【実施例1】
【0050】
図1乃至
図4及び
図10を参照しながら本発明の実施例1に係る竪型鋳造機の竪型締装置及びその型締制御方法を説明する。竪型締装置50の下方には、下型60が取り付けられる固定盤51が架台51aを介して基礎に固定されている。また、固定盤51には、4本のタイバー54の下端が固定されている。そして、タイバー54の上端はシリンダプラテン53に固定されている。一方、シリンダプラテン53の上方の中心には、型締ラムシリンダ55のラムシリンダボディ55aが形成されている。
【0051】
次に、固定盤51及びシリンダプラテン53の間には、上型61が取り付けられる可動盤52が、タイバー54に案内されて、上下方向に移動可能に配置されている。この可動盤52には、可動盤52の金型取付面の中心点から離間して2箇所に配置される型開閉シリンダ56のシリンダロッド56bが固定され、その型開閉シリンダ56のシリンダボディ56aのロッド側がシリンダプラテン53に固定されている。更に、可動盤52の上方には、型締ラムシリンダ55のラムシリンダロッド55bの下端が固定され、そのラムシリンダロッド55bが挿入された、シリンダプラテン53の上方のラムシリンダボディ55a内の油室55cに、図示しない油圧管路を介して所定圧力の作動油を供給させることにより、所定の型締力を発生させる。
【0052】
ラムシリンダボディ55aの上方には、オイルタンク55dが配置されている。型開閉シリンダ56による可動盤52の型開閉動作時(型開閉ストロークS(エス))、油室55cとオイルタンク55dとの間の図示しない油圧管路は開放状態であり、可動盤52の下降時は、油室55cの容積増大に伴ってオイルタンク55d内の作動油が油室55cに供給され、可動盤52の上昇時は、油室55cの容積縮小に伴って油室55c内の作動油がオイルタンク55dに戻され、常時、油室55cを作動油で満たした状態が維持される。型締め時においては、この油圧管路を閉鎖させ、図示しない油圧ポンプを介した別の油圧管路からオイルタンク55dの作動油を油室55cに供給させて、所定の型締力を発生させる。
【0053】
平面上の、4本のタイバー54、型締ラムシリンダ55及び型開閉シリンダ56の配置関係は
図3に示すとおりである。
図3は
図2のC矢視図(平面断面図)である。長方形のシリンダプラテン53の四隅には、4本のタイバー54の上端がそれぞれ固定され、シリンダプラテン53の中心にラムシリンダボディ55aが形成されている。また、シリンダプラテン53の中心点(可動盤52の金型取付面の中心点と垂直軸上で一致)対称の長辺方向の両端に、型締シリンダ56のシリンダボディ56aのロッド側が固定され、型厚測定手段57が、同じくシリンダプラテン53の中心点対称で、且つ、型開閉シリンダ56から若干短辺方向に離間させた2箇所に配置されている。尚、
図3に示す型厚測定手段57は、図を見易くするために、
図1及び
図2での図示は割愛した。
【0054】
下型60に対する上型61の平行度を維持させる型締制御において、型開閉シリンダ56や型厚測定手段57の理想的な配置は、実施例1のように、可動盤52の金型取付面の中心点から離間して、且つ、同中心点対称の2箇所(1組)のみへ配置するだけでなく、もう2箇所(1組)、すなわち、
図3で型開閉シリンダ56や型厚測定手段57が配置されていない長辺側に配置させるものである。同様に、タイバー54近傍の対角線上に2組(4箇所)配置させても良い(このような配置については、後述する実施例2の
図6(a)を参照されたい)。しかしながら、竪型鋳造機のサイズや製作コストによっては、実施例1のように、型開閉シリンダ56や型厚測定手段57を、可動盤52の金型取付面の中心点から離間して、且つ、同中心点対称の2箇所(1組)のみへ配置させざるを得ない場合がある。このような場合は、
図3に示す型厚測定手段57のように、型開閉シリンダ56や型厚測定手段57を、シリンダプラテン53の中心点を通る、長辺方向及び短辺方向のいずれか一方の中心線から他方の中心線方向に若干離間させて配置させたり、先に説明したような、非接触式距離センサを、副測定手段として配置させたりすることにより、長辺及び短辺方向のいずれの傾きにも対応可能にすることが好ましい。
【0055】
次に、
図4を参照しながら、型厚測定手段57について説明する。
図4は、本発明の実施例1に係る、竪型鋳造機の竪型締装置の型厚測定手段の説明図である。
図4(a)が型厚測定手段の正面図、
図4(b)が
図4(a)のD矢視図、
図4(c)が
図4(b)のP部詳細図である。
【0056】
平板状のラックギア57aの下端が可動盤52の側面に固定され、同上端側がシリンダプラテン53の側面に配置されたラックギアガイド57bを介して上下方向に移動可能に配置されている。また、ラックギア57aに組み合わされるピニオンギア57cが、同じくシリンダプラテン53の側面に配置されたピニオンギアサポート57dを介して回転可能に支持されている。そして、ピニオンギアサポート57dに回転可能に支持されているピニオンギア57cの図示しない回転軸に、ピニオンギア57cの回転角度を検出可能なエンコーダ57eの入力軸が直接接続される。エンコーダ57eは、ピニオンギア57cの回転軸の回転運動以外の負荷が、エンコーダ57eの入力軸に作用しないように、エンコーダサポート57fを介してシリンダプラテン53の側面に配置されている。
【0057】
図4(a)に示すように、鋳造開始前の冷間状態において、上型61を下型60に型合わせさせる。可動盤52の下降に準じて、ラックギア57aもピニオンギア57cを回転させながら下方に移動する。この時、金型は冷間状態であるため、上型61及び下型60が型合わせ状態となった時のこれら金型の金型合わせ面の隙間は、金型の製作仕様に準じた適切な値である。実際に金型合わせ面の隙間自体を精度よく測定することは困難であるため、この時(冷間状態)の金型の型厚を基準値(型厚1)としてエンコーダ57eを原点設定させ、図示しない制御装置に記憶させる。そして、鋳造開始後の金型の型厚を型厚測定手段57による監視値(型厚2)とし、型厚1と鋳造サイクル毎の型厚2との差異Aを、金型の熱膨張による金型合わせ面の隙間の増加量とみなす。
【0058】
鋳造が繰り返されることにより、金型は熱膨張し金型合わせ面の隙間が増加する。その結果、先に説明したように、上型61を下型60に型合わせさせた状態の型厚2は徐々に増加する。この型厚の増加、すなわち差異Aは、
図4(c)に示すように、型厚1の状態と比較して、ラックギア57aが上方に移動し、ピニオンギア57cが右回転することにより、エンコーダ57eの入力軸の回転角度として、図示しない制御装置において算出される。このように算出される型厚測定手段57近傍の型厚の増加量を、予め制御装置に記憶させておく型厚許容範囲Bと比較させる。尚、型厚許容範囲Bは、上型61及び下型60の型合わせ状態において、金型キャビティ内に充填された溶湯の湯面が金型合わせ面を超えた場合に、金型合わせ面から溶湯が漏れ出す程度に金型合わせ面の隙間が増加した状態の金型の型厚や、後述する型締力調整範囲C内の型締め与圧の付与により、金型合わせ面から溶湯が漏れ出さない程度の金型合わせ面の隙間に維持可能な、金型の最大型厚等を適宜採用して決定されれば良い。
【0059】
この差異A及び型厚許容範囲Bの比較は、型厚測定手段57毎に行なわせ、
図9に示す型合わせ位置(射出スタート)から、竪型射出装置のプランジャ位置(もしくは金型キャビティ内の溶湯の湯面上昇位置)が、少なくとも型締め昇圧確認(所定位置2)に到達するまで、好適には設定型締力到達時まで継続させる。金型の金型合わせ面の隙間が増加して型厚が増加したとしても、その増加量が少なければ、
図9に示す型締め昇圧スタート後、設定型締力まで型締め昇圧カーブに準じて、漸次昇圧される型締力(型締め与圧)が、型締ラムシリンダ55によって金型に付与されることにより、その金型合わせ面の隙間(型厚)は、型締め昇圧確認(所定位置2)に到達するまでに型厚許容範囲Bに維持される。この状況においては、プランジャの上昇(もしくは金型キャビティ内への溶湯の充填)を中断させる必要はない。
【0060】
しかしながら、型厚の増加量が増え、型締め昇圧確認(所定位置2)に到達するまでに、型締ラムシリンダ55によって金型に付与される型締め与圧によっても型厚許容範囲Bに維持されないような状況になれば、プランジャの上昇(もしくは金型キャビティ内への溶湯の充填)が中断されてしまう。そこで、差異Aが型厚許容範囲Bを超えるような状態が生じれば、その点を型締力補正開始点1とし、本実施例1に係る型締制御方法を実行させる。
【0061】
本実施例1に係る型締制御方法においては、少なくとも1つの型厚測定手段57において、型締力補正開始点1の発生が認識されると、その型厚測定手段57の最近傍の型開閉シリンダ56(型締力発生手段)を型閉じ方向(場合によっては型開き方向)に駆動させ、その型厚測定手段57の近傍の金型に、型締ラムシリンダ55による型締力(型締め与圧)とは別の型締力(型締め与圧)を付与させる。通常、型合わせ後の射出充填工程及び型締工程中、型締めによる金型の型厚の変化等によって型締シリンダ56に外力が加わらないように、型開閉シリンダ56への油圧管路は開放状態である。そのため、型締力補正開始点1の発生後、該当する型開閉シリンダ56のシリンダロッド56bの下降側(実施例1においてはシリンダボディ56aのヘッド側)に所定の圧力(型締め与圧)の作動油を供給させる。先に説明したように、本実施例1においては、2個の型開閉シリンダ56は個別に型締力(型開閉力)が制御可能に構成されているため、このような制御が可能になる。
【0062】
ここで、該当する型開閉シリンダ56の下降側に発生させる型締力(型締め与圧)は、
図10に示すように、例えば、型締力補正開始点1における型締め昇圧カーブに準じた型締力K(型締め与圧)に対して、予め設定した型締力調整範囲C内で増加させることが好ましい。この型締力調整範囲Cは、先に説明したように、金型の熱膨張以外の要因による装置の異常と判断させる基準を設けるものであって、机上の計算やCAE解析や経験で想定できるものである。
図10においては、理解を容易にするために、型締力調整範囲Cを型締め昇圧カーブを単純に上下に平行移動させたものとして図示したが、その上限や下限を示すカーブが、型締め昇圧カーブと異なっても良く、装置の異常と判断させる基準という観点から適宜設定されれば良い。尚、型開閉シリンダ56に発生させる型締力に関して、型締力補正開始点1における型締め昇圧カーブに準じた型締力(型締め与圧)に対して、予め設定した型締力調整範囲C内で減少させるケースもあることも先に説明したとおりである。
【0063】
また、この制御は、型締力補正開始点1の発生が認識された型厚測定手段57の最近傍の型開閉シリンダ56のみで独立して行われる。本実施例1では、型開閉シリンダ56及び型厚測定手段57が、可動盤52の金型取付面の中心点から離間して、且つ、同中心点対称の2箇所(1組)へ配置されているので、いずれか一方の型厚測定手段57のみで型締力補正開始点1の発生が認識されれば、その最近傍の型開閉シリンダ56のみで所定の型締め与圧を付与させ、型厚を型締め昇圧確認(所定位置2)に到達するまでに型厚許容範囲Bに維持させる。また、両方の型厚測定手段57で型締力補正開始点1の発生が認識されれば、それぞれの最近傍の型開閉シリンダ56で独立して所定の型締め与圧を付与させる。両方の型厚測定手段57における差異Aが異なれば、型締力補正開始点1における型締め与圧に準じた型締力調整範囲C内で、異なる型締め与圧を付与させる制御であっても良い。更に、
図9に示す型合わせ位置(射出スタート)において、差異Aが型厚許容範囲Bを逸脱していれば、型締力補正開始点1が認識され、本実施例1に係る型締制御方法が実施される。
【0064】
このように、本実施例1に係る型締制御方法は、型厚測定手段57と組み合わされる最近傍の型開閉シリンダ56毎に独立して型締め与圧の制御が行われ、金型の該当する部位の型厚を、型締め昇圧確認(所定位置2)に到達するまでに型厚許容範囲Bに維持させるため、金型合わせ面の隙間の増加を防止して、二段型締制御方法が行われる竪型鋳造機の竪型締装置において、型締め昇圧確認時に、実測型締め与圧を昇圧確認型締力に到達させることができる。また、下型に対する上型の平行度を維持させるため、金型合わせ面からの湯こぼれやバリ吹きを防止することができる。
【0065】
尚、本実施例1においては、型厚測定手段57に関して、ラックギア57aを可動盤52及びシリンダプラテン53間に配置させ、これと組み合わせるピニオンギア57c及びエンコーダ57eをシリンダプラテン53に配置させたが、ピニオンギア57c及びエンコーダ57eを可動盤52に配置させても良い。また、ラックギア57aを可動盤52及び固定盤51間に配置させ、ピニオンギア57c及びエンコーダ57eを可動盤52もしくは固定盤51に配置させても良い。
【実施例2】
【0066】
次に、
図5乃至
図7を参照しながら本発明の実施例2に係る竪型鋳造機の竪型締装置及びその型締制御方法を説明する。実施例2が実施例1と異なる点は、竪型鋳造機の竪型締装置において、金型取付盤の金型取付面の中心点から離間させて複数配置される型締力発生手段が、実施例1のような型開閉シリンダではなく、タイバー毎に配置された型締シリンダである点である。また、型締制御方法において、実施例1のような、差異Aを型厚許容範囲Bに維持させる型締め与圧の制御に加えて、型厚測定手段毎の差異A間の差異Dを型厚差許容範囲Eに維持させる型締め与圧の制御が行われる点である。竪型締装置や型締制御方法の他の点については基本的に実施例1と同じであるため、実施例1と同じ構成要件については同じ符号を採用し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
【0067】
図5は、本発明の実施例2に係る、竪型鋳造機の竪型締装置の正面図である。竪型締装置50’の下方には、下型60が取り付けられる固定盤51が架台51aを介して基礎に固定されている。また、固定盤51には、4本のタイバー54の下端が固定されている。そして、タイバー54の上端はシリンダプラテン53’に固定されている。固定盤51及びシリンダプラテン53’の間には、上型61が取り付けられる可動盤52が、タイバー54に案内されて、上下方向に移動可能に配置されている。この可動盤52の、固定盤51と対向する面に、型開閉シリンダ56のシリンダロッド56bが固定され、その型開閉シリンダ56のシリンダボディ56aのヘッド側が固定盤51の可動盤52と対向する面に固定されている。
【0068】
平面上の、4本のタイバー54及び型開閉シリンダ56の配置関係は
図6(a)に示すとおりである。
図6(a)は
図5のE矢視図(平面図)である。長方形の固定盤51の四隅には、4本のタイバー54の下端がそれぞれ固定され、4本のタイバー54の外側4箇所にそれぞれ型開閉シリンダ56が配置されている(2組4個)。更に、4本のタイバー54の外側4箇所にそれぞれ型厚測定手段57が配置されている(2組4個)。これは、実施例1に対して、型開閉シリンダ56及び型厚測定手段57をそれぞれ1組(2個)多く配置させたもので、このような、型開閉シリンダ56及び型厚測定手段57の、可動盤52の金型取付面の中心点から離間して、且つ、同中心点対称の4箇所(2組)への配置は、実施例1の形態における理想的な配置である。
【0069】
一方、実施例1と異なり、
図6(a)に示す型厚測定手段57は、可動盤52及び固定盤51間に配置されている。実施例2における型厚測定手段57の詳細な図示は割愛したが、具体的には、ラックギア57aの下端が固定盤51の側面に固定され、同上端側が可動盤52の側面に配置されたラックギアガイド57bを介して上下方向に移動可能に配置されている。ピニオンギア57c及びエンコーダ57eは固定盤51の側面に配置されている。これら型厚測定手段57については、配置を除けばその構成は基本的に実施例1(
図4)と同じであるため、上記配置の理解には実施例1の
図4を参照されたい。尚、実施例2においても、図を見易くするために、型厚測定手段57の
図5での図示は割愛している。
【0070】
次に、本発明の実施例2に係る、竪型鋳造機の竪型締装置の構成要件上、実施例1との最大の相違点である、タイバー54毎に配置された型締シリンダ58について、
図6(b)及び
図7を参照しながら説明する。
図6(b)に示すように、実施例2の竪型締装置50’においては、4本のタイバー54毎に型締シリンダ58が配置されている。
図6(b)は
図5のF矢視図(平面図)である。また、
図7は
図6(b)のG矢視図(断面図)である。
【0071】
型締シリンダ58は、
図7に示すように、基本的に、型締ピストン58aと係合手段59と、型締ピストン58aが挿入される可動盤52の内部と型締ピストン58aとの間に形成される上方油室58b及び下方油室58cとで構成される。型締ピストン58aは、タイバー54が貫通すると共に、タイバー54の軸心方向に摺動可能である(逆に言えば、型締ピストン58aの長手方向にタイバー54が摺動可能である)。そして、その略中心に大径部58dが形成され、型締ピストン58aを可動盤52の内部に挿入した状態で、大径部58dの上方に上方油室58bが、下方に下方油室58cが形成される。型締ピストン58aの上端は可動盤52の上面から突出させており、この突出端部に係合手段59が配置される。
【0072】
上型61を下型60に型合わせさせた状態で、型締ピストン58aを貫通するタイバー54の、係合手段59の領域を貫通する外周面の所定範囲には、連続する凹凸が加工された係合溝部54aが形成されている。係合溝部54aの凸部外径は、係合溝部54aが形成されていないタイバー54の外径を超えることはなく、型締ピストン58a及び貫通するタイバー54の相対的な摺動に何ら問題はない。そして、型締ピストン58aの上端の突出端部に配置された係合手段59は、タイバー54の係合溝部54aの連続する凹凸と組み合わされる凹凸が加工された可動係合溝部59aと、可動係合溝部駆動手段59bと、これらが配置される基部59cとで構成される。
図7においては、タイバー54の係合溝部54aに対向するように配置されている可動係合溝部59aを、可動係合溝部駆動手段59bにより前進・後退させることにより、係合溝部54a及び可動係合溝部59aの、係合及び係合の解除を行わせることができる。
【0073】
尚、係合手段59の形態は上記形態に限定されるものではない。例えば、タイバー54の係合溝部54aを、係合手段59近傍の全周に連続する凹凸やねじ加工とし、これに組み合わされる凹凸がその内周全周に加工されたナット状部材をその内径中心で2分割したものを可動係合溝部59aとする。この分割面の一方をヒンジで連結し、リンク構造等を介して1つの可動係合溝部駆動手段59bにより他方を開閉させてC状に開放可能に構成させても良い。このような構造は、トグル式型締装置を備える横型鋳造機のエンドプラテン(リンクハウジング等とも呼称する)の位置決め機構(ナット分割装置、あるいは、ハーフナット等とも呼称される)として採用されている。
【0074】
次に、
図7を参照しながら、型締シリンダ58の動作を説明する。
図7において、係合手段59の右側が、係合溝部54a及び可動係合溝部59aを係合させた状態を示し、左側がそれらの係合を解除させた状態を示す。上型61を下型60に型合わせさせるために、型開閉シリンダ56により可動盤52を下降させる際には、係合溝部54a及び可動係合溝部59aの係合を解除させた状態(
図7の係合手段59の左側)で可動盤52を下降させる。この時、型締シリンダ58の上方油室58b及び下方油室58cへの図示しない油圧管路を閉じておけば、型締ピストン58a及び係合手段59の可動盤52に対する移動は抑制され、型締ピストン58a、係合手段59及び可動盤52を一体で下降させることができる。
【0075】
上型61を下型60に型合わせさせた後、係合手段59の可動係合溝部59aを可動係合溝部駆動手段59bにより前進させて、係合溝部54a及び可動係合溝部59aを係合させる(
図7の係合手段59の右側)。ここで、係合溝部54a及び可動係合溝部59aを係合させる前に、上型61を下型60に型合わせさせた状態で、型厚測定手段57により金型の型厚を確認することが好ましい。これは、金型合わせ面へのアルミカスや鋳造品の破片等、コンタミの進入や、図示しない摺動部のブッシュ等の磨耗による可動盤下降動作のビビリにより、本来の型合わせ位置よりも上型61が上方にある状態で型締力を付与させることを防止するためである。
【0076】
係合溝部54a及び可動係合溝部59aを係合させた状態(
図7の係合手段59の右側)において、型締ピストン58aは係合手段59を介してタイバー54と一体化される。この状態において、型締シリンダ58の上方油室58bへの図示しない油圧管路を開放すると共に、下方油室58cへ図示しない油圧管路を介して所定圧力の作動油を供給させれば、例えば、タイバー54と一体化された型締ピストン58aを基準に、可動盤52の金型取付面は2点鎖線に示す位置まで下降し、供給させた作動油の所定圧力及びこの状態におけるタイバー54の伸び量に準じた型締力が上型61及び下型60に付与される。本実施例2において、型締シリンダ58の上方油室58b及び下方油室58cへの油圧制御が、型締シリンダ58毎にできることは言うまでもない。
【0077】
このように、タイバー54毎に型締シリンダ58が配置される竪型締装置50’において、実施例1のような、型厚測定手段57と組み合わされる最近傍の型締力発生手段(本実施例2においては型締シリンダ58)毎に独立して型締め与圧の制御が行われれば、可動盤52の四隅に配置された型締シリンダ58により、それぞれの型締力を個別に設定型締力まで制御できるので、型開閉シリンダ56を、型締力を増減させる補助アクチュエータとして活用する実施例1の形態より、金型の型厚の増加の防止と、下型60に対する上型61の平行度を維持させる型締制御(型締め与圧制御)と、が更に容易になる。尚、本実施例2に係る型締制御方法の、実施例1に係る型締制御方法と重複する部分については、構成要件である型締力発生手段の相違(実施例1:型開閉シリンダ56、実施例2:型締シリンダ58)しかないため、詳細な説明は割愛する。
【0078】
本実施例2においては、上記の型締め与圧制御の高い制御性を活かして、型厚測定手段57毎の型厚の差異Aを比較するだけでなく、型厚測定手段57毎の差異Aの差異Dを比較する。
【0079】
具体的には、隣り合う2箇所の型厚測定手段57の差異Aの差異D、あるいは、可動盤52の金型取付面の中心点対称の2箇所の型厚測定手段57の差異Aの差異Dを、予め制御装置に記憶させておく型厚差許容範囲Eと比較させる。この型厚差許容範囲Eは型厚保許容範囲Bとは異なり、下型60に対する上型61の平行度を直接制御する許容範囲である。そのため、隣り合う2箇所の型厚測定手段57の差異Aの差異Dと、同垂直軸対称の2箇所の型厚測定手段57の差異Aの差異Dとで、異なる範囲を設定させても良い。
【0080】
そして、差異Aと型厚許容範囲Bとの比較と平行して、差異Dと型厚差許容範囲Eとの比較を行い、差異Dが型厚差許容範囲Eを超えるような状態が生じれば、その点を型締力補正開始点2とし、本実施例2に係る型締制御方法を実行させる。型締力補正開始点2の発生が認識されると、その差異Dに関連する2箇所(1組)の型厚測定手段57それぞれの最近傍の型締シリンダ58(型締力発生手段)に発生させている型締力(型締め与圧)を、型締力補正開始点2における型締め昇圧カーブに準じた型締力(型締め与圧)に対して、予め設定した型締力調整範囲C内で増減させる。尚、実施例1と同様に、
図9に示す型合わせ位置(射出スタート)において、差異Dが型厚差許容範囲Eを逸脱していれば、型締力補正開始点2が認識され、本実施例2に係る型締制御方法が実施される。
【0081】
この差異Dを型厚差許容範囲Eに維持させることは、1箇所の型厚測定手段57の冷間状態と鋳造状態との金型の型厚の差異である差異Aを型厚許容範囲Bに維持させることとは異なる。すなわち、2箇所の型厚測定手段57の差異Aについての差異の解消であるため、大きい方の差異Aの減少(型締め与圧の増加)と合わせて、小さい方の差異Aの増加(型締め与圧の減少)が制御上有効である。後者においては、該当する型厚測定手段57の最近傍の型締シリンダ58の型締め与圧を減少させることによる差異Aの増加を型厚許容範囲B内に維持させつつ、これら制御が行われる。
【0082】
このように、本実施例2に係る竪型鋳造機の竪型締装置及び型締制御方法は、実施例1と同様に、型厚測定手段57毎の差異Aの監視により、金型の熱膨張による型厚の増加、すなわち、金型合わせ面の隙間の増加の防止が容易になり、二段型締制御方法が行われる竪型鋳造機の竪型締装置において、型締め昇圧確認時に、実測型締め与圧を昇圧確認型締力に容易に到達させることができる。また、差異Aの差異Dの監視により、積極的に、下型に対する上型の平行度を維持させるため、金型合わせ面からの湯こぼれやバリ吹きを容易に防止することができる。
【0083】
尚、差異Dを型厚差許容範囲Eに維持させるこのような型締め与圧の制御は、実施例1のような、型締力発生手段が型開閉シリンダ56である形態であっても可能であり、本実施例2のように、型開閉シリンダ56及び型厚測定手段が2組(4個)配置されている形態であれば更に好適である。また、実施例2の形態において、差異Aや差異Dに関する型締め与圧の制御を、型開閉シリンダ56により行うことも可能である。この場合、差異A及び差異Dに関する型締め与圧の制御を、型開閉シリンダ56と型締シリンダ58とでそれぞれ分担させて行わせれば、型締め与圧の制御性の更なる向上が期待できる。
【0084】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、竪型鋳造機には、シャトル式等と呼称される、射出装置を備えた竪型締装置と型開閉装置とが独立した鋳造機がある。具体的には、1箇所の型締専用の竪型締装置内に、金型が取り付けられた金型取付盤及び同盤の開閉手段を備えた複数の型開閉装置を、レール等を介して交互に搬入することができる構成の竪型鋳造機である。竪型締装置内には、金型を型合わせ状態にさせた型開閉装置を搬入し鋳造を行わせ、その竪型締装置外では、その前の鋳造サイクルで竪型締装置内に搬入させ鋳造を行わせていた別の型開閉装置を、レールを介して竪型締装置外へ搬出させ、型開きさせた後、鋳造品を型外へ搬出すると共に、型開き状態の金型の金型キャビティに離型剤を塗布したり、インサート部品をセットしたりして、次の鋳造に備える。このように、シャトル式竪型鋳造機では、鋳造と、鋳造前後の製品取り出しや離型剤塗布等とを平行して行うことができる。
【0085】
このようなシャトル式竪型鋳造機の型締シリンダが、実施例1のような型締ラムシリンダの形態や、実施例2のようにタイバー毎に配置された型締シリンダの形態のいずれであっても、シャトル式竪型鋳造機における本発明に係る型締制御方法の実施に問題はない。