すとは、過冷却膨張弁26に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を加えることを指し、例えば、ST13の判断を1回行う毎にパルス数を1減じるあるいは加える。過冷却膨張弁26の開度を大きくすれば、流入管48から第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入する冷媒量が増えて、第1液分管46a、第2液分管46b、および第3液分管46cを流れる冷媒がより冷却されて第2過冷却度SCs1〜SCs3が大きくなる。
ST14の処理を終えたCPU210は、ST15に処理を進める。
【0073】
(5)吸入過熱度調節ステップ
ST15において、CPU210は、吸入温度センサ34で検出した吸入温度Tsを取り込み、取り込んだ吸入温度TsからST2で取り込んだ蒸発温度Teを減じて吸入過熱度SHsを算出する。尚、CPU210は、吸入温度Tsを定期的に取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出した吸入過熱度SHsも記憶部220に記憶している。
【0074】
次に、CPU210は、算出した吸入過熱度SHsが1℃以上であるか否かを判断する(ST16)。吸入過熱度SHsが1℃以上でなければ(ST16−No)、CPU210は、ST18に処理を進める。吸入過熱度SHsが1℃以上であれば(ST16−Yes)、CPU210は、過冷却膨張弁26の開度を所定開度減じ、ST18に処理を進める。ここで、所定開度減じるとは、過冷却膨張弁26に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を減じることを指し、例えば、ST16の判断を1回行う毎にパルス数を1減じる。
【0075】
吸入過熱度SHsが1℃未満となる原因としては、前述した第2過冷却度調節ステップにおいて過冷却膨張弁26の開度が大きくされた場合が考えられる。過冷却膨張弁26の開度が大きくなれば、第2過冷却度SCs1〜SCs3が大きくなり、室外熱交換器23で冷媒が蒸発しきらず(気液二相状態で)室外熱交換器23から流出して四方弁22→吸入管42と流れて圧縮機21に吸入される虞がある。また、過冷却膨張弁26の開度が大きくなれば、流入管48から第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入した冷媒も蒸発しきらず(気液二相状態で)、流出管49→吸入管42と流れて圧縮機21に吸入される虞がある。
【0076】
以上のように、第2過冷却度調節ステップにおいて過冷却膨張弁26の開度が大きくされた場合、室外熱交換器23や各過冷却熱交換器25a〜25cから流出する気液二相冷媒が圧縮機21に吸入され、圧縮機21に液冷媒が吸入されて液圧縮を起こす虞がある。このため、吸入過熱度SHsが1℃未満であるときは、過冷却膨張弁26の開度を小さくすることで第2過冷却度SCs1〜SCs3を小さくし、室外熱交換器23や各過冷却熱交換器25a〜25cで冷媒を蒸発させる(つまり、吸入過熱度SHsが1℃以上となる)ようにしている。
【0077】
ST18において、CPU210は、空気調和装置1に対し運転停止指示があったか否かを判断する。ここで、運転停止とは、全ての室内機5a〜5cにおいて使用者により運転停止が指示された場合である。運転停止が指示されていれば(ST18−Yes)、CPU210は、圧縮機21および室外ファン27を停止するとともに、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26を全閉として、室外機2を停止する。運転停止が指示されていなければ(ST18−No)、CPU210は、ST2に処理を戻す。
【0078】
以上説明した実施形態では、全ての第1過冷却度SCfが0℃となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度を調節したが、第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cにおける圧力損失によって冷媒の状態が各液管内で気液二相状態となるような第1過冷却度SCfであれば、全ての第1過冷却度SCfが0℃超の値、例えば、1℃や2℃となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度を調節してもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態における空気調和装置は、複数の室外膨張弁の開度を調節することで、各室内熱交換器から流出する冷媒を気液二相状態とし、かつ、検出した各室内熱交換器から流出する冷媒の過冷却度のうち、予め定められた目標過冷却度未満の過冷却度が存在する場合は、過冷却膨張弁の開度を大きくすることで、各室外膨張弁を通過する冷媒を液相状態とすることができる。従って、室外機を大型化させることなく、空気調和装置への冷媒充填量を削減できる。
【0080】
尚、以上説明した実施形態では、第1〜第3過冷却熱交換器として、2本の冷媒流路が互いに直交するように配置されたマイクロ流路熱交換器を用いた場合について説明したが、2本の冷媒流路が並行に配置され2本の冷媒流路を流れる冷媒が対向流としたものであってもよい。また、マイクロ流路熱交換器に代えて、プレート型熱交換器や二重管熱交換器等を用いても、本発明の効果を得ることができるが、これらはマイクロ流路熱交換器と比べて大きいため、マイクロ流路熱交換器を過冷却熱交換器に用いる場合に比べて室外機2が大型化する。
【0081】
また、本発明には、CFC冷媒やHCFC冷媒、HFC冷媒といったフロン類の冷媒や、混合系の冷媒等、様々な冷媒を用いても、本発明の奏する効果が得られるが、例えば、R32冷媒のように、凝縮過程におけるエンタルピ差(冷凍能力に相当)が大きい冷媒を用いることが好ましい。実施形態で説明したように、本発明では、暖房運転時に室内熱交換器で過冷却度を取らないようにして気液二相状態の冷媒を室内機から流出させるようにしているため室内機でのエンタルピ差が小さくなり、過冷却度を取る場合と比べて暖房能力が低下する。しかし、元々凝縮過程におけるエンタルピ差が大きい冷媒を使用すれば、室内機が設置される空間で必要とされる暖房能力を満たすことが容易となり、本発明による効果を得つつ暖房能力も確保できる。
【符号の説明】
【0082】
1 空気調和装置
2 室外機
5a〜5c 室内機
8a〜8c第1〜第3液管
23 室外熱交換器
24a 第1室外膨張弁
24b 第2室外膨張弁
24c 第3室外膨張弁
25a 第1過冷却熱交換器
25b 第2過冷却熱交換器
25c 第3過冷却熱交換器
26 過冷却膨張弁
31 高圧センサ
32 低圧センサ
33 吐出温度センサ
34 吸入温度センサ
35 室外熱交温度センサ
37a 第1冷媒温度センサ
37b 第2冷媒温度センサ
37c 第3冷媒温度センサ
38a 第1液温度センサ
38b 第2液温度センサ
38c 第3液温度センサ
39 流入温度センサ
40 流出温度センサ
45 室外機液管
46a 第1液分管
46b 第2液分管
46c 第3液分管
47a 第1バイパス管
47b 第2バイパス管
47c 第3バイパス管
48 流入管
49 流出管
51a〜51c 室内熱交換器
61a〜61c 室内熱交温度センサ
71a〜71c 室内機液管
200 室外機制御部
210 CPU
220 記憶部
230 通信部
500a〜500c 室内機制御手段
510a〜510c CPU
520a〜520c 記憶部
530a〜530c 通信部
SCf1〜SCf3 第1過冷却度
SCs1〜SCs3 第2過冷却度
SCgt 目標過冷却度
SHs 吸入過熱度
Pd 吐出圧力
Te 蒸発温度
Tc 凝縮温度
Td 吐出温度
Tdgt 目標吐出温度
ΔTd 吐出温度差
Tl1〜Tl3 過冷却熱交出口温度
Tv1〜Tv3 過冷却熱交入口温度
Ts 吸入温度
図1
図2