特許第6379890号(P6379890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379890
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】部品運搬用吊具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/62 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B66C1/62 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-181554(P2014-181554)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-55940(P2016-55940A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】大久保 晋
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲夫
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭44−005894(JP,B1)
【文献】 特開2005−170115(JP,A)
【文献】 特開平10−250975(JP,A)
【文献】 特開平03−115088(JP,A)
【文献】 特開平10−087264(JP,A)
【文献】 特開2010−083457(JP,A)
【文献】 実開平01−159688(JP,U)
【文献】 実開昭60−043689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部位を含む被運搬部品の前記棒状部位に係合させて前記被運搬部品を運搬する部品運搬用吊具であって、
前記棒状部位を収容する収容領域を形成した収容部材と、前記収容部材に取り付けられて前記被運搬部品が前記収容領域から離脱することを防止するための保持部材とを有し、
前記保持部材は、前記収容部材に形成された取付孔に嵌合する取付ピンと、第1の態様で前記収容部材に取り付けられた際に前記収容領域に面する第1保持面と、第2の態様で前記収容部材に取り付けられた際に前記収容領域に面する第2保持面とを有し、前記取付ピンの軸線と第1保持面との距離は前記取付ピンの軸線と第2保持面との距離よりも長いことを特徴とする部品運搬用吊具。
【請求項2】
請求項1記載の部品運搬用吊具において、
前記保持部材は第1保持面の裏面に第2保持面を有することを特徴とする部品運搬用吊具。
【請求項3】
請求項1または2記載の部品運搬用吊具において、
前記被運搬部品に当接して前記被運搬部品の姿勢を所定位置に維持するストッパを有することを特徴とする部品運搬用吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品の運搬用吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立ライン等においては、部品を受け具から吊り上げて台車上に降ろしたり、台車上から吊り上げて受け具上に降ろしたりする作業が行われている。ここで取り扱われる部品は重量物であり、作業車が人手によって移動することが困難であることから、主にホイスト等が用いられている。通常、ホイストによって部品を直接吊り上げることはできないため、ホイストと部品との間に部品運搬用吊具を介在させ、これにより部品の吊り上げ及び運搬を行っている。
【0003】
部品運搬用吊具はホイストのフックに引っ掛けられて使用され、この部品運搬用吊具に部品が引っ掛けられて運搬されるが、ホイストがインチング等の動作を行うと部品運搬用吊具に引っ掛けられた部品が振動によって外れ、部品が落下して破損してしまうという問題点があった。そこで、押さえ部材によって部品のほぼ全周を覆うように構成し、部品の落下を防止する技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−122781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の部品運搬用吊具では部品のほぼ全周を覆っているため、部品の大きさに応じて吊具を交換する必要があった。これは、大きいまたは太い部品では吊具に入らず、小さいまたは細い部品では吊具との間に隙間が生じてホイストによる移動時に部品が移動して部品の揺れや異音が生じてしまうためである。しかし、部品の大きさに応じて吊具を用意すると、吊具の種類が多くなりコストアップしてしまうと共に吊具を交換する必要が生じて作業効率が悪化してしまうという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、2種類の部品に対応して各部品を不具合なく運搬することが可能な部品運搬用吊具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、棒状部位を含む被運搬部品の前記棒状部位に係合させて前記被運搬部品を運搬する部品運搬用吊具であって、前記棒状部位を収容する収容領域を形成した収容部材と、前記収容部材に取り付けられて前記被運搬部品が前記収容領域から離脱することを防止するための保持部材とを有し、前記保持部材は、前記収容部材に形成された取付孔に嵌合する取付ピンと、第1の態様で前記収容部材に取り付けられた際に前記収容領域に面する第1保持面と、第2の態様で前記収容部材に取り付けられた際に前記収容領域に面する第2保持面とを有し、前記取付ピンの軸線と第1保持面との距離は前記取付ピンの軸線と第2保持面との距離よりも長いことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の部品運搬用吊具において、さらに前記保持部材は第1保持面の裏面に第2保持面を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の部品運搬用吊具において、さらに前記被運搬部品に当接して前記被運搬部品の姿勢を所定位置に維持するストッパを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2種類の大きさの部品をがたつくことなく運搬することができるので、吊具の種類が多くなりコストアップしてしまうと共に吊具を交換する必要が生じて作業効率が悪化してしまうという問題点の発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を適用した部品運搬用吊具の概略図である。
図2】本発明の一実施形態を適用した部品運搬用吊具の第1保持面側にて部品を保持する態様を説明する概略図である。
図3】本発明の一実施形態を適用した部品運搬用吊具の第2保持面側にて部品を保持する態様を説明する概略図である。
図4】本発明の一実施形態を適用した部品運搬用吊具を用いた部品の運搬を説明する概略図である。
図5】本発明の一実施形態を適用した部品運搬用吊具を用いた部品の運搬を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に用いられる部品運搬用吊具を示している。同図において部品運搬用吊具1は、運搬される部品の一部が収容される収容部材2、収容部材2に取り付けられ収容部材2と共に部品を保持する保持部材3、部品に当接して部品の状態を維持するストッパ4、収容部材2を支持すると共にホイスト7に係合する支持板5、支持板5に取り付けられ他の部品が係合する係合部6等を有している。
【0012】
収容部材2はナイロン等の樹脂によって形成されており、その側面視形状は部品の一部が収容される収容領域が形成されるように、ほぼU字形状となるように形成されている。収容部材2の一端には2箇所の取付孔2aが形成されており、ここには保持部材3の取付ピン3aが嵌合する。保持部材3はナイロン等の樹脂によって形成されており、その上端にはアルミニウム製の取手3bが設けられ、その下端には金属製の取付ピン3aが2箇所配設されている。
【0013】
側面視L字形状の支持板5は鉄等の金属によって形成されており、その一端にホイスト7が係合する係合穴5aを有し、その他端には収容部材2がボルトによって固定されている。支持板5の他端であって収容部材2と対向する位置には、ウレタン製の一対のストッパ4を固定支持する支軸4aが固着されている。さらに支持板5の一端であって収容部材2が設けられている側とは逆側の位置には、金属製のピンからなる係合部6がブラケット6aを介して取り付けられている。
【0014】
次に、保持部材3について説明する。保持部材3は、図2図3に示すように、各取付ピン3aが保持部材3の中心線Cからオフセットして配置されており、各取付ピン3aを係合部2の各取付孔2aに嵌合させた際に図2に示す状態と図3に示す状態とを取り得る。図2に示す状態では収容部材2の内面である収容領域と保持部材3の一方の外面である第1保持面3cとによって保持可能な部品の大きさはAとなり、図3に示す状態では係合部2の内面である収容領域と保持部材3の他方の外面である第2保持面3dとによって保持可能な部品の大きさはAよりも大きなBとなる。
【0015】
すなわち、取付ピン3aの軸線Dと第1保持面3cとの距離Eは、軸線Dと第2保持面3dとの距離Fよりも長くなる。この構成により部品運搬用吊具1は、2種類の大きさの部品をがたつくことなく運搬することができる。
【0016】
次に、部品運搬用吊具1を用いた部品の運搬について説明する。図4において、符号8は車種Gの部品(フロントサスペンション)を示している。被運搬部品である部品8は、部品運搬用吊具1によって保持される部位である棒状部位8aの直径が細いため、保持部材3は図2に示すように第1保持面3cを収容領域側に向けた状態で収容部材2に取り付けられる。部品8は、作業の工程上、作業者が立った状態で部品運搬用吊具1に係合させる必要があり、部品8は図4に示す状態でホイスト7により上方へと持ち上げられる。持ち上げられた部品8は水平状態で一時保管場所である台車上に載置されるため、運搬時には水平状態となることが望ましい。
【0017】
そこで本発明の部品運搬用吊具1では、図4に示す状態から部品8が上方へと持ち上げられた際に、部品8が矢印Zで示す方向に傾いたとき、図5に示すように部品8に当接して部品8をほぼ水平状態に維持するストッパ4を備えている。この構成により、部品8は吊り上げられた際に部品運搬用吊具1によって水平状態を維持したまま運搬されるので、部品8の状態が変化することにより部品8が落下することが防止される。また、部品8の状態が変化しても収容部材2と保持部材3とが部品8をその全周にわたって保持しているので、部品8の落下を確実に防止することができる。
【0018】
部品運搬用吊具1において、棒状部位8aよりも太い直径の棒状部位を有する部品が搬送される場合には、保持部材3は図3に示すように第2保持面3dを収容領域側に向けた状態で収容部材2に取り付けられる。
【0019】
上述の構成によれば、2種類の大きさの部品をがたつくことなく運搬することができるので、吊具の種類が多くなりコストアップしてしまうと共に吊具を交換する必要が生じて作業効率が悪化してしまうという問題点の発生を確実に防止することができる。また、保持部材3が第1保持面の裏面に第2保持面を有する構成であるので、構成を単純化できコストダウンを図ることができる。また、部品8に当接して部品8の姿勢を所定位置に保持するストッパ4を有するので、搬送時において部品を所定位置に保持することができ作業工程を短縮して作業の短縮化及び効率化を図ることができる。
【0020】
上記実施形態では、ストッパ4を支軸4aに固定する構成としたが、ストッパ4は長期の使用によって変形するため、支軸4aに固定されたストッパ4が支持板5に対してその相対位置を変位可能に構成されていてもよい。これにより、ストッパ4の位置を変位させることができ、ストッパ4の寿命を延ばすことができる。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
1 部品運搬用吊具
2 収容部材
2a 取付孔
3 保持部材
3a 取付ピン
3c 第1保持面
3d 第2保持面
4 ストッパ
8 被運搬部品(部品)
8a 棒状部位
D 取付ピンの軸線
E,F 距離
図1
図2
図3
図4
図5